説明

扉付構造物

【課題】不正解錠を適切に抑制できる扉付構造物を提供する。
【解決手段】扉付構造物であるトイレブースは、扉受け側対向部12aを有する扉受け体12と、扉側対向部13aを有する扉体13と、回動可能な規制部25を有する施錠手段とを備える。トイレブースは、扉側対向部13aに扉受け側対向部12aに向ってそれぞれ突設された上側突設体21および下側突設体を備える。両突設体21は、開口部10の閉鎖時に扉受け側対向部12aと当接して手挟み防止用の間隙15を保持する。上側突設体21は、開口部10の閉鎖時に間隙15への挿入物の上動を規制してこの挿入物による規制部25を規制状態から許容状態にしようとする不正解錠を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不正解錠を適切に抑制できる扉付構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載されたトイレブース等の扉付構造物が知られている。
【0003】
この従来の扉付構造物は、扉受け体と、扉受け体から離れる開方向に向って回動して開口部を開口させ扉受け体に接近する閉方向に向って回動して開口部を閉鎖する扉体と、開口部の閉鎖時に扉受け体および扉体間の手挟み防止用の間隙を保持する戸当り等の間隙保持体とを備えている。そして、この手挟み防止用の間隙の存在によって、扉受け体と扉体とでの間で、トイレ使用者、特に子供等が手を挟まないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3082163号公報(図2等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そして、近年では、この種のトイレブース等の扉付構造物に関し、施錠手段を設けた場合において、開口部の閉鎖時に手挟み防止用の間隙から、施錠手段が不正に解錠されないものが求められている。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、不正解錠を適切に抑制できる扉付構造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の扉付構造物は、側端部に扉受け側対向部を有する扉受け体と、この扉受け体から離れる開方向に向って回動して開口部を開口させかつ前記扉受け体に接近する閉方向に向って回動して前記開口部を閉鎖するもので、側端部に前記開口部の閉鎖時に前記扉受け側対向部と手挟み防止用の間隙を介して離間対向する扉側対向部を有する扉体と、下方回動により前記扉体の開方向への回動を規制する規制状態となりかつ上方回動により前記扉体の開方向への回動を許容する許容状態となる規制部を有する施錠手段と、前記扉受け側対向部および前記扉側対向部のいずれか一方にいずれか他方に向って突設された上側突設体と、前記扉受け側対向部および前記扉側対向部のいずれか一方にいずれか他方に向って突設され、前記上側突設体よりも下方に位置する下側突設体とを備え、前記上側突設体および前記下側突設体の少なくともいずれか一方は、前記開口部の閉鎖時に前記扉受け側対向部および前記扉側対向部のいずれか他方と当接することにより前記間隙を保持し、前記上側突設体は、前記開口部の閉鎖時に前記間隙のうち前記上側突設体および前記下側突設体間に位置する部分に挿入された挿入物の上動を規制することによりこの挿入物による前記規制部を規制状態から許容状態にしようとする不正解錠を抑制するものである。
【0008】
請求項2記載の扉付構造物は、請求項1記載の扉付構造物において、上側突設体および下側突設体の両方は、開口部の閉鎖時に扉受け側対向部および扉側対向部のいずれか他方と当接することにより間隙を保持するものである。
【0009】
請求項3記載の扉付構造物は、請求項2記載の扉付構造物において、上側突設体および下側突設体の各々が同じ部品にて構成されているものである。
【0010】
請求項4記載の扉付構造物は、請求項1ないし3のいずれか一記載の扉付構造物において、上側突設体および下側突設体は、手が挿入可能な離間距離を介して互いに離間対向するものである。
【0011】
請求項5記載の扉付構造物は、請求項1ないし4のいずれか一記載の扉付構造物において、施錠手段の規制部を規制状態に位置決めする規制部位置決め体を備え、下側突設体は、前記規制部位置決め体と略同一高さに位置するものである。
【0012】
請求項6記載の扉付構造物は、請求項1ないし5のいずれか一記載の扉付構造物において、上側突設体は、正面視で施錠手段の規制部の回動範囲外に位置するものである。
【0013】
請求項7記載の扉付構造物は、請求項1ないし6のいずれか一記載の扉付構造物において、便器が配設されるトイレ空間部を備えるトイレブースであるものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、上側突設体は開口部の閉鎖時に間隙のうち上側突設体および下側突設体間に位置する部分に挿入された挿入物の上動を規制することによりこの挿入物による規制部を規制状態から許容状態にしようとする不正解錠を抑制するため、不正解錠を適切に抑制できる。
【0015】
請求項2に係る発明によれば、上側突設体および下側突設体の両方は開口部の閉鎖時に扉受け側対向部および扉側対向部のいずれか他方と当接することにより間隙を保持するため、開口部の閉鎖の際に扉体に作用する衝撃力を適切に分散できる。
【0016】
請求項3に係る発明によれば、上側突設体および下側突設体の各々が同じ部品にて構成されているため、上側突設体および下側突設体の各々が異なる部品にて構成されている場合に比べて、部品管理が容易となる。
【0017】
請求項4に係る発明によれば、上側突設体および下側突設体は手が挿入可能な離間距離を介して互いに離間対向するため、例えば使用者は上側突設体および下側突設体間に手を挿入して扉体を回動させることができる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、下側突設体と略同一高さに位置する規制部位置決め体にて、施錠手段の規制部を規制状態に適切に位置決めできる。
【0019】
請求項6に係る発明によれば、上側突設体は正面視で施錠手段の規制部の回動範囲外に位置するため、上側突設体が規制部の回動に悪影響を及ぼすおそれがない。
【0020】
請求項7に係る発明によれば、便器が配設されるトイレ空間部の外側から、間隙を利用して施錠手段の規制部を規制状態から許容状態にしようとする不正解錠を適切に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施の形態に係るトイレブースの部分平面図である。
【図2】同上トイレブースの施錠時の部分正面図である。
【図3】同上トイレブースの施錠時の部分平面図である。
【図4】同上トイレブースの施錠時の部分側面図である。
【図5】同上トイレブースの解錠時の部分正面図である。
【図6】同上トイレブースの解錠時の部分平面図である。
【図7】同上トイレブースの上側突設体、下側突設体および施錠手段の位置関係を示す説明図である。
【図8】同上トイレブースの概略平面図である。
【図9】本発明の他の実施の形態に係るトイレブースの部分平面図である。
【図10】本発明のさらに他の実施の形態に係るトイレブースの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施の形態を図1ないし図8を参照して説明する。
【0023】
図8において、1は扉付構造物であるトイレブースで、このトイレブース1は、例えば扉内開き式のもので、所定の大きさのトイレ空間部2を備えている。トイレ空間部2には、例えば洋式の便器3が配設されている。
【0024】
トイレブース1は、図8に示されるように、トイレ空間部2を介して互いに離間対向する略矩形板状で鉛直状の左右1対の側板、つまり左側板6および右側板7を備え、これら両側板6,7の後端部が被固定部である壁部8に固定されている。
【0025】
左側板6の前端部には、トイレ空間部2の左側の前面を覆う略矩形板状で鉛直状の袖パネル等の扉被取付体11が左側板6に対して直交状に固設されている。つまり、扉被取付体11の左端部が左側板6の前端部に固定されている。
【0026】
右側板7の前端部には、トイレ空間部2の右側の前面を覆う略矩形板状で鉛直状の袖パネル等の扉受け体12が右側板7に対して直交状に固設されている。つまり、扉受け体12の右端部が右側板7の前端部に固定されている。
【0027】
そして、互いに離間対向する左右1対の前板間、つまり扉被取付体11の右端部および扉受け体12の左端部間には、トイレ空間部2に対する出入口である略矩形状の開口部10が位置する。つまり、例えば大人であるトイレ使用者(使用者)は、開口した開口部10を通って、トイレ空間部2に対して出入りする。
【0028】
また、扉被取付体11の右端部には、扉受け体12から離れる開方向(図8では、反時計回り)である後方に向って上下方向の軸線aを中心として回動して開口部10を開口させかつ扉受け体12に接近する閉方向(図8では、時計回り)である前方に向って上下方向の軸線aを中心として回動して開口部10を閉鎖する略矩形板状で鉛直状の内開き式の扉体13がヒンジ14を介して前後方向に回動可能に設けられている。つまり、扉体13の幅方向一端部としての戸尻側端部である左端部が扉被取付体11の右端部にヒンジ14を介して上下方向の軸線aを中心として回動可能に取り付けられ、この扉体13の幅方向他端部としての戸先側端部である右端部が自由端部となっている。
【0029】
扉体13の幅寸法は開口部10の幅寸法(左右方向長さ寸法)より大きく、開口部10の閉鎖時には扉体13の右端部が扉受け体12の左端部と正面視(前方視)で重なり合うようになっている。
【0030】
つまり、トイレブース1は扉受け体12および扉体13を備え、扉受け体12は側端部である左端部に扉受け側対向部(重なり部)12aを有し、扉体13は側端部である右端部に開口部10の閉鎖時に扉受け側対向部12aと手挟み防止用の間隙15を介して離間対向した状態で扉受け側対向部12aの後方に位置する扉側対向部13aを有している。
【0031】
そして、図1ないし図6に示すように、トイレブース1は、互いに離間対向する扉受け側対向部12aおよび扉側対向部13aの両対向面のいずれか一方、例えば扉側対向部13aの対向面である前面に、いずれか他方、例えば扉受け側対向部12aの対向面である後面に向ってつまり前方に向って突設されたブロック状の上側突設体21と、互いに離間対向する扉受け側対向部12aおよび扉側対向部13aの両対向面のいずれか一方、例えば扉側対向部13aの対向面である前面に、いずれか他方、例えば扉受け側対向部12aの対向面である後面に向ってつまり前方に向って突設され上側突設体21と同一形状に形成され上側突設体21よりも下方に位置するブロック状の下側突設体22とを備えている。
【0032】
また、トイレブース1は、開口部10の閉鎖時に前後方向(水平方向)の軸線bを中心とする略90度下方回動により扉体13の開方向への回動を規制する規制状態となりかつ開口部10の閉鎖時に前後方向の軸線bを中心とする上方回動により扉体13の開方向への回動を許容する許容状態となる上下回動可能な操作レバー等の規制部25を有する施錠手段26を備えている。つまり、ロック装置である施錠手段26は、開口部10の閉鎖時に扉体13の扉側対向部13aとの当接により扉体13の開方向への回動を規制する規制状態および開口部10の閉鎖時に扉体13の扉側対向部13aとは当接せず扉体13の開方向への回動を許容する許容状態に回動操作により選択的に切り換えられる規制部25を有している。
【0033】
さらに、トイレブース1は、開口部10の閉鎖時に施錠手段26の規制部25との当接によりこの規制部25を規制状態に位置決めする規制部受け体である規制部位置決め体23を備えている。
【0034】
そして、トイレ使用者の手(図示せず)が挿入可能な離間距離(例えば100mm)を介して上下に互いに離間対向する上側突設体21および下側突設体22の少なくともいずれか一方、例えば両方は、開口部10の閉鎖時に扉受け側対向部12aの後面と面状に当接することにより間隙15を保持する。つまり、上側突設体21および下側突設体22は、いずれも間隙保持体として機能する。
【0035】
なお、いずれか一方が対向面と当接する場合の突設体は、施錠のし易さを考慮すると、施錠手段26に近い方の突設体(本実施形態においては、下側突設体22)の方が好ましい。また、当然であるが、上側突設体21(下側突設体22)が対向面と当接しているときには、施錠手段26で施錠できること、つまり規制部25で規制できることが必要であり、突設体の突設量は、対向面と規制部位置決め体23や規制部25との間隔を考慮して決定される。
【0036】
また、上側突設体21は、開口部10の閉鎖時に間隙15のうち上側突設体21および下側突設体22間に位置する部分にトイレ空間部2の外側から挿入された挿入物Sの上動を規制することによりこの挿入物Sによる規制部25を規制状態から許容状態にしようとする不正解錠を抑制する。
【0037】
挿入物Sは、例えば図2に示すような大人の手であり、手はトイレ空間部2の外側である外部から間隙15に入っても両突設体21,22間に上下から挟まれて上動不可能なため、その手で規制部25を上方回動させることはできない。
【0038】
ここで、下側突設体22は、規制部位置決め体23と略同一高さに位置するもので、扉体13の扉側対向部13aの前面における上下方向中間部である上下方向略中央部に前方に向って突出状に固設されている。下側突設体22は、例えば上下面が略円弧面状をなすブロック状に形成されている。下側突設体22は、開口部10の閉鎖時に扉受け体12の扉受け側対向部12aの後面の所定部分と面状に当接するゴム製の当接部31を前部に有している。
【0039】
そして、図4に示されるように、下側突設体22は、例えば2つの部品からなるもので、扉受け体12の扉受け側対向部12aと当接する当接部材32と、この当接部材32に脱着可能に取り付けられた樹脂製のスペーサ部材33とにて構成されている。
【0040】
当接部材32は、略板状のゴム製の当接部31と、この当接部31から後方に向って突出する略円筒状の金属製の複数、例えば2つのナット部34とを有している。ナット部34の内周面にはねじ溝35が形成されている。スペーサ部材33には、複数、例えば2つの嵌合孔36が形成され、この嵌合孔36にナット部34が嵌合されている。
【0041】
また、扉体13の扉側対向部13aのうち下側突設体22および規制部位置決め体23が固定される部分、つまり下側突設体22と規制部位置決め体23とにて前後から挟持される部分には、複数、例えば2つの貫通孔であるボルト用孔38が形成されている。
【0042】
さらに、規制部位置決め体23は、扉体13の扉側対向部13aの後面における上下方向中間部である上下方向略中央部に後方に向って突出状に固設されている。規制部位置決め体23は、下側突設体22と同様、例えば上下面が略円弧面状をなすブロック状に形成されている。規制部位置決め体23は、開口部10の閉鎖時に施錠手段26の規制部25が当接してこの規制部25を規制状態に位置決めするゴム製の被当接部である位置決め部41を上部に有している。規制部位置決め体23の金属製の本体部42には、複数、例えば2つの貫通孔であるボルト用孔43が形成されている。
【0043】
そして、互いに一致したボルト用孔38,43にボルト44が挿入されてこのボルト44の先端側が当接部材32のナット部34に螺合締付されることにより、下側突設体22および規制部位置決め体23が扉体13の扉側対向部13aの前後面に対して同時に固定されている。
【0044】
上側突設体21は、扉体13の扉側対向部13aの前面のうち上下方向略中央部よりやや上方の部分に前方に向って突出状に固設されている。上側突設体21は、規制部位置決め体23と同位置かまたは上方に位置し、かつ開口部10に対して開口部10寄りかまたは同位置に位置することが好ましい。
【0045】
また、上側突設体21は、例えば上下面が略円弧面状をなすブロック状に形成されている。上側突設体21は、開口部10の閉鎖時に扉受け体12の扉受け側対向部12aの後面の所定部分と面状に当接するゴム製の当接部51を前部に有している。なお、当接部51はゴム製でなくても(柔軟性がなくても)よい。特に、当接しない場合は、ゴム製でなくてもよいが、指等が挟まれるような場合を考慮すれば、ゴム製等の柔軟性を有するものが好ましい。
【0046】
そして、図4に示されるように、上側突設体21は、下側突設体22と同様、2つの部品からなるもので、扉受け体12の扉受け側対向部12aと当接する当接部材52と、この当接部材52に脱着可能に取り付けられた樹脂製のスペーサ部材53とにて構成されている。つまり、上側突設体21および下側突設体22の各々が同じ部品にて構成されている。
【0047】
当接部材52は、略板状のゴム製の当接部51と、この当接部51から後方に向って突出する略円筒状の金属製の複数、例えば2つのナット部54とを有している。ナット部54の内周面にはねじ溝55が形成されている。スペーサ部材53には、複数、例えば2つの嵌合孔56が形成され、この嵌合孔56にナット部54が嵌合されている。
【0048】
また、扉体13の扉側対向部13aのうち上側突設体21が固定される部分には、複数、例えば2つの貫通孔であるボルト用孔58が形成されている。
【0049】
そして、ボルト用孔58にボルト59が挿入されてこのボルト59の先端側が当接部材52のナット部54に螺合締付されることにより、上側突設体21が扉体13の扉側対向部13aの前面に対して固定されている。
【0050】
施錠手段26は、下側突設体22と略同一高さに位置するもので、扉受け体12の扉受け側対向部12aの近傍における上下方向中間部である上下方向略中央部に固設されている。
【0051】
施錠手段26は、扉受け側対向部12aの近傍の上下方向略中央部に固定された本体部61を有している。本体部61は、扉受け体12の前面から突出する略円錐状の一方側突出部分である前側突出部分62と、扉受け体12の後面から突出する略円柱状の他方側突出部分である後側突出部分63とを有している。
【0052】
なお、間隙15の大きさに応じて本体部61の前後方向長さ寸法が調整可能となっている。前側突出部分62には、規制部25が規制状態であるか許容状態であるかを示す表示部64が設けられている。この表示部64は、略扇形状の窓部65から前方に向って露出している。
【0053】
また、本体部61の後側突出部分63の後端部には、回動操作部である規制部25が軸線bを中心として上下方向に回動可能に設けられている。規制部25は、下方回動により規制部位置決め体23の位置決め部41と当接し、扉体13の扉側対向部13aと係合可能つまり当接可能な規制状態となる。規制部25は、上方回動により規制部位置決め体23の位置決め部41から上方に離れ、扉体13の扉側対向部13aと係合不可能つまり当接不可能な許容状態となる。すなわち、規制部25は、トイレ使用者の回動操作に基づく本体部61に1対する略90度の下方回動によって水平姿勢の規制状態となり、トイレ使用者の回動操作に基づく本体部61に対する略90度の上方回動によって鉛直姿勢の規制状態となる。
【0054】
規制部25は、本体部61に軸線bを中心として回動可能に設けられた略円板状の回動部分66と、この回動部分66に軸線bに対して直交する方向に向って突設された鉛直板状のアーム部分67と、このアーム部分67の先端部に設けられ規制部25の規制状態時に規制部位置決め体23の位置決め部41と当接する鉛直板状の当接部分68と、この当接部分68の後面に後方に向って突設されトイレ使用者が手で摘む水平板状の操作部分である摘み部分69とを有している。
【0055】
アーム部分67は、規制部25の規制状態時に左右方向に沿って位置する第1板71と、規制部25の規制状態時に第1板71の端部から左斜め後方に向って突出し第1板71に対して傾斜状に位置する第2板72とを有している。当接部分68の外周部は、例えば略U字状のゴム製の板材68aにて構成されている。
【0056】
図1に示されるように、扉体13の側端面である右端面と施錠手段26の本体部61との間には隙間74があり、規制部25の規制状態時にはこの規制状態の規制部25のアーム部分67が隙間74に近接対向して位置する。また、間隙15の前後方向長さ寸法Aは、大人の使用者が手の指を挟まない程度の大きさで、例えば20mm以上、好ましくは25mm〜40mm、さらに好ましくは25mmまたは26mmである。扉受け体12の扉受け側対向部12aの左右方向長さ寸法(ラップ部分の幅寸法)Bは、例えば20mm〜100mm、好ましくは30mm〜80mm、さらに好ましくは50mmである。扉体13の厚さ寸法および扉受け体12の厚さ寸法は、それぞれ例えば13mmである。また、両突設体21,22間の離間距離は、例えば100mmが最も好ましいが、例えば80mm〜120mmでもよい。
【0057】
また、図7は、上側突設体21、下側突設体22および施錠手段26の位置関係を示す説明図である。
【0058】
この図7に示されるように、水平線と軸線bとの交点を点P1とし、その水平線と扉受け体12の側端縁に沿った鉛直線との交点を点P2とし、その水平線と扉体13の側端縁に沿った鉛直線との交点を点P3とする。また、上側突設体21の下端部からの水平線と扉体13の側端縁に沿った鉛直線との交点を点P4とし、点Plと点P4とを結ぶ線分をRとする。
【0059】
このような場合に、直線P1P2を基準とする上側突設体21の高さH(直線P3P4)は、H=Rsinθで表される。この式のθは、直線P1P2と直線P1P4とがなす角度である。
【0060】
そして、要は、上側突設体21は、正面視で規制部25の回動時にこの規制部25が回動する範囲(回動軌跡)よりも外側(例えば回動範囲の外側近傍位置)に位置すればよく、規制部25と干渉しない位置に位置すればよい。なお、干渉しない位置とは、干渉しても回動にほとんど悪影響がないような位置(例えば、干渉する箇所に柔軟材を配置した場合等)を含む。なお、この内容を施錠手段26側からみれば、規制部25を上側突設体21と干渉しない長さに設定することを意味する。
【0061】
なお、規制部25の回動範囲内であるが干渉しない位置の例としては、例えば、扉受け体12と扉体13の両者に上側突設体21を分割して配置し、回動してくる箇所のみに間隙を設けた構成や、上側突設体21を分割するのではなく一つではあるが、回動してくる範囲のみにスリットを設けたり、窪みを設けて規制部25を避けるようにした構成等でもよい。
【0062】
またここで、扉体13を不正に開放しようとして、挿入物Sである手を間隙15から挿入して規制部25を上方回動させ、手が上側突設体21に当接したとき(また当接する前)に扉体13を開方向に移動(回動)させようとした場合、規制部25が扉体13と干渉する位置にあって、規制部25が扉体13の開方向移動を阻止または抑制できるようになっていると好ましい。
【0063】
このような関係を図7より説明すれば、規制部25がRよりも長い長さを有するように設定すると、規制部25が上方回動して手が上側突設体21に当接する前や当接しても、換言すればHと等しい高さ寸法分だけ規制部25が上方回動しても、規制部25が点P4を超えないようになっておりかつ規制部25の一部が扉体13よりも開方向側に位置することになる。このような規制部25の長さは、Rの長さから決定されるので、H、θの値から求めることもできる。
【0064】
逆に、規制部25の長さが予め定まっているためにRを規制部25の長さより小さくしたい場合には、Hの長さが小さくなる方向に上側突設体21の位置をより下側にずらして位置させ規制部25の扉体13に対する掛かり代を有するように調整すればよい。
【0065】
ところで、規制部25をRよりも長い長さにする目的は、手が上側突設体21に当接する前や当接したときに扉体13を開方向に移動させようとしても規制部25が扉体13と干渉する位置にあるようにすることにあるので、規制部25の扉体13に対する掛かり代がなるべく多い方が好ましく、その一例としては点Plを中心としてRを半径とした円弧と直線P2Plとの交点が、点P2と点P3との問に位置するならば、規制部25の操作性や規制部25の製造コスト等をも勘案して、規制部25の長さをある程度は長い長さである、線分P2P1の長さよりも若干長く設定する等が考えられる。勿論、操作性や製造コスト等に支障がなければもっと長く設定してもよい。
【0066】
なお、上述したことは、扉体13の不正開放抑制等をも考慮した場合であって、単に規制部25等の不正解錠を抑制することでよければ、規制部25がRよりも長い長さを有することは必須ではない。規制部25の長さがHより長くない場合にも同様である。
【0067】
次に、上記トイレブース1の作用等を説明する。
【0068】
トイレ使用者は、施錠手段26の表示部64を確認してから、扉体13を後方に押して開方向に回動させることにより開口部10を開口させ、トイレ空間部2の内側(トイレブース1の内側)に入る。
【0069】
トイレ空間部2内に入ったトイレ使用者は、扉体13を前方に押してまたは自動回動機構を有していれば手を扉体13から離して、扉体13を閉方向に回動させることによりその扉体13で開口部10を閉鎖するが、この際、扉受け体12および扉体13間に位置した2つの突設体21,22にて扉受け側対向部12aと扉側対向部13aとの間に手挟み防止用の間隙15が保持されるため、トイレ使用者は、両対向部12a,13a間で手の指を挟まない。
【0070】
次いで、トイレ使用者は、施錠手段26を規制部25が許容状態にある解錠状態から規制部25が規制状態にある施錠状態に切り換える。つまり、許容状態の規制部25をその当接部分68が規制部位置決め体23の位置決め部41に当接するまで本体部61に対して下方回動させて許容状態から規制状態に切り換える。
【0071】
そして、この規制部25が規制状態に切り換えられた施錠手段26の施錠状態時において、例えば図2に示すように、誰かがいたずら等でトイレ空間部2の外側(トイレブース1の外側)から施錠手段26を不正解錠しようと、施錠手段26付近に位置する間隙15の一部分、つまり間隙15のうち上側突設体21および下側突設体22間に位置する部分から、挿入物Sである手の指を挿入したとしても、その挿入した手の指は、両突設体21,22にて上下から挟まれた状態となる。
【0072】
よって、挿入した手の人差指が規制状態の規制部25のアーム部分67に届いたとしても、小指が上側突設体21に当たり、手の指を上動させることができないため、その挿入した手の指で規制部25を上方回動させることはできず、挿入物Sである手による規制部25を規制状態から許容状態にしようとする不正解錠が防止される。
【0073】
そして、このようなトイレブース1によれば、上側突設体21が開口部10の閉鎖時に間隙15のうち両突設体21,22間に位置する部分に外部から挿入された挿入物Sの上動を規制することによりこの挿入物Sによる規制部25を規制状態から許容状態にしようとする不正解錠を抑制するため、不正解錠を適切に抑制できる。
【0074】
また、扉側対向部13aの前面に互いに上下に離間対向した状態で設けられた上側突設体21および下側突設体22の両方が、開口部10の閉鎖時に扉受け側対向部12aの後面と当接することにより間隙15を保持するため、開口部10の閉鎖の際に扉体13に作用する衝撃力を適切に分散できる。つまり、開口部10の閉鎖の際に、扉体13は、上下に離れた2つの突設体21,22を介して、扉受け体12に2点で当接するため、1点で当接する場合に比べて、扉体13に作用する衝撃力を適切に分散でき、クッション性の向上を図ることができる。
【0075】
さらに、上側突設体21および下側突設体22の各々が同じ部品にて構成されているため、上側突設体21および下側突設体22の各々が異なる部品にて構成されている場合に比べて、部品管理が容易となる。
【0076】
また、上側突設体21および下側突設体22はトイレ使用者の手が挿入可能な離間距離を介して互いに離間対向するため、
例えばトイレ使用者は上側突設体21および下側突設体22間に手を挿入して扉体13を回動させることができ、またその手の指を扉受け側対向部12aと扉側対向部13aと間で挟むこともない。
【0077】
なお、トイレブース1は、例えば図9に示すように、トイレ空間部2の外側からトイレ空間部2の内側が見えないようにするための目隠し用のゴム板81が間隙15の全体を覆うように設けられた構成等でもよい。この図9の例では、ゴム板81は、幅方向略中央部で折り曲げられた上下方向長手状のもので、例えば扉体13の扉側対向部13aの前面に取り付けられている。
【0078】
また、トイレブース1は、扉体13がトイレ空間部2の内側に向って回動する扉内開き式のものには限定されず、例えば図10に示すように、扉体13がトイレ空間部2の外側に向って回動する扉外開き式のもの等であっても同様の作用効果を奏し得る。
【0079】
この図10の例では、左側板6の前端部に扉受け体12が固設され、右側板7の前端部に扉被取付体11が固設され、この扉被取付体11に扉体13がヒンジ14を介して軸線aを中心として回動可能に設けられている。また、扉体13には両突設体21,22および施錠手段26が設けられ、扉受け体12にはその施錠手段26の規制部25を規制状態に位置決めする規制部位置決め体23が設けられている。
【0080】
なお、例えば両突設体21,22がいずれも扉受け側対向部13aに扉側対向部12aに向って突設された構成や、両突設体21,22のいずれか一方のみが扉側対向部12aに突設されかつ両突設体21,22のいずれか他方のみが扉受け側対向部13aに突設された構成でもよい。
【0081】
また、例えば上側突設体21および下側突設体22のいずれか一方のみで間隙15を保持するようにした構成等でもよい。
【0082】
さらに、例えば間隙15のうち両突設体21,22間に位置する部分にクッション材等の柔軟部材に配設することで、両突設体21,22間に手等の挿入物Sを挿入できないようにした構成等でもよい。
【0083】
また、トイレブース1は、左右方向に並ぶ複数のトイレ空間部2を有する構成等でもよい。
【0084】
さらに、扉付構造物は、トイレブース1には限定されず、例えば展示会場等のブースや、プレハブ、或いは建物の出入口に設けられる扉装置等でよく、またブースの一部(扉装置)等でもよい。
【0085】
なお、上側突設体21と下側突設体22との上下間隔を狭めて(間隔を設けないように両突設体の少なくとも一方を上下方向に延ばして)、開口部10側を全部または略全部覆うようにしてもよく、また、上側突設体21と下側突設体22とを一体化してもよい。
【0086】
また、上側突設体21は、規制部25が回動する際に、この規制部25と干渉しない位置にあればよい。
【0087】
すなわち例えば図1に示されているように、規制部25が存在する位置および回動する範囲が、上側突設体21が位置している扉側対向部13a(または扉受け側対向部12a)と異なれば、上側突設体21の存在位置が規制部25の回動範囲(回動軌跡)よりも外側、内側の位置にかかわらず、そもそも干渉しない。
【0088】
また第一のケースとして図1で説明すれば(ただし、図示せず)、上側突設体21が扉受け体12に設けられていてかつ扉受け側対向部12aには位置しない場合(言い換えれば、扉体13よりも施錠手段26側に位置している場合)、規制部25が上側突設体21に当接するおそれが生じるため、干渉しない位置に置いたり、回動してくる範囲のみスリットを設けたり、窪みを設けて規制部25を避けるようにすることは意味がある。
【0089】
さらにまた第二のケースとして図1で説明すれば(ただし、図示せず)、上側突設体21は図1と同様の位置に設けられているが、規制部位置決め体23が扉側対向部13aに設けられていて、規制部25がこの位置に回動してくる場合、規制部25が上側突設体21に当接するおそれが生じるため、干渉しない位置に置いたり、回動してくる範囲のみスリットを設けたり、窪みを設けたり、扉受け体12と扉体13の両者に上側突設体21を分割して配置し、回動してくる箇所のみ間隙を設けておく等により規制部25を避けるようにすることは意味がある。
【0090】
なお、この第二のケースでは、図1の場合と比較して、規制部25が扉体13に遮られずに開口部10に近く位置しているので不正解錠されやすいおそれがあるため、上側突設体21と下側突設体22との上下間隔を狭めて(間隔を設けないように上下方向に延ばして)、開口部側を全部または略全部覆うようにする等の処置を講じておくことが好ましい。
【符号の説明】
【0091】
1 扉付構造物であるトイレブース
2 トイレ空間部
3 便器
10 開口部
12 扉受け体
12a 扉受け側対向部
13 扉体
13a 扉側対向部
15 間隙
21 上側突設体
22 下側突設体
23 規制部位置決め体
25 規制部
26 施錠手段
S 挿入物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側端部に扉受け側対向部を有する扉受け体と、
この扉受け体から離れる開方向に向って回動して開口部を開口させかつ前記扉受け体に接近する閉方向に向って回動して前記開口部を閉鎖するもので、側端部に前記開口部の閉鎖時に前記扉受け側対向部と手挟み防止用の間隙を介して離間対向する扉側対向部を有する扉体と、
下方回動により前記扉体の開方向への回動を規制する規制状態となりかつ上方回動により前記扉体の開方向への回動を許容する許容状態となる規制部を有する施錠手段と、
前記扉受け側対向部および前記扉側対向部のいずれか一方にいずれか他方に向って突設された上側突設体と、
前記扉受け側対向部および前記扉側対向部のいずれか一方にいずれか他方に向って突設され、前記上側突設体よりも下方に位置する下側突設体とを備え、
前記上側突設体および前記下側突設体の少なくともいずれか一方は、前記開口部の閉鎖時に前記扉受け側対向部および前記扉側対向部のいずれか他方と当接することにより前記間隙を保持し、
前記上側突設体は、前記開口部の閉鎖時に前記間隙のうち前記上側突設体および前記下側突設体間に位置する部分に挿入された挿入物の上動を規制することによりこの挿入物による前記規制部を規制状態から許容状態にしようとする不正解錠を抑制する
ことを特徴とする扉付構造物。
【請求項2】
上側突設体および下側突設体の両方は、開口部の閉鎖時に扉受け側対向部および扉側対向部のいずれか他方と当接することにより間隙を保持する
ことを特徴とする請求項1記載の扉付構造物。
【請求項3】
上側突設体および下側突設体の各々が同じ部品にて構成されている
ことを特徴とする請求項2記載の扉付構造物。
【請求項4】
上側突設体および下側突設体は、手が挿入可能な離間距離を介して互いに離間対向する
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の扉付構造物。
【請求項5】
施錠手段の規制部を規制状態に位置決めする規制部位置決め体を備え、
下側突設体は、前記規制部位置決め体と略同一高さに位置する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の扉付構造物。
【請求項6】
上側突設体は、正面視で施錠手段の規制部の回動範囲外に位置する
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一記載の扉付構造物。
【請求項7】
便器が配設されるトイレ空間部を備えるトイレブースである
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一記載の扉付構造物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−117221(P2011−117221A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276697(P2009−276697)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000239714)文化シヤッター株式会社 (657)
【Fターム(参考)】