説明

手すり

【課題】グリップ力を向上させるための滑り止め部を必要且つ十分な範囲に備えた手すりの提供。
【解決手段】手すり棒1の軸中心1eを通る仮想の水平線xの下側で、且つ、この軸中心1eを通る仮想の垂直線yよりも手すりRの利用者の歩行側に位置される側部1a’における、前記軸中心1eから放射方向に延びて前記垂直線yとの間に65度の鋭角を形成する仮想の線分z1とこの垂直線yとの間に位置される箇所の全部又は一部を手すり棒1の長さ方向に亘る滑り止め部1bとしてなる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
手すりを構成する手すり棒の一部を弾性部材から構成させてなる手すりがある。(特許文献1参照)かかる手すりは、手すりを使って体を支える必要がある場合には弾性部材を圧縮変形させて手すりをしっかりと握れるようにしようとするものであるが、弾性部材は手すり棒の直径方向両側に単純に設けられているに過ぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】特開平11−131741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明が解決しようとする主たる問題点は、グリップ力を向上させるための滑り止め部を必要且つ十分な範囲に備えた手すりを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を達成するために、この発明にあっては、手すりを、手すり棒の軸中心を通る仮想の水平線の下側で、且つ、この軸中心を通る仮想の垂直線よりも手すりの利用者の歩行側に位置される側部における、前記軸中心から放射方向に延びて前記垂直線との間に65度の鋭角を形成する仮想の線分とこの垂直線との間に位置される箇所の全部又は一部を手すり棒の長さ方向に亘る滑り止め部としてなるものとした。
【0005】
かかる手すりにあっては、これを構成する手すり棒における手すりの利用者の親指がおおむね接する箇所に前記滑り止め部を備えていることから、手すり棒を握って体を支える必要がある場合には滑りを生じることなく適切に手すり棒を握ることが可能となる。一方、手すり棒に手を摺らせながらの歩行をなす場合には滑り止め部を手のひらに接しさせることはない。
【0006】
前記手すり棒の軸中心を通る仮想の水平線の下側で、且つ、この軸中心を通る仮想の垂直線よりも手すりの利用者の歩行側と反対の側に位置される側部における、前記軸中心から放射方向に延びて前記水平線との間に40度の鋭角を形成する仮想の線分とこの水平線との間に位置される箇所の全部又は一部を手すり棒の長さ方向に亘る追加滑り止め部としておくこともある。このようにした場合、手すり棒を握って体を支える必要がある場合には滑りを生じることなく一層適切に手すり棒を握ることが可能となる。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、手すりにグリップ力を向上させるための滑り止め部を必要且つ十分な範囲に備えさせることができ、したがって、かかる滑り止め部が手すりの外観性に与える影響を最小限化できると共に、既存の手すりを出発材料としてこれに対して余分な加工を施すことなく容易且つ適切に滑り止め部を備えた手すりを製造することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は実施の形態にかかる手すりを構成する手すり棒の断面構成図であり、手すり棒が滑り止め部のみを備えた例を示している。
【図2】図2は実施の形態にかかる手すりを構成する手すり棒の断面構成図であり、手すり棒が滑り止め部と追加滑り止め部とを備えた例を示している。
【図3】図3は実施の形態にかかる手すりを構成する手すり棒の断面構成図であり、手すり棒が図1に示される例よりも狭い範囲で滑り止め部のみを備えた例を示している。
【図4】図4は実施の形態にかかる手すりを構成する手すり棒の断面構成図であり、手すり棒が図2に示される例よりも狭い範囲で滑り止め部を備えると共に、さらに追加滑り止め部とを備えた例を示している。
【図5】図4に示される手すり棒を含んで構成される手すりの使用状態を示した要部断面構成図である。
【図6】図4に示される手すり棒の斜視構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1〜図6に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。この実施の形態にかかる手すりRは、これを構成する手すり棒1の側部1aの一部を滑り止め部1bとしてなるものである。
【0010】
図示の例では、手すりRは、手すりRの利用者の歩行面に平行をなすように手すり棒1を配させている。図5中符号2で示すのは手すり棒1の中間を壁Wに支持させるための中間ブラケットである。
【0011】
図示の例では、滑り止め部1bは、手すり棒1の側部1aに、手すり棒1の長さ方向に沿った溝1cを形成し、この溝1cに弾性変形特性を備えた長尺体1dをこの溝1cに沿って嵌め込み状に取り付けることで手すり棒1に形成されている。手すり棒1は、その横断面においてその外郭を手すり棒1の軸中心1eを円心とする円の円弧に略倣わせた丸棒状のもの、あるいは、これに準じた棒状のものが予定される。かかる円の直径は、幼児から成人男性までのにぎり内径(親指の指先と中指の指先とをこれらの内側に円形の空間ができるように接しさせたときのこの空間の直径)を考慮すると、25mm〜40mmの範囲である。かかる長尺体1dは、典型的には、ゴムや、ゴム状弾性を備えたプラスチックなどの押出成形品から構成することができる。典型的には、長尺体1dとしては、前記溝1cの溝幅と略同じ幅を持ち、かつ、前記溝1cの深さと略同じ厚さを備えたものを利用する。このような長尺体1dは中空に構成させても良い。
【0012】
また、滑り止め部1bは、前記のような溝1cに、表面を摩擦抵抗の高い面、典型的には、粗面(しぼづけされた面、ローレット加工された面、サンドブラスト加工された面など)とした長尺体1dを嵌め込み状に取り付けることでも形成させることができる。
【0013】
あるいはまた、かかる滑り止め部1bは、手すり棒1自体の表面を加工して、その側部1aの一部を前記のような摩擦抵抗の高い面とすることによっても手すり棒1に形成させることができる。
【0014】
あるいはまた、かかる滑り止め部1bは、手すり棒1自体の表面に、表面を前記のような摩擦抵抗の高い面とした帯状体を貼着などすることによっても手すり棒1に形成させることができる。
【0015】
この実施の形態にかかる手すりRでは、手すり棒1の軸中心1eを通る仮想の水平線xの下側で、且つ、この軸中心1eを通る仮想の垂直線yよりも手すりRの利用者の歩行側に位置される側部1a’における、前記軸中心1eから放射方向に延びて前記垂直線yとの間に65度の鋭角を形成する仮想の線分z1とこの垂直線yとの間に位置される箇所の全部又は一部を手すり棒1の長さ方向に亘る前記滑り止め部1bとしている。(図1〜図4)
【0016】
また、図2及び図4に示される例では、手すり棒1の軸中心1eを通る仮想の水平線xの下側で、且つ、この軸中心1eを通る仮想の垂直線yよりも手すりRの利用者の歩行側と反対の側に位置される側部1a”における、前記軸中心1eから放射方向に延びて前記水平線xとの間に40度の鋭角を形成する仮想の線分z2とこの水平線xとの間に位置される箇所の全部又は一部を手すり棒1の長さ方向に亘る追加滑り止め部1fとしている。図示の例では、かかる追加滑り止め部1fは、前記滑り止め部1bと同様に、手すり棒1の側部1aに、手すり棒1の長さ方向に沿った溝1gを形成し、この溝1gに弾性変形特性を備えた長尺体1dをこの溝1gに沿って嵌め込み状に取り付けることで手すり棒1に形成されている。
【0017】
手すり棒1の直径35mmとする手すりRを用意し、男女各5名の健常者に、これを握りながらの水平歩行と、階段昇りと、階段下りとを行ってもらい、その際に手すり棒1に加わる荷重を手すり棒1の軸中心1eを巡る各位置において測定した。この荷重は手すり棒1の側部1aにシート状の圧力センサを取り付けることで測定した。その結果を以下に示す。
【表1】

【0018】
手すり棒1に加わる荷重は、手のひらが当たる手すりRの上部が最も大きく、次いで、親指が接する表1における50度近辺と、他の指が接する表1における290度近辺が大きいことが分かった。
【0019】
この実施の形態にかかる手すりRにあっては、これを構成する手すり棒1における手すりRの利用者の親指がおおむね接する箇所に前記滑り止め部1bを備えていることから、手すり棒1を握って体を支える必要がある場合には滑りを生じることなく適切に手すり棒1を握ることが可能となる。一方、手すり棒1に手を摺らせながらの歩行をなす場合には滑り止め部1bを手のひらに接しさせることはない。すなわち、この実施の形態にかかる手すりRはこれに対するグリップ力を向上させるための滑り止め部1bを必要且つ十分な範囲に備えたものとなっている。
【0020】
また、図2及び図4に示される手すりRにあっては、これを構成する手すり棒1における手すりRの利用者の親指以外の指がおおむね接する箇所に前記追加滑り止め部1fを備えていることから、手すり棒1を握って体を支える必要がある場合には滑りを生じることなく一層適切に手すり棒1を握ることが可能となる。
【0021】
図3及び図4に示される例では、滑り止め部1bを、前記軸中心1eから放射方向に延びて前記垂直線yとの間に65度の鋭角を形成する仮想の線分z1と、この仮想の直線z1と前記軸中心1eから放射方向に延びて前記垂直線yとの間に35度の鋭角を形成する仮想の線分z3との間に位置される箇所にのみ形成させている。この図3及び図4に示される例では、普通に手すり棒1を握った場合に親指が接することが確実な範囲周辺に限って滑り止め部1bを形成させている。
【符号の説明】
【0022】
R 手すり
x 水平線
y 垂直線
z1 線分
1a’ 側部
1 手すり棒
1b 滑り止め部
1e 軸中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手すり棒の軸中心を通る仮想の水平線の下側で、且つ、この軸中心を通る仮想の垂直線よりも手すりの利用者の歩行側に位置される側部における、前記軸中心から放射方向に延びて前記垂直線との間に65度の鋭角を形成する仮想の線分とこの垂直線との間に位置される箇所の全部又は一部を手すり棒の長さ方向に亘る滑り止め部としてなることを特徴とする手すり。
【請求項2】
手すり棒の軸中心を通る仮想の水平線の下側で、且つ、この軸中心を通る仮想の垂直線よりも手すりの利用者の歩行側と反対の側に位置される側部における、前記軸中心から放射方向に延びて前記水平線との間に40度の鋭角を形成する仮想の線分とこの水平線との間に位置される箇所の全部又は一部を手すり棒の長さ方向に亘る追加滑り止め部としてなることを特徴とする請求項1に記載の手すり。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−241364(P2012−241364A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−110445(P2011−110445)
【出願日】平成23年5月17日(2011.5.17)
【出願人】(000183428)住友林業株式会社 (540)
【Fターム(参考)】