説明

手動式移動棚装置

【課題】 移動棚の移動が拘束されているか否かを、容易に確認しうるようにする。
【解決手段】 操作ハンドル4の回転中心部に穿設した通孔11内に、伝動手段を作動不能にロックして移動棚2の移動を拘束するロックピン48に連係された操作ボタン33を有するロック装置28を設け、操作ボタン33を、プッシュロック・プッシュレリーズ機構により通孔11内に没入する位置と、通孔11より突出する位置とに移動可能とし、操作ボタン33の出没動作に連動して、ロックピン48がロック状態またはロック解除状態に作動させられるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作ハンドルを手動で回転させることにより、移動棚を移動させうるようにした手動式移動装置に係り、特に、移動棚の移動を手動操作により拘束したり、拘束を解除したりしうるようにした手動式移動棚装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の手動式移動棚装置の中には、互いに隣接する移動棚間に形成された通路内での作業の安全を確保するために、各移動棚の側面に、手動により操作ハンドルに連係された伝動手段を作動不能にロックし、移動棚の移動を拘束する操作手段を設けたものがある(例えば特許文献1、2参照)。
【特許文献1】実公平4−27395号公報(第2図)
【特許文献2】特開2000−60665号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献に記載されている従来の移動棚装置の操作手段は、いずれも、操作ハンドルの中央部に常時突設している操作つまみであり、この操作つまみを引いたり押したりすることにより、その取付軸に連係された伝動機構の動作をロックしたり、ロックを解除したりしうるようになっている。
【0004】
そのため、操作つまみを一見しただけでは、移動棚が拘束状態となっているか、非拘束状態となっているかを容易に見分けることが困難であり、拘束されていない移動棚を誤って移動させると、通路内にいる作業者が思わぬ怪我をする恐れがある。
【0005】
また、操作つまみは、ロック及びロック解除時のいずれの状態においても操作ハンドルの中央部より突出しているので、見栄えが悪い。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、移動棚の移動が拘束されているか否かを、容易に確認しうるようにし、移動棚が誤って移動されるのを防止するとともに、操作手段の見栄えを向上しうるようにした、手動式移動棚装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
(1) 移動棚の側面板に回転自在に取付けられた操作ハンドルを、伝動手段を介して移動棚の車輪に連係し、前記操作ハンドルを回転させることにより、前記車輪を回転させて移動棚を移動させるようにした手動式移動棚装置において、前記操作ハンドルの回転中心部に穿設した通孔内に、前記伝動手段を作動不能にロックして移動棚の移動を拘束する拘束手段に連係された操作ボタンを有するロック装置を設け、前記操作ボタンを、プッシュロック・プッシュレリーズ機構により前記通孔内に没入する位置と、通孔より突出する位置とに移動可能とし、かつ前記操作ボタンの出没動作に連動して、前記拘束手段がロック状態またはロック解除状態に作動させられるようにする。
【0008】
(2) 上記(1)項において、操作ボタンの外周面に、該操作ボタンが通孔より突出したとき露出する色違い部を形成する。
【0009】
(3) 上記(2)項において、色違い部を、操作ボタンの外周面に嵌合した、操作ボタンと異なる色の帯状リングとする。
【0010】
(4) 上記(3)項において、帯状リングを、その円周方向の一部を切除することにより拡径方向に弾性変形しうるようにし、それを拡径させて、操作ボタンの外周面に形成した環状溝に着脱可能に嵌着する。
【0011】
(5) 上記(1)〜(4)項のいずれかにおいて、操作ボタンの内部に、該操作ボタンと連動してその動きと直交する方向に往復移動する表示部材を設け、この表示部材の前面に形成された2つの異なる表示領域が、前記操作ボタンの操作時に該操作ボタンの前面に設けた窓孔を通して、交互に視認しうるようにする。
【0012】
(6) 上記(5)項において、2つの異なる表示領域を、異なる色をもって着色する。
【0013】
(7) 上記(5)または(6)項において、2つの異なる表示領域に、移動棚の拘束と非拘束状態とを表示する文字を印字する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、操作ボタンが操作ハンドルの通孔内に没入しているか、突出しているかを確認することにより、移動棚が拘束状態にあるか否かを容易に見分けることかできる。すなわち、例えば操作ボタンが通孔より突出しているとき、移動棚が拘束状態にあり、同じく通孔内に没入したとき、移動棚の拘束が解除されるようにしておけば、操作ボタンの通孔よりの出没状況を確認するだけで、移動棚が移動可能か否かが分かり、拘束されていない移動棚を誤って移動させてしまう恐れは極めて小さくなる。
また、移動棚が拘束または非拘束状態にあるとき、操作ボタンは通孔内に没入しているので、突出感がなく、見栄えが向上する。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、移動棚が拘束状態にあるか否かを、操作ボタンの色違い部によっても容易に確認することができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、操作ボタンと異なる色の帯状リングが、側面のどの位置からでも容易に視認されるので、移動棚が拘束状態にあるか否かを一目で即座に確認することができる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、帯状リングを、各移動棚の収納物品の種類等に対応させて、異なる色のものと容易に交換することができる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、操作ボタンの窓孔より、表示部材の2つの異なる表示領域を視認することにより、移動棚が拘束状態にあるか否かを、操作ボタンの側面からだけでなく、正面からも確認することができる。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、操作ボタンを操作すると、表示部材の表示領域の色が交互に変化するので、その視認性が向上する。
【0020】
請求項7記載の発明によれば、移動棚が拘束状態にあるか否かを、直接文字により確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の手動式移動棚装置の一実施形態の斜視図で、床面に敷設された1対のレール(1)(1)上には、複数(3台)の移動棚(2)と、左端に配置された1台の固定棚(3)とが並列に載置されている。
【0022】
各移動棚(2)は、その側面板(2a)に設けた操作ハンドル(4)を、左右いずれかの方向に回転させることにより、後記する伝動手段を介して、レール(1)上を左右方向に移動させうるようになっている。
【0023】
各移動棚(2)の上面には、転倒防止用レール(5)が架け渡されており、このレール(5)に、各移動棚(2)の頂部に設けたリング(図示略)を挿通することにより、特に、移動から停止に至る際の転倒が防止されるようになっている。
【0024】
収納物品(6)は、移動棚(2)の棚板(7)上に載置されている。
移動棚(2)の側面板(2a)の内部において、操作ハンドル(4)の後記する回転軸(17)には、後記するクラッチ機構を介して回転させられる駆動スプロケット(8)が枢嵌されており、この駆動スプロケット(8)と、レール(1)上の車輪(図示略)と同軸をなす2個の従動スプロケット(9)(9)とには、チェーン(10)が掛け回されている。
【0025】
従って、操作ハンドル(4)により駆動スプロケット(8)が回転させられると、チェーン(10)を介して従動スプロケット(9)が回転され、レール(1)上の車輪が回転して移動棚(2)が左右に走行するようになる。
【0026】
図2にも示すように、操作ハンドル(4)は、中心に円形の通孔(11)を有する円盤状の回転基部(4a)の上部に、ハの字状の左右1対の操作アーム部(4b)を連設するとともに、両操作アーム部(4b)の上端の対向面間に挿通した軸(4c)に、把手(4d)を、操作アーム部(4b)間に折り畳まれて収容される不使用位置と、水平に突出する使用位置との間を回動しうるように枢支して構成されている。
【0027】
上記回転基部(4a)の裏面の中心部は、ベアリング(12)を介して移動棚(2)の側面板(2a)に回転自在に取付けられている。
回転基部(4a)における操作アーム部(4b)と反対側の下部内には、錘(13)が埋め込まれて、ねじ(14)により固定されており、この錘(13)により、操作ハンドル(4)は、その操作アーム部(4b)が常に最上方に位置するようになっている。
【0028】
側面板(2a)の内部において回転基部(4a)の裏面には、円盤状のクラッチベース(15)が、複数のねじ(16)により固定され、このクラッチベース(15)の中心に一体的に連設された中空状の回転軸(17)の先端部に、上記駆動スプロケット(8)が、ベアリング(18)(18)を介して回転自在に枢嵌されている。
【0029】
駆動スプロケット(8)のボス部(8a)の外周面には、クラッチベース(15)側が開放された円筒状のクラッチディスク(19)の中心が固着されている。
図3及び図4にも示すように(側面板(2a)は図示略)、クラッチディスク(19)の内周面には、複数の歯(20)が一定間隔おきに形成されている。
【0030】
クラッチベース(15)における回転中心より離れた上部において、操作ハンドル(4)の中心線(L)の両側には、1対の枢軸(21)(21)が突設され、両枢軸(21)には、上記歯(20)と係脱可能な爪(22)を有する1対のフックアーム(23)(23)の上端部が、左右対称的に、かつ回動自在に枢支されている。
【0031】
爪(22)は、回転基部(4a)の回転方向と同一側の面を係合面(22a)とし、その反対側の面を傾斜面(22b)としてある。
【0032】
各フックアーム(23)の対向面は、それぞれクラッチベース(15)に突設されたストッパピン(24)(24)と当接し、それ以上回転軸(17)側に回動しないようになっている。
【0033】
両フックアーム(23)における枢軸(21)寄りの内端縁部には、切欠部(25)を有している。両フックアーム(23)の上端部の対向面間において、中心線(L)上には、拘束アーム(26)が、その回転軸(17)寄りの下端部をクラッチベース(15)にピン(27)により枢着することにより、回動自在に設けられている。
【0034】
拘束アーム(26)の下端部に突設された左右1対の突片(26a)は、両フックアーム(23)の切欠部(25)と対向するようにしてある。
【0035】
上記両スプロケット(8)(9)、チェーン(10)、クラッチディスク(19)、及びフックアーム(23)により、伝動手段を構成している。
【0036】
操作ハンドル(4)を、図4に示すように左に回転させると、左側のフックアーム(23)は、その自重と慣性により枢軸(21)を中心として矢印のように時計方向に揺動し、爪(22)の係合面(22a)がクラッチディスク(19)の歯(20)と係合し、クラッチは接続状態となる。
【0037】
この際、拘束アーム(26)は、自重及び慣性によりピン(27)を中心として左回りに回動し、右側の突片(26a)が右側のフックアーム(23)の切欠部(25)に係合することにより、右側のフックアーム(23)の爪(22)の係合面(22a)が歯(20)と係合するのを阻止する。
【0038】
この状態で操作ハンドル(4)を連続して左回りに回転させれば、それと共にクラッチディスク(19)及びそれに固着された駆動スプロケット(8)が回転し、チェーン(10)を介して従動スプロケット(9)が回転することにより、移動棚(2)を左方に走行させることができる。
【0039】
なお、慣性により、操作ハンドル(4)の回転速度よりも速く移動棚(2)が移動したり、操作ハンドル(4)の回転を止めた後も移動棚(2)が走行を続けたりした際には、従動スプロケット(9)、チェーン(10)、及び駆動スプロケット(8)を介して、クラッチディスク(19)に入力され、クラッチディスク(19)は矢印方向に空転されるようになっている。
【0040】
すなわち、クラッチディスク(19)の歯(20)が、フックアーム(23)の傾斜面(22b)を押し、フックアーム(23)が反時計方向に回動させられることにより、係合面(22a)が歯(20)より離脱し、クラッチディスク(19)が空転する。
従って、操作ハンドル(4)に回転力が伝達されることはない。
【0041】
操作ハンドル(4)を右方向に回転させると、右側のフックアーム(23)及び拘束アーム(26)が上記と同じ動きをするとともに、左側のフックアーム(23)が原位置に復帰することにより、クラッチディスク(19)が右回転し、移動棚(2)を右方に走行させることができる。
【0042】
上記操作ハンドル(4)の回転基部(4a)に形成された通孔(11)には、図2及び図5〜図11に示すように、操作ハンドル(4)に連係された上記伝動手段を作動不能にロックし、移動棚(2)の移動を拘束するロック装置(28)が収容されている。
【0043】
ロック装置(28)は、先端部に固定用鍔部(29)を有するとともに、中心にガイド孔(30)が形成された概ね直方体状のベースガイド(31)と、このベースガイド(31)に摺動自在に外嵌され、かつストッパ手段(図示略)により抜け止めされた角筒状のスライドケース(32)と、このスライドケース(32)を覆うように嵌着される とともに、操作ハンドル(4)の通孔(11)内を摺動可能なキャップ状の操作ボタン(33)と、ベースガイド(31)とスライドケース(32)との間に設けられたプッシュロック・プッシュレリーズ機構(34)とを備えている。
【0044】
ベースガイド(31)のガイド孔(30)には、スライドケース(32)の側壁(32a)の内面中央に連設された操作軸(35)が、ベースガイド(31)の鍔部(29)より突出するガイド筒部(36)から突出するようにして摺動自在に嵌合されている。
【0045】
操作ボタン(33)の外周面の中央部に形成された環状溝(37)には、操作ボタン(33)の本体の色と異なる色、例えば赤色の帯状リング(38)が嵌合さている。この帯状リング(38)は、薄肉の弾性変形可能な合成樹脂により形成され、かつ円周方向の一部を切除することにより、着脱可能として嵌め込まれている。
【0046】
操作ボタン(33)の正面板(33a)の中央には、図8にも示すように、後記する表示板(42a)の文字を視認するための横長楕円形の窓孔(39)が形成されている。
【0047】
操作ボタン(33)の外側端部の外周面には、正面板(33a)を覆う透明なカバーキャップ(40)が嵌着され、このカバーキャップ(40)を介して、上記窓孔(39)が透視しうるようになっている。
【0048】
図7及び図9に示すように、ベースガイド(31)の両側面のほぼ中央部には、斜め右上方に向かってほぼ45°に傾斜するガイド溝(41)が、対称的に形成されている。
【0049】
(42)は、上記両ガイド溝(41)により上下方向に往復移動させられる表示部材で、図11に示すように、ほぼ正方形をなす表示板(42a)と、その両側部裏面に突設された1対の足片(42b)とからなり、両足片(42b)の遊端上部の対向面には、上記両ガイド溝(41)に摺動自在に嵌合される突軸(43)が突設されている。
【0050】
表面部材(42)は、その表示板(42a)をスライドケース(32)の側壁(32a)の前面と近接又は当接させた状態で、両足片(42b)を外向きに弾性変形させてスライドケース(32)を挟み込み、両突軸(43)をガイド溝(41)に弾性係合することにより、スライドケース(32)に取付けられている。
【0051】
スライドケース(32)をベースガイド(31)に対し押し引きすると、両側片(42b)の突軸(43)がガイド溝(41)に沿って斜め上下方向に摺動することにより、表示部材(42)全体が操作ボタン(33)の移動と直交する上下方向に移動するようになる。
【0052】
図7に示すように、スライドケース(32)及びそれと一体をなす操作ボタン(33)を最大限押圧した際、表示板(42a)は、スライドケース(32)の側壁(32a)の下端に突設したストッパ片(44)と当接する下限位置まで移動し、また最大限引いたときには、図9に示すように表示板(42a)は、上端のストッパ片(44)と当接する上限位置まで移動するようになっている。
【0053】
従って、図11に示すように、表示板(42a)の前面を上下に2分割し、上半部を例えば青色、下半部を赤色に着色して、それらに、「FREE」と「LOCK」等の文字を印字しておけば、図8及び図10に示すように、表示板(42a)が上下動した際に、それらの文字が、窓孔(39)から交互に透視しうるので、移動棚(2)が拘束されているか否かを直接文字により確認することができる。
【0054】
上記プッシュロック・プッシュレリーズ機構(34)には、例えば特開2003−138830号公報において、図6〜図14に記載されている公知の機構が用いられている。この公知の機構を簡単に説明すると、図5及び図6に示すように、ベースガイド(31)の両側面に形成された、互いに形状の異なるハート形カム(45)(その一方のみを図示する)と、概ねコ字状をなし、かつその遊端の内向片が両ハート形カム(45)と、係脱しうるようにして、基端部がスライドケース(32)の奥端部に支持された鋼線よりなるスライドレバー(46)と、スライドケース(32)をベースガイド(31)より離間させる方向に常時付勢する後述の圧縮コイルばね(53)とを備え、スライドケース(32)を操作ボタン(33)と共に押し込むと、スライドレバー(46)の一方の遊端部が一方のハート形カム(45)の凹部と係合してロックされ、かつこの状態においてスライドケース(32)を再度押すと、スライドレバー(46)の他方の遊端部が他方のハート形カム(図示略)により外向きに案内されることにより、スライドレバー(46)の一方の遊端部が一方のハート形カム(45)より離脱してロックが解除されることにより、スライドケース(32)及び操作ボタン(33)は、圧縮コイルばね(53)の付勢力により前方に押し戻されるようになる。
【0055】
なお、プッシュロック・プッシュレリーズ機構は、上記の外、押しボタンスイッチ等に用いられている公知の機構のものを用いることもできる。
【0056】
上記ロック装置(28)は、図2に示すように、その鍔部(29)を、操作ハンドル(4)の回転基部(4a)とクラッチベース(15)とにより挟み込み、鍔部(29)の切欠溝(29a)にボルト(16)を挿通して固定することにより、操作ハンドル(4)に固着されている。
【0057】
図2及び図5、図6に示すように、スライドケース(32)における操作軸(35)の先端(内端)には、先端が内向き折曲された4個の弾性保持片(47)が連設され、この弾性保持片(47)間には、拘束手段であるコ字状をなすロックピン(48)の基端に突設された、先端に拡径頭部を有する小径軸(49)が、回転自在に、かつ抜け止めされて嵌合されている。
【0058】
ロックピン(48)における操作軸(35)と同軸をなす基軸(48a)には、ばね受け座金(50)が摺動自在に嵌合され、この座金(50)と、基端(48a)の端部外周面にピン(51)により止着された抜け止めリング(52)との間には、圧縮コイルばね(53)が遊挿されている。
【0059】
ばね受け座金(50)は、回転軸(17)の内部の端面に、圧縮コイルばね(53)を若干圧縮した状態でねじ止めされている。
【0060】
これにより、ロックピン(48)及びこれに連結されたロック装置(28)のスライドケース(32)及びこれに嵌着された操作ボタン(33)は、圧縮コイルばね(53)により常時前方(右方)に向かって付勢されている。
【0061】
ロックピン(48)の前方を向く遊端のロック部(48b)は、側面板(2a)の内部の補強板(54)に固着されたガイド板(55)に常時挿通され、このガイド板(55)により基軸(48a)を中心として回動するのが阻止されている。
【0062】
上記実施形態の移動棚装置において、図5、図7及び図8に示すように、ロック装置(28)の操作ボタン(33)を矢印のように押すと、上述したプッシュロック・プッシュレリーズ機構(34)のロック作用により、スライドケース(32)及び操作ボタン(33)は、回転基部(4a)の通孔(11)内にほぼ没入した状態でロック保持される。
【0063】
すると、操作軸(35)及びこれに連結されたロックピン(48)は、圧縮コイルばね(53)に対して、側面板(2a)の内部に向かって移動することにより、ロックピン(48)の遊端のロック部(48b)はクラッチディスク(19)より離間し、移動棚(2)のロックが解除される。
従って、操作ハンドル(4)を回転させれば移動棚(2)を左右方向に走行させることができる。
【0064】
このように、操作ボタン(33)を押してロックを解除すると、図7及び図8に示すように、表示部材(42)の表示板(42a)が下方に移動するため、その前面の上半部の青色の着色面及びそれに印字された「FREE」の文字が、操作ボタン(32)の窓孔(39)に出現し、これを透明なカバーキャップ(40)を通して前面から視認することができる。
従って、移動棚(2)が非拘束状態にあることを、目視により容易に確認することができる。
【0065】
また、この状態において操作ボタン(33)は、操作ハンドル(4)の通孔(11)内に、回転基部(4a)の表面とほぼ同一面をなす位置まで没入するため、突出感がなく、見栄えが向上する。
【0066】
操作ボタン(33)を再度押圧すると、プッシュロック・プッシュレリーズ機構(34)によるロック解除作用により、スライドケース(32)及び操作ボタン(33)は、圧縮コイルばね(53)の付勢力により、図6に示すように前方に押し戻され、ロックピン(48)のロック部(48b)も前方に移動することにより、クラッチディスク(19)に穿設された複数のロック孔(56)のいずれかに突入し、クラッチディスク(19)の回転がロックされる。
従って、操作ハンドル(4)の回転操作も不能となり、移動棚(2)の走行が拘束される。
【0067】
また、この際、表面部材(42)の表示板(42a)が、図9及び図10に示すように、上記と反対に上方に移動することにより、下半部の赤色の着色面及びそれに印字された「LOCK」の文字が、操作ボタン(33)の窓孔(39)に出現し、これをカバーキャップ(40)を通して前面から視認することができる。
従って、上述と同様、移動棚(2)が拘束状態であることを、目視により容易に確認することができる。
【0068】
また、操作ボタン(33)が操作ハンドル(4)の通孔(11)より突出すると、その外周面に嵌着した赤色の帯状リング(38)が通孔(11)より露出し、これも視認されるようになるため、移動棚(2)が拘束状態にあることを、表示板(42a)の文字を見なくても、操作ボタン(33)の側面のどの位置からでも容易に確認することができる。
【0069】
なお、上記実施形態において、操作ボタン(33)に嵌着した帯状リング(38)の色を、各移動棚(2)の収納物品(6)毎に異なる色としてもよい。このようにすると、各操作ボタン(33)の色を記憶しておくことにより、各移動棚(2)の収納物品(6)の収納場所を容易に探し出すことができる。
【0070】
上記実施形態では、移動棚(2)の移動が拘束されているとき、操作ボタン(33)が通孔(11)より突出し、同じく拘束が解除されているとき、操作ボタン(33)が通孔(11)内に没入するようにしているが、それらを反対とすることもある。この際には、ロックピン(48)の形状や、クラッチディスク(19)のロック孔(56)の配置等を適宜変更すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施形態の斜視図である。
【図2】同じく、操作ハンドル及びクラッチ部分の縦断側面図である。
【図3】同じく、図2のIII−III線断面図である。
【図4】同じく、操作ハンドルを回転させたときの断面図である。
【図5】同じく、移動棚が非拘束状態のときのロックピンの位置とロック装置の拡大縦断面図である。
【図6】同じく、移動棚を拘束したときのロックピンの位置とロック装置の拡大縦断面図である。
【図7】同じく、移動棚が非拘束状態のときのロック装置の一部切欠側面図である。
【図8】同じく、図7の正面図である。
【図9】同じく、移動棚を拘束したときのロック装置の一部切欠側面図である。
【図10】同じく、図9の正面図である。
【図11】同じく、表示部材の斜視図である。
【符号の説明】
【0072】
(1)レール
(2)移動棚
(2a)側面板
(3)固定棚
(4)操作ハンドル
(4a)回転基部
(4b)操作アーム部
(4c)軸
(4d)把手
(5)転倒防止用レール
(6)収納物品
(7)棚板
(8)駆動スプロケット
(8a)ボス部
(9)従動スプロケット
(10)チェーン
(11)通孔
(12)ベアリング
(13)錘
(14)ねじ
(15)クラッチベース
(16)ねじ
(17)回転軸
(18)ベアリング
(19)クラッチディスク
(20)歯
(21)枢軸
(22)爪
(22a)係合面
(22b)傾斜面
(23)フックアーム
(24)ストッパピン
(25)切欠部
(26)拘束アーム
(26a)突片
(27)ピン
(28)ロック装置
(29)固定用鍔部
(30)ガイド孔
(31)ベースガイド
(32)スライドケース
(32a)側壁
(33)操作ボタン
(33a)正面板
(34)プッシュロック・プッシュレリーズ機構
(35)操作軸
(36)ガイド筒部
(37)環状溝
(38)帯状リング
(39)窓孔
(40)カバーキャップ
(41)ガイド溝
(42)表示部材
(42a)表示板
(42b)足片
(43)突軸
(44)ストッパ片
(45)ハート形カム
(46)スライドレバー
(47)弾性保持片
(48)ロックピン(拘束手段)
(48a)基軸
(48b)ロック部
(49)小径軸
(50)ばね受け座金
(51)ピン
(52)抜け止めリング
(53)圧縮コイルばね
(54)補強板
(55)ガイド板
(56)ロック孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動棚の側面板に回転自在に取付けられた操作ハンドルを、伝動手段を介して移動棚の車輪に連係し、前記操作ハンドルを回転させることにより、前記車輪を回転させて移動棚を移動させるようにした手動式移動棚装置において、
前記操作ハンドルの回転中心部に穿設した通孔内に、前記伝動手段を作動不能にロックして移動棚の移動を拘束する拘束手段に連係された操作ボタンを有するロック装置を設け、前記操作ボタンを、プッシュロック・プッシュレリーズ機構により前記通孔内に没入する位置と、通孔より突出する位置とに移動可能とし、かつ前記操作ボタンの出没動作に連動して、前記拘束手段がロック状態またはロック解除状態に作動させられるようにしたことを特徴とする手動式移動棚装置。
【請求項2】
操作ボタンの外周面に、該操作ボタンが通孔より突出したとき露出する色違い部を形成した請求項1記載の手動式移動棚装置。
【請求項3】
色違い部を、操作ボタンの外周面に嵌合した、操作ボタンと異なる色の帯状リングとしてなる請求項2記載の手動式移動棚装置。
【請求項4】
帯状リングを、その円周方向の一部を切除することにより拡径方向に弾性変形しうるようにし、それを拡径させて、操作ボタンの外周面に形成した環状溝に着脱可能に嵌着した請求項3記載の手動式移動棚装置。
【請求項5】
操作ボタンの内部に、該操作ボタンと連動してその動きと直交する方向に往復移動する表示部材を設け、この表示部材の前面に形成された2つの異なる表示領域が、前記操作ボタンの操作時に該操作ボタンの前面に設けた窓孔を通して、交互に視認しうるようにした請求項1〜4のいずれかに記載の手動式移動棚装置。
【請求項6】
2つの異なる表示領域を、異なる色をもって着色した請求項5記載の手動式移動棚装置。
【請求項7】
2つの異なる表示領域に、移動棚の拘束と非拘束状態とを表示する文字を印字してなる請求項5または6記載の手動式移動棚装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−34494(P2006−34494A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217012(P2004−217012)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(000000561)株式会社岡村製作所 (1,415)
【Fターム(参考)】