説明

成膜装置

【課題】紙やプラスチックを原料とした板紙やプラスチックシート、あるいは紙容器、またはプラスチックボトルの2次平面、あるいは3次曲面の表面プラズマCVD法で成膜する成膜装置に関する。詳しくは、圧力が100Paから0.5Paの領域で成膜する成膜装置に関する。
【解決手段】
1つの筐体からなるサブチャンバーに複数のメインチャンバーが整列し、その内部に収納されたプラスチック容器の内面に全数同時にプラズマCVD法で薄膜を形成する装置であって、メインチャンバーあるいはサブチャンバーに組み込んで容器から流れ出る生成ガスの排出速度を調整する部材が具備されていることを特徴とする成膜装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙やプラスチックを原料とした板紙やプラスチックシート、あるいは紙容器、またはプラスチックボトルの2次平面、あるいは3次曲面の表面プラズマCVD法で成膜する成膜装置に関する。詳しくは、圧力が100Paから0.5Paの領域で成膜する成膜装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紙、プラスチック、ガラス、金属等の2次平面シートあるいは容器等に代表される3次元中空容器は食品や医薬品など様々分野で一般的に利用されている。特にプラスチック容器に関しては、軽量、低コストといったメリットを生かし広く用いられるようになってきている。
【0003】
また、3次元中空容器には様々な機能が要求されている。そして、プラスチック容器に対しては内容物保護の面から炭酸ガスや酸素に対するバリア性を持たせる要求がなされている。
【0004】
前記炭酸ガスや酸素に対するバリア性を持たせる目的で、酸化珪素皮膜やダイヤモンドの結晶構造に近い炭素皮膜を容器の内外面に形成することが知られている。
【0005】
そして、容器の酸化珪素皮膜や炭素皮膜が形成された容器は、例えば、単層のポリエステルの場合に、酸素透過度が1/10あるいは1/20にまで低下する。
【0006】
その結果、内容物の酸化の進み方が緩慢になり、商品寿命が延び、品質の向上を図ることが可能となった。
【0007】
そして、従来、EVOHやポリアミドといった高価なバリア性樹脂を用いて、多層容器を必要としていた領域にも単層成形の容器が進出することが可能となった。
【0008】
前記酸化珪素被膜を形成する場合、原料ガスとして、ヘキサメチルジシロキサンのようなオルガノシロキサンと、反応ガスとして酸素を使うことが良く知られている。
【0009】
また、ガスバリア性を高める膜を形成する場合、二酸化珪素の結晶構造が最もよいバリア性が得られることも知られている。そして、プラズマCVDでは、SiO2の堆積物としてバリア膜を形成する。
【0010】
また、バリア膜を形成する製造装置も多く提案されている。そして、複数のプラスチック容器の内面に、同時にダイアモンドライクカーボン(DLC)膜を成膜する製造装置も知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0011】
この、製造装置は図3に示すように、複数のプラスチック容器101〜104を並列かつ独立に配置可能な収容空間を有する柱状外部電極と、収納された容器の内部にそれぞれ配置された内部電極105〜109と、前記柱状外部電極に接続された高周波負荷のインピーダンス整合を行う、マッチングボックスと、該マッチングボックスに接続された高周波電源110と、を具備している。
【0012】
通常、プラスチック容器を収納する各々の外部電極に対してマッチングボックスを設置すると、マッチングボックスによるマッチング時間が互いに微妙に異なる。このため、マ
ッチング時間を互いに正確に一致させることが困難であるが、上記発明はこの問題が解決されると記載されている。
【0013】
以下に先行技術文献を示す。
【特許文献1】WO2002/051707
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記、プラズマ装置を用いて薄膜を成膜する場合、成膜されたプラスチック容器のガスバリア性等がバラっくという問題が考えられる。そして、装置が複雑であり、且つ、高価で生産コストが上昇するという問題がある。
【0015】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決しようとするものであり、薄膜のバラツキを解消し、ガスバリア性の優れたプラスチック容器を作製することができる成膜装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記の課題を解決するために成されたものであり、本発明の請求項1に係る発明は、1つの筐体からなるサブチャンバーに複数のメインチャンバーが整列し、その内部に収納されたプラスチック容器の内面に全数同時にプラズマCVD法で薄膜を形成する装置であって、メインチャンバーあるいはサブチャンバーに組み込んで容器から流れ出る生成ガスの排出速度を調整する部材が具備されていることを特徴とする成膜装置である。
【0017】
本発明の請求項2に係る発明は、前記生成ガスの排出速度を調整する部材の調整手段がメインチャンバーの外側に形成されていることを特徴とする請求項1記載の成膜装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る成膜装置は複数のプラスチック容器を同時にプラズマCDV法により成膜することができる。そして、原料ガスや高周波電力の分配バランスが起因するガスバリア性のバラツキも解消できる。
【0019】
また、プラスチック容器内部に満たされた原料ガスの流出速度をメインチャンバーごとに調整することができる。そして、メインチャンバー間のガスバリア性のバラツキを少なくすることができる。
【0020】
また、成膜に関わる装置あるいは部分、例えば、整合器、真空装置、ガス供給部または各装置、プラズマ電源等を共有することが出来る。このため、該装置はコンパクトで安価に作製することができる。そして、生産コストも低下できる。
【0021】
また、排気条件を個々に調整することにより、メインチャンバーごとの最適条件が把握しやすい。さらに、メインチャンバー間の加工条件等のバラツキが減少される。そして、排気条件の調整は自動、あるいは、手動でも容易にできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に本発明の実施例について具体的に説明する。図1は本発明の成膜装置の一実施例の概略を示す概略図である。
【0023】
図1に示すように本発明の成膜装置は複数のメインチャンバー3とサブチャンバー4等から構成されている。そして、サブチャンバー4の上側面に複数のメインチャンバー3が
載置されている。
【0024】
また、メインチャンバー3内にはメインチャンバー3ごとの最適条件を維持するための簡易式排気流量制御弁1、内部電極あるいは図には示していないがガス導入管、内部電極、容器口元位置固定部等が当然ながら設けられている。そして、成膜するプラスチック容器2の内側中央に内部電極が形成される。
【0025】
また、サブチャンバー4の下側面は真空装置と連結するフランジ7等が形成されている。そして、サブチャンバー4内及びメインチャンバー3内の空気が置換される。
【0026】
また、前記真空装置には、ロータリーポンプ、ブースターポンプ、ターボ分子ポンプ等を用いることが出来る。
【0027】
次に、本発明の成膜装置はプラズマCVD法で酸化珪素薄膜をコーティングする。そして、その際、原料ガスとして、ヘキサ・メチル・ジ・シロキサン(以下HMDSOと称する)、トリ・メチル・シロキサン等を用いて、酸化珪素薄膜等の成膜が成される。
【0028】
また、反応ガスとしては、酸素の他、オゾン、二酸化炭素などを用いることが可能である。
【0029】
また、プラスチック容器から流れでる生成ガスの排出速度を調整する部材は、金属であれば電極部材としっかり絶縁する必要がある。また、耐熱性も必要であるため、樹脂を使用する場合は、熱変形温度の高いものが望ましい。
【0030】
さらに、容器とメインチャンバー3とに囲まれた空間の排気に影響しないように、弁の大きさは容器口元径を超えないことが望ましい。
【0031】
また、本発明の成膜装置で成膜されるプラスチック容器2の樹脂構成は、ポリエステルまたはポリエチレン、ポリプロピレン、あるいはポリスチレン等の単層か、または成膜面がこれらの樹脂で成形されている多層容器である。
【0032】
次に、図2は本発明の成膜装置の他の一実施例の概略を示す概略図である。図2に示すように排気速度を制御する簡易式排気流量制御弁に替わって手動式の外部稼動式排気流量弁5が設けられている。
【0033】
そして、排気速度の制御は、図には示していないがメインチャンバー3内のセンサーと制御盤からの信号により、チャンバーの外側に形成されている調整ハンドルにより、容易に、且つ、手動で、適宜外部稼動式排気流量弁5が調整される。
【実施例】
【0034】
以下に、本発明の具体的実施例を挙げて、さらに詳しく説明するが、それに限定されるものではない。
【0035】
<実施例1>
図2に示すような成膜装置のメインチャンバーが8本形成され、同時に8本の成膜が可能なプラズマCVD成膜装置を使って、500mlのPET容器内面にガスバリア性を高めるための酸化珪素皮膜を生成した。そして、プラズマ発生装置は高周波電源を使い、ヘキサ・メチル・ジ・シロキサン(HMDSO)と酸素をそれぞれ1台のマスフローコントローラで計量した後、各メインチャンバーに分配した。また、真空装置は、ロータリーポンプ、ブースターポンプ、ターボ分子ポンプを各1台ずつ接続して、HMDSOが40s
ccm、酸素が800sccm流した。この条件で各メインチャンバーの容器圧力を計測して、ほぼ均等となるよう外部から調整ハンドルで外部稼動式排気流量弁5の開度を調整した。次にガス流量を変化させながら、合計2000Wの高周波電力で成膜した。
【0036】
<比較例1>
実施例1のうち、外部稼動式排気流量弁5を取り除いて同様の条件で成膜した。
【0037】
<評価>
実施例1、比較例1で成膜した各々8本の500mlのPET容器を酸素透過度計測器で酸素バリア値の測定を行なった。その結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

表1は酸素バリア値の結果をきす。
【0039】
<評価結果>
実施例1は酸素バリア値が0.8〜1.1(fmol/m2/s/Pa)の範囲内を示し、バラツキも少なかった。比較例1は2本だけが0.8(fmol/m2/s/Pa)で、そのたは、1.2〜1.6(fmol/m2/s/Pa)と酸素バリア性が無く、バラツキも大きい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の成膜装置はプラスチックボトルや紙容器の3次元中空容器に酸素バリア性の高い成膜を形成できる成膜装置として優れていることはもとより、酸素バリア性が要求される精密分野あるいは医療分野など広い分野に利用できる素晴らしい発明である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の成膜装置の一実施例の概略を示す概略図である。
【図2】本発明の成膜装置の他の一実施例の概略を示す概略図である。
【図3】従来の成膜装置を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1…簡易式排気流量制御弁
2…プラスチック容器
3…チャンバー
4…サブチャンバー
5…外部可動式排気流量弁
6…調整ハンドル
7…フランジ
8…柱状外部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの筐体からなるサブチャンバーに複数のメインチャンバーが整列し、その内部に収納されたプラスチック容器の内面に全数同時にプラズマCVD法で薄膜を形成する装置であって、メインチャンバーあるいはサブチャンバーに組み込んで容器から流れ出る生成ガスの排出速度を調整する部材が具備されていることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記生成ガスの排出速度を調整する部材の調整手段がメインチャンバーの外側に形成されていることを特徴とする請求項1記載の成膜装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate