説明

懸架部品の支持構造

【課題】板厚を増すことなく強度を高めることが可能な懸架部品の支持構造を提供すること。
【解決手段】車体の前後方向に延びる左右一対のアーム部(91L、91R)と、左右一対のアーム部を連結するブリッジ部(92)と、サスペンションの下端側が連結されるようにブリッジ部に設けられたブラケット部(93)と、を有し、ブラケット部を、サスペンションの他端側を挟むようにして前後方向に延びる左右一対の締結部(93A、93B)と、左右一対の締結部の一端部を接続する接続部(93C)と、左右一対の締結部の他端部からブリッジ部の左右両端部に向けて延びる左右一対の延長部(93D、93E)とを含む構成にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両において用いられる懸架部品の支持構造に関し、特に自動二輪車における懸架部品の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車のサスペンション構造として、車体を構成するフレームとフレームに連結されたリヤスイングアームとの間に1本のサスペンションを配置する方式(モノサスペンション)が実用化されている(例えば、特許文献1参照)。モノサスペンションにおいて、フレーム側にはサスペンション連結用の上部ブラケット(支持部)が設けられ、リヤスイングアーム側にはサスペンション連結用の下部ブラケットが設けられている。これらブラケットに対してボルト等の締結部材でサスペンションが連結されることにより、後輪が路面から受ける衝撃をサスペンションによって吸収できるようになっている。
【0003】
リヤスイングアームは、一対のアームをブリッジ部によって連結して構成される。ブリッジ部の上面には、上述した下部ブラケットが立設されている。下部ブラケットは、前後方向に延びる左右一対の側部と、一対の側部の後端部を接続する後部とによって上面視略U字型(略コ字型)に構成されている。一対の側部には、サスペンションの下部に形成された孔に対応して、連結用の孔が形成されている。この場合、例えば、一対の側部間にサスペンションの下部を配置し、一方の側部からボルトを差し込み、他方の側部から突出したネジ部分にナットを締め込むことで、サスペンションがリヤスイングアームに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−114711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車輪を支持するスイングアームには、上下方向の力だけでなく前後方向の力や捩れ方向の力(捩れ荷重)が車輪から加わる。これらの外力によりブリッジ部、下部ブラケット及びその周辺部分には大きな負荷が掛かるため、ブリッジ部、下部ブラケット及びその周辺部分の強度を高める必要がある。ブリッジ部を補強すると共に下部ブラケット自体の強度を高める方法としては、下部ブラケットを構成する鋼板の板厚を増す方法がある。
【0006】
しかしながら、上述のように単純に下部ブラケットの板厚を増す方法では、ボルトの締め込みによる下部ブラケットの撓み量が減少して、下部ブラケットとサスペンションとの間に隙間が生じてしまうおそれがある。このように下部ブラケットとサスペンションとの間に隙間が生じると、サスペンションと下部ブラケットとが密着しなくなり、サスペンションにがたつきが生じて乗り心地が低下する。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、板厚を増すことなく強度を高めることが可能な懸架部品の支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の懸架部品の支持構造は、車体を構成するフレームと、前記フレームに揺動可能に連結されて車輪を支持するスイングアームと、一端側が前記フレームに連結され、他端側が前記スイングアームに連結されて前記車輪から受ける衝撃を吸収するサスペンションと、を備え、前記スイングアームは、車体の前後方向に延びる左右一対のアーム部と、前記左右一対のアーム部を連結するブリッジ部と、前記サスペンションの他端側が連結されるように前記ブリッジ部に設けられたブラケット部と、を有し、前記ブラケット部は、前記サスペンションの他端側を挟むようにして前後方向に延びる左右一対の締結部と、前記左右一対の締結部の一端部を接続する接続部と、前記左右一対の締結部の他端部から前記ブリッジ部の左右両端部に向けて延びる左右一対の延長部とを含むことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、ブラケット部が、左右一対の締結部のそれぞれの他端部からブリッジ部の左右両端部に向けて延びる左右一対の延長部を含んで構成されているため、この延長部によってブリッジ部及びブラケット部の強度が高められ、スイングアームの強度が高められる。その結果、板厚を増すことなく強度を高めることが可能な懸架部品の支持構造を提供できる。
【0010】
本発明の懸架部品の支持構造において、前記左側の延長部は、前記左側の締結部の他端部から前記ブリッジ部の左前方の端部まで車幅方向斜めに延び、前記右側の延長部は、前記右側の締結部の他端部から前記ブリッジ部の右前方の端部まで車幅方向斜めに延びていることが好ましい。この構成によれば、左右一対の延長部がブリッジ部の左右前方の端部まで車幅方向斜めに延びているため、ブリッジ部及びブラケット部が斜め方向に相互に補強され、これらの剛性をさらに高めることができる。
【0011】
本発明の懸架部品の支持構造において、前記接続部は、前記ブリッジ部において略後縁部に設けられていることが好ましい。この構成によれば、車幅方向に関する補強部材として機能する接続部がブリッジ部の略後縁部に配置されることで、捩れ方向の力に対する剛性をさらに高めることができる。
【0012】
本発明の懸架部品の支持構造において、前記左右一対の締結部の他端部は、いずれも前記ブリッジ部において略前縁部に設けられ、前記左右一対の延長部は、前記ブリッジ部の略前縁部に沿うように設けられていることが好ましい。この構成によれば、ブラケット部の締結部をブリッジ部の前端部から後端部まで長く配置することができるので、ブリッジ部及びブラケット部の剛性をさらに高めることができる。
【0013】
本発明の懸架部品の支持構造において、前記接続部は、前記接続部の上端部から下方に向かう切り欠き部を有し、前記一対の締結部は、前記サスペンションに対する締結具が挿入される締結孔を有し、前記切り欠き部の下端部は、前記締結孔より下方に設けられていることが好ましい。この構成によれば、接続部の上端部から下方に向かう切り欠き部を有し、切り欠き部の下端部は、締結孔より下方に設けられているので、ブラケット部を締結部材で締め付けることにより、ブラケット部を締め付け方向に僅かに撓ませることができる。その結果、サスペンションとブラケット部との隙間を十分に小さくして乗り心地の悪化を防ぐことができる。
【0014】
本発明の懸架部品の支持構造において、前記切り欠き部は、下方に向かうにつれて幅が狭くなるように設けられていることが好ましい。この構成によれば、切り欠き部は、下方に向かうにつれて幅が狭くなるように設けられているため、下方においてブラケット部の剛性を高めつつ、上方において適切に撓ませることができる。その結果、ブリッジ部及びブラケット部の剛性を高めつつ、サスペンションとブラケット部との隙間を十分に小さくして乗り心地の悪化を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、板厚を増すことなく強度を高めることが可能な懸架部品の支持構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態に係る自動二輪車の外観を示す左側面図である。
【図2】本実施の形態に係る懸架部品の支持構造を示す左側面図である。
【図3】本実施の形態に係る懸架部品の支持構造を示す背面図である。
【図4】本実施の形態に係る下部ブラケット部の周辺構成を示す斜視図である。
【図5】本実施の形態に係る下部ブラケット部の周辺構成を示す平面図である。
【図6】本実施の形態に係る下部ブラケット部の周辺構成を示す断面図である。
【図7】下部ブラケット部にサスペンションを連結した状態を示す模式図である。
【図8】変形例に係る下部ブラケット部の周辺構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明に係る懸架部品の支持構造をネイキッドタイプの自動二輪車に適用した例について説明するが、適用対象はこれに限定されることなく変更可能である。例えば、本発明に係る懸架部品の支持構造を、他のタイプの自動二輪車、四輪車等に適用しても良い。
【0018】
図1を参照して、本実施の形態に係る自動二輪車全体の概略構成について説明する。図1は、本実施の形態に係る自動二輪車の左側面図である。図1においては、車体前方を矢印FR、車体後方を矢印REでそれぞれ示す。
【0019】
図1に示すように、自動二輪車1は、パワーユニット、電装系等の各部を搭載する鋼製又はアルミ合金製の車体フレーム2に車体外装としての各種カバーを装着して構成されている。車体フレーム2のメインフレーム21は、前端に位置するヘッドパイプ22から後方に向けて左右に分岐し、後下方に傾斜して延在する。メインフレーム21の下方には、エンジン3が吊下げられるようにして搭載される。メインフレーム21の上部には、燃料タンク41が配置される。燃料タンク41の後方には、メインフレーム21の後部に接続された左右一対のシートレール(不図示)の上部にライダーシート42a及びピリオンシート42bが連設される。
【0020】
シートレールは、メインフレーム21の後部から後上方に傾斜して延出し、補強用のシートピラー23と共にライダーシート42a及びピリオンシート42bを支持する。ピリオンシート42bの左右両側のリヤカバー25には、同乗者用のグラブバー26が設けられている。ライダーシート42a及びピリオンシート42bの下方には、それぞれに対応してフットレスト43、44が設けられている。車体左側の運転者用のフットレスト43の前方には、変速用のチェンジペダル45が設けられ、車体右側の運転者用のフットレスト(不図示)の前方には、後輪5用のブレーキペダル(不図示)が設けられている。
【0021】
メインフレーム21の前部上側には、ヘッドパイプ22に設けられたステアリングシャフト(不図示)を介して一対のフロントフォーク7が左右に回転可能に支持されている。一対のフロントフォーク7には前輪緩衝用のサスペンションが内装されている。フロントフォーク7の上部にはハンドル8が取り付けられている。ハンドル8には、車体左側においてグリップ81及びクラッチレバー76が設けられ、車体右側においてアクセルグリップ(不図示)及びブレーキレバー(不図示)が設けられている。
【0022】
フロントフォーク7の前面には、ヘッドランプ65が設置され、ヘッドランプ65の両側方に左右一対のフロントウィンカ66が設置される。ヘッドランプ65の上方には、速度、エンジン回転数、燃料残量等を表示するメータユニット67が設置されている。フロントフォーク7の下部には、前輪6が回転可能に支持されると共に、前輪6の上部を覆うフロントフェンダ61が配置される。前輪6には、ブレーキディスク62とブレーキディスク62を挟持するキャリパー63が設けられている。
【0023】
メインフレーム21の後部下側には、スイングアーム9が上下動可能に連結されており、メインフレーム21及びスイングアーム9間には、後輪緩衝用のサスペンション10(図1において不図示、図2、図3等参照)が取り付けられている。スイングアーム9の後部には、後輪5が回転可能に支持される。後輪5には、ドリブンスプロケット91が設けられており、ドリブンスプロケット91とエンジン3側のドライブスプロケットとはドライブチェーン92により連結されている。後輪5は、ドライブチェーン92を介してエンジン3からの動力が伝達されることで回転駆動される。
【0024】
ドライブチェーン92の上方は、チェーンカバー93により覆われており、後輪5の上方は、ピリオンシート42bの後方に配置されたリヤフェンダ51により覆われている。リヤフェンダ51の後面には、左右一対のリヤウィンカ52が設置され、リヤウィンカ52の後方にブレーキランプ53及びライセンスランプ54が設置されている。また、車体フレーム2等は、車体外装としてハーフカウル27、サイドカバー28、リヤカバー25等によっておおわれており、全体的な統一感を有するように構成されている。
【0025】
エンジン3は、例えば、並列4気筒エンジン(直列4気筒エンジン)と変速機とからなり、横置き状態で車体フレーム2に懸架される。エンジン3には、インテークパイプ(不図示)を介して空気が取り込まれ、燃料噴射装置にて空気と燃料とが混合されて燃焼室に供給される。燃焼室内での燃焼後のガスは、エンジン3から下方に延出されたエキゾーストパイプ31を経てマフラ32から排気される。エンジン3の前方には、エンジン3各部からの熱を発散してエンジン3を冷却するためのラジエータ33が設けられている。
【0026】
次に、図2及び図3を参照して、本実施の形態に係る懸架部品の支持構造の構成概略について説明する。図2は、自動二輪車1におけるサスペンション10の取り付け部分周辺を示す左側面図であり、図3は、その背面図である。
【0027】
図2及び図3に示すように、メインフレーム21は、後部において下方に延びる左フレーム21L及び右フレーム21Rを含んでいる。左フレーム21Lの上部には、後方に延びる左上フレーム21LUが結合されている。左フレーム21L及び左上フレーム21LUには、左下前方から左上後方に向かって延びる左後フレーム21LRが結合されている。同様に、右フレーム21Rの上部には、後方に延びる右上フレーム21RUが結合されている。右フレーム21R及び右上フレーム21RUには、右下前方から右上後方に向かって延びる右後フレーム21RRが結合されている。
【0028】
左フレーム21Lと左上フレーム21LUとが結合される領域の近傍、及び右フレーム21Rと右上フレーム21RUとが結合される領域の近傍には、サスペンション10の上部を支持する支持部211が結合されている。支持部211は車幅方向に延在するように設けられており、その下面は略平坦になっている。支持部211の下面には、サスペンション10の上部を連結する上部ブラケット部212が設けられている。上部ブラケット部212は、略U字型(略コ字型)の形状を有しており、車体の上下方向に延在する板状の側部212A、212Bと、側部212A、212Bの上端部を繋ぐように車幅方向(左右方向)に延在する板状の上部212Cとを含んで構成されている。側部212A、212Bには、それぞれ締結部材であるボルトを左右に挿通できるように孔(不図示)が形成されている。
【0029】
左フレーム21Lと左後フレーム21LRとが結合される領域の近傍には、スイングアーム9を支持するための左支持部213Lが設けられている。また、右フレーム21Rと右後フレーム21RRとが結合される領域の近傍には、スイングアーム9を支持するための右支持部213Rが設けられている。この左支持部213L及び右支持部213Rにスイングアーム9の前端部が連結されることで、後輪5が支持されるスイングアーム9の後端部は、前端部を支点に上下動するようになっている。
【0030】
スイングアーム9は、左アーム部91L及び右アーム部91Rと、左アーム部91L及び右アーム部91Rを結合するブリッジ部92と、ブリッジ部92の上面に設けられてサスペンション10の下部を支持する下部ブラケット部93とを含む。左アーム部91L及び右アーム部91Rの前端部には、スイングアーム9を左支持部213L及び右支持部213Rと連結するための連結軸(不図示)が設けられている。左アーム部91L及び右アーム部91Rの後端部には後輪5が回転可能に支持されている。
【0031】
ブリッジ部92は、左アーム部91L及び右アーム部91Rの間において、車幅方向に延在するように設けられている。ブリッジ部92の上面は略平坦になっており、この上面には、下部ブラケット部93が溶接により固定されている。下部ブラケット部93は、車体の前後方向に延在する板状の側部(締結部)93A、93Bと、側部93A、93Bの後端部を繋ぐように車幅方向に延在する板状の後部(接続部)93Cとを含む。側部93A、93Bには、それぞれ締結部材であるボルトを左右に挿通できるように孔(締結孔)H1、H2(図4参照)が設けられている。
【0032】
サスペンション10は、路面からの衝撃を吸収するコイル状のスプリング101と、スプリング101の振動を減衰するショックアブソーバー(ダンパー)102とで構成されている。ショックアブソーバー102は、オイル等の流体が封入される外筒102Aと、外筒102Aに対して上下動するピストンロッド102Bとを含む。外筒102Aの上端部には、メインフレーム21と連結するための上側連結部102Cが設けられている。上側連結部102Cには、締結部材であるボルトを左右に挿通できる孔(不図示)が形成されている。ピストンロッド102Bの下端部には、スイングアーム9と連結するための下側連結部102Dが設けられている。下側連結部102Dには、締結部材であるボルトを左右に挿通できる孔(不図示)が形成されている。
【0033】
上述した上部ブラケット部212には、ショックアブソーバー102の上側連結部102Cが連結されている。上部ブラケット部212と上側連結部102Cとの連結は、例えば、次のような方法で行われる。まず、上部ブラケット部212の側部212Aと側部212Bとの間に上側連結部102Cを配置し、側部212A、212Bの孔と、上側連結部102Cの孔とが略同一線上に配置されるように互いの位置を調節する。そして、側部212A側から、上側連結部102Cの孔を通じて212B側に向かうようにボルトを差し込む。その後、側部212B側から突出した当該ボルトにナットを締め込む。このようにして、上部ブラケット部212にショックアブソーバー102の上側連結部102Cが連結される。
【0034】
また、上述した下部ブラケット部93には、ショックアブソーバー102の下側連結部102Dが連結される。下部ブラケット部93と下側連結部102Dとの連結も、上部ブラケット部212と上側連結部102Cとの連結と同様の方法で行われる。すなわち、まず、下部ブラケット部93の側部93Aと側部93Bとの間に下側連結部102Dを配置し、側部93A、93Bの孔H1、H2と、下側連結部102Dの孔とが略同一線上に配置されるように互いの位置を調節する。そして、側部93A側から、下側連結部102Dの孔を通じて側部93B側に向かうようにボルトを挿通する。その後、側部93B側から突出した当該ボルトにナットを締め込む。このようにして、下部ブラケット部93にショックアブソーバー102の下側連結部102Dが連結される。
【0035】
次に、図4〜図6を参照して、本実施の形態に係る懸架部品の支持構造の詳細について説明する。図4は、本実施の形態に係る下部ブラケット部の周辺構成を示す斜視図であり、図5は、その平面図である。図6は、図5のAA矢視断面図である。
【0036】
上述したように、スイングアーム9は、前後方向に延びる左アーム部91L及び右アーム部91Rを結合するブリッジ部92を有している。図4〜図6に示すように、ブリッジ部92は、鋼板がプレス加工された上側部材921と下側部材922とで構成されている。上側部材921は、ブリッジ部92の上面を構成する上部921Aと、ブリッジ部92の前縁部の一部を構成する前上部921Bと、ブリッジ部92の後縁部の一部を構成する後上部921Cとを含んで構成されている。下側部材922は、ブリッジ部92の下面を構成する下部922Aと、ブリッジ部92の前縁部の一部を構成する前下部922Bと、ブリッジ部92の後縁部の一部を構成する後下部922Cとを含んで構成されている。
【0037】
上側部材921を構成する前上部921B及び後上部921Cの平面形状は略円孤状になっており、下側部材922を構成する前下部922B及び後下部922Cの平面形状も略円孤状になっている。これに対応して、上部921A及び下部922Aは、円弧状の対向辺を有する上面視略台形状の平面形状を有している。ブリッジ部92は、上側部材921に対して下側部材922が下方から嵌め込まれることで柱状に構成されている。上部921A及び下部922Aの平面形状により、ブリッジ部92は、車幅方向の中央から端部に向かうにつれて前後方向の幅が大きくなっている。
【0038】
ブリッジ部92の上部921Aの上面は、略平坦に構成されている。そして、上部921Aの上面には、下部ブラケット部93が溶接されている。具体的には、下部ブラケット部93の下面全体が上部921Aの上面に溶接されている。下部ブラケット部93は、板状の側部(締結部)93A、93Bと、車幅方向に延在する板状の後部(接続部)93Cと、側部93Aの前端部からブリッジ部92の左の端部まで延びる左前部(延長部)93Dと、側部93Bの前端部からブリッジ部92の右の端部まで延びる右前部(延長部)93Eとで構成されている。
【0039】
側部93A、93Bは、それぞれ車幅方向に略垂直な主表面を有する板状の形状を有している。すなわち、側部93A、93Bは、その主表面が上部921Aの上面に対して略垂直になるように配置されている。また、側部93A、93Bは、互いの主表面が略平行になっている。側部93A、93Bの主表面には、それぞれ、サスペンション10を連結するためのボルト(締結具)を挿通できるように、孔(締結孔)H1、H2が形成されている。側部93A、93Bは、その後端部がブリッジ部92の後縁部(上部921Aの後縁部)に位置するように配置されている。
【0040】
後部93Cは、側部93A、93Bの主表面に対して略垂直な主表面を有する板状の形状を有している。後部93Cは、その左端部において側部93Aの後端部と接続されており、右端部において側部93Bの後端部と接続されている。つまり、後部93Cは、側部93A、93Bの後端部においてこれらを相互に接続するように配置されている。後部93Cは、ブリッジ部92の後縁部(すなわち、上部921Aの後縁部)に配置されている。後部93Cは、その上端から下方に向かう切り欠き部C1を有している。切り欠き部C1は、下方に向かって車幅方向の幅が狭くなるように形成されており、切り欠き部C1の形状は略V字状になっている。また、図6に示すように、切り欠き部C1の下端LPは、孔H1、H2より下方に設けられている。これにより、上部921Aの上面から切り欠き部C1の下端LPまでの距離は、上部921Aの上面から孔H1、H2までの距離より短くなっている。
【0041】
左前部93D及び右前部93Eは、その主表面が上部921Aの上面に対して略垂直な板状の形状を有している。左前部93Dは、側部93Aの前端部からブリッジ部92の左前方の端部まで車幅方向に対して斜めに延在している。右前部93Eは、側部93Bの前端部からブリッジ部92の右前方の端部まで車幅方向に対して斜めに延在している。すなわち、左前部93D及び右前部93Eは、側部93A、93Bのそれぞれの前端部からブリッジ部92の左右の端部まで延びている。また、左前部93D及び右前部93Eは、側部93A、93Bとの接続部分から前方に向かって高さが徐々に低くなる形状を有している。
【0042】
このように、本実施の形態に係る懸架部品の支持構造では、下部ブラケット部93が、側部93A、93Bのそれぞれの前端部からブリッジ部92の左右の端部まで延びる左前部93D及び右前部93Eを有している。また、下部ブラケット部93は下面全体においてブリッジ部92に固定されている。このため、左前部93D及び右前部93Eによってブリッジ部92及び下部ブラケット部93の強度を相互に高めることができる。また、左前部93D及び右前部93Eがブリッジ部の前端部まで車幅方向に対して斜めに延びているため、ブリッジ部92及び下部ブラケット部93が斜め方向において相互に補強され、これらの剛性をさらに高めることができる。また、車幅方向に関する補強部材として機能する後部93Cがブリッジ部92の後縁部に配置されているため、捩れ方向の力に対する剛性をさらに高めることができる。このように、本実施の形態によれば、板厚を増すことなく強度を高めることが可能な懸架部品の支持構造を提供できる。
【0043】
次に、図7を参照して、本実施の形態に係る懸架部品の支持構造の効果をさらに説明する。図7は、下部ブラケット部にサスペンションを連結した状態を示す模式図である。なお、図7においては、下部ブラケット部として側部のみを示し、他の構成については省略している。
【0044】
図7Aは、本実施の形態に係る下部ブラケット部93に対してサスペンション10を連結した状態を示している。下部ブラケット部93に対してサスペンション10を連結する場合、例えば、側部93A側から、側部93Aの孔H1、下側連結部102Dの孔、及び側部93Bの孔H2の順にボルト94Aを挿通し、側部93B側においてボルト94Aの先端部にナット94Bをねじ込む。
【0045】
本実施の形態に係る下部ブラケット部93は、後部93Cに切り欠き部C1が設けられており、また、切り欠き部C1の下端LPは孔H1、H2より下方に位置しているため、側部93A、93Bの上側(特に、孔H1、H2より上側)は左右に撓みやすくなっている。このため、ボルト94A及びナット94Bによって側部93A、93Bが車幅方向の内向きに締め付けられると、側部93A、93Bは内向きに撓んで下側連結部102Dと密着する。その結果、サスペンション10と下部ブラケット部93とがより密着して乗り心地の悪化を防ぐことができる。
【0046】
また、切り欠き部C1は、下方に向かうにつれて幅が狭くなるように設けられているため、下方においては下部ブラケット部92の剛性を十分に確保しつつ、上方においてはボルト94A及びナット94Bの締め付けにより適切に撓ませることができる。その結果、ブリッジ部92及びブラケット部93の剛性を十分に確保しつつ、サスペンション10と下部ブラケット部93とをより密着させて乗り心地の悪化を防ぐことができる。
【0047】
図7Bは、比較例としての下部ブラケット部193に対してサスペンション10を連結した状態を示している。下部ブラケット部193は、本実施の形態に係る下部ブラケット部93と異なり切り欠き部C1を有していないものとする。また、下部ブラケット部193は、側部193A、193Bの前端部からブリッジ部の左右両端に向けて補強用の延長部を延ばす代わりに、板厚を増して剛性を高めるているものとする。サスペンション10の連結方法は図7Aの場合と同様である。
【0048】
比較例に係る下部ブラケット部193は、切り欠き部C1を有しておらず、また、剛性を高めるために板厚を増している。このため、ボルト94A及びナット94Bによって側部193A、193Bが車幅方向の内向きに締め付けられても、側部193A、193Bは撓まない。その結果、サスペンション10と下部ブラケット部193との間にすき間が生じ、サスペンション10が下部ブラケット193に密着しないため、サスペンション10ががたついて乗り心地が悪化してしまう。
【0049】
このように、本実施の形態に係る下部ブラケット部93は、接続部93Cに切り欠き部C1を有することで、サスペンション10と下部ブラケット部93とをより密着させることが可能になり、乗り心地の低下を防ぐことができる。
【0050】
次に、変形例に係る懸架部品の支持構造について図8を参照して説明する。図8は、変形例に係る下部ブラケット部の周辺構成を示す平面図である。なお、図4〜図6において詳述した構成と共通する構成については同一の符号を付して説明を省略し、以下では、主に異なる構成について説明する。
【0051】
図8に示すように、変形例に係る下部ブラケット部293は、上記した下部ブラケット部93と同様、下面全体がブリッジ部92の上部921Aの上面に溶接されている。下部ブラケット部293は、板状の側部(締結部)293A、293Bと、車幅方向に延在する板状の後部(接続部)293Cと、側部293Aの前端部からブリッジ部92の左の端部まで延びる左前部(延長部)293Dと、側部293Bの前端部からブリッジ部92の右の端部まで延びる右前部(延長部)293Eとで構成されている。
【0052】
側部293A、293Bは、それぞれ車幅方向に略垂直な主表面を有する板状の形状を有している。すなわち、側部293A、293Bは、その主表面が上部921Aの上面に対して略垂直になるように配置されている。また、側部293A、293Bは、互いの主表面が略平行になっている。側部293A、293Bの主表面には、それぞれ、サスペンション10を連結するためのボルト(締結具)を挿通できるように、孔(締結孔)H1、H2が形成されている。側部293A、293Bは、その後端部がブリッジ部92(上部921A)の後縁部に位置し、その前端部がブリッジ部92(上部921A)の前縁部に位置するようにブリッジ部92の前後方向に延在している。
【0053】
後部293Cは、側部293A、293Bの主表面に対して略垂直な主表面を有する板状の形状を有している。後部293Cは、その左端部において側部293Aの後端部と接続されており、右端部において側部293Bの後端部と接続されている。つまり、後部293Cは、側部293A、293Bの後端部においてこれらを相互に接続するように、ブリッジ部92(上部921A)の後縁部に配置されている。後部293Cは、その上端から下方に向かう切り欠き部C1を有している。切り欠き部C1の形状は、下部ブラケット部93の場合と同様である。
【0054】
左前部293D及び右前部293Eは、その主表面が上部921Aの上面に対して略垂直な板状の形状を有しており、上部921Aの形状に対応するように略円孤状の平面形状を有している。左前部293Dは、側部293Aの前端部からブリッジ部92の左前方の端部まで車幅方向に対して斜めに延在している。右前部293Eは、側部293Bの前端部からブリッジ部92の右前方の端部まで車幅方向に対して斜めに延在している。側部293A、293Bの前端部はブリッジ部92の前縁部に位置しており、左前部293D及び右前部293Eはブリッジ部92(上部921A)の円弧状の前縁部に沿うように設けられている。すなわち、左前部293D及び右前部293Eは、側部293A、293Bのそれぞれの前端部からブリッジ部92の左右の端部まで延びている。
【0055】
このように、変形例に係る懸架部品の支持構造では、下部ブラケット部293の側部293A、293Bをブリッジ部92(上部921A)の前端部から後端部まで長く配置することができるので、ブリッジ部92及び下部ブラケット部293の剛性をさらに高めることができる。
【0056】
以上のように、本発明に係る懸架部品の支持構造によれば、ブラケット部が、左右の側部(締結部)のそれぞれの他端からブリッジ部の左右の端部まで延びる左前部及び右前部(左右の延長部)を含んで構成されているため、左前部及び右前部によってブリッジ部及びブラケット部の強度が高められ、スイングアームの強度が高められる。その結果、板厚を増すことなく強度を高めることが可能な懸架部品の支持構造を提供できる。
【0057】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0058】
例えば、上記実施の形態では、下部ブラケット部の右前部及び左前部(延長部)がブリッジ部の左右の端部まで車幅方向斜めに延びているが、車幅方向に平行に延びる構成としても良い。また、切り欠き部を有する下部ブラケット部においては、板厚をある程度厚くしても下部ブラケット部とサスペンションとを密着させることが可能であるから、下部ブラケット部とサスペンションとを適切に密着できる範囲において、下部ブラケット部を構成する鋼板などの部材を厚くしても良い。また、ブリッジ部の上面は、溶接により下部ブラケット部を固定できる程度に平坦であればその程度は限られない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る懸架部品の支持構造は、例えば、自動二輪車における懸架部品の支持構造として有用である。
【符号の説明】
【0060】
1 自動二輪車
2 車体フレーム
3 エンジン
5 後輪
6 前輪
9 スイングアーム
10 サスペンション
21 メインフレーム
21L 左フレーム
21LU 左上フレーム
21LR 左後フレーム
21R 右フレーム
21RU 右上フレーム
21RR 右後フレーム
91L 左アーム部
91R 右アーム部
92 ブリッジ部
93 下部ブラケット部
93A、93B 側部(締結部)
93C 後部(接続部)
93D 左前部(延長部)
93E 右前部(延長部)
94A ボルト
94B ナット
101 スプリング
102 ショックアブソーバー
102A 外筒
102B ピストンロッド
102C 上側連結部
102D 下側連結部
211 支持部
212 上部ブラケット部
212A、212B 側部
212C 上部
213L 左支持部
213R 右支持部
293A、293B 側部(締結部)
293C 後部(接続部)
293D 左前部(延長部)
293E 右前部(延長部)
921 上側部材
921A 上部
921B 前上部
921C 後上部
922 下側部材
922A 下部
922B 前下部
922C 後下部
C1 切り欠き部
H1、H2 孔(締結孔)
LP 下端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体を構成するフレームと、
前記フレームに揺動可能に連結されて車輪を支持するスイングアームと、
一端側が前記フレームに連結され、他端側が前記スイングアームに連結されて前記車輪から受ける衝撃を吸収するサスペンションと、を備え、
前記スイングアームは、
車体の前後方向に延びる左右一対のアーム部と、
前記左右一対のアーム部を連結するブリッジ部と、
前記サスペンションの他端側が連結されるように前記ブリッジ部に設けられたブラケット部と、を有し、
前記ブラケット部は、
前記サスペンションの他端側を挟むようにして前後方向に延びる左右一対の締結部と、
前記左右一対の締結部の一端部を接続する接続部と、
前記左右一対の締結部の他端部から前記ブリッジ部の左右両端部に向けて延びる左右一対の延長部とを含むことを特徴とする懸架部品の支持構造。
【請求項2】
前記左側の延長部は、前記左側の締結部の他端部から前記ブリッジ部の左前方の端部まで車幅方向斜めに延び、
前記右側の延長部は、前記右側の締結部の他端部から前記ブリッジ部の右前方の端部まで車幅方向斜めに延びたことを特徴とする請求項1に記載の懸架部品の支持構造。
【請求項3】
前記接続部は、前記ブリッジ部において略後縁部に設けられたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の懸架部品の支持構造。
【請求項4】
前記左右一対の締結部の他端部は、いずれも前記ブリッジ部において略前縁部に設けられ、前記左右一対の延長部は、前記ブリッジ部の略前縁部に沿うように設けられたことを特徴とする請求項3に記載の懸架部品の支持構造。
【請求項5】
前記接続部は、前記接続部の上端部から下方に向かう切り欠き部を有し、
前記一対の締結部は、前記サスペンションに対する締結具が挿入される締結孔を有し、
前記切り欠き部の下端部は、前記締結孔より下方に設けられたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の懸架部品の支持構造。
【請求項6】
前記切り欠き部は、下方に向かうにつれて幅が狭くなるように設けられたことを特徴とする請求項5に記載の懸架部品の支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−95281(P2013−95281A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240160(P2011−240160)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】