説明

扉の開閉機構

【課題】従来の扉の自動開閉では、扉の開閉の境界となる温度を一定にしかできなかった。また、温度センサーやモーター作動のための電力を必要とした。本発明は上記課題を解決し、固定的な一定の境界温度に限定されることなく2点の相対的な温度差を扉の開閉の境界温度とすることができ、電力が不要な扉の自動開閉を提供することを目的とするものである。
【解決手段】相対的な温度差による膨張量の差から生ずる素材の内部応力を開閉力として利用する扉の開閉機構であって、当該素材と当該扉との間に位置して当該扉へ開閉力を与える作用部と、当該素材側にあって当該作用部に連繋し、当該作用部の当該扉への開閉を調節することができる調節手段と、からなることを特徴とする扉の開閉機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉を開閉する機構に関し、温度差により扉が自動に開閉することが可能となる開閉機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の扉の開閉は、車のドアの窓ガラスに於いて,バイメタル(膨張率の異なる金属を一枚の金属として張り合わせたもの)の一端を当該窓ガラスに固定し、他端をドアの一部に固定し、温度変化により窓ガラスを自動開閉できるものが知られている。
また、出窓の開閉を、温度センサー等の検知手段を介し、モーター等の駆動部を用いて移動手段を作動する構成とした出窓の自動開閉装置が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平7−215055号公報
【特許文献2】特開2007−169916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した扉の自動開閉では、扉の開閉の境界となる温度(以下、このような温度を「境界温度」という。)を一定にしかできなかった。また、温度センサーやモーター作動のための電力を必要とした。
【0005】
本発明は上記課題を解決し、固定的な一定の境界温度に限定されることなく2点の相対的な温度差を扉の開閉の境界温度とすることができ、電力が不要な扉の自動開閉を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願の請求項1の発明は、相対的な温度差による膨張量の差から生ずる素材の内部応力を開閉力として利用する扉の開閉機構であって、当該素材と当該扉との間に位置して当該扉へ開閉力を与える作用部と、当該素材側にあって当該作用部に連繋し、当該作用部の当該扉への開閉を調節することができる調節手段と、からなることを特徴とする。
【0007】
また、本願の請求項2の発明は、相対的な温度差による膨張量の差から生ずる素材の内部応力を開閉力として利用する扉の開閉機構であって、当該素材と当該扉との間に位置して当該扉へ開閉力を与える作用部と、当該素材側にあって当該作用部に連繋し、当該作用部の当該扉への開閉を調節することができる調節手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本願の請求項3の発明は、請求項1又は2記載の扉の開閉機構において、作用部は、当該扉に向けた長さを増減可能とすることを特徴とする。
【0009】
また、本願の請求項4の発明は、請求項1、2又は3の扉の開閉機構において、調節手段は、ばねその他の弾性体から成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上述したように請求項1及び2記載の発明によれば、従来一定の固定温度差となる境界温度しか扉の開閉ができなかったが、本発明ではこのような固定された境界温度に限定されることはない。そこで、2点の相対的な温度差を開閉の境界とした扉の自動開閉をすることができるため、室内とくらべ室外が冷える夜間に開き、室内とくらべ室外が温まる昼間には閉じ、常に室内の温度を下降させることなどが可能となる。また扉の開閉時に電力を必要としない。
【0011】
また、請求項3記載の発明によれば、作用部の長さを適宜変えることによって扉に対する開閉量の変化をもたらすことができるので、相対的な膨張量つまりは温度差に対する扉の開閉量の比率を調節することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の扉の開閉機構の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は相対的な温度差による扉の開閉扉の全体構成を示す図である。
ここで「相対的な温度差」とは、例えば、ブースを想定した場合の内部と外部の温度差や素材がある面を構成する場合のその両面間の温度差をいう。
図1において、上側扉105及び下側扉106を除く、内気面膨張部100ないし下側回転部(水平方向)108は本発明の要素の一つである作用部を構成するものであって、100は内気の温度上昇によって膨張を行う素材の内気面膨張部、101は内気面膨張部100の膨張の上側回転部(水平方向)103への伝達を行う内気面上腕、102は内気面膨張部100の膨張の下側回転部(水平方向)108への伝達を行う内気面下腕、103は連結する上側回転部(垂直方向)104へ回転の力の伝達を行う上側回転部(水平方向)、上側回転部(垂直方向)104は上側扉105へ回転の力の伝達を行う上側回転部(垂直方向)、105は下側扉106とともに開閉し内気と外気の通過遮断の切り替えを行う上側扉、106は上側扉105とともに開閉し内気と外気の通過遮断の切り替えを行う下側扉、107は下側扉106へ回転の力の伝達を行う下側回転部(垂直方向)、108は連結する下側回転部(垂直方向)107へ回転の力の伝達を行う下側回転部(水平方向)、109は外気の温度上昇によって膨張を行う素材の外気面膨張部、110は外気面膨張部109の膨張の上側回転部(水平方向)103への伝達を行う外気面上腕、111は外気面膨張部109の膨張の下側回転部(水平方向)108への伝達を行う外気面下腕を示す。
【0013】
以下、内気面上腕結合部112ないし外気面上腕結合部117は本発明の要素のひとつである調節手段を構成するものであって、112は内気面膨張部100と内気面上腕101との連結を行う内気面上腕結合部、113は内気面膨張部100と内気面下腕102との連結を行う内気面下腕結合部、114は上側回転部(水平方向)103と上側回転部(垂直方向)104との連結を行う上側回転部結合部、115は下側回転部(水平方向)108と下側回転部(垂直方向)107との連結を行う下側回転部結合部、116は外気面膨張部109と外気面上腕110との連結を行う外気面上腕結合部、117は外気面膨張部109と外気面下腕111との連結を行う外気面下腕結合部を示す。
【0014】
図2、図3及び図4においては、図1で示した扉の開閉機構の全体構成における各部分の構造を示す。
図2は扉の開閉機構全体の奥行きを含めた形状の斜視図を示す。
図2において、扉の開閉機構全体200は図1で示した上側回転部(水平方向)
103、上側回転部(垂直方向) 104、上側扉105、下側扉106、下側回転部(垂直方向) 107、下側回転部(水平方向) 108,上側回転部結合部114,下側回転部結合部115に相当する部分である。
【0015】
図3は扉部分の回転軸を示す。
図3において、図1で示した上側回転部(水平方向)103、上側回転部(垂直方向)104は上側回転部結合部114で連結しており、上側回転部の回転軸301を軸とし回転を可能とする。図1で示した上側扉105は,ここを中心として上側扉105が回転を行う上側扉の回転軸302を軸とし回転を可能とする。
図1で示した下側回転部(垂直方向)107、下側回転部(水平方向)108は下側回転部結合部115で連結しており、下側回転部の回転軸304を軸とし回転を可能とする。図1で示した下側扉106は,ここを中心として下側扉106が回転を行う下側扉の回転軸303を軸とし回転を可能とする。
【0016】
図4は温度差により膨張する膨張部及びその周辺の部分拡大図である。
図4において、400は膨張部及びその周辺の部分を拡大して示しており、401は図1で示した内気面上腕101、内気面下腕102、外気面上腕110、外気面下腕111の各々に相当する。ばね403により、膨張部分402が膨張した結果、腕401が接触する相手及び自身への過負荷を吸収し、負荷がなくなると腕401をもとの位置に戻す機能を備える。
例えば、腕401が上側回転部(水平方向)103に接触して回転力を与える場合、ばね403の伸縮機能によって上側回転部(水平方向)103への過負荷を吸収したり、腕401自身の過負荷に伴う損傷の危険を回避させることができる。
つまり、ばね403を介在させることによって腕401、上側回転部(水平方向)103の作用部の動作に一種の自由度を与えるから、境界温度が一定以上になっても、直ちに作用部が扉を開閉させることなく開閉時を遅らせるよう調節することができる調節手段になる。この自由度が一定の固定的な境界温度に限定されない本発明の特徴のひとつである。
【0017】
なお、ここではばね403を過負荷の吸収するために用いたが、これに限定されるものではなく、ゴム等の他の弾性体を用いてもよい。
【0018】
図4では1箇所のみの拡大図を記載しているが、この機能は上下左右対称である4箇所にともに適用される。
【0019】
図5、図6及び図7において、内気(内気面、図面左側)と外気(外気面、図面右側)の温度差によって扉が開閉する状態を示す。
図5は、内気温度が外気温度より高い場合の状態を表している。
内気面500が外気面501と比較し、内気面500の温度が高いためにより膨張する。図1で示した上側回転部及び扉502は時計周りのトルクが大きくなるため回転する。回転するに従い外気面501に含まれる図4で記載したばね403による反発が大きくなり、平衡状態となり回転を止める。同様に図1で記載した下側回転部及び扉503は反時計周りに回転する。この結果図1で示した上側回転部(垂直方向)104,下側回転部(垂直方向)107によって扉部分に回転の力が伝わり上側回転部(垂直方向)及び扉502、並びに下側回転部(垂直方向)及び扉503の間が開口する。
【0020】
図6は外気温度が内気温度より高い場合の状態を表している。
外気面601が内気面600と比較し、外気面601の温度が高いためにより膨張する。上側回転部及び扉602は反時計周りのトルクが大きくなるため回転する。回転するに従い内気面600に含まれる図4で示したばね403による反発が大きくなり、平衡状態となり回転を止める。同様に下側回転部及び扉603は時計周りに回転する。しかし図5の場合と異なり、図1で示した上側回転部(垂直方向)104、下側回転部(垂直方向)107によって扉部分に回転の力が伝達しないために、上側回転部及び扉602、並びに下側回転部及び扉603の間は開口しない。
【0021】
図7は、温度が高温で平衡状態である場合の状態を表している。
内気面700が外気面701と膨張量が同じため、左右対称となりトルクが生じない。よって上側回転部及び扉702、下側回転部及び扉703は回転しない。余分な負荷は、図4で示した4箇所のばね403により吸収される。
【0022】
図8、図9及び図10は、開閉の境界となる温度を等温から移動させる方法、及び少ない(多い)膨張量でより大きな(小さな)開口を得る方法である。
図8は境界温度を平衡状態から偏りを持たせる場合を表す図である。
これは、例として外気と内気の温度差がある程度生じるまで扉を開閉したくない場合などに用いる。
上部の扉および回転部の接点800に角度を持たせているため、内気が外気とくらべ少し温度が高いだけでは扉部分に回転の力が伝達しない。よってある程度内気の温度が高い状態を基準として開口が始まる。
下部の扉および回転部の接点801も同様である。
また、図とは傾きを持たせる角度を逆方向にすることで温度が低い状態を基準とできる。
【0023】
図9は温度差の大きさに対する扉の開閉量の比率を高くする場合を表す図である。
これは、例として膨張率が小さな素材を、図1で記載した内気面膨張部100外気面膨張部109に用いた結果、膨張量が小さくなってしまう場合においても扉を大きく開閉させたい場合などに用いる。
回転軸に近い場合の上部の腕および回転部の接点900、回転軸に近い場合の下部の腕および回転部の接点901により、接点が回転軸に近づき、より少ない膨張量で回転角が大きくなる。その結果温度差が小さい場合も扉の回転角が大きくなり、開口量が大きくなる。
【0024】
図10は温度差の大きさに対する扉の開閉量の比率を低くする場合を表す図である。
これは、例として想定する内気と外気の温度差が大きく、図1で記載した内気面膨張部100外気面膨張部109の膨張量が大きくなってしまう結果、扉が限界位置まで開いてしまうことを避けたい場合などに用いる。
回転軸に遠い場合の上部の腕および回転部の接点1000、回転軸に遠い場合の下部の腕および回転部の接点1001により、接点が回転軸から離れ、より大きな膨張量で回転角が小さくなる。その結果温度差が大きい場合も扉の回転角が小さくなり、開口量が小さくなる。
【0025】
要するに温度差の大きさに対する扉の開閉量の比率を高くする場合(図9)や温度差の大きさに対する扉の開閉量の比率を低くする場合(図10)には、作用部を構成する腕等の部材のサイズ(寸法、長さ)を変更(増減)させることによって達成することができる。

【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】扉の開閉機構の全体を表す構成図である。
【図2】扉の開閉機構扉部分全体の奥行きを含めた形状を表す斜視図である。
【図3】回転の軸(固定軸)の位置を表す図である。
【図4】温度差により膨張する部分とその拡大図である。
【図5】内気温度が外気温度より高い場合の状態を表す図である。
【図6】外気温度が内気温度より高い場合の状態を表す図である。
【図7】温度が高温で平衡状態である場合の状態を表す図である。
【図8】境界温度を平衡状態から偏りを持たせる場合を表す図である。
【図9】温度差の大きさに対する扉の開閉量の比率を高くする場合を表す図である。
【図10】温度差の大きさに対する扉の開閉量の比率を低くする場合を表す図である。
【符号の説明】
【0027】
100: 内気面膨張部
101: 内気面上腕
102: 内気面下腕
103: 上側回転部(水平方向)
104: 上側回転部(垂直方向)
105: 上側扉
106: 下側扉
107: 下側回転部(垂直方向)
108: 下側回転部(水平方向)
109: 外気面膨張部
110: 外気面上腕
111: 外気面下腕
112: 内気面上腕結合部
113: 内気面下腕結合部
114: 上側回転部結合部
115: 下側回転部結合部
116: 外気面上腕結合部
117: 外気面下腕結合部
200: 扉部分全体(103-108、114、115に相当)
300: 扉部分全体(103-108、114、115に相当)
301: 上側回転部の回転軸
302: 上側扉の回転軸
303: 下側扉の回転軸
304: 下側回転部の回転軸
400: 膨張部分及び腕(100-102、109-111に相当)
401: 腕(101、110、102、111に相当)
402: 膨張部(100、109に相当)
403: ばね
500: 内気面(100-102に相当)
501: 外気面(109-111に相当)
502: 上側回転部及び扉(103-105に相当)
503: 下側回転部及び扉(106-108に相当)
600: 内気面(100-102に相当)
601: 外気面(109-111に相当)
602: 上側回転部及び扉(103-105に相当)
603: 下側回転部及び扉(106-108に相当)
700: 内気面(100-102に相当)
701: 外気面(109-111に相当)
702: 上側回転部及び扉(103-105に相当)
703: 下側回転部及び扉(106-108に相当)
800: 上部の扉及び回転部の接点
801: 下部の扉及び回転部の接点
900: 回転軸に近い場合の上部の腕及び回転部の接点
901: 回転軸に近い場合の下部の腕及び回転部の接点
1000: 回転軸に遠い場合の上部の腕及び回転部の接点
1001: 回転軸に遠い場合の下部の腕及び回転部の接点


【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対的な温度差による膨張量の差から生ずる素材の内部応力を開閉力として利用する扉の開閉機構であって、当該素材と当該扉との間に位置して当該扉へ開閉力を与える作用部と、当該素材側にあって当該作用部に連繋し、当該作用部の当該扉への開閉を調節することができる調節手段と、からなることを特徴とする扉の開閉機構。
【請求項2】
相対的な温度差による膨張量の差から生ずる素材の内部応力を開閉力として利用する扉の開閉機構であって、当該素材と当該扉との間に位置して当該扉へ開閉力を与える作用部と、当該素材側にあって当該作用部に連繋し、当該作用部の当該扉への開閉を調節することができる調節手段とを備えることを特徴とする扉の開閉機構。
【請求項3】
請求項1又は2記載の扉の開閉機構において、作用部は、当該扉に向けた長さを増減可能とすることを特徴とする扉の開閉機構。
【請求項4】
請求項1、2又は3の扉の開閉機構において、調節手段は、ばねその他の弾性体から成ることを特徴とする扉の開閉機構。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−299297(P2009−299297A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−152344(P2008−152344)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(391002409)株式会社 日立システムアンドサービス (205)
【Fターム(参考)】