説明

成形体の製造方法及び製造装置

【課題】微細な凹凸パターンを有する成形体を精度良く効率的に作製できる成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】連続搬送される可撓性支持体の一面に活性エネルギー線硬化型樹脂を含む樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層が形成された可撓性支持体を、前記樹脂層がエンボスロールと当接するように、前記エンボスロールと、ニップロールとの間に供給し、前記エンボスロールと前記ニップロールとの間で前記可撓性支持体を挟圧することにより前記樹脂層に凹凸パターンを成形する成形工程と、前記凹凸パターンが成型された樹脂層に活性エネルギー線を照射することにより前記樹脂層を硬化する硬化工程と、を有する成形体の製造方法において、前記成形工程において、前記挟圧時に前記エンボスロールと前記ニップロールとの間に形成されるニップ幅が3mm未満となるようにして、前記樹脂層に凹凸パターンを成形することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は可撓性支持体の少なくとも一面に微細な凹凸パターンを有する成形体の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで表面に凹凸パターンを有する成形体は主として建材等の装飾部材として用いられてきたが、近年、反射防止フィルム、拡散シート、輝度向上シート等の光学フィルムや、導光板、回折格子、パターンドメディア、光記録媒体、光学素子、ホログラム、マイクロ流路等の部材に幅広く用いられている。特に、反射防止フィルム、拡散シート等に代表されるような光学フィルム用途や、CD(コンパクトディスク)、DVD(デジタルバーサタイルディスク)等のトラッキング層を有する光記録媒体用途において、凹凸パターンを有する成形体の利用が増加している。これらの用途においては、光学特性の性能向上のために凹凸パターンの微細化が重要になってきている。例えば、液晶表示板やCRT等で用いられている外光や周辺物の写り込みを防ぐための反射防止膜は表面の凹凸での光の散乱を利用することにより、光の映りこみを防止して目に優しい画像が得ているが、凹凸パターンにより全体がスリガラスのように白く見えて、画像の鮮やかさが低下する欠点がある。このため、凹凸パターンのピッチを可視光波長以下のサブミクロンオーダーに微細化して、反射防止機能を向上することが提案されている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
基材の表面に微細な凹凸パターンを直接形成する方法としては、(1)フォトリソグラフィの手法を用いて基材表面をマスクエッチングする方法、(2)サンドプラストやコロナ放電で基材表面を粗面化する方法、(3)微粒子を含有する分散液を基材表面に塗布して微粒子の半球部分を基材表面に露出させる方法、(4)基材表面を微細なバイトで切削加工し凹凸を形成する方法等の様々な方法が提案されている。
【0004】
上記のような方法を用いて直接目的とする基材に凹凸パターンを形成しても良いが、表面に凹凸パターンが反転したエンボスパターンを有するエンボスロールを用い、目的とする基材にエンボスパターンを転写する方法は製造が容易で経済的である。
【0005】
このようなエンボスロールを用いて凹凸パターンを形成する場合、熱可塑性樹脂等からなる樹脂シートを加熱し、シート自体の表面を直接加工して凹凸パターンを形成することも可能である。しかしながら、この方法では熱によってシートを変形させるため、転写に長時間を必要とする。このため、シートの走行速度が遅く、生産性に劣る。また、加熱温度を高くすることにより転写時間を短くすることは可能であるが、膜厚の薄い樹脂シートの場合、高温によりシートが溶けてしまう問題や、凹凸パターン形成後にエンボスロールとシートとの分離が困難になるという問題もある。さらに、光学フィルム用途や光記録媒体用途においては、所定の光学特性を満足するために微細な凹凸パターンを非常に精密に形成することが要求されることから、シートに直接凹凸パターンを形成することが困難なのが現状である。また、凹凸パターンを微細化していくほど、凹凸部が熱により垂れやすくなり、より微細な凹凸形状を精度よく形成することは困難になる。
【0006】
そこで、シート上に硬化型樹脂層を形成し、未硬化の樹脂層にエンボスロール上のエンボスパターンを転写した後、樹脂層を硬化することにより凹凸パターンを形成する方法が提案されている。この方法によれば、成型性に優れる流動性の樹脂層に凹凸パターンが成型されるため、微細な凹凸パターンを形成することができる。例えば、表面に凹凸パターンを有するシート状樹脂成型物の製造方法として、搬送されるシート状の透明基材に活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を供給し、表面にエンボスパターンを有するエンボスロールとニップロールとの間に前記透明基材を搬送し、前記透明基材に供給された前記活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が前記エンボスロールに押し当てられた状態で、活性エネルギー線を照射し、前記樹脂組成物を賦型、硬化する方法(例えば、特許文献1)、表面にエンボスパターンを有するエンボスロールに活性エネルギー線硬化型樹脂組成物を塗布し、塗布された活性エネルギー線硬化型樹脂組成物がエンボスロールに押し当てられた状態で、活性エネルギー線を照射し、前記樹脂組成物を賦型、硬化する方法(例えば、特許文献2)が提案されている。
上記のような活性エネルギー線硬化型樹脂を用いて厚みの薄い可撓性支持体上に微細な凹凸パターンを有する成形体を作製する場合、搬送時に可撓性支持体とエンボスロールとの間に空気が同伴しやすくなり、また可撓性支持体にシワ等が入りやすくなり、転写不良が生じやすい。このため、樹脂層に凹凸パターンを成型する転写部において、エンボスロールの外周面に可撓性支持体を押し付けるだけでなく、エンボスロールの可撓性支持体を挟んだ反対側からロール等のニップ手段を用いて可撓性支持体を挟圧することが望ましい。
【0007】
一般的に、ニップロールとしては、一般にゴム製ロールまたは金属製ロールが使用されている。しかしながら、ゴム製ロールは柔軟性があるためニップの均一性に関しては優れているが、ゴム製ロールが弾性体であるため研磨による鏡面化が困難であり表面平滑性に劣る。そのため、流動性を有し挟圧によって変形しやすい樹脂を用いると、ニップロールの表面が未硬化の樹脂層表面に転写されやすく、それによって得られる凹凸パターン上に鮫肌模様が発生しやすい。一方、金属製ロールは表面平滑性は優れているが、剛性が高く、柔軟性がないため、樹脂層を均一に挟圧することが難しい。そのため、ニップロールの片当たり等により、凹凸パターンの転写抜けや凹凸パターンの崩れが発生しやすく、それによって成形体にシワが生じやすい。この結果、いずれのニップロールを用いた場合も転写欠陥を引き起こしやすい。そして、凹凸パターンが微細化するほど、また可撓性支持体の厚さが薄くなるほど上記のような転写欠陥が顕著になる。このため、いずれのニップロールによっても、微細な凹凸パターンを有する成形体を精度よく、効率的に得ることは難しい状況にあった。
【0008】
このため、例えば、弾性変形可能な金属製無端ベルトからなる外筒と、該外筒の内部に弾性変形可能な弾性体からなるロールとを有するタッチロールを用いたり(特許文献3)、複数のニップロールに捲回されたベルトを有するニップ手段を用いて成形することが提案されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許3016638号公報
【特許文献2】特許3490099号公報
【特許文献3】特開2006−192749号公報
【特許文献4】特開2008−194977号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】P.B.Clapham and M .C.Hutley, Nature (London) 244, p.282(1973)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところが、弾性変形可能な金属製無端ベルトからなる外筒と、該外筒の内部に弾性変形可能な弾性体からなるロールとを有するタッチロールを用いても、キャスティングロールとタッチロールにより溶融状環状オレフィン系重合体を挟圧する距離を3〜30mmとしているために、挟圧部における挟圧力の分布がブロードになって、成形膜の厚さがばらつき、正確な成形が行えない場合があったり、前述の複数のニップロールに捲回されたベルトを用いるニップ手段では、ベルト部分でニップする場合には、ニップ面積が過大で、ニップ圧を十分に付与できず、却って微細な凹凸パターンを正確に転写できなかったり、ベルト寸法が長くなるので、シームレスの一体ベルトを成形することが困難で、接続部分が生じるので、この部分による転写不良が生じる場合があった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、微細な凹凸パターンを有する成形体を精度良く効率的に作製できる成形体の製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、凹凸パターンを有する成形体の製造方法及び製造装置について鋭意検討した結果、成形体の製造方法及び製造装置を以下のように構成することで、上記目的を達成できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、連続搬送される可撓性支持体の一面に活性エネルギー線硬化型樹脂を含む樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層が形成された可撓性支持体を、前記樹脂層がエンボスロールと当接するように、前記エンボスロールと、ニップロールとの間に供給し、前記エンボスロールと前記ニップロールとの間で前記可撓性支持体を挟圧することにより前記樹脂層に凹凸パターンを成形する成形工程と、前記凹凸パターンが成型された樹脂層に活性エネルギー線を照射することにより前記樹脂層を硬化する硬化工程と、を有する成形体の製造方法において、前記成形工程において、前記挟圧時に前記エンボスロールと前記ニップロールとの間に形成されるニップ幅が3mm未満となるようにして、前記樹脂層に凹凸パターンを成形することを特徴とする(請求項1)。
【0014】
前記ニップロールに外嵌されたスリーブを備える請求項1に記載の成形体の製造方法(請求項2)。
前記スリーブの材質が金属である請求項1または2に記載の成形体の製造方法(請求項3)。
【0015】
前記成形工程において、前記挟圧力が0.6〜3.3kN/mの請求項3に記載の成形体の製造方法(請求項4)。
【0016】
前記ニップロールの材質がゴムまたはテフロン(登録商標)である請求項1に記載の成形体の製造方法(請求項5)。
【0017】
前記成形工程において、前記挟圧力が0.8〜3.2kN/mの請求項5に記載の成形体の製造方法(請求項6)。
【0018】
前記スリーブの外周面の算術平均粗さRaが1.1μm以下であり、十点平均粗さRzが1.4μm以下であることを特徴とする(請求項7)。これによれば、微細な凹凸パターンを形成してもスリーブ表面の微細な模様の転写を防止でき、スリーブ表面の特異的な突起による転写を防止できる。
【0019】
前記可撓性支持体の厚みが200μm以下であることを特徴とする(請求項8)。本発明によれば、均一な挟圧力が得られるため、薄い膜厚の可撓性支持体上に微細な凹凸パターンを精度よく形成することができる。
【0020】
可撓性支持体を連続搬送する搬送部と、前記連続搬送される可撓性支持体の一面に活性エネルギー線硬化型樹脂を含む樹脂層を形成する樹脂層形成部と、前記樹脂層に凹凸パターンを形成し、凹凸パターンが形成された樹脂層を硬化する転写部と、を有し、前記転写部は、樹脂層に凹凸パターンを成形するエンボスロールと、ニップ手段と、凹凸パターンが成形された樹脂層に活性エネルギー線を照射し樹脂層を硬化させる照射手段と、バックアップロールと、活性エネルギー線の拡散を防止するための遮蔽板と、を有する成形体の製造装置であって、前記ニップロール手段がニップロールとこれに外嵌されたスリーブとから構成されていることを特徴とする(請求項9)。
【発明の効果】
【0021】
上記の製造方法及び製造装置によれば、エンボスロールによる樹脂層に対する挟圧が集中して効率的に行われるために、微細な凹凸パターンであっても正確で欠陥のない成形が可能となり、微細な凹凸パターンを有する成形体を精度良く効率的に作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1に係る製造装置を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係る製造装置を示す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態3に係る製造装置を示す模式図である。
【図4】本発明の実施の形態4に係る製造装置を示す模式図である。
【図5】従来の製造装置を示す模式図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る別の製造装置を示す模式図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係るさらに別の製造装置を示す模式図である。
【図8】エンボスロールとニップロールの挟圧状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
連続搬送される可撓性支持体の一面に活性エネルギー線硬化型樹脂を含む樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、前記樹脂層が形成された可撓性支持体を、前記樹脂層がエンボスロールと当接するように、前記エンボスロールと、ニップロールとの間に供給し、前記エンボスロールと前記ニップロールとの間で前記可撓性支持体を挟圧することにより前記樹脂層に凹凸パターンを成形する成形工程と、前記凹凸パターンが成型された樹脂層に活性エネルギー線を照射することにより前記樹脂層を硬化する硬化工程と、を経て成形体を製造する方法は、比較的容易に、効率よく成形体を製造できるため、広範に採用されている。しかし、微細な凹凸パターンを有する成形体の製造には前述したような課題があった。
【0024】
例えば、特許文献1、2では、透明基材に樹脂組成物を供給した後、ロール(エンボスロール)とニップロール(ニップロール)で、挟圧して成形し、さらに活性エネルギー線を照射して成形体を得る方法が開示されているが、いかなるエンボスロールとニップロールをいかなる条件で挟圧すれば、このましい成形体が得られるかの開示も示唆も見られなかった。本発明者らは、微細な凹凸パターンを有する成形体を精度良く効率的に得るために成形工程について鋭意検討し、良好な成形体の製造方法を提供できるに至った。
【0025】
本発明者らの検討によると、微細な凹凸パターンを有する成形体を精度良く効率的に得るためには、エンボスロールとニップロールとで樹脂層を形成した支持体を挟圧して樹脂層を成形する際の挟圧の圧力(以下、挟圧力ともいう)を適宜にするとともに、挟圧の際に生じるニップ幅を適宜にすると良いことが分った。
【0026】
通常、挟圧力を大きくすると、ニップ幅が大きくなって、好ましい範囲から外れる場合がある。適宜の挟圧力でエンボスロールとニップロールとを挟圧してもニップ幅を好ましい範囲に制御する手法としては、(1)金属や樹脂(MCナイロンなどの高ヤング率樹脂)のスリーブをニップロールに外嵌する、(2)ニップロールを小径化する、(3)ニップロールの材質を高弾性化する、(4)ニップロールのゴム層の厚さを薄くする、等の従来公知の手法が挙げられ、これらの手法を単独または組み合わせて用いることができる。
【0027】
好ましい挟圧力は、支持体上に形成する樹脂層の粘度、ロールの材質・構造や、凹凸パターンの形状により異なる。ロールの構造を最外周の材質を金属(厚み135μm)・内部の材質ををゴム(Shore硬度90度)とした場合、接触面積1mm×1mで換算した線圧で、0.6〜3.3kN/mが好ましい。この範囲が好ましいのは、0.6kN/m未満では挟圧力が低すぎ、転写性に劣り、また搬送速度が高速になると、同伴空気をうまく除去することができなくなり、走行や転写が不安定になりやすい。一方、挟圧力が3.3kN/mを超えると挟圧の効果が飽和するとともに、エンボスロール41や成形体にダメージを与えやすくなる。
ロールの材質をゴム(Shore硬度90度)とした場合、接触面積1mm×1mで換算した線圧で、0.8〜3.2kN/mが好ましい。この範囲が好ましいのは、0.8kN/m未満では挟圧力が低すぎ、転写性に劣り、また搬送速度が高速になると、同伴空気をうまく除去することができなくなり、走行や転写が不安定になりやすい。一方、挟圧力が3.2kN/mを超えると挟圧の効果が飽和するとともに、エンボスロール41や成形体にダメージを与えやすくなる。
【0028】
上記の挟圧力でエンボスロールとニップロールとを挟圧した場合に、ニップロールが変形して形成される挟圧部分の幅(ロールの回転軸と直角方向の幅寸法)が0.5mm以上、3mm未満であることが好ましく、1〜2.5mmであることがより好ましい。この範囲が好ましいのは、現状のニップロールの材質では0.5mm未満にするのが困難であり、3mm以上になると挟圧部における、圧力分布がブロードになるため、成形膜の厚さがばらつき、正確な成形が行えない場合があるからである。
【0029】
ここでいうニップ幅とは、図8に示したように、エンボスロールとニップロールとを挟圧した場合に、ニップロールが変形して形成される挟圧部分の幅寸法2hをいう。このようなニップ幅は、簡易的にはエンボスロールとニップロールとの間に感圧紙を挟んで所定の圧力を加えた時の感圧紙の変色幅から求めることもできるが、本発明のような3mm未満のニップ幅を正確に求めるのは困難なので、金属ロールとゴムのような弾性体とを挟圧した時のニップ幅は下記のように解析的に求めるのが好ましい。
【0030】
ニップ幅2hを求める方法は、下記文献による。
(参考文献1) Calculation of the behavior of rubber covered rollers G.J.Parish Rubber Chem. & Technol. 35[2]'62.403
(参考文献2) On the relation between indentation hardness and Young’s modulus. A.N.Gent Trans IRI 34[46]’58 46〜57
(参考文献3) Measurement of pressure distribution between metal and rubber covered rollers. G.J.Parish British J of Applied physics.9[4]'58 1.58
まず、(1)ニップロール表層のゴム部のゴム硬度S(度)(Shore A)をヤング率E(N/mm)を下記近似式にて換算する。

(2)エンボスロール直径D1とニップロール直径D2より、下記式により平均直径D(φmm)を算出する。

【0031】
(3)上記により求めたゴムのヤング率E、平均直径D(φmm)、ニップロールがかける単位ロール長さ当りの荷重W(N/mm)より、仮想ニップ幅2hを下記ヘルツの公式より算出する。

(4)仮想ニップ幅2h(mm)は、ニップロール全体がゴムで構成されている場合のニップ幅なので、ゴム層が薄い場合にはゴム層厚b(mm)を考慮した場合の下記の補正式を用いて、ニップ幅2h(mm)を算出する。

また、ゴム層を有するニップロールに金属製のスリーブを外嵌して、スリーブを介してエンボスロールとニップロールとを挟圧する場合のニップ幅を求めるのは、解析的には困難なので、下記の演算ソフトを使用してシミュレーションを行って求めるのが好ましい。
【0032】
プリポストソフトとして、株式会社日立ハイテクノロジーズ製CADAS (Ver.16)を使用し、値解析は、LSTC(Livermore Software Technology Corporation)製 LS-DYNA(商標登録)(Ver971)を使用して、動的陽解法で行う。入力するパラメータとしては、機械寸法として、エンボスロール径、ニップロール径、ニップロールゴム厚さ、ニップロール芯金径、ニップロール面長さ、スリーブ厚さを用いる。材料の物性値として、各材料のヤング率、ポアソン比を用いる。荷重として挟圧力を用いる。これらのパラメータを入力することにより、ニップ幅2hを求めることができる。
【0033】
以下、図に基づいて、本発明を具体的に説明する。
【0034】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係る製造装置を示す模式図である。本実施の形態の製造装置100は、送り出しロール2a,巻き取りロール2bからなる搬送部と、活性エネルギー線硬化型樹脂を含む樹脂層11を可撓性支持体10上に形成するための樹脂層形成部3と、樹脂層11に所定の凹凸パターンを成型し、硬化するための転写部4とを有している。また、上記の転写部4は窒素ガス雰囲気(例えば、酸素濃度300ppm以下)で樹脂層11の硬化を行うために不図示の密閉ボックス内に配置されている。
【0035】
樹脂層形成部3は、コータ等からなる塗布手段31を有しており、塗布手段31から一定の供給量で可撓性支持体10上に活性エネルギー線硬化型樹脂が供給されて、可撓性支持体10上に未硬化の樹脂層11が形成される。塗布方法としては、従来公知のロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ディップコート法、カーテンコート法等が挙げられる。
【0036】
樹脂層形成部3は、エンボスロール上に配置されてもよい(図6)。この場合、樹脂層形成部3から活性エネルギー線硬化型樹脂がエンボスロール上に供給された後、短時間で樹脂層11の成型及び硬化を完了することができる。
【0037】
樹脂層11が形成された可撓性支持体10は、次に転写部4に搬送される。この転写部4は、樹脂層11に凹凸パターンを成型するエンボスロール41と、ニップロール42に外嵌されたスリーブ43を備えるニップ手段44と、凹凸パターンが成型された樹脂層11に活性エネルギー線Eを照射し樹脂層11を硬化させる照射手段45と、バックアップロール46と、活性エネルギー線Eの拡散を防止するための遮蔽板47とを有している。ここでスリーブ43は、ニップロール42の外周に密着して外嵌されていてもよいし、図に示したようにニップロール42の外径より大きなものが外嵌されていてもよい。
【0038】
転写部4において、搬送されてきた可撓性支持体10は樹脂層11がエンボスロール41に当接し、樹脂層11が形成された側と反対側の可撓性支持体10がスリーブ43に当接するように、エンボスロール41とニップ手段44間に供給される。そして、エンボスロール41とスリーブ43を介してニップロール42との間で可撓性支持体10を挟圧することにより、スリーブ43が可撓性支持体10との摩擦により搬送速度と略同速で連動しながら凹凸パターンが樹脂層11に成型される。ニップロールよりヤング率が高く表面の平滑なスリーブ43を用いることで、単なるニップロール42による挟圧と異なり、表面性の良好なスリーブ43により好ましいニップ幅で樹脂層11が挟圧される。この結果、流動性のある樹脂層11がエンボスロール41に押し付けられる際に、ニップ手段44のニップ条件やニップロールの表面性に起因する転写欠陥の発生が防止されるとともに、均一な挟圧力を樹脂層11に付与することができるため、微細な凹凸パターンを有する成形体を精度良く効率的に作製できる。
【0039】
スリーブ43の材質としては、平滑性、柔軟性及び強度を付与でき、スリーブ形状に加工が可能なものであれば特に制限されない。例えば、金属製や高ヤング率の樹脂製のスリーブを用いることができる。このような金属としては、SUS304、301、631、チタン、ハステロイ、インコネル、ニッケル合金等の各種鋼が挙げられる。また、樹脂としては、テフロン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリカボネート、各種ゴム等が挙げられる。なお、スリーブ43は継ぎ目がないシームレススリーブを用いることが好ましい。
【0040】
スリーブ43の可撓性支持体10と当接する外周面の算術平均粗さRaは、0.5μm以下であることがより好ましく、0.1μm以下であることが最も好ましい。Raは表面の平均表面粗さを示すため、Raが0.5μmより大きいと、スリーブ43の外周面の表面粗さが樹脂層11に転写されやすくなり、凹凸パターン上に鮫肌模様が発生しやすい。また、スリーブ43の可撓性支持体10と当接する外周面の十点平均粗さRzは1μm以下であることがより好ましく、0.5μm以下であることが最も好ましい。Rzは表面の部分的な突起高さを示すため、Rzが15μmより大きいと、スリーブ43の外周面の特異的な突起が成形体に転写しやすい。従って、微細な凹凸パターンを形成する場合、上記のRa及びRzの両方を満足する表面粗さを有するスリーブが好ましい。なお、上記Ra及びRzは、いずれも東京精密社製のサーフコム(登録商標)E-RM-S27Aを用いて測定したときの値である。
【0041】
スリーブ43の厚さは、柔軟性と強度の点から、10〜1000μmが好ましく、30〜300μmがより好ましく、50〜200μmが最も好ましい。スリーブ43の厚さが10μm以上であれば、スリーブ強度を高くすることができ、スリーブ43の切断を回避することができる。一方、スリーブ43の厚さが1000μm以下であれば、スリーブ43に高い柔軟性を付与することができ、均一な挟圧力を付与することができる。特に金属製スリーブが用いられる場合、上記厚みを有するスリーブが好ましい。
【0042】
また、スリーブ43には、強度、弾性、平滑性、耐摩耗性、及び腐食耐性等を付与するため、各種コーティングを施してよい。このようなコーティング材料としては、具体的には、例えば、ゴム、樹脂、セラミック、グラスファイバ、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、及び金属メッキ等が挙げられる。例えば、樹脂製スリーブが用いられる場合、スリーブ表面にDLCコーティングを施すことにより、強度を向上することができるとともに、摩擦係数の低減を図ることができる。また、金属製スリーブが用いられる場合、スリーブ表面にフッ素樹脂コーティングを施すことにより、耐腐食性の向上や摩擦係数の低減を図ることができ、スリーブ表面に適度な弾性も付与することができる。
【0043】
エンボスロール41とスリーブ43を介してニップロール42とによる挟圧力は、ロールの構造を最外周の材質を金属(厚み135μm)・内部の材質ををゴム(Shore硬度90度)とした場合、接触面積1mm×1mで換算した線圧で、0.6〜3.3kN/mが好ましい。この範囲が好ましいのは、0.6kN/m未満では挟圧力が低すぎ、転写性に劣り、また搬送速度が高速になると、同伴空気をうまく除去することができなくなり、走行や転写が不安定になりやすい。一方、挟圧力が3.3kN/mを超えると挟圧の効果が飽和するとともに、エンボスロール41や成形体にダメージを与えやすくなる。
ロールの材質をゴム(Shore硬度90度)とした場合、接触面積1mm×1mで換算した線圧で、0.8〜3.2kN/mが好ましい。この範囲が好ましいのは、0.8kN/m未満では挟圧力が低すぎ、転写性に劣り、また搬送速度が高速になると、同伴空気をうまく除去することができなくなり、走行や転写が不安定になりやすい。一方、挟圧力が3.2kN/mを超えると挟圧の効果が飽和するとともに、エンボスロール41や成形体にダメージを与えやすくなる。
ニップロール42の径、材質、硬度、配置等の構成は、スリーブ43が可撓性支持体10の搬送に伴って回転可能な構成であれば特に限定されない。
【0044】
エンボスロール41としては表面に凹凸パターンが反転したエンボスパターンを有する金属ロール、ガラスロール、石英ロール、樹脂ロール等を用いることができる。また、エンボスロール41、バックアップロール46には、活性エネルギー線によって発生する熱が可撓性支持体10にダメージを及ぼすことを防止するために冷却機能を設けてもよい。凹凸形状精度確保の点から、エンボスロール表面温度の変動は、好ましく±3℃、より好ましくは±1℃に制御することが好ましい。温度制御のしやすさ点から、エンボスロール表面温度は10℃以上80℃以下が好ましく、20℃以上60℃以下がより好ましく、30℃以上50℃以下が最も好ましい。エンボスロール41で成型される凹凸パターンとしては、目的、用途に応じて種々の形状を使用することができる。特に、上記ニップ手段44は、表面が平滑で、挟圧力も均一であるため、微細な凹凸パターンを形成することができる。例えば、凹凸の平均間隔(D)が0.01〜50μm、凹凸の平均高さ(H)が0.01〜50μm、凹凸の平均間隔(D)と凹凸の平均高さ(H)の比(D/H)が0.01〜100である凹凸パターンも形成可能である。
【0045】
上記のようにして凹凸パターンが成型された樹脂層11は、エンボスロール41に巻きつけられて搬送され、照射手段45から活性エネルギー線Eが照射されることにより硬化される。照射手段45を配置する位置は特に限定されない。例えば、図1に示すように、可撓性支持体10の搬送方向に対して、ニップ手段44よりも下流側で、エンボスロール41の外周に巻きつけられて搬送される可撓性支持体10に活性エネルギー線Eを照射する位置に照射手段45を設けてもよい。また、エンボスロール41が活性エネルギー線Eを透過する材質、例えばガラス、樹脂等から形成されている場合、エンボスロール41内に照射手段45を設けてもよい(図7)。さらに、スリーブ43が活性エネルギー線Eを透過する材質、例えば樹脂から形成されている場合、外嵌されたスリーブ43の内部に照射手段45を設けてもよい。
照射手段45としては、電子線、紫外線、可視光線等の樹脂硬化能を有する活性エネルギー線を照射するエネルギー源が挙げられる。これらの中でもエネルギーの高い紫外線、電子線が好ましい。特に紫外線照射機は硬化型樹脂を硬化させるエネルギー源としては安価であり、取扱いも簡便なため好ましい。一般的な紫外線照射機としては、高圧水銀、メタルハライドランプ、LED等が挙げられる。これらの中でも、エネルギー効率が高く、熱ダメージが少ない点からLEDが好ましい。活性エネルギー線硬化型樹脂の硬化に必要なエネルギー量は、樹脂の種類、照射手段の種類、活性エネルギー線に対する可撓性支持体の透過率等によって異なるが、一般的には、10〜1000mJ/cmが好ましい。
【0046】
本実施の形態において、可撓性支持体10としては光学フィルム、情報記録媒体等で使用されている従来公知のものを使用することができる。一般的には各種合成樹脂からなる可撓性フィルムが挙げられる。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアラミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が挙げられる。これらの中でも光学的性質、機械的強度、寸法安定性、耐熱性、価格等の点からポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましく、特に2軸延伸したポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。使用する可塑性支持体10の厚さとしては特に制限はないが、用途に合わせて、通常300μm以下のものが用いられる。特に200μm以下、より好ましくは100μm以下の薄いフィルムが使用される場合、シワが入りやすいため上記の製造方法は有用である。また、フィルムに対する樹脂層の接着性を高めるため、コロナ、プラズマ処理等の表面処理を行ってもよく、表面にポリウレタン、ポリエステル等の易接着層を設けてもよい。
【0047】
活性エネルギー線硬化型樹脂としては、紫外線、赤外線、可視光線、エックス線または電子線等の活性エネルギー線の照射により硬化する樹脂が挙げられる。例えば、重合性を有するモノマーとオリゴマーとを主成分とする樹脂を用いることができる。このような重合性を有するモノマー及びオリゴマーの中でも、アクリル系モノマー及びオリゴマーは種類が多く、選択肢が広いので好ましい。
【0048】
活性エネルギー線硬化樹脂には上記のモノマー以外に、従来公知の一般的なモノマー及びオリゴマーを用いてもよい。また、必要に応じ汎用樹脂、有機溶剤、光開始剤、増感剤、促進剤、レベリング剤、離型剤、色材、フィラー等を添加してもよい。有機溶剤を使用する場合には、樹脂層11を形成した後に有機溶剤を除去するため乾燥工程を設けることが好ましい。光開始剤の必要性は活性エネルギー線の種類による。特に紫外線、可視光線を活性エネルギー線として硬化反応に使用する場合、光開始剤が必要とされる。また、活性エネルギー線の照射を可撓性支持体を介して行う場合には、可撓性支持体を透過する活性エネルギー線の波長に応じた光開始剤を使用することが好ましい。例えば、可撓性支持体としてポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレンナフタレートフィルムが用いられる場合には、イルガキュア369、819、907(チバガイギー社製)等のそれぞれの可撓性支持体の吸収波長と重ならないような波長領域で吸収をもつ光開始剤を使用することができる。特に、イルガキュア907は2,4−ジエチルチオキサントンあるいは2−クロロチオキサントンと併用することにより硬化を促進することができるため好ましい。
【0049】
(実施の形態2)
図2は、本実施の形態2の製造装置を示す模式図である。この実施の形態2の製造装置200は、ニップ手段44においてスリーブ43が使用されず、ニップロールが小径化されている。ニップロール42を小径化することにより、ニップ幅を好ましい範囲に制御して、ニップ条件に起因する転写欠陥の発生が防止されるとともに、均一な挟圧力を樹脂層11に付与することができるため、微細な凹凸パターンを有する成形体を精度良く効率的に作製できる。例えばある条件下で、ニップロール径が130mmでニップ幅が3mm以上の時に、ニップロール径40mmにすると、ニップ幅を2mm台にすることができる。また、ニップロール42の小径化により挟圧時にニップロール42が変形し、挟圧力がロール軸方向に変化する場合には、ニップロール42を支持する第2のニップロール42cを設けることが好ましい。
その他の構成及び作用効果は、上記実施の形態1と同様である。
【0050】
(実施の形態3)
図3は、本実施の形態3の製造装置を示す模式図である。この実施の形態3の製造装置300は、ニップロールのゴム層が薄層化されている。ニップロール42のゴム層を薄層化することにより、ニップ幅を好ましい範囲に制御して、ニップ条件に起因する転写欠陥の発生が防止されるとともに、均一な挟圧力を樹脂層11に付与することができるため、微細な凹凸パターンを有する成形体を精度良く効率的に作製できる。例えばある条件下で、ニップロールのゴム層の厚さが8mmでニップ幅が3mm以上の時に、ゴム層の厚さを4mmにすると、ニップ幅を2mm台にすることができる。
その他の構成及び作用効果は、上記実施の形態1と同様である。
【0051】
(実施の形態4)
図4は、本実施の形態4の製造装置を示す模式図である。この実施の形態4の製造装置400は、ニップ手段44においてニップロール42ゴム層がヤング率の高いゴム材料で構成されている。ニップロール42を高ヤング率化することにより、ニップ幅を好ましい範囲に制御して、ニップ条件に起因する転写欠陥の発生が防止されるとともに、均一な挟圧力を樹脂層11に付与することができるため、微細な凹凸パターンを有する成形体を精度良く効率的に作製できる。例えばある条件下で、ニップロール42のヤング率が150kg/cm(14.7MPa)でニップ幅が3mm以上の時に、ニップロール42のヤング率を380kg/cm(37.3MPa)にすると、ニップ幅を2mm台にすることができる。
【0052】
その他の構成及び作用効果は、上記実施の形態1と同様である。
【0053】
以下に実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
図1に示す製造装置100を用い、可撓性支持体として、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いて成形体を作製した。成形体の作製にあたっては、まず樹脂層形成部で、粘度100mPa・sのアクリル系UV硬化樹脂を厚さ15μmになるようにマイクログラビアロールを用いてロールコート法により可撓性支持体上に樹脂層を形成した。その後、転写部において、樹脂層を設けた可撓性支持体を、表面にエンボスパターンを有するエンボスロール(ロール径:φ300mm、材質:SUS304)とニップ手段のスリーブ(Ni製、厚さ:135μm、Ra=0.06μm、Rz=0.4μm)との間に搬送し、挟圧力が線圧で3kN/mとなるようにスリーブをニップロール(ロール径:φ130mm、ゴム厚:5mm、ゴム材質:EPTゴム(Shore硬度90度)、芯金径:φ120mm、芯金材質:A5052、ロール面長:500mm)で挟圧して樹脂層がエンボスロールに押し当てられた状態で、高圧水銀ランプから紫外線(300mJ/cm)を照射し樹脂層を硬化させた。なお、エンボスロールは、断面二等辺三角形状の凹凸パターン(凹凸の平均ピッチ:30μm,凹凸の高さ:20μm)が表面に形成された金属ロールを用い、1μm厚さの樹脂層上に上記凹凸パターンが形成されるように成形体を製造した。
【0055】
この時のニップ幅を上述のソフトでシミュレートして求めたところ0.6mmであった。
(実施例2)
ニップ手段のスリーブ(Ni製、厚さ:135μm)をRa=0.2μm、Rz=0.8μmのものに変更した以外は、実施例1と同様にして、成形体を製造した。この時のニップ幅は、実施例と同様の0.6mmであった。
【0056】
(実施例3)
ニップ手段のスリーブ(Ni製、厚さ:135μm)をRa=1.1μm、Rz=3.7μmのものに変更した以外は、実施例1と同様にして、成形体を製造した。この時のニップ幅は、実施例と同様の0.6mmであった。
【0057】
(実施例4)
ニップ手段のスリーブをテフロン製、厚さ:500μm、Ra=0.2μm、Rz=1.4μmに変更した以外は、実施例1と同様にして、成形体を製造した。この時のニップ幅は、実施例と同様の3.0mmであった。
【0058】
(実施例5)
図2に示す製造装置200を用い、スリーブを外し、ニップロールをロール径:φ60mm、ゴム厚:5mmのものに交換し、ニップロールを背後から支持するバックアップロール(ロール径:φ120mm、ロール材質:A5052)を加えた以外は実施例1と同様にして成形体を製造した。この時のニップ幅を上述の計算式で求めたところ2.7mmであった。
(実施例6)
図3に示す製造装置300を用い、スリーブを外し、ニップロールをロール径:φ124mm、ゴム厚:2mmのものに交換した以外は実施例1と同様にして成形体を製造した。この時のニップ幅を上述の計算式で求めたところ2.7mmであった。
(実施例7)
可撓性支持体として、厚さ188μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた以外は、実施例5と同様にして成形体を製造した。この時のニップ幅を上述の計算式で求めたところ2.7mmであった。
(実施例8)
可撓性支持体として、厚さ250μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた以外は、実施例5と同様にして成形体を製造した。この時のニップ幅を上述の計算式で求めたところ2.7mmであった。
(実施例9)
図4に示す製造装置400を用い、スリーブを外し、ニップロールのゴム材質をEPTゴム(Shore硬度92度)ものに交換した以外は実施例1と同様にして成形体を製造した。この時のニップ幅を上述の計算式で求めたところ2.8mmであった。
【0059】
(比較例1)
図5に示す製造装置500を用い、スリーブを外した以外は実施例1と同様にして成形体を製造した。この時のニップ幅を上述の計算式で求めたところ3.4mmであった。
【0060】
(比較例2)
ニップの挟圧力を線圧で4.5kN/mに変更した以外は、実施例3と同様にして、成形体を製造した。この時のニップ幅は、3.7mmであった。
【0061】
以上のようにして作製した各成形体について、以下の評価を行った。表1はこの評価結果を示す。
【0062】
<転写性>
各成形体1mを目視で観察し、観察範囲中の鮫肌模様及びスジ(シワ)等の欠陥面積の割合を測定し、以下の5段階で評価した。
【0063】
5:0〜1%
4:1〜3%
3:3〜10%
2:10〜50%
1:50〜100%
【0064】
【表1】

【0065】
上記表1に示されるように、請求項1を満たすニップ幅が3mm未満の実施例1〜8で得られた成形体は転写性が良好であることが分かる。また、スリーブを用いることによりさらに転写製の良好な成形体が得られることが分かる。
【符号の説明】
【0066】
2a 送り出しロール
2b 巻き取りロール
3 樹脂層形成部
4 転写部
10 可撓性支持体
11 活性エネルギー線硬化型樹脂層
31 塗布手段
41 エンボスロール
42 ニップロール
42a ゴム層
42b 芯金
42c 第2のニップロール
43 スリーブ
44 ニップ手段
45 照射手段
46 バックアップロール
47 遮蔽板
E 活性エネルギー線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続搬送される可撓性支持体の一面に活性エネルギー線硬化型樹脂を含む樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、
前記樹脂層が形成された可撓性支持体を、前記樹脂層がエンボスロールと当接するように、前記エンボスロールと、ニップロールとの間に供給し、前記エンボスロールと前記ニップロールとの間で前記可撓性支持体を挟圧することにより前記樹脂層に凹凸パターンを成形する成形工程と、
前記凹凸パターンが成型された樹脂層に活性エネルギー線を照射することにより前記樹脂層を硬化する硬化工程と、を有する成形体の製造方法において、
前記成形工程において、前記挟圧時に前記エンボスロールと前記ニップロールとの間に形成されるニップ幅が3mm未満となるようにして、前記樹脂層に凹凸パターンを成形することを特徴とする、成形体の製造方法。
【請求項2】
前記ニップロールに外嵌されたスリーブを備える請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項3】
前記スリーブの材質が金属である請求項1または2に記載の成形体の製造方法。
【請求項4】
前記成形工程において、前記挟圧力が0.6〜3.3kN/mの請求項3に記載の成形体の製造方法。
【請求項5】
前記ニップロールの材質がゴムまたはテフロン(登録商標)である請求項1に記載の成形体の製造方法。
【請求項6】
前記成形工程において、前記挟圧力が0.8〜3.2kN/mの請求項5に記載の成形体の製造方法。
【請求項7】
前記スリーブの外周面の算術平均粗さRaが1.1μm以下であり、十点平均粗さRzが1.4μm以下である請求項1ないし4のいずれかに記載の成形体の製造方法。
【請求項8】
前記可撓性支持体の厚みが200μm以下である請求項1ないし7のいずれかに記載の成形体の製造方法。
【請求項9】
可撓性支持体を連続搬送する搬送部と、
前記連続搬送される可撓性支持体の一面に活性エネルギー線硬化型樹脂を含む樹脂層を形成する樹脂層形成部と、
前記樹脂層に凹凸パターンを形成し、凹凸パターンが形成された樹脂層を硬化する転写部と、を有し、
前記転写部は、樹脂層に凹凸パターンを成形するエンボスロールと、ニップ手段と、凹凸パターンが成形された樹脂層に活性エネルギー線を照射し樹脂層を硬化させる照射手段と、バックアップロールと、活性エネルギー線の拡散を防止するための遮蔽板と、を有する成形体の製造装置であって、前記ニップロール手段がニップロールとこれに外嵌されたスリーブとから構成されていることを特徴とする成形体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−199401(P2010−199401A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44244(P2009−44244)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】