説明

手動工具

【課題】ラチェットが欠けたり、すり減ったりしてもラチェットのみを簡単に交換することができ、把手ごと取り替えてしまったり、工具自体を廃棄してしまう必要がなく、安価に修理することができる手動工具を提供する。
【解決手段】 枢支軸1に枢支され開閉自在な一対の把手2、3と、これら把手2、3のそれぞれ先端部に回動自在に枢支されると共に連結板4に回動自在に枢支された押圧子5、5とを備え、把手2、3の開閉動作により押圧子5、5が協動して開閉するように構成され、一方の把手2には、枢支軸1を中心とした弧状のラチェット8を形成したラチェット板9が着脱自在に取り付けられ、他方の把手3には、ラチェット8と係合可能な爪10を有する回動体11が枢着され、さらに回動体11には、弾性体14により、爪10がラチェット8と係合する方向に付勢されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ラチェット機構を備えた手動工具、例えば電線やケーブルの端末に圧着端子等を圧着するために用いられる圧着工具などの手動工具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の手動工具としては、例えば図6、7に示したように、枢支軸21に枢支され開閉自在な一対の把手22、23と、これら把手22、23のそれぞれ先端部に回動自在に枢支されると共に連結板24に回動自在に枢支された押圧子25、25とを備え、把手22、23の開閉動作により押圧子25、25が協動して開閉するように構成されたものが存在する。
【0003】
そして、この手動工具は、一方の把手23に、枢支軸21を中心とした弧状のラチェット26がその把手23と一体的に形成されている。また、他方の把手22には、ラチェット26と係合可能な爪27を有する回動体28が枢着され、さらに回動体28は、弾性体29により、爪27がラチェット26と係合する方向に付勢されている。さらに、ラチェット26は、枢支軸21の軸長方向で互いに対向し、且つ枢支軸21の軸周り方向で互いに位相が異なるよう形成されてなる第一ラチェット31と第二ラチェット32とからなるものとしている。しかも、爪27は、第一ラチェット31と係合可能な第一爪33と、第二ラチェット32と係合可能な第二爪34とからなるものとしている(特許文献1)。
【0004】
このように構成された手動工具は、枢支軸を中心とした弧状のラチェットが把手に一体的に形成されているため、部品点数を削減することができ、組み立て作業を簡素にすることができると共に、安価に製作することができるとしている。さらに、ラチェットと爪が係合するに際して、第一ラチェットが第一爪と係合し、第二ラチェットが第二爪と係合する構成であるため、力を二箇所に分散することができ、ラチェット及び爪の耐久性を高めることができるとしている。
【特許文献1】特許第3399830号公報(第1、5頁、図1、2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の手動工具は、第一ラチェットが第一爪と係合し、第二ラチェットが第二爪と係合する構成であるため、ラチェット及び爪の耐久性を高めることができるとしているが、ラチェット及び爪はこの種の工具において特に力がかかる部分であるので、長年の使用によりどうしても欠けたり、すり減ったりしてしまう。
【0006】
しかしながら、従来の手動工具は、ラチェットが把手に一体的に形成されているため、部品点数を削減することができたとしても、ラチェットが欠けたり、すり減ったりするとラチェットのみを交換することができず、把手ごと取り替えてしまうか、工具自体をそのまま廃棄してしまうしかないという問題点を有していた。
【0007】
そこで、この発明は、上記従来の問題点を解決することをその課題としており、ラチェットが欠けたり、すり減ったりしてもラチェットのみを簡単に交換することができ、把手ごと取り替えてしまったり、工具自体を廃棄してしまう必要がなく、安価に修理することができる手動工具を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのため、この発明の手動工具は、枢支軸1に枢支され開閉自在な一対の把手2、3と、これら把手2、3のそれぞれ先端部に回動自在に枢支されると共に連結板4に回動自在に枢支された押圧子5、5とを備え、把手2、3の開閉動作により押圧子5、5が協動して開閉するように構成され、一方の把手2には、枢支軸1を中心とした弧状のラチェット8を形成したラチェット板9が着脱自在に取り付けられ、他方の把手3には、ラチェット8と係合可能な爪10を有する回動体11が枢着され、さらに回動体11には、弾性体14により、爪10がラチェット8と係合する方向に付勢されている。
【0009】
さらに、この発明の手動工具は、前記ラチェット板9に止孔9aを設けたものとし、ビス12をこの止孔9aに通して、前記一方の把手2に設けたビス孔13にねじ込んだものとしている。
【発明の効果】
【0010】
この発明の手動工具は、以上に述べたように構成されているので、ラチェットが欠けたり、すり減ったりしてもラチェットのみを簡単に交換することができ、把手ごと取り替えてしまったり、工具自体を廃棄してしまう必要がなく、安価に修理することができるものとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明の手動工具を実施するための最良の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0012】
この発明の手動工具は、図1〜図5に示したように、枢支軸1に枢支され開閉自在な一対の把手2、3と、これら把手2、3のそれぞれ先端部に回動自在に枢支されると共に連結板4に回動自在に枢支された押圧子5、5とを備えたものとしている。
【0013】
前記把手2、3は、金属板をプレス成形することにより形成したものとしたり、金属を鍛造または焼結法、ロストワックス法など鋳鍛造により形成したものとしており、図3〜5に示したように、略コ字状の横断面を有し、互いに対向する対向部2a、2aの間隔が、対向部3a、3aの間隔より幅狭にしている。
【0014】
前記把手2の対向部2a、2aおよび把手3の対向部3a、3aには、それぞれ挿入孔(図示せず)が穿設されており、把手2の対向部2a、2aを把手3の対向部3a、3aで挟み込んだ状態にして、前記それぞれの挿入孔に枢支軸1を挿通することにより、把手2、3はこの枢支軸1に枢支され、開閉自在となっている。なお、前記枢支軸1には、キックバネ6の巻部6aを巻着し、このキックバネ6の足部6b、6bをそれぞれ把手2、3の側壁2b、3bに支持するようにしており、前記把手2、3は、キックバネ6により常時開く方向に付勢されている。
【0015】
さらに、前記把手2、3には、枢支軸1付近まで合成樹脂製の筒状キャップ7、7が嵌挿されており、一方の把手2の端縁部2c付近には、枢支軸1を中心とした弧状のラチェット8を端縁に形成したラチェット板9が着脱自在に取り付けられており、他方の把手3の端縁部3c付近には、ラチェット8と係合可能な爪10を有する回動体11が枢着されている。
【0016】
前記ラチェット板9は、金属板をプレス成形することにより形成したものとしたり、金属を鍛造または焼結法、ロストワックス法など鋳鍛造により形成したものとしている。そして、前記ラチェット板9には、止孔9aを両端部に設けたものとし、ビス12をこれらの止孔9aに通して、把手2の端縁部2c付近に設けたビス孔13にねじ込んだものとして、把手2の端縁部2c付近にラチェット板9を取り付けている。したがって、このビス12を緩めて外せば、把手2からラチェット板9を外すことができる、ラチェット板9はこの把手2に着脱自在として取り付けられている。
【0017】
前記回動体11は、爪10を形成した反対側に弾性体14としての引張バネの一端が係止され、引張バネの他端は、把手3の対向部3aに係止されており、この弾性体14により、爪10がラチェット8と係合する方向に付勢されており、爪10はラチェット8と係合するようにしている。
【0018】
前記押圧子5、5は、把手2、3の開閉動作により協動して開閉するように構成され、押圧子5、5の対向位置に形成された歯15、15間に支持される圧着端子等を押圧して圧着することができるようにしている。
【0019】
また、前記一方の押圧子5には、円弧状の凸部16が形成され、他方の押圧子5には、円弧状の凹部17が形成され、前記凸部16と凹部17を嵌合し、この部位を中心として押圧子5、5が開閉するようにしている。
【0020】
以上のように構成したこの発明の手動工具は、図1、2に示した状態から、把手2、3の開き動作を行うと、ラチェット8と爪10とが係合し、図3、4に示したように、把手2、3をいっぱいに開くとラチェット8と爪10との係合が外れる。そして、把手2、3のこの開き動作によって、押圧子5、5の歯15、15間も一定の間隔に開く。そこで、この一定の間隔に開いた歯15、15間に圧着端子を支持し、この圧着端子に電線やケーブルを挿入する。
【0021】
次に、把手2、3の閉じ動作を行うと、ラチェット8と爪10とが再び係合し、図1、2に示したように、把手2、3をいっぱいに閉じるとラチェット8と爪10との係合が外れる。そして、把手2、3のこの閉じ動作によって、押圧子5、5の歯15、15間も一定の間隔に閉じる。したがって、押圧子5、5の歯15、15間に支持した圧着端子が、一定の間隔になった歯15、15に押圧され、電線やケーブルに圧着されることになる。
【0022】
そして、前記電線やケーブルへの圧着端子の圧着が終了した後、把手2、3の開き動作を行うと、前記したのと同様に、押圧子5、5の歯15、15間も開くので、圧着端子の圧着が終了した電線やケーブルを押圧子5、5の歯15、15間から引き抜くことができる。
【0023】
このような使用状態において、この発明の手動工具は、長年使用すると、ラチェット板9のラチェット8と回転体11の爪10は欠けたり、すり減ったりしてしまう。
【0024】
ところが、この発明の手動工具では、ラチェット板9を把手2とは別体とし、この把手2に着脱自在に取り付けているので、ラチェット板9を把手2から取り外すことにより、ラチェット8を新しいものに交換することができ、また爪10も把手3に枢着した回動体11に形成しているので、この回動体11を把手3から取り外すことにより、爪10を新しいものに交換することもできる。
【0025】
したがって、この発明の手動工具では、ラチェット8や爪10が欠けたり、すり減ったりしてもラチェット板9や回転体11のみを簡単に交換することができ、把手2、3ごと取り替えてしまったり、工具自体を廃棄してしまう必要がなく、安価に修理することができるものとなる。
【0026】
なお、この発明の手動工具は、上記実施形態に示した圧着工具に限定されるものではなく、その他の手動工具、例えば切断工具などであってもよいことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】この発明の手動工具の一実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示すこの発明の手動工具の要部を拡大した説明図である。
【図3】この発明の手動工具の把手および押圧子の開閉動作を表面側から見た状態を示す説明図である。
【図4】この発明の手動工具の把手および押圧子の開閉動作を裏面側から見た状態を示す説明図である。
【図5】この発明の手動工具のラチェット板を把手から外した状態を示す説明図である。
【図6】従来の手動工具の一例を示す一部切欠平面図である。
【図7】図6に示す従来の手動工具の要部斜視図である。
【符号の説明】
【0028】
1 枢支軸
2 把手
3 把手
4 連結板
5 押圧子
8 ラチェット
9 ラチェット板
9a 止孔
10 爪
11 回転体
12 ビス
13 ビス孔
14 弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
枢支軸(1)に枢支され開閉自在な一対の把手(2、3)と、これら把手(2、3)のそれぞれ先端部に回動自在に枢支されると共に連結板(4)に回動自在に枢支された押圧子(5、5)とを備え、把手(2、3)の開閉動作により押圧子(5、5)が協動して開閉するように構成され、一方の把手(2)には、枢支軸(1)を中心とした弧状のラチェット(8)を形成したラチェット板(9)が着脱自在に取り付けられ、他方の把手(3)には、ラチェット(8)と係合可能な爪(10)を有する回動体(11)が枢着され、さらに回動体(11)には、弾性体(14)により、爪(10)がラチェット(8)と係合する方向に付勢されていることを特徴とする手動工具。
【請求項2】
前記ラチェット板(9)に止孔(9a)を設けたものとし、ビス(12)をこの止孔(9a)に通して、前記一方の把手(2)に設けたビス孔(13)にねじ込んだものとしたことを特徴とする請求項1記載の手動工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−75982(P2007−75982A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−271029(P2005−271029)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(397016448)ジェフコム株式会社 (37)
【Fターム(参考)】