説明

成形金型

【課題】成形体の片縁部に、凹凸の方向が互いに異なる複数のアンダーカット部を有するような成形体であっても、簡単に脱型することのできる、優れた成形金型を提供する。
【解決手段】キャビティ型40とコア型41とベース台42、43とを備え、上記コア型41が、進退型45と、ガイド孔46a等と、傾斜型50a等とで構成され、型締め時には、上記キャビティ型40と進退型45と傾斜型50a等が互いに閉じ合わせられて成形体賦形空間が形成され、型開き時には、上記進退型45がキャビティ型40から後退するかベース台42、43が上昇して、上記傾斜型50a等が、各ガイド孔46a等の傾斜した内周面に沿ってスライドすることにより、一方の傾斜型50a、50bが外側に開くとともに他方の傾斜型51が内側に開き、賦形された成形体の第1、第2のアンダーカット部が同時に型抜き可能になるよう設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーカット部を有する成形体を得るための成形金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂成形体の多くが射出成形機によって製造されているが、金型の型締型開方向に対して垂直方向に突出する、いわゆるアンダーカット部を有するものは、そのままでは脱型できないため、分割型を組み合わせたり、型の一部を進退させたりすることによって、上記アンダーカット部を無理なく脱型する方法がいろいろと提案されている。
【0003】
例えば、図6(a)に示すように、上型1と下型2との組み合わせからなる金型において、その内側に、斜めに延びるスライドコア3を設け、図6(b)に示すように、型開き後に、下型2の下側に設けられたエジェクタプレート4を上昇させることによってスライドコア3を成形体5ごと斜め上方向に押し出し、成形体5をスライドコア3から外す方法が広く知られている(例えば、特許文献1等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−231160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本願出願人は、図7(a)〔分解斜視図〕および図7(b)〔これを閉じた状態の縦断面図〕に示すように、容器本体11にヒンジ連結された蓋体12において、その前端縁部に、平板状のフックピース13を揺動自在に取り付け、上記フックピース13を介して、蓋体12側に設けられた被係合部14と容器本体11側に設けられた凹部15内の係合部16との係合を係脱させて、蓋体12を開閉できるようにしたコンパクト容器を開発し、すでに出願している。なお、17は蓋体12の内側に取り付けられた鏡、18は化粧皿を収容するための凹部である。
【0006】
上記の構成によれば、フックピース13が、蓋体12の前端縁のごく近傍に取り付けられているため、フックピース13を奥側に押す力が無駄なく容器本体11側の係合部16に伝達されて操作性がよいだけでなく、コンパクト容器全体をより小型化することができるという利点を有している。
【0007】
しかしながら、上記のように、フックピース13を、蓋体12の前端縁のごく近傍に揺動自在に取り付けるには、この部分を拡大して示す図8、図9に示すように、上記蓋体12の片縁部のごく狭い範囲に、蓋体12と容器本体11とを係合させるための被係合部14と、フックピース13の軸部19の軸受部となる係合凹部20、軸部19を保持するための保持部21等を、一体的に形成する必要があり、複雑な構造の金型を用意する必要がある。
【0008】
特に、上記被係合部14と、フックピース13の軸部19を保持するための保持部21とが、ともに金型の開閉方向に対し、互いに反対方向に突出するアンダーカット部であり、しかもこれらが、蓋体12の前端縁部近傍に、略一直線状に並んだ配置であるため、この部分を賦形するために、仮に複数の分割型や前記スライドコア3のような構造で対処しようとしても、それぞれの配置がむずかしいという問題がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、成形体の片縁部に、凹凸の方向が互いに異なる複数のアンダーカット部を有するような成形体であっても、簡単に脱型することのできる、優れた成形金型の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は、成形体の片縁部に、外側に向かって突出する凸部を有する第1のアンダーカット部と、内側に向かって突出する凸部を有する第2のアンダーカット部とが、略一直線状に並んだ状態で形成された成形体を得るための成形金型であって、上記成形体の主として上面を賦形するためのキャビティ型と、上記成形体の主として下面を賦形するためのコア型と、上記コア型の下方に配置されるベース台とを備え、上記コア型が、キャビティ型に向かって進退自在に設けられる進退型と、上記進退型をその進退方向に貫通しかつ下から上に向かって外側に傾斜する第1のガイド孔と、同じく上記進退型を進退方向に貫通しかつ下から上に向かって内側に傾斜する第2のガイド孔と、上記第1のガイド孔に挿通されその外側に傾斜した内周面に沿ってスライド自在に配置される第1の傾斜型と、上記第2のガイド孔に挿通されその内側に傾斜した内周面に沿ってスライド自在に配置される第2の傾斜型とで構成され、上記第1の傾斜型および第2の傾斜型の下端部は、上記ベース台に、その取り付け面に沿って摺動しうる状態でそれぞれ係止され、上記第1の傾斜型の上端部は、上記第1のアンダーカット部を賦形するための凹部を有し、上記第2の傾斜型の上端部は、上記第2のアンダーカット部を賦形するための凹部を有し、型締め時には、上記進退型がキャビティ型に向かって前進し、上記キャビティ型と進退型と上記第1、第2の傾斜型の上端部とが、上記第1、第2の傾斜型の各凹部が略一直線状に並んだ状態となる配置で互いに閉じ合わせられて成形体賦形空間が形成され、型開き時には、上記進退型がキャビティ型から後退するかベース台が上昇して、上記第1、第2の傾斜型が、各ガイド孔の傾斜した内周面に沿ってスライドすることにより、上記第1の傾斜型が外側に開くとともに上記第2の傾斜型が内側に開き、賦形された成形体の第1、第2のアンダーカット部が同時に型抜き可能になるよう設定されている成形金型を第1の要旨とする。
【0011】
また、本発明は、そのなかでも、特に、上記第1、第2の傾斜型のうち、少なくとも一方の傾斜型の下端部が、ベース台に対し所定角度をなす傾斜面に沿って摺動しうる状態で係止されており、型開き動作時に、上記傾斜型の傾斜姿勢が一定に保たれるようになっている成形金型を第2の要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
すなわち、本発明の成形金型は、それぞれの下端部が、ベース台に摺動自在な状態で係止され、それぞれの上端部が、互いに閉じた状態で成形体のアンダーカット部を賦形するための空間を形成するようになっている第1、第2の傾斜型を、進退型に設けられたガイド孔に挿通して、そのガイド孔の傾斜した内周面に沿ってスライド自在に配置した構成になっている。そして、上記傾斜型をスライド自在に保持する進退型が、型締め時にキャビティ型に向かって前進して閉じ合わせられた状態で、上記第1、第2の傾斜型も、上記第1、第2の傾斜型の各凹部が略一直線状に並んだ状態となる配置で閉じて、全体として成形体賦形空間が形成され、逆に、型開き時に、進退型がキャビティ型から後退するかベース台が上昇することにより、第1、第2の傾斜型が進退片のガイド孔から上方に突出し、しかも第1、第2の傾斜型がそれぞれ外側および内側に開いて、上記成形体のアンダーカット部が型抜き可能になるよう設定されている。
【0013】
したがって、この構成によれば、得ようとする成形体に対し外側方向と内側方向の2方向に傾斜した傾斜面のそれぞれに沿って、第1、第2の傾斜型が、進退型の進退動作もしくはベース台の昇降動作に伴って互いに反対方向に開閉するようになっているため、図6に示す従来品のように、傾斜型ごとに複雑な機構を設ける必要がなく、部品数の少ない簡単な構成で、効率よく、互いに反対方向に突出した2つのアンダーカット部の脱型を行うことができる。
【0014】
そして、本発明のなかでも、特に、上記一対の傾斜型のうち、少なくとも一方の傾斜型の下端部が、ベース台に対し所定角度をなす傾斜面に沿って摺動しうる状態で係止されており、型開き動作時に、上記傾斜型の傾斜姿勢が一定に保たれるようになっているものは、成形体の脱型を、よりスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態における成形体の形状を、裏側から示す斜視図である。
【図2】成形体に対する傾斜型の配置を示す模式的な説明図である。
【図3】上記実施の形態における成形金型の、側面方向からみた要部断面図である。
【図4】上記成形金型の、図3とは異なる位置において側面方向からみた要部断面図である。
【図5】上記成形金型の、正面方向からみた要部断面図である。
【図6】(a)、(b)はともに従来の成形金型の説明図である。
【図7】(a)はアンダーカット部を有する蓋体が用いられたコンパクト容器の説明図、(b)はその閉じた状態における縦断面図である。
【図8】上記蓋体の部分的な拡大斜視図である。
【図9】上記蓋体の、角度を変えた部分的な拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
つぎに、本発明を実施するための形態について説明する。ただし、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態である成形金型を用いて成形された成形体30を示している。この成形体30は、コンパクト容器の蓋体として用いられるもので、図7の蓋体12と同様、その手前側の片縁部に、容器本体との開閉機構を構成するために、容器本体11との係合に用いられる被係合部14と、フックピース13の軸部19の軸受部となる係合凹部20、軸部19を保持するための保持部21等が、左右方向に略一直線状に並んだ状態で一体成形されている(図8、図9を参照)。
【0018】
そして、すでに述べたとおり、上記被係合部14は、得ようとする成形体30の内側に向かって突出するアンダーカット部になっており、また、上記保持部21は、上記成形体30の外側に向かって突出するアンダーカット部になっている。
【0019】
上記特殊な凹凸形状を賦形するために、本発明の成形金型は、例えば図2に示すように、上記保持部21を賦形するための第1の傾斜型50a、50bと、上記被係合部14を賦形するための第2の傾斜型51とを備えた特殊な構成になっている。以下、この構成を詳細に説明する。
【0020】
図3は、上記成形金型を、前後方向に延びる断面に沿って切断し、側面方向から見た状態を示したもので、成形体30を下から見上げた図2において、そのA−A′断面図に相当する。また、図4は、上記成形金型を、図3とは異なる位置において、前後方向に延びる断面に沿って切断し、側面方向から見た状態を示したもので、図2において、そのB−B′断面図に相当する。さらに、図5は、上記成形金型を、左右方向に延びる断面に沿って切断し、正面方向から見た状態を示したもので、図2において、そのC−C′断面図に相当する。
【0021】
これらの図において、40は、上記成形体30の、主として上面を賦形するためのキャビティ型であり、41は、上記成形体30の、主として下面を賦形するためのコア型である。また、上記コア型41の下方には、2枚一組のベース台42、43が配置されており、さらにその下に、固定された基台44が配置されている。
【0022】
上記コア型41は、キャビティ型40に向かって進退自在に設けられる進退型45と、上記進退型45を進退方向に貫通しかつ下から上に向かって外側に傾斜する左右一対の第1のガイド孔46a、46bと、同じく上記進退型45を進退方向に貫通し上記第1のガイド孔46a、46bの間の中央において下から上に向かって内側に傾斜する第2のガイド孔47と、各ガイド孔46a、46b、47のそれぞれに挿通される傾斜型50a、50b、51とを有している。
【0023】
なお、上記進退型45は、コアエレメント52と、これを支受するガイドエレメント53とを組み合わせた構造になっており、ともに、耐摩耗性に優れた各種工具鋼(例えば炭素工具甲鋼、高速度鋼、合金工具鋼等)で形成されている。また、上記3個の傾斜型50a、50b、51も、これらと同様、耐摩耗性に優れた各種工具鋼で形成されている。そして、上記第1、第2のガイド孔46a、46b、47は、いずれも上記コアエレメント52に形成されており、その下のガイドエレメント53には、各ガイド孔46a、46b、47に挿通された傾斜型50a、50b、51のスライド動作をガイドする孔54a、54b、55が設けられている。また、各孔54a、54b、55の下端開口の周囲には、上記傾斜型50a、50b、51のスライド動作を円滑に受けるために、平滑性と耐摩耗性に優れた各種工具鋼で形成されたスライドガイド54a′、54b′、55′が嵌入されている。
【0024】
上記第1のガイド孔46a、46bに挿通された第1の傾斜型50a、50bは、図3に示すように、目的とする成形体30(図1、図2を参照)の、外側に向かって突出するアンダーカット部である保持部21を賦形するための型で、第1のガイド孔46a、46bの傾斜した内周面に沿って下から上に向かって外側に傾斜した姿勢になっており、その上端部に、保持部21を賦形するための凹部60が形成されている。
【0025】
そして、上記第1の傾斜型50a、50bの下端部は、2枚一組のベース台42、43のうち、下側のベース台43に取り付けられたガイドブロック61に、それぞれ摺動自在な状態で係止されている。すなわち、上記ガイドブロック61は、手前に向かって下り傾斜(傾斜角度30°)に形成された傾斜面62と、その左右両側に立設する側壁63とを有し、各側壁63には、上記傾斜面62に沿って傾斜する溝部64が形成されている。そして、図5に示すように、上記第1の傾斜型50a、50bのそれぞれ下端部に、軸65を介して左右方向に突出するガイドピン66が設けられており、このガイドピン66が、上記ガイドブロック61の左右の溝部64に係合することによって、第1の傾斜型50a、50bの下端面が、上記ガイドブロック61の傾斜面62にそれぞれ当接し、摺動自在に係止されている。
【0026】
なお、上記ガイドブロック61の、第1の傾斜型50a、50bを摺動させる面が、それぞれ手前側に向かって30°の下り傾斜になっているのは、第1の傾斜型50a、50bが、後述するように、第1のガイド孔46a、46bに沿ってスライドする際、その動作に伴って、図3において矢印Rで示すように、30°の傾斜角を維持した姿勢のまま斜め方向に摺動するよう配慮したものである。
【0027】
また、上記第2のガイド孔47に挿通された第2の傾斜型51は、図4に示すように、目的とする成形体30(図1、図2を参照)の、内側に突出するアンダーカット部(具体的には被係合部14)を賦形するための型で、正面からみると、上記第1の傾斜型50a、50bの間の中央に配置されており(図5参照)、第2のガイド孔47の傾斜方向に従って、下から上にいくほど内側に傾斜した傾斜姿勢になっている。そして、上記第2の傾斜型51の上端部に、被係合部14を賦形するための凹部70が形成されている。
【0028】
上記第2の傾斜型51の下端部は、ベース台42、43の間に設けられた摺動ブロック68に係止されており、この摺動ブロック68を介して、下側のベース台43の上面に沿って摺動自在に当接している。なお、図4において、69は、第2の傾斜型51の下端部と摺動ブロック68とを連結する軸である。
【0029】
なお、上記下側のベース台43のうち、上記摺動ブロック68に当接する部分は、耐摩耗性に優れた各種工具鋼で形成されている。
【0030】
上記成形金型を用い、例えばつぎのようにして、図1に示す成形体30を得ることができる。すなわち、まず、この成形金型を、射出成形機に取り付け、型締めすることにより、図3、図4に示すように、キャビティ型40とコア型41とを、互いに閉じ合わせる。このとき、進退型45は、最も上昇した位置に位置決めされ、第1、第2のガイド孔46a、46b、47内に挿通された第1、第2の傾斜型50a、50b、51は、各ガイド孔46a、46b、47の傾斜面によって、第1の傾斜型50a、50bは内側に、第2の傾斜型51は外側に押し付けられた状態で閉じ合わせられる。これにより、上記キャビティ型40と進退型45と傾斜型50a、50b、51とで、成形体30を賦形するための空間が形成される。
【0031】
そこで、上記成形体賦形用空間内に、所定の経路(図示せず)を経由して、樹脂材料を高圧で射出し、冷却することにより、目的とする成形体30を得ることができる。
【0032】
そして、型開きによりキャビティ型40を上方に開いて成形体30を取り出す際には、図3、図4において矢印で示すように、ベース台42、43が上昇するようになっている。この動作に伴い、進退型45の第1、第2のガイド孔46a、46b、47から、第1、第2の傾斜型50a、50b、51の上端部が上方に突出するとともに、各傾斜型50a、50b、51の側面が、上記各ガイド孔46a、46b、47の傾斜した内周面に沿ってスライドし、第1の傾斜型50a、50bは、図3において矢印Rで示すように、外側に向かって30°斜め下方向に開き、第2の傾斜型51は、図4において矢印Sで示すように、内側に向かって横方向に開くように移動する。これにより、互いに逆方向に突出する2つのアンダーカット部(図9に示す保持部21と、図8に示す被係合部)が、型抜き可能な状態になり、成形体30を、成形金型から取り出すことができる。
【0033】
なお、すでに述べたように、上記第1の傾斜型50a、50bが移動する際、傾斜型50a、50bは、その下端部が、ガイドブロック61の傾斜面62に沿って摺動するため、外側に30°傾斜した姿勢を保った状態のまま開くようになっている。このため、アンダーカット部の型抜きを、30°斜め下方向に、安定した状態でスムーズに行うことができる。
【0034】
ちなみに、30°斜め下方向への型抜きを考慮して、図9に示すように、成形体30の保持部21に対峙する縁端部22が、31°の傾斜面になっている。
【0035】
このように、上記成形金型によれば、互いに閉じた状態で成形体30のアンダーカット部を賦形するための空間を形成する第1、第2の傾斜型50a、50b、51を、進退型45に形成された第1、第2のガイド孔46a、46b、47の傾斜面に沿ってスライド自在に配置し、型締め時には、上記進退型45が、キャビティ型40に向かって前進して閉じ合わせられた状態で、上記第1、第2の傾斜型50a、50b、51も互いに閉じて、全体として成形体賦形空間が形成され、逆に、型開き時には、成形体30の上方が開放された状態で、ベース台42、43が上昇することにより、上記第1、第2の傾斜型50a、50b、51が進退型45の各ガイド孔46a、46b、47から上方に突出するとともに、第1の傾斜型50a、50bが外側に開き、第2の傾斜型51が内側に開いて、上記成形体30の、互いに反対方向に突出する2つのアンダーカット部が同時に型抜きできるようになっている。
【0036】
そして、上記構成によれば、外側に傾斜した第1の傾斜型50a、50bと、内側に傾斜した第2の傾斜型51とが、それぞれの賦形部を略一直線状に並べた状態で閉じ合わせられ、ベース台42、43の昇降動作に伴って互いに反対方向に開くようになっているため、部品数の少ない簡単な構成で効率よく、略一直線状に並んだ、互いに反対方向に突出する2つのアンダーカット部の脱型を行うことができる。
【0037】
しかも、上記の構成によれば、成形体30の片縁部ぎりぎりの配置で、略一直線状に並ぶ2つのアンダーカット部を賦形することができるため、例えば図7に示すような、フックピース13がその前端縁部に取り付けられた開閉機構を有する蓋体12を提供することができる。そして、上記蓋体12を用いることにより、すでに述べたように、小型で操作性に優れたコンパクト容器を実現することができる。
【0038】
なお、本発明の成形金型において、アンダーカット部を賦形するための第1、第2の傾斜型50a、50b、51への開閉動作は、進退型45側に設けられた第1、第2のガイド孔46a、46b、47の傾斜面を利用するものであれば、どのような構成になっていても差し支えない。
【0039】
また、上記の例では、第1、第2の傾斜型50a、50b、51に開閉動作を与えるために、型開き時に、ベース台42、43を上昇させて、上記傾斜型50a等を進退型45の上方に突出させたが、これに代えて、進退型45をキャビティ型40側から後退させ(すなわち下降させ)ることによって、傾斜型50a等を開くようにしても差し支えない。
【0040】
さらに、本発明の成形金型は、上記の例のように、上下方向に型締め型開きを行うタイプに限らず、左右方向に型締め型開きを行うタイプのものであってもよい。その場合、進退型45およびベース台42、43は左右方向に進退するよう設定され、傾斜型50a等は、左右方向に延びる形状となるだけであり、その基本的な構成と効果に差異はない。
【0041】
そして、アンダーカット部の形状によっては、上記の例のように、傾斜型50a等の少なくとも一つを、傾斜姿勢を保ったまま斜め方向にスライドさせながら後方に開くことが、型抜きする上で好適となる場合があり、その場合は、上記の例のように、傾斜型50a等の下端部を、所定角度の傾斜面に沿って摺動させることが好ましい。しかし、その必要がない場合には、傾斜型50a等の下端部は、ベース台42側において水平に摺動させるよう係止すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、互いに異なる方向に突出する2つのアンダーカット部が、その片縁部に略一直線状に並んだ形状の成形体を得るための成形金型に利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
40 キャビティ型
41 コア型
42、43 ベース台
45 進退型
46a、46b、47 ガイド孔
50a、50b、51 傾斜型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形体の片縁部に、外側に向かって突出する凸部を有する第1のアンダーカット部と、内側に向かって突出する凸部を有する第2のアンダーカット部とが、略一直線状に並んだ状態で形成された成形体を得るための成形金型であって、上記成形体の主として上面を賦形するためのキャビティ型と、上記成形体の主として下面を賦形するためのコア型と、上記コア型の下方に配置されるベース台とを備え、上記コア型が、キャビティ型に向かって進退自在に設けられる進退型と、上記進退型をその進退方向に貫通しかつ下から上に向かって外側に傾斜する第1のガイド孔と、同じく上記進退型を進退方向に貫通しかつ下から上に向かって内側に傾斜する第2のガイド孔と、上記第1のガイド孔に挿通されその外側に傾斜した内周面に沿ってスライド自在に配置される第1の傾斜型と、上記第2のガイド孔に挿通されその内側に傾斜した内周面に沿ってスライド自在に配置される第2の傾斜型とで構成され、上記第1の傾斜型および第2の傾斜型の下端部は、上記ベース台に、その取り付け面に沿って摺動しうる状態でそれぞれ係止され、上記第1の傾斜型の上端部は、上記第1のアンダーカット部を賦形するための凹部を有し、上記第2の傾斜型の上端部は、上記第2のアンダーカット部を賦形するための凹部を有し、型締め時には、上記進退型がキャビティ型に向かって前進し、上記キャビティ型と進退型と上記第1、第2の傾斜型の上端部とが、上記第1、第2の傾斜型の各凹部が略一直線状に並んだ状態となる配置で互いに閉じ合わせられて成形体賦形空間が形成され、型開き時には、上記進退型がキャビティ型から後退するかベース台が上昇して、上記第1、第2の傾斜型が、各ガイド孔の傾斜した内周面に沿ってスライドすることにより、上記第1の傾斜型が外側に開くとともに上記第2の傾斜型が内側に開き、賦形された成形体の第1、第2のアンダーカット部が同時に型抜き可能になるよう設定されていることを特徴とする成形金型。
【請求項2】
上記第1、第2の傾斜型のうち、少なくとも一方の傾斜型の下端部が、ベース台に対し所定角度をなす傾斜面に沿って摺動しうる状態で係止されており、型開き動作時に、上記傾斜型の傾斜姿勢が一定に保たれるようになっている請求項1記載の成形金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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