説明

成型合板及びその製造方法

【課題】表面塗装を必要とせずに耐水性、耐水性、耐汚染性、耐擦り傷性及び耐摩耗性が良好であり、意匠性にも優れた成型合板及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】複数の木質基材からなる芯材と化粧シートとを有する成型合板であって、該化粧シートが該成型合板の少なくとも片表面に設けられ、かつ該化粧シートが熱可塑性樹脂フィルム層を有することを特徴とする成型合板であり、熱可塑性樹脂フィルム層を有する化粧シートと平板状の木質基材とを接着剤A層を介してラミネートして表面材を形成した後、該表面材と木質基材からなる芯材とを積層し、一体化成型することを特徴とする成型合板の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シートを有する成型合板及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
成型合板は、平面状の合板成型品のみならず、椅子や、テーブルなどの3次元曲面を有する成型品に好適に用いられている。この成型合板は、通常、表層にバーズアイメイプルなどの化粧単板を用い、ブナ材やカバ材の単板に尿素樹脂系接着剤などを塗布し、それらの単板をクロスさせながら積層した後、成型型に入れて、1.5MPaの加圧で100℃×10分程度の加熱プレス成型を行い、その後、所定のトリミングを行って、表面保護のためにクリヤー塗装や、着色クリヤー塗装、又は着色クリヤー塗装+クリヤー塗装を行い製品として完成する。
【0003】
例えば、特許文献1においては、3次元成型時の表層の化粧単板の破れ、シワ防止のため、化粧単板の裏面に添芯材を接着してから、積層、成型することが考案されている。
これは、化粧単板自体が、破れやすく、扱いにくいものであり、作業改善のため行なっている。
また、特許文献2では、成形型の内表面及び化粧材の表面にそれぞれ粉体樹脂よりなる樹脂膜を形成した後、この化粧材及び基材を成形型に挿入して加熱圧着して表面保護層を形成する製法が提案されている。
これは、木質化粧単板は、耐水性や、耐汚染性、耐擦り傷性が低いため、それらを改善するために表面保護層を形成する必要があり、表面保護層の形成は一般的には塗装で行なっているが、塗装の煩雑さを改善する作業方法である。
【0004】
また、一方で、バーズアイメイプルなどの良質な化粧単板は入手しにくく、特に、大きいサイズにおいて小口割れなどが影響し、トリミングできないため入手しにくいという問題がある。
そこで、バーズアイメイプルなどの化粧単板を用いることなく、また塗装も行なわないで、意匠性が高く、耐水性、耐汚染性、耐擦り傷性及び耐摩耗性の良好な新たな成型合板が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−91901号公報
【特許文献2】特公平5−3965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、表面塗装を必要とせずに耐水性、耐汚染性、耐擦り傷性及び耐摩耗性が良好であり、意匠性にも優れた成型合板及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、成型合板の表層に、化粧単板の代わりに熱可塑性樹脂フィルム層を有する化粧シートを適用することを着想し、それにより課題を解決し得ることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1) 複数の木質基材からなる芯材と化粧シートとを有する成型合板であって、該化粧シートが該成型合板の少なくとも片表面に設けられ、かつ該化粧シートが熱可塑性樹脂フィルム層を有することを特徴とする成型合板、及び
(2) 熱可塑性樹脂フィルム層を有する化粧シートと平板状の木質基材とを接着剤A層を介してラミネートして表面材を形成した後、該表面材と木質基材からなる芯材とを積層し、一体化成型することを特徴とする成型合板の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、成型合板の表面の割れやフクレを発生せず、耐水性、耐汚染性、耐擦り傷性及び耐摩耗性が良好であり、意匠性にも優れた成型合板及びその製造方法を提供することができる。
さらに、本発明の成型合板は、表面保護のためのクリヤー塗装や、着色クリヤー塗装、又は着色クリヤー塗装+クリヤー塗装などの表面塗装を必要としないので、成型合板の製造が簡便となり、製品の均一性も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の成型合板の好ましい構成の一例及びその製造方法の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の成型合板に用いられる化粧シートの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の成型合板の好ましい態様の一例について、図1を用いて説明する。本発明の成型合板の好ましい構成の一例及びその製造方法の一例を示す模式図である。
図1に示される成型合板1は複数の木質基材21からなる芯材3と化粧シート11とを有する成型合板であって、化粧シート11が成型合板1の少なくとも片表面に設けられる構成を有している。ここで、化粧シート11は、熱可塑性樹脂フィルム層を有するものである。
この化粧シート11と平板状の木質基材21とを接着剤A層4を介してラミネートして表面材2を形成した後、表面材2と、木質基材21からなる芯材3と、を積層し、一体化成型することにより成型合板は製造される。一体化成型する前に、芯材3を構成する木質基材のそれぞれの片面又は両面に接着剤B層5を塗工しておくことが好ましい。
表面材2と芯材3とを所定の枚数積層した後、全体を加熱圧着することによって一体化成型され、本発明の成型合板1が得られる。加熱方法としては、圧着する金型を蒸気等の熱源で加熱する方法と、高周波加熱(この場合は金型ではなく木型を使用する。)などが用いられる。これらの内、高周波加熱が、表面材2と芯材3との全体を均一に加熱することができるので好ましい。
また、金型の場合は、化粧シートに直接、熱が伝わるが、高周波加熱では、化粧シート自体は発熱しないので、熱負荷が少なく、エンボス加工の化粧シートの場合、熱によるエンボスの消失を低減できる。
図1においては、上面側(表側)と下面側(裏側)の双方に表面材2が配設されているが、一方のみに表面材2が配設されても良い。
【0011】
[化粧シート11]
本発明で用いられる化粧シート11は、本発明の成型合板1に意匠を付与するために設けられるものであり、熱可塑性樹脂フィルム層12の上に絵柄層13を有し、絵柄層13の上に表面保護層14を有することが好ましい。表面保護層14は、電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化してなるものであることが好ましい。
図2は、本発明の成型合板1に用いられる化粧シート11の一例を示す模式図である。図2において、本発明に係る化粧シート11は、熱可塑性樹脂フィルム層12の上に絵柄層13を有し、絵柄層13の上に接着層16を介して透明樹脂層15を有し、透明樹脂層15の上にプライマー層17を介して表面保護層14を有している。また、図2においては、表面保護層14側からエンボス加工が施され、凹凸模様18が形成されている。
【0012】
《熱可塑性樹脂フィルム層12》
熱可塑性樹脂フィルム層12の材料として、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド系樹脂などが挙げられる。
これらの材料のなかで、成形合板の加熱圧着成形温度(70〜120℃程度)よりも高い軟化点を有する樹脂を用いることで、加熱圧着成形時に熱可塑性樹脂フィルム層が軟化や溶融などにより、後述する絵柄層が歪んだり、流れたりすることが少なくなる点で好ましい。
一方、熱可塑性フィルム層12に、印刷したり、エンボスしたりするには、ロール状の形状で、適度な柔軟性が必要であり、また、汎用性も必要である。
そこで、熱可塑性樹脂フィルム層12に望ましい材料としては、オレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂フィルムが好適に用いられる。
上述の中でもポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0013】
ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(高密度、中密度、あるいは低密度)、ポリプロピレン(アイソタクチック型、あるいはシンジオタクチック型など)、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマーなどのポリオレフィン系樹脂が挙げられる。オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、上記したような結晶質ポリオレフィン樹脂からなるハードセグメントとエチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、アタクチックポリプロピレン、スチレン−ブタジエンゴム、水素添加スチレン−ブタジエンゴムなどのエラストマーからなるソフトセグメントを混合して得られるものが挙げられる。ハードセグメントとソフトセグメントとの混合比は、〔ソフトセグメント/ハードセグメント〕=5/95〜40/60(質量比)程度である。必要に応じて、エラストマー成分は、硫黄、過酸化水素などの公知の架橋剤によって架橋する。
ポリオレフィン系樹脂のなかでも、ポリエチレン、あるいはポリプロピレンが特に好ましい。
また、熱可塑性樹脂フィルム12は、意匠性の向上を目的として、着色されたものを用いても良い。
【0014】
熱可塑性樹脂フィルム層12の層構成としては、上記したような熱可塑性樹脂の単層フィルム又は2層以上の積層フィルムが挙げられる。積層フィルムの場合は、異なる材料のフィルムを積層しても良い。
熱可塑性樹脂フィルム層12の厚み(積層フィルムの場合は合計した厚み)は、限定されないが、一般的には25〜500μm程度とすれば良く、エンボス加工により凹凸模様18を施す場合には、60〜500μmが好ましく、60〜300μmがより好ましく、60〜200μmがさらに好ましい。
【0015】
《絵柄層13》
絵柄層13は、本発明で用いられる化粧シートに装飾性を付与するために好ましく設けられるものであり、種々の模様をインキと印刷機を使用して印刷することにより形成される。
模様としては、木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)などの岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様などがあり、これらを複合した寄木、パッチワークなどの模様もある。また、文字、記号、幾何学模様、全面を印刷した着色ベタや、これらを複合した模様も挙げられる。
これらの模様は、通常の黄色、赤色、青色、および黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷などによっても形成される。
【0016】
絵柄層13の形成に用いられるインキには、バインダーに顔料、染料などの着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤などを適宜混合したものが使用される。該バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂などから選ばれる任意のものが、1種単独で又は2種以上を混合して用いられる。
【0017】
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルーなどの無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルーなどの有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮などの鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛などの鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料などが用いられる。
この絵柄層13の厚さは、通常1〜20μm程度である。
【0018】
《表面保護層14》
表面保護層14は、絵柄層13などの熱可塑性樹脂フィルム層12と表面保護層14との間に設けられる層を保護するために設けられる層であり、好ましくは電離放射線硬化性樹脂組成物を架橋硬化して得られる層である。電離放射線硬化性樹脂組成物は、紫外線や電子線などの電離放射線で硬化する電離放射線硬化性樹脂とその他必要に応じて添加される成分とからなる組成物である。
【0019】
(電離放射線硬化性樹脂)
表面保護層14に用いられる電離放射線硬化性樹脂としては、従来公知の化合物を適宜使用すれば良い。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂組成物として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
【0020】
重合性モノマーとしては、代表的には分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、なかでも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであれば良く、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジアクリレートのほか、エチレンオキシド変性、プロピレンオキシド変性、プロピオン酸変性、カプロラクトン変性などの変性された多官能(メタ)アクリレートなども挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0021】
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させるなどの目的で、メチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートなどの単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0022】
重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系などが挙げられる。
これらのなかでも、ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーが、割れが発生しにくく、後加工性が良好である点から好ましい。より具体的には、1分子中に2個のラジカル重合性不飽和基を有する重量平均分子量1000〜4000のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)30〜80質量%、及び1分子中に3個〜15個のラジカル重合性不飽和基を有する脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(B)20〜70質量%からなる混合物を電離放射線硬化性樹脂として用いることが好ましい。
【0023】
この重量平均分子量1000〜4000のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)は、ジイソシアネートと、1分子中に水酸基を2個以上有する重量平均分子量が500〜2000の多価アルコールと、末端に水酸基を有するとともにラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレート化合物と、が結合してなる、重量平均分子量が1000〜4000、好ましくは1000〜3000のオリゴマーである。
【0024】
上記ジイソシアネートは、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する脂肪族、脂環式又は芳香族のイソシアネートであり、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
重量平均分子量が500〜2000の多価アルコールとしては、両末端に水酸基を有するポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール及びポリカーボネートポリオール、アクリルポリオールなどがある。
【0025】
末端に水酸基を有するとともにラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートは、アクリル酸又はメタクリル酸もしくはこれらの誘導体のエステル化合物であって、末端に水酸基を有するものである。具体的には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシシクロオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピルアクリレートなどの重合性不飽和基を1個有する(メタ)アクリル酸エステル化合物、あるいはその他の1分子中に重合性不飽和基を2個以上有する(メタ)アクリル酸エステル化合物などが例示される。
【0026】
上記したウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(A)とともに用いられる脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー(B)は、1分子中に3個〜15個の(メタ)アクリロイル基などのラジカル重合性不飽和基を有するものであり、脂肪族ジイソシアネート、多官能ポリオール、末端に水酸基を有するとともにラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートとを反応させて得られる、多官能(3〜15官能)ウレタンアクリレートである。
【0027】
上記脂肪族ジイソシアネートは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添トリレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
また、上記の水酸基とラジカル重合性不飽和基を有する(メタ)アクリレートは、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシシクロオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェニルオキシプロピルアクリレートなどの重合性不飽和基を1個有する(メタ)アクリル酸エステル化合物が挙げられる。
【0028】
さらに、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテルなどの分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマーなどがある。
【0029】
電離放射線硬化性樹脂組成物として紫外線硬化性樹脂組成物を用いる場合には、光重合用開始剤を樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されない。また、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤などの光増感剤を用いることもできる。
【0030】
(各種添加剤)
電離放射線硬化性樹脂組成物には、得られる表面保護層の所望物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えばアルミナ、シリカなどの無機粒子やアクリルなどの樹脂粒子などの耐摩耗性向上剤、例えばポリプロピレンやポリエチレンなどの樹脂類がエステル系などの有機溶剤に溶解又は分散して得られるワックスのほか、耐候性改善剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤などが挙げられる。なお、これらの各種添加剤の電離放射線硬化性樹脂組成物における含有量は、各種添加剤の添加効果を十分に得つつ、本発明の効果を害しない範囲内であり、適宜設定するものである。
本発明に係る表面保護層14は、所望により、艶調整のためシリカなどの無機粒子をマット剤として含有しても良い。
【0031】
(表面保護層14の形成方法)
表面保護層14の形成方法は、好ましくは以下のように行う。電離放射線硬化成分である重合性モノマーや重合性オリゴマー及び各種添加剤を、それぞれ所定の割合で均質に混合し、電離放射線硬化性樹脂組成物からなる塗工液を調製する。この塗工液の粘度は、後述の塗工方式により、熱可塑性樹脂フィルム層の表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であれば良く、特に制限はない。
このようにして調製された塗工液を、熱可塑性樹脂フィルム層12の表面に、硬化後の厚さが所定の範囲内になるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコートなどの公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。硬化後の厚さが1μm以上であると所望の機能を有する硬化樹脂層が得られる。硬化後の表面保護層の厚さは、通常1〜20μmであり、好ましくは2〜20μm、より好ましくは3〜10μmである。
【0032】
このようにして形成された未硬化樹脂層に、電子線、紫外線などの電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、熱可塑性樹脂フィルム層として電子線により劣化する材料を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、熱可塑性樹脂フィルム層への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による熱可塑性樹脂フィルム層の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜80kGy(1〜8Mrad)の範囲で選定される。
【0033】
電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈などが用いられる。
【0034】
このようにして、形成された硬化樹脂層には、各種の添加剤を添加して各種の機能、例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能などを付与することもできる。
【0035】
《透明樹脂層15》
化粧シート11は、所望により、絵柄層13と表面保護層14との間に、透明樹脂層15を有していても良い。透明樹脂層15を設けることにより、化粧シート11の耐摩耗性が向上し、後述するエンボス加工を化粧シート11に施す場合は、微細かつ複雑な形状の凹凸模様に、より深みを持たせることが可能となる。
透明樹脂層15は、透明性のものであれば限定されず、無色透明、着色透明、半透明などの透明性を有する樹脂からなる層である。
透明樹脂層15としては、例えば、熱可塑性樹脂により形成されたものを好適に使用することができる。具体的には、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体などのポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン、軟質、半硬質又は硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルなどを挙げることができる。
【0036】
これらの材料のなかで、成形合板の加熱圧着成形温度(70〜120℃程度)よりも高い軟化点を有する樹脂を用いることで、加熱圧着成形時に熱可塑性樹脂フィルム層が軟化や溶融などにより、絵柄層が歪んだり、流れたりすることが少なくなる点で好ましい。
一方、透明樹脂層15を積層したり、表面保護層14を形成したり、エンボスしたりするには、ロール状の形状で、適度な柔軟性が必要であり、また、汎用性も必要である。
そこで、透明樹脂層15に望ましい材料としては、オレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂フィルムが好適に用いられる。
これらの中でも、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0037】
透明樹脂層15は、上記したように透明であれば着色されていても良い。この場合、上記のような熱可塑性樹脂に対して着色材(顔料又は染料)を添加して着色することができる。着色材としては、公知又は市販の顔料又は染料を適宜使用することができる。これらは、1種又は2種以上を選ぶことができる。また、着色材の添加量も、所望の色合いなどに応じて適宜設定すれば良い。
【0038】
また、透明樹脂層15には、必要に応じて充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えばゴム)などの各種の添加剤が含まれていても良い。
【0039】
透明樹脂層15の形成方法としては、例えば予め形成されたシート又はフィルムを隣接する層に積層する方法、透明樹脂層15を形成し得る樹脂組成物を溶融押出することにより隣接する層上に塗工する方法、隣接する層と一緒にラミネートする方法などのいずれも採用することができる。本発明では、特に溶融押出により透明樹脂層15を形成することが好ましく、とりわけ、ポリオレフィン系樹脂を溶融押出によって塗工して形成することが望ましい。具体的には、絵柄層13上に予め接着層16を形成し、接着層16上にポリオレフィン系樹脂、好ましくはポリプロピレン系熱可塑性エラストマー(例えば、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体)を溶融押出して塗工することにより透明樹脂層15を好適に形成することができる。溶融押出の方法は、例えばTダイなどを用いる公知の方法に従って実施すれば良い。
【0040】
透明樹脂層15の厚みは、最終製品の用途、使用方法などにより適宜設定できるが、一般的には20〜250μm、特に30〜200μm程度とすることが好ましい。
【0041】
また、透明樹脂層15の表面及び/又は裏面には、隣接する層との接着性を高めるために、必要に応じて酸化法や凹凸化法などの物理的又は化学的表面処理を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法などが挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理は、熱可塑性樹脂フィルム層の種類に応じて適宜選択されるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から好ましく用いられる。
【0042】
《接着層16》
接着層16は、化粧シート11が透明樹脂層15を有する場合などに所望により設けられる層である。
接着層16で使用する接着剤は、公知又は市販の接着剤の中から、絵柄層13又は透明樹脂層15を構成する成分などに応じて適宜選択することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂のほか、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、エマルションの状態で使用しても良い。なかでも、耐熱性の観点からウレタン系樹脂接着剤が好ましい。ウレタン系樹脂接着剤としては、末端に水酸基を持つポリオールとポリイソシアネート、又は末端にイソシアネート基を持つウレタンプレポリマーとポリオールを組み合わせ、混合することで化学反応を起こし硬化・接着させるものである2液硬化型ウレタン系接着剤が好ましく挙げられる。
【0043】
接着方法としては、用いる接着剤の種類などに応じて公知の方法に従って実施すれば良い。例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂を用い、溶融押出(エクストルージョンコート法)で絵柄層上に塗工する方法、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂などの熱硬化性樹脂にイソシアネート、アミンなどの架橋剤、メチルエチルケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、アザビスイソブチロニトリルなどの重合開始剤、ナフテン酸コバルト、ジメチルアニリンなどの重合促進剤などを必要により添加した接着剤を塗工し、ドライラミネートする方法を採用することができる。また、本発明においては、熱圧着できる接着剤を使用し、熱圧着によって絵柄層13と透明樹脂層15とを積層することもできる。
接着層16の厚さは、表面保護層14、使用する接着剤の種類などに応じて異なるが、通常は0.1〜30μm程度とすれば良い。
【0044】
《プライマー層17》
透明樹脂層15の表面及び/又は裏面には、プライマー層17を形成することもできる。プライマー層17を形成するための材料としては、例えばポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ニトロセルロース樹脂(硝化綿)などの樹脂類ほか、アルキルチタネート、エチレンイミンなどの化合物も使用することができる。なかでも、ウレタン硝化綿や、2液硬化型のウレタン系樹脂(アクリルウレタン系樹脂等)などをバインダー樹脂とすることが好ましい。イソシアネートとしてヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)などの脂肪酸イソシアネート(脂肪族イソシアネート)、ポリオールとしてアクリルポリオールをそれぞれ使用する場合には、より優れた耐候性、密着性などが得られるので好ましい。
【0045】
プライマー層17の形成は、これらをそのままで又は溶媒に溶解、もしくは分散させた状態で用い、グラビア印刷などの公知の印刷方法、塗布方法などに従ってプライマー層を形成することができる。
また、接着剤A層4との接着性を向上させるために、本発明で用いられる化粧シート11において、上記と同様のプライマー層を熱可塑性樹脂フィルム層12の裏面(絵柄層などが設けられるのとは反対の面)に設けることができる。
【0046】
《凹凸模様18》
本発明で用いられる化粧シート11には、意匠性を高める目的でエンボス加工による凹凸模様18を施すことが好ましい。
凹凸模様18は、化粧シート11が製造過程において何らかの手段によってエンボス可能な温度となっているときに、熱可塑性樹脂フィルム層12の絵柄層13を設けた側の上面からエンボス版で加熱加圧することにより形成することができる。ここで、エンボス加工は、表面保護層14を設ける前に行っても、後に行っても良い。凹凸模様18の形成には、周知の枚葉、もしくは輪転式のエンボス機が用いられ、凹凸模様18の形状としては、木目版導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチュア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝などがある。
エンボス加工する際の温度としては、成形合板の加熱圧着成形温度(70〜120℃程度)よりも高い温度で凹凸模様を形成することで、加熱圧着成形時に凹凸模様が消失する所謂エンボス戻りが少なくなる点で好ましい。
【0047】
エンボスによる凹凸模様18の深さは、例えば図2に示されるようにプライマー層17や透明樹脂層15に達していても良いし、熱可塑性樹脂フィルム層12まで達していても良く、凹凸模様18の深さは、所望の意匠に基づき、適宜選択すれば良い。凹凸模様18の深さは、化粧シートの厚みにもよるが、通常5〜160μmが好ましく、10〜140μmがより好ましい。凹凸模様18の深さが上記範囲内にあれば、優れた意匠性が得られるので好ましい。
また、化粧シート11のエンボスにより凹凸模様18が施された面の表面粗さRzは、1〜300μm程度であり、好ましくは10〜120μmであり、より好ましくは30〜90μmである。ここで、Rzは、十点平均粗さであり、JIS B 0601に準拠して、測定長4mm、カットオフ値0.8mmで測定した値である。
【0048】
《化粧シートの製造方法》
以上、化粧シート11の構成について説明したが、化粧シート11の製造方法の一例について以下に示す。
その表面にコロナ放電処理により易接着処理を施したポリオレフィン系樹脂フィルムを熱可塑性樹脂フィルム層12とし、該熱可塑性樹脂フィルム層12上に木目柄などの絵柄をグラビア印刷して絵柄層13を形成し、所望により、該熱可塑性樹脂フィルム層12の裏面にアクリルウレタン系樹脂などをバインダーとしたプライマー層をグラビア印刷により形成する。次いで、絵柄層13の上に2液硬化型ウレタン樹脂などの接着剤を塗工して接着層16を形成し、さらにポリプロピレン系樹脂(ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーなど)をTダイで溶融押し出し塗工することにより、透明樹脂層15を形成する。該透明樹脂層15の上に、2液硬化型ウレタン系樹脂などの樹脂を塗工して、プライマー層17を形成する。次に、該プライマー層17の上に、多官能ウレタンオリゴマーなどの電離放射線硬化性樹脂と各種添加剤とを含む電離放射線硬化性樹脂組成物をグラビアコートで塗工し塗膜を形成し、所定の条件で電子線を照射して、該塗膜を架橋硬化させて、表面保護層14を形成し、化粧シート11を得ることができる。
【0049】
[芯材3]
本発明の成型合板1に用いられる芯材3は、複数の木質基材21からなる。木質基材21としては、ブナ材、カバ材、ラワン材などの単板でも良いし、ブナ材、カバ材、ラワン材など単板を2〜5枚熱硬化樹脂の接着剤で交互に重ねた複層板でも良い。複層板を用いると、木質基材21の反りが低減できる。
単板又は複層板の厚さは、0.3〜5mm程度が好ましい。
【0050】
[表面材2]
本発明の成型合板1は、予め、化粧シート11と平板状の木質基材21とを接着剤A層4を介してラミネートして表面材2を形成することが好ましい。成型合板型は、平面から、曲面へ変形させるものであり、表面材2の形成により化粧シートの固定ができれば、成型時にシワや、部分的な伸びによる柄変形等が発生することを好適に防止することができる。表面材2に用いられる平板状の木質基材21は、単板でも良いし、複層板でも良い。
特に、表面材2の形成に、木質基材21として複層板を用いると、木質基材21の反りが低減でき、化粧シートの貼り合せ時のシワ等のトラブルが少なく確実に貼り合わせることができる。
複層板製造用の熱硬化性樹脂接着剤としては、後述する接着剤A層4に用いられる接着剤Aと同様の各種接着剤、特に尿素樹脂系接着剤、メラミン系樹脂系接着剤、ウレタン系接着剤などが好適に用いられる。複層化は通常熱圧プレスで行われる。
芯材3及び表面材2に用いられる木質基材21は、同一であっても良いし、木質基材21毎に異なっていても良い。
【0051】
[接着剤A層4]
上記の接着剤A層4に用いられる接着剤Aとしては、2液硬化型ウレタン系接着剤、1液硬化型ウレタン系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、不飽和ポリエステル樹脂系接着剤、熱硬化型アクリル樹脂系接着剤、尿素樹脂系接着剤、メラミン樹脂系接着剤、塩化ビニル系接着剤などの液状接着剤又は粉体接着剤が用いられる。
上述の内、2液硬化型ウレタン系接着剤は、耐熱性が良好であり、化粧シート11に好適に接着するので、接着剤Aとして好ましく用いられる。
接着剤A層4において、液状接着剤の塗布は、ロールコート、スピンコート、グラビアコートなどの各種塗工法により行われ、粉体接着剤の塗布は、エアスプレー、静電塗装法などにより行われる。
【0052】
[接着剤B層5]
本発明の成型合板1を一体化成型する前に、芯材3を構成する木質基材のそれぞれの片面又は両面に好ましく塗工される接着剤B層5に用いられる接着剤Bは、熱硬化性接着剤であれば良く、限定されない。接着剤Aとして挙げた各種接着剤が接着剤Bとしても同様に用いられる。中でも、尿素樹脂系接着剤が、耐水性を持ち、安価かつ作業性が良いので、接着剤Bとして好適に用いられる。塗布方法は、接着剤A層4と同様である。
【実施例】
【0053】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、耐水性、耐汚染性、耐擦り傷性及び耐摩耗性は下記の方法に従って評価した。
(1)耐水性
成型合板の表面にガーゼを置き、水を滴下し、時計皿を被せて48時間放置した後、水を拭き取り、表面状態を観察した。
(2)耐汚染性
JAS特殊合板の汚染試験の水性インキ青を用いて実施した。成型合板の表面にガーゼを置き、水性インキ青を塗布し、時計皿を被せて24時間放置した後、水で拭き取り、表面状態を観察した。
(3)耐擦り傷性
成型合板の表面上で、スチールウール(ボンスター#0000)の上に1.4kg荷重(接地直径28mm)の重りを置き、10往復した後、成型合板の表面の外観変化を観察した。
(4)耐摩耗性
成型合板の表面上において、JAS特殊合板摩耗試験B試験(研摩紙 S−42、総荷重500g)で、50回転行った後、外観変化を観察した。
【0054】
製造例1(化粧シートAの製造)
熱可塑性樹脂フィルム層として、ポリエチレン系樹脂フィルム(厚さ80μm)を用意した。この表面及び裏面にコロナ放電処理を施した後、裏面にウレタン系の易接着コートを施した。
次に、このポリエチレン系樹脂フィルムの表面にアクリルウレタン系樹脂のインキでグラビア印刷にて木目印刷を行った。その着色表面に更にポリエステル系接着剤を塗布後、0.06mm厚のポリプロピレン系透明樹脂をTダイで溶融押し出し塗工することによって、透明樹脂層(厚さ60μm)を形成した。
次いで、透明樹脂層の上に、アクリル−ウレタンブロック重合体(主剤)と、ヘキサメチレンジイソシアネート(硬化剤)とからなる2液硬化型ウレタン系樹脂を塗工し、プライマー層(厚さ2μm)を形成した。
【0055】
次に、電離放射線硬化性の多官能ウレタンアクリレートオリゴマー35質量部/2官能ウレタンアクリレートオリゴマー65質量部に対し、シリカ粒子(平均粒子径:4〜5μm,球状)5質量部及びポリエチレン系ワックス5質量部(融点110〜200℃)を含む電離放射線硬化性樹脂組成物をグラビアコートにて塗膜を形成した後、175keV及び5Mrad(50kGy)の条件で電子線を照射して上記塗膜を架橋硬化させることにより、表面保護層(厚さ5μm)を形成した。
最後に、表面保護層側を赤外線非接触方式のヒーターで加熱した後、表面保護層の面から熱圧(化粧シート温度140〜160℃)によりエンボス版を用いてエンボス加工を行い、木目導管溝模様の凹凸模様を賦形することにより、総厚さ150μmのエンボス化粧シートAを作成した。
【0056】
実施例1
表面材用の木質基材として(ブナ材の厚さ2mm×2枚積層、尿素樹脂系接着剤使用)複層板(サイズ450×900mm)を用意した。
また、上記エンボス化粧シートAの熱可塑性樹脂フィルム層側裏面に、下記の2液硬化型ウレタン系接着剤を100g/m2でナイフコート塗布し、溶剤乾燥した。
2液硬化型ウレタン系接着剤:アイカ W613(ウレタン系樹脂)100質量部/W616H(イソシアネート:PMDI)5質量部
次に、このエンボス化粧シートAの熱可塑性樹脂フィルム層側裏面を上記の複層板の上に積層し、80℃、0.2MPaのプレスを30秒行い、表面材を得た。この表面材は、図1に示すように、成型合板の上面側と下面側の双方に用いるため2枚準備した。
次いで、芯材用の木質基材としてブナ材の1mm厚の単板を9枚用意し、尿素樹脂系接着剤をそれら単板の片面にそれぞれ塗布し、クロスで積み上げて、接着剤を塗布した芯材を得た。同様に、エンボス化粧シートAを貼った上記表面材の複層板側裏面にも尿素樹脂系接着剤を塗布した後、それらの表面材を芯材の上面側の表面と下面側の裏面に積層した。
加熱プレス機を用いて、この積層体を、金型の温度を100℃に設定された、椅子の背及び座面の金型に入れ、圧力1.5MPaで10分間の成形を行なった。
得られた実施例1の成型合板の耐水性、耐汚染性、耐擦り傷性及び耐摩耗性を評価した。結果を第1表に示す。
また、得られた成型合板の平面部、及び曲面部をサンプリングし、表面の化粧シートA部分を一部手めくりし、180°剥離、剥離速度100mm/分で剥離強度測定を行い、化粧シートAの密着強度を確認したところ、剥離強度は、平面部で50N/25mm巾以上あり、曲面部で35N/25mm巾以上あり、良好な接着性であった。
【0057】
実施例2
表面材用の木質基材として複層板をブナ材の厚さ2mm×1枚に変更した以外は、実施例1と同様に作製した。得られた実施例2の成型合板の耐水性、耐汚染性、耐擦り傷性及び耐摩耗性を評価した。結果を第1表に示す。
【0058】
比較例1
化粧シートAを、バーズアイメイプルの化粧単板(厚さ150μm)に変更し、(ブナ材の厚さ2mm×2枚積層、尿素樹脂系接着剤使用)複層板に、尿素樹脂系接着剤を塗布後、平版の加熱プレス機で、120℃、圧力0.5Mpaで、2分間の成形を行なった。その後は、実施例1と同様に成型合板を作成した。
その後、表裏の化粧表面に、溶剤ウレタン系のクリヤー塗装を固形分換算で20g/m2の塗布を行い作成した。
得られた比較例1の成型合板の耐水性、耐汚染性、耐擦り傷性及び耐摩耗性を評価した。結果を第1表に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
実施例1及び2の成型合板は、化粧単板を使用せず、塗装工程も必要としないほか、物性として、耐水性、耐汚染性、耐擦り傷性及び耐摩耗性において、化粧単板の塗装では得られない良好な性能を発現し、意匠性にも優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の成型合板は、椅子や、テーブル等の家具など、一般建築物(住宅、店舗)、ビルなどの大型建物の内装品、特に、椅子や、テーブルなどの3次元曲面を有する成型品に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0062】
1.成型合板
2.表面材
3.芯材
4.接着剤A層
5.接着剤B層
11.化粧シート
12.熱可塑性樹脂フィルム層
13.絵柄層
14.表面保護層
15.透明樹脂層
16.接着層
17.プライマー層
18.凹凸模様
21.木質基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の木質基材からなる芯材と化粧シートとを有する成型合板であって、該化粧シートが該成型合板の少なくとも片表面に設けられ、かつ該化粧シートが熱可塑性樹脂フィルム層を有することを特徴とする成型合板。
【請求項2】
前記化粧シートが、前記熱可塑性樹脂フィルム層の上に絵柄層を有し、該絵柄層の上に表面保護層を有する請求項1に記載の成型合板。
【請求項3】
前記化粧シートが、前記絵柄層と前記表面保護層との間に、透明樹脂層を有する請求項2に記載の成型合板。
【請求項4】
前記化粧シートと前記木質基材との間に2液硬化型ウレタン系接着剤からなる接着剤A層を有する請求項1〜3のいずれかに記載の成型合板。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂フィルム層が、オレフィン系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルム及びアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合樹脂フィルムから選ばれる1種又は2種以上の樹脂フィルムからなる請求項1〜4のいずれかに記載の成型合板。
【請求項6】
熱可塑性樹脂フィルム層を有する化粧シートと平板状の木質基材とを接着剤A層を介してラミネートして表面材を形成した後、該表面材と木質基材からなる芯材とを積層し、一体化成型することを特徴とする成型合板の製造方法。
【請求項7】
前記表面材の平板状の木質基材が複層板からなる請求項6に記載の成型合板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−251412(P2011−251412A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124942(P2010−124942)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】