説明

手で取り外すことができ間隔を調節することができる電極を備えたエレクトロブロッティングカセット

上側の板と、下側の板と、上側の板と下側の板との両方を支持する基板と、を備え、上側の板と下側の板との両方に電極が備えられているエレクトロブロッティングカセットであって、カセットが、基板の床の上に「ランド」として知られている、一組の立ち上がり領域と、下側電極板の下側に反対向きの一組のランドと、を備えることによって、異なった厚さの転写積層を収容し、この二組のランドが、下側電極板の配置方向に従って相互に当接するか又は相互にずれるように空間配置され、これによって、ユーザーが、基板内の下側電極板の高さを、2つの高さから選択できるように、すなわち、転写積層の厚さを選択できるようにする。一方又は両方の部材上に一組以上のランドを設けることは、3つ以上の厚みの選択を可能にし、ランドの代わりに窪みをつけることもできる。指で操作することができるラッチが、上側電極板を、基板に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の請求項は、2009年2月23日に出願された米国仮出願番号61/154,536号明細書に基づいており、この仮出願の内容は、本願に組み込まれている。
【0002】
本発明は、ゲル電気泳動の分野に属し、特に、スラブゲルから電気泳動で分離した種の転写に関し、種(species)の、検出、同定、及び定量化ができるシート形式のサポートマトリクスに、種を分離する。
【背景技術】
【0003】
スラブゲル中で電気泳動で分離した、たんぱく質、核酸、その他の生物化学種は、ゲル中よりも、膜上で同定や定量化を行うほうが容易であるため、これらを、同定や定量化のために、ニトロセルロース、ナイロン、ポリビニル二フッ化物(polyvinyl difluoride)、などの膜に転写することが、しばしば行われる。広く行われている転写技術は、エレクトロブロッティング法であり、エレクトロブロッティング法では、ゲルと膜の平面が、直接全面接触するように配置され、電流が、ゲルと膜とを横切る方向に流され、これによって、種をゲル中で移動させるのと同様の態様で、効果的な転写が行われる。種がDNA片である場合には、この転写は、創始者の英国生物学者エドウィン・サザン(Edwin M. Southern)に因んで、サザンブロッティングと名づけられている。類推により、RNA片の転写は、ノーザンブロッティングと名づけられ、たんぱく質やポリペプチドの転写は、ウェスタンブロッティングと名づけられている。転写が生じると、膜上の種は、その種に適した方法で分析される。例えば、サザンブロッティングとノーザンブロッティングでは、この分析には、膜上の種をハイブリダイゼーションプローブで処理し、次に、このプローブに、蛍光染料やクロモゲン染料でラベル付けする処理を含んでいる。ウェスタンブロッティングでは、分析は、種を抗体で処理し、次に、この抗体に、蛍光染料やクロモゲン染料や酵素、又は、抗体を検出するのに一般的に利用されているラベル付け技術で、ラベル付けする処理を含んでいる。
【0004】
サザンブロッティング、ノーザンブロッティング、ウェスタンブロッティングの、どれについてでも、エレクトロブロッティングは、ウェット、又はドライ、又はセミドライの、どのフォーマットでも実施することができる。ウェットブロッティングでは、電流を流すのに必要なイオンを供給するために、電極と、ゲル又は膜との間に、緩衝液(buffer solution)を入れる。セミドライブロッティングでは、緩衝液は、緩衝液の代わりに、緩衝液で湿らせたろ紙を利用し、ゲルや膜と、ろ紙とは、転写積層(transfer stack)に構成され、「ブロッティングサンドウィッチ」とも呼ばれ、この積層は、順番に、緩衝液で湿らせた1番目のろ紙、ブロッティング膜、ゲル、緩衝液で湿らせた2番目のろ紙、で構成される。ドライエレクトロブロッティングは、ゲルに含まれている緩衝液以外には、液状の緩衝液を利用しない。ウェット、ドライ、セミドライエレクトロブロッティング、及び、関連する材料と装置については、マルガリート(Margalit)らのインビトロジェン(Invitrogen)の引用文献1、リッテルヘイル(Littelehales)らのアメリカンバイオネティックスの引用文献2、ダイソン(Dyson)らのAmersham Internationalの引用文献3、シュート(Schuette)のLife Technologies, Inc.の引用文献4、チャン(Chan)らのアボットラボラトリーズの引用文献5、カマーショウ(Camacho)のホウファーサイエンティフィックインスツルメンツの引用文献6、ボケット(Boquet)のBertin & Cieの引用文献7、チェン(Chen)のWealec Enterprise Co.,Ltd.の引用文献8、に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開番号US2006/0278531A1号公報
【特許文献2】米国特許番号4840714号公報
【特許文献3】米国特許番号4889606号公報
【特許文献4】米国特許番号5013420号公報
【特許文献5】米国特許番号5356772号公報
【特許文献6】米国特許番号5445723号公報
【特許文献7】米国特許番号5482613号公報
【特許文献8】米国特許番号6592734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明は、エレクトロブロッティングカセットに関し、特にセミドライブロッティングに有効であり、部品は、基板、上側の板、下側の板、を備え、2つの電極が、上側の板と下側の板に、それぞれ取り付けられている。2つの板は、基板から、また、相互に、容易に分離することができ、それぞれ独立に清掃することができ、電極を板から取り外すことなく交換することができる。この板は、1以上の、手で取り外すことができるラッチによって、カセットに固定されており、ラッチは、上側の板を、基板の上に所定の高さで固定する。カセットは、異なった厚さの転写積層を収容するが、カセットは、ユーザーが、基板の上の上側の板の高さを変えずに、下側の板を、基板の上に、様々な異なる高さでセットすることかできるという特徴を有している。また、本発明のカセットの一実施形態では、カセットを、電源と、カセットの電極に係合する電気接点と、その他エレクトロブロッティングを実施するのに必要な全ての電気部品と、を有するエレクトロブロッティング器具に挿入することができるという構造を、特徴としている。以下の添付図と明細書とから、更なる特徴と実施形態とが、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の範囲に属するエレクトロブロッティングカセットの分解斜視図である。
【図2】図1のカセットの基板の平面図である。
【図3】図1のカセットの下側電極板の下側の平面図である。
【図4A】図2と図3の基板及び下側電極板とは別の実施形態における、下側電極板の下側の平面図である。
【図4B】図2と図3の基板及び下側電極板とは別の実施形態における、基板の床面の平面図である。
【図5A】更に別の実施形態における、下側電極板の下側の平面図である。
【図5B】更に別の実施形態における、基板の床面の平面図である。
【図6】図1のカセットの上側電極板の下側の平面図である。
【図7】図6の上側電極板の上側の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の手で取り外すことができるラッチは、本発明の装置の1つの部品の構造であり、この構造は、1つの部品を、本発明の装置の他の部品の構造と結合又は係合させ、2つの部品を、1つの部品の他方の部品に対する位置が固定され強固となるように結合する一方、ユーザーの簡単な指の操作又は指の押し付け力により、係合から開放することができる、という構造である。「手で取り外すことができる」という用語は、ここでは、道具を使用することなく、好ましくはユーザーの手の簡単な操作で、係合させ、係合から開放することができる、ということを意味する。本発明の装置は、上側電極板を、基板の上に、異なる高さで固定する一方、下側電極板を、基板と上側電極板との間の2つ以上の異なる高さで取り付け、ラッチで結合する2つの部品を、上側電極板と基板とすることが好ましく、上側電極板の構造が基板の構造と結合することが好ましい。上側電極板は、電気伝導性の無い材料の支持板又はフレームに取り付けられることが好ましく、上側電極板に関するラッチ構造は、支持板又はフレームの構造であることが好ましい。ラッチ構造は、タブとスロットの組み合わせ、掛け金の組み合わせ、出っ張りと棚(ledge and shelf)の組み合わせ、突起と溝の組み合わせ、又は、ピンと穴の組み合わせ、という、従来の係合構造とすることができ、簡単な直線運動で係合したり係合から外れたりすることができる組み合わせであることが好ましい。タブとスロットの組み合わせが好ましい。上側の板を、下側の板と基板に対して平行な位置に安定させるためには、すなわち、使用中に水平であるためには、2つ以上のラッチが、カセット上で対称配置されることが好ましい。一般的に、2つのラッチを、カセットの互いに反対側の2つの側面に、1つずつ使用すれば十分である。
【0009】
「弾性のある」及び「弾性的に取り付けられた」という用語は、ここでは、ラッチ構造の取り付けられた、構造上の腕部又は部品が、一般的に、強固であるが外力が加わると曲がることができ、外力を解除するともとの形状及び外形に戻る、ことを示すものと意図されている。したがって、例えばタブのようなラッチ構造が、手による押し付けによって引っ込められ、スロットその他の結合構造から外されると、タブは、押し付け力の解除されたときの弛緩位置に戻る。上側の板が基板の上の位置にあり、下側の板が両者の間にある場合、ラッチの押し付け力を解除することは、ラッチが係合し、上側の板が基板に固定されることになる。指の操作は、弾性的な部品の上に、つかんでラッチを引っ込める操作をすることができるラグ又はノブを備えることによって、容易に操作できることが好ましい。
【0010】
基板は、基板から立ち上がる側面の壁を備えるように構成され、この壁がラッチ構造を備え、ラッチ構造の高さが、上側の板の支持板上又はフレーム上の対応する構造とラッチ構造との位置が合う高さである、ことが好ましい。好ましい実施形態では、側面の壁が、基板全体を囲み、下側電極と上側電極との両方と、ゲルから膜に流れる緩衝液と、を内包することが好ましい。
【0011】
カセットは、基板の床上か又は下側電極板の下側表面上に、又は両方に、当該技術分野で「ランド」として知られる一組の立ち上がり領域、すなわち表面が平らな突出し部、を備えることによって、向かい合った表面上のランドと協力して、又は向かい合った表面内のへこみ又は窪みと協力して、異なった厚さの転写積層を収容する。したがって、ランドが基板の床上にあるばあいには、向かい合った表面は下側電極板の下側表面であり、ランドが下側電極板の下側表面上にある場合には、向かい合った表面は基板の床である。下側電極板を、基板上の異なった高さにすることは、様々なランドの空間配置と高さ、又は様々なへこみ又は窪みの空間配置と深さ、を設けるとともに、下側電極板を、基板に対して異なった角度にすることによって、すなわち、異なった回転方向位置に合わせることによって、達成される。高さの変更は、ランドが、一方の回転方向位置において向かい合ったランドに当接する一方、別の回転方向位置において向かい合ったランドからずれることによって、又は、ランドが、一方の回転方向位置において第1の高さのランドに当接する一方、別の回転方向位置において第2の(異なった)高さのランドに当接することによって、又は、ランドが、一方の回転方向位置において向かい合ったランドに当接する一方、別の回転方向位置において窪みに入ることによって、又は、これらの変更手段の組み合わせによって、達成される。これらの変更は、一方の表面上の一組のランドと別の表面上の向かい合った一組のランドとが、上側の板の回転軸(通常は、中心軸)周りに非対称に配置される、簡単な例示によって説明することができる。この二組のランドが、相互に当接する場合、下側電極板の基板の床上の距離は、当接するランドの合計の高さとなり、二組のランドがずれる場合、すなわち、一方の一組のランドが、他方の一組のランドから外れる場合には、下側電極板は、カセット内で、より低い位置になる。したがって、ユーザーは、下側電極板を回転させて、上側電極板の基板上の高さはそのままで、下側電極板のカセット内での異なった高さを選択することができる。
【0012】
一般的に、ランドと、窪みがある場合には窪みと、は、各表面上に、下側電極板(すなわち電極の支持板)を何分の1回転か回転させるだけで高さを変更することができるように、回転軸周りに非対称ではあるが各回転方向位置において平面を形成するのに十分な配置で、配置される。180度の回転は、上述のように2つの高さの間での選択を与え、120度の回転は、3つの高さの間での選択を与え、90度の回転は、4つの高さの間での選択を与える。カセットの好ましい実施形態では、基板と、下側及び上側電極板とは、矩形であり、矩形という用語は、ここでは、各角部が直角の平行四辺形を意味する。「矩形」という用語は、したがって、「正方形」(各辺の長さが同一)と、「長方形」すなわち長さが幅よりも長いものと、を含む。正方形形状は、90度の回転ができるものであり、これによって4つの角度位置を得ることができ、一方、長方形は、180度離れた2つの回転位置を得ることができる。いずれの場合においても、平面内での安定した位置は、回転軸周りに配分された最少限3点の接触点(ランドなど)で得られ、転写積層の全ての厚さに対して、カセットは、複数の電極を、相互に平行に保持することができる。
【0013】
本発明のエレクトロブロッティングカセットは、カセットをブロッティング処理用の電気接続を備える器具へ挿入するための、ガイドを有することが好ましい。このガイドは、カセットの向かい合った2つの側面の各々の外表面に沿って設けられ、該器具の内部の相補的な形状と一対になるもので、側部の棚(lateral shelf)、棚状のもの(ledge)、肩(shoulder)、細長いタブ、又はタブの連なり(series of tabs)等とすることができる。カセットが挿入される該器具は、2つ以上のカセットを、積層配置で、該器具の内部に収容するような構造とし、積層されたカセットが、該器具内の共通の電気部品によって電力を供給されるようにすることもできる。
【0014】
本発明の新規な特徴は、様々な実施形態で実施することができるが、発明の全体的な理解のために、特定の実施例について詳細に説明する。この実施例は、図に示されている。
【0015】
1つのカセットの全体11を、図1に分解斜視図で示す。カセット11は、基板12と、下側電極板13と、上側電極板14と、を備える。基板12は、床15と、床から立ち上がった周囲の壁16と、を備え、2つの電極板を収容する収容構造を形成する。下側電極17は、露出した上向き表面を有し、一方、上側電極は、上側電極板14の下側にあるので図1では見えないが、露出した下向き表面を有している。カセットが、下側電極板13と上側電極板14との間に転写積層(ゲルと膜)を備え、積層と2つの電極板とが基板12の中に配置されて完全に組み上がった場合には、上側電極板14の上側表面18は、基板の周囲の壁16の上側リム19とほぼ同一面となる。この同一面となることは、以下に説明する、手で取り外すことができるラッチの構造と配置とによって達成される。
【0016】
1つの、手で取り外すことができるラッチが、カセットの前面の長手方向のエッジに、十分示されている。このラッチの部品は、上側電極板14の長手方向のエッジから外側に突き出しているタブ21と、基板の周囲の壁16の対応する位置にあってタブ21を収容するスロット22と、である。第2のタブ(図1では見えない)は、上側電極板の反対側の側面の長手方向のエッジから外側に突き出しており、第2のスロット23が、基板の周囲の壁16の対応する位置にある。両方のタブは、外力が加わらないときは、各スロット内にあり、スロットからタブを引っ込めるのは、上側電極板14から上側に突き出している一対のフィンガーラグ24、25によって行われる。図1にはまた、側部に突き出した細長いガイドタブ26も示されており、細長いガイドタブ26は、カセットが電源と電気部品のために挿入される器具(図示せず)の対応するスロット又は穴の中の棚状のものと対になる。ガイドタブ26は、周囲の側面の壁16の長手方向部分の外側表面から延び、同一の反対側のタブ(図1では見えない)が、反対側の長手方向部分から延び、2つのガイドタブは、基板上に対称位置に配置されている。
【0017】
図2は、基板12の平面図であり、図1の斜視図では見えない構造を示している。これらの構造のなかで、第2のガイドタブ31が、第1のガイドタブ26とともに、ユーザーがカセットを前述の器具に滑り込ませるのを可能にする。この図の構造はまた、4つのコーナーガイド32、33、34、35をも含んでおり、これらはそれぞれ、基板の中心に向いた凹面を備える、立ち上がった壁の部材である。このガイドの配置は、下側電極板(本図には示さず)の4隅の外側を着座させ、4隅を収容するように選択されており、これによって下側電極板を基板内に位置決めする。ガイドのうち33、34の2つは、図1にも示されている。更に、図2には、4つの「ランド」41、42、43、44の一組(そのうち42、43の2つは、図1にも示されている)が示されている。4つのランドは、矩形の角部ではなく台形の4つの角部に配置されており、下側電極板の向きによって、下側電極板の下側の、対応する逆向きのランドが、ランド41、42、43、44の直上にくるか、又は、ランド41、42、43、44の横にくる(そのためランド41、42、43、44と当らない)ようになる。
【0018】
図3は、下側電極板13の下側の平面図である。下側電極板は、連続した剛体の平坦なシートであり、この上面に電極(この図では見えない)がある。逆向きのランド52、53、54、55は、基板のランド41、42、43、44と同様に、底面から下向きに突き出しており、矩形ではなく台形の4つの角部に配置されている。このランドと台形の大きさは、基板のランドと台形の大きさと同一であり、下側電極板は、基板内に、2つの向きのどちらにでもセットすることができる。2つの向きのどちらでも、下側電極板の4隅は、4つのコーナーガイド32、33、34、35内に着座することができる。1つの向きでは、ランドの2組は一致する、すなわち、下側電極板上の一組のランドのうちの各ランドは、基板の床上の一組のランドのうちの対応するランドに、直接対向する。この向きでは、下側電極板13は、基板内で最大高さになる。ユーザーが、下側電極板を基板内にセットする前に、下側電極板を、図3の矢印56、57の方向に180度回転させると、第2の取り付け方向となる。この第2の取り付け方向では、2組のランドは一致せず、相互に外れ、下側電極板13を、基板内で、より低い位置に取り付けることになる。当業者には明らかであり、以下で説明するように、台形以外の配置で同様の効果を生じるランドの配置に、換えることができ、ランドの数は、4よりも小さくも大きくもすることができる。
【0019】
図4Aと図4Bとは、下側電極板61と基板62それぞれの、他の形態を図示しており、下側電極板の下側63と基板の床64とを示している。この形態は、基板の上の下側電極板の高さを、図2、3のような2つではなく、4つの高さとするものである。下側電極板61と基板62は、ともに、長方形ではなく正方形であり、下側電極板61は、基板の床上のガイド65、66、67、68内に、4つの回転位置のどれにでも配置することができる。下側電極板61は、3つの逆向きのランド71、72、73を有している。これら逆向きのランドは、1つの回転位置で、基板上の一組のランド74(3重線で示す円)に当接し、下側電極板61を最初の回転位置から90度回転させた第2の回転位置では、基板上の第2の組のランド75(2重線で示す円)に当接し、下側電極板61を第2の回転位置から90度回転させた第3の回転位置では、基板上の第3の組のランド76(1本の線で示す円)に当接し、下側電極板61を第3の回転位置から90度回転させた第4の回転位置では、基板上のどのランドとも当接せず、ランドの間の領域(破線で示す円)に落ちる。ランドの各組は、下側電極板の下側表面上と基板の床上との両方にあり、下側電極板の回転軸77の周りに非対称に配置されている。基板上のランドの高さが異なれば、4つの回転位置は、下側電極板61を、基板62上に、異なった高さで配置することになる。
【0020】
ランドの更なる構成を、図5Aと5Bとに示す。ここでは、図4Aと4Bで示したように、下側電極板81と基板82とが、両方とも正方形であり、4つの回転方向位置決めが、90度ずつ離れている。下側電極板の下面83は、4つのランド84、85、86、87を備えており、基板は、3つの対応するランドの組88、89、90を備え、下側電極板上のランドと基板の床上のランドの各組は、回転軸91の周りに非対称に配置されている。基板の床上の3組のランドは、高さが異なり、下側電極板を、図4Aと4Bのように90度ずつ回転させると、下側電極板81を、基板82の上に、異なった高さで配置することになる。図4Aと4B、及び図5Aと5Bの構成では、両方とも、基板の床上の1以上のランドを、窪みに置き換えることができ、同様の効果が得られる。
【0021】
図1の長方形のカセットに戻り、上側電極板14の底面の平面図と上面の平面図とを、図6と7に示す。図1に示すラッチタブ21が、図6と7にも同様に示されており、第2のラッチタブ101とともに、上側電極板の互いに反対側のエッジから突き出しており、この2つのタブは、上側電極板に対称に配置されている。図6の底面図では、上側電極板102自身は、下側が示されている。電極は、剛体の平坦なシート103の下に取り付けられており、剛体の平坦なシート103は、図7に示されている。剛体の平坦なシート103は、上側電極板の2つの長手方向の側部エッジに沿って細長いスロット104、105、106、107と、この細長いスロットの一部から上側電極板の中心に向かって延びる横断するスロット108、109、110、111と、この横断するスロットの内側終端部に位置する比較的短い長手方向のスロット112、113と、を有する以外は、連続している。横断するバー114、115が、上側電極板の2つの長手方向のエッジから内側に突き出し、スロット112、113を通り、フィンガータブ24、25まで延びており、フィンガータブ24、25は、図1にも示されている。ユーザーは、親指と人差し指でフィンガーラグ24、25の両方を押し付け、そうすることによって、ラッチタブ21、101を内側に引っ張り、ラッチタブ21、101を、基板の周囲の壁のスロット22、23から引っ込めることができる。このようにフィンガーラグ24、25を押し付けることによって、ユーザーは、上側電極板を基板から取り外すことができる。反対に、はじめにタブを押し付け、タブがスロットと位置合わせされたら、次に力をゆるめることによって、上側電極板を、基板の内側に取付けることができる。フィンガーラグを動かすためには、ラグと横断するバー114、115とは、下にある上側電極板102に拘束されないようにし、そうすることによって、自由に動くようにする。
【0022】
2つの電極への電気の接続は、2つの電極板の各々の、一方の端部にある電極の露出領域で行う。図1では、上側電極板の露出領域は、電極の他の部分に対して直角に曲げられた短い部分121であり、この短い部分は、上側電極板14の開口に面している。下側電極板の露出領域は、下側電極板13の周囲で直角に曲げられ、周囲の開口122を通って露出する、同様に短い部分である。カセットが挿入される器具の、対応する電気接点が、これらの露出領域に電気接続するように、配置されている。
【0023】
本発明に含まれる、図示の構造、形状、配置に対する代替案は、タブやスロット以外の構成のラッチを含み、2つのラッチより少ないもの、2つのラッチより多いものを含み、異なった形状のラッチ、ラッチの代わりの窪み、穴、を含み、カセットを器具に挿入するガイドとして機能する細長いタブの代わりのスリットや肩部(shoulder)等を含む。更なる変更も、当業者にとっては、容易に想到することができるであろう。
【0024】
本願に添付された請求項において、英文明細書で「a」又は「an」と記載された用語は、「1又はそれ以上」を意味する。「備える」「有する」「含む」という用語は、工程や、構成要素を記載するのに使用した場合には、更なる工程や、構成要素を追加することを、請求の範囲から除外するものではない。本願明細書で引用した特許、特許出願、その他の引用文献は、全て、本願で引用することによって本願に含まれる。本願で引用した引用文献や一般的な先行技術と、本願明細書の明示の記載との間に、不一致がある場合には、本願明細書の記載に有利なように判断されるべきである。このことは、技術的に理解される用語や表現の定義と、同じ用語や表現の本明細書で与えられた定義と、の間の不一致についても言える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下側電極板と、
上側電極板と、
前記下側電極板と上側電極板とを支持する基板と、
前記上側電極板を、前記下側電極板の上に、前記基板に対して固定する、手で取り外すことができる固定手段と、
ユーザーが、前記基板内の前記下側電極板の複数の高さの中から選択して、前記下側電極板を、前記基板に対して、異なった回転方向位置に配置することによって、間隔を設ける手段と、
を備える、エレクトロブロッティングカセット。
【請求項2】
前記上側電極板が、電気伝導性の無い支持板に取り付けられた電極板を備え、前記手で取り外すことができる固定手段が、前記支持板の上に一対のフィンガーラグを備え、前記フィンガーラグが、それぞれ、ユーザーの片手の親指と人差し指とでつかむことができるように配置されている、
請求項1に記載のエレクトロブロッティングカセット。
【請求項3】
前記上側電極板が、電気伝導性の無い支持板に取り付けられた電極板を備え、前記基板が、基板から立ち上がった周囲の壁を備え、
前記手で取り外すことができる固定手段が、
(a)前記電気伝導性の無い支持板に弾性的に取り付けられ、前記支持板から互いに反対方向に延びる一対のタブと、
(b)前記上側電極板が前記周囲の壁内に配置されたときに前記タブと位置合わせされる、前記基板の前記周囲の壁の一対のスロットと、
を備える、
請求項1に記載のエレクトロブロッティングカセット。
【請求項4】
(a)前記上側電極板が、電気伝導性の無い支持板に取り付けられた電極板を備え、
前記手で取り外すことができる固定手段が、一対の弾性片を備え、前記一対の弾性片が、前記支持板に対して、前記支持板の向き合った平行な側面で結合され、各弾性片が、前記支持板から外側に向かって延びるタブと、前記弾性片を曲げて前記タブを外すフィンガーラグと、を備え、
(b)前記基板が、基板から立ち上がった周囲の壁と、前記上側電極板が前記周囲の壁内に配置されたときに前記タブと位置合わせされる、前記基板の前記周囲の壁の一対のスロットと、を備える、
請求項1に記載のエレクトロブロッティングカセット。
【請求項5】
(a)前記基板が床を備え、前記下側電極板が下面を備え、
(b)前記間隔を設ける手段が、表面が平らで基板に取り付けられた、前記基板の前記床から上向きに延びる突出し部の列と、これに対応する、表面が平らで前記下側電極板に取り付けられた、前記下側電極板の前記下面から下向きに延びる突出し部の列と、を備え、
前記基板に取り付けられた突出し部と前記下側電極板に取り付けられた突出し部とが、
前記下側電極板が、前記基板の上に、前記基板に対する第1の回転方向位置に配置されたときに、前記基板に取り付けられた突出し部が、前記下側電極板に取り付けられた突出し部に当接し、
前記下側電極板が、前記基板の上に、前記基板に対して第2の回転方向位置に配置されたときに、前記基板に取り付けられた突出し部が、前記下側電極板に取り付けられた突出し部からずれる、
ように配置されている、
請求項1に記載のエレクトロブロッティングカセット。
【請求項6】
前記基板と前記下側電極板とが、矩形形状であり、前記間隔を設ける手段が、前記基板に取り付けられた4つの突出し部と、前記下側電極板に取り付けられた4つの突出し部と、を備え、前記第1の回転方向位置と前記第2の回転方向位置とが、180度離れている、
請求項5に記載のエレクトロブロッティングカセット。
【請求項7】
前記基板と前記下側電極板とが矩形形状であり、前記基板が更にガイドを備え、前記ガイドが、前記床から突き出し、前記下側電極板を、前記基板の上で中心を合わせ、前記下側電極板を、前記基板に対して、2つ又は4つの回転方向位置に対して取付ける、
請求項5に記載のエレクトロブロッティングカセット。
【請求項8】
前記ガイドが、前記下側電極板を、180度離れた2つの回転方向位置に対して取り付ける、
請求項7に記載のエレクトロブロッティングカセット。
【請求項9】
電気泳動で分離した種を、ゲルから膜に転写する方法であって、
前記方法が、
(a)下側電極板を、基板の上に、選択した高さで配置する工程であって、前記工程が、前記下側電極板の前記基板に対する回転方向位置を選択し、前記回転方向位置の選択が、前記選択した高さに対応する選択であり、前記下側電極板と前記基板とが、ともに、前記回転方向位置に基づいて前記高さを変化させる、間隔を設ける手段を備えている、工程と、
(b)前記ゲルと前記膜とを、前記下側電極板の上に配置する工程と、
(c)前記上側電極板を、前記ゲルと前記膜との上に配置し、前記上側電極板を、前記基板の上に、固定した高さに取付ける工程であって、前記取付ける工程が、前記上側電極板を、前記基板に対して固定する、手で取り外すことができる固定手段によるものである工程と、
(d)前記下側電極板と前記上側電極板との間に電圧を加え、前記種の、前記ゲルから前記膜へのエレクトロブロッティングを生じさせる工程と、
を備える、方法。
【請求項10】
前記上側電極板が、電気伝導性の無い支持板に取り付けられた電極板を備え、前記手で取り外すことができる固定手段が、前記支持板の上に一対のフィンガーラグを備え、前記工程(c)が、前記フィンガーラグを、それぞれ、ユーザーの片手の親指と人差し指とでつかむ工程と、前記上側電極板が所定の位置に配置された場合には、前記フィンガーラグをゆるめる工程である、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記上側電極板が、電気伝導性の無い支持板に取り付けられた電極板を備え、前記基板が、基板から立ち上がった周囲の壁を備え、前記周囲の壁が、前記基板の互いに反対側の側面にスロットを備え、
前記手で取り外すことができる固定手段が、
前記電気伝導性の無い支持板に弾性的に取り付けられ、前記支持板から互いに反対方向に延びて前記スロットと係合する一対のタブを備え、
前記工程(c)が、前記タブを引っ込めて前記上側電極板を前記周囲の壁内に挿入する工程と、前記上側電極板が挿入された場合には、前記タブをゆるめて前記タブを前記スロットに係合させる工程と、を備える、
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記上側電極板が、電気伝導性の無い支持板に取り付けられた電極板を備え、前記基板が、基板から立ち上がった周囲の壁を備え、前記周囲の壁が、スロットを備え、
前記手で取り外すことができる固定手段が、前記支持板の上の一対のフィンガーラグと、前記電気伝導性の無い支持板に弾性的に取り付けられ、前記支持板から延びて前記スロットと係合する一対のタブと、を備え、
前記工程(c)が、前記フィンガーラグを圧縮して前記タブを引っ込めて、前記上側電極板を、前記周囲の壁内に挿入する工程と、前記上側電極板が挿入された場合には、前記フィンガーラグをゆるめて前記タブを前記スロットに係合させる工程と、を備える、
請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−518416(P2012−518416A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551269(P2011−551269)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【国際出願番号】PCT/US2010/024900
【国際公開番号】WO2010/096753
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(591099809)バイオ−ラッド ラボラトリーズ,インコーポレイティド (79)
【Fターム(参考)】