説明

懸架装置および被懸架体装置

【課題】新たな壁面、あるいは壁面の一部を簡単に造作できるようにした懸架装置および内装壁板などの被懸架体装置を提供する。
【解決手段】前面板の前縁7が一段低く形成された押出し成形体からなり、かつ背面板の背面を室内の既存壁面に水平方向に固定させるようにした略H形若しくは開口部を上向きとした略コ形断面のレール状の懸架装置本体2と、装置本体2の背面板の内面より前方に突設された係止爪片8と、被懸架体の上部背面に固定される略逆L字形断面の取付片4と、取付片4の背面に突設され、かつその先端部の上面が係止爪片8の下面に係合する係合片14とを備え、係合片14を係止爪片8に係合することにより、取付片4に固定した被懸架体を装置本体2の前縁7と係止爪片8間に吊下状態に懸架させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸架装置およびこれを用いて吊下状態に固定される内装壁板などの被懸架体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
既存の室内の内装を変更したり、新たに長押や、腰板、壁板を取付ける場合には、従来では、釘打ちなどの半永久固定手段などにより固定している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
例えば、店舗など、販売品目や、季節などに応じて、内装を頻繁に変更したり、壁面に新たな機能を付与する場合には、前記のような半永久固定手段を用いたのでは、その都度既存の壁面を撤去し、新たな壁面を固定する必要があり、作業に手数がかかり、作業コストも高いものとなっていた。居住用の室内、学校など公共施設においても同様の問題がある。
【0004】
本発明は、以上の課題を解決するものであり、予め懸架装置を室内の既存壁面に固定しておくとともに、背面に該懸架装置に引掛け固定される取付片を介して内装壁板等の被懸架体を固定することにより、新たな壁面、あるいは壁面の一部を簡単に造作できるようにした懸架装置および内装壁板などの被懸架体装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明は、前面板の前縁7が一段低く形成された押出し成形体からなり、かつ背面板の背面を室内の既存壁面に水平方向に固定させるようにした略H形若しくは開口部を上向きとした略コ形断面のレール状の懸架装置本体2と、装置本体2の背面板の内面より前方に突設された係止爪片8と、被懸架体の上部背面に固定される略逆L字形断面の取付片4と、取付片4の背面に突設され、かつその先端部の上面が係止爪片8の下面に係合する係合片14とを備え、係合片14を係止爪片8に係合することにより、取付片4に固定した被懸架体を装置本体2の前縁7と係止爪片8間に吊下状態に懸架させるようにしたことを特徴とする懸架装置にある。
【0006】
前記係合片14は、下方向に傾斜状に突設され、その水平方向とした先端部15が、前記係止爪片8の下面に係合されることを特徴する。
【0007】
前記取付片4は、前記懸架装置本体2と略同寸の長尺形状とされたことを特徴する。
【0008】
また、前記取付片4は、前記懸架装置本体2よりも短寸とされた複数の取付片により構成させることもできる。
【0009】
上記本発明によれば、被懸架体に固定した取付片4を、予め既存壁面に固定した懸架装置本体2に係合固定させることにより、被懸架体を着脱自在に既存壁面に固定させることができる。この時、被懸架体の自重が、係合片14を介して係止爪片8の下面に掛かることから、その係合固定状態が安定する。また、係合片14を下方向に傾斜状に突設させることにより、被懸架体に固定した取付片4の懸架装置本体2内への挿入長さを短くでき、その係合固定作業が容易となる。
【0010】
前記装置本体2の背面板の内面上部には上下1対の突片9が水平方向に突設され、該上下1対の突片9の間を、固定具Bによる、既存壁面に対する固定部とするとともに、略コ字形断面をなすカバー10により、固定部を覆うことを特徴とする。
【0011】
カバー10の存在により、美観が保持されるだけでなく、装置本体2の開口上部内に電気等の配線を収納させた場合、配線が固定具Bに引っ掛かるということがない。
【0012】
前記装置本体2の底板の下部に略溝状のハンガーレール部11を一体に有していることを特徴とする。
ハンガーレール部11には、照明具19やランナーフック20等を吊り下げ支持することができる。
【0013】
前記装置本体2の上部開口は、幅方向に長手の蓋部材5で覆われ、この蓋部材5の下面には、前記取付片4の背面に当接する前当接片16及び前記カバー10前面に当接する後当接片17が一体に形成されていることを特徴とする。
【0014】
カバー10の存在により、装置本体2の上部開口からゴミが侵入することを防止できる他、本懸架装置を、既存内壁面の中段部に設けて、腰板などを懸架させる場合には、美観を保持させることができる。
カバー10を用いずに、装置本体2の上部開口に洋服などのハンガーを掛けて使用することもできる。
【0015】
前記被懸架体の背面に、幅方向に長手の取付部材6aを介して弾性の間隔保持部材6を設け、該間隔保持部材6の先端を既存壁面に当接し、被懸架体の下部と、既存壁面間の間隔を保持するようにしたことを特徴とする。
これにより、被懸架体の取付状態が安定する。
【0016】
本発明は、上記懸架装置を用いて前記既設壁面に懸架される前記被懸架体としての被懸架体装置を特徴としている。被懸架体の背面上部には前記取付片4が固定され、既存壁面には水平方向に前記懸架装置本体2が固定され、被懸架体を取付片4を介して懸架装置本体2に懸架させる。
【0017】
前記被懸架体として内装壁板又は長押を懸架させる場合には、懸架装置本体2を既設内壁面の上部に設ける。また、被懸架体として腰板を懸架させる場合には、懸架装置本体2を既設内壁面の中位部に設ける。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、装置本体2を既存壁面に固定しておく一方、取付片4を被懸架体の背面に固定しておけば、被懸架体の取付は、係合片14を装置本体2の係止爪片8に引掛け係止するだけで、ワンタッチで行うことができ、また撤去作業も容易に行うことができる。この時、被懸架体の自重が、係合片14を介して係止爪片8の下面に掛かることから、その係合固定状態が安定する。また、係合片14を下方向に傾斜状に突設させることにより、被懸架体に固定した取付片4の懸架装置本体2内への挿入長さを短くでき、その係合固定作業が容易となる。
【0019】
また、装置本体2のねじ止め固定部がカバー10によって隠されるため、見栄えが良好となり、装置本体2の開口上部に配線を収納させる場合にも固定具が邪魔になるということがない。
【0020】
本発明によれば、ハンガーレール部11内に洋服や帽子など吊り下げ用のランナーフック20などを吊下げ支持することができる。また、蓋部材5を省略した装置本体2の開口上部に洋服や帽子などのハンガーなどを懸架させ、装置本体2の長手方向の任意の位置に吊下げることもできる。
【0021】
本発明によれば、蓋部材の存在により、懸架装置を見下ろすような用途、例えば腰板として使用する場合に装置本体2の上部内側が覆われるため、見栄えがよく、ホコリ等の侵入がない。
【0022】
本発明によれば、弾性の間隔保持部材6を用いることにより、例えば内壁板のように、既存壁面2を覆うような縦方向に長い被懸架体を取付ける場合に、その下部側を間隔保持部材6によって安定支持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1はパネル等、被懸架体取付用の各部品構成を示し、図2(a)〜(f)はその取付手順を示している。各図において、取付用部品は、いずれもアルミなどの押出し成形体からなるレール状のものであり、家屋の既存内壁面(以下壁面と略称する)1の水平方向に沿って木ねじ等の固定具Bを介して取付けられる懸架装置本体2と、被懸架体3の上部背面に固定具Bを介して取付けられる取付片4と、被懸架体3の上端および装置本体2の上部を覆う蓋部材5、並びに被懸架体3が縦長の場合には、その背面下部に略断面コ字形の取付部材6aを介して取付けられ、後端が壁面に当接するゴムなどの中空押出し成形体からなる弾性間隔保持部材6(図2では省略)を備えている。取付部材6aは、凸字状など任意の形状とするこができる。
【0024】
装置本体2は、断面略H形乃至開口部を上向きとした断面略コ形をなし、その前面板2Aの前縁部7は、背面板2Bの上縁より一段と低く形成されており、前縁部7よりやや低めの位置において、装置本体2背面板2Bの内側には下向きの爪部を形成した係止爪片8が長手方向に沿って水平に形成されている。また背面板2Bの内側において前縁部7より高い位置には上下1対の突片9が突設され、両突片9で囲われた内側をねじ固定具Bの取付位置としており、この部分は、固定具Bにより装置本体2を壁面1に固定した後、内向きの爪部を形成した断面略コ字形のカバー10を係合することによって隠される(図2(a),(b)参照)。また装置本体2の底板2Cの下部にはその長手方向に沿ってあり溝状のハンガーレール部11が一体に形成されている。
【0025】
取付片4は、断面略L字形をなすものであり、その背面には、装置本体2の前縁部7上に設置される、係合片14の水平基片12と、基片12の後部に下方に向けて傾斜状態に一体化された傾斜状の係合片14と、係合片14の後端に一体化された上向きの爪部を設けた先端部15とを備え、取付片4を被懸架体3にねじ固定具Bを介して固定した後、その基片12を装置本体2の前縁部7に接した状態で被懸架体3ごと後傾させ、その先端部15を装置本体2の係止爪片8の下面に係合することによって、被懸架体3の壁面1への取付が完了する(図2(c)〜(e)参照)。
【0026】
その後、必要に応じて蓋部材5を被懸架体3および装置本体2の上面に取付けることにより、取付作業を完了する(図2(f)参照)。蓋部材5の下部前方側には、取付片4の垂直部に接する垂直な前当接片16が突設され、後部側には、カバー10に摺接する傾斜後当接片17が突設されており、これら前当接片16、後当接片17の係合作用により、蓋部材5を安定的に設置できるようにしている。なお、この蓋部材5は、必要に応じて固定具Bを介して被懸架体3側に連結することもできる。
【0027】
以上の構成において、被懸架体3は、木材単板、化粧合板などの木質材料であり、例えば長押などの場合には檜の単板または合板が用いられるほか、腰板や壁板などの場合、縦または横方向に多数接ぎ合わせた化粧合板などを用いることができる。被懸架体3として、看板や額縁など業務用又は自家用の板体を用いることもできる。
【0028】
図3は、以上の構造における適用例を示している。図3(a)は長押に適用した例を示すものであり、この場合は、被懸架体3の高さ寸法は装置本体2の高さ寸法にほぼ等しく、室内の比較的高い位置に横設されるものであるため、蓋部材5は不要となる。蓋部材5を省略した、装置本体2レールの上部開口には、洋服等のハンガーを掛けることができる。また、下部にはハンガーレール部11が露出するが、この部分に後述する照明具19、ランナーフック20などを取付けても良い。
【0029】
図3(b)は、被懸架体3を化粧用の腰板に適用した例を示すものであり、この場合には、上から見下ろすため蓋部材5を必要とする。また装置本体2の上部閉空間内に、1〜複数のコード、電源ケーブルなどの配線18を引込むことによって配線の露出露出による見栄え低下を防止できるほか、被懸架体3の下部と壁面1の間に形成される空間内には、照明具19を配置することが可能であり、被懸架体3によってシェードされた間接照明により、室内をより意匠的な空間として演出することができる。
【0030】
図3(c)は被懸架体3を縦方向の長さが長い壁板又は腰板に適用した場合を示すものである。この場合においては、被懸架体3の下部背面には固定具Bによって固定される略コ字形レール状の取付部材6aを介して間隔保持部材6が取付けられ、その後端を壁面1に当接させていることにより、鉛直度を安定的に保持している。なお、本例では、上部側を蓋部材5で覆っているとともに、下部側も固定具Bを介して固定された同一断面の蓋部材5で覆った場合を示している。上部蓋部材5の内部は上記配線18の収納空間として利用できる。尚、被懸架体3の縦方向長さが室内の高さ方向のほぼ全長に亘る場合には、これら蓋部材5を必ずしも必要としない。蓋部材5を省略した、装置本体2レールの上部開口には、洋服等のハンガーを掛けることができる。
【0031】
図3(d)は、被懸架体3を洋服掛け兼用の腰板に適用した場合を示すものであり、この場合には、ランナーフック20をハンガーレール部11に嵌合し、紙面と直交する長手方向移動可能に配置している。また、被懸架体3の表面側にはねじ込み式のハンガーフック21を突設している。本例では、 被懸架体3をハンガーフック用の取付用壁として用いるのに好適である。
【0032】
以上各実施形態に述べた被懸架体3の縦寸法は、その用途に応じて種々変更でき、またその表面の意匠形状も自由に設定できるので、特に商品や、季節に応じて売場雰囲気や什器の配置変更をその都度要求される店舗用の仮設内装材として好適である。また、各種看板や額縁など、種々の用途に適応できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る懸架装置の各部品構成を示す分解斜視図である。
【図2】(a)〜(f)は同取付手順を示す側断面図である。
【図3】(a)〜(d)は適用例を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 既存壁面
2 懸架装置本体、2A 前面板、2B 背面板、2C 底板
3 被懸架体
4 取付片
5 蓋部材
6a 取付部材
6 間隔保持部材
7 前縁部
8 係止爪片
9 突片
10 カバー
11 ハンガーレール部
12 基部
14 係合片
15 先端部
16 前当接片
17 後当接片
18 配線
19 照明具
20 ランナーフック
1 ハンガーフック
B 固定具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面板の前縁(7)が一段低く形成された押出し成形体からなり、かつ背面板の背面を室内の既存壁面に水平方向に固定させるようにした略H形若しくは開口部を上向きとした略コ形断面のレール状の懸架装置本体(2)と、装置本体(2)の背面板の内面より前方に突設された係止爪片(8)と、被懸架体の上部背面に固定される略逆L字形断面の取付片(4)と、取付片(4)の背面に突設され、かつその先端部の上面が係止爪片(8)の下面に係合する係合片(14)とを備え、係合片(14)を係止爪片(8)に係合することにより、取付片(4)に固定した被懸架体を装置本体(2)の前縁(7)と係止爪片(8)間に吊下状態に懸架させるようにしたことを特徴とする懸架装置。
【請求項2】
前記係合片(14)は、下方向に傾斜状に突設され、その水平方向とした先端部(15)が、前記係止爪片(8)の下面に係合されることを特徴する請求項1記載の懸架装置。
【請求項3】
前記取付片(4)は、前記懸架装置本体(2)と略同寸の長尺形状とされたことを特徴する請求項1又は2記載の懸架装置。
【請求項4】
前記取付片(4)は、前記懸架装置本体(2)よりも短寸とされた複数の取付片よりなることを特徴する請求項1又は2記載の懸架装置。
【請求項5】
前記装置本体(2)の背面板の内面上部には上下1対の突片(9)が水平方向に突設され、該上下1対の突片(9)の間を既存壁面に対する固定部とするとともに、略コ字形断面をなすカバー(10)により、固定部を覆うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の懸架装置。
【請求項6】
前記装置本体(2)の底板の下部に略溝状のハンガーレール部(11)を有していることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の懸架装置。
【請求項7】
前記装置本体(2)の上部開口は、幅方向に長手の蓋部材(5)で覆われ、この蓋部材(5)の下面には、前記取付片(4)の背面に当接する前当接片(16)及び前記カバー(10)前面に当接する後当接片(17)が一体に形成されていることを特徴とする請求項5に記載の懸架装置。
【請求項8】
前記被懸架体の背面に、幅方向に長手の取付部材(6a)を介して弾性の間隔保持部材(6)を設け、該間隔保持部材(6)の先端を既存壁面に当接し、被懸架体の下部と、既存壁面間の間隔を保持するようにしたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の懸架装置。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれかに記載された懸架装置を用いて前記既設壁面に懸架される前記被懸架体であって、被懸架体の背面上部には前記取付片(4)が固定され、既存壁面には水平方向に前記懸架装置本体(2)が固定され、被懸架体を取付片(4)を介して懸架装置本体(2)に懸架させることを特徴とする被懸架体装置。
【請求項10】
前記被懸架体は、内装壁板、内装腰板又は長押などの内装壁材であることを特徴とする請求項9に記載の被懸架体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−281470(P2009−281470A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133217(P2008−133217)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(506241891)川木建設株式会社 (4)
【Fターム(参考)】