説明

手すり用被覆部材の取付構造

【課題】握る機会が多く、目に付く場所であっても採用することができる手すり用被覆部材の取付構造を提供する。
【解決手段】手すり本体21の外周面25を部分的に被覆部材31で全周に渡って覆う。被覆部材31を円筒状に形成し、その側面に長さ方向に延在するスリット41を全長に渡って形成する。スリット41を波形状に形成し、スリット41を境とした一方側の第一縁部51に、他方側の第二縁部52側に円弧状に延出した複数の第一延出部61を形成する。第二縁部52に、第一縁部51側に円弧状に延出した複数の第二延出部63,・・・を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手すりの外周面を構成する手すり用被覆部材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の乗降口の開口縁部には、図4に示すように、手すり801が設けられていた。
【0003】
この手すり801は、パイプ又は丸棒で構成された手すり本体811を備えており、該手すり本体811は、被覆部材812によって覆われている。
【0004】
該被覆部材812は、ゴムスポンジによって構成されており、当該被覆部材812は、図4の(b)にも示すように、円筒状に形成されるとともに、側面には、長さ方向に延在するスリット813が全長に渡って形成されている。
【0005】
この被覆部材812を前記手すり本体811に取り付ける際には、当該被覆部材812を前記スリット813から開くとともに、この開拡状態において、当該被覆部材812を、図4の(a)に示したように、前記手すり本体811に外嵌する。
【0006】
この際、前記被覆部材812の前記スリット813近傍部位と前記手すり本体811とを両面テープ821で固定するとともに、当該両面テープ821の両端近傍を接着剤822,822で固定していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の手すり用被覆部材の取付構造にあっては、取り付けられた前記被覆部材812の側面には、直線状のスリット813が長さ方向の全域に渡って開口するため、当該スリット813を境とした一方側の縁部831と他方側の縁部832との境界が明確化してしまう。
【0008】
このため、当該スリット813による開口部分には一方側の縁部831と他方側の縁部832とによる凹凸が目立ち、見栄えの悪化を招いていた。
【0009】
このとき、温度変化により膨張収縮が生じると、前記スリット813による隙間が広がり、見栄えの変化が顕著に現れるという問題もあった。
【0010】
そして、この手すり801を手で握る際には、前記スリット813による開口部分に指が引っ掛かり易く、違和感を感じることがあった。
【0011】
このため、このような手すり用被覆部材の取付構造は、手で握る機会が少なく、スリット813が目に付かない部位にしか採用することができなかった。
【0012】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、握る機会が多く、目に付く場所であっても採用することができる手すり用被覆部材の取付構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために本発明の請求項1の手すり用被覆部材の取付構造にあっては、筒状の被覆部材に設けられたスリットを開口し、当該被覆部材を前記スリットによる開口部分から手すり本体に被覆する手すり用被覆部材の取付構造において、前記スリットを波形状に形成した。
【0014】
すなわち、被覆部材に設けられたスリットは、波形状に形成されており、被覆部材で手すり本体に被覆した状態では、当該被覆部材の側面に波形状のスリットが延在することとなる。
【0015】
このとき、前記スリットを境とした一方側の第一の縁部には、他方側の第二の縁部側に延出する延出部が形成されており、前記他方側に位置する前記第二の縁部には、前記第一の縁部側に延出する延出部が形成されている。
【0016】
そして、前記第一の縁部に形成された延出部は、当該スリットの中心に延在する仮想中心直線を超えて前記第二の縁部側に延出する一方、前記第二の縁部に形成された延出部は、前記仮想中心直線を超えて前記第一の縁部側に延出し、両縁部に設けられた延出部が交互に噛み合った状態が形成される。
【0017】
このため、前記スリットを境とした前記第一の縁部と前記第二の縁部との境界の明確化が防止される。
【0018】
そして、この手すりを手で握る際には、指等が前記スリットに触れることがある。このとき、前記両縁部に設けられた延出部は、前記スリットの中心に延在する前記仮想中心直線を超えて交互に噛み合った状態が形成されている。
【0019】
このため、当該スリット上に指等は、前記両縁部より延出した延出部によって支持されることで、前記スリットによる開口部内への進入が阻止される。
【0020】
また、請求項2の手すり用被覆部材の取付構造においては、前記手すり本体を前記被覆部材で被覆した状態で前記スリットの両側に位置する縁部を前記手すり本体に接着した。
【0021】
すなわち、前記スリットの両側に位置する前記第一の縁部及び第二の縁部は、前記手すり本体に接着されている。
【0022】
このため、前記手すり本体に対する前記両縁部の移動が阻止され、両縁部間に形成され得る隙間の広がりが防止される。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように本発明の請求項1の手すり用被覆部材の取付構造にあっては、前記被保持部部材を前記手すり本体に取り付けた状態において、前記スリットを境とした一方側の第一の縁部より延出した延出部を、当該スリットの中心に延在する仮想中心直線を超えて他方側の前記第二の縁部側に延出するとともに、前記第二の縁部に形成された延出部を、前記仮想中心直線を超えて前記第一の縁部側に延出し、両縁部に設けられた延出部が交互に噛み合った状態を形成することができる。
【0024】
これにより、前記スリットを境とした前記第一の縁部と前記第二の縁部との境界の明確化を防止することができるので、前記被覆部材の側面に直線状のスリットが長さ方向全域に渡って開口する構造上、当該スリットによる開口部分と前記被覆部材とによる凹凸が目立ってしまう従来と比較して、外観品質を高めることができる。
【0025】
このとき、温度変化により膨張収縮が生じ、前記スリットによる隙間が広がってしまった場合であっても、両縁部の延出部が噛み合った状態を維持できる範囲において、見栄え変化の顕在化を防止することができる。
【0026】
そして、この手すりを手で握る際には、指等が前記スリットに触れることがある。このとき、前記両縁部に設けられた延出部は、前記スリットの中心に延在する前記仮想中心直線を超えて交互に噛み合った状態が形成されている。
【0027】
このため、当該スリット上の指等を前記両縁部より延出した延出部で支持することにより、前記スリットの隙間内への指等の進入を阻止することができる。これにより、前記スリットの隙間に指が引っ掛かる等の違和感を確実に防止することができる。
【0028】
このように、外観品質の低下や握持時の不具合を防止できるので、握る機会が多く、目に付く場所であっても、不具合無く採用することができる。
【0029】
また、請求項2の手すり用被覆部材の取付構造においては、前記スリットの両側に位置する第一の縁部及び第二の縁部を前記手すり本体に接着したため、前記手すり本体に対する前記両縁部の移動を阻止することができる。
【0030】
これにより、両縁部間に形成され得る隙間の広がりを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態を示す説明図である。
【図2】同実施の形態の手すりの要部を示す断面図である。
【図3】同実施の形態の手すりのスリットを示す説明図である。
【図4】従来例を示す図で、(a)は要部の断面図であり、(b)は被覆部材の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一の実施の形態を図に従って説明する。
【0033】
図1は、本実施の形態にかかる車両の要部を示す図であり、当該車両の側部には、乗降口が設けられている。該乗降口の側部に設けられたピラーには、固定用ブラケット1がボルトにより固定されており、該固定用ブラケット1の先端部には、支持ブラケット2が溶接されている。該支持ブラケット2は一対の支持片3,3を有しており、当該支持ブラケット2は、コ字状に形成されている。
【0034】
この支持ブラケット2の前記支持片3,3の先端部には、乗降口から乗り降りする際に握持される手すり11が溶接で固定されており、この手すり11に、本願発明の手すり用被覆部材の取付構造が採用されている。
【0035】
この手すり11は、図2に示すように、前記支持ブラケット2で支持された手すり本体21を備えており、該手すり本体21は、円筒状のパイプ材又は中実の丸棒によって構成されている。該手すり本体21は、金属や合成樹脂で構成されており、前記乗降口の形状や当該乗降口に設けられたステップや室内の部品形状(ドアトリム、CTRピラートリム)に合わせて、部分的に折曲されている。
【0036】
この手すり本体21の外周面25は、部分的に被覆部材31によって全周に渡って覆われており、図1に示したように、前記支持ブラケット2の前記各支持片3,3も前記被覆部材31,31によって覆われている。
【0037】
この被覆部材31は、ゴムスポンジによって構成されており、当該被覆部材31は、円筒状に形成されるとともに、その側面には、長さ方向に延在するスリット41が全長に渡って形成されている。
【0038】
前記被覆部材31は、内径寸法Iがその一例として26mmに設定されており、前記手すり本体21の外周面25を全周に渡って被覆できる大きさに形成されている。この被覆部材31は、握持する手にフィットするように所定の肉厚を有しており、その外形寸法Oがその一例として35mmとなるように設定されている。また、当該被覆部材31の長さ寸法Lは、取り付ける部位に応じて設定されている。
【0039】
この被覆部材31に形成された前記スリット41は、波形状に形成されており、当該波形状の高さ寸法Hは、その一例として2mmに設定されている。また、当該波形状における一周期の幅寸法Wは、その一例として5mmに設定されており、指幅より十分小さな寸法に設定されている。そして、波形状の頂点部分のRは、その一例として1mmに設定されている。
【0040】
前記被覆部材31の周面は、図3に示すように、このスリット41によって区画されており、当該スリット41を境とした一方側には第一縁部51が形成されるとともに、前記スリット41を境とした他方側には、第二縁部52が形成されている。
【0041】
前記第一縁部51には、前記第二縁部52側に円弧状に延出した複数の第一延出部61,・・・が形成されており、各第一延出部61,・・・が対向する前記第二縁部52の部位には、円弧状の後退した第二後退部62,・・・が形成されている。また、前記第二縁部52には、前記第一縁部51側に円弧状に延出した複数の第二延出部63,・・・が形成されており、各第二延出部63が対向する前記第一縁部51の部位には、円弧状の後退した第一後退部64,・・・が形成されている。
【0042】
そして、前記第一縁部51に形成された前記各第一延出部61,・・・は、当該スリット41の中心に延在する仮想中心直線71を想定した際に、当該仮想中心直線71を超えて前記第二の縁部52側に延出し、対応する第二後退部62,・・・内に配置されるように構成されており、前記第二縁部52に形成された前記各第二延出部63,・・・は、前記仮想中心直線71を超えて前記第一縁部51側に延出し、対応する第一後退部64,・・・内に配置されるように構成されている。
【0043】
これにより、両縁部51,52に設けられた各延出部61,・・・、63,・・・が交互に噛み合った状態が形成されるように構成されている。
【0044】
この被覆部材31を前記手すり本体21に取り付ける際には、この被覆部材31を前記スリット41から開くとともに、この開拡状態において、当該被覆部材31を、図2にも示したように、前記スリット41による開口部分から前記手すり本体21に外嵌して被覆する。
【0045】
この取付状態において、前記被覆部材31の前記第一縁部51から図2中時計回りCWの約90度位置までの第一領域81は、第一両面テープ82によって前記手すり本体21に固定されるように構成されており、前記被覆部材31の前記第二縁部52から図2中反時計回りCCWの約90度位置までの第二領域83は、第二両面テープ84によって前記手すり本体21に固定されるように構成されている。
【0046】
また、前記第一領域81の端部に設定された第一接着位置91は、固化タイプの接着剤92によって前記手すり本体21に固定されており、前記第二領域83の端部に設定された第二接着位置93も、前記接着剤92で前記手すり本体21に固定されている。
【0047】
そして、前記スリット41の根元である前記第一縁部51には、第一スリット側接着位置101が設定されており、該第一スリット側接着位置101も前記接着剤92によって前記手すり本体21に固定されている。また、前記スリット41の根元である前記第二縁部52には、第二スリット側接着位置102が設定されており、該第二スリット側接着位置102も前記接着剤92によって前記手すり本体21に固定されている。
【0048】
以上の構成にかかる本実施の形態において、前記被覆部材31に設けられたスリット41は、波形状に形成されており、当該被覆部材31で手すり本体21に被覆した状態では、当該被覆部材31の側面に波形状のスリット41が延在することとなる。
【0049】
このとき、前記スリット41を境とした一方側の第一縁部51には、他方側の第二縁部52側に延出する第一延出部61,・・・が形成されており、前記他方側に位置する前記第二縁部52には、前記第一縁部51側に延出する第二延出部63,・・・が形成されている。
【0050】
そして、前記第一縁部51に形成された前記第一延出部61,・・・は、当該スリット41の中心に延在する仮想中心直線71を超えて前記第二縁部52側に延出する一方、前記第二縁部52に形成された第二延出部63,・・・は、前記仮想中心直線71を超えて前記第一縁部51側に延出し、両縁部51,52に設けられた各延出部61,・・・63,・・・が交互に噛み合った状態が形成される。
【0051】
これにより、前記スリット41を境とした前記第一縁部51と前記第二縁部52との境界の明確化を防止することができる。このため、前記被覆部材の側面に直線状のスリットが長さ方向全域に渡って開口する構造上、当該スリットによる開口部分と前記被覆部材とによる凹凸が目立ってしまう従来と比較して、外観品質を高めることができる。
【0052】
このとき、温度変化により前記手すり本体21や前記被覆部材31に膨張・収縮が生じ、前記スリット41による隙間111が広がってしまうこともあり得る。このような場合であっても、両縁部51,52に設けられた前記各延出部61,・・・63,・・・が噛み合った状態を維持できる範囲において、前記隙間111が長さ方向へ一直線状に繋がることを防止することができる。
【0053】
これにより、隙間111の変位量を目立たなくすることができ、見栄え変化の顕在化を防止することができる。
【0054】
そして、この手すり11を手で握る際には、指等が前記被覆部材31の前記スリット41に触れることがある。このとき、前記両縁部51,52に設けられた前記各延出部61,・・・63,・・・は、前記スリット41の中心に延在する前記仮想中心直線71を超えて交互に噛み合った状態が形成されている。
【0055】
このため、当該スリット41上の指等を前記両縁部51,52から延出した前記各延出部61,・・・63,・・・で支持することにより、前記スリット41の隙間111内への指等の進入を阻止することができる。
【0056】
これにより、前記スリット41の隙間111に指が引っ掛かる等の違和感を確実に防止することができるとともに、凹凸感を減少することができる。
【0057】
このように、外観品質の低下や握持時の不具合を防止できるので、握る機会が多く、目に付く場所であっても、不具合無く採用することができる。
【0058】
一方、前記スリット41の両側に位置する前記第一縁部51及び第二縁部52は、前記手すり本体21に接着剤92,92によって接着されている。
【0059】
このため、前記手すり本体21に対する前記両縁部51,52の移動を阻止することができる。
【0060】
これにより、両縁部51,52間に形成され得る隙間111の広がりを確実に防止することができる。
【0061】
このとき、前記両縁部51,52を両面テープによって前記手すり本体21に固定することも考えられる。しかし、この場合、組み付け誤差などによって当該両面テープが前記スリット41による隙間111に露出した際には、この露出した部位にゴミ等が付着し、当該隙間111にゴミ溜まりが発生する恐れがある。
【0062】
そこで、本実施の形態のように固化タイプの接着剤92,92によって前記第一縁部51及び第二縁部52を前記手すり本体21に固定することで、当該接着剤92,92が前記隙間111に洩れることがあっても、当該接着剤92,92が固化することによってゴミ等の付着を確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0063】
11 手すり
21 手すり本体
31 被覆部材
41 スリット
51 第一縁部
52 第二縁部
71 仮想中心直線
92 接着剤
111 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の被覆部材に設けられたスリットを開口し、当該被覆部材を前記スリットによる開口部分から手すり本体に被覆する手すり用被覆部材の取付構造において、
前記スリットを波形状に形成したことを特徴とする手すり用被覆部材の取付構造。
【請求項2】
前記手すり本体を前記被覆部材で被覆した状態で前記スリットの両側に位置する縁部を前記手すり本体に接着したことを特徴とする請求項1記載の手すり用被覆部材の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−97528(P2012−97528A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248212(P2010−248212)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000128544)株式会社オーテックジャパン (183)
【Fターム(参考)】