説明

扁平形電池用手動式カシメ機

【課題】従来の手動式カシメ機と比べてコンパクトな形状を有し、且つ、小さな力で、確実に、扁平形電池をカシメることができ、したがって、標準的なグローボックス内で好適に使用可能な扁平形電池用手動式カシメ機を提供する。
【解決手段】操作者によって回転される操作部80と、操作部80と連動して回転する入力軸40と、入力軸40の回転と連動して、一定軌道を所定のストロークで往復運動するスライド部材30と、入力軸40と歯車機構部70を介して連結する出力軸42と、出力軸42とともに回転するクランク部材50と、クランク部材50及びスライド部材30と連結するリンク機構部と、を備え、入力軸40の回転トルクよりも、出力軸42の回転トルクの方が大きくなるように歯車機構部70を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイン型電池やボタン型電池などの扁平形電池をカシメるための手動式カシメ機に関する。より詳しくは、主として、試験研究機関などにおいて、試験研究目的で扁平形電池を少量生産する際に用いられる手動式カシメ機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、試験研究目的で扁平形電池を少量生産する際に用いられるカシメ機は、工場などで大量生産する場合とは異なり、手動式のカシメ機が利用されている。
【0003】
従来の扁平形電池用手動式カシメ機としては、図5〜図8に示した手動式カシメ機がある。
【0004】
ここで、図5は、従来の扁平形電池用手動式カシメ機を示した斜視図である。図6Aは、図5に示した従来の扁平形電池用手動式カシメ機の一部を不図示とした図であって、スライド部材が上死点にある状態を示した斜視図である。図6Bは、図5に示した従来の扁平形電池用手動式カシメ機の一部を不図示とした図であって、スライド部材が下死点にある状態を示した斜視図である。図7Aは、図6Aに示した従来の扁平形電池用手動式カシメ機の側面図である。図7Bは、図6Bに示した従来の扁平形電池用手動式カシメ機の側面図である。図8Aは、図6A及び図7Aに示した従来の扁平形電池用手動式カシメ機において、スライド部材が上死点にある状態の上型及び下型を示した拡大断面図であって、扁平形電池がカシメられる前の状態を示した図である。図8Bは、図6B及び図7Bに示した従来の扁平形電池用手動式カシメ機において、スライド部材が下死点にある状態の上型及び下型を示した拡大断面図であって、扁平形電池がカシメられた後の状態を示した図である。
【0005】
なお、図5〜図7において、符号100は、全体で従来の扁平形電池用手動式カシメ機を示している。
【0006】
図5に示したように、従来の扁平形電池用手動式カシメ機100は、基台102と、この基台102の両端部と固定された側壁108、108と、後述する内部構造部150と、この内部構造部150と連結する操作部180と、内部構造部150を覆うように配置された、頂板192及び不図示の背面板からなるカバー部材190と、などから構成されている。
【0007】
操作部180は、図5〜図6に示したように、棒状の把持部182と、一端がこの把持部182の端部と連結し、他端が後述する水平軸140と回動可能に連結されたレバー部材184と、から構成されている。また、このレバー部材184は、図7A及び図7Bに示したように、弧状をなした弧状部184aと、弧状部184aに対して略直角方向に円弧外側に延伸する屈曲部184bとから構成されており、レバー部材184と水平軸140とは、この屈曲部184bの先端側において連結されている。
【0008】
内部構造部150は、図6A及び図6Bに示したように、基台102と一体化された縦壁104と、縦壁104の正面側に形成され、後述するスライド部材130の往復運動を垂直方向に案内するガイド106と、カシメ対象である扁平形電池200が載置される下型110と、扁平形電池200を押圧してカシメる上型120と、上型120と固定されたスライド部材130と、両端が側壁108と連結された水平軸140と、一端がスライド部材130と回動自在に連結され、他端がレバー部材184の屈曲部184bの基端側
と回動自在に連結されたリンク部材164と、一端が縦壁104と回動自在に連結され、他端がスライド部材130と回動自在に連結された接続リンク166と、接続リンク166と当接することでレバー部材184の下方向への移動を制止するストッパー125と、から構成されている。
【0009】
この従来の扁平形電池用手動式カシメ機100では、先ず、図6A及び図7Aに示した状態、すなわち、操作者が把持部182を把持してレバー部材184を上方一杯まで押し上げ、スライド部材130が最も上側に位置した状態(上死点)において、密封されていない扁平形電池200を下型110の凹部112の表面に載置する。
【0010】
扁平型電池200は、図8Aに示したように、半殻体に形成された電池ケース202の開口部に、同じく半殻体に形成された封口板204を、電池ケース202の開口部を覆うようにして重ねた状態で、封口板204を下側にして、下型110の凹部112の表面に載置される。なお、電池ケース202及び封口板204の材料は、共に金属性である。また、電池ケース202と封口板204との間には、パッキン206が介装されており、これにより、電池ケース202内に収容されている不図示の発電要素が密封されている。
【0011】
また、図8Aに示したように、上型120の下型110側には、封口板204の外周壁204aと当接する当接部122が形成されている。
【0012】
また、下型110の凹部112には、扁平形電池200を載置する際の位置決め用の溝として、位置決め溝部112aが形成されている。
【0013】
そして、操作者が把持部182を把持してレバー部材184を徐々に下方に押し下げると、水平軸140を中心としてレバー部材184が下方に向かって回動し、これに伴いリンク部材164も回動して、リンク部材164が、図7Aに示した傾斜した状態から、図7Bに示した垂直に近い状態へと徐々に変化する。これによって、リンク部材164と連結されるスライド部材130及びスライド部材130に固定された上型120も徐々に下降する。また、リンク部材164と回動自在に連結された接続リンク166も、図7Aに示した傾斜した状態から、図7Bに示した水平の状態へと徐々に傾動する。
【0014】
そして、操作者がレバー部材184を更に下方に押し下げれば、図7Bに示したように、接続リンク166が水平の状態まで傾動し、接続リンク166とストッパー125の頭部125aとが当接して、これ以上レバー部材184を下方に押し下げることが出来なくなる。すなわち、この時の状態が、スライド部材130が最も下方に位置した状態となる(下死点)。
【0015】
このように、レバー部材184をストッパーの頭部125aと当接するまで押し下げることで、図8Bに示したように、上型120の湾曲状の当接部122と封口板204の外周壁204aとが当接し、外周壁204aが押圧されて内側にカシメられることで、内部に発電要素が密封された扁平型電池200が形成される。
【0016】
ところで、試験研究機関などにおいて扁平形電池200を少量生産する場合は、内部にアルゴン気体を充満させたグローブボックス内において、扁平形電池200のカシメ作業が行われる。
【0017】
図9は、標準的なグローブボックスの概略形状を示した斜視図である。
【0018】
図9に示したように、標準的なグローブボックス300は、例えば、アクリル樹脂などで形成された透明な本体部302と、パスボックス304とから構成されており、本体部
302には、操作者が手を挿入する作業穴306が形成されている。操作者は、この作業穴306から手だけを挿し入れて、例えば、グローブボックス300内にある手動式カシメ機100を操作して、扁平形電池200のカシメ作業を行う。また、本体部302への機器などの搬入は、パスボックス304から行われる。
【0019】
このグローブボックス300の標準的な寸法(幅×奥行き×高さ)、すなわち、試験研究機関などにおいて最も普及している寸法は、本体部302が概ねW800mm×D600mm×H600mm程度、パスボックス304が概ねw500mm×d200mm×h250mm程度である。
【0020】
よって、主として、グローブボックス内で使用される手動式カシメ機は、この標準的なグローブボックス300内に搬入可能で、且つ、グローブボックス300に収容された際に、十分な作業空間を確保できる形状、寸法であることが要求される。また、操作者は、グローブボックス300内に手だけを挿し入れた不安定な態勢で扁平形電池200のカシメ作業を行うため、レバー部材184を強く押し下げることが難しいことから、小さな力で、確実に、扁平形電池200をカシメることができる手動式カシメ機が強く要求されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、従来の扁平形電池用手動式カシメ機100は、上述した手動式カシメ機に対する要求性能を、十分に満たすものではなかった。
【0022】
すなわち、従来の扁平形電池用手動式カシメ機100は、上述したように、操作者がレバー部材184を下方に押し下げることで、上型120を扁平型電池200に押圧させるものであり、小さな力で扁平形電池200をカシメるためには、レバー部材184の弧状部184aを長くする必要がある。しかし、弧状部184aを長くすれば、扁平形電池用手動式カシメ機100の全体の長さも長くなるため、上述した、標準的なグローブボックス300内に搬入可能で、且つ、グローブボックス300に収容された際に、十分な作業空間を確保できる形状、寸法であるとの要求に反することとなる。
【0023】
また、従来の扁平形電池用手動式カシメ機100は、下死点の検知をストッパー125に拠っていたため、不慣れな操作者がカシメ作業を行った場合、扁平形電池200を確実にカシメることが出来ない場合があった。
【0024】
すなわち、従来の扁平形電池用手動式カシメ機100では、上述したように、操作者がレバー部材184を下方一杯に押し下げると、接続リンク166とストッパー125の頭部125aとが当接する。操作者は、この際の衝撃を検知することで、スライド部材130が下死点にあること、すなわち、カシメ作業が完了したことを認識する。しかし、レバー部材184が下死点に到達する前に、上型120と扁平形電池200とが先に当接するため、操作者が、この上型120と扁平形電池200とが当接する際の衝撃をもって、スライド部材130が下死点にあると誤解してしまい、扁平形電池200のカシメが完了しない段階で、レバー部材184を押し下げるのを中断してしまうことがあった。
【0025】
さらに、従来の扁平形電池用手動式カシメ機100では、下死点の位置調整をストッパー125の頭部125aの高さ位置を変更することで行うように構成されていた。したがって、種々の高さを有する扁平形電池200に対して、この扁平形電池用手動式カシメ機100を利用するためには、予め下死点の位置調整に対する調整代を確保しておく必要があった。よって、この調整代を確保するため、従来の扁平形電池用手動式カシメ機100では、標準的な高さの扁平形電池200をカシメた際の下死点における、屈曲部184b
とリンク部材164とのなす角度βが、図7Bに示したように、180度を下回り、概ね160度〜170度の範囲となっていた。
【0026】
ここで、操作者がレバー部材184を押し下げる力が、最も効率よくスライド部材130に伝達されるのは、屈曲部184bとリンク部材164とのなす角度βが180度の場合である。したがって、従来の扁平形電池用手動式カシメ機100は、操作者がレバー部材184を押し下げる力を効率良くスライド部材130に伝達できるものではなかった。
【0027】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、従来の手動式カシメ機と比べてコンパクトな形状を有し、且つ、小さな力で、確実に、扁平形電池をカシメることができ、したがって、標準的なグローボックス内で好適に使用可能な扁平形電池用手動式カシメ機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0028】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明の扁平形電池用手動式カシメ機は、
半殻体に形成され、内部に発電要素が収容された電池ケースと、該電池ケースの開口部を封口する封口板とを重ねて下型の載置面上に載置し、該封口板の外周壁を上型により押圧して変形させることで、内部に発電要素が密封された扁平型電池を形成する扁平形電池用手動式カシメ機であって、
操作者によって回転される操作部と連結され、該操作部と連動して回転する入力軸と、
前記上型と固定されるとともに、前記入力軸の回転と連動して、一定軌道を所定のストロークで往復運動するスライド部材と、
前記入力軸と歯車機構部を介して連結され、入力軸の回転と連動して回転する出力軸と、
前記出力軸に軸着され、出力軸とともに回転するクランク部材と、
一端が回動自在に連結された第1のリンクの他端と、一端が前記スライド部材と回動自在に連結された第2のリンクの他端と、一端が前記クランク部材の偏心部に回動自在に連結された接続リンクの他端と、が各々回動自在に連結されたリンク機構部と、を備え、
前記歯車機構部は、前記入力軸に軸着された第1の歯車と、該第1の歯車と噛合し、前記出力軸に軸着された第2の歯車と、を有するとともに、
前記第1の歯車の歯数よりも前記第2の歯車の歯数の方が多くなるように構成されていることを特徴とする。
【0029】
このように構成することによって、クランク部材とリンク機構部により、操作者が操作部を回転させる回転力を利用して、スライド部材を往復運動させるため、従来の手動式カシメ機のように長いレバー部材を備える必要がなく、従来の手動式カシメ機と比べて、コンパクトな形状にすることができる。
【0030】
また、操作部とクランク部材とは、第1の歯車と第2の歯車とを有する歯車機構部によって連結されるため、チェーンやベルトなどで連結される場合と比べて、装置をコンパクトにすることができるとともに、減速も容易であり、大きな出力トルクを得ることができる。また、歯車の種類により、歯車同士を並列に配列したり、直交に配列したりできるので、操作部の配置を、装置の側面や前面に配置することが容易に行うことができる。
【0031】
また、操作部を回転させれば、スライド部材が、一定軌道、且つ、所定のストロークで往復運動するため、従来の手動式カシメ機のように操作者が衝撃を検知することによって下死点を認識する必要がないことから、例え不慣れな操作者が操作した場合であっても、確実に扁平形電池をカシメることができる。
【0032】
また、第1の歯車の歯数よりも第2の歯車の歯数の方が多くなるように構成されており、入力軸40の回転トルクよりも、出力軸42の回転トルクの方が大きくなるため、従来の手動式カシメ機と比べて、小さな力で扁平形電池をカシメることができる。
【0033】
上記発明において、
前記歯車機構部が、
前記第1の歯車及び第2の歯車が、ともに平歯車であることが望ましい。
【0034】
このように構成することによって、平歯車は、構造がシンプルであり、価格も安価で汎用品の種類も豊富なことから、容易かつ安価に、本発明の扁平形電池用手動式カシメ機を提供することが可能となる。また、操作部の位置を、操作者が操作しやすいように手動式カシメ機の側面に配置する場合には、2つの歯車が並列に配置される平歯車が最も適している。
【0035】
また、上記発明において、
前記歯車機構部における減速比が整数値であることが望ましい。
【0036】
このように構成することによって、歯車機構部における減速比が整数値であるため、カシメ作業前の操作部の位置と、カシメ作業後の操作部の位置は、常に同じ位置となり、作業者が、カシメ作業が完了したことを容易に認識することができる。
【0037】
また、上記発明において、
前記上型の本体部が金属製の部材からなり、該本体部には、前記封口板の外周壁と当接する当接部が周状に形成されるとともに、
前記該封口板の外周壁を上型により押圧して変形させる際に、前記上型と前記電池ケースとが接触しないように、前記上型に逃げ部が形成されていることが望ましい。
【0038】
このように構成することによって、上型と電池ケースとが接触しないように、上型に逃げ部が形成されているため、上型に金属性の材料を用いたとしても、扁平形電池をカシメる際に扁平形電池が短絡するのを防止することができる。また、下型も、封口板としか接触しないため、上型と下型は電気的に通電してもよく、下型にも金属性の材料を使用することができる。
【0039】
また、上記発明において、
前記上型の本体部が金属製の部材からなり、該本体部には、前記封口板の外周壁と当接する当接部が周状に形成されるとともに、
前記当接部に囲まれた部分から、弾性部材と接続された絶縁部材が突設していることが望ましい。
【0040】
このように構成することによって、当接部に囲まれた部分から、弾性部材と接続された絶縁部材が突設しているため、当接部と封口板の外周壁とが当接する前に、絶縁部材と電池ケースとが先に当接する。そして、さらに上型を下型側へ移動させると、弾性部材によって付勢された絶縁部材が電池ケースを押圧した状態で、当接部と封口板の外周壁とが当接し、封口板の外周壁が内側に変形する(カシメられる)ため、位置ずれなどが生ずることなく、確実に扁平形電池をカシメることができる。
【0041】
また、上記発明において、
前記下型の載置面が、下型の表面に形成された凹部であり、該凹部には、前記封口板の平面形状と略同一形状の位置決め溝部が形成されていることが望ましい。
【0042】
このように構成することによって、扁平形電池を下型に載置する際の位置決めを容易に行うことができる。
【0043】
また、上記発明において、
前記位置決め溝部には貫通孔が形成されて、該貫通孔には押し上げピンが進退自在に装着されており、
前記押し上げピンが、操作者によって操作される操作手段と連絡し、操作者が該操作手段を操作することによって上下動するように構成されていることが望ましい。
【0044】
このように構成することによって、位置決め溝部に形成された貫通孔に進退自在に装着された押し上げピンが、操作者が操作手段を操作することによって上下動するように構成されているため、位置決め溝部に載置されている、カシメ作業が完了した扁平形電池を下型から容易に取り出すことができる。
【発明の効果】
【0045】
本発明によれば、従来の手動式カシメ機と比べてコンパクトな形状を有し、且つ、小さな力で、確実に、扁平形電池をカシメることができ、したがって、標準的なグローボックス内で好適に使用可能な扁平形電池用手動式カシメ機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1A】図1Aは、本発明の扁平形電池用手動式カシメ機を示した斜視図である。
【図1B】図1Bは、図1AのA−A線における断面図である。
【図2A】図2Aは、図1Aに示した本発明の扁平形電池用手動式カシメ機の一部を不図示とした図であって、スライド部材が上死点にある状態を示した斜視図である。
【図2B】図2Bは、図1Aに示した本発明の扁平形電池用手動式カシメ機の一部を不図示とした図であって、スライド部材が下死点にある状態を示した斜視図である。
【図3A】図3Aは、図2Aに示した本発明の扁平形電池用手動式カシメ機の側面図である。
【図3B】図3Bは、図2Bに示した本発明の扁平形電池用手動式カシメ機の側面図である。
【図4A】図4Aは、図2A及び図3Aに示した本発明の扁平形電池用手動式カシメ機において、スライド部材が上死点にある状態の上型及び下型を示した拡大断面図であって、扁平形電池がカシメられる前の状態を示した図である。
【図4B】図4Bは、図2B及び図3Bに示した本発明の扁平形電池用手動式カシメ機において、スライド部材が下死点にある状態の上型及び下型を示した拡大断面図であって、扁平形電池がカシメられた後の状態を示した図である。
【図4C】図4Cは、他の実施形態の上型及び下型を示した拡大図であって、扁平形電池がカシメられた後の状態を示した図である。
【図5】図5は、従来の扁平形電池用手動式カシメ機を示した斜視図である。
【図6A】図6Aは、図5に示した従来の扁平形電池用手動式カシメ機の一部を不図示とした図であって、スライド部材が上死点にある状態を示した斜視図である。
【図6B】図6Bは、図5に示した従来の扁平形電池用手動式カシメ機の一部を不図示とした図であって、スライド部材が下死点にある状態を示した斜視図である。
【図7A】図7Aは、図6Aに示した従来の扁平形電池用手動式カシメ機の側面図である。
【図7B】図7Bは、図6Bに示した従来の扁平形電池用手動式カシメ機の側面図である。
【図8A】図8Aは、図6A及び図7Aに示した従来の扁平形電池用手動式カシメ機において、スライド部材が上死点にある状態の上型及び下型を示した拡大断面図であって、扁平形電池がカシメられる前の状態を示した図である。
【図8B】図8Bは、図6B及び図7Bに示した従来の扁平形電池用手動式カシメ機において、スライド部材が下死点にある状態の上型及び下型を示した拡大断面図であって、扁平形電池がカシメられた後の状態を示した図である。
【図9】図9は、標準的なグローブボックスの概略形状を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいてより詳細に説明する。
【0048】
なお、本明細書において、「上方」「上側」とは、図の上側、すなわち、下型に対して上型がある側及びその方向を指し、同じく「下方」「下側」とは、図の下側、すなわち、上型に対して下型がある側及びその方向を指す。また、「正面側」「手前側」とは、図1B、図3A及び図3Bの左側、すなわち、操作部に対してスライド部材がある側及びその方向を指し、「背面側」「奥側」とは、図1B、図3A及び図3Bの右側、すなわち、スライド部材に対して操作部がある側及びその方向を指す。
【0049】
図1Aは、本発明の扁平形電池用手動式カシメ機を示した斜視図である。図1Bは、図1AのA−A線における断面図である。図2Aは、図1Aに示した本発明の扁平形電池用手動式カシメ機の一部を不図示とした図であって、スライド部材が上死点にある状態を示した斜視図である。図2Bは、図1Aに示した本発明の扁平形電池用手動式カシメ機の一部を不図示とした図であって、スライド部材が下死点にある状態を示した斜視図である。図3Aは、図2Aに示した本発明の扁平形電池用手動式カシメ機の側面図である。図3Bは、図2Bに示した本発明の扁平形電池用手動式カシメ機の側面図である。
【0050】
なお、図1〜図3において、符号1は、全体で本発明の扁平形電池用手動式カシメ機を示している。
【0051】
図1に示したように、本発明の扁平形電池用手動式カシメ機1は、基台2と、この基台2の両端部と固定されて垂立する側壁8、8と、操作部80と、カバー部材90と、後述する操作部80、入力軸40、出力軸42、スライド部材30、クランクホイール50、第1のリンク62と第2のリンク64と接続リンク66とから構成されるリンク機構部、第1の平歯車72及び第2の平歯車74とから構成される歯車機構部70などから構成される。また、カバー部材90は、図1に示したように、頂板92及び背面板96から構成されている。
【0052】
操作部80は、図2A及び図2Bに示したように、入力軸40に対称に取り付けられた丸棒形状の2つの回転レバー82、82とから構成されている。この回転レバー82、82は、操作者が回転レバー82、82を回転させる際に、側壁8に手がぶつからないよう、入力軸40の軸方向の外側に向けて、傾けられて取り付けられている。
【0053】
入力軸40は、図示されていないが、その両端が側壁8と回動可能に連結されている。また、入力軸40の一端は、側壁8を貫通して回転レバー82と連結されており、作業者が回転レバー82を回転すれば、回転レバー82と連動して回転するように構成されている。
【0054】
また、図2A及び図2Bに示したように、入力軸40の軸方向の略中心位置には、第1の平歯車72が軸着されており、入力軸40の回転と連動して、第1の平歯車72が回転するように構成されている。また、この第1の平歯車72は、図1Bに示したように、出力軸42と軸着されて第1の平歯車72と対向して配置された第2の平歯車74と噛合しており、第1の平歯車72が回転すれば、第2の平歯車74も連動して回転するようになっている。また、この第2の平歯車74は、第1の平歯車72よりも多くの歯を備えてお
り、第2の平歯車74の方が第1の平歯車72よりも回転速度が遅くなるように、すなわち、入力軸40の回転トルクよりも、出力軸42の回転トルクの方が大きくなるように構成されている。そして、これら第1の平歯車72と、第2の平歯車74とで、歯車機構部70を構成している。
【0055】
なお、本実施形態では、第2の平歯車74の歯数は、第1の平歯車72の歯数の2倍となっている。すなわち、本実施形態では、歯車機構部70の減速比は2である。本発明において、この歯車機構部70の減速比は1よりも大きければ、すなわち、入力軸40の回転速度よりも出力軸42の回転速度の方が遅くなるように構成されていればよい。しかしながら、歯車機構部70における減速比を整数値とすれば、カシメ作業前の回転レバー82の位置と、カシメ作業後の回転レバー82の位置が、常に同じ位置となり、作業者が、カシメ作業が完了したことを容易に認識することができるため、好ましい。なお、本実施形態では、図3A、図3Bに示したように、スライド部材30が上死点及び下死点にある場合に、2つの回転レバー82、82が垂直になるように、回転レバー82、82を設けている。
【0056】
なお、上述したように、本実施形態では、丸棒形状の2つの回転レバー82、82を有しているが、本発明の回転レバー82は、これに限定されず、適宜変更可能である。したがって、例えば、丸棒形状の回転レバー82を、スポークハンドルのような略円形状のものに変更しても良い。
【0057】
また、スライド部材30の背面側には不図示の凹部が形成されるとともに、縦壁4からは、スライド部材30に向かって不図示のプランジャーが突設している。この不図示のプランジャーは、スライド部材30が上死点にある状態において、スライド部材30の背面に形成されている不図示の凹部と係合するように構成されており、これにより、スライド部材30が上死点にある状態で、操作者が回転レバー82から手を放しても、スライド部材30が自重により落下するのを防止している。
【0058】
また、第2の平歯車74は、図1B、図2A及び図2Bに示したように、基台2と固定されて垂立する縦壁4の凹部4a内に配置されて、出力軸42の軸方向の略中心位置にて軸着されている。また、この出力軸42の両端部には、図2A及び図2Bに示したように、クランク部材としてのクランクホイール50が、出力軸42とともに回転するように軸着されている。
【0059】
クランクホイール50は、図2〜図3に示したように、略円板形状をなしており、その円板の中心位置において出力軸42と軸着されている。また、このクランクホイール50の外面(すなわち、側壁8側の面)には、接続リンク66の一端が回動自在に連結されている。このクランクホイール50と接続リンク66との連結位置は、クランクホイール50の外面における偏心部、すなわち、クランクホイール50の外面の重心以外の位置であり、後述するスライド部材30のストローク長に合わせた適宜な位置となっている。なお、クランク部材は、出力軸42の中心軸の周りを360度回転するリンクであるので、クランク部材の形状は、クランクホイール50のような円板形状には限定されず、例えば、平板形状であっても良い。
【0060】
接続リンク66は、上述したように、一端がクランクホイール50の外面における偏心部と回動自在に連結されるとともに、図2〜3に示したように、その他端は、第1のリンク62及び第2のリンク64と回動自在に連結されている。
【0061】
第1のリンク62は、上述したように、その他端が接続リンク66、及び第2のリンク64と回動自在に連結されるとともに、図2A及び図2Bに示したように、その一端が、
クラウン軸44と回動自在に連結されている。なお、このクラウン軸44は、下型10の中心位置の真上を通過するように配置されており、その両端が側壁8と連結されている
第2のリンク64は、上述したように、その他端が接続リンク66及び第1のリンク62と回動自在に連結されるとともに、図2A及び図2Bに示したように、その一端が、スライド部材30と回動自在に連結されている。
【0062】
これら第1のリンク62、第2のリンク64、及び接続リンク66の作用について説明すれば、図3Aに示したように、クランクホイール50と接続リンク66との連結位置(X)が奥側にある場合は、接続リンク66と第1のリンク62と第2のリンク64との連結位置(Y)も奥側となる。したがって、第1のリンク62及び第2のリンク64は、図3Aに示したような傾斜した状態となり、第2のリンク64と連結されたスライド部材30は上方に位置することとなる。
【0063】
また、図3Bに示したように、クランクホイール50と接続リンク66との連結位置(X)が手前側にある場合は、接続リンク66と第1のリンク62と第2のリンク64との連結位置(Y)も手前側となる。したがって、第1のリンク62及び第2のリンク64は、図3Aに示したように垂立した状態となり、第2のリンク64と連結されたスライド部材30は下方に位置することとなる。
【0064】
すなわち、第1のリンク62と、第2のリンク64と、接続リンク66とは、クランクホイール50の回転と連動して、クランクホイール50と接続リンク66との連結位置(X)も図3Aに示した奥側から図3Bに示した手前側へと移動し、これと連動してスライド部材30が所定のストロークで上下方向に往復移動するように構成されている。すなわち、これら第1のリンク62、第2のリンク64、及び接続リンク66とで、クランクホイール50の回転運動をスライド部材30の往復運動に変換せしめるリンク機構部を構成している。
【0065】
また、第1のリンク62、第2のリンク64及び接続リンク66の各部材の長さ、及びその連結位置は、クランクホイール50が360度回転できるとともに、上型20の当接部22と、封口板204の外周壁204aとが当接した状態において、第1のリンク62と第2のリンク64とのなす角度αが概ね180度になるように構成されている。なお、本実施形態において、第1のリンク62と、第2のリンク64と、接続リンク66とは、ピンにより連結しているが、軸付きのベアリングなどによって連結しても良い。
【0066】
スライド部材30は、上述したように、第2のリンク64の一端と回動自在に連結されるとともに、背面側にガイド挟持部32が固定されている。このガイド挟持部32は、縦壁4の正面側に縦状の突起として形成されているガイド6を摺動自在に挟持することで、スライド部材30が一定軌道で上下方向に往復するのを案内するように構成されている。
【0067】
また、スライド部材30の下側には、上型20が固定されており、この上型20の真下には下型10が配置されている。この下型10の表面の中央部分には、図2Aに示したように、凹部12が形成されており、カシメ対象である扁平形200は、この凹部12の表面に載置される。
【0068】
この上型20及び下型10を、図4A、及び図4Bに基づいて詳細に説明する。
【0069】
図4Aは、図2A及び図3Aに示した本発明の扁平形電池用手動式カシメ機において、スライド部材が上死点にある状態の上型及び下型を示した拡大断面図であって、扁平形電池がカシメられる前の状態を示した図である。また、図4Bは、図2B及び図3Bに示した本発明の扁平形電池用手動式カシメ機において、スライド部材が下死点にある状態の上
型及び下型を示した拡大断面図であって、扁平形電池がカシメられた後の状態を示した図である。
【0070】
なお、図4A及び図4Bに示す扁平形電池200は、先に従来の扁平形電池用手動式カシメ機100において説明したものと基本的に同様の構成であり、その詳細な説明は省略する。
【0071】
上型20は、図4Aに示したように、中空形状をなした本体部20aと、本体部20aの中空部に摺動自在に装着された絶縁部材24と、本体部20aの中空部に摺動自在に装着され、絶縁部材24とボルトによって連結された中間部材26と、一端側がこの中間部材26と接続し、他端側がスライド部材30と接続する弾性部材28と、から構成されている。
【0072】
絶縁部材24は、本体部20aの下端よりも下側に突設した状態で中空部に装着されている。また、本体部20aの下側には、絶縁部材24の周囲を取り囲むようにして、周状の当接部22が断面視で湾曲状に形成されている。この当接部22は、扁平形電池200をカシメる際、封口板204の外周壁204aと当接する部分に該当する。また、当接部22の上方部分には、当接部22の上方の一部分を切り欠くようにして、逃げ部23が周状に形成されている。
【0073】
この逃げ部23の形状は、扁平形電池200をカシメる際に、上型20と電池ケース202とが接触しないように形成されていれば良く、上型20の形状により、種々の形状を採用し得る。例えば、中空形状をなしておらず、また、中空部に絶縁部材24なども装着されていない上型20に対しては、図4Cに示したような形状、すなわち、当接部22の上方の一部分だけでなく、当接部22に囲まれた部分の全体を切り欠いた形状とすることで、扁平形電池200をカシメる際に、上型20と電池ケース202とが接触するのを防ぐことができる。
【0074】
このように、上型20と電池ケース202とが接触しないように、上型20に逃げ部23が形成されていれば、上型20に金属性の材料を用いたとしても、扁平形電池200をカシメる際の扁平形電池200の短絡を防止することができる。また、下型10も、封口板204としか接触しないため、上型20と下型10は電気的に通電してもよく、下型10にも金属を使用することができる。
【0075】
本実施形態では、上型20の本体部20aは金属性の部材からなる。電池ケース202、及び封口板204はステンレスなどの軟鋼材からなるため、本体部20aの材料としては、加工が容易で、焼き入れ処理が可能な高硬度、耐磨耗性に優れたSK材などの炭素鋼が好ましい。また、本体部20aに対して、耐磨耗性、耐薬品性に優れた窒化コーティングなどを行っても良い。
【0076】
また、絶縁部材24は、扁平形電池200の短絡を防止するために絶縁性の部材から構成されている。なお、絶縁部材の材料は、絶縁性の部材であればよく、特に限定されるものではないが、樹脂製の部材から構成されているのが好ましく、中でも、電解液に対して耐薬品性があるテフロン(登録商標)などのフッ素樹脂やポリプロピレンなどを好適に用いることができる。また、本実施形態では、上述したように、絶縁部材24と中間部材26とは、ボルトによって連結されているが、例えば、絶縁部材24と中間部材26とは、接着剤で一体化されていても良く、熱融着などによって一体化されていても良く、特に限定されない。さらに、中間部材26を設けずに、絶縁部材24と弾性部材28とを直接接続するように構成しても良い。また、弾性部材28としては、圧縮コイルばねが好ましいが、弾性変形すれば良く、板ばね、弾性ゴムなどを用いることができる。
【0077】
ここで、絶縁部材24の作用について説明する。
【0078】
扁平形電池200をカシメる前の状態、すなわち、内部に発電要素が収容された電池ケース202と、電池ケース202の開口部を封口する封口板204とを重ねて下型10の載置面上に載置した状態では、電池ケース202と封口板204とは平行に重ねられた状態とはなっておらず、電池ケース202が斜めに重ねられて浮いたような状態となっている。このような状態のまま、扁平形電池200をカシメると、すなわち、封口板204の外周壁204aを上型20の当接部22によって押圧して変形させると、外形寸法が安定しない、密閉できないなどの原因となる。
【0079】
ところが、本実施形態では、扁平形電池200をカシメる際、絶縁部材24は本体部20aの下端よりも下側に突設しているため、例え、電池ケース202と封口板204とが斜めに重ねられた状態で下型10に載置されたとしても、当接部22と封口板204の外周壁204aとが当接する前に、絶縁部材24と電池ケース202とが先に当接する。そして、さらに上型20を下型10側へ下降させれば、下側に突設している絶縁部材24は、上方へ摺動し、中間部材26を介して弾性部材28によって付勢されて電池ケース202を押圧し、これにより、絶縁部材24によって押圧された電池ケース202が、封口板204に対して平行に重ねられた状態となる。そして、この状態にて、当接部22と封口板204の外周壁204aとが当接し、外周壁204aが内側に変形する(カシメられる)。
【0080】
このように、絶縁部材24が電池ケース202を押圧し、電池ケース202と封口板204とが平行に重ねられた状態で、当接部22と封口板204の外周壁204aとが当接し、封口板204の外周壁204aが内側に変形する(カシメられる)ため、扁平形電池200がカシメ時に位置ずれすることなく、確実に、扁平形電池200をカシメることができる。
【0081】
下型10には、図4Aに示したように、凹部12が形成されている。カシメ対象である未密封の扁平形電池200はこの凹部12に載置される。また、下型10の凹部12には、扁平形電池200を載置する際の位置決め用の溝として、封口板204の平面形状と略同一形状をなした位置決め溝部12aが形成されており、扁平形電池200を下型10に載置する際の位置決めを容易に行えるようになっている。
【0082】
本実施形態では、下型10は金属性の部材からなる。また、上述した上型20の本体部20aと同様、下型10の材料には、加工が容易で、焼き入れ処理が可能な高硬度、耐磨耗性に優れたSK材などの炭素鋼が好ましく、また、耐磨耗性、耐薬品性に優れた窒化コーティングなどを行っても良い。また、操作者が、扁平形電池200を下型10に載置、又は取り出す際に、誤って扁平形電池200を短絡させないように、下型10には、フッ素コーティングなどの絶縁処理を施しても良い。なお、上述した上型20にも絶縁処理を施しても良いが、封口板204の外周壁204aと当接する当接部22には、絶縁処理が剥離してしまうので、当接部22には絶縁処理は施さない。
【0083】
また、図4Aに示したように、下型10の位置決め溝部12aの略中心位置には、下型10を上下方向に貫通する貫通孔14が形成されている。この貫通孔14には、押し上げピン16が進退自在に装着されており、図1Bに示した操作手段18を操作することにより、上下動するように構成されている。
【0084】
この操作手段18について、さらに詳しく説明すれば、図1B、図2A、及び図2Bに示したように、操作手段18は、基台2に形成された列状の溝18cに埋入された操作部
材18aと、操作部材18aの先端部分と接続されたスライド板18bとから構成されている。この列状の溝18cは、基台2の正面手前側から下型10の略中心位置、すなわち、貫通孔14が形成されている位置まで連続して形成されている。また、スライド板18bの奥側は、上面から下面に向けてテーパーが付されており、スライド板18bを押し上げピン16へ押しつければ、押し上げピン16が上方に押し上げられるように構成されている。
【0085】
したがって、操作者が、この操作部材18aを奥側へ移動させれば、操作部材18aと接続するスライド板18bも奥側へ移動し、押し上げピン16を上方に押し上げることができ、これにより、位置決め溝部12aに載置されている、カシメ作業が完了した扁平形電池200を下型10から容易に取り出すことができる。
【0086】
このようにして構成されている本発明の扁平形電池用手動式カシメ機1では、先ず、図2A及び図3Aに示した状態、すなわち、スライド部材30が最も上側に位置した状態(上死点)において、密封されていない扁平形電池200を下型10の凹部12の表面に載置する。
【0087】
そして、操作者が回転レバー82を回転させると、これと連動して入力軸40が回転し、入力軸40に軸着されている第1の平歯車72、及びこれと噛合する第2の平歯車74が回転するとともに、出力軸42を介して第2の平歯車74と連結するクランクホイール50が回転する。すると、クランクホイール50の偏心部と回動自在に連結されている接続リンク66、及びこれと回動自在に連結されている第1のリンク62、第2のリンク64とからなるリンク機構部により、スライド部材30が下降する。
【0088】
そして、操作者が回転レバー82を手前に(または奥側に)1回転させれば、図2B及び図3Bに示した状態、すなわち、スライド部材30が最も下側に位置した状態(下死点)となる。この状態にて、上型20の当接部22と、扁平形電池200の封口板204の外周壁204aとが当接し、当接部22が外周壁204aを押圧して内側に変形させることで、扁平形電池200がカシメられて密封される。
【0089】
なお、当接部22と、外周壁204aとが当接した状態においては、図3Bに示した第1のリンク62と第2のリンク64とのなす角度αは、概ね180度であり、操作者が回転レバー82を回転させる力を、効率よくスライド部材30に伝達できるように構成されている。また、上型20はスライド部材30と、下型10は基台10と、例えばボルトなどによって着脱時代に固定されているため、種々の外径と高さを有する扁平形電池200に対して、本発明の扁平形電池用手動式カシメ機1を利用する際は、扁平形電池200の高さに対応した種々の上型20と下型10を用意し、カシメ対象である扁平形電池200に応じて適宜上型20と下型10を交換することで、どのような外径と高さの扁平形電池200をカシメる場合であっても、第1のリンク62と第2のリンク64とのなす角度αを概ね180度とすることができる。
【0090】
また、封口板204の外周壁204aの内側への変形量(カシメ量)は、扁平型電池用
手動式カシメ機1の下死点近辺における、上型20と下型10との離間距離(図4Bに示したL)によって決まるため、カシメ量を微調整するには、例えば、適宜の厚みを有する薄い板(シム板)を下型10と基台2の間に挟んで、上型20と下型10との離間距離を調整すれば良い。また、本実施形態の上型20と下型10は、上述したように、ボルトなどによって各々着脱自在に固定されているが、本発明の上型20と下型10はこれに限定されず、例えば、ダイセット金型とすることも可能である。
【0091】
そして、操作者が回転レバー82をさらに手前に(始動時に回した方向に)1回転させ
ると、図2A及び図3Aに示した状態へと戻る。この状態において、操作者が、上述した操作手段18を操作して、扁平形電池200を取り出すことで、扁平形電池200のカシメ作業が完了する。
【0092】
このように、本発明の扁平形電池用手動式カシメ機1は、上述したクランクホイール50とリンク機構部により、操作者が回転レバー82を回転させる回転力を利用して、上型20と固定されたスライド部材30を往復運動させるため、従来の手動式カシメ機1のように長いレバー部材184を備える必要がないことから、従来の手動式カシメ機100と比べて、コンパクトな形状にすることができる。
【0093】
また、本発明の扁平形電池用手動式カシメ機1は、スライド部材30が、一定軌道、且つ、所定のストロークで往復運動するため、従来の手動式カシメ機100のように操作者が衝撃を検知することによって下死点を認識する必要がない。したがって、例え不慣れな操作者が操作した場合であっても、確実に扁平形電池200をカシメることができる。
【0094】
また、本発明の扁平形電池用手動式カシメ機1は、第1の平歯車72の歯数よりも第2の平歯車74の歯数の方が多くなるように構成された歯車機構部70を備えており、入力軸40の回転トルクよりも、出力軸42の回転トルクの方が大きくいため、従来の手動式カシメ機100と比べて、小さな力で扁平形電池200をカシメることができる。
【0095】
このような本発明の扁平形電池用手動式カシメ機1によれば、従来の手動式カシメ機100と比べてコンパクトな形状を有し、且つ、小さな力で、確実に、扁平形電池200をカシメることができ、したがって、標準的なグローボックス300内で好適に使用可能である。
【0096】
なお、上述した実施形態では、クランク部材として、略円板形状のクランクホイール50を採用しているが、本発明のクランク部材としては、これに限定されず、例えば、クランクシャフトなどを採用することも可能である。
【0097】
また、上述した実施形態では、歯車機構部70を第1の平歯車72と、これと対向して配置した第2の平歯車74とから構成された、いわゆる平行軸歯車減速機としているが、本発明の歯車機構部70はこれに限定されず、例えば、遊星歯車減速機として構成しても良い。また、傘歯車などにより、第1の歯車と第2の歯車を互いに直交する向きに配置して、操作部の位置を装置の前面に配置し、操作者が両手で回転レバー82を回せるように構成しても良い。
【0098】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0099】
1 扁平形電池用手動式カシメ機
2 基台
4 縦壁
4a 凹部
6 ガイド
8 側壁
10 下型
12 凹部
12a 位置決め溝部
14 貫通孔
16 押し上げピン
18 操作手段
18a 操作部材
18b スライド板
18c 溝
20 上型
20a 本体部
22 当接部
23 逃げ部
24 絶縁部材
26 中間部材
28 弾性部材
30 スライド部材
32 ガイド挟持部
32 スライド部材
40 入力軸
42 出力軸
44 クラウン軸
50 クランクホイール
62 第1のリンク
64 第2のリンク
66 接続リンク
70 歯車機構部
72 第1の平歯車
74 第2の平歯車
80 操作部
82 回転レバー
90 カバー部材
92 頂板
96 背面板
100 扁平形電池用手動式カシメ機
102 基台
104 縦壁
106 ガイド
108 側壁
110 下型
112 凹部
112a 位置決め溝部
120 上型
122 当接部
125 ストッパー
125a ストッパーの頭部
130 スライド部材
140 水平軸
150 内部構造部
164 リンク部材
166 接続リンク
180 操作部
182 把持部
184 レバー部材
184a 弧状部
184b 屈曲部
190 カバー部材
192 頂板
194 側壁
200 扁平形電池
202 電池ケース
204 封口板
204a 外周壁
206 パッキン
300 グローブボックス
302 本体部
304 パスボックス
306 作業穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半殻体に形成され、内部に発電要素が収容された電池ケースと、該電池ケースの開口部を封口する封口板とを重ねて下型の載置面上に載置し、該封口板の外周壁を上型により押圧して変形させることで、内部に発電要素が密封された扁平型電池を形成する扁平形電池用手動式カシメ機であって、
操作者によって回転される操作部と連結され、該操作部と連動して回転する入力軸と、
前記上型と固定されるとともに、前記入力軸の回転と連動して、一定軌道を所定のストロークで往復運動するスライド部材と、
前記入力軸と歯車機構部を介して連結され、入力軸の回転と連動して回転する出力軸と、
前記出力軸に軸着され、出力軸とともに回転するクランク部材と、
一端が回動自在に連結された第1のリンクの他端と、一端が前記スライド部材と回動自在に連結された第2のリンクの他端と、一端が前記クランク部材の偏心部に回動自在に連結された接続リンクの他端と、が各々回動自在に連結されたリンク機構部と、を備え、
前記歯車機構部は、前記入力軸に軸着された第1の歯車と、該第1の歯車と噛合し、前記出力軸に軸着された第2の歯車と、を有するとともに、
前記第1の歯車の歯数よりも前記第2の歯車の歯数の方が多くなるように構成されていることを特徴とする扁平形電池用手動式カシメ機。
【請求項2】
前記歯車機構部が、
前記第1の歯車及び第2の歯車が、ともに平歯車であることを特徴とする請求項1に記載の扁平形電池用手動式カシメ機。
【請求項3】
前記歯車機構部における減速比が整数値であることを特徴とする請求項1または2に記載の扁平形電池用手動式カシメ機。
【請求項4】
前記上型の本体部が金属製の部材からなり、該本体部には、前記封口板の外周壁と当接する当接部が周状に形成されるとともに、
前記該封口板の外周壁を上型により押圧して変形させる際に、前記上型と前記電池ケースとが接触しないように、前記上型に逃げ部が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の扁平形電池用手動式カシメ機。
【請求項5】
前記上型の本体部が金属製の部材からなり、該本体部には、前記封口板の外周壁と当接する当接部が周状に形成されるとともに、
前記当接部に囲まれた部分から、弾性部材と接続された絶縁部材が突設していることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の扁平形電池用手動式カシメ機。
【請求項6】
前記下型の載置面が、下型の表面に形成された凹部であり、該凹部には、前記封口板の平面形状と略同一形状の位置決め溝部が形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の扁平形電池用手動式カシメ機。
【請求項7】
前記位置決め溝部には貫通孔が形成されて、該貫通孔には押し上げピンが進退自在に装着されており、
前記押し上げピンが、操作者によって操作される操作手段と連絡し、操作者が該操作手段を操作することによって上下動するように構成されていることを特徴とする請求項6に記載の扁平形電池用手動式カシメ機。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−104644(P2011−104644A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−264759(P2009−264759)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(595047008)株式会社京浜理化工業 (5)
【Fターム(参考)】