説明

成型用ハードコートフィルム

【課題】蛍光灯下での虹彩状色彩を抑制し、かつ、ハードコート層との密着性に優れる成型用ハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】成型用ポリエステルフィルムの接着性改質層面に塗布液を塗布硬化させてなるハードコート層を有する成型用ハードコートフィルムであって、前記塗布液が、3以上の官能基を有する電離放射線硬化型化合物と、1および/または2官能の電離放射線硬化型化合物とを少なくとも含み、前記塗布液に含まれる電離放射線硬化型化合物中の1および/または2官能の電離放射線硬化型化合物の含有量が5質量%以上95質量%以下である成型用ハードコートフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型用ハードコートフィルムに関する。部材、成型体などの前面に装着して、虹彩状色彩を抑制し、ハードコート層との密着性に優れる成型用ポリエステルフィルムおよび成型用ハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成型用フィルムとしては、ポリ塩化ビニルフィルムが代表的であり、近年の耐環境性のニーズにより、環境負荷が小さいポリエステル、ポリカーボネートおよびアクリル系樹脂よるなる未延伸フィルム、さらには耐熱性や耐溶剤性に優れた二軸延伸ポリエステルフィルム等が使用されている(特許文献1〜10)。
【0003】
例えば、家電、自動車の銘板用または建材用部材など、成型用フィルムを外部に触れる位置に装着する場合、キズつき防止のため、成型用フィルムの表面硬度を補い、耐擦傷性を向上させる目的で、表面にハードコート層を設けることが行われる。また、基材のポリエステルフィルムとハードコート層との密着性を向上させるために、これらの中間層として易接性を有する接着性改質層を設ける場合が多い。
【0004】
成型用フィルムにハードコート層を設ける方法として、圧空成型法や真空成型法等で成型した後、ディッピング方式、スプレー方式等によって後加工し、ハードコート層を積層させる方法が一般的である。しかしながら、前述の方法では枚葉加工でハードコート層を積層させるため、生産速度の向上に限界があるほか、品質の安定性に課題があった。そのため、ハードコート層を成型前のフィルムにロール・トゥ・ロール方式で設けた後、成型を行う方法での成型体が求められるようになった。
【0005】
成型前にハードコート層を積層させる方式の場合、ハードコート層に求められる特性として、成形後の後加工でハードコート層を設ける方式と同程度の表面硬度、耐擦傷性が必要であるほか、成型時に伴う変形に追随可能な成型性が必須となる。しかしながら、一般的なハードコート樹脂の場合、表面硬度を満足させるために、ハードコート層が硬すぎるため、成型性が無く、成型加工時の変形によりハードコート層にクラック(ハードコート層の割れ)が発生する問題が生じていた。
【0006】
そこで、硬化後もある程度の表面硬度を有しながらも柔軟性のある樹脂を積層させ、成型性を向上させたハードコートフィルムや、基材上に柔軟性のある層と強い表面硬度がある層を複数積層させることで強い表面硬度と、屈曲性を有するハードコートフィルムが提案されている(特許文献11〜14)。
【0007】
また、ハードコートフィルムには製品や装飾材などの表面に用いられることが多いため、視認性や意匠性が要求されている。そのため、任意の角度から見たときの反射光によるぎらつきや虹彩状色彩等を抑えるため、ハードコート層の上層に、高屈折率層と低屈折率層を相互に積層した多層構造の反射防止層を設けることが行われている。
【0008】
しかしながら、パソコン、AV、家電などの製品や装飾材などの用途では、近年、高い意匠性及び高級性が求められ、それにともなって特に蛍光灯下での虹彩状色彩(干渉斑)の抑制に対する要求レベルが高くなってきている。特に、近年流行のブラック系の配色がなされた製品では干渉斑が視認しやすくなっている。また、蛍光灯は昼光色の再現性のため3波長形が主流となってきており、より干渉斑が出やすくなっている。さらに、反射防止層の簡素化によるコストダウン要求も高くなってきている。そのため、反射防止層を付加しないハードコートフィルムのみでも干渉斑をできるだけ抑制するものが求められている。
【0009】
ハードコートフィルムの虹彩状色彩(干渉斑)は、基材フィルムの屈折率(例えば1.58〜1.65)とアクリル樹脂からなるハードコート層の屈折率(例えば1.48)との差が大きいため発生するといわれている。積層間の屈折率差を小さくして干渉斑の発生を防止するため、基材上に接着性改質層を設け、基材と接着性改質層との屈折率差、接着性改質層とハードコート層の屈折率差を小さくするように、接着性改質層を構成する樹脂と高屈折添加剤の含有量で塗布層の屈折率を制御する方法が開示されている。このような方法として、例えば、水溶性ポリエステル樹脂と水溶性金属キレート化合物または金属アシレート化合物を含むもの(特許文献15)、(2)高分子バインダーと高屈折率の金属酸化物を含むもの(特許文献16)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−156267号公報
【特許文献2】特開平9−187903号公報
【特許文献3】特開平10−296937号公報
【特許文献4】特開平11−268215号公報
【特許文献5】特開2001−129951号公報
【特許文献6】特開2001−212868号公報
【特許文献7】特開2002−249652号公報
【特許文献8】特開2003−211606号公報
【特許文献9】特開2004−075713号公報
【特許文献10】特開2005−290354号公報
【特許文献11】特開2005−305383号公報
【特許文献12】特開2007−284626号公報
【特許文献13】特開2007−313728号公報
【特許文献14】国際公開第2008/029666号パンフレット
【特許文献15】特許第3632044号明細書
【特許文献16】特開2004−54161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献11、13で提案されているハードコートフィルムは、適度な表面硬度を有するものの、成型性については屈曲性や打ち抜き加工といった限定的な加工特性しか有さず、特許文献12で提案されるハードコートフィルムは、伸張性は有するものの、表面硬度については満足のいくものではなかった。また、特許文献14で提案されるハードコートフィルムでは表面硬度と成形性の両立が試みられているものの、より高度な成形性や、より高度な表面硬度が要求される分野においては十分な性能が発揮できない場合もあった。すなわち、上記特許文献は、虹彩状色彩を抑制し、高い表面硬度と、高い成型性と両方の特性を同時に満足するような成型用ハードコートフィルムを提供するものではなかった。
【0012】
本発明の目的は、上記課題を解決するためになされたものであり、すなわち、成型前に成型用フィルムの接着性改質層面にハードコート層を加工、積層させることで、蛍光灯下での虹彩状色彩を抑制し、かつ、ハードコート層との密着性に優れる成型用ハードコートフィルムであり、また、生産性、品質の安定性を向上に寄与することができ、かつ、表面硬度、耐擦傷性と成型時の変形に追随可能な成型性の両方を兼ね備える成型用ハードコートフィルムを提供することにある。
【0013】
すなわち、本発明は、蛍光灯下での虹彩状色彩を抑制し、かつ、ハードコート層との密着性に優れる成型用ポリエステルフィルム及び該フィルムにハードコート層を積層してなる成型用ハードコートフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは上記の課題を解決するため、鋭意研究した結果、ついに本発明を完成するに到った。即ち、本発明は、以下の通りである。
【0015】
すなわち、第1の発明は、基材フィルムの少なくとも片面に接着性改質層面、塗布液を塗布硬化させてなるハードコート層の順に積層した成型用ハードコートフィルムであって、前記塗布液が、3以上の官能基を有する電離放射線硬化型化合物と、1および/または2官能の電離放射線硬化型化合物とを少なくとも含み、前記塗布液に含まれる電離放射線硬化型化合物中の1および/または2官能の電離放射線硬化型化合物の含有量が5質量%以上95質量%以下である成型用ハードコートフィルムである。
第2の発明は、前記基材フィルムが二軸配向ポリエステルフィルムである前記成型用ハードコートフィルムである。
第3の発明は、前記ハードコート層中に平均粒子径10nm以上300nm以下の粒子を含み、前記粒子のハードコート層中の含有量が5質量%以上70質量%以下である前記成型用ハードコートフィルムである。
第4の発明は、前記塗布液に含まれる電離放射線硬化化合物の少なくとも1種がアミノ基を有する電離放射線硬化化合物である前記成型用ハードコートフィルムである。
第5の発明は、前記ハードコート層中に電離放射線硬化型シリコーン樹脂を含み、前記電離放射線硬化型シリコーン樹脂のハードコート層中の含有量が前記電離放射線硬化型化合物100質量部に対して0.15質量部以上15質量部以下である前記成型用ハードコートフィルムである。
第6の発明は、前記接着性改質層にポリエステル樹脂と架橋剤を含む前記成型用ハードコートフィルムである。
第7の発明は、前記架橋剤が尿素系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、シラノール系架橋剤から選ばれた少なくとも1種の架橋剤である成型用ポリエステルフィルムである。
第8の発明は、前記ポリエステル樹脂が、酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含む前記成型用ハードコートフィルムである。
第9の発明は、前記ポリエステル樹脂が下記式(1)で表されるジカルボン酸成分および/または下記式(2)で表されるジオール成分を含む前記成型用ポリエステルフィルムである。
(1)HOOC−(CH2n−COOH (式中、nは4≦n≦10の整数)
(2)HO−(CH2n−OH (式中、nは4≦n≦10の整数)
第10の発明は、前記接着性改質層に屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子を含む前記成型用ハードコートフィルムである。
第11の発明は、前記ポリエステル樹脂にカルボン酸塩基を含む前記成型用ハードコートフィルム。
第12の発明は、前記成型用ハードコートフィルムを成型してなる成型体である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の成型用ハードコートフィルムは、干渉斑抑制に優れ、表面硬度、耐擦傷性と成型時の変形に追随可能な成型性の両方の特性を有する。本発明は高い表面硬度と、優れた伸張性を備える為、好ましい実施態様として、例えば銘板用または建材用の部材などに好適に使用しうる。また、本発明の好ましい実施態様として、アミノ基を有する電離放射線硬化樹脂もしくは/および粒子を用いる場合は、表面硬度と成型性の両方の特性をより高度に両立でき、例えば筐体などの部材として好適に使用しうる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0018】
(基材フィルム)
本発明において、基材フィルムは特に限定されるものではないが、成型性を有することを特徴とする。ここで成型性とは、金型成型や圧空成型、真空成型などの成型加工により成型体を形成しうることをいう。具体的には成型によって局部的に伸長された部分において、部分的に高い応力が発生した際にも基材フィルムが破断せずに成型体を形成可能なフィルム応力特性を有するものである。
【0019】
このような基材フィルムとしては、例えばポリエステル系、アクリル系、セルロ−ス系、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリカーボネ−ト系、フェノ−ル系、ウレタン系等のプラスチックフィルム又はシート及びこれらの任意の2種類以上を貼り合わせたものが挙げられる。好ましくは、耐熱性、柔軟性のバランスが良好なポリエステル系フィルムである。
【0020】
低い温度や低い圧力下での加熱成型を行なう場合は、基材フィルムとして共重合ポリエステルを含むポリエステルフィルムが好ましい。共重合ポリエステルとしては、(a)芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコールと、分岐状脂肪族グリコール又は脂環族グリコールを含むグリコール成分から構成される共重合ポリエステル、あるいは(b)テレフタル酸及びイソフタル酸を含む芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコールを含むグリコール成分から構成される共重合ポリエステルが好適である。
【0021】
前記の共重合ポリエステルとして、芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコールと、分岐状脂肪族グリコール又は脂環族グリコールを含むグリコール成分から構成される共重合ポリエステルを用いる場合、芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体が好適であり、全ジカルボン酸成分に対するテレフタル酸および/またはナフタレンジカルボン酸成分の量は70モル%以上、好ましくは85モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、とりわけ好ましくは100モル%である。
【0022】
本発明において、共重合ポリエステルを含むポリエステルフィルムは、フィルムの構成成分として共重合ポリエステル成分を含むものであり、具体的な態様として以下のようなものが例示される。(1)基材フィルムがすべて共重合ポリエステルからなるもの、(2)基材フィルムの構成成分の一部として共重合ポリエステルを含むもの(例えば、共重合ポリエステルと、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどの他の(ホモ)ポリエステルとを混合した樹脂組成物からなるもの)、(3)基材フィルムが、共重合ポリエステルを含むポリエステル層と共重合ポリエステルを含まないポリエステル層との多層からなるもの。
【0023】
前記基材フィルムは、耐熱性や耐溶剤性等の点から、二軸延伸フィルムが特に好ましい。延伸方法としては、チューブラ延伸法、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法等が挙げられるが、平面性、寸法安定性、厚みムラ等から逐次二軸延伸法が好ましい。例えば基材フィルムとしてポリエステルフィルムを用いる場合の逐次二軸延伸法としては、長手方向に50℃以上110℃以下で、1.6倍以上4.0倍に長手方向にロール延伸し、引き続き、テンターで予熱後、ポリエステルのガラス転移温度−40℃以上+65℃以下で1.2倍以上5.0倍以下に幅方向に延伸することができる。さらに、二軸延伸後にポリエステルの融点の−40℃以上−10℃以下の温度で熱固定処理を行うことができる。
【0024】
本発明で用いる基材フィルムは、ハンドリング性(例えば、積層後の巻取り性)を付与するために、フィルムに粒子を含有させてフィルム表面に突起を形成させることが好ましい。フィルムに含有させる粒子としては、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、等の無機粒子、アクリル、PMMA、ナイロン、ポリスチレン、ポリエステル、ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物、等の耐熱性高分子粒子が挙げられる。透明性の点から、フィルム中の粒子の含有量は少ないことが好ましく、例えば1ppm以上1000ppm以下であることが好ましい。さらに、透明性の点から使用する樹脂と屈折率の近い粒子を選択することが好ましい。また、フィルムには必要に応じて各種機能を付与するために、耐光剤(紫外線防止剤)、色素、帯電防止剤などを含有させてもよい。
【0025】
成型用ハードコートフィルムを、例えばハードコート層を積層しない面に印刷加工を施す場合は、基材フィルムの全光線透過率が80%以上で、かつヘーズが5%以下であることが好ましい。基材フィルムの透明性に劣る場合には、印刷層をハードコート層側から見た際の視認性が低下する。
【0026】
本発明で用いる基材フィルムは、単層フィルムであっても、表層と中心層を積層した2層以上の複合フィルムであっても構わない。複合フィルムの場合、表層と中心層の機能を独立して設計することができる利点がある。例えば、厚みの薄い表層にのみ粒子を含有させて表面に凹凸を形成することでハンドリング性を維持しながら、厚みの厚い中心層には粒子を実質上含有させないことで、複合フィルム全体として透明性をさらに向上させることができる。前記の複合フィルムの製造方法は特に限定されるものではないが、生産性を考慮すると、表層と中心層の原料を別々の押出機から押出し、1つのダイスに導き未延伸シートを得た後、少なくとも1軸方向に配向させる、いわゆる共押出法による積層が好ましい。
【0027】
本発明で用いる基材フィルムの厚みは素材により異なるが、ポリエステルフィルムを用いる場合には、下限は20μm以上が好ましく、より好ましくは30μ以上である。一方、厚みの上限は260μm以下が好ましく、より好ましくは200μm以下である。厚みが薄い場合には、ハンドリング性が不良となるばかりか、ハードコート層の残留溶媒を少なくなるように乾燥時に加熱した場合に、フィルムに熱シワが発生して平面性が不良となりやすい。一方、厚みが厚い場合にはコスト面で問題があるだけでなく、ロール状に巻き取って保存した場合に巻き癖による平面性不良が発生しやすくなる。
【0028】
また、基材フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルムも好適に用いることができる。この場合、成型性の点からフィルム厚みは薄いことが好ましい。具体的には、ポリエチレンテレフタレートフィルムの場合、フィルムの厚みは100μm以下が好ましく、75μm以下がより好ましく、60μm以下が好ましく、50μm以下がよりさらに好ましい。
【0029】
(接着性改質層)
本発明の成型用ハードコートフィルムは、中間層として接着性改質層を設ける。本発明の接着性改質層はハードコート層との密着性を向上させる点で好ましいが、接着性改質層の組成構成を調整することで干渉縞の発生を抑制し、視認性の改善を図ることができる。理論的には、接着性改質層の屈折率と厚みをフレネルの式より求めた下記式(a)、(b)を満足するように調整することが望ましい。ここで(反射率を低くしたい波長)としては可視光領域の光波長を選択することが望ましい。このようにすることで各界面屈折率差を小さくし、干渉斑を抑制することができる。具体的には、後述する樹脂組成物および/もしくは添加剤を選択・組合せをすることにより接着性改質層の屈折率を制御することができる。
(a)(接着性改質層の屈折率)2=(基材の屈折率)×(ハードコート層の屈折率)
(b)(接着性改質層の厚み)=λ(反射率を低くしたい波長)/4×(接着性改質層の屈折率)
【0030】
本発明において、接着性改質層にポリエステル樹脂を含有させてもよい。前記ポリエステル樹脂の酸性分として、ナフタレンジカルボン酸を含有させることが好ましい。ナフタレンジカルボン酸を含有させることで、屈折率が増加し、蛍光灯下での虹彩状色彩を制御しやすくなる。また、耐湿熱性を向上させることができる。
【0031】
このようなナフタレンジカルボン酸としては、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましい。ポリエステル樹脂中の上記ナフタレンジカルボン酸の割合は酸性分として20%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、50%以上がさらに好ましく、60%以上がよりさらに好ましい。また、ポリエステル樹脂中の上記ナフタレンジカルボン酸の割合は酸性分として90%以下が好ましく、85%以下がより好ましく、80%以下がさらに好ましい。ポリエステル樹脂中の上記ナフタレンジカルボン酸の割合は、接着性改質層の屈折率が理論的に前述の範囲になるよう適宜調整するが、20%未満であれば、基材との密着性が低下する場合がある。また、90%を超える場合は、樹脂の密着性が低下する場合がある。
【0032】
また、その他の酸成分として、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、4−ナトリウムスルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸等が挙げられる。ジオール成分としては、エチレングリコール、プロパングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0033】
さらに、本発明のポリエステル樹脂は、下記式(1)のジカルボン酸成分および/または下記式(2)のジオール成分を含有させることも好ましい。
(1)HOOC−(CH2n−COOH (式中、nは4≦n≦10の整数)
(2)HO−(CH2n−OH (式中、nは4≦n≦10の整数)
【0034】
このように、特定の長さの炭素成分を有する酸成分および/またはジオール成分を含有することで、ポリエステル樹脂に柔軟性を付与し、例えば後述の金属酸化物粒子など比較的大きな粒子であっても、保持し易く、接着性改質層の削れや粒子の脱落を顕著に抑制することができる。一方、nが4未満であれば、係る効果は得られず、接着性改質層の削れ性が生じる場合がある。また、nが10を超えると、ポリエステル樹脂が奏する屈折率が低下し、蛍光灯下での虹彩状色彩の抑制効果が不十分になる場合がある。なお、上記nの上限は9以下がより好ましく、8以下がさらに好ましい。
【0035】
ポリエステル樹脂中の上記式(1)のジカルボン酸成分および/または上記式(2)のジオール成分は10%以上が好ましく、15%以上がよりに好ましく、20%以上がさらに好ましい。また、上記ポリエステル樹脂中の上記式(1)のジカルボン酸成分および/または上記式(2)のジオール成分は70%以下が好ましく、60%以下がより好ましく、50%以下がさらに好ましい。ポリエステル樹脂中の上記式(1)のジカルボン酸成分および/または上記式(2)のジオール成分は10%未満であれば、他成分の割合によっては、接着性改質層の耐削れ性が悪化する場合があり、70%以上であれば、屈折率が低下し、蛍光灯下での虹彩状色彩の抑制効果が不十分になる場合がある。なお、ポリエステル樹脂の構成成分については、NMRや質量分析機によっても好適に行うことができる。
【0036】
ポリエステル樹脂は水、または、水溶性の有機溶剤(例えば、アルコール、アルキルセルソルブ、ケトン系、エーテル系を50質量%未満含む水溶液)または、有機溶剤(例えば、トルエン、酢酸エチル等)に対して溶解または分散したものが使用できる。
【0037】
ポリエステル樹脂を水系塗液として用いる場合には、水溶性あるいは水分散性のポリエステル樹脂が用いられるが、このような水溶性化あるいは水分散化のためには、スルホン酸塩基を含む化合物や、カルボン酸塩基を含む化合物を共重合させることが好ましい。特に架橋剤を併用する場合は、架橋剤との反応性が高いカルボン酸塩基を含むことは接着性改質層の耐溶剤性の点から好ましい。これにより、オフラインコートなど乾燥温度が低い場合であっても十分な架橋構造を形成しやすくなるからである。
【0038】
スルホン酸基を含む化合物を共重合させるためには、前記のジカルボン酸成分の他に、5−スルホイソフタル酸そのアルカリ金属塩を1〜10モル%の範囲で使用するのが好ましく、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレンイソフタル酸−2,7−ジカルボン酸および5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸またはそのアルカリ金属塩を挙げることができる。
【0039】
また、カルボン酸塩基を含む化合物を共重合させるためには、多価カルボン酸を共重合することによって得ることができる。多価カルボン酸としては、例えばトリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、無水ピロメリット酸、4?メチルシクロヘキセン?1,2,3?トリカルボン酸、トリメシン酸、1,2,3,4?ブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4?ペンタンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’?ベンゾフェノンテトラカルボン酸、5?(2,5?ジオキソテトラヒドロフルフリル)?3?メチル?3?シクロヘキセン?1,2?ジカルボン酸、5?(2,5?ジオキソテトラヒドロフルフリル)?3?シクロヘキセン?1,2?ジカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、2,3,6,7?ナフタレンテトラカルボン酸、1,2,5,6?ナフタレンテトラカルボン酸、エチレングリコールビストリメリテート、2,2’,3,3’?ジフェニルテトラカルボン酸、チオフェン?2,3,4,5?テトラカルボン酸、エチレンテトラカルボン酸などあるいはこれらのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩を挙げることができる。
【0040】
前記ポリエステル樹脂は接着性改質層中に、全固形成分中、30質量%以上90質量%以下含有することが好ましい。より好ましくは40%質量%以上80質量%以下である。ポリエステル樹脂の含有量が多い場合には、高温高湿下のハードコート層との密着性が低下し、逆に、含有量が少ない場合には、常温、高温高湿下のポリエステルフィルムとの密着性が低下する。
【0041】
本発明において、接着性改質層中に架橋剤を含有させても良い。架橋剤を含有させることにより、高温高湿下での密着性を更に向上させることが可能になる。架橋剤としては、尿素系、エポキシ系、メラミン系、イソシアネート系、オキサゾリン系、カルボジイミド系、シラノール系等が挙げられる。これらの中で、塗液の経時安定性、高温高湿処理下の密着性向上効果からオキサゾリン系、カルボジイミド系、シラノール系が好ましい。また、架橋反応を促進させるため、触媒等を必要に応じて適宜使用される。
【0042】
架橋剤の接着性改質層中の含有量としては、全固形成分中、5質量%以上50質量%以下が好ましい。より好ましくは10質量%以上30質量%以下である。少ない場合には、接着性改質層の樹脂の強度が低下し、高温高湿下での密着性が低下し、多い場合には、接着性改質層の樹脂の柔軟性が低下し、常温、高温高湿下での密着性が低下する。
【0043】
本発明において、接着性改質層の屈折率を調整するために、接着性改質層中に屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子(粒子A)を含有させてもよい。このような金属酸化物としては、TiO2(屈折率2.7)、ZnO(屈折率2.0)、Sb23(屈折率1.9)、SnO2(屈折率2.1)、ZrO2(屈折率2.4)、Nb25(屈折率2.3)、CeO2(屈折率2.2)、Ta25(屈折率2.1)、Y23(屈折率1.8)、La23(屈折率1.9)、In23(屈折率2.0)、Cr23(屈折率2.5)等、及びこれらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。本発明の接着性改質層には、これらの金属酸化物を少なくとも1種または2種以上を含有する。金属酸化物粒子の屈折率が1.7以上であれば、接着性改質層の屈折率を前記範囲で調整する点で好ましい。また、金属酸化物粒子の屈折率が3.0以下であればフィルムの透明性を維持する点で好ましい。
【0044】
金属酸化物粒子の接着性改質層中の含有量としては、全固形成分中、3質量%以上70質量%以下が好ましい。金属酸化物粒子の含有量の下限としては、4質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。また、金属酸化物粒子の含有量の上限としては、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましく、20質量%以下がよりさらに好ましく、15質量%以下が特に好ましい。ハードコート層の屈折率によって、前記範囲内で金属酸化物粒子を添加し、接着性改質層の屈折率1.52〜1.60の範囲で調整する。金属酸化物粒子の含有量が3質量%未満であれば接着性改質層の屈折率を上記範囲に調整することが困難になる場合がある。また、金属酸化物粒子の含有量が70質量%を越えると接着性改質層の密着性が低下する場合があるので好ましくない。金属酸化物粒子の平均粒子径は特に限定されないが、フィルムの透明性を維持する点から1〜100nmであれば好ましい。
【0045】
本発明において、接着性改質層中に平均粒径200nm以上700nm以下の粒子(粒子B)を含有させてもよい。粒子Bは(1)シリカ、カオリナイト、タルク、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、炭酸亜鉛、二酸化チタン、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、等の無機粒子、(2)アクリルあるいはメタアクリル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、ナイロン、スチレン/アクリル系、スチレン/ブタジエン系、ポリスチレン/アクリル系、ポリスチレン/イソプレン系、ポリスチレン/イソプレン系、メチルメタアクリレート/ブチルメタアクリレート系、メラミン系、ポリカーボネート系、尿素系、エポキシ系、ウレタン系、フェノール系、ジアリルフタレート系、ポリエステル系等の有機粒子が挙げられる。
【0046】
前記粒子は、平均粒径が200〜700nmのものが好適である。粒径が小さい場合は接着性改質層とハードコート層の界面の凹凸形成が小さく、散乱効果が減少し、蛍光灯下での虹彩状色彩の抑制効果が不十分となりやすくなる。大きい場合は、接着性改質層の透明性が悪くなる場合がある。
【0047】
前記粒子は凝集しにくい、真球状のものが好ましい。粒子が凝集すると、散乱の効果が減少し、灯下での虹彩状色彩の抑制効果が不十分となりやすくなるだけでなく、光学欠点となる場合がある。また、粒子による光の散乱効果を発揮する点でも、真球状の粒子は好ましいと考える。また、フィルムの透明性を維持する点から、粒子は無色透明であることが好ましい。
【0048】
本発明の接着性改質層中の粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、倍率12万倍で易接着性フィルムの断面を撮影し、接着性改質層の断面に存在する10ヶ以上の粒子の最大径を測定し、それらの平均値を求めることができる。その際は、異物や粒子Aの粒子を除くため、100nm以上の粒子を選別して平均を求めるのが好ましい。
【0049】
前記粒子の接着性改質層中の含有量としては、全固形成分中、0.5質量%以上5質量%以下が好ましい。粒子Bの接着性改質層中の含有量の上限としては、4質量%以下がより好ましく、3質量%以下がさらに好ましく、2質量%以下が特に好ましい。少ない場合は、散乱効果が減少し、蛍光灯下での虹彩状色彩の抑制効果が不十分となりやすくなる。多い場合は、接着性改質層の透明性が悪くなるだけでなく、膜強度が低下する。
【0050】
接着性改質層には、塗布時のレベリング性の向上、塗布液の脱泡を目的に界面活性剤を含有させることもできる。界面活性剤は、カチオン系、アニオン系、ノニオン系などいずれのものでも構わないが、シリコン系、アセチレングリコール系又はフッ素系界面活性剤が好ましい。これらの界面活性剤は、蛍光灯下での虹彩状色彩の抑制効果や密着性を損なわない程度の範囲で接着性改質層に含有させることが好ましい。
【0051】
接着性改質層に他の機能性を付与するために、蛍光灯下での虹彩状色彩の抑制効果や密着性を損なわない程度の範囲で、各種の添加剤を含有させても構わない。前記添加剤としては、例えば、蛍光染料、蛍光増白剤、可塑剤、紫外線吸収剤、顔料分散剤、抑泡剤、消泡剤、防腐剤、等が挙げられる。
【0052】
本発明において、ポリエステルフィルム上に接着性改質層を設ける方法としては、溶媒、粒子、樹脂を含有する接着性改質層形成用塗布液をポリエステルフィルムに塗布、乾燥する方法が挙げられる。溶媒として、トルエン等の有機溶剤、水、あるいは水と水溶性の有機溶剤の混合系が挙げられるが、好ましくは、環境問題の点から水単独あるいは水に水溶性の有機溶剤を混合したものが好ましい。
【0053】
接着性改質層形成用塗布液をポリエステルフィルムに塗布、乾燥する方法としては、フィルム 製膜中で行なうインラインコート法や、製膜後のフィルムに塗布・乾燥するオフラインコート法などを採用することができる。基材フィルムとして100μm以下や75μm以下の比較的薄いポリエステルフィルムを用いる場合や、加熱により変形しやすい共重合ポリエステルを含有するフィルムなどを用いる場合は、比較的低い乾燥温度を選択できるオフラインコート法が好ましい。接着性改質層の塗布厚み変動をできるだけ抑制し、より好適な干渉抑制効果を発現させるためにはオフラインコート法が好ましく、特に上記基材フィルムを採用する場合はその効果が顕著である。
【0054】
(成型用ハードコートフィルム)
本発明におけるハードコート層は、基材フィルムの接着性改質層面に塗布液を塗布硬化させてなるハードコート層を形成する。このように接着性改質層を介してハードコート層を設けることでハードコート層と基材フィルムとの密着性を向上させることができる。なお、本発明においてハードコート層とは、基材フィルムからなる基材の表面硬度を補い、耐擦傷性を向上せしめるべく、基材よりも高硬度な被膜を有し、かつ、成型時の伸張変形にも追随可能な優れた成型性を有する層を示す。つまり、成型用ハードコートフィルムとは、従来のように基材フィルムを成型後にハードコート層を付与するのではなく、成型加工前に予めハードコート層を有する成型フィルムである。これにより、ハードコート成型体としての品質の安定が図られるだけでなく、連続して安定したハードコート層を形成することができるので、ハードコート層の変動などによる干渉縞の発生を抑制することができ、好適である。
【0055】
本発明で使用可能なハードコート性を有する層は、特に限定するものではなく、メラミン系、アクリル系、シリコーン系の電離放射線硬化型化合物が挙げられるが、なかでも高い表面硬度を得る点でアクリレート系電離放射線硬化型化合物が好ましい。ここで、電離放射線硬化型化合物とは、電子線、放射線、紫外線のいずれかを照射することによって重合、および/または反応する化合物のことを指し、かかる化合物が重合、および/または反応することによりハードコート層を構成する。なお、本発明で電離放射線硬化型化合物とは、単量体、前駆体だけでなく、それらが重合、および/または反応した電離放射線硬化型樹脂も当然に含まれる
【0056】
本発明において、ハードコート層を形成するための前記塗布液中に含まれる電離放射線硬化型化合物中には、1または2官能の電離放射線硬化型化合物の他に3官能以上の電離放射線硬化型化合物が1種以上を含まれることが好ましい。このように官能数の異なる2種類以上の電離放射線硬化型化合物を特定の濃度範囲で調整することで、ハードコート層にへテロな架橋構造を導入し、ハードセグメントによって表面硬度、耐擦傷性が付与し、かつ、ソフトセグメントの伸縮性により、成型性も好適に付与される。
【0057】
本発明では、高い表面硬度と優れた成型性とを両立するために、前記塗布液中に含まれる電離放射線硬化型化合物中の1および/または2官能の電離放射線硬化型化合物の含有量が5質量%以上95質量%以下であることが好ましい。上記含有量が5質量%未満の場合には、成型時にハードコート層にクラックが発生するので好ましくない。また、上記含有量が95質量%を超える場合は、十分な表面硬度、耐擦傷性を有する硬化被膜が得られ難くい。上記含有量の下限は、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。また、上記含有量の上限は90質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましく、70質量%以下がよりさらに好ましい。
【0058】
電離放射線硬化型化合物としてアクリレート系電離放射線硬化型化合物を用いる場合、本発明における1官能(単官能)のアクリレート系電離放射線硬化型化合物としては、分子内に少なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を含有する化合物であれば特に制限されるものではない。例えば、アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、イソボルニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエン(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドテトラクロロフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、テトラブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−テトラブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−トリクロロフェノキシエチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、2−トリブロモフェノキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ビニルカプロラクタム、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンタクロロフェニル(メタ)アクリレート、ペンタブロモフェニル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、メチルトリエチレンジグリコール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノニルフェニル(メタ)アクリレート、およびそのカプロラクトン変成物などの誘導体、アクリル酸等及びそれらの混合物等が挙げられる。
【0059】
電離放射線硬化型化合物としてアクリレート系電離放射線硬化型化合物を用いる場合、本発明における2官能のアクリレート系電離放射線硬化型化合物としては、1分子中に2個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの該水酸基が2個の(メタ)アクリル酸のエステル化物となっている化合物などを用いることができる。具体的には、(a)炭素数2〜12のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレートなど、(b)ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリレート酸ジエステル類:ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど、(c)多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなど、(d)ビスフェノールAあるいはビスフェノールAの水素化物のエチレンオキシド及びプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類:2,2'−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2'−ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)プロパンなど、(e)多価イソシアネート化合物と2個以上のアルコール性水酸基含有化合物を予め反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物に、更にアルコール性水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレート類、(f)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物にアクリル酸又はメタクリル酸を反応させて得られる分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート類、などが挙げられる。
【0060】
電離放射線硬化型化合物としてアクリレート系電離放射線硬化型化合物を用いる場合、本発明における3官能以上のアクリレート系電離放射線硬化型化合物としては、(a)具体的には、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなど、(b)多価イソシアネート化合物と2個以上のアルコール性水酸基含有化合物を予め反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物に、更にアルコール性水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレート類、(c)分子内に3個以上のエポキシ基を有する化合物にアクリル酸又はメタクリル酸を反応させて得られる分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート類、などが挙げられる。
【0061】
また本発明では、前記塗布液に含まれる少なくとも1種の電離放射線硬化化合物がアミノ基を有することが、高い表面硬度と優れた成型性とをより良く両立する上で好ましい。電離放射線硬化化合物としてアミノ基を有する化合物を用いた場合、アミノ基がラジカル酸素をトラップし、ハードコート層の表層部の硬化反応に及ぼす酸素阻害の影響が小さくなるため、層全体で均一な硬化反応が進行する。これにより成型時にハードコート層にかかる応力が層全体に分散され、成型時のクラックの発生が抑制されるやすくなる。
【0062】
前記塗布液中に含まれる電離放射線硬化型化合物中のアミノ基を含む電離放射線硬化型化合物の含有量は2.5質量%以上95質量%以下であること好ましい。前記塗布液中に含まれる電離放射線硬化型化合物中のアミノ基を含む電離放射線硬化型化合物の含有量の下限は5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましい。また上記含有量の上限は92.5質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましく、50質量%以下であることがよりさらに好ましい。前記塗布液中に含まれる電離放射線硬化型化合物中のアミノ基を含む電離放射線硬化型化合物の含有量が2.5質量%未満の場合、ハードコート層全体で均一に硬化され難くため、成型時のクラックに対する耐性が得られにくくなる。また、アミノ基を含む電離放射線硬化型化合物が高濃度になると、アミノ基に起因してハードコート層の黄変が強くなるため、上記含有量が95質量%を超えると、高透明性が損なわれる場合がある。例えば、ハードコート層を積層しない面に印刷加工を施す場合、フィルムのカラーb値として2以下であることが好ましく、この場合、上記アミノ基を含む電離放射線硬化型化合物は92.5質量%以下であることが好ましい。
【0063】
本発明において前記塗布液には、1および/または2官能の電離放射線硬化型化合物、および3以上の官能基を有する電離放射線硬化型化合物が含まれるが、上記実施態様においては、このうちの一部の電離放射線硬化型化合物がアミノ基を含むものであればよい。また、1官能の電離放射線硬化型化合物、もしくは2官能の電離放射線硬化型化合物、もしくは3以上の官能基を有する電離放射線硬化型化合物のいずれかがアミノ基を含む電離放射線硬化型化合物であることも好ましい実施態様である。
【0064】
アミノ基を有する電離放射線硬化型化合物としてアクリレート系電離放射線硬化型化合物を用いる場合、例えば、アミノ基を有するアクリレート系電離放射線硬化型化合物としては、アクリルアミド、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミドテトラクロロフェニル(メタ)アクリレート、N−ビニルホルムアミドなどがあげられる。
【0065】
また本発明では、ハードコート層に粒子を含有することが、高い表面硬度と優れた成型性とをより良く両立する上で好ましい。ハードコート層内に粒子が存在することで、成型時にハードコート層にかかる内部応力を電離放射線硬化型化合物と粒子の界面で緩和し、クラックの発生が抑制されるほか、ハードコート層に外観を損ねない程度の目視では確認できない微小なクラックが先行して発生する効果があり、ハードコート層の致命的な割れ(全層クラック)が抑制される。
【0066】
ハードコート層に含有させる粒子としては、例えば、アモルファスシリカ、結晶性シリカ、シリカ−アルミナ複合酸化物、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム(カルサイト型、バテライト型)、ゼオライト、アルミナ、ヒドロキシアパタイト等の無機粒子、架橋アクリル粒子、架橋PMMA粒子、架橋ポリスチレン粒子、ナイロン粒子、ポリエステル粒子、ベンゾグアナミン・ホルマリン縮合物粒子、ベンゾグアナミン・メラミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子メラミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子等の耐熱性高分子粒子、シリカ・アクリル複合化合物のような有機・無機ハイブリッド微粒子が挙げられるが、本発明では、粒子の種類は特に限定されない。
【0067】
本発明では、粒子の平均粒子径が10nm以上300nm以下であることが好ましく、さらに下限は40nm以上、上限は200nm以下であることが好ましく、特に下限は50nm以上、上限は100nm以下であることが好ましい。粒子の平均粒子径が10nmより小さい場合、平均粒子径が小さすぎるため、前述した粒子添加による表面硬度、耐擦傷性、成型性の向上効果のいずれも、もしくはいずれかが少ない場合がある。また、300nmを超える場合、ハードコート層が脆弱となり、成型性が低下する場合がある。なお、前記の平均粒子径はコールターカウンター(ベックマン・コールター製、マルチサイザーII型)を用いて、粒子を膨潤させない溶媒に分散させて測定した平均粒子径である。
【0068】
本発明では、ハードコート層に含有させる粒子の含有量はハードコート層中の固形成分として5質量%以上70質量%以下であることが好ましく、特に好ましくは、前記含有量の下限は15質量%以上、上限は50質量%以下である。粒子の含有量が5質量%より少ない場合、前述した粒子添加による表面硬度、耐擦傷性、成型性の向上効果いずれも、もしくはいずれかが少なくなる場合がある。一方、粒子の含有量が70質量%を超える場合、成型時に前述した微小なクラックが多量に発生し、ヘーズが上昇(白化)し成型体の透明性を損ねてしまう。
【0069】
さらに本発明では、ハードコート層に電離放射線硬化型シリコーン樹脂を含有することが好ましい。これにより、滑り性が付与され、表面の耐擦傷性が向上し、さらに高度に表面硬度と成型性を両立しえる。
【0070】
電離放射線硬化型シリコーン樹脂とは、例えば分子内に、アルケニル基とメルカプト基を有するラジカル付加型、アルケニル基と水素原子を有するヒドロシリル化反応型、エポキシ基を有するカチオン重合型、(メタ)アクリル基を有するラジカル重合型のシリコーン樹脂等が挙げられる。これらの中でエポキシ基を有するカチオン重合型や(メタ)アクリル基を有するラジカル重合型が好ましい。
【0071】
分子内にエポキシ基や(メタ)アクリル基を有するシリコーン樹脂としては、例えば、エポキシプロポキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、(エポキシシクロヘキシルエチル)メチルシロキサン−ジメチルシロキサンコポリマー、メタクリロキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン、アクリロキシプロピル末端ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。また、分子内にビニル基を有するシリコーン樹脂として、例えば、末端ビニルポリジメチルシロキサン、ビニルメチルシロキサンホモポリマー等を挙げることができる。
【0072】
本発明では、ハードコート層に含有させる電離放射線硬化型シリコーン樹脂の添加量は、ハードコート層を構成するための前記電離放射線硬化型化合物100質量部に対し、好ましくは0.15〜15質量部、より好ましくは0.3〜13質量部、さらに好ましくは0.5〜5質量部を配合することが望ましい。電離放射線硬化型シリコーン樹脂の配合量が下限未満であると、成型体にした際の耐擦傷性の向上効果が乏しくなり、また、上限を超えると、ハードコート層形成時に、硬化が充分に行なわれない場合がある。なお、ハードコート層に含有させる電離放射線硬化型シリコーン樹脂は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
本願発明では、上記のように成型用フィルムの用途に応じて、電離放射線硬化化合物にアミノ基を有する化合物を用いること、ハードコート層への粒子の添加すること、およびハードコート層に電離放射線硬化型シリコーン樹脂を含有することを適宜選択もしくは組み合わせることが望ましい。
【0074】
本発明では、前記塗布液を重合、および/または反応させる方法として、電子線、放射線、紫外線を照射する方法が挙げられるが、紫外線照射する場合には前記塗布液に光重合開始剤を加えることが望ましい。
【0075】
光重合開始剤の具体的な例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、4,4'−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等のカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のパーオキサイド化合物が挙げられる。これらの光重合開始t−ブチルパーオキサイド等のパーオキサイド化合物が挙げられる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせてもよい。光重合開始剤の添加量は、前記塗布液中に含まれる電離放射線硬化型化合物100質量部当たり0.01質量部以上15質量部以下が適当であり、使用量が少ない場合は反応が遅く生産性が不良になるだけでなく、残存する未反応物により十分な表面硬度、耐擦傷性が得られない。逆に添加量が多い場合には、光重合開始剤によりハードコート層が黄変する問題が発生する。
【0076】
本発明では、前記塗布液には、塗工時の作業性の向上、塗工膜厚のコントロールを目的として、本発明の目的を損なわない範囲において、有機溶剤を配合することができる。また、本発明のハードコート層には、必要に応じて種々の添加剤を配合することができる。例えば、撥水性を付与する為のフッ素やシリコン系の化合物、塗工性や外観向上の為の消泡剤、更には、帯電防止剤や着色用の染料や顔料が挙げられる。
【0077】
ハードコート層を積層する方法としては、公知の方法が挙げられるが、前記塗布液を基材フィルム上に塗布乾燥後、硬化させる方法が好適である。塗布法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式、バーコート方式、リップコート方式などの公知の塗布方法が挙げられる。これらのなかで、ロール・トゥ・ロール方式で塗工可能で、均一に塗布することのできるグラビアコート方式、特にリバースグラビア方式が好ましい。
【0078】
前記塗布液に含まれる電離放射線硬化型化合物、粒子、光重合開始剤等の固形分の濃度は、5質量%以上70質量%が好ましい。塗布液の固形分の濃度を5質量%以上に調整することにより、塗布後の乾燥時間が長くなることによる生産性の低下を抑えることができる。一方、塗布液の固形分の濃度を70質量%以下に調整することにより、塗布液の粘度の上昇によるレベリング性の悪化、及びそれにともなう塗布外観の悪化を防ぐことができる。また、塗布外観の点から、塗布液の粘度を0.5cps以上300cps以下の範囲になるように、塗布液の固形分濃度、あるいは有機溶剤の種類、界面活性剤の種類は配合量を調整することが好ましい。
【0079】
塗布、硬化後のハードコート層の厚みは、成型時の伸長の程度によるが、成型後のハードコート層の厚みが0.5μm以上50μm以下になるようにすることが好ましい。具体的には、成型前のハードコート層の厚みの下限は0.6μm以上が好ましく、1.0μm以上がさらに好ましい。また、成型前のハードコート層の厚みの上限は100μm以下が好ましく、80μm以下がより好ましく、60μm以下がさらに好ましく、20μm以下がよりさらに好ましい。ハードコート層の厚みが0.6μmより薄い場合はハードコート性が得られ難く、逆に100μmを超える場合は、ハードコート層の硬化不良や硬化収縮によるカールが悪い傾向を示す。
【0080】
本発明の成型用ハードコートフィルムは、表面硬度に優れるフィルムである。具体的には、鉛筆硬度の測定値がH以上であることが好ましく、さらに2H以上であることが特に好ましい。ここで鉛筆硬度の評価はJIS−K5600に準拠して行った。
【0081】
表面硬度を調整する方法としては、ハードコート層を形成する塗布液に含まれる電離放射線硬化型化合物中の1または2官能の電離放射線硬化型化合物の含有量やアミノ基を有する電離放射線硬化型化合物の含有量、ハードコート層中の粒子の存在量、ハードコート層の厚みにより変更することができる。
【0082】
また、本発明の成型用ハードコートフィルムは、耐擦傷性に優れる。具体的には、JIS−K5600に準拠し、荷重500gfで#0000のスチールウールで表面を20往復し、傷の発生の有無及び傷の程度を目視により観察し、深いキズが10本以下の少量であることが好ましく、さらに深いキズが全く無いことが特に好ましい。
【0083】
耐擦傷性を調整する方法としては、ハードコート層を形成する塗布液に含まれる電離放射線硬化型化合物中の1または2官能の電離放射線硬化型化合物の含有量やアミノ基を有する電離放射線硬化型化合物の含有量、ハードコート層中の粒子の存在量により変更することができる。
【0084】
さらに、本発明の成型用ハードコートフィルムは、成型性に優れる。具体的には、室温、フィルム実温が160℃時ともに伸度が10%以上であることが好ましく、20%以上であることがさらに好ましく、30%以上であることが特に好ましい。ここで伸度とは、長さ10mm、幅150mmの短冊状に成型用ハードコートフィルムを切り出し、フィルム実温が160℃時のそれぞれで引っ張った時に、ハードコート層にクラック、または白化が発生した時の延伸率を伸度(%)とした。
【0085】
成型性(伸度)を調整する方法としては、ハードコート層を形成する塗布液に含まれる電離放射線硬化型化合物中の1または2官能の電離放射線硬化型化合物の含有量やアミノ基を有する電離放射線硬化型化合物の含有量、ハードコート層中の粒子の存在量により変更することができる。
【0086】
(成型体)
本発明の成型用ハードコートフィルムは、真空成型、圧空成型、金型成型、プレス成型、インモールド成型、絞り成型、延伸成型などの成型方法を用いて成型する成型用材料として好適である。本発明の成型用ハードコートフィルムを用いて成型した場合、成型時の変形にハードコート層が追随しクラックが発生せず、かつ、表面硬度、耐擦傷性を維持することができる。
【0087】
このように成型された成型体は、ハードコート層を有することにより表面硬度を補っているため、外部に触れる位置に装着され、耐擦傷性が要求される用途に好適である。このような成型体は、たとえば、自動車用の内装や外装の加飾材、パソコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、ステレオ、携帯機器などの家電製品、化粧用コンパクト鏡などの鏡製品、自動車等の車両、船舶、航空機、建造物、遊具(スキー用ゴーグル等)、アミューズメント装置、その他各種機械装置類などに使用される銘板(表示板及びパネルを含む)として好適である。
【実施例】
【0088】
次に、実施例および比較例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明は当然以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた評価方法は以下の通りである。
【0089】
(1)固有粘度
JIS K 7367−5に準拠し、溶媒としてフェノール(60質量%)と1,1,2,2−テトラクロロエタン(40質量%)の混合溶媒を用い、30℃で測定した。
【0090】
(2)ガラス転移温度
JIS K7121に準拠し、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ製、DSC6200)を使用して、25〜300℃の温度範囲にわたって20℃/m■nで昇温させ
、DSC曲線から得られた補外ガラス転移開始温度をガラス転移温度とした。
【0091】
(3)屈折率
ハードコート層の屈折率は、ハードコート層に用いる各樹脂を硬化させた膜について、基材フィルムの屈折率は、用いた基材フィルムについて、JIS K 7142に基づき、アッベ屈折率計を用いて測定を行った。
粒子の屈折率は、90℃で乾固させた粒子を、屈折率の異なる種々の25℃の液体に懸濁させ、懸濁液が最も透明にみえる液の屈折率をアッべ屈折率計によって測定した。
【0092】
(4)平均粒径
フィルムの試料を可視光硬化型樹脂(日本電子データム社製、D−800)に包埋し、室温で可視光にさらして硬化させた。得られた包埋ブロックから、ダイアモンドナイフを装着したウルトラミクロトームを用いて70〜100nm程度の厚みの超薄切片を作製し、四酸化ルテニウム蒸気中で30分間染色した。この染色された超薄切片を、透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、TEM2010)を用いて、断面を観察し、写真を撮影した。写真の拡大倍率は、10,000〜100,000倍の範囲で適宜設定する。なお、本実施例では、拡大倍率を80,000倍(加速電圧200kv)とした。
【0093】
(5)干渉斑改善性(虹彩状色彩)
成型用ハードコートフィルムを10cm(フィルム幅方向)×15cm(フィルム長手方向)の面積に切り出し、試料フィルムを作成した。得られた試料フィルムのハードコート層とは反対面に、黒色光沢テープ(日東電工製、ビニルテープNo21;黒)を張り合わせた。この試料フィルムのハードコート面を上面にして3波長形昼白色(ナショナル パルック、F.L 15EX−N 15W)を光源として斜め上から目視でもっとも反射が強く見える位置関係(光源からの距離40〜60cm、フィルム面に対して15〜45°の角度)で観察した。
【0094】
目視で観察した結果を、下記の基準でランク分けをする。なお、観察は該評価に精通した5名で行ない、最も多いランクを評価ランクとする。仮に、2つのランクで同数となった場合には、3つに分かれたランクの中心を採用した。例えば、◎と○が各2名で△が1名の場合は○を、◎が1名で○と△が各2名の場合には○を、◎と△が各2名で○が1名の場合には○を、それぞれ採用する。
◎:あらゆる角度からの観察でも虹彩状色彩が見られない
○:ある角度によっては僅かに虹彩状色彩が見られる
△:僅かに虹彩状色彩が観察される
×:はっきりとした虹彩状色彩が観察される
【0095】
(6)接着性
具体的には、隙間間隔2mmのカッターガイドを用いて、ハードコート層を貫通して基材フィルムに達する100個のマス目状の切り傷をハードコート層面につける。次に、セロハン粘着テープ(ニチバン社製、405番;24mm幅)をマス目状の切り傷面に貼り付け、消しゴムでこすって完全に密着させた。その後、垂直にセロハン粘着テープを成型用ハードコートフィルムのハードコート層面から引き剥がして、基材フィルムのハードコート層面から剥がれたマス目の数を目視で数え、下記の式からハードコート層と基材フィルムとの密着性を求めた。なお、マス目の中で部分的に剥離しているものも剥がれたマス目として数え、下記の基準でランク分けをした。
密着性(%)=(1−剥がれたマス目の数/100)×100
◎:100%
○:99〜90%
△:90〜70%
×:69〜0%
【0096】
(7)耐湿熱性
得られた積層ポリエステルフィルムを、高温高湿槽中で80℃、95%RHの環境下48時間放置した。次いで、積層ポリエステルフィルムを取りだし、室温常湿で12時間放置した。その後、前記(6)と同様の方法で光硬化型アクリル層と基材フィルムの接密着性を求め、下記の基準でランク分けをした。
◎:100%、または、光硬化型アクリル層の材破
○:99〜90%
△:89〜70%
×:69〜0%
【0097】
(8)伸度
成型用ハードコートフィルムから長さ10mm、幅150mmの短冊状の試料片に切り出した。フィルム試料片の実温が160℃の環境下で、外観を目視観察しながら、フィルム両端を把持して試験速度250mm/分で引張り、ハードコート層にクラック、または白化が発生した時のフィルムの長さを測定した。
試験前のフィルム試料片長をa、試験後のフィルム試料片長をbとしたとき、下記式により伸度を算出した。
伸度(%)=(b−a)×100/a
ここで伸度が10%以上のものを成型性に優れているとし、30%以上のものを特に成型性に優れていると判断した。
【0098】
(9)鉛筆硬度
成型用ハードコートフィルムのハードコート層の鉛筆硬度をJIS−K5600に準拠して測定した。圧こん(痕)は目視で判定した。
ここで鉛筆硬度がH以上のものを優れた表面硬度があるものとし、2H以上であるものを特に優れた表面硬度があるものと判断した。
【0099】
(10)耐擦傷性
成型用ハードコートフィルムのハードコート層の耐擦傷性をJIS−K5600に準拠して測定した。ハードコート層表面を荷重500gfで#0000のスチールウールで20往復し、傷の発生の有無及び傷の程度を目視により観察した。観察結果をもとに以下の判定基準に従ってランクを判定した。この耐擦傷性のランクがC以上で耐擦傷性があるとし、B以上のものを耐擦傷性が良好と判断した。
A:傷の発生が無い、もしくは細い傷が少量程度観察される。
B:細い傷が観察されるが、深い傷は観察されない。
C:細い傷が観察され、深い傷も少量程度観察される。
D:深い傷が多量に観察される。
【0100】
(11)成型用ハードコートフィルムの成型性
成型用ハードコートフィルムに5mm四方のマス目印刷を施した後、500℃に加熱した赤外線ヒーターでフィルムを10〜15秒加熱した後、金型温度100℃以下で真空成型を行った。金型の形状はカップ型で、開口部は直径が50mmであり、底面部は直径が45mmで、深さが5mmであり、全てのコーナーは直径0.5mmの湾曲をつけたものを用いた。
【0101】
(ポリエステル樹脂の重合)
攪拌機、温度計、および部分還流式冷却器を具備するステンレススチール製オートクレーブに、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル302.9質量部、ジメチルー5−ナトリウムスルホイソフタレート47.4質量部、エチレングリコール198.6質量部、1,6−ヘキサンジオール118.2質量部、およびテトラーnーブチルチタネート0.4質量部を仕込み、160℃から220℃まで4時間かけてエステル交換反応を行なった。さらに、セバシン酸121.4重量部を加え、エステル化反応を行なった.次いで255℃まで昇温し、反応系を徐々に減圧した後、30Paの減圧下で1時間30分反応させ、共重合ポリエステル樹脂(A−1)を得た。得られた共重合ポリエステル樹脂は、淡黄色透明であった。
【0102】
同様の方法で、別の組成の共重合ポリエステル樹脂(A−2)〜(A−5)を得た。これらの共重合ポリエステル樹脂に対し、1H−NMRで測定した組成及び重量平均分子量の結果を表1に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
(ポリエステルの水分散液の調整)
攪拌機、温度計と還流装置を備えた反応器に、ポリエステル樹脂(A−1)20質量部、エチレングリコールt−ブチルエーテル15質量部を入れ、110℃で加熱、攪拌し樹脂を溶解した。樹脂が完全に溶解した後、水65質量部を上記ポリエステル溶液に攪拌しつつ徐々に添加した。添加後、液を攪拌しつつ室温まで冷却して、固形分20質量%の乳白色のポリエステルの水分散液(B−1)を作製した。同様にポリエステル樹脂(A−1)の代わりにポリエステル樹脂(A−2)〜(A−5)を使用して、水分散液を作製し、水分散液(B−2)〜(B−5)とした。
【0105】
(水溶性カルボジイミド化合物の重合)
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、滴下ロート、および攪拌機を備えたフラスコにイソホロンジイソシアネート200質量部、カルボジイミド化触媒の3−メチル−1−フェニル−2−ホスホレン−1−オキシド4質量部を投入し、窒素雰囲気下、180℃において10時間撹拌し、イソシアネート末端イソホロンカルボジイミド(重合度=5)を得た。次いで、得られたカルボジイミド111.2g、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(分子量400)80gを100℃で24時間反応させた。これに水を50℃で徐々に加え、固形分40質量%の黄色透明な水溶性カルボジイミド化合物(C)を得た。
【0106】
(オキサゾリン系架橋剤の重合)
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却器、滴下ロート、および攪拌機を備えたフラスコに水性媒体としてのイオン交換水58質量部とイソプロパノール58質量部との混合物、および、重合開始剤(2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)・二塩酸塩)4質量部を投入した。一方、滴下ロートに、オキサゾリン基を有する重合性不飽和単量体としての2−イソプロペニル−2−オキサゾリン16質量部、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(エチレングリコールの平均付加モル数・9モル、新中村化学製)32質量部、およびメタクリル酸メチル32質量部の混合物を投入し、窒素雰囲気下、70℃において1時間にわたり滴下した。滴下終了後、反応溶液を9時間攪拌し、冷却することで固形分濃度40質量%のオキサゾリン基を有する水溶性樹脂(D)を得た。
【0107】
実施例1
(1)接着性改質層形成用塗布液の調整
下記の塗剤を混合し、接着性改質層形成用塗布液を作成した。金属酸化物は屈折率2.1のSnO2
水 61.26質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリエステル水分散液(B−1) 5.80質量%
水溶性カルボジイミド化合物(C) 1.24質量%
金属酸化物 1.69質量%
(多木化学製セラメースS−8、固形分濃度8質量%)
シリコーン系界面活性剤 0.01質量%
(固形分濃度100%)
【0108】
(2)接着性改質層を有する基材フィルムの製造
片面に易接着処理層を有する2軸延伸ポリエステル(東洋紡績製コスモシャイン:A4100、厚み50μm、屈折率1.65)の未処理面に下記の接着性改質層形成用塗布液をワイヤーバーを用いて、塗布乾燥後の接着性改質層の厚みが85nmになるように塗布し、160℃の熱風で1分乾燥し、接着性改質層を有する基材フィルムを得た。
【0109】
(2)成型用ハードコートフィルムの製造
得られた接着性改質層を有する基材フィルムに下記のハードコート塗布液Aをワイヤーバーを用いて乾燥後の塗工厚が2μmになるように塗布し、温度80℃の熱風で60秒乾燥し、出力120W/cmの高圧水銀灯下20cmの位置を10m/minのスピードで通過させて成型用ハードコートフィルムを得た。ハードコート層の屈折率は1.48であった。
(ハードコート塗布液A)
下記の材料を下記に示す質量比で混合し、30分以上攪拌して溶解させた。次いで、公称ろ過精度が1μmのフィルターを用いて未溶解物を除去して、ハードコート塗布液Aを作成した。
メチルエチルケトン 64.48質量%
ペンタエリスリトールトリアクリレート 11.45質量%
(新中村化学製、NKエステル A−TMM−3LM−N、官能基数3)
トリプロピレングリコールジアクリレート 5.73質量%
(新中村化学製、NKエステル APG−200、官能基数2)
ジメチルアミノエチルメタクリレート 5.72質量%
(共栄社化学製、ライトエステルDM、官能基数1)
シリカ微粒子 11.45質量%
(日産化学工業製、MEK−ST−L、固形分濃度30%、平均粒子径:50nm)
光重合開始剤 1.14質量%
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製イルガキュア184)
シリコーン系界面活性剤 0.03質量%
(東レ・ダウコーニング製、DC57)
【0110】
得られた成型用ハードコートフィルムを前記(11)の成型法に従い成型性を評価した。得られた成型品には破れは認められなかった。その他、得られた結果を表1に示す。
【0111】
比較例1
接着性改質層を設けないこと以外は実施例1と同様にして成型用ハードコートフィルムを得た。
【0112】
実施例2
接着性改質層形成用塗布液のポリエステル水分散液をB−2に変更したこと以外は実施例1と同様にして成型用ハードコートフィルムを得た。
【0113】
実施例3
接着性改質層形成用塗布液のポリエステル水分散液をB−3に変更したこと以外は実施例1と同様にして成型用ハードコートフィルムを得た。
【0114】
実施例4
接着性改質層形成用塗布液を下記に変更したこと以外は実施例1と同様にして成型用ハードコートフィルムを得た。(金属酸化物は屈折率2.1のSnO2を使用)
水 60.89質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリエステル水分散液(B−4) 5.64質量%
水溶性カルボジイミド化合物(C) 1.21質量%
金属酸化物 2.25質量%
(多木化学製セラメースS−8、固形分濃度8質量%)
シリコーン系界面活性剤 0.01質量%
(固形分濃度100%)
【0115】
実施例5
接着性改質層形成用塗布液を下記に変更したこと以外は実施例1と同様にして成型用ハードコートフィルムを得た。(金属酸化物は屈折率2.1のSnO2を使用)
水 60.74質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリエステル水分散液(B−5) 5.58質量%
水溶性カルボジイミド化合物(C) 1.20質量%
金属酸化物 2.47質量%
(多木化学製セラメースS−8、固形分濃度8質量%)
シリコーン系界面活性剤 0.01質量%
(固形分濃度100%)
【0116】
実施例6
接着性改質層形成用塗布液の水溶性カルボジイミド化合物(C)をオキサゾリン基を有する水溶性樹脂(D)に変更したこと以外は実施例1と同様にして成型用ハードコートフィルムを得た。
【0117】
実施例7
接着性改質層形成用塗布液の金属酸化物を屈折率2.4のZrO2(日産化学工業製ZR−40BL、固形分濃度40質量%)に変更したこと以外は実施例1と同様にして成型用ハードコートフィルムを得た。
【0118】
実施例8
接着性改質層形成用塗布液に平均1次粒径 約500nmの粒子を加え、下記に変更した以外は、実施例1と同様にして、成型用ハードコートフィルムを得た。
水 61.25質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリエステル水分散液(B−1) 5.77質量%
水溶性カルボジイミド化合物(C) 1.24質量%
金属酸化物 1.68質量%
(多木化学製セラメースS−8、固形分濃度8質量%)
粒子 0.05質量%
(日本触媒製シーホスターKEW50、固形分濃度15質量%)
シリコーン系界面活性剤 0.01質量%
(固形分濃度100%)
【0119】
実施例9
実施例1において、ハードコート層を形成する塗布液を下記ハードコート塗布液に変更すること以外は実施例1と同様にして、成型用ハードコートフィルムを得た。
(ハードコート塗布液B)
・メチルエチルケトン 64.48質量%
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 21.75質量%
(新中村化学製、NKエステル A−TMM−3LM−N、官能基数3)
・トリプロピレングリコールジアクリレート 1.15質量%
(新中村化学製、NKエステル APG−200、官能基数2)
・シリカ微粒子 11.45質量%
(日産化学工業製、MEK−ST−L、固形分濃度30%、平均粒子径:50nm)
・光重合開始剤 1.14質量%
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製イルガキュア184)
・シリコーン系界面活性剤 0.03質量%
(東レ・ダウコーニング製、DC57)
【0120】
実施例10
実施例1において、ハードコート層を形成する塗布液を下記ハードコート塗布液に変更すること以外は実施例1と同様にして、成型用ハードコートフィルムを得た。
(ハードコート塗布液C)
・メチルエチルケトン 64.48質量%
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 1.15質量%
(新中村化学製、NKエステル A−TMM−3LM−N、官能基数3)
・トリプロピレングリコールジアクリレート 21.75質量%
(新中村化学製、NKエステル APG−200、官能基数2)
・シリカ微粒子 11.45質量%
(日産化学工業製、MEK−ST−L、固形分濃度30%、平均粒子径:50nm)
・光重合開始剤 1.14質量%
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製イルガキュア184)
・シリコーン系界面活性剤 0.03質量%
(東レ・ダウコーニング製、DC57)
【0121】
実施例11
実施例1において、ハードコート層を形成する塗布液を下記ハードコート塗布液に変更すること以外は実施例1と同様にして、成型用ハードコートフィルムを得た。
(ハードコート塗布液D)
・メチルエチルケトン 75.08質量%
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 11.85質量%
(新中村化学製、NKエステル A−TMM−3LM−N、官能基数3)
・トリプロピレングリコールジアクリレート 5.93質量%
(新中村化学製、NKエステル APG−200、官能基数2)
・ジメチルアミノエチルメタクリレート 5.92質量%
(共栄社化学製、ライトエステルDM、官能基数1)
・光重合開始剤 1.19質量%
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製イルガキュア184)
・シリコーン系界面活性剤 0.03質量%
(東レ・ダウコーニング製、DC57)
【0122】
実施例12
実施例1において、ハードコート層を形成する塗布液を下記ハードコート塗布液に変更すること以外は実施例1と同様にして、成型用ハードコートフィルムを得た。
(ハードコート塗布液E)
・メチルエチルケトン 63.62質量%
・ペンタエリスリトールトリアクリレート 11.45質量%
(新中村化学製、NKエステル A−TMM−3LM−N、官能基数3)
・トリプロピレングリコールジアクリレート 5.73質量%
(新中村化学製、NKエステル APG−200、官能基数2)
・ジメチルアミノエチルメタクリレート 5.72質量%
(共栄社化学製、ライトエステルDM、官能基数1)
・シリカ微粒子 11.45質量%
(日産化学工業製、MEK−ST−L、固形分濃度30%、平均粒子径:50nm)
・電離放射線硬化型シリコーン化合物ポリエーテルアクリレート 0.86質量%
(ドイツケミーサービス社製、TEGO Rad2200N)
・光重合開始剤 1.14質量%
(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製イルガキュア184)
・シリコーン系界面活性剤 0.03質量%
(東レ・ダウコーニング製、DC57)
【0123】
実施例13
基材フィルムを片面に易接着処理層を有する共重合ポリエステルを含む2軸延伸ポリエステル(東洋紡績製ソフトシャイン:X1120、厚み50μm、屈折率1.61)と接着改質層形成用塗布液を下記、および、乾燥温度を120℃の熱風に変更した以外は、実施例1と同様にして、成型用ハードコートフィルムを得た。(金属酸化物は屈折率2.1のSnO2を使用)
水 61.62質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリエステル水分散液(B−1) 5.96質量%
水溶性カルボジイミド化合物(C) 1.28質量%
金属酸化物 1.13質量%
(多木化学製セラメースS−8、固形分濃度8質量%)
シリコーン系界面活性剤 0.01質量%
(固形分濃度100%)
【0124】
実施例14
基材フィルムを未延伸ポリカーボネートフィルム(帝人化成製パンライト:PC−2151、厚み125μm、屈折率1.58)と接着改質層形成用塗布液を下記、および、乾燥温度を120℃の熱風に変更した以外は、実施例1と同様にして、成型用ハードコートフィルムを得た。
水 62.38質量%
イソプロパノール 30.00質量%
ポリエステル水分散液(B−4) 6.27質量%
水溶性カルボジイミド化合物(C) 1.34質量%
シリコーン系界面活性剤 0.01質量%
【0125】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の成型用ハードコートフィルムは、外光の写り込み、ぎらつき、虹彩状色彩等を抑制する反射防止性にすぐれ、かつハードコート層との密着性に優れるため、意匠性を要する表面部材に好適である。このため、建材用部材や携帯電話用基材などの加飾成型用部材、自動車用の内装や外装の加飾材、パソコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、ステレオ、携帯機器などの家電製品、化粧用コンパクト鏡などの鏡製品、自動車等の車両、船舶、航空機、建造物、遊具(スキー用ゴーグル等)、アミューズメント装置、その他各種機械装置類などに使用される銘板(表示板及びパネルを含む)として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも片面に設けられた接着性改質層上に塗布液を塗布硬化させてなるハードコート層を積層した成型用ハードコートフィルムであって、
前記塗布液が、3以上の官能基を有する電離放射線硬化型化合物と、1および/または2官能の電離放射線硬化型化合物とを少なくとも含み、
前記塗布液に含まれる電離放射線硬化型化合物中の1および/または2官能の電離放射線硬化型化合物の含有量が5質量%以上95質量%以下である成型用ハードコートフィルム。
【請求項2】
前記基材フィルムが二軸配向ポリエステルフィルムである請求項1に記載の成型用ハードコートフィルム。
【請求項3】
前記ハードコート層中に平均粒子径10nm以上300nm以下の粒子を含み、
前記粒子のハードコート層中の含有量が5質量%以上70質量%以下である請求項1または2に記載の成型用ハードコートフィルム。
【請求項4】
前記塗布液に含まれる電離放射線硬化化合物の少なくとも1種がアミノ基を有する電離放射線硬化化合物である請求項1〜3のいずれかに記載の成型用ハードコートフィルム。
【請求項5】
前記ハードコート層中に電離放射線硬化型シリコーン樹脂を含み、
前記電離放射線硬化型シリコーン樹脂のハードコート層中の含有量が前記電離放射線硬化型化合物100質量部に対して0.15質量部以上15質量部以下である請求項1〜4のいずれかに記載の成型用ハードコートフィルム。
【請求項6】
前記接着性改質層にポリエステル樹脂と架橋剤を含む請求項1〜5のいずれかに記載の成型用ハードコートフィルム。
【請求項7】
前記架橋剤が尿素系架橋剤、エポキシ系架橋剤、メラミン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤、シラノール系架橋剤から選ばれた少なくとも1種の架橋剤である請求項1〜6にのいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルム。
【請求項8】
前記ポリエステル樹脂が、酸成分としてナフタレンジカルボン酸を含む請求項1〜7のいずれかに記載の成型用ハードコートフィルム。
【請求項9】
前記ポリエステル樹脂が下記式(1)で表されるジカルボン酸成分および/または下記式(2)で表されるジオール成分を含む請求項1〜8のいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルム。
(1)HOOC−(CH2n−COOH (式中、nは4≦n≦10の整数)
(2)HO−(CH2n−OH (式中、nは4≦n≦10の整数)
【請求項10】
前記接着性改質層に屈折率1.7以上3.0以下の金属酸化物粒子を含むこ請求項1〜9のいずれかに記載の成型用ハードコートフィルム。
【請求項11】
前記ポリエステル樹脂にカルボン酸塩基を含む請求項1〜7および10のいずれかに記載の成型用ハードコートフィルム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の成型用ハードコートフィルムを成型してなる成型体。

【公開番号】特開2011−131404(P2011−131404A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290529(P2009−290529)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】