説明

成形方法及び成形品

【課題】成形時にボイドの発生を防ぎ、外側表面と凹凸を有する内側表面とに塗膜を備えた成形品を簡便にかつ低コストで成形することが可能な成形方法を提供する。
【解決手段】作業機械の外装部材として用いられ、リブ等の凹凸を有する内側表面となる第1面と、外側表面となる第2面とに塗膜を備える成形品(10)を成形する方法であって、前記第1面を成形可能な上型(2,2')と、前記第2面を成形可能な下型(3,3')とを作製すること、前記上型(2,2')のキャビティ面に塗料(6)を塗布すること、前記上型(2,2')と前記下型(3,3')とを型締すること、ポリオールと、ポリアミンと、水とを混合して第1混合原料を調製すること、前記第1混合原料にポリイソシアネートを混合して第2混合原料(9)を調製すると同時にキャビティ(8)内に注入し、反応射出成形法によりウレタンウレア樹脂からなる成形品(10)を発泡成形し、前記塗料(6)を成形品(10)に転写することを含む成形方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品の成形方法に関し、特に、建設機械、農業機械、及び林業車両などの作業機械において、エンジングリルやマシンキャブ等の外装部材として用いられ、リブやボス等の凹凸を有する内側表面と外側表面との両面に塗膜を備える成形品を成形する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば建設機械の1つである油圧ショベルは、下部走行体の上方に上部旋回体が旋回自在に設けられており、この上部旋回体には、オペレータキャブ、ブーム、カウンタウエイト等の他に、エンジンを収納するためのエンジングリルや、油圧機器等を収納するためのマシンキャブが配設されている。これらのエンジングリルやマシンキャブは、一般に寸法が大きく、またその内側表面(裏面)には補強用のリブやボス等が入り組んで設けられており、複雑な形状を有している。このため、エンジングリルやマシンキャブなどの外装部材は、一般に合成樹脂を反応射出成形法(以下、単にRIM法と略記する)により成形することによって作製されている。
【0003】
RIM法とは、ミキシングヘッドを用いて2種類以上の低分子量かつ低粘度の原料を混合し、混合すると同時に成形型内に射出する成形方法であり、大型で複雑な形状を有する成形品の成形に適している。また、RIM法は、射出成形に比べて成形圧力が低いため、成形型として金属製の成形型に比べて非常に安価な樹脂型を用いることができ、また型締装置も簡易なものを利用できるといった利点を有している。
【0004】
一般に、作業機械の外装部材は、その外観品質を向上させて製品としての見栄えを良くするために、成形体の外側表面(外面)に塗装が施されている。このような外側表面に塗装が施された成形品をRIM法を用いて製造する方法の一例が、特開平5−42561号公報(特許文献1)や特開平8−72096号公報(特許文献2)などに記載されている。
【0005】
例えば、前記特許文献1には、合成樹脂のRIM法による成形おいて、成形と同時に加飾を行う加飾成形品の製造方法が記載されている。具体的には、RIM法により成形を行うに際して、先ず、真空吸引孔を有する雌型とシート加熱体との間に加熱軟化させた加飾用熱可塑性シートを介在させ、雌型と熱可塑性シートにより密閉された空間を雌型の真空吸引孔を通じて真空引きすることにより前記熱可塑性シートを雌型のキャビティ面の形状に沿う形に予備成形する。次に、雌型と雄型とを型締した後、所定形状に設計された金型のキャビティ内に合成樹脂の液状原料を射出することにより成形を行う。これにより、例えば大型かつ複雑な形状の成形品を成形する際に、加飾用熱可塑性シートが表面に一体的に被着された成形品を得ることができるとしている。
【0006】
なお、前記特許文献1に記載されているような方法を用いて合成樹脂を成形する場合、成形時に発生するガスが上方に移動して、上型により成形される成形面には多数のボイドが形成されてしまう。このため、近年では、例えば加飾用シートが一体成形された成形品を製造する際に、一般に予備成形した加飾用シートを下型に配して成形が行われている。
【0007】
これによって、例えば図4に示したように、成形体21において、上型により成形される内側表面22のリブ23やボスが形成されている部位にボイド24が形成されてしまうものの、外側の加飾用シートと合成樹脂との界面にはボイドが形成されない。このため、合成樹脂と加飾用シートとの接着性を確保して加飾用シートが剥離することを防ぎ、外側表面における意匠性の向上を図ることができる。またこの場合、成形時に形成されるボイド24は、成形体21を作業機械に取り付けたときには外部からは見えない成形体21の裏側に隠すことが可能となる。
【0008】
一方、前記特許文献2には、成形を行う際にインモールドコート成形法によって成形品の表面に塗膜を形成する場合において、RIM成形品の表面に色分けされた塗膜を形成することが可能な多色インモールドコート成形法が記載されている。特許文献2において、インモールドコート成形法とは、上型と下型で構成される金型のキャビティにRIM原料を充填してRIM成形品を成形した後、金型内でのRIM成形品の収縮により生じるRIM成形品表面と上型キャビティ面間の隙間に、上型の塗料注入孔から塗料を注入して、RIM成形品表面に塗膜を形成する方法である。
【0009】
この特許文献2における成形方法は、インモールドコート成形法でRIM成形品の表面に塗膜を形成するに際し、塗膜形成側のキャビティ面に前記隙間を複数の区画に仕切る仕切り用凸部を設けるとともに、各区画のキャビティ面には各々塗料注入孔を設けておき、金型内でのRIM成形品の収縮後、仕切り用凸部で仕切られた隙間の各区画毎に、所定の色からなる塗料を各塗料注入孔から注入することに特徴を有している。このような成形方法によれば、仕切り用凸部で仕切られた各区画毎に所定の色からなる塗料を注入できるため、塗料が各区画間で混ざり合うことがなく、RIM成形品の表面に美麗に色分けされた塗膜を形成することできる。
【0010】
一方、成形体の外側表面に塗装を施す他の方法としては、例えば、成形品を成形した後に所定の領域を塗装する後塗装や、また、成形前に金型のキャビティ面に予め塗料を塗布しておき、同塗料を成形時に成形品に転写することによって外側表面に塗膜を成形一体化した成形品を作製する型内塗装といった技術が知られている。後塗装は、例えば成形品にサンディング、プライマー塗り、仕上げ塗装、焼付けなどの工程を行うことにより塗膜が形成されるが、作業工程が多くなり時間がかかるといった問題があった。一方、型内塗装は、成形前にスプレー等で金型のキャビティ面に塗料を塗布すれば良いため、工程数が少なく、コストを低く抑えることができるといった利点を有している。
【0011】
ところで、作業機械のエンジングリルやマシンキャブにおいては、エンジン等を保護するために、ある程度の剛性や強度が求められるとともに、例えばメンテナンスのときに開閉を容易に行えるように軽量化が求められている。一方、合成樹脂の1つであるポリウレタンは、RIM法による成形が可能で、その成形性も優れている。また、硬質のポリウレタンを成形材料として用いることにより、軽量で高い剛性を有し、耐候性に優れた成形品が合理的に得られる。更に、ポリウレタンの成形では、成形体の表面にシボ模様を付与することが可能であるため、美麗で高級感のある成形品が得られるといった利点もある。
【0012】
このため、現在では、作業機械のエンジングリルやマシンキャブなどに用いられる成形品では、成形材料として硬質ポリウレタンが多く用いられており、このような硬質ポリウレタンからなる成形体の外側表面に塗装を施す場合にも、前述のような塗装方法が用いられている。
【0013】
また、油圧ショベルやホイールローダなどの作業機械は、その稼働時にエンジンや油圧機器などから発生する騒音が大きいという問題がある。従って、従来では、エンジンや油圧機器などから発生する騒音を低減するために、これらを収納するエンジングリルやマシンキャブの内側表面に吸音材を貼付する等の手段が講じられている。このような吸音材は、例えば上記のようなRIM法により外側表面に塗装が施された成形体を成形した後に、同成形体の内側表面に形成されているリブやボス等と干渉しないように所定の形状に裁断されて貼付されている。
【特許文献1】特開平5−42561号公報
【特許文献2】特開平8−72096号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
一般に、油圧ショベルやホイールローダなどの作業機械においては、例えばエンジンや油圧機器などのメンテナンスを行う際にエンジングリルやマシンキャブ等の外装部材を開いて点検や整備などが行われる。その際、通常では外部からは見えないエンジングリルやマシンキャブの内側表面が人の目に付いてしまうため、近年では外装部材の内側表面の外観品質も向上させることが望まれている。
【0015】
しかし、例えば前述のようなRIM法により成形された成形体の内側表面では、前述のようにリブやボスが形成されている部位にボイドが形成され易く、また例えば内側表面に吸音材を貼付する場合でもこれらの部位は吸音材が貼付されずに露出するため、外観品質の低下を招いていた。従って、エンジングリルやマシンキャブにおける内側表面の外観品質を向上させるために、外側表面だけでなく内側表面の全体に塗装を均一に施すことが求められてきている。
【0016】
しかし、例えば前記特許文献1に記載されているような方法により成形を行う場合、前述のように上型により成形される成形体の内側表面には、ボイドが形成される。このため、内側表面の品質を向上させるためには、内側表面に形成されたボイドを手作業で補修した後に後塗装を施さなければならず、作業の煩雑化を招き、コストへの負担も大きいといった問題があった。
【0017】
更に、例えば成形型として安価な樹脂型を用いて成形を行った場合には、成形時に樹脂型に塗布する離型剤として、金型の場合よりも融点が低い離型剤が用いられる。このため、成形後に樹脂型から成形品を取り出したときに、同成形品の表面には離型剤が一緒に貼り付いてくる。従って、上記のような後塗装を施すときには、塗膜の接着性を良くするために、塗装前に成形品にサンドブラスト処理を施して成形品から離型剤を除去することが必要となる。しかし、成形品の内側表面は、リブやボスが形成された複雑な面形状を有しているため、離型剤の除去やその後の塗装に多大な工程数が必要とされ、その作業も煩雑になる。
【0018】
また、成形品の外側表面と内側表面とに塗膜を形成する方法として、例えば図5の(a)及び(b)に模式図を示したように、成形時に、下型32に加飾シート33を配して成形品34の外側表面に塗膜を形成するとともに、成形品34の内側表面には前述の型内塗装を利用して、上型31のキャビティ面に予め塗料35を塗布しておくことにより塗膜35’を形成することが考えられる。
【0019】
しかしこの場合も、成形時に成形品34の内側表面には(特にリブやボスの部位には)成形時に発生するガスが溜まってボイド36が形成される。このため、ボイド36が形成された成形品34の部位では塗料35を転写することができず、塗膜35’を安定して形成することができないという不具合があった。更に、塗料35を成形品34に転写できなかった場合、上型31の型内に塗料35が残存する。このため、成形後に上型31を清掃して残存した塗料35を除去する作業が必要とされ、コストアップを招く要因の一つとなる。
【0020】
なお、成形体の外側表面と内側表面とに塗膜を形成するその他の方法として、成形前に加飾シートを下型だけでなく、上型にも配することが考えられるが、この場合、加飾シートをリブやボス等が形成された内側表面の面形状に合わせて予備成形することが難しいという欠点がある。また、上型に配した加飾シートと合成樹脂との界面にボイドが形成されるため、両者間の接着性が低下するといった問題も生じる。
【0021】
一方、前記特許文献2のように、成形品を成形した後に成形品と金型との間に形成される隙間に塗料を注入して成形品の表面に塗膜を形成する場合では、成形品の外側表面又は内側表面の何れか一方の面にしか塗膜を形成することができない。このため、他方の面は、その後に別途に塗装を行って塗膜を形成しなければならず、工程数が増加してコストアップに繋がってしまう。更に、特許文献2のインモールドコート成形法によって塗膜を形成するためには、成形品と金型との間に形成される隙間に塗料を非常に高い圧力で流し込む必要があるため、成形型として、高圧に十分に耐えることができる金型を作製しなければならず、コストへの負担が非常に大きくなるといった問題があった。
【0022】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その具体的な目的は、成形時のボイドの発生を防いで、外側表面とリブやボス等の凹凸を有する内側表面との両方の面に塗膜を備えた成形品を簡便にかつ低コストで成形することが可能な成形方法を提供すること、更には、塗膜を備えた内側表面に吸音材の貼付を容易に行うことが可能な成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために、本発明により提供される成形品の成形方法は、基本的な構成として、作業機械のエンジングリル等の外装部材として用いられ、リブやボス等の凹凸を有する内側の表面となる第1面と、外側の表面となる第2面とに塗膜を備える成形品を成形する方法であって、前記第1面を成形可能なキャビティ面を備えた上型と、前記第2面を成形可能なキャビティ面を備えた下型とを作製すること、前記上型のキャビティ面に塗料を塗布すること、前記下型と前記塗料を塗布した上型とを型締すること、ポリオールと、ポリアミンと、水とを混合して第1混合原料を調製すること、前記第1混合原料にポリイソシアネートを混合して第2混合原料を調製すると同時に、同第2混合原料を前記上型と前記下型との間に形成されたキャビティ内に注入して、反応射出成形法によりウレタンウレア樹脂からなる成形品を発泡成形し、前記塗料を成形品に転写すること、を含んでいることを最も主要な特徴とするものである。
【0024】
本発明に係る成形方法においては、前記ウレタンウレア樹脂のウレタン反応とウレア反応との割合を、ウレタン反応:ウレア反応=(3〜5):(7〜5)となるように成分比を調整することが好ましい。
【0025】
本発明の成形方法では、前記第2面に前記塗膜を形成するために、前記下型と前記上型とを型締する前に、同下型のキャビティ面に所定形状に予備賦形した加飾シートを配することが可能である。この場合、前記加飾シートの材質に、塩化ビニル樹脂、メタクリル樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、及びウレタン樹脂のうちから選択される何れか1つ又は2つ以上を組み合わせたものを用いることが好ましい。
【0026】
また、本発明の成形方法では、前記第2面に前記塗膜を形成するために、前記下型と前記上型とを型締する前に、同下型のキャビティ面に塗料を塗布することが可能である。この場合、前記下型のキャビティ面に塗布する塗料として、脂肪族ポリウレタン樹脂塗料を用いることが好ましい。
更に、前記第2面に前記塗膜を形成するために、前記反応射出成形を行った後に、得られた成形品の第2面側に塗装を施しても良い。
【0027】
本発明では、前記上型のキャビティ面に塗布する塗料として、脂肪族ポリウレタン樹脂塗料を用いることが好ましい。
また、本発明に係る成形方法は、前記反応射出成形後に、得られた成形品の前記第1面側に吸音材を貼付することが好ましい。この場合、前記塗料を塗布する前の前記上型のキャビティ面に、前記ウレタンウレア樹脂よりも高い融点を有する離型剤を塗布することが好ましく、また、前記上型及び前記下型として、亜鉛合金製の金型を用いることが好ましい。
【0028】
次に、本発明にあっては、前記構成を備えた成形方法によって成形された成形品が提供される。この場合、前記成形品に形成された気泡の平均直径が10μm以上40μm以下であり、また、前記成形品に形成された各気泡の直径が4μm以上100μm以下である。
【発明の効果】
【0029】
本発明に係る成形方法は、成形型として凹凸を有する第1面を成形可能な上型と、第2面を成形可能な下型とを作製し、上型のキャビティ面に塗料を塗布した後に同上型と下型とを型締する。そして、上型と下型間のキャビティ内にウレタンウレア樹脂の混合原料を注入して、RIM法によりウレタンウレア樹脂からなる成形品を発泡成形し、同成形品の第1面に前記塗料を転写して塗膜を形成する。
【0030】
本発明者は、凹凸を有する内側表面(第1面)と外側表面(第2面)の両面に塗膜を備える成形品を成形する際に、内側表面の塗装を簡便かつ合理的に行える方法について鋭意実験及び検討を重ねた。その結果、外装部材となる成形体の材料として、従来では用いられることがなかったウレタンウレア樹脂を使用することによって、上型により成形される成形品の第1面にボイドが形成されないことを見出した。
【0031】
このようなボイドの形成が防止される要因はいまだ明確ではないが、おそらく、RIM法によるウレタンウレア樹脂の成形では以下の過程が生じているためと考えられる。即ち、成形時にウレタン反応ではガスが発生するものの、ウレア反応ではガスが発生しないため、ウレタンウレア樹脂が硬化するまでの間にウレタン反応で発生したガスがウレア成分内に取り込まれることにより、ガスが上型近傍に形成されるスキン層には集中せずに成形品全体に分散する結果、ウレタンウレア樹脂に気泡が形成され、また、成形品の第1面ではボイドの形成が防止されると考えられる。
【0032】
そして、本発明者等は、成形時に上述のようにして成形品の第1面でボイドの形成が防止されれば、上型側の第1面の塗装を、従来ではボイドの形成により安定した塗装が困難であった型内塗装によって行うことが可能となると考え、本発明を完成させるに至った。
【0033】
即ち、本発明の成形方法によれば、成形材料としてウレタンウレア樹脂を採用し、凹凸を有する成形品の第1面の塗装を型内塗装で行うことによって、成形時のボイドの発生を抑制し、上型で成形される第1面と下型で成形される第2面とに均一な塗膜を備えた成形品を簡便にかつ低コストで成形することができる。なお、本発明でいうウレタンウレア樹脂とは、ウレタン結合とウレア結合とを有する単一の合成樹脂のことをいう。
【0034】
本発明の成形方法では、前記ウレタンウレア樹脂の混合材料を調製する際に、ウレタン反応とウレア反応との割合が、ウレタン反応:ウレア反応=(3〜5):(7〜5)となるようにウレタンウレア樹脂の混合材料の成分比を調整する。これにより、ウレタンウレア樹脂の適切な硬化時間を確保でき、作業機械の外装部材として適切な強度を有する成形品を安定して成形することができる。
【0035】
本発明の成形方法において、前記第2面に塗膜を形成する方法は特に限定されないが、例えば下型と上型とを型締する前に、所定形状に予備賦形した加飾シートを下型のキャビティ面に配することによって、成形品の第2面に塗膜を容易にかつ安定して形成することができる。
【0036】
この場合、前記加飾シートとして、塩化ビニル樹脂、メタクリル樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、及びウレタン樹脂のうちから選択される何れか1つ又は2つ以上を組み合わせたものからなるシートを用いることができる。これにより、成形品の第2面側に、優れた耐候性や光沢度を有する塗膜を形成でき、成形品の第2面の外観品質を向上させることができる。
【0037】
また、前記第2面に塗膜を形成する方法としては、下型と上型とを型締する前に、同下型のキャビティ面に塗料を塗布する型内塗装を用いることもできる。このように第2面の塗装を型内塗装で行えば、第2面に均一な塗膜を低コストで簡便に形成することができる。この場合、下型のキャビティ面に塗布する塗料として、脂肪族ポリウレタン樹脂塗料を用いることにより、耐候性に優れた塗膜を成形品の第2面に形成することができる。また、塗膜の表面にシボ模様を付与することや、脂肪族ポリウレタン樹脂塗料に顔料等を含有させて、塗膜に様々な色彩を付与することが可能となる。
【0038】
更に、前記第2面に塗膜を形成する別の方法として、前記反応射出成形を行った後に、得られた成形品の第2面に塗装を施す後塗装を用いても良い。これにより、成形品の第2面に均一な塗膜を安定して形成することができる。
【0039】
また、本発明の成形方法において、前記上型のキャビティ面に塗布する塗料として、脂肪族ポリウレタン樹脂塗料を用いることにより、耐候性に優れた塗膜を成形品の第1面に形成することができる。また、塗膜の表面にシボ模様を付与することや、脂肪族ポリウレタン樹脂塗料に顔料等を含有させて、塗膜に様々な色彩を付与することが可能となる。
【0040】
更に、本発明の成形方法では、前記反応射出成形後に、得られた成形品の第1面側に吸音材を貼付することができる。これにより、製造した成形品を作業機械のエンジングリルやマシンキャブ等として適用した場合に、優れた防音効果を発揮することができる。
【0041】
また、上述のように成形品の第1面側に吸音材を貼付する場合、上型のキャビティ面に塗料を塗布する前に、同上型のキャビティ面にウレタンウレア樹脂よりも高い融点を有する離型剤が塗布される。
【0042】
例えば、成形型のキャビティ面に塗布される離型剤の融点が成形材料の融点よりも低い場合、成形後に型内から成形品を取り出したときに成形品側に離型剤が付着する。この場合、得られた成形品の表面に吸音材を貼付する際に、吸音材の接着力を確保するために成形品表面の離型剤を除去する作業が必要となる。しかし、本発明のように成形材料よりも高い融点を有する離型剤を用いることにより、成形型から成形品を取り出したときに、離型剤を成形品の表面に付着させずに成形型のキャビティ面に残しておくことができる。従って、その後に成形品の表面に吸音材を貼付する際に、離型剤の除去工程が不要となり、貼り付け作業を簡略化することができる。
【0043】
更にこの場合、前記上型及び前記下型として亜鉛合金製の金型(以下、ZAS型と略記する)を用いることにより、キャビティ面に塗布する離型剤として、樹脂型を用いるときよりも融点が高い離型剤を使用することができる。このため、成形品の表面に離型剤が付着することをより確実に防ぐことができる。
【0044】
そして、前記構成を備えた本発明の成形方法によって成形された成形品は、リブやボス等の凹凸を有する内側表面となる第1面と、外側表面となる第2面とに均一な塗膜を備えた従来よりも安価な成形品となる。
【0045】
また、本発明の成形品において、ウレタンウレア樹脂に形成された気泡の平均直径が10μm以上40μm以下であり、また、各気泡の直径は4μm以上100μm以下である。このようなサイズの気泡が形成されたウレタンウレア樹脂製の成形品であれば、リブやボスが形成されている部位の裏側にヒケ(凹部)が発生してなく、優れた強度を有する軽量の成形品となる。このため、作業機械のエンジングリルやマシンキャブ等として非常に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0047】
図1は、本発明の実施例1に係る成形方法の工程を模式的に説明する説明図である。なお、この図1では、本発明の特徴を理解し易くするために、その形状や寸法等は実際のものとは異なって示されている。また、以下では、リブが形成されて凹凸を有する第1面と、その反対側の第2面の両面に塗膜を備える成形品を成形する方法について説明しており、特に、成形型としてZAS型を用い、且つ、第2面における塗膜の形成を加飾シートを成形一体化することによって行う場合を例に挙げている。しかし、本発明はこれに何ら限定されるものではなく、前記基本的な構成を具備し、本発明の課題を解決することができるものであれば多様な変更が可能である。例えば、成形型としてはZAS型の代わりに樹脂型を用いることができるし、また第2面における塗膜の形成を、型内塗装、後塗装、又はその他の塗装方法を用いて行うことも可能である。
【0048】
先ず、本実施例1に係る成形方法は、図1の(a)に示したように、成形品10の第1面を成形可能なキャビティ面を有する上型2と、第2面を成形可能なキャビティ面を有する下型3とからなるZAS型1を作製して準備する。本実施例1では、第1面に複数のリブ11を有し、且つ、周縁部にフランジ12を有する成形品10を成形可能なように、上型2及び下型3のキャビティ面がそれぞれ所定の形状に形成されている。
【0049】
また、上型2には、成形材料であるウレタンウレア樹脂の原料を調製するミキシングヘッド13が配されており、ミキシングヘッド13で調製したウレタンウレア樹脂の混合原料がキャビティ8内に直接注入されるように構成されている。特に本実施例1では、成形材料として、原料を混合してからの硬化時間が短いウレタンウレア樹脂を用いるため、キャビティ8内に原料を迅速に充填可能なように、上型2の略中央部にミキシングヘッド13が配されている。
【0050】
更に、上型2には、混合原料をキャビティ8内に注入した際に、同キャビティ8内に存在していた気体を排出するためのベント溝5が形成されており、また、成形後に成形品10を突出してその取り出しを円滑に行うためのエジェクタピン4が配されている。前記ベント溝5は、混合原料をキャビティ8内に流動させたときの下流側の末端でパーティングラインに沿った位置に設けられている。なお、このような形状を有する上型2及び下型3は、従来から用いられている方法によって容易に作製することが可能である。また、本実施例1では、必要に応じてエジェクタピン4の隙間から気体を抜くことが可能なように上型2を構成することも可能である。
【0051】
上記のような所定形状の上型2と下型3とを作製した後、それぞれのキャビティ面に離型剤を塗布する。本実施例1では成形型が亜鉛合金製であるため、ウレタンウレア樹脂よりも融点が高い離型剤を用いることができる。
【0052】
次に、図1の(b)に示したように、成形時に型内塗装により成形品10の第1面に塗膜を形成するために、前記で作製した上型2のキャビティ面に塗料6をスプレーで塗布する。このとき、前記塗料6として、脂肪族ポリウレタン樹脂塗料を用いることにより、成形品の第1面に耐候性に優れた塗膜を形成することが可能となる。また、脂肪族ポリウレタン樹脂塗料に顔料等を含有させることによって、塗膜に様々な色彩を付与することも可能となる。
【0053】
また、上型2のキャビティ面に塗料6を塗布するとともに、成形品10の第2面にも塗膜を形成するために、下型3にはそのキャビティ面の形状に沿うように予備賦形した加飾シート7をセットする。この加飾シート7は、予め所定の加飾が施されている。なお、加飾シート7を予備賦形する方法は特に限定されず、従来から一般的に行われている方法を用いることができる。
【0054】
例えば、下型3に真空吸引孔(不図示)を設けるとともに、同真空吸引孔に吸引ポンプ(不図示)等を接続しておき、加熱して軟化させた熱可塑性の加飾シート7を下型3に載置する。その後、吸引ポンプ等で真空吸引孔を通じて吸引することにより、軟化した加飾シート7を下型3に吸引密着させて冷却する。これにより、加飾シート7を下型3のキャビティ面に沿った形状に賦形した状態で下型3にセットすることができる。
【0055】
この下型3にセットする加飾シート7の材質は特に限定されないが、例えば、塩化ビニル樹脂、メタクリル樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、及びウレタン樹脂のうちから選択される何れか1つ又は2つ以上を組み合わせたものからなる加飾シートを用いることができる。これにより、優れた耐候性や光沢度を有する塗膜を成形品10の第2面に形成でき、成形品10の品質を向上させることができる。また、加飾シート7に着色、各種柄印刷、金属蒸着等の処理を施すこともでき、それによって、成形品10の第2面に様々なデザインを付与することも可能となる。
【0056】
上述のように上型2のキャビティ面に脂肪族ポリウレタン樹脂塗料6を塗布し、また、下型3に加飾シート7をセットした後、上型2と下型3とを型締する(図1の(c))。これにより、上型2と下型3との間には、所定形状のキャビティ8が形成される。
【0057】
その後、成形材料であるウレタンウレア樹脂の原料をミキシングヘッド13で調製する。原料の調製は、先ず、ポリオールと、ポリアミンと、水とをそれぞれ所定量で混合することによって第1混合原料を作製する。このとき、必要に応じて、第1混合原料に、整泡剤、触媒、着色剤、及び窒素ガス等を適宜混入することもできる。
【0058】
次に、作製した前記第1混合原料と所定量のポリイソシアネートとをミキシングヘッド13内に導入して混合することによって、第2混合原料9を調製する。このとき、第1混合原料とポリイソシアネートとが混合されることによりウレタンウレア樹脂の重合反応及び硬化が始まるため、第2混合原料9を調製すると同時に、同第2混合原料9をミキシングヘッド13から金型1のキャビティ8内に高速で注入する(図1の(d))。
【0059】
また、第2混合原料9を調製する際には、ウレタンウレア樹脂の反応において、ウレタン反応とウレア反応との割合がウレタン反応:ウレア反応=(3〜5):(7〜5)となるように、好ましくはウレタン反応:ウレア反応=4:6となるように混合原料の成分比を調整する。
【0060】
このとき、ウレア反応の割合が7割を超えて大きくなると、ウレタンウレア樹脂の硬化時間が短くなり過ぎるため、作業機械の外装部材に用いられるような大型の成形品を成形する場合、キャビティ8内に第2混合原料9を十分に充填できず、所定形状の成形品を得ることが困難になることが考えられる。また、ウレア反応の割合が大きくなり過ぎると、得られる成形品の曲げ強度や曲げ弾性率が低くなり、作業機械の外装部材に求められる強度や剛性が得られなくなる恐れもある。
【0061】
一方、ウレア反応の割合が5割よりも小さくなると、成形品の高温強度が低くなるなどの不具合が生じる恐れがある。なお、本実施例1では、ウレタン反応:ウレア反応=4:6となるように第2混合原料9を調製してZAS型1のキャビティ8内に高速で注入した。この場合、ポリイソシアネートを混合してからのウレタンウレア樹脂の硬化時間は約5秒である。
【0062】
ここで、ポリオールとしては、例えばポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、エポキシポリオール、アクリルポリオールなどを用いることができる。また、ポリアミンとしては、例えば変性脂肪族ポリアミン、変性脂環式ポリアミン、変性芳香族ポリアミン、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミンなどを用いることができる。更に、ポリイソシアネートとしては、例えば脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートなどを用いることができる。
【0063】
そして、ミキシングヘッド13からキャビティ8の末端に向けて第2混合原料9を流動させてキャビティ8内に第2混合原料9を充填し、キャビティ8内でウレタンウレア樹脂を反応させて硬化させる。これにより、ウレタンウレア樹脂からなる成形品10が成形される(図1の(e))。このとき、ウレタン反応ではガスが発生するものの、その発生したガスはウレタンウレア樹脂が硬化するまでの間にウレア成分内に取り込まれることにより、成形品全体に微細な気泡が形成されて、成形品の第1面側では従来のようなボイドの形成を防ぐことができると考えられる。
【0064】
従って、上述のようにウレタンウレア樹脂のRIM成形を行えば、成形品10の第1面にはボイドが形成されないため、同第1面に型内塗装を行っても、前述の図5に示したような塗装不良は生じず、第1面に塗膜6’を安定して形成することができる。また更に、その後に行うZAS型の清掃も容易となる。
【0065】
また、ウレタンウレア樹脂は、重合反応が起こると同時に微発泡する。例えば、RIM法により非発泡タイプの合成樹脂(例えば、ポリウレタン)を成形した場合、成形品のリブやボスを形成した部位の裏側にヒケが発生するという問題があるが、本実施例1では、成形時にウレタンウレア樹脂の微発泡によりヒケの発生を防止することができ、所定形状の成形品10を安定して形成することができる。
【0066】
ウレタンウレア樹脂が金型1内で硬化したら、型開きをしてエジェクタピン4で成形品10を突き出すことにより、内側表面となる第1面にリブを有し、且つ、脂肪族ポリウレタン樹脂塗料により形成された塗膜6’を備えており、また、外側表面となる第2面に加飾シート7が成形一体化されている外観品質に優れた成形品10を得ることができる。
【0067】
即ち、従来では凹凸を有する内側表面となる第1面と、外側表面となる第2面とに塗膜を形成する場合、第1面に均一な塗膜を安定して形成するためには、成形後にボイドの補修作業を行って後塗装を行わなければならなかったのに対し、上述のような本実施例1の方法であれば、ボイドの補修作業が不要となり、後塗装よりも工程数が少なく簡便な型内塗装で第1面に均一な塗膜を安定して形成することができる。このため、従来の方法に比べて、作業工程の簡略化やコストダウンを達成することができ、低コストの成形品を提供することができる。
【0068】
また、上述のようにして得られた成形品10は、0.4g/cm3以上1.0g/cm3以下の密度を有し、その内部には気泡が形成されている。本実施例1において、成形品10に形成された気泡の平均直径は10μm以上40μm以下であり、また、各気泡の直径は4μm以上100μm以下である。このような密度及び気泡サイズを有する成形品10であれば、例えば非発泡タイプのポリウレタン成形品に比べて軽量となり、また、外装部材としての十分な強度を有している。
【0069】
更に、本実施例1で得られた成形品10は、外装部材として用いた際にその防音効果を高めるために、成形品10の第1面に吸音材を貼付することが可能である。成形品10における吸音材の貼付領域は特に限定されないが、例えばリブを除いた領域に吸音材を貼付することが好ましく、例えばその貼付領域の形状に合わせて吸音材を裁断した後、同吸音材を接着剤等を用いて成形品に貼り付ける。なお、吸音材は、従来と同様のものを用いることが可能であり、例えばポリウレタンフォームやポリエチレンフォーム等からなる吸音材が好適に用いられる。
【0070】
このとき、本実施例1では、前述のように成形時に離型剤として融点が高いものを用いているため、成形品を金型から取り出した際に、離型剤を金型1に残存させて、成形品10に付着することを防ぐことができる。従って、成形品10に吸音材を貼付するときに、成形品10から離型剤を除去する作業を行わずに済み、吸音材の貼付を容易に行うことができる。このようにして製造された成形品は、防音効果にも優れているため、作業機械のエンジングリルやマシンキャブ等として非常に好適に適用することができる。
【0071】
なお、本実施例1では、成形品10の第2面に形成する塗膜は、加飾シート7を成形品10に成形一体化することによって形成されているが、前述のように、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、成形品の第2面に形成する塗膜は、第1面に形成する塗膜と同様に型内塗装によって形成することもできる。このように第2面に型内塗装を行う場合、加飾シートの作製や予備賦形を行わずに、下型のキャビティ面に塗料をスプレー等で塗布することによって塗膜を形成することができるため、短時間でより簡便に成形品を得ることが可能となる。なお、下型のキャビティ面に塗布する塗料は特に限定されないが、例えば第1面に形成する塗膜と同様に脂肪族ポリウレタン樹脂塗料を用いて、耐候性に優れた塗膜を第2面に形成することができる。
【0072】
またその他に、成形時には成形品の第1面のみに型内塗装によって塗膜を形成しておき、その後に第2面のみに別途に塗装を施して塗膜を形成することも可能である。本発明では、前述のように成形品にヒケが発生することを防止できるため、後塗装によって第2面に塗膜を形成する場合でも、成形後に第2面の補修等を行わずに塗装を簡便に行うことが可能となる。
【実施例2】
【0073】
次に、本発明の実施例2に係る成形方法について説明する、ここで、図2は、本実施例2に係る成形方法の工程を模式的に説明する説明図であり、図3は、図2(a)に示したIII−III線の矢視断面図である。なお、図3では、ミキシングヘッド、スプルー、ベント溝の配設位置を理解し易く示すため、上型のキャビティ面の形状やエジェクタピンの図示を省略している。また、本実施例2において、前記実施例1で説明した部材と同様の構成を有する部材については、同じ符号を用いて表している。このような同じ符号で表された部材については、前記実施例1と同様であるため、その説明を省略する。
【0074】
本実施例2に係る成形方法は、図2の(a)に示したように、成形品10の第1面を成形可能なキャビティ面を有する上型2’と、第2面を成形可能なキャビティ面を有する下型3’とからなるZAS型1’を作製して準備する。本実施例2で用いる上型2’及び下型3’では、ウレタンウレア樹脂の混合原料をキャビティ8内に注入するためのスプルー14、ランナー15、及びゲート16がパーティングラインに沿って設けられており、また、スプルー14にミキシングヘッド13のノズルが接続されるように構成されている。
【0075】
前記スプルー14は、図3に示したように、ランナー15に向けて幅方向の寸法が漸次拡がるように形成されており、またランナー15及びゲート16は、キャビティ8の幅方向の長さ全体に渡って直線的に形成されている。なお、ウレタンウレア樹脂は、前述のように原料を混合してからの硬化時間が短いため、スプルー14、ランナー15、及びゲート16を形成する位置は非常に重要であり、これらの形成位置は、キャビティ8の形状や混合原料の流動距離などを勘案して決定される。
【0076】
また、上型2には、気体を排出するためのベント溝5や、成形品10の取り出しを円滑に行うためのエジェクタピン4が配されている。ベント溝5は、ゲート16から注入された混合原料をキャビティ8内に流動させたときの下流側(ゲート16とは反対側の端部)でパーティングラインに沿った位置に形成されている。
【0077】
上記のような所定形状の上型2’と下型3’とを作製した後、それぞれのキャビティ面に離型剤を塗布する。次に、図2の(b)に示したように、上型2のキャビティ面に塗料6をスプレーで塗布し、また下型3のキャビティ面に予備賦形した加飾シート7をセットし、その後、上型2と下型3とを型締する(図2の(c))。これにより、上型2と下型3との間には、所定形状のキャビティ8が形成される。
【0078】
その後、成形材料であるウレタンウレア樹脂の第2混合原料9をミキシングヘッド13で調製すると同時に、その第2混合原料9をミキシングヘッド13から、スプルー14、ランナー15、及びゲート16を介して成形型1’のキャビティ8内に高速で注入する(図2の(d))。このとき、ゲート16から注入された第2混合原料9は、ゲート16側から、その反対側の端部に向けてキャビティ8内に充填されていき、キャビティ8内でウレタンウレア樹脂を反応させて硬化させる。これにより、ウレタンウレア樹脂からなる成形品10が成形される(図2の(e))。
【0079】
そして、ウレタンウレア樹脂が金型1’内で硬化した後、型開きをしてエジェクタピン4で成形品10を突き出すことにより、内側表面となる第1面にリブを有し、且つ、脂肪族ポリウレタン樹脂塗料により形成された塗膜6’を備えており、また、外側表面となる第2面に加飾シート7が成形一体化されている外観品質に優れた成形品10を得ることができる。以上のような本実施例2に係るウレタンウレア樹脂のRIM成形を行うことによっても、前記実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、建設機械、農業機械、及び林業車両等の作業機械におけるエンジングリルやマシンキャブ等として用いられる成形品を成形する際に有効に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】(a)〜(e)は、本発明の実施例1に係る成形方法を模式的に説明する説明図である。
【図2】(a)〜(e)は、本発明の実施例2に係る成形方法を模式的に説明する説明図である。
【図3】図2(a)に示したIII−III線の矢視断面図である。
【図4】エンジングリル等として用いられる成形体の内側表面の一部を模式的に示す模式図である。
【図5】従来の成形方法において、上型側の表面を型内塗装によって塗装した際に発生する塗装不良を模式的に説明する説明図である。
【符号の説明】
【0082】
1,1’ 金型(ZAS型)
2,2’ 上型
3,3’ 下型
4 エジェクタピン
5 ベント溝
6 塗料
6’ 塗膜
7 加飾シート
8 キャビティ
9 第2混合原料
10 成形品
13 ミキシングヘッド
14 スプルー
15 ランナー
16 ゲート
21 成形体
22 内側表面
23 リブ
24 ボイド
31 上型
32 下型
33 加飾シート
34 成形品
35 塗料
35’ 塗膜
36 ボイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械のエンジングリル等の外装部材として用いられ、リブやボス等の凹凸を有する内側の表面となる第1面と、外側の表面となる第2面とに塗膜を備える成形品(10)を成形する方法であって、
前記第1面を成形可能なキャビティ面を備えた上型(2,2')と、前記第2面を成形可能なキャビティ面を備えた下型(3,3')とを作製すること、
前記上型(2,2')のキャビティ面に塗料(6)を塗布すること、
前記下型(3,3')と前記塗料(6)を塗布した上型(2,2')とを型締すること、
ポリオールと、ポリアミンと、水とを混合して第1混合原料を調製すること、
前記第1混合原料にポリイソシアネートを混合して第2混合原料(9)を調製すると同時に、同第2混合原料(9)を前記上型(2,2')と前記下型(3,3')との間に形成されたキャビティ(8)内に注入して、反応射出成形法によりウレタンウレア樹脂からなる成形品(10)を発泡成形し、前記塗料(6)を成形品(10)に転写すること、
を含んでなることを特徴とする成形方法。
【請求項2】
前記ウレタンウレア樹脂のウレタン反応とウレア反応との割合を、ウレタン反応:ウレア反応=(3〜5):(7〜5)となるように成分比を調整することを特徴とする請求項1記載の成形方法。
【請求項3】
前記第2面に前記塗膜を形成するために、
前記下型(3,3')と前記上型(2,2')とを型締する前に、同下型(3,3')のキャビティ面に所定形状に予備賦形した加飾シート(7)を配すること
を含んでなることを特徴とする請求項1又は2記載の成形方法。
【請求項4】
前記加飾シート(7)の材質に、塩化ビニル樹脂、メタクリル樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、及びウレタン樹脂のうちから選択される何れか1つ又は2つ以上を組み合わせたものを用いることを特徴とする請求項3記載の成形方法。
【請求項5】
前記第2面に前記塗膜を形成するために、
前記下型(3,3')と前記上型(2,2')とを型締する前に、同下型(3,3')のキャビティ面に塗料を塗布すること
を含んでなることを特徴とする請求項1又は2記載の成形方法。
【請求項6】
前記下型(3,3')のキャビティ面に塗布する塗料として、脂肪族ポリウレタン樹脂塗料を用いることを特徴とする請求項5記載の成形方法。
【請求項7】
前記第2面に前記塗膜を形成するために、
前記反応射出成形を行った後に、得られた成形品(10)の第2面側に塗装を施すこと
を含んでなることを特徴とする請求項1又は2記載の成形方法。
【請求項8】
前記上型(2,2')のキャビティ面に塗布する塗料(6)として、脂肪族ポリウレタン樹脂塗料を用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の成形方法。
【請求項9】
前記反応射出成形後に、得られた成形品(10)の前記第1面側に吸音材を貼付することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の成形方法。
【請求項10】
前記塗料(6)を塗布する前の前記上型(2,2')のキャビティ面に、前記ウレタンウレア樹脂よりも高い融点を有する離型剤を塗布することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の成形方法。
【請求項11】
前記上型(2,2')及び前記下型(3,3')として、亜鉛合金製の金型を用いることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の成形方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の成形方法によって成形されたことを特徴とする成形品。
【請求項13】
前記成形品に形成された気泡の平均直径が10μm以上40μm以下であることを特徴とする請求項12記載の成形品。
【請求項14】
前記成形品に形成された各気泡の直径が4μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項12又は13記載の成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−260939(P2007−260939A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−85444(P2006−85444)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】