説明

成形同時転写用金型の防塵機構、成形同時転写用金型、成形同時転写方法

【課題】クランプと金型表面との間の隙間よりキャビティ内に塵などが入り込むのを防止することができる、成形同時転写用金型の防塵機構、成形同時転写用金型、成形同時転写方法を提供する。
【解決手段】クランプ25が転写シート移動位置Aに位置するとき、防塵部材67,71,72により、一方の金型18の表面とクランプとの隙間61を覆うようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形同時転写用金型において転写シートを使用するとき、クランプと金型表面との間の転写シート移動方向沿いの隙間よりキャビティ内に塵などが入り込むのを防止する成形同時転写用金型の防塵機構、成形同時転写用金型、成形同時転写方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、成形同時転写工程においては、図19に示すように、まず、成形同時転写用金型を構成する可動金型201と固定金型202とを開いたのち、可動金型201又は固定金型202のうちの転写シートを位置決めする側の金型(以下、転写シート側金型と称する。)201に対して転写シート保持用クランプ203を緩め、転写シート204を転写シート側金型201に対して移動させて転写シート側金型201のキャビティ201aに対して転写シート204を位置決めしたのち、転写シート保持用クランプ203で転写シート204を転写シート側金型201に対して固定するようにしている。(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−314628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このとき、転写シート204移動させるため、クランプ203と転写シート側金型201の表面との間には一定の隙間をあけることが必要となるが、この隙間があるために、図19に示すように、成形同時転写用金型付近の塵、又は、樹脂成形品を転写シートの基体シートから剥離させるときに発生する塵206などが、転写シート204とキャビティ201aを形成する転写シート側金型201との間に入り込むことがある。すると、成形同時転写用金型を閉じて溶融樹脂207を射出成形するとき、図20に示すように、樹脂圧力により、転写シート204が転写シート側金型201のキャビティ形成面201bに押圧されることになる。樹脂成形後、転写シート204は転写シート側金型201に対して移動することになるが、転写シート側金型201のキャビティ形成面201bに付着した塵206は、そのまま残らないこともあるが、そのまま残った場合には、次の射出成形でも、同じ位置に位置したまま射出成形されることになる。このようにして射出成形を数回繰り返していると、転写シート側金型201のキャビティ形成面201bに一種の打痕が生ずることになり、樹脂成形品に、打痕による窪みが生じてしまうことになる。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題を解決することにあって、成形同時転写用金型において転写シートを使用するとき、クランプと金型表面との間の隙間よりキャビティ内に塵などが入り込むのを防止することができる、成形同時転写用金型の防塵機構、成形同時転写用金型、成形同時転写方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下のように構成する。
本発明の第1態様によれば、成形同時転写用金型を構成する固定型及び可動型のいずれか一方の金型の表面から離れて前記一方の金型の前記表面との間で転写シートを転写シート移動方向に移動可能な転写シート移動位置と、前記転写シート移動位置よりも前記一方の金型の前記表面に接近して前記一方の金型のキャビティに前記転写シートを保持する転写シート保持位置との間で移動可能なクランプと、
前記クランプに配置され、前記クランプが前記転写シート移動位置に位置したときに、前記クランプと前記一方の金型の前記表面との間に形成される隙間のうちの前記転写シート移動方向沿いの隙間を覆うシート状又は板状の防塵部材とを備えるようにしたことを特徴とする成形同時転写用金型の防塵機構を提供する。
【0007】
本発明の第2態様によれば、前記防塵部材は、一端が前記クランプに固定されて前記クランプと一体的に移動可能なシートである第1の態様に記載の成形同時転写用金型の防塵機構を提供する。
【0008】
本発明の第3態様によれば、前記防塵部材は、一端が前記クランプに固定されて前記クランプと一体的に移動可能な金属板である第1の態様に記載の成形同時転写用金型の防塵機構を提供する。
【0009】
本発明の第4態様によれば、固定型と、
前記固定型に対して接離して型締め及び型開き可能な可動型と、
前記固定型又は前記可動型のいずれかに配置された第1〜3のいずれか1つの態様に記載の成形同時転写用金型の防塵機構とを備える成形同時転写用金型を提供する。
【0010】
本発明の第5態様によれば、前記クランプが前記転写シート保持位置に位置したときに前記防塵部材が収納される凹部を前記一方の金型に備える第4の態様に記載の成形同時転写用金型を提供する。
【0011】
本発明の第6態様によれば、成形同時転写用金型を構成する固定型と可動型とが型開きされ、
前記固定型又は前記可動型のいずれか一方の金型の表面にクランプが接近して前記一方の金型のキャビティに対して位置決めされた転写シートを前記一方の金型の表面に前記クランプで保持する転写シート保持位置から転写シート移動位置に前記クランプが移動して、前記転写シート移動位置で、前記クランプに配置されたシート状又は板状の防塵部材が、前記クランプと前記一方の金型の前記表面との間に形成される隙間のうちの転写シート移動方向沿いの隙間を覆い、
前記一方の金型の前記表面と前記クランプとの間で前記転写シートを前記転写シート移動方向に移動させて前記キャビティに対して位置決めし、
前記クランプが前記転写シート移動位置から前記転写シート保持位置に移動して、前記一方の金型の表面に前記クランプが接近して前記一方の金型の前記表面に対して前記転写シートを前記クランプで保持し、
前記固定型と前記可動型とが型締めされたのち、溶融樹脂を前記キャビティに射出して射出成形することにより、前記転写シートの転写層が転写された樹脂成形品を得るようにしたことを特徴とする成形同時転写方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の構成によれば、クランプが転写シート移動位置に位置するとき、防塵部材により、前記一方の金型の前記表面と前記クランプとの隙間を覆うため、隙間を通して塵がキャビティ内に入ることを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明における第1実施形態を詳細に説明する。
本発明の第1実施形態にかかる成形同時転写用金型の防塵機構を有する成形同時転写用金型、及び、その金型を使用する成形同時転写方法について以下説明する。
【0014】
図1Aは、本発明の前記第1実施形態にかかる前記成形同時転写用金型11を備え、かつ、転写シート送り装置12を有する成形同時転写装置10の概略構成を示した側面図である。
【0015】
図1Aを参照して、成形同時転写装置10は、射出成形機と、その射出成形機に設置された成形同時転写用金型11及び転写シート送り装置12とを備えている。成形同時転写装置10は、転写シート送り装置12により、図1Bに示すように、基体シート53上に転写層54を有する転写シート55を成形同時転写用金型11内に送り込んで、射出成形と同時に転写層54を転写して樹脂成形品57を製造する装置である。なお、成形同時転写用金型11は射出成形用金型である。
【0016】
成形同時転写用金型11は、固定型17と、型締めによって固定型17との間にキャビティ24を形成する可動型18と、可動型18のパーティング面20に設けられ、キャビティ24に対して位置決めされた転写シート55をパーティング面20との間で接触保持させるとともに接触保持解除させるクランプ25とを備えている。
【0017】
固定型17は、射出成形機の固定盤15に固定され、可動型18は、射出成形機の可動盤16に固定されている。射出成形機の図示しない金型開閉用駆動装置により、可動型18が、固定型17に対して図1Aの横方向に移動して型締めや型開きが行われる。成形同時転写用金型11には、固定型17と可動型18とが型締めされた状態で、樹脂成形品57が射出成形され、転写シート55の転写層54が樹脂成形品57に上記射出成形と同時に転写されるように、キャビティ24が構成されている。
【0018】
図1Bに示すように、転写シート55は、基体シート53上に、射出成形される樹脂部56に射出成形と同時に転写される転写層54が形成されたものである。転写層54には、樹脂成形品57の外表面を構成し図柄層等を保護する剥離層と、図柄又は送り方向マーク又は幅方向マークが表現された図柄層と、樹脂部56と転写層54との接着性を向上させる接着層と、図柄層を保護したり層間密着性を向上させたりするアンカー層等がある。更に、基体シート53からの転写層54の剥離性を向上させる場合には、基体シート53と転写層54との間に離型層が形成される。離型層は、転写層54が転写された後も基体シート53上に残る層である。ここで、樹脂成形品57は、転写層54が樹脂部56に成形と同時に転写されたものである。
【0019】
固定型17は、パーティング面19の中央に、樹脂成形品57の背面に対応するキャビティ面22を有している。キャビティ面22の周囲には、型締め時にクランプ25が収納されるようにクランプ25の外形に対応させた凹状のクランプ収納部26が形成されている。
【0020】
可動型18は、パーティング面20の中央に、樹脂成形品57の正面に対応するキャビティ面23を有している。そのキャビティ面23を矩形枠形状に囲むようにしてクランプ25がパーティング面20に配置されている。クランプ25は、転写シート55をその幅方向に跨ぐようにして配置された2つの横材25aと、その2つの横材25aを転写シート55の長手方向沿いの端部に沿って、その両端部をそれぞれ覆いながら架け渡すように接続された2つの縦材25bとを備えて、矩形枠形状に構成される。クランプ25は、パーティング面20に対して型締め方向沿いに接離するように可動して、クランプ25の横材25aとパーティング面20との間の隙間を通して転写シート55を搬送可能とするとともに、パーティング面20に対して保持可能としている。すなわち、クランプ25は、転写シート移動位置Aと、転写シート保持位置(クランプ位置)Bとの間でクランプ駆動装置100により移動可能としている。転写シート移動位置Aは、可動型18の表面すなわちパーティング面20からクランプ25が離れて、可動型18のパーティング面20とクランプ25との間に隙間を形成して、クランプ25の横材25aと可動型18のパーティング面20との間の隙間を通して転写シート55が転写シート移動方向60に移動可能な位置である。転写シート保持位置(クランプ位置)Bは、転写シート移動位置Aよりも可動型18のパーティング面20にクランプ25が接近して可動型18のキャビティ24に転写シート55を接触させて可動型18のパーティング面20とクランプ25との間の隙間を無くして、キャビティ24に対して位置決めされた転写シート55をパーティング面20に保持する位置である。
【0021】
クランプ駆動装置100は、図13〜図15に示すように、底板86と可動型18との間に移動可能に配置されて、駆動部の一例としての図示しない成形機のエジェクタロッド(図示せず)と接触する駆動力伝達部材81と、成形機のエジェクタロッドで進退駆動される駆動力伝達部材81に連結された長方形の駆動板82と、底板86と可動型18との間に立設されかつ駆動板82に固定されたガイドブッシュ83aが軸方向に自在に摺動して駆動板82の移動を案内する4本(サイズによっては5本以上又は2本)のガイドピン83と、駆動板82の四隅にそれぞれ下端が接触しかつ上端がクランプ25の矩形枠の隅部にそれぞれ固定されたれた駆4の外周に配置されかつ駆動板82と可動型18の底面の凹部18cとの間に配置された駆動板復帰用付勢バネ85とを備えて構成している。なお、底板86と可動型18との間には一対の直方体のスペーサ87を介在させて、空間88を確保し、この空間88内で駆動板82が移動可能としている。
【0022】
よって、成形機のエジェクタロッドが駆動されると、図14において駆動力伝達部材81と駆動板82とが上昇してクランプ25を転写シート保持位置Bから転写シート移動位置Aに移動させる(図14参照)一方、成形機のエジェクタロッドの駆動が停止されると、駆動板復帰用付勢バネ85の付勢力により、図14において駆動力伝達部材81と駆動板82とが下降してクランプ25を転写シート移動位置Aから転写シート保持位置Bに移動させて、転写シート55を可動型18のパーティング面20に対して固定させる(図15参照)。
【0023】
この第1実施形態の特徴として、クランプ25の両側の縦材25bには、それぞれ、防塵部材の一例としての防塵シート67を有している。すなわち、防塵シート67は、クランプ25が転写シート移動位置Aに位置したとき可動型18のキャビティ24の近傍でかつ転写シート移動方向60沿いの縁部に形成される、可動型18のパーティング面20とクランプ25の縦材25bとの隙間61を覆うことにより、隙間61から可動型18のキャビティ24内に塵が入り込むのを防止するようにしている。なお、クランプ25と防塵シート67とにより防塵機構の一例を構成している。
【0024】
各防塵シート67は、例えば、長方形の静電気対策用ゴムシートで構成されている。静電気対策用ゴムシートの具体例としては、株式会社ミスミ製の、体積固有抵抗値105〜108Ω・cmの導電ゴムのシートが例示できる。各防塵シート67は、静電気対策用ゴムシートに限定されずに、帯電させて塵を付着させるシートとしてもよい。各防塵シート67としては、それ自体から発塵しないことが重要である。
【0025】
各防塵シート67の一端縁部は、クランプ25の各縦材25bの側面と、クランプ側固定板65との間に挟み込まれて、クランプ側固定板65を複数のボルト65aによりクランプ25の各縦材25bの側面に固定することにより、各防塵シート67の一端縁部をクランプ25の各縦材25bの側面に固定している。クランプ側固定板65と複数のボルト65aとによりクランプ側固定部材の一例を構成している。各防塵シート67の他端縁部は、可動型18のキャビティ24の近傍に形成された防塵シート収納用凹部18aの底面と、金型側固定板66との間に挟み込まれて、金型側固定板66を複数のボルト66aにより凹部18aの底面18dに固定することにより、各防塵シート67の他端縁部を凹部18aの底面18dに固定している。金型側固定板66と複数のボルト66aとにより金型側固定部材の一例を構成している。各防塵シート67の長さは、クランプ25が、転写シート保持位置Bから転写シート移動位置Aへ移動して転写シート移動位置Aに位置保持されるとき、可動型18のパーティング面20とクランプ25の縦材25bとの隙間61を少なくとも覆う程度の長さ寸法に構成する。クランプ25が転写シート保持位置Bに位置しているときには、各防塵シート67が凹部18a内に収納される一方、クランプ25が転写シート移動位置Aに位置するときには、各防塵シート67が凹部18a内から引き出されるようにする。よって、各防塵シート67としては、自在に折れ曲がるような可撓性を有することが好ましい。各防塵シート67は、必ずしも、各防塵シート67の他端縁部が可動型18側に固定される必要はなく、要するに、クランプ25が転写シート保持位置Bから転写シート移動位置Aへ移動して転写シート移動位置Aに位置するときには、可動型18のパーティング面20とクランプ25の縦材25bとの隙間61を各防塵シート67で覆うことができ、かつ、クランプ25が転写シート保持位置Bに位置するときには、各防塵シート67が凹部18a内に収納されれば、各防塵シート67の他端縁部が可動型18側に対して自由端又は可動端にしてもよい。
【0026】
なお、図2などにおいて、50は、キャビティ24の近傍位置に配置した送り方向センサである。送り方向センサ50をキャビティ24よりも上方に配置した場合には、キャビティ24の近傍位置に配置する送り方向センサ50は不要となるとともに、防塵シート67等の防塵部材は、図2において上下2つに分割されず、反対側の防塵部材と同様に上下方向に連続して構成される。
【0027】
転写シート送り装置12は、転写シート55を、可動型18のパーティング面20に沿って上方から下方に向かって走行と停止を繰り返しながら間欠的に成形同時転写用金型11内に送り込む装置である。転写シート送り装置12は、可動盤16の上部に設置された巻出し部30と、可動盤16の下部に設置された巻取り部40と、可動型18の中央部のキャビティ24の近傍位置に設置された送り方向センサ50と、可動型18の上部及び下部に設置された幅方向センサ51とを備えている。巻出し部30は、成形同時転写用金型11より転写シート55の送り方向上流側に設置され、巻取り部40は、成形同時転写用金型11より転写シート55の送り方向下流側に設置されている。
【0028】
巻出し部30は、ロール状に巻かれた転写シート55を巻き出して成形同時転写用金型11内へ送り込む装置である。巻出し部30は、底板74U及び底板74Uの転写シート55の幅方向両端から立ち上がる側板75Uを有するフレーム31と、側板75Uの各々を掛け渡すように取り付けられたリール36、ガイドローラ37及びガイドローラ38とを備えている。リール36は図示しない駆動手段により速度制御されながら回転駆動され、リール36には、ロール状に巻かれた長尺の転写シート55がセットされる。リール36から巻き出された転写シート55が、ガイドローラ37及びガイドローラ38に、所定のテンションを付与されながら可動型18に対して所定の位置に送り込まれるように案内される。ガイドローラ37及びガイドローラ38は、転写シート55の走行に従動して回転する。フレーム31は、側面視L字状の折曲げ板からなる連結部材32と、ブロック34及びレール35からなるスライドガイドとを介して、可動盤16の上部に設置されている。連結部材32は、可動盤16に固定され、連結部材32の上面にレール35が固定されている。又、フレーム31の下面にブロック34が固定されている。レール35に対してブロック34が摺動することにより、フレーム31即ち巻出し部30が転写シート55の幅方向(紙面に貫通する方向)に移動可能となっている。
【0029】
転写シート55は、巻出し部30のリール36から巻き出され、ガイドローラ37及びガイドローラ38に案内された後、上述した送り方向センサ50と幅方向センサ51とによりキャビティ24に対する所定の位置に位置決めされながら、可動型18のパーティング面20に沿って停止と走行が繰り返される。そして、転写シート55は、ガイドローラ47、ガイドローラ48、及び、ガイドローラ49に案内されて、巻取り部40の巻取りローラ46に巻き取られる。
【0030】
巻取り部40は、成形同時転写用金型11内から搬出された転写シート55をロール状に巻き取る装置である。巻取り部40は、底板74L及び底板74Lの転写シート55の幅方向両端から立ち上がる側板75Lを有するフレーム41と、側板75Lの各々を掛け渡すように取り付けられた巻取りローラ46と、ガイドローラ47と、ガイドローラ48と、ガイドローラ49とを備えている。巻取りローラ46は図示しない駆動手段により速度制御されながら回転駆動され、巻取りローラ46には、転写シート55がロール状に巻き取られる。ガイドローラ47と、ガイドローラ48と、ガイドローラ49とにより所定のテンションを付与されながら、転写シート55が巻取りローラ46にロール状に巻き取られるように案内される。ガイドローラ47と、ガイドローラ48と、ガイドローラ49とは、転写シート55の走行に従動して回転する。
【0031】
フレーム41は、側面視L字状の折曲げ板からなる連結部材42と、ブロック44及びレール45からなるスライドガイドとを介して、可動盤16の下部に設置されている。連結部材42は、可動盤16に固定され、連結部材42の下面にレール45が固定されている。又、フレーム41の上面にブロック44が固定されている。レール45に対してブロック44が摺動することにより、フレーム41即ち巻取り部40が転写シート55の幅方向(紙面に貫通する方向)に移動可能となっている。
【0032】
よって、転写シート55の幅方向の移動は、巻出し部30と巻取り部40の移動により行われる。
【0033】
前記した構成にかかる成形同時転写装置10は、以下のように動作する。
まず、固定型17に対して可動型18を型開きしたのち、クランプ駆動装置100の駆動により、クランプ25を転写シート移動位置Aに位置させて、クランプ25と可動型18のパーティング面20との間に隙間を形成する。
【0034】
このとき、クランプ25が転写シート保持位置Bから転写シート移動位置Aへ移動して転写シート移動位置Aに位置することにより、可動型18の防塵シート収納用凹部18aから各防塵シート67が引き出されて、各防塵シート67により、可動型18のパーティング面20とクランプ25の縦材25bとの間に形成された隙間61を覆う。
【0035】
次いで、転写シート送り装置12を駆動して、巻出し部30から転写シート55を所定量だけ巻き戻しして巻取り部40に巻取ることにより、転写シート55を可動型18のパーティング面20のキャビティ24に対して位置決めする。このとき、幅方向センサ51と送り方向センサ50とで検出した情報に基づき転写シート送り装置12を駆動して転写シート55の位置及び送り量を制御する。
【0036】
次いで、クランプ25を転写シート移動位置Aから転写シート保持位置Bに位置させて、クランプ25の縦材25bと可動型18のパーティング面20との間の隙間61を無くして、転写シート55を可動型18のパーティング面20のキャビティ24に対して保持(クランプ)する。
【0037】
このとき、クランプ25が転写シート移動位置Aから転写シート保持位置Bへ移動して転写シート保持位置Bに位置することにより、各防塵シート67が可動型18の防塵シート収納用凹部18a内に収納される。
【0038】
次いで、固定型17に対して可動型18を型締めしたのち、固定型17と可動型18とで形成されたキャビティ24内に射出成形機から溶融樹脂を射出成形して、樹脂成形品57を得る。
【0039】
次いで、溶融樹脂を冷却したのち、固定型17に対して可動型18が図1Aの横方向に移動して型開きを行い、樹脂成形品57を固定型17又は可動型18から取り出す。
【0040】
上記実施形態によれば、転写シートクランプ突き出し時、すなわち、クランプ25が転写シート移動位置Aに位置するとき、可動型18の防塵シート収納用凹部18aから各防塵シート67が引き出されて、各防塵シート67により、可動型18のパーティング面20とクランプ25の縦材25bとの間に形成された隙間61を覆うため、隙間61を通して塵がキャビティ24内に入ることを抑制することができる。また、防塵部材の一例としての防塵シート67として、可撓性のある静電気対策用ゴムシートを使用するため、防塵状態と収納状態とを繰り返しても、クランプ25又は金型などを損傷させることがなく、かつ、静電気対策を施しているため、塵が付着しにくく、防塵効果をより一層向上させることができる。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施できる。
【0042】
例えば、本発明の第2実施形態にかかる成形同時転写用金型の防塵機構としては、防塵部材の別の例として、各防塵シート67を長方形の静電気対策用ゴムシートで構成する代わりに、図11及び図12に示すように、二枚の長方形の金属板71,72と二枚の長方形の金属板71,72間の金属摩擦防止用パッキング73とで構成するようにしてもよい。すなわち、図11及び図12において、二枚の長方形の金属板71,72のうちの第1金属板71の一端縁部をクランプ25の各縦材25bの側面に固定し、二枚の長方形の金属板71,72のうちの第2金属板72の一端縁部を可動型18のキャビティ24の近傍に形成された防塵シート収納用凹部18aの側面又は底面に固定する。第1金属板71の他端縁部の第2金属板72に対向する面には金属摩擦防止用パッキング73を突出して配置し、第1金属板71と第2金属板72とが直接接触することなく、金属摩擦防止用パッキング73が第2金属板72の表面を摺動可能とする。よって、クランプ25が、転写シート移動位置Aに位置保持されるとき、金属摩擦防止用パッキング73が第2金属板72の表面を摺動しながら第2金属板72に対して第1金属板71が移動して、図11に示すように、第1金属板71の他端縁部と第2金属板72の一端縁部とが金属摩擦防止用パッキング73を介して重なった状態となり、第1金属板71と第2金属板72とで、可動型18のパーティング面20とクランプ25の縦材25bとの隙間61を少なくとも覆うようにしている。一方、クランプ25が、転写シート保持位置Bに位置保持されるとき、金属摩擦防止用パッキング73が第2金属板72の表面を摺動しながら第2金属板72に対して第1金属板71が移動して、図12に示すように、第1金属板71の他端縁部と第2金属板72の他端縁部とが金属摩擦防止用パッキング73を介して重なった状態となり、第1金属板71と第2金属板72とが可動型18の防塵シート収納用凹部18a内に収納されるようにしている。
【0043】
このような構成においても、クランプ25が転写シート移動位置Aに位置するとき、可動型18の防塵シート収納用凹部18aから第1金属板71が引き出されて、第1金属板71と第2金属板72とが重なり合って、可動型18のパーティング面20とクランプ25の縦材25bとの間に形成された隙間61を第1金属板71と第2金属板72とで覆うため、隙間61を通して塵がキャビティ24内に入ることを抑制することができる。
【0044】
なお、前記構成において、金属板は二枚に限定されるものではなく、三枚以上でもよいし、逆に、一枚の金属板で構成してもよい。一枚の金属板で構成する場合には、クランプ25が転写シート保持位置Bに位置するとき、一枚の金属板が、図示した凹部18aよりも深い、可動型18の防塵シート収納用凹部内に収納されるか、又は、凹部18aの代わりに可動型18に形成された貫通穴内に挿入して収納されるようにしてもよい。
【0045】
また、各防塵シート67が静電気対策用ゴムシートである場合においても、凹部18aの代わりに可動型18に形成された貫通穴内に各防塵シート67を挿入して収納されるようにしてもよい。
【0046】
また、前記したクランプ駆動装置100の構成としては、前記した構成に限られるものではなく、図16〜図18に示すように、4個(又は2個又は5個以上)のエアシリンダ90でクランプ25を駆動するようにしてもよい。すなわち、直方体板形状の可動型18の底面の四隅にそれぞれエアシリンダ90を固定し、各エアシリンダ90の駆動軸94が可動型18を移動自在に貫通して、駆動軸94の先端がクランプ25の四隅にそれぞれ固定されている。
【0047】
よって、4個のエアシリンダ90が同期して駆動されると、図17において4本の駆動軸94が同期して上昇してクランプ25を転写シート保持位置Bから転写シート移動位置Aに移動させる(図17参照)一方、4個のエアシリンダ90が同期して逆駆動されると、図18において4本の駆動軸94が同期して下降してクランプ25を転写シート移動位置Aから転写シート保持位置Bに移動させて、転写シート55を可動型18のパーティング面20に対して保持させる(図18参照)。
【0048】
また、前記実施形態では、クランプ25は2つの横材25aと2つの縦材25bとで構成された矩形枠形状としているが、これに限られるものではなく、クランプ25は2つの平行な横材25aで構成され、2つの横材25aの両端部にそれぞれ防塵シート67又は金属板71を固定して、2つの横材25aのクランプ25の移動と一体的に防塵シート67又は二枚のうちの金属板第1金属板71又は一枚の金属板が移動するようにしてもよい。
【0049】
また、防塵部材の前記別の例としての二枚のうちの金属板第1金属板71又は一枚の金属板を、クランプ25とは別部材としてではなく、クランプ25の一部としてクランプ25と一体的に形成するようにして、部品点数を少なくするとともに固定部材を省略できるようにしてもよい。
【0050】
また、クランプ25と防塵部材とで構成される防塵機構は、前記実施形態又は変形例では可動型18に配置しているが、これに限られるものではなく、固定型17に配置することもできる。
【0051】
なお、上記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明にかかる成形同時転写用金型の防塵機構、成形同時転写用金型、成形同時転写方法は、クランプが転写シート移動位置に位置するとき、防塵部材により、前記一方の金型の前記表面と前記クランプとの隙間を覆うため、隙間を通して塵がキャビティ内に入ることを抑制するといった優れた効果を有し、精密な成形同時転写等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1A】本発明の第1実施形態にかかる成形同時転写用金型の防塵機構を有する成形同時転写用金型の側面図である。
【図1B】前記第1実施形態にかかる成形同時転写用金型で使用する転写シートの断面図である。
【図2】前記成形同時転写用金型の可動型側の正面図である。
【図3】前記成形同時転写用金型の前記可動型のクランプが転写シート移動位置に位置した状態における図2のIII−III線の断面図である。
【図4】前記成形同時転写用金型の前記可動型の前記クランプが前記転写シート移動位置に位置した状態における前記可動型の一方の側部付近の斜視図である。
【図5】前記成形同時転写用金型の前記可動型の前記クランプが前記転写シート移動位置に位置した状態における前記可動型の他方の側部付近の斜視図である。
【図6】前記成形同時転写用金型の前記可動型の前記クランプが前記転写シート移動位置に位置した状態における前記可動型の一方の側部の拡大断面図である。
【図7】前記成形同時転写用金型の前記可動型の前記クランプが転写シート保持位置に位置した状態における図2のIII−III線の断面図である。
【図8】前記成形同時転写用金型の前記可動型の前記クランプが前記転写シート保持位置に位置した状態における前記可動型の一方の側部付近の斜視図である。
【図9】前記成形同時転写用金型の前記可動型の前記クランプが前記転写シート保持位置に位置した状態における前記可動型の他方の側部付近の斜視図である。
【図10】前記成形同時転写用金型の前記可動型の前記クランプが前記転写シート保持位置に位置した状態における前記可動型の一方の側部の拡大断面図である。
【図11】本発明の第2実施形態にかかる成形同時転写用金型の可動型のクランプが転写シート移動位置に位置した状態における前記可動型の一方の側部付近の斜視図である。
【図12】前記第2実施形態にかかる前記成形同時転写用金型の前記可動型の前記クランプが前記転写シート移動位置に位置した状態における前記可動型の他方の側部付近の斜視図である。
【図13】前記第1実施形態にかかる前記成形同時転写用金型の前記クランプの駆動装置を示す透視斜視図である。
【図14】前記クランプが前記転写シート移動位置に位置した状態における図13の前記クランプの駆動装置の断面側面図である。
【図15】前記クランプが前記転写シート保持位置に位置した状態における図13の前記クランプの駆動装置の断面側面図である。
【図16】前記第1実施形態の変形例にかかる前記成形同時転写用金型の前記クランプの駆動装置を示す透視斜視図である。
【図17】前記クランプが前記転写シート移動位置に位置した状態における図16の前記クランプの駆動装置の断面側面図である。
【図18】前記クランプが前記転写シート保持位置に位置した状態における図16の前記クランプの駆動装置の断面側面図である。
【図19】従来の成形同時転写用金型の型開き状態を示す説明図である。
【図20】従来の成形同時転写用金型の型締めしたのち射出成形を行なう状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0054】
10…成形同時転写装置、11…成形同時転写用金型(成形同時転写用金型)、12…転写シート送り装置、15…固定盤、16…可動盤、17…固定型、18…可動型、18a…防塵シート収納用凹部、18c…可動型の底面の凹部、18d…凹部18aの底面、19…固定型のパーティング面、20…可動型のパーティング面、22…固定型のキャビティ面、23…可動型のキャビティ面、24…キャビティ、25…クランプ、25a…横材、25b…縦材、26…クランプ収納部、30…巻出し部、31…フレーム、32…連結部材、34…ブロック、35…レール、36…リール、37,38…ガイドローラ、40…巻取り部、41…フレーム、42…連結部材、44…ブロック、45…レール、46…巻取りローラ、47,48,49…ガイドローラ、50…送り方向センサ、51…幅方向センサ、53…基体シート、54…転写層、55…転写シート、56…樹脂部、57…樹脂成形品、60…転写シート移動方向、61…隙間、65…クランプ側固定板、65a…ボルト、66…金型側固定板、66a…ボルト、67…防塵シート、71…第1金属板、72…第2金属板、73…金属摩擦防止用パッキング、74L,74U…底板、75L,75U…側板、81…駆動力伝達部材、82…駆動板、83…ガイドピン、83a…ガイドブッシュ、84…駆動ロッド、85…駆動板復帰用付勢バネ、86…底板、87…スペーサ、88…空間、90…エアシリンダ、94…駆動軸、100…クランプ駆動装置、A…転写シート移動位置、B…転写シート保持位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形同時転写用金型を構成する固定型及び可動型のいずれか一方の金型の表面から離れて前記一方の金型の前記表面との間で転写シートを転写シート移動方向に移動可能な転写シート移動位置と、前記転写シート移動位置よりも前記一方の金型の前記表面に接近して前記一方の金型のキャビティに前記転写シートを保持する転写シート保持位置との間で移動可能なクランプと、
前記クランプに配置され、前記クランプが前記転写シート移動位置に位置したときに、前記クランプと前記一方の金型の前記表面との間に形成される隙間のうちの前記転写シート移動方向沿いの隙間を覆うシート状又は板状の防塵部材とを備えるようにしたことを特徴とする成形同時転写用金型の防塵機構。
【請求項2】
前記防塵部材は、一端が前記クランプに固定されて前記クランプと一体的に移動可能なシートである請求項1に記載の成形同時転写用金型の防塵機構。
【請求項3】
前記防塵部材は、一端が前記クランプに固定されて前記クランプと一体的に移動可能な金属板である請求項1に記載の成形同時転写用金型の防塵機構。
【請求項4】
固定型と、
前記固定型に対して接離して型締め及び型開き可能な可動型と、
前記固定型又は前記可動型のいずれかに配置された請求項1〜3のいずれか1つに記載の成形同時転写用金型の防塵機構とを備える成形同時転写用金型。
【請求項5】
前記クランプが前記転写シート保持位置に位置したときに前記防塵部材が収納される凹部を前記一方の金型に備える請求項4に記載の成形同時転写用金型。
【請求項6】
成形同時転写用金型を構成する固定型と可動型とが型開きされ、
前記固定型又は前記可動型のいずれか一方の金型の表面にクランプが接近して前記一方の金型のキャビティに対して位置決めされた転写シートを前記一方の金型の表面に前記クランプで保持する転写シート保持位置から転写シート移動位置に前記クランプが移動して、前記転写シート移動位置で、前記クランプに配置されたシート状又は板状の防塵部材が、前記クランプと前記一方の金型の前記表面との間に形成される隙間のうちの転写シート移動方向沿いの隙間を覆い、
前記一方の金型の前記表面と前記クランプとの間で前記転写シートを前記転写シート移動方向に移動させて前記キャビティに対して位置決めし、
前記クランプが前記転写シート移動位置から前記転写シート保持位置に移動して、前記一方の金型の表面に前記クランプが接近して前記一方の金型の前記表面に対して前記転写シートを前記クランプで保持し、
前記固定型と前記可動型とが型締めされたのち、溶融樹脂を前記キャビティに射出して射出成形することにより、前記転写シートの転写層が転写された樹脂成形品を得るようにしたことを特徴とする成形同時転写方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2010−52281(P2010−52281A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219876(P2008−219876)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】