説明

扉の支持構造

【課題】 筐体および扉の板厚等を変更することなく、扉のヒンジ機構の剛性を高めることができ、しかも、ヒンジ機構の構成を簡単な構成とすることができること。
【解決手段】 環状の凹部4URが、扉4において支持軸6が挿入される孔4aの周縁に、形成されるもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体等に備えられる扉の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
配線基板等を保守可能に収容する制御ボックスは、一般に、収容部を内部に有する筐体と、その筐体に連結され保守用開口部を開閉する扉とを含んで構成されている。そのような扉の支持構造は、例えば、特許文献1乃至3にも示されるように、扉の端部が筐体の開口部の周縁に蝶番等のヒンジ機構により回動可能に支持される構成とされる。また、扉の筐体の開口部の周縁に対する組み立てを容易にするために例えば、特許文献1にも示されるように、ピン式のヒンジ機構が、提案されている。そのヒンジ機構は、扉の内側の端部に一対設けられる筒状部材と、その各筒状部材の孔に挿入されるピンを有し筐体の開口端部に固定される一対の取付プレートとを含んで構成されている。さらに、例えば、特許文献3にも示されるように、筐体の壁面の孔加工を要することなく筐体内に配される内扉の取り付け位置の変更を容易にするために内扉、取付板、蝶番からなる内扉ユニットが、支柱の受け穴に支持される構成が提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−41310号公報
【特許文献2】実開平5−61376号公報
【特許文献3】特開平11−83290号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように扉がピン式のヒンジ機構により筐体の開口部の周縁に支持される場合、扉の大きさが大となるに従い、即ち、扉の荷重が大になるにつれてヒンジ機構に作用する応力も大となるので上述の取付プレートの板厚、およびピンの直径をより大に変更するとともに、取付プレートおよび筒状部材が固定される筐体または扉の一部の板厚も大に変更することにより、ヒンジ機構、筐体または扉の剛性を高めることが必要とされる。
【0005】
しかし、このような設計変更は、例えば、制御ボックスに要される製造コストが嵩むこととなる。また、部品点数の低減化および部品の共用化の観点からは、大きさの異なる各制御ボックスごとに異なる取付プレート等を含むヒンジ機構が必要となることは、その共用化の趣旨に反することとなる。
【0006】
以上の問題点を考慮し、本発明は、筐体等に備えられる扉の支持構造であって、筐体および扉の板厚等を変更することなく、扉のヒンジ機構の剛性を高めることができ、しかも、ヒンジ機構の構成を簡単な構成とすることができる扉の支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するために、本発明に係る扉の支持構造は、筐体または扉の端部に設けられ、前記筐体および該扉を相対的に回動可能に連結する支持軸と、前記筐体または扉の端部のうちの少なくとも一方の端部に形成され、前記支持軸が挿入される孔を有するとともに、該孔の周囲であって支持軸の半径方向に沿って凹部断面形状を有する第1の連結部と、前記筐体または扉の端部のうちの少なくとも一方の端部に第1の連結部の孔に対向して形成され支持軸の一端が固定される第2の連結部と、を備えて構成される。
【発明の効果】
【0008】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る扉の支持構造によれば、第1の連結部が、支持軸が挿入される孔を有するとともに、孔の周囲であって支持軸の半径方向に沿って凹部断面形状を有するので筐体および扉の板厚等を変更することなく、扉のヒンジ機構の剛性を高めることができ、しかも、ヒンジ機構の構成を簡単な構成とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図3は、本発明に係る扉の支持構造の第1実施例が適用された制御ボックスの外観を示す。
【0010】
図3において、制御ボックスは、プリント配線基板等を収容する収容部を内部に有する筐体2と、筐体2の収容部内に連通する保守用開口端部を開閉する扉4とを含んで構成されている。
【0011】
筐体2における保守用開口端部の周辺には、図1および図2に示されるように、後述する扉4を支持する第2の連結部としての連結端2UBおよび2DBが一体に形成されている。連結端2UBは、筐体2の上面2USに対して略平行に保守用開口端部の周辺から扉4の内側に向けて突出している。また、連結端2DBは、筐体2の下面2LSに対して略平行に保守用開口端部の周辺から扉4の内側に向けて突出している。なお、連結端2UBおよび2DBは、互いに略平行に配されている。連結端2UBおよび2DBは、それぞれ、後述する支持軸6の雄ネジ6Sがねじ込まれる雌ネジを共通軸線上に有している。連結端2UBおよび2DBにおいて各雌ネジの周囲の一端側には、それぞれ、相対向するようにバーリング加工による凸部2Bが形成されている。
【0012】
なお、連結端2UBおよび2DBは、別体の部品が溶接により固定されることにより形成されてもよい。また、連結端2UBおよび2DBの断面形状は、矩形に限られることなく、例えば、補強するために三角形の平板がさらにその両側面に一体に固定されてもよい。また、バーリング加工による凸部2Bの代わりに、ナットが連結端2UBおよび2DBに溶接されてもよい。
【0013】
扉4は、その上端面4Uおよび下端面4Dがそれぞれ筐体2の上面2USおよび下面2LSと共通の平面上に配されるとともに筐体2に対し回動可能に支持されている。略直方体の扉4は、筐体2における保守用開口端部に対向し内側に窪みを有している。図3において、例えば、扉4の上端面4Uおよび下端面4Dの左側部分には、それぞれ、筐体2の連結端2UBおよび2DBの雌ネジに対応して支持軸6が挿入される孔4aが形成されている。第1の連結部としての上端面4Uの孔4aの周縁には、バーリング加工により形成された環状の縁部4Rが上方に向けて突出している。また、第1の連結部としての下端面4Dの孔4aの周縁には、同様なバーリング加工により形成された環状の縁部4Rが下方に向けて突出している。円筒状の縁部4Rを形成することにより、扉4の荷重による支持軸6の傾斜が抑制される。
【0014】
さらに、上端面4Uの縁部4Rの外周部近傍には、環状の凹部4URが円周方向に沿って形成されている。即ち、上端面4Uの一部は、孔4aを挟んで支持軸6または孔4aの半径方向に沿って二つの凹部を有する断面形状を有している。下端面4Dの縁部4Rの外周部近傍にも、同様な環状の凹部4DRが円周方向に沿って形成されている。
【0015】
支持軸6は、工具等の先端が係合する溝を有する頭部と、その頭部と一体に形成される雄ねじ部6Sとを含んで構成されている。円柱状の頭部の直径は、隙間ばめとなるように孔4aの内径よりも若干小なる値に設定されている。また、雄ねじ部6Sの直径は、頭部の直径よりも小なる値に設定されている。支持軸6の一端が連結端2UBおよび2DBに取り付けられた場合、支持軸6の頭部における雄ねじ部6Sとの境界面は、連結端2UBおよび2DBの表面に密着することとなる。
【0016】
また、上端面4Uと連結端2UBとの間、および、下端面4Dと連結端2DBとの間には、それぞれ、相互間の摩擦を低減するためにステンレス鋼板等で作られたワッシャー8Aおよび8Bが設けられている。ワッシャー8Aおよび8Bは、支持軸6が貫通する孔を中央に有している。なお、扉4の開閉頻度が少なく、扉4の板厚が薄い場合、即ち、扉4の荷重による負荷が比較的小さい場合、摩擦力および接触圧力が小なので図4に示されるように、ワッシャー8Aおよび8Bがなくても良い。なお、図4においては、図1における同一の構成要素とされるものについて同一の符号を付して示し、その重複説明を省略する。
【0017】
従って、扉4の上端面4Uおよび下端面4Dの一部は、それぞれ、ワッシャー8Aおよび8Bを介して筐体2の連結端2UBおよび2DBを外側から挟持するように配置されるとともに、支持軸6の雄ネジ6Sが連結端2UBおよび2DBの雌ネジにねじ込まれることにより、連結端2UBおよび2DBに回動可能に支持されることとなる。また、このように上端面4Uおよび下端面4Dの縁部4Rの外周部近傍には、環状の凹部4UR、4DRが円周方向に沿って一体に形成されているので上端面4Uおよび下端面4Dの支持部周辺における曲げ剛性が高まることとなる。その結果、板厚を大にすることなく扉4のヒンジ機構の剛性を高めることができ、しかも、連結端2UBおよび2DBも筐体2に一体に形成されているのでヒンジ機構を簡単な構成とすることができる。
【0018】
また、上述の例においては、扉4の上端面4Uおよび下端面4Dにおける孔4aの周縁に、縁部4Rが形成されているが、斯かる例に限られることなく、例えば、扉4’の荷重が比較的小である場合、図5に示されるように、縁部が形成されないものであってもよい。なお、図5および後述する例においては、図1における同一の構成要素とされるものについて同一の符号を付して示し、その重複説明を省略する。
【0019】
さらに、支持軸6の形状は、円柱形に限られることなく、例えば、図6に示されるように、支持軸8が、工具等の先端が係合する溝を有するフランジ部付頭部と、その頭部と一体に形成される雄ねじ部8Sとを含んで構成されている。頭部がフランジ部を有することにより、比較的大なる衝撃が扉4に作用した場合であっても扉4の筐体2からの脱落が確実に回避されることとなる。
【0020】
図7および図8は、本発明に係る扉の支持構造の第2実施例が適用された制御ボックスの外観を示す。
【0021】
図7において、制御ボックスは、複数のプリント配線基板18を収容する収容部を内部に有する筐体12と、筐体12の収容部内に回動可能に配され複数のプリント配線基板18を支持する第1の扉16と、筐体12の収容部において第1の扉16の上方に一部重なり、かつ、回動可能に配されプリント配線基板18を支持する第2の扉14とを含んで構成されている。
【0022】
上述の第1実施例においては、扉4において支持軸6が挿入される孔4aの周縁に環状の凹部4URおよび4DRが形成されているが、その代わりに、図7に示される例においては、図9に拡大されて示されるように、筐体12において支持軸26が挿入される孔12aの周縁に環状の凹部12Rが形成されている。
【0023】
筐体12の収容部における底部には、図8に示されるように、プリント配線基板18が支柱20を介して小ネジにより固定されている。プリント配線基板18の上方には、第1の扉16が回動可能に支持されている。
【0024】
第1の扉16は、図8に示されるように、相対向する各面にそれぞれ支柱20および22を介してプリント配線基板18を保持している。これにより、各プリント配線基板18は、その面に対し略平行に配されることとなる。
【0025】
第1の扉16は、図7に示されるように、その短辺にそれぞれ一体に設けられる連結端16Lおよび16Rを介して筐体12の収容部の内周部に回動可能に支持されている。連結端16Lおよび16Rは、互いに同一構造なので連結端16Lについて説明し、連結端16Rについての説明を省略する。第2の連結部としての連結端16Lは、図9に拡大されて示されるように、後述する支持軸26の雄ねじ26Sがねじ込まれる雌ネジ孔16Sが形成されている。雌ネジ孔16Sの周縁には、バーリング加工により形成された環状の縁部16Bが内側に向けて突出している。連結端16Lの雌ネジ穴16Sの周縁と対向する筐体12の内面との間には、ステンレス鋼板製のワッシャー28が配されている。ワッシャー28は、支持軸26が挿入される孔を有している。
【0026】
一方、筐体12における連結端16Lに対向する部分には、図9に示されるように、支持軸26が挿入される孔12aが形成されている。
【0027】
孔12aの周縁には、バーリング加工により形成された環状の縁部12Bが外方に向けて突出している。また、第1の連結部としての縁部12Bの外周部近傍には、環状の凹部12Rが円周方向に沿って形成されている。即ち、筐体12の一部は、孔12aを挟んで半径方向に沿って二つの凹部を有する断面形状を有している。なお、連結端16Rに対向する筐体12の一部においても、同様な縁部が形成され、かつ、同様な環状の凹部が円周方向に沿って形成されている。
【0028】
支持軸26は、工具等の先端が係合する溝を有する頭部と、その頭部と一体に形成される雄ねじ部26Sとを含んで構成されている。円柱状の頭部の直径は、隙間ばめとなるように孔12aの内径よりも若干小なる値に設定されている。また、雄ねじ部26Sの直径は、頭部の直径よりも小なる値に設定されている。
【0029】
筐体12における第2の扉14は、図8に示されるように、その外面に複数の支柱24を介してプリント配線基板18を保持している。これにより、プリント配線基板18は、第2の扉14の外面に対し略平行に配されている。
【0030】
第2の扉14は、図8に示されるように、筐体12の底部に対する位置が第1の扉16の位置よりも高い位置とされる。
【0031】
第2の扉14は、図7および図8に示されるように、その短辺にそれぞれ一体に設けられる連結端14Lおよび14Rを介して筐体12の収容部の内周部に回動可能に支持されている。連結端14Lおよび14Rの真下となる位置には、それぞれ、連結端16L,16R、が配されている。連結端14Lおよび14Rは、互いに同一構造であり、また、上述の連結端16Lおよび16Rと同様な構造である。
【0032】
連結端14Lの雌ネジ孔(不図示)の周縁と対向する筐体12の内面との間には、図9に示されるワッシャー28と同様なワッシャーが配されている。そのワッシャーは、図9で示されるような支持軸26が挿入される孔を有している。
【0033】
一方、筐体12における連結端14Lおよび14Rに対向する部分には、図9に示されるような支持軸26が挿入される孔と同様な孔が形成されている。その孔の周縁には、バーリング加工により形成された環状の縁部が外方に向けて突出している。また、縁部の外周部近傍には、環状の凹部が円周方向に沿って形成されている。即ち、筐体12の一部は、その孔を挟んで半径方向に沿って二つの凹部を有する断面形状を有している。
【0034】
第2の扉14は、一対の固定部17に小ねじが筐体12の孔を介してねじ込まれることにより、筐体12に対して固定される。また、第1の扉16は、一対の固定部15に小ねじが筐体12の孔を介してねじ込まれることにより、筐体12に対して固定される。
【0035】
従って、本実施例においても、扉14および16の連結端14R,14L,16R,および16Lは、それぞれ、ワッシャー28を介して筐体12の内周部に配置されるとともに、支持軸26の雄ネジ26Sが連結端の雌ネジ16Sにねじ込まれることにより、筐体12に回動可能に支持されることとなる。また、このように筐体12の孔12aの周縁には、環状の凹部12Rが円周方向に沿って一体に形成されているので筐体12の支持部周辺における曲げ剛性が高まることとなる。その結果、筐体12の板厚を大にすることなくヒンジ機構の剛性を高めることができ、しかも、連結端も扉14、16に一体に形成されているのでヒンジ機構を簡単な構成とすることができる。特に、本実施例においては、制御ボックスが厚さ約1.6mm以下の薄板鋼板で作られる場合、扉の回転機構をコンパクトにでき、また、別個の蝶番等を用いる必要がないので制御ボックスの組み立てが容易で、かつ、安価な制御ボックスを製造することができることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る扉の支持構造の第1実施例の要部を示す部分断面図である。
【図2】本発明に係る扉の支持構造の第1実施例の要部を示す部分断面図である。
【図3】本発明に係る扉の支持構造の第1実施例が適用された制御ボックスの外観を示す斜視図である。
【図4】第1実施例の変形例の要部を示す部分断面図である。
【図5】第1実施例の他の変形例の要部を示す部分断面図である。
【図6】第1実施例のさらなる他の変形例の要部を示す部分断面図である。
【図7】本発明に係る扉の支持構造の第2実施例が適用された制御ボックスの外観を示す平面図である。
【図8】図7に示される例における側面から見た断面図である。
【図9】図7に示される例における要部を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0037】
2、12 筐体
2UB,2DB、14R,14L、16R,16L 連結端
4、14、16 扉
4UR,4DR、12R 凹部
6、8、26 支持軸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体または扉の端部に設けられ、該筐体および該扉を相対的に回動可能に連結する支持軸と、
前記筐体または扉の端部のうちの少なくとも一方の端部に形成され、前記支持軸が挿入される孔を有するとともに、該孔の周囲であって該支持軸の半径方向に沿って凹部断面形状を有する第1の連結部と、
前記筐体または扉の端部のうちの少なくとも一方の端部に前記第1の連結部の孔に対向して形成され前記支持軸の一端が固定される第2の連結部と、
を具備して構成されることを特徴とする扉の支持構造。
【請求項2】
前記端部から突出する環状の縁部が前記第1の連結部における孔の周縁に形成されることを特徴とする請求項1記載の扉の支持構造。
【請求項3】
前記扉の回動に作用する摩擦力を低減させる摩擦低減用部材が前記第1の連結部と前記第2の連結部との間にさらに配されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の扉の支持構造。
【請求項4】
前記支持軸は、フランジ部を頭部に有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の扉の支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−283494(P2006−283494A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−107794(P2005−107794)
【出願日】平成17年4月4日(2005.4.4)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【Fターム(参考)】