説明

成型物の造粒方法

【課題】双ロール成型機を用いた還元鉄原料などの成型物の造粒にあたり、原料水分や原料粒度分布などの変動があっても、常に安定した条件で成型することのできる造粒方法を提供する。
【解決手段】原料混合物の水分量と双ロール成型機の成型圧の関係、及び、成型圧の適正範囲を予め決定し、成型中の成形圧を実測して、その実測値が前記適正範囲から外れている場合は、前記水分量と成型圧の関係に基づき添加する水分量を調整し、さらに、成型圧が前記範囲を外れた場合は、スクリューの回転数および/またはロールの成型圧を調整して前記適正圧範囲とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分が変動する含鉄原料と石炭等の炭材との粉状混合物を双ロール成型機にて加圧成型して、還元鉄原料としての成型物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製鉄所の転炉等にて発生する鉄分を含むダスト、スラッジ等を鉄源として再利用することが行われている。
ダスト等の再利用方法として、特許文献1の記載の如く、含鉄原料と炭材を粉砕、混練した原料を成型物に造粒して、当該成型物を乾燥後還元炉に装入し、還元鉄を製造する方法がある。
上記の還元鉄製造方法においては、ダスト等の鉄分含有原料を、化学成分や粒径、排出工程等により分別し、在庫状況や生産状況に応じて、還元後の金属化率が極力最大となるように鉄分含有原料およびその他の原料の配合を調整している。
【0003】
しかし、原料配合の調整のみでは、安定した造粒結果は得られず、原料が造粒されずに粉化したり、あるいは造粒物に割れが生じ、安定した生産ができずに効率が大きく低下したりする事態が生じる場合がある。
このため、原料造粒の前工程で、水分調整およびバインダー添加を行い、原料が粉化したり、割れたりしないように、原料が含有する水分を最適に調整したうえで、各々の原料が均一となるよう混練操作を実施し、混練後の原料を造粒機で造粒するようにしている。
【0004】
混練後の原料を成型物に造粒する方法のひとつとして、双ロール成型機を用いた成型がある。これは、原料をスクリューにより下方の一対の成型ロール間へ押し込み、連続的に高圧成型して造粒するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−097065号公報
【特許文献2】特開2008−260982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、双ロール成型においては、高強度かつ安定した造粒物を得るために、ロール成型圧を一定として成型する方法や、成型ロール駆動用電動機の電流値(ロール電流値)を一定とする方法が採用されている。
しかし、実際の操業においては、原料水分や粒度などの原料の変動、天候等の外的要因の変動、混練を含む操業のばらつきなどが原因で原料条件が変動するため、常時同一の条件下での造粒によって、安定した品質の造粒物を得ることは困難である。
【0007】
特に、原料の水分含有量は、季節、天候及び原料保管状態によって大きなばらつきがあり、さらに、原料粒度に応じて造粒に適する水分含有量自体も変動している。このため、混練工程において、造粒が最適となるように水分を添加したとしても、原料水分含有量のばらつきの造粒条件に与える変動は大きい。
ところが、原料混練後にどれだけの水分が含有されているかオンラインで実測することは、測定装置上の問題で実現されておらず、このため、原料含有水分を適正に制御することは事実上不可能であった。
加えて、原料の混練自体を完全に行うことは困難であるために局所的な原料水分含有量や粒度の変動、ばらつきが発生するが、この局所的な原料条件の変動、ばらつきに対応することも不可能であった。
【0008】
そこで本発明は、双ロール成型機を用いた還元鉄原料などの成型物の造粒にあたり、原料水分や原料粒度分布などの変動があっても、変動に応じて適正な添加水量を求め、成型条件を調整することで、常に安定した条件で成型することのできる造粒方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は次のような造粒方法としたことを特徴とする。
(1)含鉄原料と炭材の混合物に水分を添加して混練し、双ロール成型機で成型物を造粒する方法において、混合物の水分量と双ロール成型機の成型圧の関係、及び、成型圧の適正範囲を予め決定し、成型中の成形圧を実測して、その実測値が前記適正範囲から外れている場合は、前記水分量と成型圧の関係に基づき添加する水分量を調整することを特徴とする成型物の造粒方法。
(2)原料の粒径とロール電流値を一定とした条件下において、原料水分と成型圧の関係、成型物の強度、および成型物の割れ率を求め、それらに基づき成型圧の適正範囲を予め決定することを特徴とする(1)に記載の成型物の造粒方法。
(3)成型圧が前記範囲を外れた場合において、さらに、混練した原料を前記成型機のロール間に押し込むためのスクリューの回転数、および/またはロールの成型圧を調整して、前記成型圧が適正範囲となるようにすることを特徴とする(1)または(2)に記載の成型物の造粒方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、造粒時の原料含有水分を最適に制御することが可能となるため、ブリケットの成形性が良好となり、製品歩留り及び得られる還元鉄の品質が向上する。さらに、実際の操業で発生する水分や粒度の突発的な変動に対しても、ロール電流値が最適に設定された条件下において、スクリュー回転数、成型圧の微調整を行うことにより、安定した成型物の造粒が継続して可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】双ロール成型機の概要を示す図である。
【図2】双ロール成型機における成型圧力の測定方法を説明する図である。
【図3】造粒水分が7.5%、8.5%及び9.5%の場合について、成型ブリケット中の正常(割れなし)なものの割合を示す図である。
【図4】添加水分量とロール成型圧との関係、及び添加水分量と乾燥後のブリケットの圧壊強度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1に、双ロール成型機の概略を示す。この成型機は、前工程にて粉砕され、混練された原料をホッパー3から投入し、その原料をスクリュー2で下方の一対の成型ロール1間に押し込み、成型ロール1にて加圧成型を行って、ブリケットに成型するようになっている。
【0013】
双ロール成型機に投入される原料は、含鉄原料と石炭等の炭材との粉状混合物である。
含鉄原料としては、例えば、転炉ダスト、高炉ダスト、ミルスケール、電炉ダスト等を挙げることができる。また、上記炭材としては、例えば、石炭、コークス、微粒カーボン、プラスチック、木質バイオマスを挙げることができる。
原料の配合割合は、各種原料の在庫状況や生産状況を見て、還元鉄の金属化率が最大となるよう決定される。
【0014】
成型機に造粒原料を投入する前段では、前記のような原料を粉砕し、次いで混練する事前処理を行う。
粉砕工程では、例えばボールミルのような粉砕機にて原料を粉砕し、原料を目的粒度範囲に収まるようにする。原料粒度は篩下80%径にて70〜700μmとする。
次の混練工程では、水分添加とバインダー添加を行った後に混練する。造粒水分(造粒原料の全水分量)は6〜10質量%とする。バインダーの添加によりブリケットの強度が向上するが、製造コスト削減のため、添加量は原料に対して5質量%以下が好ましい。
原料水分が高く、装置やコンベアへの付着が懸念される場合は、混練前にロータリーキルン型乾燥機を使用して低水分としてもよい。
【0015】
混練後の原料は、双ロール成型機に投入され、スクリューによって双ロール間に押し込められる際、双ロールに対して圧が加わることで、造粒成型物であるブリケットに成型される。ブリケット形状としてはマセック型やアーモンド型がある。
【0016】
本発明者は、以上のような双ロール成型機を用いて、鉄分含有原料と炭材を混合した原料を用いてブリケットに造粒する場合の、水分量の変動に対して安定して操業できる条件について、検討した。
以下に、検討の過程で得られた基本的な知見について説明する。
【0017】
原料として、鉄分を含有するダスト、炭材としての石炭を準備し、それを表1に示す割合で配合した。また、バインダーをこれら原料に対して1〜2質量%添加した。
【0018】
【表1】

【0019】
そして、双ロール成型機での最適なブリケット製造条件を探索するため、造粒水分および成型条件をパラメータとし、ロール電流値を一定とする試験的なブリケットへの成型を実施し、成型後に乾燥した採取ブリケットに対して形状調査を行うとともに、圧壊強度を測定した。
なお、添加水分量を調整して、造粒水分は7.5〜9.5%とした。また、ブリケットを構成する原料粒度は篩下80%径で300〜350μmであった。
製造時の成型圧測定に関しては、図2に示すように機枠5に2点支持ロードセル4を設置して測定した。また、圧壊強度は、乾燥させたブリケットを最も安定する横に寝せた状態とし、上から荷重をかけ、割れが生じた時点の強度とした。
【0020】
造粒水分が7.5%、8.5%及び9.5%の場合について、ロール電流値160Aで成型し乾燥したブリケットの形状を目視で調査し、割れの発生していない正常ブリケットの割合を求めた。その結果を造粒水分量との関係で図3に示す。
また、造粒水分量とロール成型圧との関係、及び造粒水分量と乾燥後のブリケットの圧壊強度との関係を、図4にあわせて示す。
【0021】
図3に示すように、得られたブリケットの形状が最も良好な水分量は8.5%であった。そのときの最適造粒条件は、図4より、ロール電流値160Aの一定値とした場合で、成型圧が1.4MNであった。
ブリケットの圧壊強度は、造粒水分の違いによらずに、90kgf±10kgfと安定していたが、その理由は、水分量が7.5〜9.5%の範囲では、各々の水分条件下にてブリケットが最密構造となったためと考えられる。
【0022】
以上の結果より、強度が高く最密構造とブリケットが得られるロール電流値の範囲において、ロール電流値を一定とする操業条件下にて、図4のように水分量と成型圧の関係、及び、良好なブリケット形状と圧壊強度の得られる成型圧の範囲を予め把握しておき、成型圧がその範囲を外れた場合に、造粒に最適な加水量をフィードフォワードで与えることが可能となるという知見を得た。
【0023】
以上の知見に基づき、本発明では、含鉄原料と炭材の混合物に水分を添加して混練し、双ロール成型機で造粒する際、粒径が既知の原料を用いて、ロール電流値を一定とする条件下で、図4のような造粒水分と成型圧の関係を予め求めておき、成型物の圧壊強度が最大となり造粒成型物の形状に割れが最も少ない適正な成型圧の範囲を決定しておく。
【0024】
通常の操業では、まず、原料の配合ごとに、造粒後のブリケットが最も最密となり高強度が得られるロール電流値をあらかじめ求めておき、ロール電流値が最適値となるように押込みスクリューの回転速度やロールの加圧力を調整して、成型圧が適正範囲に入るように調整して運転を開始する。
そして、操業中のロールの成型圧を測定し、予め求めた水分と成型圧の関係から、その成型圧における適正水分量に対する誤差を算出して、その誤差分を次バッチの添加水分量に反映させる。これにより、形状が良好で、圧壊強度も高いブリケットが安定して得ることが可能となる。
【0025】
なお、誤差を求める際、図4に関係式を付記したように、添加水分量と成型圧の関係を数式で表し、その数式を用いて計算することもできる。
【0026】
さらに、原料粒度や造粒前成分等において、最初に設定した値と差が生じ、成型圧力の値が適正範囲から外れた場合は、押し込みスクリュー回転数及び成型圧を例えば±10〜50%の範囲で増減操作することで、安定成型を維持するようにする。成型圧を目標値に制御するのみでは、原料含有水分量が急激に上昇した場合に、成型物の割れやロールへのダスト付着が起こる可能性があるが、スクリュー回転数などの制御を同時に行うことにより、そのような事態を未然に防ぐことができる。
【0027】
なお、本発明は、含鉄原料および炭材を原料として成型する場合を対象としているが、汚泥やバイオマス、ゴミ等を原料として、それをブリケットに造粒するプラントにおいても応用可能であると考えられる。
【0028】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。
【実施例1】
【0029】
(標準水分原料を用いた成型)
表1に示す配合の原料で、篩下80%径で70〜700μmの粒度の原料を使用し、表2に示す標準造粒水分8.5%(原料水分5.0%、添加水分3.5%)で混練した。混練後の原料を双ロール成型機に供給し、双ロール成型機を電流160Aの一定値で運転して、原料をブリケットに成型した。成型中のロールの成型圧は、10分間の平均値で、表2に示すように1.4MNであった。
なお、用いた原料については、図4に示すように、良好な特性のブリケットが得られる水分量と双ロール成型機の成型圧の関係から、水分量と成型圧の適正範囲が予め求められおり、それに基づいて、上記のような条件で成型した。
得られたブリケットの特性を表2に示すが、ブリケットの割れ率、粉率(粒径3mm以下の粉の割合)とも良好であった。
【0030】
(高水分及び低水分原料を用いた成型)
次に、混練前の原料に水分を添加して水分含有量を高めた原料、及び、混練前の原料を乾燥して水分含有量を低めた原料を作成し、それに水分を3.5%添加して高水分と低水分の2条件の水分状態の原料を作成し、それぞれの原料を用いて同様にブリケットに成型した。成型中のロールの成型圧は、表2に示すように高水分原料では、1.0MNであり、低水分原料では、1.8MNであった。
得られたブリケットの特性を表2に示すが、高水分原料では、造粒ロールへのダスト付着量が増加し、その影響でブリケットの割れ率が増加した。また、低水分原料では、高圧成型となって半割れ状のブリケットが増加するとともに、水分不足により粉率が増加した。
【0031】
(原料水分量の調整)
そこで、混練機にて添加する水分量の調整を、図4で求めた関係を用いて実施した。
高水分原料では成型圧が1.0MNであることから、図4より造粒水分が9.5%であることが求められ、低水分原料では成型圧が1.8MNであることから、図4より造粒水分が7.5%であることが求められた。その結果、それぞれ適正水分8.5%との間に1%の誤差があることが認められたため、高水分原料では混練時の添加水分量を3.5%から2.5%に変更し、低水分原料では3.5%から4.5%へ変更した。
変更後に得られたブリケットの特性を表2に示すが、いずれの場合も良好な特性のブリケットが得られた。
【0032】
【表2】

【実施例2】
【0033】
この実施例は、操業中に、水分量以外の原料条件がさらに変動した場合の例であり、実施例1で準備した原料を用いて、1.2MNの成型圧で成型を実施している途中で原料粒度が粗大化するように原料条件を変更した。この原料条件の変動により、ロール電流値が突発的に160Aから200Aに増加し、得られたブリケットの特性が、割れ率、粉率とも悪化した。
そこで、原料条件の変動に対応すべく、双ロール成型機の電流値が元の160Aになるように、スクリューの回転速度を制御することによって調整した結果、得られたブリケットの特性が良好な状態に回復した。
原料粒度を変更する前後での双ロール成型機の動作条件及び、得られたブリケットの特性を表3に示すが、この制御により、原料条件の局所的変化にも対応し、安定した原料の成型造粒が可能となった。
【0034】
【表3】

【符号の説明】
【0035】
1 成型ロール
2 押込みスクリュー
3 ホッパー
4 ロードセル
5 双ロール成型機の機枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含鉄原料と炭材の混合物に水分を添加して混練し、双ロール成型機で成型物を造粒する方法において、
混合物の水分量と双ロール成型機の成型圧の関係、及び、成型圧の適正範囲を予め決定し、成型中の成形圧を実測して、その実測値が前記適正範囲から外れている場合は、前記水分量と成型圧の関係に基づき添加する水分量を調整することを特徴とする成型物の造粒方法。
【請求項2】
原料の粒径とロール電流値を一定とした条件下において、原料水分量と成型圧の関係、成型物の強度、および成型物の割れ率を求め、それらに基づき成型圧の適正範囲を予め決定することを特徴とする請求項1に記載の成型物の造粒方法。
【請求項3】
成型圧が前記適正範囲を外れた場合において、さらに、混練した原料を前記成型機のロール間に押し込むためのスクリューの回転数、および/またはロールの成型圧を調整して、成型圧が前記適正範囲となるようにすることを特徴とする請求項1または2に記載の成型物の造粒方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−214045(P2011−214045A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−81969(P2010−81969)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】