説明

扉の隙間封止用マグネットシートセット

【課題】簡便に取り付け可能で、しかも、必要がある場合には、簡単にドア等の扉を開閉し、かつ、再封止も簡単に行える封止手段を提供する。
【解決手段】扉側シート0101と扉枠側シート0102とによって扉と扉枠との間にできる隙間を封止する機能を有し、扉側シートの第一磁着面0104と扉枠側シートの第二磁着面0107とが磁力密着することにより、隙間を封止する点、及び、第一磁着面に溝0105が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品工場や医薬品工場等のクリーンルームが必要とされる工場等で扉の隙間を封止するために使用する隙間封止用マグネットシートセット及びシートに関する。
【背景技術】
【0002】
食品工場や医薬品工場では、外部からの虫などの異物の侵入を防ぐクリーンルームが必要とされる。一方で、工場内への人や物品の出入や、非常口、窓、点検口などの開口部とこれを塞ぐ扉との間には、開閉のために隙間がある。そこで、この隙間を封止する必要がある。
【0003】
従来技術としては、例えば、閉鎖位置にある回転ドアの下面直下の床面に実質上ドア幅一杯に且つ床の表面に凹凸が生じないように磁石を嵌め込み、磁性流体をその中に封入した細長い容器であって、この容器の底部を弾性材料で構成すると共にこの容器の両側部に剛性材料を配してなる磁性シール部材を、ドア下面に取り付けてなる回転ドアのシール構造がある(特許文献1)。
【0004】
あるいは、ドアの隙間をコーキング等で封止する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公H7−018303
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ドアの下面の床に磁石を嵌め込むのはコストがかかる。特に、後から加工を行うのは困難である。
【0007】
一方、ドアの隙間をコーキング等で封止するのは簡便であるが、この場合は、ドアを開くことができない。そこで、非常口等、非常時には速やかに開閉を行う必要がある開口部については、この手段は適さない。
【0008】
したがって、簡便に取り付け可能で、しかも、必要がある場合には、簡単にドア等の扉を開閉し、かつ、再封止も簡単に行える封止手段が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、以上の課題を解決するため、本願出願人は、次の扉の隙間封止用マグネットシートセットを提案する。
【0010】
すなわち、第一の発明として、
扉側シートと扉枠側シートとによって扉と扉枠との間にできる隙間を封止するためのマグネットシートセットであって、
扉側シートは、
扉面の外縁にそって自身を固定するための第一貼付面と、
扉面の外縁から庇状に出て扉枠側シートに磁力密着するための第一磁着面と、
第一磁着面が扉の外縁に沿って折曲可能に第一磁着面に設けられる溝と、
を有し、
扉枠側シートは、
扉枠面の扉側縁に沿って自身を固定するための第二貼付面と、
第一磁着面と磁力密着するための第二磁着面と、
を有する扉の隙間封止用マグネットシートセット、を提案する。
【0011】
第二の発明として、
扉側シートと扉枠側シートとによって扉と扉枠との間にできる隙間を封止するためのマグネットシートセットであって、
扉側シートは、
扉面の外縁にそって自身を固定するための第三貼付面と、
第四磁着面と磁力密着するための第三磁着面と、
を有し、
扉枠側シートは、
扉枠面の扉側縁に沿って自身を固定するための第四貼付面と、
扉枠面の扉側縁から庇状に出て扉側シートに磁力密着するための第四磁着面と、
第四磁着面が扉の外縁に沿って折曲可能に第四磁着面に設けられる溝と、
を有する扉の隙間封止用マグネットシートセット、を提案する。
【0012】
第三の発明として、第一の発明に記載の扉側シートを提案する。
【0013】
第四の発明として、第二の発明に記載の扉枠側シートを提案する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のマグネットシートセットにより、扉に簡便に取り付け可能で、しかも、必要がある場合には、簡単に扉を開閉し、かつ、再封止も簡単に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本件発明の実施の形態について、添付図面を用いて説明する。なお、本件発明は、これら実施形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。なお、実施形態1は、主に請求項1などに関する。実施形態2は、主に請求項2などに関する。実施形態3は、主に請求項3及び4などに関する。
<<実施形態1>>
<実施形態1:概要>
【0016】
本実施形態のマグネットシートセットは、扉側シートと扉枠側シートとによって扉と扉枠との間にできる隙間を封止する機能を有し、扉側シートの第一磁着面と扉枠側シートの第二磁着面とが磁力密着することにより、隙間を封止する点、及び、第一磁着面に溝が設けられている点に特徴を有する。
【0017】
なお、本明細書において、「扉」とは、ドアに限定されず、窓、点検口などに設けられた、開閉式扉を含む。
<実施形態1:構成>
【0018】
図1は、本実施形態のマグネットシートセットの一例を示す概念図である。(a)が平面図、(b)が底面図、(c)が横断面図である。
【0019】
この図のように、本実施形態のマグネットシートセットは、「扉側シート」(0101)と「扉枠側シート」(0102)とからなる。
【0020】
扉側シートは、扉側に貼り付けて使用されるべきシート状部材である。
【0021】
扉枠側シートは、扉枠側に貼り付けて使用されるべきシート状部材である。
【0022】
本実施形態のマグネットシートセットは、扉側シートの第一磁着面(0104)と扉枠側シートの第二磁着面(0107)とが磁力密着することにより、隙間を封止する機能を有する。
<扉側シート>
【0023】
本実施形態のマグネットシートセットの扉側シートは、第一貼付面と、第一磁着面と、溝と、を有する。
<第一貼付面>
【0024】
「第一貼付面」(0103)は、扉側シートの扉面側に配置されるべき面である。扉面の外縁にそって扉側シート自身を固定する機能を有する。
【0025】
「扉面の外縁」とは、扉面の周縁に近い部分である。
【0026】
固定の手段は特に限定されないが、粘着テープを用いれば、貼り付けることで扉面の外縁にそって容易に固定することができる。
<第一磁着面>
【0027】
「第一磁着面」(0104)は、後述する扉枠側シートに磁力密着するための機能を有する。扉面の外縁から庇状に出て扉枠側シートの第二磁着面と密着する。第一磁着面は、磁石であっても良いし、第二磁着面が磁石である場合は、この磁石と、磁力により密着可能な磁性金属であっても良い。
【0028】
磁着面同士の接触により、ほこりが発生することを防ぐためには、ゴムに磁性材料を練りこんだゴム磁石や、磁石や磁性金属の表面を合成樹脂でコーティングすることとするのが好ましい。特にゴム磁石を利用する場合は、扉のひずみ、ゆがみに追従するので封止を確実に行うことができる。
【0029】
図2は、本実施形態のマグネットシートセットの使用状況の一例を示す概念図である。(a)が閉扉状態のドア、(b)がこのドアのA−A部分断面拡大図、(c)が開扉状態のドア、(d)がこのドアのB−B部分断面拡大図、を表している。また、(e)は、(a)のドアの隅の様子を示すために点線で示された円の部分を拡大した部分拡大図であり、ドア枠とドアは、点線で示されている。この図には、扉(0201)、扉枠(0202)、扉側シート(0203)、扉枠側シート(0204)が図示されている。なお、(a)及び(c)には、扉側シート、扉枠側シートを省略している。
【0030】
「扉面の外縁から庇状に出る」とは、この図の(b)のように、扉面の外周よりも扉枠側へ張り出しており、このために、閉扉状態では、第一磁着面の少なくとも一部が扉枠の一部を覆う状態となることをいう。この結果、第一磁着面が扉枠側シートの第二磁着面と密着することが可能となる。
(四隅の処理)
【0031】
また、扉の四隅の部分の処理については、例えば、この図の(e)のように、短冊状の扉側シートの端を斜めに切除して組み合わせることで隙間が生じないようにすれば良い。後述するように、扉側シートの第一磁着面には溝が設けられているので、長手方向への折曲よりも、長手方向に直交する短手方向に柔軟に折れ曲がる。そこで、扉と扉枠とが、同一平面になく、段差が生じている場合には、長手方向が段差部分にかかると、この部分に隙間が生じるおそれがあるので、これを避けるために斜めに切除して組み合わせることが好ましい。また、組み合わせた部分に、隙間が生じる場合は、この部分をコーキングで埋めることによって、隙間をなくすことができる。
<溝>
【0032】
再び図1を参照する。
【0033】
「溝」(0105)は、第一磁着面に設けられる。溝は、マグネットシートの一部を薄く形成することによって設けることもできる。あるいは、この図のように、短冊状に形成されたマグネットを、土台となるシートに、一定の隙間を開けて固定することにより設けることもできる。
【0034】
なお、土台となるシートは、本実施形態のマグネットシートセットに必須の構成ではない。またその材質も合成樹脂、紙、布、ゴムなど、シート状部材であれば特に限定されない。しかし、土台となるシートは、表面に露出することとなる部分であるから、耐久性のある素材であることが好ましい。例えばシグマ紙業株式会社の「ICCSSO (イセッソ)」を使用することができる。
【0035】
この溝は、第一磁着面が扉の外縁に沿って折曲可能とする機能を有する。
【0036】
図3は、本実施形態のマグネットシートセットの使用状況の他の一例を示す部分断面図である。この図には、扉(0301)、扉枠(0302)、扉側シート(0303)、扉枠側シート(0304)が図示されている。この図の(a)に比べ、(b)では、扉と扉枠とが、同一平面になく、段差が生じている。本実施形態のマグネットシートセットは、このような場合にも、溝(0305)があるために、第一磁着面が扉の外縁に沿って容易に折曲可能となり、隙間を封止することができる。その結果、本実施形態のマグネットシートセットは、さまざまな扉に使用することができる。
(溝の本数)
【0037】
なお、溝の本数については、一以上であれば、特に限定されない。例えば、この図の(a)や(b)のように、2本にするといった具合である。溝が2本以上の場合、隙間が小さいときは、この図の(c)のように、溝の部分で扉側シートの一部を切り離せば、マグネットシートセットの幅が狭くてすむので、見た目が良い。あるいは、溝の本数は、3本またはそれ以上であっても良い。
(溝の幅)
【0038】
また、溝の幅は特に限定されない。溝の幅は狭すぎると、磁石部分の厚みがぶつかるなど自由に折り曲げができないが、広すぎると、扉のゆがみなどのために磁着面同士の接触領域にずれが生じ、溝の部分と第二磁着面の一部とが接触する場合、磁着する面積が減少して、封止効果が減少するおそれがある。例えば、溝の幅を1mmから3mm程度とすれば良い。
(溝と溝との間隔)
【0039】
溝と溝との間隔も特に限定されない。溝と溝との間隔は、図1の(b)において両矢印で示した部分の長さであり、溝と、扉側シートの端との長さも含む。溝と溝との間隔は、広すぎると段差に対応することが困難となるが、狭すぎると、磁着する面積が減少して封止効果が減少するおそれがある。例えば、5mm程度から10mm程度とすれば良い。
【0040】
図3(a)や(b)は、溝の本数を2本とし、溝の幅を2mm程度、溝と溝との間隔を10mm程度とした例である。同様に(d)は、溝の本数を3本とし、溝の幅を2mm程度、溝と溝との間隔を5mm程度とした例である。
【0041】
(d)のように溝の本数を増やすと、マグネットシートセットの扉側シートを溝の部分で切り離す場合にも細かく調整することが可能である。また、折曲可能部分が多いので、細かな段差にも対応できる。さらに、前述の通り磁着面の構成材料をゴム磁石などの追従性ある素材とすれば、例えば、扉の上部と下部と段差の高さや、扉と枠との隙間に違いのあるような、ひずみやゆがみのある扉にも、使用可能となるので汎用性が増す。
【0042】
一方で、(a)や(b)のように、比較的溝と溝との間隔が広い場合は、扉の隙間が比較的広い場合に適する。
<扉枠側シート>
【0043】
再び図1を参照する。
【0044】
本実施形態のマグネットシートセットの扉枠側シートは、第二貼付面と、第二磁着面と、を有する。
<第二貼付面>
【0045】
「第二貼付面」(0106)は、扉枠側シートの扉枠面側に配置されるべき面である。扉枠面の扉側縁に沿って扉枠側シート自身を固定する機能を有する。
【0046】
「扉枠面の扉側縁」とは、扉枠面の扉側、すなわち内周縁に近い部分である。
【0047】
固定の手段は特に限定されないが、粘着テープを用いれば、貼り付けることで扉面の外枠にそって容易に固定することができる。
<第二磁着面>
【0048】
「第二磁着面」(0107)は、前述した扉側シートに磁力密着するための機能を有する。第二磁着面は、磁石であっても良いし、第一磁着面が磁石である場合は、この磁石と、磁力により密着可能な磁性金属であっても良い。
【0049】
磁着面同士の接触により、ほこりが発生することを防ぐためには、ゴムに磁性材料を練りこんだゴム磁石や、磁石や磁性金属の表面を合成樹脂でコーティングすることとするのが好ましい。特にゴム磁石を利用する場合は、扉のひずみ、ゆがみに追従するので封止を確実に行うことができる。
【0050】
再び図2を参照する。本実施形態のマグネットシートセットでは、封止は磁力密着により行われているので、開扉を容易に行うことができる。また、開扉後に再び封止をする際も、第一磁着面と第二磁着面とを再び重ね合わせて磁力密着させれば良く、再封止も容易である。
<実施形態1:効果>
【0051】
本実施形態のマグネットシートセットにより、扉に簡便に取り付け可能で、しかも、必要がある場合には、簡単に扉を開閉し、かつ、再封止も簡単に行うことができる。
<<実施形態2>>
<実施形態2:概要>
【0052】
本実施形態のマグネットシートセットは、実施形態1のマグネットシートセットの扉側シートを扉枠側シートとし、扉枠側シートを扉側シートとするものである。
<実施形態2:全体の構成>
【0053】
本実施形態のマグネットシートセットは、扉側シートと扉枠側シートとからなる。扉側シート、扉枠側シートについては、実施形態1で述べたところと同様である。
<扉側シート>
【0054】
扉側シートは、第三貼付面と、第三磁着面とを有する。第三貼付面、第三磁着面については、それぞれ、実施形態1で述べた第二貼付面、第二磁着面と同様の構成を有する。
<扉枠側シート>
【0055】
扉枠側シートは、第四貼付面と、第四磁着面と、溝とを有する。第四貼付面は、第四磁着面、溝については、それぞれ実施形態1で述べた第一貼付面、第一磁着面、溝と同様の構成を有する。
<実施形態2:効果>
【0056】
本実施形態のマグネットシートセットにより、扉に簡便に取り付け可能で、しかも、必要がある場合には、簡単に扉を開閉し、かつ、再封止も簡単に行うことができる。
<<実施形態3>>
<実施形態3:構成>
【0057】
本実施形態のマグネットシートは、第一の発明として記載したマグネットシートセットの扉側シートである。扉側シートについては、実施形態1で述べたところと同様である。本実施形態のマグネットシートは、扉枠の第一磁着面と磁力密着する部分が磁性金属からなる場合に使用される。このため、扉枠側シートがなくとも、庇状に張り出す第一磁着面と扉枠が磁力密着可能となる。
【0058】
あるいは、本実施形態のマグネットシートは、第二の発明として記載したマグネットシートセットの扉枠側シートである。扉枠側シートについては、実施形態2で述べたところと同様である。本実施形態のマグネットシートは、扉の第四磁着面と磁力密着する部分が磁性金属からなる場合に使用される。このため、扉側シートがなくとも、庇状に張り出す第四磁着面と扉が磁力密着可能となる。
<実施形態3:効果>
【0059】
本実施形態のマグネットシートにより、扉に簡便に取り付け可能で、しかも、必要がある場合には、簡単に扉を開閉し、かつ、再封止も簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施形態1のマグネットシートセットの一例を示す概念図
【図2】実施形態1のマグネットシートセットの使用状況の一例を示す概念図
【図3】実施形態1のマグネットシートセットの使用状況の他の一例を示す部分断面図
【符号の説明】
【0061】
扉側シート 0101、0203、0303
扉枠側シート 0102、0204、0304
第一貼付面 0103
第一磁着面 0104
溝 0105、0305
第二貼付面 0106
第二磁着面 0107
扉 0201、0301
扉枠 0202、0302

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉側シートと扉枠側シートとによって扉と扉枠との間にできる隙間を封止するためのマグネットシートセットであって、
扉側シートは、
扉面の外縁にそって自身を固定するための第一貼付面と、
扉面の外縁から庇状に出て扉枠側シートに磁力密着するための第一磁着面と、
第一磁着面が扉の外縁に沿って折曲可能に第一磁着面に設けられる溝と、
を有し、
扉枠側シートは、
扉枠面の扉側縁に沿って自身を固定するための第二貼付面と、
第一磁着面と磁力密着するための第二磁着面と、
を有する扉の隙間封止用マグネットシートセット。
【請求項2】
扉側シートと扉枠側シートとによって扉と扉枠との間にできる隙間を封止するためのマグネットシートセットであって、
扉側シートは、
扉面の外縁にそって自身を固定するための第三貼付面と、
第四磁着面と磁力密着するための第三磁着面と、
を有し、
扉枠側シートは、
扉枠面の扉側縁に沿って自身を固定するための第四貼付面と、
扉枠面の扉側縁から庇状に出て扉側シートに磁力密着するための第四磁着面と、
第四磁着面が扉の外縁に沿って折曲可能に第四磁着面に設けられる溝と、
を有する扉の隙間封止用マグネットシートセット。
【請求項3】
請求項1に記載の扉側シート。
【請求項4】
請求項2に記載の扉枠側シート。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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