説明

成型用電磁波シールドシート及び電磁波シールド成型体

【課題】軽量で、加工性に優れ、かつ、加工後も優れた電磁波シールド性能を維持することができる成型用電磁波シールドシートを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の成型用電磁波シールドシートは、少なくとも樹脂層(A)、金属層(B)、及び、0.05S/cm以上の導電性を有する導電性ポリマーを含有する導電性ポリマー層(C)からなり、上記樹脂層(A)の少なくとも片面に金属層(B)を備え、かつ、上記樹脂層(A)と上記金属層(B)とを有する積層体の少なくとも片面に上記導電性ポリマー層(C)を備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成型用電磁波シールドシート及び電磁波シールド成型体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器等から発せられる電磁波が、他の電子機器へ影響を及ぼし誤作動の原因となる等、電磁波による種々の障害が問題視されている。そのため、電子機器等が発する電磁波をシールドすることへの要望が高まっている。
【0003】
従来より、金属が電磁波シールド性能を有することは良く知られており、金属板を電磁波シールド部材として使用することが行われている。金属板からなる電磁波シールド部材は電磁波シールド性能に優れる電磁波シールド部材である。
しかしながら、金属板からなる電磁波シールド部材は、重量が重いため取り扱い性に劣り、加えて、近年の電子機器の軽量化に対応することが困難であった。また、金属板は樹脂フィルムに比べて加工性(成型性)に劣るため、電磁波シールド部材としての設計の自由度が低いとの問題もあった。
【0004】
また、熱可塑性高分子フィルム中に電解酸化重合した導電性ポリマーを分散させた電磁波シールド部材や、気液界面重合した導電性高分子膜の少なくとも片面に高分子フィルムを積層した複合フィルムと、熱可塑性高分子あるいは熱硬化性高分子を一体成形してなる電磁波シールド成形品も提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
これらの電磁波シールド部材は、ポリマーからなるものであるため、軽量でかつ加工性(成型性)に優れるものである。しかしながら、導電性ポリマーの電磁波シールド性能は、金属に比べて低く、このような電磁波シールド部材では、充分な電磁波シールド性能を得ることができなかった。
【0005】
特許文献3には、透明な基材フィルムと、該基材の表面上に導電性高分子微粒子とバインダーを含むパターン状に形成された塗膜層と、該塗膜層上に無電解めっき法により形成された金属めっき膜とを有し、上記バインダーが上記導電性高分子微粒子1質量部に対して0.1〜10質量部で存在し、上記塗膜層の厚さが20〜500nmであり、金属めっき膜の厚さが100〜3000nmである透明性電磁波シールドフィルムが開示されている。
この電磁波シールドフィルムは、金属めっき膜を備えているため、導電性ポリマーが電磁波シールド性能を担う場合に比べて、優れた電磁波シールド性能を有するものの、0.01S/cm以下の導電性高分子微粒子を用いて塗膜層を形成していることから導電性高分子微粒子を含む塗膜層自身には電磁波シールド能はなく、また、この電磁波シールドフィルムを加工した場合、金属めっき膜が断線したり、クラックが発生したりすることがあり、この場合、成型品の電磁波シールド性能が著しく低下するとの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−228544号公報
【特許文献2】特開平11−97886号公報
【特許文献3】特開2009−16496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、軽量で、加工性に優れ、かつ、加工後も優れた電磁波シールド性能を維持することができる成型用電磁波シールドシートを提供すること、及び、軽量で、取り扱い性に優れ、優れた電磁波シールド性能を維持しつつ任意の形状をとり得る電磁波シールド成型体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、樹脂層の少なくとも片面に金属層を備える積層体の少なくとも片面に導電性ポリマー層を形成した電磁波シールドシートは、軽量で、加工性に優れ、かつ、加工後も優れた電磁波シールド性能を維持することができることを見出し、本発明の成型用電磁波シールドシートを完成した。
また、樹脂層の少なくとも片面に金属層を備える積層体の少なくとも片面に導電性ポリマー層を備えた部材からなる電磁波シールド成型体は、軽量で、取り扱い性に優れ、さらに複雑な形状を有する場合であっても優れた電磁波シールド性能を有することを見出し、本発明の電磁波シールド成型体を完成した。
【0009】
即ち、本発明の成型用電磁波シールドシートは、少なくとも樹脂層(A)、金属層(B)、及び、0.05S/cm以上の導電性を有する導電性ポリマーを含有する導電性ポリマー層(C)からなり、
上記樹脂層(A)の少なくとも片面に金属層(B)を備え、かつ、
上記樹脂層(A)と上記金属層(B)とを有する積層体の少なくとも片面に上記導電性ポリマー層(C)を備えたことを特徴とする。
【0010】
上記成型用電磁波シールドシートにおいて、上記金属層(B)は、導電性を有する金属若しくは金属酸化物、又は、磁性体からなることが好ましい。
また、上記金属層(B)は、蒸着により形成された層であり、かつ、厚さが0.01〜10.0μmであることが好ましい。
【0011】
上記成型用電磁波シールドシートにおいて、上記導電性ポリマーは、ポリ(3,4−二置換チオフェン)とポリ陰イオンとの複合体からなるものが好ましい。
【0012】
上記成型用電磁波シールドシートにおいて、上記導電性ポリマー層(C)は、バインダーを含有し、かつ、上記バインダーの少なくとも1種がアクリル系樹脂であることが好ましい。
また、上記導電性ポリマー層(C)は、導電性ポリマーと導電性向上剤とを含有し、上記導電性向上剤の配合量が、上記導電性ポリマーの固形分100重量部に対して10〜1500重量部である導電性ポリマー組成物を用いて成形された層であることが好ましい。
【0013】
本発明の電磁波シールド成型体は、少なくとも樹脂層(A)、金属層(B)、及び、0.05S/cm以上の導電性を有する導電性ポリマーを含有する導電性ポリマー層(C)からなり、
上記樹脂層(A)の少なくとも片面に金属層(B)を備え、かつ、
上記樹脂層(A)と上記金属層(B)とを有する積層体の少なくとも片面に上記導電性ポリマー層(C)を備えたことを特徴とする。
【0014】
上記電磁波シールド成型体は、本発明の成型用電磁波シールドシートを成型してなるものが好ましく、また、少なくとも樹脂層(A)、金属層(B)からなる積層シートを成型して得られた成型体の表面に、導電性ポリマー層(C)が形成されてなるものも好ましい。
また、上記電磁波シールド成型体は、電子機器の電磁波シールドとして用いられるものが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の成型用電磁波シールドシートは、上述した構成を備えるため、軽量で、加工性に優れ、かつ、加工後も優れた電磁波シールド性能を維持することができるため、成型用の電磁波シールドシートとして極めて優れている。
ここで、加工後も優れた電磁波シールド性能を維持することができる点についてもう少し詳しく説明する。
樹脂フィルムの片面又は両面に金属層を形成した積層体を電磁波シールドシートとして使用する場合、金属層を備えていることに起因して、充分な電磁波シールド性能を確保することは可能である。
しかしながら、この電磁波シールドシートを成型(加工)して使用することを試みると成型時(加工時)に、電磁波シールドシートの金属層が断線(クラックが発生)し、その結果、断線部分では電磁波をシールドすることができず、電磁波シールド性能が著しく低下することがある。
これに対して、本発明の成型用電磁波シールドシートは、上記積層体の片面又は両面にさらに導電性ポリマー層を備えており、この導電性ポリマー層は金属層に比べて加工性に優れるため、金属層が断線するような条件で加工しても導電性ポリマー層は破損せず、そのため、金属層が断線してもその部分の電磁波シールド性能を上記導電性ポリマー層により補完することができ、その結果、本発明の成型用電磁波シールドシートは、加工後も優れた電磁波シールド性能を維持することができるのである。
【0016】
また、本発明の電磁波シールド成型体は、上述した構成を備えるため、軽量で、取り扱い性に優れ、優れた電磁波シールド性能を維持しつつ任意の形状をとり得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のシールドシートの一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明のシールドシートの別の一例を模式的に示す断面図である。
【図3】(a)は、本発明の電磁波シールド成型体の一例を模式的に示す斜視図であり、(b)は、(a)のA−A線断面を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の電磁波シールド成型体の別の一例を模式的に示す斜視図である。
【図5】本発明の電磁波シールド成型体の別の一例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
まず、本発明の成型用電磁波シールドシートについて、図面を参照しながら説明する。
本発明の成型用電磁波シールドシート(以下、単にシールドシートともいう)は、少なくとも樹脂層(A)、金属層(B)、及び、0.05S/cm以上の導電性を有する導電性ポリマーを含有する導電性ポリマー層(C)からなり、
上記樹脂層(A)の少なくとも片面に金属層(B)を備え、かつ、
上記樹脂層(A)と上記金属層(B)とを有する積層体の少なくとも片面に上記導電性ポリマー層(C)を備えたことを特徴とする。
【0019】
図1、2は、それぞれ本発明のシールドシートの一例を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、シールドシート10は、樹脂層11の片面に金属層12が形成されて積層体13をなし、樹脂層11の金属層12が形成された側と反対側の面に導電性ポリマー層14が形成されたものである。
【0020】
また、上記シールドシートの層構成は必ずしも図1に示した層構成を備える必要はなく、例えば、図2に示すシールドシート20のような層構成を備えていてもよい。
シールドシート20は、樹脂層21の片面に金属層22が形成されて積層体23をなし、樹脂層21の金属層22が形成された側の面に更に導電性ポリマー層24が形成されたものである。
【0021】
また、上記シールドシートの層構成は、図示しないものの、例えば、以下のような構成を備えていてもよい。
即ち、上記樹脂層の両面に上記金属層が形成されて積層体をなし、この積層体の両面又は片面に上記導電性ポリマー層が形成されていてもよい。
上記樹脂層の両面に上記金属層が形成されている場合(シールドシートが2層の金属層を備えている場合)、シールドシートの電磁波シールド性能がより向上することとなる。
【0022】
また、上記樹脂層、上記金属層及び上記導電性ポリマー層の各層の間や、上記シールドシートの最外層には、更に別の層が形成されていてもよい。
具体的には、例えば、各層の密着性を向上させるためのプライマー層、シールドシートにロット番号や図柄を付与するための印刷層等が形成されていてもよい。
【0023】
また、上記金属層は、上記樹脂層の一面全体に形成されたベタ層であってもよいし、上記樹脂層の一面の所望の一部にのみ形成されたパターン層であってもよい。
また、上記導電性ポリマー層も同様に、上記樹脂層又は上記金属層の一面全体に形成されたベタ層であってもよいし、上記樹脂層又は上記金属層の一面の所望の一部にのみ形成されたパターン層であってもよい。
【0024】
次に、本発明のシールドシートの構成部材について説明する。
(樹脂層(A))
上記樹脂層は、上記シールドシートのベース層となる層である。
上記樹脂層の材質は特に限定されず、例えば、非晶質ポリエチレンテレフタレート(A−PET)、結晶性ポリエチレンテレフタレート(C−PET)等のポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、アクリルアミド、セルロースプロピオネート、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリロニトリルスチレン共重合樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、環状ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ポリテトラフルロエチレン、ポリスルホン、非晶ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミドイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー共重合体、その他アクリル樹脂、アクリルニトリルブタジエンスチレン等が挙げられる。
これらのなかでは、成型加工性に優れる点で、A−PET、C−PET、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、非晶ポリアリレート等の熱可塑樹脂が好ましく、A−PETがより好ましい。
【0025】
(金属層(B))
上記金属層は、上記シールドシートにおいて、電磁波をシールドする機能を主に担う層である。
上記金属層の材質としては、例えば、導電性を有する金属や金属酸化物、更には磁性体等が挙げられる。これらは単独で用いても良いし、2種以上併用してもよい。なお、本発明において、磁性体とは強磁性体を意味する
【0026】
上記金属としては、例えば、アルミニウム、銅、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、銀、カドミウム、金等の導電性の金属が挙げられる。
これらのなかでは、アルミニウム、銅、銀、金が好ましい。その理由は、比較的導電性が高いため、高い電磁波シールド効果を有するためである。
【0027】
上記金属酸化物としては、例えば、TiO、ZnO、StTiO、ITO、FTO、ATO、GZO等が挙げられる。
これらのなかでは、ITOが好ましい。その理由は、比較的導電性が高いため、高い電磁波シールド効果を有するためである。
【0028】
上記磁性体としては、例えば、酸化鉄、酸化クロム、コバルト、フェライト等が挙げられる。
【0029】
上記金属層の厚さは特に限定されないが、0.01〜10μmが好ましい。
0.01μm未満では、十分な電磁波シールドを発現する事が難しくなり、10μmを超えると、成型加工性が低下する、軽量化という点で不利になるといった問題が生じる場合がある。
【0030】
上記金属層は、例えば、PVD、CVD等の蒸着、スパッタリング、無電解めっき、イオンプレーティング等を用いて形成することができる。また、例えば、上記金属層の厚さによっては、上述した方法で金属の薄層を形成した後、電解めっき行うこと等により、比較的厚さの厚い金属層を形成してもよい。
【0031】
(導電性ポリマー層(C))
上記導電性ポリマー層は、上記シールドシートにおいて、上記金属層による電磁波のシールド性を補完する機能を担う層であり、導電性ポリマーを含有する層である。
上記導電性ポリマーとしては、ポリフェニルアセチレン、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(m−フェニレン)、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアニリン、ポリアゾベンゼン、ポリアセチレン、ポリアセン、ポリフェナントレン、ポリフェニレンビニレン、ポリナフタレン、ポリ(ビニレンスルフィド)、これらの誘導体、および、これらとポリ陰イオン等のドーパントとの複合体等が挙げられる。
これらのなかでは、ポリチオフェン(誘導体)が好ましく、ポリ(3,4−二置換チオフェン)とポリ陰イオンとの複合体がより好ましい。導電性や透明性に加えて化学的安定性に極めて優れているからである。さらに、ポリ(3,4−二置換チオフェン)とポリ陰イオンとの複合体を含有する導電性ポリマー組成物を用いて導電性ポリマー層を形成する場合、低温短時間で薄膜形成が可能であることから、極めて生産性にも優れることとなる。
【0032】
上記ポリ(3,4−二置換チオフェン)とポリ陰イオンとの複合体としては、ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)又はポリ(3,4−アルキレンジオキシチオフェン)とポリ陰イオンとの複合体が特に好ましい。
上記ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)又はポリ(3,4−アルキレンジオキシチオフェン)としては、以下の式(I):
【0033】
【化1】

【0034】
で示される反復構造単位からなる陽イオン形態のポリチオフェンが好ましい。ここで、RおよびRは相互に独立して水素原子又はC1−4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって置換されていてもよいC1−4のアルキレン基を表す。
上記C1−4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等が挙げられる。
また、RおよびRが一緒になって形成される、置換されていてもよいC1−4のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1−メチル−1,2−エチレン基、1−エチル−1,2−エチレン基、1−メチル−1,3−プロピレン基、2−メチル−1,3−プロピレン基等が挙げられる。好適には、メチレン基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基であり、1,2−エチレン基が特に好適である。上記アルキレン基を持つポリチオフェンとして、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)が特に好ましい。
【0035】
上記ポリ陰イオンは、ポリチオフェン(誘導体)とイオン対をなすことにより複合体を形成し、ポリチオフェン(誘導体)を水中に安定に分散させることができる。
上記ポリ陰イオンとしては、カルボン酸ポリマー類(例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、ポリメタクリル酸等)、スルホン酸ポリマー類(例えば、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリイソプレンスルホン酸等)等が挙げられる。これらのカルボン酸ポリマー類およびスルホン酸ポリマー類はまた、ビニルカルボン酸類およびビニルスルホン酸類と他の重合可能なモノマー類、例えば、アクリレート類、スチレン、ビニルナフタレン等の芳香族ビニル化合物との共重合体であっても良い。中でも、ポリスチレンスルホン酸が特に好ましい。
【0036】
上記ポリスチレンスルホン酸は、重量平均分子量が20000より大きく、500000以下であることが好ましい。より好ましくは40000〜200000である。分子量がこの範囲外のポリスチレンスルホン酸を使用すると、ポリチオフェン系導電性ポリマーの水に対する分散安定性が低下する場合がある。尚、上記ポリマーの重量平均分子量はゲル透過クロマトグラフィー(GPC)にて測定した値である。測定にはウォーターズ社製ultrahydrogel500カラムを使用した。
【0037】
上記導電性ポリマーの導電率は、0.05S/cm以上である。上記を導電率が0.05S/cm未満では、実用的な電磁波シールド性能を確保することができないからである。
上記導電率の好ましい下限は、0.10S/cmである。上記導電率が0.10S/cm未満では、塗膜にした時に十分な電磁波シールド性能が維持されない場合がある。より好ましい下限は、0.20S/cmである。
【0038】
導電率が0.10(S/cm)以上の導電性ポリマーは、重合条件や分子量を適宜選択することで容易に作製することができ、例えば、分子量を増大させることで上記のように高い導電性を示す導電性ポリマーを得ることができる。また、上記導電性ポリマーがポリ(3,4−二置換チオフェン)とポリ陰イオンからなる複合体の場合、製造時の重合系が示すpHを最適化することで、高い導電性を示す導電性ポリマーを得ることができる。また、このような高い導電性を示す導電性ポリマーは、市販品を使用してもよい。
なお、本発明でいう導電性ポリマーの導電率は、基材上に当該導電性ポリマーからなる導電層を形成した後、その導電層が示す膜厚と表面抵抗率を測定して、下記式に基づき算出する。
導電率(S/cm)=1/{表面抵抗率(Ω/□)×膜厚(cm)}
【0039】
上記導電性ポリマー層における上記導電性ポリマーの含有量は、5.0〜0.001mg/mであることが好ましく、1.0〜0.01mg/mであることがより好ましい。0.001mg/m未満では、電磁波のシールド性が不充分となることがあり、一方、5.0mg/mを超えると、電磁波シールドシートを成型した時に、導電性ポリマー層にクラックが生じやすくなり、電磁波シールド成型体のシールド効果が低くなる不都合が生じる場合がある。
【0040】
上記導電性ポリマー層は、上記導電性ポリマー以外に、他の成分を含有していてもよい。即ち、上記導電性ポリマー層は、上記導電性ポリマーを含有する導電性ポリマー組成物を用いて形成された層である。
上記導電性ポリマー組成物は、上記導電性ポリマー以外に、水溶性酸化防止剤、バインダー、架橋剤、界面活性剤、レベリング剤、導電性向上剤、溶媒等を含有してもよい。
【0041】
(水溶性酸化防止剤)
上記水溶性酸化防止剤は、導電性ポリマー層の耐熱性及び耐湿熱性を向上させたり、空気暴露による抵抗上昇を抑制したりするための配合物である。
また、水溶性酸化防止剤を配合した場合、導電性ポリマー層中において、水溶性酸化防止剤が均一に存在し得るため、空気暴露による抵抗上昇を効果的に抑制することも可能となる。なお、脂溶性酸化防止剤は、薄膜中に均一に存在し得えないため、空気暴露による抵抗上昇を抑制することができない。
更に、水溶性酸化防止剤を配合した場合、使用量が比較的多くても(過剰量を添加しなければ)、導電性ポリマー層に曇りは発生せず、高い透明性を確保することができる。これに対し、脂溶性酸化防止剤を用いた場合には、導電性ポリマー層に曇りが生じ、透明性が低下する原因となる。
【0042】
上記水溶性酸化防止剤として特に限定されず、還元性又は非還元性の水溶性酸化防止剤が挙げられる。還元性を有する水溶性酸化防止剤としては、例えば、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸カリウム、D(−)−イソアスコルビン酸(エリソルビン酸)、エリソルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸カリウム等の2個の水酸基で置換されたラクトン環を有する化合物;マルトース、ラクトース、セロビオース、キシロース、アラビノース、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース等の単糖類又は二糖類(但し、スクロースを除く);カテキン、ルチン、ミリセチン、クエルセチン、ケンフェロール、サンメリン(登録商標)Y−AF等のフラボノイド;クルクミン、ロズマリン酸、クロロゲン酸、ヒドロキノン、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸等のフェノール性水酸基を2個以上有する化合物;システイン、グルタチオン、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)等のチオール基を有する化合物等が挙げられる。非還元性の水溶性酸化防止剤としては、例えば、フェニルイミダゾールスルホン酸、フェニルトリアゾールスルホン酸、2−ヒドロキシピリミジン、サリチル酸フェニル、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸ナトリウム等の酸化劣化の原因となる紫外線を吸収する化合物が挙げられる。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
これらのなかでは、2個の水酸基で置換されたラクトン環を有する化合物、及び、フェノール性水酸基を2個以上有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が好ましく、特に、D(−)−イソアスコルビン酸、又は、サンメリンY−AFがより好ましい。
【0044】
上記水溶性酸化防止剤の含有量は、上記導電性ポリマーの固形分100重量部に対して0.01〜5000重量部が好ましく、0.05〜2500重量部がより好ましく、0.1〜100重量部が特に好ましい。
上記含有量が0.01重量部未満では、導電性ポリマー層の耐熱性及び耐湿熱性を向上させたり、空気暴露による抵抗上昇を十分に抑制する事ができない場合があり、一方、5000重量部を超えると、導電性ポリマー層の導電性、電磁波シールド性能の低下の原因となる場合がある。
【0045】
(バインダー)
上記バインダーは、導電性ポリマー層と上記樹脂層や上記金属層との密着性、及び導電性ポリマー層自身の強度を向上させる目的で用いられる。
上記バインダーとしては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル、アクリル系樹脂(ポリアクリレート、ポリメタクリレート)、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド等のホモポリマー;スチレン、塩化ビニリデン、塩化ビニル、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート等のモノマーを共重合して得られるコポリマー;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物等が挙げられる。これらのバインダーは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
上記バインダーとしては、少なくともアクリル系樹脂を含有することが好ましい。
この理由は、アクリル系樹脂は高いじん性を有することから、導電性ポリマー層に配合すると、導電性ポリマー層に伸び性を付与出来るからである。伸び性が付与された導電性ポリマー層は、150%程度導電性ポリマー層を延伸しても電磁波シールド効果が低下しない。そのため、上記電磁波シールドシートを用いて電磁波シールド成型体を成型した場合、折り曲げた部分が伸びて、金属層が断線しても、導電性ポリマー層が伸びて金属層を補償し、電磁波シールド成型体の電磁波シールド効果の低下を防ぐ事ができる。
【0047】
上記アクリル系の樹脂としては、(メタ)アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂等が例示できる。これらのアクリル系の樹脂としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基、燐酸基などの酸性基を有する重合性単量体を構成モノマーとして含む重合体であればよく、例えば、前記酸基を有する重合性単量体の単独又は共重合体、前記酸基を有する重合性単量体と共重合性単量体との共重合体等が挙げられる。
【0048】
上記(メタ)アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル系単量体を主たる構成モノマー(例えば、50モル%以上)として含んでいればよく、(メタ)アクリル系単量体及び共重合性単量体のうち、少なくとも一方が酸基を有していればよい。(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、前記酸基を有する(メタ)アクリル系単量体[(メタ)アクリル酸、スルホアルキル(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有(メタ)アクリルアミド等]の単独又は共重合体、前記酸基を有していてもよい(メタ)アクリル系単量体と酸基を有する他の重合性単量体[他の重合性カルボン酸、重合性多価カルボン酸又は無水物、ビニル芳香族スルホン酸等]及び/又は前記共重合性単量体[例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、芳香族ビニル単量体等]との共重合体、前記酸基を有する他の重合体単量体と(メタ)アクリル系共重合性単量体[例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル等]との共重合体などが挙げられる。
【0049】
これらの(メタ)アクリル系樹脂のうち、少なくとも(メタ)アクリル酸を含む重合体、例えば、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル重合体(アクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体等)、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル−スチレン共重合体(アクリル酸−メタクリル酸メチル−スチレン共重合体等)等が好ましい。
【0050】
上記ビニルエステル系樹脂としては、前記酸基を有する重合性単量体(例えば、(メタ)アクリル酸、ビニルスルホン酸等)と、前記ビニルエステル系単量体と、必要により他の共重合性単量体(α−オレフィン類など)との共重合体等が挙げられる。
【0051】
バインダーの含有量は特に限定されないが、固形分換算で、導電性ポリマーの固形分100重量部に対して、1〜170000重量部が好ましく、5〜5000重量部がより好ましい。
上記含有量が1重量部未満では、電磁波シールドシートの導電性ポリマー層の膜厚を均一に形成する事が難しくなる場合があり、一方、170000重量部を超えると、導電性ポリマー層の電磁波シールド効果を低下させる原因になる場合がある。
【0052】
(架橋剤)
上記架橋剤は、導電性薄膜の強度をさらに向上させる目的で用いられる。
上記架橋剤は、バインダーと併用して、バインダーを架橋する目的で使用してもよく、バインダーを併用せずに架橋剤の自己架橋膜を形成させてもよい。架橋させるための触媒として、ドーパントが有する酸性基を利用してもよく、新たに、有機酸または無機酸を添加してもよい。また、感熱性酸発生剤、感放射線性酸発生剤、感電磁波性酸発生剤等を添加してもよい。
【0053】
上記架橋剤としては、例えば、メラミン系、ポリカルボジイミド系、ポリオキサゾリン系、ポリエポキシ系、ポリイソシアネート系等の架橋剤が挙げられる。これらの架橋剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
上記架橋剤の含有量は特に限定されないが、固形分換算で、導電性ポリマーの固形分100重量部に対して、1〜100000重量部が好ましく、10〜1000重量部がより好ましい。
上記含有量が1重量部未満では、導電性ポリマー層の強度が不十分である場合があり、一方、100000重量部を超えると、導電性ポリマー層の電磁波シールド効果を低下させる原因になる場合がある。
【0055】
(界面活性剤)
前記界面活性剤は、レベリング性を向上し、均一な塗布膜を得ることができるものなら特に限定されない。
上記界面活性剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン等のシロキサン化合物;パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール等のフッ素含有有機化合物;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、プロピレンオキシド重合体、エチレンオキシド重合体などのポリエーテル系化合物;ヤシ油脂肪酸アミン塩、ガムロジン等のカルボン酸;ヒマシ油硫酸エステル類、リン酸エステル、アルキルエーテル硫酸塩、ソルビタン脂肪酸エステル、スルホン酸エステル、リン酸エステル、コハク酸エステル等のエステル系化合物;アルキルアリールスルホン酸アミン塩、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等のスルホン酸塩化合物;ラウリルリン酸ナトリウム等のリン酸塩化合物;ヤシ油脂肪酸エタノールアマイド等のアミド化合物;さらにはアクリル系の共重合物等が挙げられる。これらの中でも、レベリング性の点からはシロキサン系化合物およびフッ素含有化合物が好ましく、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンが特に好ましい。
【0056】
上記界面活性剤の含有量は特に限定されないが、固形分換算で、導電性ポリマーの固形分100重量部に対して、0.01〜23000重量部が好ましく、0.1〜5000重量部がより好ましい。
上記含有量が0.01重量部未満では、電磁波シールドシートの導電性ポリマー層の膜厚を均一に形成する事が難しくなる場合があり、一方、23000重量部を超えると、導電性ポリマー層の電磁波シールド効果を低下させる原因になる場合がある。
【0057】
(レベリング剤)
上記レベリング剤としては、例えば、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シロキサン、ポリエーテルエステル変性水酸基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性アクリル基含有ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、パーフルオロポリエステル変性ポリジメチルシロキサン等のシロキサン化合物;パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール等のフッ素含有有機化合物;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、プロピレンオキシド重合体、エチレンオキシド重合体等のポリエーテル系化合物;ヤシ油脂肪酸アミン塩、ガムロジン等のカルボン酸;ヒマシ油硫酸エステル類、リン酸エステル、アルキルエーテル硫酸塩、ソルビタン脂肪酸エステル、スルホン酸エステル、リン酸エステル、コハク酸エステル等のエステル系化合物;アルキルアリールスルホン酸アミン塩、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム等のスルホン酸塩化合物;ラウリルリン酸ナトリウム等のリン酸塩化合物;ヤシ油脂肪酸エタノールアマイド等のアミド化合物;さらにはアクリル系の共重合物等が挙げられる。これらのレベリング剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0058】
上記レベリング剤の含有量は特に限定されないが、固形分換算で、導電性ポリマーの固形分100重量部に対して、0.01〜23000重量部が好ましく、0.1〜5000重量部がより好ましい。
上記含有量が0.01重量部未満では、電磁波シールドシートの導電性ポリマー層の膜厚を均一に形成する事が難しくなる場合があり、一方、230000重量部を超えると、導電性ポリマー層の電磁波シールド効果を低下させる原因になる場合がある。
【0059】
(導電性向上剤)
上記導電性向上剤は、上記導電性ポリマー組成物に配合して使用する。また、上記導電性向上剤を配合することにより、導電性ポリマー層の電磁波シールド性能を向上させることができる。
上記導電性向上剤としては、例えば、(a)沸点が60℃以上で分子内に少なくとも1つのケトン基を有する化合物、(b)沸点が100℃以上で分子内に少なくとも1つのエーテル基を有する化合物、(c)沸点が100℃以上で分子内に少なくとも1つのスルフィニル基を有する化合物、(d)沸点が100℃以上で分子内に少なくとも1つのアミド基を有する化合物、(e)沸点が50℃以上で分子内に少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物、(f)沸点が100℃以上で分子内に2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物、(g)沸点が100℃以上で分子内に1つのラクタム基を有する化合物等が挙げられる。
【0060】
上記沸点が60℃以上で分子内に少なくとも1つのケトン基を有する化合物(a)としては、例えば、イソホロン、プロピレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、β−ブチルラクトン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。
上記沸点が100℃以上で分子内に少なくとも1つのエーテル基を有する化合物(b)としては、例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、2−フェノキシエタノール、ジオキサン、モルホリン、4−アクリロイルモルホリン、N−メチルモルホリンN−オキシド、4−エチルモルホリン、オキセタン、THF、THP等が挙げられる。
上記沸点が100℃以上で分子内に少なくとも1つのスルフィニル基を有する化合物(c)としては、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
上記沸点が100℃以上で分子内に少なくとも1つのアミド基を有する化合物(d)としては、例えば、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−エチルアセトアミド、N−フェニル−N−プロピルアセトアミド、ベンズアミド等が挙げられる。
上記沸点が50℃以上で分子内に少なくとも1つのカルボキシル基を有する化合物(e)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メタン酸、エタン酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、安息香酸、p−トルイル酸、p−トルイル酸、p−クロロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、フタル酸、イソフタル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマール酸等が挙げられる。
上記沸点が100℃以上で分子内に2つ以上のヒドロキシル基を有する化合物(f)としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、β−チオジグリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、カテコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、エリトリトール、グリセッリン、インマトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、スクロース等が挙げられる。
上記沸点が100℃以上で分子内に少なくとも1つのラクタム基を有する化合物(g)としては、例えば、N−メチルピロリドン、β−ラクタム、γ−ラクタム、δ−ラクタム、ε−カプロラクタム、ラウロラクタム等が挙げられる。
上記導電性向上剤の沸点が特定温度以上であると、導電層形成時の加熱によって当該導電性向上剤が徐々に揮発していくことになるが、その過程で、導電性ポリマーの配向を電磁波シールド性能にとって有利な配向に制御することになり、その結果、電磁波シールド性能が向上するものと考えられる。一方、導電性向上剤の沸点が特定温度に満たないものであると、急激に導電性向上剤が蒸発してしまうため、導電性ポリマーの配向が十分に制御されず電磁波シールド性能の向上につながらないものと考えられる。
上記導電性向上剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0061】
上記導電性向上剤の含有量は特に限定されないが、導電性ポリマー組成物中において、導電性ポリマーの固形分100重量部に対して、5〜2000重量部が好ましく、10〜1500重量部がより好ましい。
上記導電性向上剤の含有量が5重量部未満では、電磁波シールド性能を十分に向上させることが出来ないの場合があり、一方、2000重量部を超えると、導電性ポリマー層を形成するための導電性ポリマー組成物の導電成分が希薄となり、導電性ポリマー層を形成した時に十分な電磁波シールド性能を付与できなくなる場合がある。
【0062】
上記導電性ポリマー層を形成するための導電性ポリマー組成物は、溶媒を含有していてもよい。上記溶媒は、上記導電性ポリマー層中には残留しないことが好ましい。
なお、導電性コーティング用組成物の全ての成分を完全に溶解させるものを「溶媒」、不溶成分を分散させるものを「分散媒」と称するが、本明細書では、特に区別せずに、いずれも「溶媒」と記載する。
(溶媒)
上記溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール等のエチレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のプロピレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル等のプロピレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールエーテルアセテート類;テトラヒドロフラン;アセトン;アセトニトリル等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0063】
これらのなかでは、水、又は、水と有機溶媒との混合物が好ましい。
上記溶媒として水を用いる場合、水の含有量は、導電性ポリマーの固形分100重量部に対して、20〜500000重量部が好ましく、200〜10000重量部がより好ましい。
上記水の含有量が500000重量部を超えると導電性ポリマー層を形成するための導電性ポリマー組成物中の導電成分が希薄となり、導電性ポリマー層を形成した時に十分な電磁波シールド性能を付与できなくなる場合があるからである。
【0064】
また、水と有機溶媒との混合物を用いる場合、有機溶媒としては、メタノール、エタノール、又は、2−プロパノールが好ましい。
この場合、有機溶媒の含有量は特に限定されず、導電性ポリマーの固形分100重量部に対して、20〜770000重量部が好ましく、200〜20000重量部がより好ましい。また、水と有機溶媒とを併用する場合、両者の比率(水と有機溶媒との比率)は、100:0〜5:95が好ましく、100:0〜30:70がより好ましい。
【0065】
上記シールドシートは、上述したように、プライマー層、印刷層を備えていてもよい。
上記プライマー層としては、例えば、ポリエステル、アクリル系樹脂(ポリアクリレート、ポリメタクリレート)、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド等のホモポリマー;スチレン、塩化ビニリデン、塩化ビニル、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート等のモノマーを共重合して得られるコポリマー;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物等からなるものが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種類以上を併用しても良い。
上記印刷層は、従来公知の印刷インキを用いて形成すればよい。
【0066】
このような構成からなる上記シールドシートの厚さは、特に限定されないが、0.01〜10mmが好ましい。
その理由は、シールドシートの厚みが0.01mm未満では、シールドシートを成型後の成型体の強度が不十分であることから成型体の形状を維持することが困難となる場合があり、シートの厚みが10mmを超えると、様々な形状へ成型する事が困難になる場合があるからである。
【0067】
また、上記シールドシートのKEC法により測定した、電磁波シールド性能は、1〜100MHzの周波数領域において、20dB以上であることが好ましく、30dB以上であることがより好ましい。
この範囲にあれば、上記シールドシートを成型した電磁波シールド成型体が、各種電子機器から発せられる電磁波を十分にシールドする事が可能になるからである。
【0068】
次に、上記シールドシートの製造方法について説明する。
(1)上記樹脂層として、上述した材質からなる樹脂フィルムを出発材料とする。
なお、樹脂フィルムの入手方法としては、押出成型やカレンダー成型等、従来公知のフィルム状物の成型方法を使用して製造してもよいし、市販品を使用することもできる。
【0069】
(2)上記樹脂フィルムの片面又は両面に金属層を形成する。上記金属層を形成する方法については、既に説明した通りである。
なお、上記金属層として、パターン状の金属層を形成する場合は、例えば、マスクを介して金属層を形成すればよい。
【0070】
(3)次に、上記金属層を形成した上記樹脂フィルム(積層体)の片面又は両面に、上記導電性ポリマー層を形成する。
上記導電性ポリマー層は、例えば、上記導電性ポリマー組成物を塗布し、その後、必要に応じて乾燥処理を行うことにより形成することができる。
【0071】
ここで、上記導電性コーティング用組成物を塗布する方法としては、公知の塗布方法を使用することができる。上記塗布方法としては、例えば、スピンコーティング、グラビアコーティング、バーコーティング、ディップコーティング、カーテンコーティング、ダイコーティング、スプレーコーティング等が挙げられる。さらに、スクリーン印刷、スプレー印刷、インクジェット印刷、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷等の印刷法も適用できる。これらの方法の中から、目的に応じて適宜選択すれば良い。
【0072】
また、塗布した導電性コーティング用組成物を乾燥させる場合、その方法は特に限定されないが、例えば、通風乾燥機、熱風乾燥機、赤外線乾燥機等の乾燥機等を用いて行えばよい。また、加熱手段を有する乾燥機(熱風乾燥機、赤外線乾燥機等)を用いると、乾燥および加熱を同時に行うことが可能である。さらに、これらの乾燥機以外に、加熱・加圧機能を具備する加熱・加圧ロール、プレス機等を用いてもよい。
また、乾燥条件も特に限定されないが、25〜200℃で10秒〜2時間程度の条件が好ましく、50〜150℃で20秒〜15分程度の条件がより好ましい。
【0073】
このような工程を経ることにより、上記シールドシートを製造することができる。
また、プライマー層や接着剤層、印刷層を備えるシールドシートを製造する場合、各層は、適切な工程で適宜形成すればよい。
【0074】
次に、本発明の電磁波シールド成型体について、図面を参照しながら説明する。
本発明の電磁波シールド成型体は、少なくとも樹脂層(A)、金属層(B)、及び、0.05S/cm以上の導電性を有する導電性ポリマーを含有する導電性ポリマー層(C)からなり、
上記樹脂層(A)の少なくとも片面に金属層(B)を備え、かつ、
上記樹脂層(A)と上記金属層(B)とを有する積層体の少なくとも片面に上記導電性ポリマー層(C)を備えたことを特徴とする。
【0075】
図3(a)は、本発明の電磁波シールド成型体の一例を模式的に示す斜視図であり、(b)は、(a)のA−A線断面を模式的に示す断面図である。
図3(a)、(b)に示すように、電磁波シールド成型体100は、シート状物110が中央部に四角柱状の凸部110aを備えるように成型された形状を有しており、この凸部110aが、ハードディスク等の被電磁波シールドデバイス(電磁波を放出するデバイス)を収納できるように構成されている。
そして、シート状物110は、樹脂層111の片面に金属層112が形成されて積層体113をなし、樹脂層111の金属層112が形成された側と反対側の面に導電性ポリマー層114が形成された層構成を有している。
即ち、シート状物110は、図1に示したシールドシート10と同様の層構成を有している。
【0076】
なお、本発明の電磁波シールド成型体の層構成は、図3に示した層構成に限定されるわけではなく、上述した本発明のシールドシート同様、樹脂層の片面に金属層が形成されて積層体をなし、樹脂層の金属層が形成された側の面に更に導電性ポリマー層が形成された層構成(図2参照)や、樹脂層の両面に金属層が形成されて積層体をなし、この積層体の両面又は片面に導電性ポリマー層が形成された層構成であってもよい。
更には、本発明のシールドシートと同様、接着剤層やプライマー層、印刷層を備える層構成であってもよい。
【0077】
また、上記電磁波シールド成型体を構成する各層の具体例は、既に説明した本発明のシールドシートを構成する各層の具体例と同様であるため、ここでは、その説明を省略する。
【0078】
上記電磁波シールド成型体の形状は、図3に示した形状に限定されるわけではなく、例えば、図4、5に示したような形状であってもよい。
図4、5は、それぞれ本発明の電磁波シールド成型体の別の一例を模式的に示す斜視図である。
図4に示すように、電磁波シールド成型体200は、シール状物210の中央部に球面の一部を切り取った形状の凸部210aを備えている。
また、図5に示すように、電磁波シールド成型体300は、シール状物310の中央部に円柱状の凸部310aを備えている。
このような形状の電磁波シールド成型体においても、それぞれ、その凸部に被電磁波シールドデバイスが収納されることとなる。
【0079】
即ち、上記電磁波シールド成型体の形状は、被電磁波シールドデバイスが収納、被覆されるような形状であれば、その形状はいかなる形状であってもよい。
【0080】
次に、本発明の電磁波シールド成型体の製造方法について説明する。
上記電磁波シールド成型体は、例えば、本発明のシールドシートを成型することで製造することができる。
本発明のシールドシートを成型して製造する場合、電磁波シールド成型体の製造方法としてロール・トゥー・ロールの工程が適用できることから、生産性に優れることとなる。
上記シールドシートの成型方法としては、例えば、真空成型、プレス成型、圧空成型、吹き込み成型等が挙げれる。
【0081】
また、上記電磁波シールド成型体は、例えば、樹脂フィルムの片面又は両面に金属層を形成した積層体(上記シールドシートの積層体に相当)を上述した真空成型等で成型した後、その成型体に導電性ポリマー層を形成して製造してもよい。
上記導電性ポリマー層を形成する方法としては、例えば、上述した本発明のシールドシートの製造方法における導電性ポリマー層を形成する方法と同様の方法等を用いることができる。
【0082】
本発明の電磁波シールド成型体の優れた効果の1つに、既に説明したように、従来の樹脂層と金属層とのみからなるシールドシートを成型した場合に生じる不都合、即ち、成型工程において金属層の一部が断線(クラックが発生)し、電磁波シールド性能が低下するとの不都合を回避できることにある。
そのため、成型した積層体に後から導電性ポリマー層を形成する場合、金属層の断線した部分のみに導電性ポリマー層を形成すればよいとの利点を有する。
なお、金属層の断線箇所は、例えば、顕微鏡で金属表面を観察することで特定することができる。
【0083】
また、上記電磁波シールド成型体は、例えば、樹脂フィルムのみを真空成型等で成型した後、上述した本発明のシールドシートの製造方法における金属層を形成する方法及び導電性ポリマー層を形成する方法と同様の方法等で、金属層及び導電性ポリマー層を形成してもよい。
【0084】
また、上記電磁波シールド成型体は、KEC法により測定した電磁波シールド性能が、1〜100MHzの周波数領域において、20dB以上であることが好ましく、30dB以上であることがより好ましい。
【0085】
また、本発明のシールドシートを用いて上記電磁波シールド成型体を製造した場合、KEC法により測定した電磁波シールド性能が、1〜100MHzの周波数領域において、成型前のシールドシートの80%以上維持されていることが好ましい。
80%以上維持されていると、様々な形状の電磁波シールド成型体に対応することができ、電磁波シールド成型体の設計が容易になるからである。
【0086】
このような本発明の電磁波シールド成型体は、パソコン、携帯電話、デジタルカメラ、ゲーム機、医療機器、電気自動車(ハイブリット車を含む)、自動車、その他LSIなどの半導体が搭載される精密機器等の電子機器に搭載される電子部品の電磁波をシールドする部材として特に好適に使用することができる。
【実施例】
【0087】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。以下、「部」又は「%」は特記ない限り、それぞれ「重量部」又は「重量%」を意味する。
【0088】
(導電性ポリマー組成物Aの調製)
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合体の水分散体(H.C.スタルク社製:CleviosPH500、固形分1.0%、導電率=0.23S/cm)100部に、バインダーとして20部のアクリル樹脂水分散体(日本純薬株式会社製:ジュリマーAT−613、固形分23.5%)、導電性向上剤として4.6部のジメチルスルホキシド(関東化学社製)、2.0部の界面活性剤(固形分100%)、2.0部のレベリング剤(固形分100%)、10部の水、及び、10部のエタノールを加え、1時間攪拌した。これを400メッシュのSUS製の篩にてろ過し、導電性ポリマー組成物Aを得た。
【0089】
(導電性ポリマー組成物Bの調製)
ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との複合体の水分散体(H.C.スタルク社製:CleviosPH500、固形分1.0%、導電率=0.23S/cm)100部に、バインダーとして10部のアクリル樹脂水分散体(日本純薬株式会社製:ジュリマーAT−613、固形分23.5%)及び3.3部のエポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製:デナコールEX−861、固形分100%)、導電性向上剤として4.6部のジメチルスルホキシド(関東化学社製)、2.0部の界面活性剤(固形分100%)、2.0部のレベリング剤(固形分100%)、10部の水、並びに、10部のエタノールを加え、1時間攪拌した。これを400メッシュのSUS製の篩にてろ過し、導電性ポリマー組成物Bを得た。
【0090】
(導電性ポリマー組成物Cの調製)
3.3部のエポキシ樹脂(ナガセケムテックス社製:デナコールEX−861、固形分100%)に代えて、10部のポリエステル樹脂水分散体(ナガセケムテックス社製:ガブセンES−210、固形分25.0%)を用いた以外は導電性ポリマー組成物Bと同様にして、導電性ポリマー組成物Cを得た。
【0091】
(実施例1)
下記の方法で図1に示した層構成のシールドシートを作製した。
A−PET(非晶質ポリエチレンテレフタレート)フィルム(三菱化学社製:ノバクリアー SH046、厚さ:0.40mm、図1の11に相当)の片面に真空蒸着機(サンユー電子株式会社社製 SVC−700−2 TURBO−TM)を用いてAlを蒸着させた(図1の金属層12に相当、厚さは、0.2μm)、Al蒸着フィルムとした。次に、Al蒸着面と反対側の面に、導電性ポリマー組成物AをワイヤーバーNo.22(ウエット膜厚50μm)を用いてバーコート法により塗布し、70℃で15分乾燥させることにより導電性ポリマー層を形成し、図1に示した層構成のシールドシートを作製した。
【0092】
(実施例2)
下記の方法で図1に示した層構成のシールドシートを作製した。
A−PETフィルム(厚さ:0.40mm、三菱化学社製:ノバクリアー SH046、厚さ:0.40mm)の片面に真空蒸着機(サンユー電子株式会社社製 SVC−700−2 TURBO−TM)を用いてCuを蒸着させた(図1の金属層12に相当、厚さは、0.2μm)、Cu蒸着フィルムとした。次に、Cu蒸着面と反対側の面に、導電性ポリマー組成物AをワイヤーバーNo.22(ウエット膜厚50μm)を用いてバーコート法により塗布し、70℃で15分乾燥させることにより導電性ポリマー層を形成し、図1の層構成のシールドシートを作製した。
【0093】
(実施例3)
導電性ポリマー組成物Aに代えて、導電性ポリマー組成物Bを使用した以外は、実施例1と同様にしてシールドシートを作製した。
【0094】
(実施例4)
導電性ポリマー組成物Aに代えて、導電性ポリマー組成物Cを使用した以外は、実施例1と同様にしてシールドシートを作製した。
【0095】
(実施例5)
下記の方法で図2に示した層構成のシールドシートを作製した。
Al蒸着面と反対側の面には導電性ポリマー組成物Aを塗布せず、Al蒸着面上に導電性ポリマー組成物Aを塗布した以外は実施例1と同様にしてシールドシートを作製した。
【0096】
(比較例1)
実施例1で作製したAl蒸着フィルムをシールドシートとした。
【0097】
(比較例2)
実施例2で作製したCu蒸着フィルムをシールドシートとした。
【0098】
(比較例3)
厚さ0.5mmのCu板をシールドシートとした。
【0099】
(比較例4)
厚さ0.5mmのAl板をシールドシートとした。
【0100】
(評価)
実施例1〜5及び比較例1〜4で製造した各シールドシートを10cm×10cmに裁断し、評価用シールドシートとした。
【0101】
(重量測定)
各評価用シールドシートの重量を、天秤(METTLER TLLENDO社製)で測定した。結果を表1に示した。
【0102】
下記成型条件1−1〜成型条件2−2のいずれかの条件で評価用シールドシートを成型して電磁波シールド成型体を得、これを評価用シールド成型体とした。各評価用シールド成型体の電磁波シールド性能、及び、加工性を評価した。
【0103】
(成型条件1−1)
下記(1)〜(4)の工程を経る、一般に「真空成型」と称される方法で成型した。
(1)評価用シールドシートを400℃のヒーターで60秒間一様に加熱し軟化させる。
(2)次に、軟化した評価用シールドシートをヒーターから離し、軟化した評価用シールドシートを金型に押し当てる。ここで、金型としては、高さ1cmで、底部の大きさ5cm×5cmの凸部(図3(a)中、h=1cm、W、W=5cm)を成型できるものを使用した。
(3)その後、真空ポンプを作動させて、軟化した評価サンプルと金型との隙間の空気を吸引し、軟化した評価用シールドシートと金型を密着させる。
(4)室温まで冷却した後、金型から取り外し、高さ1cmで、底部の大きさ5cm×5cmの凸部を中央部に有する電磁波シールド成型体を得る。
【0104】
(成型条件1−2)
金型として、高さ10cmで、底部の大きさ5cm×5cmの凸部(図3(a)中、h=10cm、W、W=5cm)を形成できるものを使用した以外は、成型条件1−1と同様の条件で真空成型を行い、高さ10cmで、底部の大きさ5cm×5cmの凸部を中央部に有する電磁波シールド成型体を得る。
【0105】
(成型条件2−1)
下記の工程を経る、一般に「プレス成型」と称される方法で成型した。
評価用シールドシートを凸型と凹型との間に位置させ、室温、20,000Nの力で評価サンプルに10秒間圧力を加える。その後、力を開放し型から取り外すことにより、電磁波シールド成型体を得る。
ここで、凸型及び凹型としては、高さ1cmで、底部の大きさ5cm×5cmの凸部(図3(a)中、h=1cm、W、W=5cm)を成型できるものを使用した。
【0106】
(成型条件2−2)
凸型及び凹型として、高さ10cmで、底部の大きさ5cm×5cmの凸部(図3(a)中、h=10cm、W、W=5cm)を形成できるものを使用した以外は、成型条件2−1と同様の条件でプレス成型を行い、高さ10cmで、底部の大きさ5cm×5cmの凸部を中央部に有する電磁波シールド成型体を得る。
【0107】
(電磁波シールド性能の評価)
予め、各評価用シールドシートの電磁波シールド性能をKEC法により、1〜100MHzの周波数領域で測定する。
次に、実施例1〜5及び比較例1、2の評価用シールドシートについては、上記成型条件1−1で成型し、比較例3、4の評価用シールドシートについては、上記成型条件2−1で成型して、評価用シールド成型体を作製し、各評価用シールド成型体について、電磁波シールド性能をKEC法により、1〜100MHzの周波数領域で測定する。
そして、各評価用シールドシート及び各評価用シールド成型体の電磁波シールド性能を下記の基準で評価した。結果を表1に示した。
(電磁波シールド性能の評価基準)
○:30dB以上の電磁波シールド効果がある。
△:10以上30dB未満の電磁波シールド効果がある。
×:10dB未満の電磁波シールド効果。
【0108】
さらに、各評価用シールド成型体の電磁波シールド性能の、成型前(評価用シールドシート)の電磁波シールド性能に対する比率(シールド性能維持率(%))を算出した。結果を表1に示した。
【0109】
(加工性の評価)
実施例1〜5及び比較例1、2の評価用シールドシートについては、上記成型条件1−2で成型し、比較例3、4の評価用シールドシートについては、上記成型条件2−2で成型して、評価用シールド成型体を作製し、各評価用シールド成型体を目視で観察し、その加工性について下記の基準で評価した。結果を表1に示した。
(加工性の評価基準)
○:成型体の外観にひび割れなし
×:成型体の外観にひび割れあり
【0110】
【表1】

【0111】
(実施例6)
比較例1で作製したシールドシートを成型条件1−1で成型し、高さ1cmで、底部の大きさ5cm×5cmの凸部を中央部に有する成型体a(図3参照)を作製した。その後、導電性ポリマー組成物Aをディップコーター(株式会社あすみ技研社製、Mシリーズを用いて、引き上げ速度1mm/secで成型体aに塗布して電磁波シールド成型体Aを作製した。
【0112】
(評価)
実施例6で作製した成型体a及び電磁波シールド成型体Aのそれぞれを評価サンプルとして、下記の評価を行った。
【0113】
(重量測定)
各評価サンプルの重量を、天秤(METTLER TLLENDO社製)で測定した。結果を表2に示した。
【0114】
(電磁波シールド性能の評価)
実施例6で作製した成型体a及び電磁波シールド成型体Aのそれぞれの電磁波シールド性能をKEC法により、1〜100MHzの周波数領域で測定した。
そして、成型体a及び電磁波シールド成型体Aのそれぞれの電磁波シールド性能を下記の基準で評価した。結果を表2に示した。
(電磁波シールド性能の評価基準)
○:30dB以上の電磁波シールド効果がある。
△:10以上30dB未満の電磁波シールド効果がある。
×:10dB未満の電磁波シールド効果。
【0115】
【表2】

表1の結果から、実施例1〜5の成型用シールドシートは、比較例1、2のシールドシートに比べて成型後の電磁波シールド性能の維持率が高く、成型体が実用上充分な電磁波シールド性能を有していることが明らかとなった。また、比較例3、4のシールドシートに比べて、軽量で、かつ、成型性に優れることも明らかとなった。
また、表2の結果から、樹脂層上に金属層が形成された積層体を成型した後、得られた成型体に導電性ポリマー層を形成した場合も、電磁波シールド性能に優れた電磁波シールド成型体となることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明は、電子機器、特に、パソコン、携帯電話、デジタルカメラ、ゲーム機、医療機器、自動車、電気自動車(ハイブリッド車を含む)、その他LSIなどの半導体が搭載される精密機器等、搭載される電気部品が発する電磁波をシールドするために好適に用いられる。
【符号の説明】
【0117】
10、20 シールドシート
11、21 樹脂層
12、22 金属層
13、23 積層体
14、24 導電性ポリマー層
100、200、300 電磁波シールド成型体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも樹脂層(A)、金属層(B)、及び、0.05S/cm以上の導電性を有する導電性ポリマーを含有する導電性ポリマー層(C)からなり、
前記樹脂層(A)の少なくとも片面に金属層(B)を備え、かつ、
前記樹脂層(A)と前記金属層(B)とを有する積層体の少なくとも片面に前記導電性ポリマー層(C)を備えたことを特徴とする成型用電磁波シールドシート。
【請求項2】
前記金属層(B)は、導電性を有する金属若しくは金属酸化物、又は、磁性体からなる請求項1に記載の成型用電磁波シールドシート。
【請求項3】
前記金属層(B)は、蒸着により形成された層であり、かつ、厚さが0.01〜10.0μmである請求項1又は2に記載の成型用電磁波シールドシート。
【請求項4】
前記導電性ポリマーは、ポリ(3,4−二置換チオフェン)とポリ陰イオンとの複合体からなる請求項1〜3のいずれかに記載の成型用電磁波シールドシート。
【請求項5】
前記導電性層(C)は、バインダーを含有し、かつ、前記バインダーの少なくとも1種がアクリル系樹脂である請求項1〜4いずれかに記載の成型用電磁波シールドシート。
【請求項6】
前記導電性層(C)は、導電性ポリマーと導電性向上剤とを含有し、前記導電性向上剤の配合量が、前記導電性ポリマーの固形分100重量部に対して10〜1500重量部である導電性ポリマー組成物を用いて成形された層である請求項1〜5のいずれかに記載の成型用電磁波シールドシート。
【請求項7】
少なくとも樹脂層(A)、金属層(B)、及び、0.05S/cm以上の導電性を有する導電性ポリマーを含有する導電性ポリマー層(C)からなり、
前記樹脂層(A)の少なくとも片面に金属層(B)を備え、かつ、
前記樹脂層(A)と前記金属層(B)とを有する積層体の少なくとも片面に前記導電性ポリマー層(C)を備えたことを特徴とする電磁波シールド成型体。
【請求項8】
請求項1〜6に記載の成型用電磁波シールドシートを成型してなる請求項7に記載の電磁波シールド成型体。
【請求項9】
少なくとも樹脂層(A)、金属層(B)からなる積層シートを成型して得られた成型体の表面に、導電性ポリマー層(C)が形成された請求項7に記載の電磁波シールド成型体。
【請求項10】
電子機器の電磁波シールドとして用いられる請求項7〜9のいずれかに記載の電磁波シールド成型体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−186222(P2012−186222A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46755(P2011−46755)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000214250)ナガセケムテックス株式会社 (173)
【Fターム(参考)】