説明

慣性センサ装置及び慣性センサ装置を備えた電子機器

【課題】慣性センサが角速度又は加速度が変化する運動を行っているときであっても、慣性センサの出力値に及ぼすバイアス成分の影響をより確実に軽減することができる慣性センサ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】慣性センサと、前記慣性センサの非反転姿勢における出力値をy1と、前記慣性センサの反転姿勢における出力値をy2としたとき、次式(1)によって算出される前記慣性センサの出力値に含まれるバイアス成分bを予め記憶する記憶手段7と、前記慣性センサの出力値を、前記記憶手段7が記憶するバイアス成分bに基づいて補正する補正手段8とを備えたことを特徴とする慣性センサ装置1を提供する。
=(y1+y2)/2…(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、慣性センサ装置、及び、該慣性センサ装置を備えた電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
慣性センサとしては、角速度センサや加速度センサ等が挙げられる。角速度センサや加速度センサの出力値には、バイアス成分が含まれている。バイアス成分は、零点出力、又は、オフセット等と呼ばれ、センサの非対称性、回路の特性、温度影響等の様々な要因により生じるものである。このようなバイアス成分が含まれる出力値Yと、真の値X(慣性センサが角速度センサである場合は、角速度の検出対象となる運動そのものの角速度、慣性センサが加速度センサである場合は、加速度の検出対象となる運動そのものの加速度)とは、次式(1)’で示される関係を有する。
Y=AX+B(A:係数、B:バイアス成分)…(1)’
B=B1+B+B+・・+B(B1〜B:各種要因のバイアス成分)
【0003】
慣性センサの出力値から真の値を算出する方法の一例として、角速度センサの出力値から真の値(角速度)を算出する次のような方法を挙げることができる。具体的には、角速度センサ101が非反転姿勢(図3(a)参照)のときに検出された出力値Y1と、角速度センサ101が反転姿勢(図3(b)参照)であり、且つ、角速度センサ101の真の角速度が出力値Y1の検出時と同一であるときに検出された出力値Y2とを用いて真の角速度を算出する方法である。
【0004】
前述の出力値Y1と真の角速度Xとの関係は、次式(2)’及び図3(c)で表される。
Y1=AX+B…(2)’(B:非反転姿勢のバイアス成分)
一方、前述の出力値Y2と真の角速度Xとの関係は、次式(3)’及び図3(d)で表される。
Y2=−AX+B…(3)’(B:反転姿勢のバイアス成分)
【0005】
バイアス成分は、角速度センサ101の物理的反転によって変化しないとみなすことができるため、式(2)’のBと式(3)’のBとは等しくなり、式(2)’から(3)’を引き、Xについて解くと、次式(4)’が算出される。
X=(Y1−Y2)/2A…(4)’
【0006】
以上に説明した方法によって、真の角速度を算出するためには、非反転姿勢と反転姿勢とのときの出力値が必要である。非反転姿勢と反転姿勢とのときの出力値を検出することができる角速度センサとして、特許文献1の角速度センサを挙げることができる。特許文献1の角速度センサは、反転機構によって姿勢が反転される。よって、特許文献1の角速度センサは、姿勢が非反転状態のときは非反転姿勢の出力値を検出し、姿勢が反転状態のときは反転姿勢の出力値を検出することができる。
【0007】
前述のように、式(4)’によって真の角速度を求めるためには、角速度Y1及びY2の検出時における角速度センサの真の角速度Xは等しくなければならない。従って、特許文献1の角速度センサを用いて角速度Y1及びY2を検出する場合、角速度Y1及びY2を検出するときの特許文献1の角速度センサの真の角速度が同一でなければならない。このように、角速度Y1及びY2の検出時の真の角速度が同一となるのは、特許文献1の角速度センサが停止状態であるか、又は、等速運動状態の場合である。よって、特許文献1の角速度センサが真の角速度が変化する運動を行っているときは、検出時の真の角速度が同一である角速度Y1及びY2を検出できず、特許文献1の角速度センサを用いて、真の角速度を算出することができない。
【特許文献1】特開2006−177909号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、慣性センサが真の角速度又は加速度が変化する運動を行っているときであっても、慣性センサの出力値に及ぼすバイアス成分の影響を軽減することができる慣性センサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、慣性センサと、前記慣性センサの非反転姿勢における出力値をy1と、前記慣性センサの反転姿勢における出力値をy2とした時に、次式(1)によって算出される前記慣性センサの出力値に含まれるバイアス成分bを予め記憶する記憶手段と、前記慣性センサの出力値を、前記記憶手段が記憶するバイアス成分bに基づいて補正する補正手段とを備えたことを特徴とする慣性センサ装置を提供する。
=(y1+y2)/2…(1)
【0010】
本発明に係る慣性センサ装置は、慣性センサの出力値を、式(1)によって算出されたバイアス成分bに基づいて補正する。慣性センサの出力値に含まれるバイアス成分を式(1)によって算出できるのは、以下に説明する通りである。慣性センサが非反転姿勢のときの慣性センサの出力値y1と真の値(慣性センサが角速度センサである場合は、角速度の検出対象となる運動そのものの角速度、慣性センサが加速度センサである場合は、加速度の検出対象となる運動そのものの加速度)xとの関係は、次式(2)で表される。一方、慣性センサが反転姿勢のときの慣性センサの出力値y2と真の値xとの関係は、次式(3)で表される。
y1=ax+b…(2)(b:非反転姿勢のバイアス成分)
y2=−ax+b…(3)(b:反転姿勢のバイアス成分)
バイアス成分は、慣性センサの物理的反転によって変化しないとみなせるため、式(4)が成り立つ。
=b…(4)
出力値y1及びy2の検出時における慣性センサの真の値xが等しい場合、式(2)、(3)及び(4)に基づいて、式(5)が算出される。
=b=(y1+y2)/2…(5)
式(5)より、慣性センサの出力値に含まれるバイアス成分は、(y1+y2)/2であることが導かれる。よって、慣性センサの出力値に含まれるバイアス成分は、式(1)によって算出することができる。
【0011】
尚、式(1)は、出力値y1及びy2の検出時における慣性センサの真の値xが同一であることを前提として導出された式であるので、出力値y1及びy2の検出時における慣性センサの真の値xが異なると、式(1)によって算出されるバイアス成分bは、真のバイアス成分と異なる。よって、バイアス成分を高精度に算出する観点から、出力値y1及びy2の検出時における慣性センサの真の値は、差が小さいことが好ましく、同一であることが最も好ましい。
【0012】
本発明に係る慣性センサ装置は、式(1)によって算出されたバイアス成分bを記憶手段に記憶できる。よって、検出時における慣性センサの真の値が同一である非反転姿勢における出力値y1と反転姿勢における出力値y2とを用いて算出されたバイアス成分bを予め記憶手段に記憶させることで、その後、当該バイアス成分bを用いて、出力値を補正することができる。従って、本発明に係る慣性センサ装置は、真の値が変化する運動をしていても、検出時における角速度センサの真の角速度が同一である非反転姿勢及び反転姿勢のときの角速度y1及びy2によって算出されたバイアス成分bを予め記憶しておけば、この記憶したバイアス成分bに基づいて、角速度を補正することができる。
【0013】
よって、本発明の慣性センサ装置は、慣性センサが角速度センサである場合は、慣性センサが真の角速度が変化する運動をしているときでも、慣性センサの出力する角速度に及ぼすバイアス成分の影響を軽減することができる。また、本発明の慣性センサ装置は、慣性センサが加速度センサである場合は、慣性センサが真の加速度が変化する運動をしているときでも、慣性センサの出力する加速度に及ぼすバイアス成分の影響を軽減することができる。
【0014】
好ましくは、本発明に係る慣性センサ装置は、前記記憶手段が記憶するバイアス成分bを、前記(1)式によって算出するバイアス成分算出手段を備えた構成とされる。
【0015】
好ましくは、前記補正手段は、前記慣性センサの出力値を、前記記憶手段が記憶するバイアス成分bに基づいて補正すると共に、補正した出力値に基づいて角速度演算値又は加速度演算値を算出する構成とされる。
【0016】
かかる好ましい構成においては、慣性センサが角速度センサの場合は、補正した出力値に基づいて角速度演算値が算出され、慣性センサが加速度センサの場合は、補正した出力値に基づいて加速度演算値が算出される。
【0017】
このように、バイアス成分によって補正した出力値に基づいて角速度演算値又は加速度演算値が算出されるので、角速度演算値及び加速度演算値は共に真の値に近い値を有する。よって、かかる好ましい構成の慣性センサ装置は、真の値を高精度に算出することができる。
【0018】
また、本発明は、前述の慣性センサ装置を備えたことを特徴とする電子機器を提供することもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、慣性センサが角速度又は加速度が変化する運動を行っているときであっても、慣性センサの出力値に及ぼすバイアス成分の影響を軽減する慣性センサ装置及び該慣性センサ装置を備えた電子機器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本実施形態では、慣性センサ装置が備える慣性センサが角速度センサである場合について説明する。図1は、本実施形態に係る慣性センサ装置1の概略ブロック図である。図1に示すように、慣性センサ装置1は、角速度センサ2、バイアス成分算出手段6、記憶手段7及び補正手段8を備える。
【0021】
角速度センサ2は、ジャイロ素子3、駆動検出回路4及びADコンバータ5を備える。
【0022】
本実施形態においては、ジャイロ素子3には、MEMS技術で作成された振動子を有した面状のジャイロ素子が用いられている。面状のジャイロ素子の具体な構造の一例として、リング状の振動子と、リング状の振動子に沿って配置された複数の電極とを有した構造を挙げることができる。本具体例のジャイロ素子は、振動子が一次振動しているときに、振動子が回転運動を行うと、該回転運動の角速度に応じた大きさコリオリ力が振動子に生じ、該コリオリ力によって振動子に二次振動が生じる。駆動検出回路4は、前述の振動子を一次振動させるための電圧をジャイロ素子3の電極に印加すると共に、二次振動によるジャイロ素子3の振動子と電極との間の静電容量の変化に基づいて、ジャイロ素子3が行う回転運動の角速度を検出する。尚、駆動検出回路4が検出する角速度をyと、ジャイロ素子3が行う回転運動の真の角速度をxとしたとき、この角速度yと真の角速度xとは次式(6)の関係を有する。
y=ax+b(a:係数、b:バイアス成分)…(6)
ADコンバータ5は、駆動検出回路4が検出した角速度を量子化し、量子化した角速度(出力値)を出力する。
【0023】
バイアス成分算出手段6は、ADコンバータ5によって出力される角速度に含まれるバイアス成分bを算出する。記憶手段7は、バイアス成分算出手段6によって算出されたバイアス成分bを予め記憶する。補正手段8は、ADコンバータ5によって出力される角速度を、記憶手段7が記憶するバイアス成分bに基づいて補正する。
【0024】
次に、バイアス成分算出手段6が行うバイアス成分bの算出と、補正手段8が行う角速度の補正とについて説明する。慣性センサ装置1の動作モードには、バイアス成分算出手段6がバイアス成分bを算出する動作モードと、補正手段8が角速度を補正する動作モードとがある。この2つの動作モードの切り替えは、例えば、慣性センサ装置1に動作モードの切替ボタンを設け、慣性センサ装置1のユーザ等が当該ボタンを操作することによって実現することができる。
【0025】
バイアス成分算出手段6が行うバイアス成分bを算出する動作モードについて説明する。この動作モードでは、バイアス成分算出手段6によって、次式(1)を用いてバイアス成分bが算出されると共に、算出されたバイアス成分bがバイアス成分bとして記憶手段7に記憶させられる。
=(y1+y2)/2…(1)(y1:角速度センサ2が非反転姿勢のときにADコンバータ5から出力される角速度、y2:角速度センサ2が反転姿勢のときにADコンバータ5から出力される角速度)
【0026】
角速度y1は、角速度センサ2が非反転姿勢であると判断できる際に、ADコンバータ5から出力される角速度を取得し、当該取得した角速度に基づいて算出される。角速度センサ2が非反転姿勢であるか否かの判断は、慣性センサ装置1に角速度センサ2が非反転姿勢のときにユーザによって操作されるボタンを設け、このボタンが操作されたか否かによって行うことができる。従って、角速度y1の算出は、例えば、ユーザが角速度センサ2を非反転姿勢として、前述のボタンを操作し、バイアス成分算出手段6がこのボタンの操作を検出すると、ADコンバータ5から出力される角速度を取得して、当該取得した角速度に基づいて角速度y1を算出することで行われる。ADコンバータ5から出力される角速度から角速度y1を算出する方法は、例えば、ADコンバータ5から出力される角速度を1回取得して、取得した角速度を角速度y1として算出する方法、ADコンバータ5から出力される角速度を複数回取得して、その平均値を角速度y1として算出する方法などを挙げることができる。
【0027】
角速度y2は、角速度センサ2が反転姿勢であると判断できる際に、ADコンバータ5から出力される角速度を取得することを除いては、角速度y1と同様の方法で算出される。ここで、反転姿勢とは、非反転姿勢に対して面状のジャイロ素子3の法線方向が180°変更するように、ジャイロ素子3の向きを変更した姿勢である。
【0028】
このように算出される角速度y1及びy2を上式(1)に代入することで、角速度センサ(ADコンバータ5)2が出力する角速度に含まれるバイアス成分bを算出することができるのは、以下に説明する通りである。角速度y1と真の角速度xとの関係は、次式(2)で表される。一方、角速度y2と真の値xとの関係は、次式(3)で表される。
y1=ax+b…(2)(b:非反転姿勢のバイアス成分)
y2=−ax+b…(3)(b:反転姿勢のバイアス成分)
バイアス成分は、角速度センサ2の物理的反転によって変化しないとみなせるため、式(4)が成り立つ。
=b…(4)
角速度y1及びy2の検出時における角速度センサの真の角速度xが等しい場合、式(2)、(3)及び(4)に基づいて、式(5)が算出される。
=b=(y1+y2)/2…(5)
式(5)より、角速度y1及びy2の検出時における角速度センサの真の角速度xが等しい場合、角速度センサ2が出力する角速度に含まれるバイアス成分は、(y1+y2)/2であることが導かれる。よって、角速度y1及びy2の検出時における角速度センサの真の角速度xが等しい場合、角速度センサ2が出力する角速度に含まれるバイアス成分は、上式(1)によって算出することができる。
【0029】
バイアス成分算出手段6は、上式(1)を用いて算出したバイアス成分bをバイアス成分bとして記憶手段7に記憶させる。
【0030】
次に、補正手段8が角速度を補正する動作モードについて説明する。この動作モードでは、補正手段8は、ADコンバータ5によって出力された角速度を取得し、取得した角速度を記憶手段7が記憶するバイアス成分bに基づいて補正すると共に、補正された角速度に基づいて角速度演算値を算出する。
【0031】
ADコンバータ5から取得した角速度yを記憶手段7が記憶するバイアス成分bに基づいて行われる補正は、角速度yからバイアス成分bを引くことで行われる。
【0032】
また、このようにバイアス成分bによって補正された角速度yに基づいて行われる角速度演算値xの算出は次式(7)を用いて行われる。
=(y−b)/a…(7)
【0033】
以上に説明したように、慣性センサ装置1は、上式(1)によって算出されるバイアス成分bを記憶できる。従って、慣性センサ装置1は、角速度センサ2が真の角速度が変化する運動をしていても、検出時における角速度センサ2の真の角速度が同一である非反転姿勢及び反転姿勢のときの角速度y1及びy2によって算出されたバイアス成分bを予め記憶しておけば、この記憶したバイアス成分bに基づいて、角速度を補正することができる。よって、慣性センサ装置1は、角速度センサ2が真の角速度が変化する運動をしていても、角速度センサ2が出力する角速度に及ぼすバイアス成分の影響をより確実に軽減することができる。
【0034】
尚、検出時における角速度センサ2の真の角速度が同一である非反転姿勢及び反転姿勢の角速度y1及びy2の検出は、例えば、次のように行うことができる。即ち、角速度センサ2が非反転姿勢であり、且つ、静止状態であるときの角速度y1を検出し、角速度センサ2が反転姿勢であり、且つ、静止状態であるときの角速度y2を検出することで行うことができる。また、例えば、角速度センサ2を非反転姿勢にして等速運動を行う物体(例えば、一定の角速度で回転する物)に固定し、角速度センサ2が等速運動を行っている時に角速度y1を検出すると共に、角速度センサ2を反転姿勢にして当該物体に固定し、角速度センサ2が等速運動を行っている時に角速度y2を検出することで行うことができる。
【0035】
また、式(7)に示すように、バイアス成分bに基づいて補正された角速度に基づいて角速度演算値xが算出されるので、真の角速度に近い値を有する角速度演算値を算出することができる。よって、慣性センサ装置1は、真の角速度を高精度に算出することができる。
【0036】
尚、前述のように算出されたバイアス成分bに基づいて補正された角速度、及び、角速度演算値xは、補正手段8によって、モニタや他の装置等に出力されるようにしてもよい。
【0037】
また、本実施形態では、角速度y1及びy2に基づくバイアス成分bの算出及び算出したバイアス成分bの記憶手段7への入力は、慣性センサ装置1が行っているが、バイアス成分の算出は、慣性センサ装置1以外の装置や慣性センサ装置1のユーザが行ってもよい。
【0038】
また、角速度y1及びy2を検出するために、角速度センサ2の姿勢を非反転及び反転の状態とすることをユーザが行えば、慣性センサ装置1に角速度センサ2の反転機構を設ける必要が無い。反転機構を設けない構成とすれば、慣性センサ装置1のコストを抑え、慣性センサ装置1を簡素な構成とすることができる、
【0039】
また、本実施形態におけるジャイロ素子3には、MEMS技術で作成された振動子を有した面状のジャイロ素子が用いられているが、ジャイロ素子3に用いられるジャイロ素子は、本実施形態において用いられたジャイロ素子に限定されるものでない。さらに、本実施形態においては、慣性センサを角速度センサとしたが、慣性センサは加速度センサであってもよい。また、慣性センサに加速度センサを用いる場合は、慣性センサの出力値は加速度となる。また、慣性センサに加速度センサを用いる場合は、角速度演算値に代えて加速度演算値が補正手段8によって算出される。
【0040】
以上に説明した慣性センサ装置1は、方位計測用のジャイロコンパスなどの電子機器の角速度や加速度を算出するために、当該電子機器に実装することができる。
【実施例】
【0041】
上記の実施形態に係る慣性センサ装置1の補正手段8が式(7)によってバイアス成分bで補正した角速度(y−b)と、当該補正前の角速度y(即ち、ADコンバータ5が出力した角速度そのもの)との誤差を測定した。図2に、その測定結果を表したグラフを示す。図2のグラフの横軸は、真の角速度x、縦軸は、次式(8)によって算出された値である。
(D−ax)×100/出力範囲…(8)
【0042】
角速度(y−b)の誤差を測定する場合は、式(8)のDは(y−b)である。角速度y誤差を測定する場合は、式(8)のDはyである。又、出力範囲とは、慣性センサ装置1のADコンバータ5から出力される最大の角速度と最小の角速度との差である。ここでは、出力範囲が4Vである。また、図2における、角速度(y−b)及び角速度Yの誤差を示す曲線は最小二乗法を用いて作成したものである。
【0043】
図2に示すように、角速度(y−b)は、真の角速度xが0のときは略0である。即ち、バイアス成分bで補正することで、慣性センサ装置1から出力される角速度の原点通過性が向上する。また、角速度(y−b)は、真の角速度xの0を基準にして、真の角速度が正の値のときと負の値のときの誤差の大きさ(絶対値)がほぼ同一であるという対象性を有する。即ち、バイアス成分bで補正することで、慣性センサ装置1から出力される角速度は、回転方向によって誤差の大きさのばらつきが小さいという特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】図1は、本実施形態に係る慣性センサ装置の概略ブロック図である。
【図2】図2は、バイアス成分に基づいて補正された角速度と、補正されていない角速度との誤差を示す。
【図3】図3は、角速度センサが非反転姿勢のときと、反転姿勢のときとにおける角速度センサの出力値と、真の角速度との関係を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0045】
1 慣性センサ装置
2 角速度センサ
6 バイアス成分算出手段
7 記憶手段
8 補正手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
慣性センサと、
前記慣性センサの非反転姿勢における出力値をy1と、前記慣性センサの反転姿勢における出力値をy2とした時に、次式(1)によって算出される前記慣性センサの出力値に含まれるバイアス成分bを予め記憶する記憶手段と、
前記慣性センサの出力値を、前記記憶手段が記憶するバイアス成分bに基づいて補正する補正手段とを備えたことを特徴とする慣性センサ装置。
=(y1+y2)/2…(1)
【請求項2】
前記記憶手段が記憶するバイアス成分bを、前記(1)式によって算出するバイアス成分算出手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の慣性センサ装置。
【請求項3】
前記補正手段は、前記慣性センサの出力値を、前記記憶手段が記憶するバイアス成分bに基づいて補正すると共に、補正した出力値に基づいて角速度演算値又は加速度演算値を算出することを特徴とする請求項1又2に記載の慣性センサ装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載の慣性センサ装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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