説明

成形品の製造方法

【課題】 本発明は、リサイクル性に優れており、優れた剛性及び耐衝撃性を有する成形品を製造することができる成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の成形品の製造方法は、金型のキャビティ内にスキン層を構成するスキン層用熱可塑性樹脂を射出した後に、上記キャビティ内にコア部を構成するコア部用熱可塑性樹脂を射出して、上記スキン層用熱可塑性樹脂及び上記コア部用熱可塑性樹脂を上記キャビティ内にて層状に流動させて、スキン層が上記スキン層用熱可塑性樹脂から構成され且つコア部がコア部用熱可塑性樹脂から構成された成形品を製造する成形品の製造方法であって、上記コア部用熱可塑性樹脂は、少なくとも一種のポリオレフィン系樹脂と0.01〜3.0重量%の塩素含有樹脂とを含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた剛性及び耐衝撃性を有し且つリサイクル性にも優れた成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
容器包装リサイクル法の施行により、家庭から出るゴミの約6割(容積比)を占めるプラスチック製の容器包装ゴミを回収し、資源として有効利用することが定められている。プラスチック製の容器包装ゴミは、洗浄、分別及び破砕された後に比重分離されることによりポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂などの比重が小さいポリオレフィン系樹脂の混合物が分離され、このようにして得られた混合物は「容器包装リサイクル材」とも言われ、新たな成形品の原料として再利用される(特許文献1)。分別工程や比重分離工程において不純物を完全に取り除くことは難しく、従って、容器包装リサイクル材には、通常、ポリオレフィン系樹脂の他にもポリ塩化ビニル及びポリ塩化ビニリデンなどの塩素含有樹脂が少量含まれる。
【0003】
しかしながら、上述した容器包装リサイクル材の主成分となるポリオレフィン系樹脂の多くは容器包装ゴミに含まれるレジ袋や商品を包むための包装用フィルムなどから得られたものである。レジ袋や包装用フィルムは薄くても丈夫であることが必要とされることから、これらの材料としては高密度ポリエチレン系樹脂、低密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂などの分子量が高いポリオレフィン系樹脂が用いられる。これらの分子量が高いポリオレフィン系樹脂は溶融時の流動性が悪く、結果として容器包装リサイクル材(メルトフローレイト(MFR)0.1〜3.0g/10分程度)の流動性も悪くなり、このような容器包装リサイクル材は射出成形による成形品の製造には適していないという問題があった。
【0004】
容器包装リサイクル材の流動性を向上させるために、容器包装リサイクル材に高流動性ポリプロピレン系樹脂(MFR:80〜150g/10分)や高流動性ポリエチレン系樹脂(MFR:100〜170g/10分)を添加する手段も考えられる。しかしながら、これらの高流動性の樹脂によっても容器包装リサイクル材の流動性の向上は十分に図れない。さらに、上記高流動性の樹脂はコストが高く、結果として容器包装リサイクル材の再資源化にかかるコストの上昇を招くため、上記高流動性の樹脂の使用は実用的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−123412号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、リサイクル性に優れ且つ優れた剛性及び耐衝撃性を有する成形品を製造することができる成形品の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の成形品の製造方法は、金型のキャビティ内にスキン層を構成するスキン層用熱可塑性樹脂を射出した後に、上記キャビティ内にコア部を構成するコア部用熱可塑性樹脂を射出して、上記スキン層用熱可塑性樹脂及び上記コア部用熱可塑性樹脂を上記キャビティ内にて層状に流動させて、スキン層が上記スキン層用熱可塑性樹脂から構成され且つコア部がコア部用熱可塑性樹脂から構成された成形品を製造する成形品の製造方法であって、上記コア部用熱可塑性樹脂は、少なくとも一種のポリオレフィン系樹脂と0.01〜3.0重量%の塩素含有樹脂とを含むことを特徴とする。
【0008】
又、上記成形品の製造方法において、スキン層用熱可塑性樹脂は塩素含有樹脂を含有していないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の成形品の製造方法は、上述のような構成を有しており、コア部用熱可塑性樹脂として、少なくとも一種のポリオレフィン系樹脂と0.01〜3.0重量%の塩素含有樹脂とを含む熱可塑性樹脂を用いているので、容器包装リサイクル材を使用することができ、よって、本発明の成形品の製造方法は、リサイクル性に優れている。
【0010】
そして、コア部用熱可塑性樹脂は、溶融時の流動性が低いものの、成形品のコア部を構成するために用いられており、得られる成形品の外観を構成するものではなく、成形品の外観は流動性の優れたスキン層用熱可塑性樹脂が構成しており、このスキン層用熱可塑性樹脂は、キャビティ内において優れた流動性でもってキャビティ内に隙間なく充填され、よって、得られる成形品は優れた外観及び寸法安定性を有している。
【0011】
更に、得られた成形品は、そのコア部が容器包装リサイクル材などから得られる熱可塑性樹脂から構成されており、この熱可塑性樹脂は新品の熱可塑性樹脂よりも耐衝撃性及び剛性に劣るものの、コア部をスキン層用熱可塑性樹脂からなるスキン層で被覆した構成とすることによって、コア部の耐衝撃性及び剛性の低下分をスキン層で補っており、成形品は全体として優れた耐衝撃性及び剛性を有している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の成形品の製造方法において金型のキャビティ内にスキン層用熱可塑性樹脂を射出、充填した状態を示した断面模式図である。
【図2】本発明の成形品の製造方法において金型のキャビティ内にコア部用熱可塑性樹脂を射出、充填した状態を示した断面模式図である。
【図3】本発明の成形品の製造方法を用いて成形品を成形した状態を示した断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の成形品の製造方法を図面を参照しつつ説明する。本発明の成形品の製造方法は、図1に示したように、金型1のキャビティ2内にスキン層A1を構成するスキン層用熱可塑性樹脂3を射出した後に、上記キャビティ2内にコア部A2を構成するコア部用熱可塑性樹脂4を射出して、上記スキン層用熱可塑性樹脂3及び上記コア部用熱可塑性樹脂4を上記キャビティ2内にて層状に流動させてスキン層A1が上記スキン層用熱可塑性樹脂3から構成され且つコア部A2がコア部用熱可塑性樹脂4から構成された成形品Aを製造する。
【0014】
本発明の成形品の製造方法では、汎用のサンドイッチ射出成形機が用いられる。サンドイッチ射出成形機としては、例えば、同一の金型に二機の押出機を接続し、これらの押出機から別々に熱可塑性樹脂を金型のキャビティ内に射出充填できるように構成されてなるサンドイッチ射出成形機が挙げられる。
【0015】
先ず、金型1のキャビティ2内にスキン層A1を構成するスキン層用熱可塑性樹脂3を射出する。このスキン層用熱可塑性樹脂3は、新製品として製造されたものであっても、成形品を原料として得られたものであってもよいが、射出成形に適切な熱可塑性樹脂を選択できることから、新製品として製造されたものであることが好ましい。
【0016】
上述の新製品として製造されたスキン層用熱可塑性樹脂3とは、成形品を原料として得られたものではなく、いわゆる未使用のものであり、一度でも成形品に成形されることにより使用された熱可塑性樹脂は除かれる。
【0017】
スキン層用熱可塑性樹脂3としては、従来からサンドイッチ射出成形に用いられている熱可塑性樹脂であれば、特に限定されず、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられ、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。なお、熱可塑性樹脂は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0018】
ポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン系樹脂、中密度ポリエチレン系樹脂、高密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状中密度ポリエチレン系樹脂、直鎖状高密度ポリエチレン系樹脂、エチレンと他のオレフィンとの共重合体などのポリエチレン系樹脂、プロピレン単独重合体、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体などのポリプロピレン系樹脂が挙げられる。なお、ポリオレフィン系樹脂は、一種のみが用いられてもよいが、通常は複数種のものが混合して用いられる。
【0019】
エチレンと共重合されるオレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィンなどが挙げられる。
【0020】
プロピレンと共重合されるオレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセンなどのα−オレフィンなどが挙げられる。
【0021】
なお、ポリエチレン系樹脂とは、エチレン単独重合体、及び、エチレン成分を50重量%を超えて含有する共重合体を意味する。また、ポリプロピレン系樹脂とは、プロピレン単独重合体、及び、プロピレン成分を50重量%を超えて含有する共重合体を意味する。
【0022】
そして、スキン層用熱可塑性樹脂3には、スキン層用熱可塑性樹脂3が新製品として製造された場合及び成形品を原料として得られた場合の何れにおいても塩素含有樹脂を含有していないことが好ましい。このような塩素含有樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの塩素原子を分子中に含んでいる熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0023】
スキン層用熱可塑性樹脂3のメルトフローレイト(MFR)は、小さいと、キャビティ内においてスキン層用熱可塑性樹脂が滞留して良好な成形品を得ることができないことがあり、大きいと、得られる成形品にバリが発生することがあるので、5〜80g/10分が好ましく、10〜30g/10分がより好ましい。なお、スキン層用熱可塑性樹脂のメルトフローレイトは、JIS K7210:1999に準拠して測定された値をいう。
【0024】
上記スキン層用熱可塑性樹脂をサンドイッチ射出成形機の一方の押出機に供給して溶融混練した後、押出機から金型1のキャビティ2内にスキン層用熱可塑性樹脂3を射出、充填する(図1参照)。この金型1のキャビティ2内には、続いてコア部用熱可塑性樹脂4が他方の押出機から射出、充填されるので、スキン層用熱可塑性樹脂3は、キャビティ2内にこのキャビティ2内が完全に充填されない程度に射出、充填される。
【0025】
そして、スキン層用熱可塑性樹脂3が、新製品として製造されたものである場合には、溶融状態において特に優れた流動性を有しており、後述するように、金型1のキャビティ2内にコア部用熱可塑性樹脂4を射出、充填した時に、スキン層用熱可塑性樹脂3はキャビティ2内において滞留するようなことはなく、キャビティ2の形状に沿って円滑に流動してキャビティ2内に隙間なく充填され、その結果、優れた外観を有する成形品を得ることができる。
【0026】
次に、コア部用熱可塑性樹脂をサンドイッチ射出成形機の他方の押出機に供給して溶融混練した後、押出機から金型1のキャビティ2内にコア部用熱可塑性樹脂4を射出、充填する。
【0027】
上記コア部用熱可塑性樹脂4は、一般的に主成分としてポリオレフィン系樹脂を含む他に、少量の塩素含有樹脂を含む。なお、ポリオレフィン系樹脂は、上述したポリオレフィン系樹脂と同様であるので説明を省略する。
【0028】
上述した通り、包装に用いられた合成樹脂フィルムは、薄くても丈夫であることが必要とされることから、合成樹脂フィルムの原料には分子量が比較的高く、メルトフローレイトが低いポリオレフィン系樹脂が用いられる。従って、容器包装リサイクル材の主成分であるポリオレフィン系樹脂の分子量も高く、具体的には、容器包装リサイクル材にポリオレフィン系樹脂として含まれるポリエチレン系樹脂の粘度平均分子量Mvは、通常は10万〜100万、特に10万〜50万であり、また容器包装リサイクル材にポリオレフィン系樹脂として含まれるポリプロピレン系樹脂の粘度平均分子量Mvは、通常は10万〜100万、特に10万〜50万である。
【0029】
なお、本発明において、ポリオレフィン系樹脂の粘度平均分子量は、JIS K7367−3(1991)に準拠した方法によりポリオレフィン系樹脂の粘度を測定し、この粘度を用いてユニバーサル法に基づき算出される値をいう。例えば、次の方法を用いて測定することができる。
【0030】
ポリオレフィン系樹脂をデカヒドロナフタレン(135℃)に溶解し、濃度(C)6.0g/Lの溶液を調製する。デカヒドロナフタレンの流下時間(t0)が130秒のウベローデ型毛細管粘度計を用いて、25℃に設定した恒温水槽中で試料溶液の流下時間(t)を測定する。測定した流下時間(t)を用い、以下の数式により、粘度平均分子量Mvを算出する。
Mv=1.03×10-4×η0.78
a=0.438×ηsp+1
b=100×ηsp/C
ただし、ηsp:極限粘度
ηsp=t/t0−1
C=6.0(g/L)
η=b/a
【0031】
また、コア部用熱可塑性樹脂4の主成分であるポリオレフィン系樹脂のメルトフローレイトは、具体的には5.0g/10分以下、特に1.0〜3.0g/10分である。なお、ポリオレフィン系樹脂のメルトフローレイトは、JIS K7210に準拠して220℃、荷重2.16kgf(21.18N)で測定した値を意味する。
【0032】
コア部用熱可塑性樹脂中におけるポリオレフィン系樹脂の含有量は、コア部用熱可塑性樹脂の樹脂成分の全量に対して、通常は50重量%以上であるが、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95〜99.99重量%である。
【0033】
また、コア部用熱可塑性樹脂には、ポリ塩化ビニル、及びポリ塩化ビニリデンなどの塩素原子を分子中に含んでいる塩素含有樹脂も含まれる。コア部用熱可塑性樹脂における塩素含有樹脂の含有量は、コア部用熱可塑性樹脂の樹脂成分の全量に対して、一般的には0.01〜3.0重量%である。
【0034】
コア部用熱可塑性樹脂は、上述したポリオレフィン系樹脂及び塩素含有樹脂の他にも、完全に除去することが困難な不可避的不純物が含まれ得る。不可避的不純物としては、ポリスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリアミド系樹脂などの熱可塑性樹脂、無機物(例えば、金属)が挙げられる。コア部用熱可塑性樹脂における不可避的不純物の含有量は、コア部用熱可塑性樹脂の全量に対して、一般的に0〜5重量%、特に0〜2重量%である。
【0035】
また、容器包装リサイクル材はコア部用熱可塑性樹脂として用いることができる。容器包装リサイクル材は、自治体が回収したプラスチックゴミに分別、洗浄、破砕及び比重分離などの前処理を行って得ることができ、さらに造粒工程を行うことによりペレット状、減容品状(破砕品を圧縮し固形化)など所定の形状に成形された上で原料として用いられてもよい。
【0036】
そして、上述のように、サンドイッチ射出成形機の他方の押出機にコア部用熱可塑性樹脂4を供給して溶融混練した後、既にスキン層用熱可塑性樹脂3が充填されている金型1のキャビティ2内にコア部A2を構成するコア部用熱可塑性樹脂4を押出機から射出、充填する(図2参照)。
【0037】
すると、コア部用熱可塑性樹脂4のキャビティ2内への射出、充填に伴ってスキン層用熱可塑性樹脂3はキャビティ2内に押し込まれるが、上述の通り、スキン層用熱可塑性樹脂3は溶融状態において流動性に優れているのでキャビティ2内において滞留することなくキャビティ2の形状に沿って流動してキャビティ2内の隙間を埋めることができると共に、スキン層用熱可塑性樹脂3はコア部用熱可塑性樹脂4と殆ど混じることはなく、コア部用熱可塑性樹脂4とスキン層用熱可塑性樹脂3とは互いに層状を形成しながら流動する(図2、3参照)。この成形工程において、コア部用熱可塑性樹脂4は、金型1のキャビティ2内においてスキン層用熱可塑性樹脂3に被覆された状態で流動する。スキン層用熱可塑性樹脂3に塩素含有樹脂が含有されていない場合には、塩素含有樹脂が金型に接触することはなく、塩素含有樹脂が金型に接触することによって塩素含有樹脂が分解して生じる塩素により金型が腐食という問題を防止することができる。
【0038】
更に、コア部用熱可塑性樹脂4は上述の通り流動性が比較的悪いものの、コア部用熱可塑性樹脂4は、キャビティ2内においてスキン層用熱可塑性樹脂3に被覆された状態となっているので、成形品のコア部A2を構成し外部から視認されず、成形品の外観に影響を及ぼすことはなく、よって、リサイクルを図りながら、外観に優れた成形品を容易に製造することができる。
【0039】
このようにして成形された成形品は、コア部A2とこのコア部A2を被覆してなるスキン層A1とから構成されており、コア部A2は容器包装リサイクル材などのようなコア部用熱可塑性樹脂からなり、剛性や耐衝撃性が低下しているものの、コア部A2はコア部用熱可塑性樹脂よりも優れた剛性及び耐衝撃性を有しているスキン層用熱可塑性樹脂3によって被覆されており、よって、成形品は全体として優れた剛性及び耐衝撃性を備えている。
【0040】
そして、成形品のスキン層を構成しているスキン層用熱可塑性樹脂3は優れた流動性を有しているので、コア部用熱可塑性樹脂4のキャビティ2内への充填圧力によってコア部用熱可塑性樹脂4を被覆しつつ、キャビティ内を円滑に流動してキャビティ2の隙間に充填され、よって、得られる成形品は、スキン層用熱可塑性樹脂3によってキャビティ2の形状に合致した優れた外観形状及び寸法を有している。
【0041】
本発明の成形品の製造方法で得られた成形品の用途としては、例えば、コンテナ、パレットなどの産業用品、医療廃棄物用ペールなどの衛生用品の他、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、及び生活雑貨などが挙げられる。
【実施例】
【0042】
次に本発明の実施例を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0043】
(実施例1)
同一の金型1に二機の押出機が接続されてなるサンドイッチ射出成形機を用意した。スキン層用熱可塑性樹脂3として、新製品として製造され且つ塩素含有樹脂を含有しないポリプロピレン系樹脂(日本ポリプロ社製 商品名「BC3LS」、メルトフローレイト:10g/10分)100重量部をサンドイッチ射出成形機の一方の押出機に供給して溶融混練し、スキン層用熱可塑性樹脂3を金型1のキャビティ2内に射出し充填した。なお、射出条件は、押出機内の樹脂温度220℃、金型1の温度30℃、射出速度50mm/秒、射出圧力100MPa及び射出時間4秒であった。
【0044】
次に、コア部用熱可塑性樹脂4として容器包装リサイクル材(メルトフローレイト1.7g/10分、組成:ポリエチレン系樹脂55重量%、ポリプロピレン系樹脂43重量%、ポリ塩化ビニル0.3重量%、及び不可避的不純物1.7重量%)25重量部をサンドイッチ射出成形機の他方の押出機に供給して溶融混練し、コア部用熱可塑性樹脂4を金型1のキャビティ2内に射出し充填した。なお、射出条件は、押出機内の樹脂温度220℃、金型1の温度30℃、射出速度50mm/秒、射出圧力100MPa及び射出時間4秒であった。
【0045】
すると、金型1のキャビティ2内において、先に充填されていたスキン層用熱可塑性樹脂3は、後続してキャビティ2内に射出、充填されたコア部用熱可塑性樹脂4の射出、充填圧力によってキャビティ2内に押し込まれてキャビティ2内をその形状に沿って流動してキャビティ2内を隙間なく埋めると共に、コア部用熱可塑性樹脂4はスキン層用熱可塑性樹脂3に全体的に被覆された状態でキャビティ2内を流動し、金型1のキャビティ2内はスキン層用熱可塑性樹脂3とコア部用熱可塑性樹脂4とが層状を形成しつつ両者によって隙間なく充填された状態となった。
【0046】
しかる後、金型1内においてスキン層用熱可塑性樹脂3及びコア部用熱可塑性樹脂4を冷却、固化させることによって、底面が平面長方形状で且つ底面の四方外周縁部から上方に向かって矩形枠状の周壁部が延設されてなる成形品を得た。成形品は、キャビティ2の形状に正確に成形されており、コア部はコア部用熱可塑性樹脂4から構成され且つコア部を全体的に被覆しているスキン層はスキン層用熱可塑性樹脂3から構成されていた。成形品の外面は、キャビティ2内にコア部用熱可塑性樹脂4を充填するためのゲートに対応する部分を除いた残余部分は全てスキン層用熱可塑性樹脂3から構成されており、コア部用熱可塑性樹脂4は外部に露出していなかった。
【0047】
(比較例1)
金型1に押出機が接続されてなる射出成形機を用意した。容器包装リサイクル材(メルトフローレイト1.7g/10分、組成:ポリエチレン系樹脂55重量%、ポリプロピレン系樹脂43重量%、ポリ塩化ビニル0.3重量%、及び不可避的不純物1.7重量%)を射出成形機の押出機に供給して溶融混練し、容器包装リサイクル材を金型のキャビティ内に射出して充填し、金型を冷却して容器包装リサイクル材からなる成形品を製造しようとしたが、容器包装リサイクル材がキャビティ内において滞留して成形品を得ることができなかった。なお、射出条件は、押出機内の樹脂温度220℃、金型1の温度30℃、射出速度50mm/秒、射出圧力100MPa及び射出時間4秒とした。
【符号の説明】
【0048】
1 金型
2 キャビティ
3 スキン層用熱可塑性樹脂
4 コア部用熱可塑性樹脂
A1 スキン層
A2 コア部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型のキャビティ内にスキン層を構成するスキン層用熱可塑性樹脂を射出した後に、上記キャビティ内にコア部を構成するコア部用熱可塑性樹脂を射出して、上記スキン層用熱可塑性樹脂及び上記コア部用熱可塑性樹脂を上記キャビティ内にて層状に流動させて、スキン層が上記スキン層用熱可塑性樹脂から構成され且つコア部がコア部用熱可塑性樹脂から構成された成形品を製造する成形品の製造方法であって、上記コア部用熱可塑性樹脂は、少なくとも一種のポリオレフィン系樹脂と0.01〜3.0重量%の塩素含有樹脂とを含むことを特徴とする成形品の製造方法。
【請求項2】
スキン層用熱可塑性樹脂は塩素含有樹脂を含有していないことを特徴とする請求項1に記載の成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−22880(P2013−22880A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161185(P2011−161185)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(390033112)積水テクノ成型株式会社 (48)
【Fターム(参考)】