説明

成膜用マスク及びマスク密着方法

【課題】基板と良好に密着して成膜パターン精度の良い成膜を可能とした極めて実用性に秀れた成膜用マスク及びマスク密着方法の提供。
【解決手段】成膜材料の通過を許容する開口パターンを有するマスク本体1と、このマスク本体1を保持する保持フレーム2とから成り、前記開口パターンを介して前記成膜材料が付着せしめられる基板6が積層される成膜用マスクであって、前記保持フレーム2は、前記マスク本体1の4辺のうち対向する一対の辺部3に沿って夫々配設されこの一対の辺部3を夫々保持する一対の保持部4を備え、この一対の保持部4によってのみ前記マスク本体1を保持するように構成し、前記一対の保持部4によって保持される前記一対の辺部3間で前記マスク本体1が自重によって撓み且つこの一対の辺部3の対向方向で前記撓み量が変化するようにこの一対の辺部3を前記一対の保持部4に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成膜用マスク及びマスク密着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば特許文献1に開示されるように、成膜材料の通過を許容する開口パターンを有するマスク本体と、このマスク本体が保持される保持フレームとから成る成膜用マスクとして、図1に図示したような、マスク本体21の4辺を枠状フレーム22で囲み、この枠状フレーム22により4辺からテンションをかけずに若しくは極弱いテンションをかけながらマスク本体21を保持する所謂4辺固定ソフトテンションマスクが提案されている。
【0003】
この4辺固定ソフトテンションマスクは、温度変化が小さく且つ軽量であるという利点を有しており、温度変化が小さいため蒸着装置による蒸着中にパターンずれが起こり難く、また、軽いため搬送系のコストを抑えることが可能である。
【0004】
【特許文献1】特開2007−138256号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような4辺固定ソフトテンションマスクは、基板との密着性が悪く、例えば蒸着等で成膜を行う際、マスク本体の開口パターン通りに成膜を行えず、基板上の成膜パターンがボケてしまうという問題点がある。
【0006】
また、例えば図2に図示したように、短冊状のマスク本体31が撓まないように2辺からテンション(張力)をかけた状態で保持フレーム32に保持する構成も提案されているが、このような構成では、図3に図示したようにテンションによりマスク本体31の中央部33が歪み、やはり基板との密着性が悪く、成膜を良好に行い難い。
【0007】
本発明は、上述のような問題点を解決したものであり、マスク本体の対向する2辺のみをマスク本体が自重によって撓み可能な状態で保持フレームの保持部に固定することで、マスク本体の撓みのムラを解消して基板と良好に密着可能となり、温度変化が小さく且つ軽量であるという利点をそのままに、基板と良好に密着して成膜パターン精度の良い成膜を可能とした極めて実用性に秀れた成膜用マスク及びマスク密着方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
成膜材料の通過を許容する開口パターンを有するマスク本体1と、このマスク本体1を保持する保持フレーム2とから成り、前記開口パターンを介して前記成膜材料が付着せしめられる基板6が積層される成膜用マスクであって、前記保持フレーム2は、前記マスク本体1の4辺のうち対向する一対の辺部3に沿って夫々配設されこの一対の辺部3を夫々保持する一対の保持部4を備え、この一対の保持部4によってのみ前記マスク本体1を保持するように構成し、前記一対の保持部4によって保持される前記一対の辺部3間で前記マスク本体1が自重によって撓み且つこの一対の辺部3の対向方向で前記撓み量が変化するようにこの一対の辺部3を前記一対の保持部4に固定したことを特徴とする成膜用マスクに係るものである。
【0010】
また、前記マスク本体1の前記一対の辺部3を、このマスク本体1が自重によって自然に撓んだ状態で前記一対の保持部4に夫々固定したことを特徴とする請求項1記載の成膜用マスクに係るものである。
【0011】
また、前記一対の保持部4を、この保持部4によって保持される前記一対の辺部3に沿って長さを有する長尺部材として、この一対の辺部3を前記一対の保持部4に夫々一様に固定し得るように構成したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の成膜用マスクに係るものである。
【0012】
また、前記マスク本体1にして前記基板6表面と対向する裏面とは反対側の表面側に、前記マスク本体1の撓みを補正する撓み補正体を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の成膜用マスクに係るものである。
【0013】
また、前記撓み補正体は、棒体7であり、この棒体7を前記保持部4に固定される一対の辺部3と略平行に設けたことを特徴とする請求項4記載の成膜用マスクに係るものである。
【0014】
また、前記撓み補正体は、前記マスク本体1にして撓みの最下点部位置に設けたことを特徴とする請求項4,5のいずれか1項に記載の成膜用マスクに係るものである。
【0015】
また、請求項1〜6のいずれか1項に記載の成膜用マスクを基板に密着させるマスク密着方法であって、前記成膜用マスク5上に基板6を積層し、この基板6上にシート状の重り部材8を積層して、この重り部材8により基板6を強制的に撓ませて前記成膜用マスク5を基板表面に密着せしめることを特徴とするマスク密着方法に係るものである。
【0016】
また、前記重り部材8としてタングステンシートを採用したことを特徴とする請求項7記載のマスク密着方法に係るものである。
【0017】
また、前記基板6として、ガラス、プラスチック若しくは金属製のものを採用したことを特徴とする請求項7,8のいずれか1項に記載のマスク密着方法に係るものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上述のように構成したから、マスク本体の撓みのムラを解消して基板と良好に密着可能となり、温度変化が小さく且つ軽量であるという利点をそのままに、基板と良好に密着して成膜パターン精度の良い成膜を可能とした極めて実用性に秀れた成膜用マスク及びマスク密着方法となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0020】
一対の辺部3が夫々一対の保持部4に固定されて、保持フレーム2に保持されるマスク本体1は自重により撓んでいるため、例えば成膜を行うために基板6(及びマグネット等)を積層せしめるとこの基板6とマスク本体1との撓みが追従して両者が良好に密着する。
【0021】
例えば4辺固定ソフトテンションマスクは、テンションがかかっていない(若しくは非常に小さい)ため、一見、基板の撓みに追従して撓み湾曲し良好に密着するように思えるが、4辺を固定することで縦方向及び横方向の2方向で撓み量が変化することになり、双方の撓みが干渉してマスク本体の撓みにムラができ、マスク本体が歪んでしまい、また、この歪みが複雑であるため、良好な密着性が得られない。
【0022】
この点、本発明は、対向する一対の辺部3(2辺)を一対の保持部4に固定する構成であり、マスク本体1は、この一対の辺部3間でマスク本体1が自重によって撓み且つこの一対の辺部3の対向方向(1方向)で前記撓み量が変化するだけで、撓みが干渉しないためムラができ難く、従って、マスク本体1の歪みが単純で且つ小さくなり、良好に基板6の撓みに追従して良好に密着することが可能となる。
【0023】
即ち、より自然な撓みが実現できるため、基板6が大型化し撓みが大きくなってもマスク本体1は柔軟に基板6の撓みに追従して密着することが可能となる。従って、基板6等と積層せしめて成膜を行う際、基板6と良好に密着することで基板6上の成膜パターンがボケずに開口パターンの通りに成膜を行うことが可能となる。
【0024】
また、マスク本体1が撓まないようにある程度のテンションを維持する場合に比し保持部4に必要な強度を小さくでき、それだけ保持フレーム2を薄く軽量とすることができる。従って、搬送等が容易となり、それだけ作業性が向上する。
【0025】
特に、マスク本体1の歪みによる密着性の低下や保持フレーム2の肉厚化や重量化は、マスク(基板)の大型化に従い顕著となるが、本発明によれば大型のマスクであっても肉薄・軽量で且つ基板と良好に密着可能となる。
【0026】
また、例えば、マスク本体1にして基板6表面に対向する裏面とは反対側の表面側に、保持部4に固定される一対の辺部3と略平行な棒体7を設けて、マスク本体1の撓みを補正した場合には、マスク本体1を一様に撓ませてマスク本体1の開口パターンが形成された領域とそれ以外の領域との撓み量の差を解消することが可能となり、より一層基板6との密着性が向上する。特に、棒体7をマスク本体1にして撓みの最下点部位置に設けると良好に撓み量の差を解消できる。
【0027】
以上のような成膜用マスク5は、例えば成膜用マスク5上に基板6を積層し、この基板6上にシート状の重り部材8を積層して、この重り部材8により基板6を強制的に撓ませることで良好に基板表面に密着せしめることができる。この際、重り部材8として柔軟性を有し且つ重量であるタングステンシートを採用すると、一層基板6を良好に撓ませてマスク本体と密着させることが可能となる。
【実施例】
【0028】
本発明の具体的な実施例について図4〜7に基づいて説明する。
【0029】
本実施例は、図4,5に図示したように、成膜材料の通過を許容する開口パターンを有するマスク本体1と、このマスク本体1を保持する保持フレーム2とから成り、前記開口パターンを介して前記成膜材料が付着せしめられる基板6が積層される成膜用マスクであって、前記保持フレーム2は、前記マスク本体1の4辺のうち対向する一対の辺部3に沿って夫々配設されこの一対の辺部3を夫々保持する一対の保持部4を備え、この一対の保持部4によってのみ前記マスク本体1を保持するように構成し、前記一対の保持部4によって保持される前記一対の辺部3間で前記マスク本体1が自重によって撓み且つこの一対の辺部3の対向方向で前記撓み量が変化するようにこの一対の辺部3を前記一対の保持部4に固定したものである。
【0030】
各部を具体的に説明する。
【0031】
マスク本体1は、インバー材などの金属材料を素材とする一般的な方形状のメタルマスクである。このマスク本体1は、開口パターン(図示省略)と開口パターン以外のフレーム部分(図示省略)とで形成され成膜装置内の成膜材料の通過領域に配設される成膜領域と、この成膜領域の外側(外周)に設けられる非成膜領域とを有している。
【0032】
具体的には、成膜領域の左右に夫々非成膜領域となる耳部9が設けられ、この耳部9が保持フレーム2の保持部4に固定される。尚、耳部9は、マスク本体1の成膜領域の長辺側・短辺側のいずれの側に連設しても良い。
【0033】
保持フレーム2はインバー材などの金属材料から成る枠体である。本実施例においては、この枠体の対向する一対の対向辺部10を保持部4に設定している。また、保持部以外の他の一対の対向辺部11は、マスク本体1の(保持部4により保持されない)他の一対の辺部12と接触しないように配設される。この対向辺部10と対向辺部11とは角部を介して連設されている。
【0034】
この保持フレーム2は、マスク本体1の成膜領域にかからないように開口部が少なくともマスク本体1の成膜領域より大きくなるようにし、保持部4となる一対の対向辺部10にマスク本体1の耳部9が固定されるように構成している。
【0035】
本実施例においては、マスク本体1の一対の辺部3を、このマスク本体1に張力をかけずに且つマスク本体1が自重によって自然に撓むように保持フレーム2の一対の保持部4に固定している。
【0036】
具体的には、マスク本体1が保持部4に未だ固定されておらず略平行な状態における自然最大撓み量Bを基準に、マスク本体1を略平行に支持した状態で左右の耳部9の一側を一方の保持部4に固定し、他側の固定位置が一側の固定位置に近過ぎて強制的に凹湾曲せず且つ遠過ぎて引っ張られないように(中央部が歪まないように)、この他側の固定位置を適宜設定調整して他の保持部4に固定する。
【0037】
このマスク本体1の一対の辺部3(耳部9)と保持部4(対向辺部10)とは、接着剤により強固に接着している。
【0038】
具体的には、枠体の一対の対向辺部10は、マスク本体1の耳部9の全長にわたって接触し、このマスク本体1の耳部9の下面と枠体の対向辺部10の上面とを長さ方向の略全域にわたって略一様に接着剤により固定している。
【0039】
尚、耳部9の下面と対向辺部10の上面とは、全面接着しても良いし、一部のみを接着しても良い。また、本実施例においては、耳部9と保持部4とは長さ方向の略全域に渡って略一様に接着しているが、所定間隔をおいて接着しても良い(多数の接着部分を間隔をおいて設けても良い。)。また、接着剤による接着に限らず、溶接等の他の方法によりマスク本体1の辺部3を保持部4に固定しても良い。
【0040】
また、マスク本体1に張力(引張力及び押圧力)が作用しないように、即ちテンションがかからない状態で、前記一対の辺部3を保持部4に固定しているため、マスク本体1は、前記一対の辺部3(耳部9)間で自重によって自然に湾曲円弧状に撓むことになり、一対の辺部3の対向方向で撓み量が変化する。従って、本実施例においては一対の辺部3から夫々等距離の位置が撓み最下点位置となり最も撓み量が大きくなる。
【0041】
尚、撓み量Bは図面では説明のため誇張して描いているが、実際は非常に小さく、厚さ数mmのマスク本体1に対して通常数十〜数百μm程度である。また、保持フレーム2の厚さも撓み量Bに準じて誇張して描いているが、実際は数mm程度である。
【0042】
また、本実施例においては、マスク本体1にして前記基板表面に密着する裏面とは反対側の表面側に、前記保持部4に固定される一対の辺部3と略平行な棒体7を設けて、前記マスク本体1の撓みを補正している。
【0043】
具体的には、前記棒体7は、保持フレーム2同様インバー材等の金属材料製であり、前記マスク本体1にして撓みの最下点部位置(撓み量が最大となる位置)に1本設けている。
【0044】
これは、マスク本体1のうち、このマスク本体1の耳部9と平行な方向において、マスク本体1の撓みにムラができてしまうため、自然な撓みを阻害しない範囲である程度の重量物により撓み量が小さい部分を引き伸ばして撓みのムラを補正するためである。この棒体7により、マスク本体1と基板表面との密着性は一層良好となる。即ち、本実施例は、一対の辺部3の対向方向でのみ撓み量が変化し、平行方向では撓み量が変化しないように構成している。
【0045】
尚、本実施例においては、マスク本体1の撓み最下点部位置に1本の棒体7を配設しているが、最下点部に限らず、他の部位に配設しても良いし、複数本配設しても良い。また、棒体7によりマスク本体1の撓み形状を湾曲円弧形状でなく波状等の他の形状に変形させても良い。また、棒体7は、前記保持部4に固定される一対の辺部3の対向方向に設けても良い。さらに、上記実施例においては、撓み補正体の具体例として棒体7を挙げたが、これに限らず、板状やメッシュ状であっても良い。ただし、成膜を阻害しないため、少なくとも開口パターンを塞がないようにフレーム部分に設ける必要がある。
【0046】
また、本実施例においては、テンションをかけずにマスク本体1を保持部4に固定しているが、わずかにテンションをかけて固定しても良い(所謂ソフトテンションマスクとしても良い。)。
【0047】
本実施例に係る成膜用マスク5は、例えば、成膜装置のマスクホルダ13上に設置して、この成膜用マスク5上にガラス基板6を積層し、このガラス基板6上に柔軟性を有するシート状の重り部材8を積層して、この重り部材8によりガラス基板6を強制的に撓ませて前記成膜用マスク5を基板表面に密着せしめ、更に、マスク本体1を基板側に磁気的に吸引引き寄せ可能なマグネット14を積層してこのマグネット14により更に成膜用マスク5とガラス基板6とを密着せしめ(図6参照)、下方から蒸着、CVD若しくはスパッタ等の成膜手段により成膜材料を飛ばしてガラス基板6上に成膜を行うために用いる。
【0048】
重り部材8としては、柔軟性を有し且つある程度重量のある部材が好ましい。具体的には、タングステンとエラストマーとから成るタングステンシートが好適である。タングステンシートを用いた場合、このタングステンシートにより基板6がこのタングステンシートの湾曲に伴い湾曲せしめられ、マスク本体1に押し付けられてこのマスク本体1と良好に密着する(図7(b)参照)。
【0049】
この点、例えばアルミニウムやガラス等の固い物質を重り部材8’としても、図7(a)に図示したように良好に撓まずに基板6’を撓ませることができず、基板6’と成膜用マスク5’との密着性が不良となる。尚、重り部材8としてタングステンシートに限らず、フッ素ゴムやシリコンシートを用いることも可能である。
【0050】
また、マグネット14としてはラバーマグネットを用いると、成膜用マスク5、基板6、重り部材8、マグネット14が夫々良好に撓んで密着することになり、好適である。
【0051】
また、基板6としては、ガラス基板6に限らず、プラスチック若しくは金属(箔)等の他の基板であっても同様に良好に成膜できる。
【0052】
本実施例は上述のように構成したから、一対の辺部3が夫々一対の保持部4に固定されて、保持フレーム2に保持されるマスク本体1は自重により撓んでいるため、例えば成膜を行うために基板6(及びマグネット等)を積層せしめるとこの基板6とマスク本体1との撓みが追従して両者が良好に密着する。
【0053】
例えば4辺固定ソフトテンションマスクは、テンションがかかっていない(若しくは非常に小さい)ため、一見、基板の撓みに追従して撓み湾曲し良好に密着するように思えるが、4辺を固定することで縦方向及び横方向の2方向で撓み量が変化することになり、双方の撓みが干渉してマスク本体の撓みにムラができ、マスク本体が歪んでしまい、また、この歪みが複雑であるため、良好な密着性が得られない。
【0054】
この点、本実施例は、対向する一対の辺部3(2辺)を一対の保持部4に固定する構成であり、マスク本体1は、この一対の辺部3間でマスク本体1が自重によって円弧状に撓み且つこの一対の辺部3の対向方向(1方向)で前記撓み量が変化するだけで、撓みが干渉しないためムラができ難く、従って、マスク本体1の歪みが単純で且つ小さくなり、良好に基板6の撓みに追従して良好に密着することが可能となる。
【0055】
即ち、より自然な撓みが実現できるため、基板6が大型化し撓みが大きくなってもマスク本体1は柔軟に基板6の撓みに追従して密着することが可能となる。従って、基板6等と積層せしめて成膜を行う際、基板6と良好に密着することで基板6上の成膜パターンがボケずに開口パターンの通りに成膜を行うことが可能となる。
【0056】
また、マスク本体1が撓まないようにある程度のテンションを維持する場合に比し保持部4に必要な強度を小さくでき、それだけ保持フレーム2を薄く軽量とすることができる。従って、搬送等が容易となり、それだけ作業性が向上する。
【0057】
特に、マスク本体1の歪みによる密着性の低下や保持フレーム2の肉厚化や重量化は、マスク(基板)の大型化に従い顕著となるが、本実施例によれば大型のマスクであっても肉薄・軽量で且つ基板と良好に密着可能となる。
【0058】
また、マスク本体1にして基板表面に密着する裏面とは反対側の表面側に、保持部4に固定される一対の辺部3と略平行な棒体7を設けて、マスク本体1の撓みを補正したから、マスク本体1を一様に撓ませてマスク本体1の開口パターンが形成された領域とそれ以外の領域との撓み量の差を解消することが可能となり、より一層基板6との密着性が向上する。特に、棒体7をマスク本体1にして撓みの最下点部位置に設けたから、一層良好に撓み量の差を解消できる。
【0059】
よって、本実施例は、マスク本体の撓みのムラを解消して基板と良好に密着可能となり、温度変化が小さく且つ軽量であるという利点をそのままに、基板と良好に密着して基板上の蒸着パターンがボケずに開口パターン通りに良好に成膜可能とした極めて実用性に秀れたものとなる。
【0060】
本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】従来例の概略説明図である。
【図2】従来例の概略説明図である。
【図3】図2の要部の拡大概略説明断面図である。
【図4】本実施例のマスク本体の概略説明斜視図である。
【図5】本実施例の概略説明斜視図である。
【図6】本実施例の使用状態を示す概略説明断面図である。
【図7】重り部材の相違による積層状態の相違を説明する概略説明断面図である。
【符号の説明】
【0062】
1 マスク本体
2 保持フレーム
3 (一対の)辺部
4 保持部
5 成膜用マスク
6 基板
7 棒体
8 重り部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜材料の通過を許容する開口パターンを有するマスク本体と、このマスク本体を保持する保持フレームとから成り、前記開口パターンを介して前記成膜材料が付着せしめられる基板が積層される成膜用マスクであって、前記保持フレームは、前記マスク本体の4辺のうち対向する一対の辺部に沿って夫々配設されこの一対の辺部を夫々保持する一対の保持部を備え、この一対の保持部によってのみ前記マスク本体を保持するように構成し、前記一対の保持部によって保持される前記一対の辺部間で前記マスク本体が自重によって撓み且つこの一対の辺部の対向方向で前記撓み量が変化するようにこの一対の辺部を前記一対の保持部に固定したことを特徴とする成膜用マスク。
【請求項2】
前記マスク本体の前記一対の辺部を、このマスク本体が自重によって自然に撓んだ状態で前記一対の保持部に夫々固定したことを特徴とする請求項1記載の成膜用マスク。
【請求項3】
前記一対の保持部を、この保持部によって保持される前記一対の辺部に沿って長さを有する長尺部材として、この一対の辺部を前記一対の保持部に夫々一様に固定し得るように構成したことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の成膜用マスク。
【請求項4】
前記マスク本体にして前記基板表面と対向する裏面とは反対側の表面側に、前記マスク本体の撓みを補正する撓み補正体を設けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の成膜用マスク。
【請求項5】
前記撓み補正体は、棒体であり、この棒体を前記保持部に固定される一対の辺部と略平行に設けたことを特徴とする請求項4記載の成膜用マスク。
【請求項6】
前記撓み補正体は、前記マスク本体にして撓みの最下点部位置に設けたことを特徴とする請求項4,5のいずれか1項に記載の成膜用マスク。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の成膜用マスクを基板に密着させるマスク密着方法であって、前記成膜用マスク上に基板を積層し、この基板上にシート状の重り部材を積層して、この重り部材により基板を強制的に撓ませて前記成膜用マスクを基板表面に密着せしめることを特徴とするマスク密着方法。
【請求項8】
前記重り部材としてタングステンシートを採用したことを特徴とする請求項7記載のマスク密着方法。
【請求項9】
前記基板として、ガラス、プラスチック若しくは金属製のものを採用したことを特徴とする請求項7,8のいずれか1項に記載のマスク密着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−144195(P2009−144195A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−322422(P2007−322422)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(591065413)トッキ株式会社 (57)
【出願人】(000164461)九州日立マクセル株式会社 (338)
【Fターム(参考)】