手動格納式車両用ドアミラーのコイルばねとシャフトの装着構造
【課題】手動格納式車両用ドアミラーにおいてU字プレートを使用せずにコイルばねをシャフトに装着できるようにする。
【解決手段】
コイルばね46を構成する線材の端部をコイルばね46が巻回す円の中心方向に折り曲げて引っ掛け部46aを形成する。シャフト38の端部に引っ掛け部46aを引っ掛けて保持する切欠43を形成する。切欠43はシャフト38の端部から引っ掛け部46aを進入させる進入口43aと、進入口43aに連続しかつ進入口43aとは周方向にずれた位置に折り返して、進入口43aから進入した引っ掛け部46aを引っ掛けて保持する保持溝43bを具備する。
【解決手段】
コイルばね46を構成する線材の端部をコイルばね46が巻回す円の中心方向に折り曲げて引っ掛け部46aを形成する。シャフト38の端部に引っ掛け部46aを引っ掛けて保持する切欠43を形成する。切欠43はシャフト38の端部から引っ掛け部46aを進入させる進入口43aと、進入口43aに連続しかつ進入口43aとは周方向にずれた位置に折り返して、進入口43aから進入した引っ掛け部46aを引っ掛けて保持する保持溝43bを具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は手動格納式車両用ドアミラー(以下「手動格納式ドアミラー」)においてコイルばねとシャフトとを装着する構造に関し、U字プレートを使用せずにコイルばねをシャフトに装着できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来の手動格納式ドアミラーとして下記特許文献1に記載のものがあった。これは車両のドアに取り付けられるベース(50)にシャフト(54)を立設固定し、シャフト(54)にフレーム(58)を該シャフト(54)の軸回り方向に回転自在に支持し、フレーム(58)にボデー(ハウジング)(74)を固定支持し、シャフト(54)にコイルばね(69)を嵌挿し、該コイルばね(69)を短縮した状態でシャフト(54)の上部にU字プレート(71)を嵌めて、コイルばね(69)がシャフト(54)から脱落しないように抜け止めして、コイルばね(69)をシャフト(54)に装着したものである(カッコ内の符号は特許文献1で使用されている符号を示す)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−216783号公報(図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のドアミラーによれば、コイルばねをシャフトに装着するためにU字プレートが必要であった。
【0005】
この発明は上述の点に鑑みてなされたもので、U字プレートを使用せずにコイルばねをシャフトに装着できるようにしたドアミラーのコイルばねとシャフトの装着構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、車体に取り付けられるベースと、該ベースに回転自在に支持されて手動で格納位置と復帰位置に変位するミラー回転部と、該ミラー回転部が回転する回転軸上で該ベースまたは該ミラー回転部に立設されたシャフトと、該シャフトに嵌挿装着されて該ベースと該ミラー回転部とを圧接させるコイルばねとを具備する手動格納式ドアミラーにおいて、前記コイルばねを前記シャフトに装着する構造であって、前記コイルばねを構成する線材の端部を該コイルばねが巻回す円の中心方向に折り曲げて形成した引っ掛け部と、前記シャフトの端部に形成されて前記引っ掛け部を引っ掛けて保持する切欠とを具備し、該切欠が前記シャフトの端部から前記引っ掛け部を進入させる進入口と、該進入口に連続しかつ該進入口とは周方向にずれた位置に折り返して該進入口から進入した引っ掛け部を引っ掛けて保持する保持溝とを具備してなるものである。この発明によれば、U字プレートを使用せずにコイルばねをシャフトに装着することができる。
【0007】
この発明は、前記シャフトが中空シャフトで構成される場合は、例えば前記切欠を該シャフトの端部の相対向する面にそれぞれ形成し、前記引っ掛け部を該両切欠に引っ掛けて保持するように構成することができる。また、この発明は、前記シャフトが中空シャフトで構成され、該シャフトの中空部にハーネスが挿通される形式のドアミラーである場合は、シャフトの側面にハーネス出入口を形成し、該シャフトの中空部に挿通されたハーネスを該ハーネス出入口から該シャフトの外側に引き出し、さらに該シャフトと前記コイルばねとの間の空間を通って該コイルばねの端部の開口部から引き出すように構成することができる。
【0008】
この発明は、前記ミラー回転部が前記ベースに回転自在に支持されるハウジング支持部材と、該ハウジング支持部材に固定支持されるハウジングとを具備し、前記シャフトが前記ハウジング支持部材と一体に形成されているものとすることができる。この場合、前記ハウジングは前記ハウジング支持部材を収容して保持する収容部と、該ハウジング支持部材を該収容部に収容保持した状態で前記シャフトを該ハウジングの下面から外部に露出させる開口部を具備し、前記ベースは前記ハウジングの下面から露出する前記シャフトが回転自在に差し込まれるシャフト挿通孔を具備し、前記ベースの裏面側で前記シャフト挿通孔から突出する前記シャフトに前記コイルばねを短縮して嵌挿装着するように構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明のコイルばねとシャフトの装着構造を有する手動格納式ドアミラーの実施の形態1の要部を示す分解斜視図である。
【図2】図1の手動格納式ドアミラーのハウジング36単体の平面図である。
【図3】図1の手動格納式ドアミラーにおいて、ハウジング36の凹所42にハウジング支持部材34を収容した状態を示す平面図である。
【図4】図3の状態における底面図である。
【図5】図3の状態における背面図である。
【図6】図1のシャフト38に形成された切欠43とコイルばね46の各構造およびシャフト38に対するコイルばね46の装着手順を示す斜視図である。
【図7】図1の手動格納式ドアミラーを、ハウジング36が復帰位置にあるときに、回転軸Sを通る面で切断した部分断面図(図4、図8のA−A矢視位置の断面に相当)である。
【図8】図1のベース32の回転支持部32bの平面図である。
【図9】図1のドアミラーのハウジング支持部材34とハウジング36の連結固定位置の部分断面図(図4のB−B矢視位置の断面に相当)である。
【図10】図1のドアミラーのハウジング36が復帰位置にあるときに、クラッチのベース側部分60とミラー回転部側部分54とが噛み合った状態を示す一部拡大正面図である。
【図11】この発明のコイルばねとシャフトの装着構造の実施の形態2によるシャフト38に形成された切欠を示す側面図である。
【図12】図11のシャフトにコイルばねを装着した状態で示す図11のC−C矢視断面図である。
【図13】図11のシャフトにコイルばねを装着し、さらにハーネスを通した状態で示す図12のD−D矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
《実施の形態1》
この発明のコイルばねとシャフトの装着構造を有する手動格納式ドアミラーの実施の形態1を説明する。図1はこの実施の形態による手動格納式ドアミラーの構成を分解して示す。このドアミラーは右側用で、図1は背面側から見た状態を示す。図1ではハウジング(ミラーボデー)36の背面側に装着するハウジングカバー、鏡面調整用アクチュエータ、ミラー板等は図示を省略している。このドアミラーは車体外側に取り付けられるベース32と、ベース32に対し回転軸Sの周り方向に回転自在に軸受支持されるハウジング支持部材34(フレーム)と、ハウジング支持部材34に固定支持されるハウジング36を具備する。ハウジング36はハウジング支持部材34を内部空間37の凹所42に収容してビス44でハウジング支持部材34に固定支持される。このようにハウジング支持部材34とハウジング36とを相互に連結固定して一体化してミラー回転部35が構成される。ハウジング支持部材34とハウジング36とを一体化した状態では、ハウジング支持部材34のシャフト38とその外周側の環状壁40はハウジング36の下面から下方に向けて突出する。このシャフト38と環状壁40をベース32の回転支持部32bに形成されたシャフト挿通孔56と環状壁収容溝58(図8)にそれぞれ差し込み、次いでベース32の下面側からシャフト38にコイルばね46を短縮して嵌挿し、コイルばね46の下端部をシャフト38の下端部に固定することにより、ハウジング支持部材34とベース32は相互に連結される。これによりハウジング36は手動操作でハウジング支持部材34を伴って、ストッパで規制される角度範囲内で回転軸Sの周り方向に回転して格納位置(後方可倒位置)と復帰位置さらには前方側に倒れた位置(前方可倒位置)に変位可能となる。
【0011】
図1のハウジング支持部材34、ハウジング36、ベース32についてそれぞれ説明する。ハウジング支持部材34はPA+GF(ガラス繊維入りのポリアミド)樹脂等の硬質プラスチックによる一体成型品あるいはアルミ等の金属による一体鋳造品等で構成されている。図1に示すように、ハウジング支持部材34にはベース32と相対回転する回転軸S上に配置される中空丸棒状のシャフト38と、シャフト38よりも外周側に離れた位置でシャフト38に対し径方向に間隙を隔てて同軸に配置された円形の環状壁40が形成されている。シャフト38はハウジング支持部材34に一体に形成されているので、シャフト専用部品が不要となって部品点数が削減される。これにより組み付け作業の効率化が図られる。環状壁40の板厚は下方に行くに従い僅かに薄くなるように形成されている(図7)。環状壁40は、環状壁40とシャフト38を繋ぐ円板状の連結部39(図3,図7)を越えてそのまま上方に突出して環状壁延長部41を構成している。環状壁延長部41は環状壁40の剛性を高める働きをする。図7に示すように、環状壁40と連結部39とシャフト38で囲まれた空間内には、連結部39と環状壁40との境界部分(環状壁40のすぐ内周側)に、シャフト38および環状壁40と同軸に配置されたクラッチのミラー回転部側部分54が形成されている。クラッチのミラー回転部側部分54は図4に示すように、山部54aと谷部54bの繰り返し構造を周方向に等ピッチで3回繰り返し形成して構成されている。山部54aと谷部54bの境界部分54cはそれぞれ傾斜面に形成されている(図10)。
【0012】
図1においてシャフト38の先端部にはその先端面から相対向する側面にかけて切欠43が連続的に形成されている。またコイルばね46の下端部には引っ掛け部46aが形成されている。コイルばね46はその引っ掛け部46aをシャフト38の切欠43に差し込んで引っ掛ける(係止する)ことによりシャフト38に装着(抜け止め)される。シャフト38とコイルばね46の装着部の構造および装着手順を図6に示す。図6(a)に示すように、シャフト38の先端部には切欠43が形成されている。また図6(b)に示すように、コイルばね46を構成する線材の端部はコイルばね46が巻回す円の中心方向に(コイルばね46の中心軸と直交する方向に)折り曲げられて引っ掛け部46aを構成している。切欠43はシャフト38の先端部からコイルばね46の引っ掛け部46aを進入させる進入口43aと、進入口43aに連続しかつ該進入口43aとは周方向にずれた位置に折り返して該進入口43aから進入した引っ掛け部46aを引っ掛けて保持する保持溝43bを有する。コイルばね46は手作業でシャフト38に装着することができる。すなわちコイルばね46を図6(b)に示すようにシャフト38に嵌挿する(シャフト38をコイルばね46の中空部に差し込む)。コイルばね46の他端部がベース32の下面で係止された後、さらにコイルばね46をその付勢力に抗して押し込んで短縮して、図6(c)に示すように引っ掛け部46aを進入口43aに差し込む。引っ掛け部46aが進入口43aの底部に突き当たったら、コイルばね46全体をシャフト38の軸回り方向に約60度回転し、回転が係止された位置でコイルばね46から手を離すことにより、コイルばね46はその付勢力により伸長して、引っ掛け部46aは図6(d)に示すように保持溝43bに収容されて保持される。以上でコイルばね46はシャフト38に装着される。したがってU字プレートは不要である。
【0013】
図1のハウジング36はハウジング支持部材34よりも剛性が低いABS等のプラスチックによる一体成型品で作られている。図1に示すように、ハウジング36は内部空間37が仕切り板36aで前面側空間37aと背面側空間37bとに概ね仕切られている。前面側空間37a(図4)内には、図示しない鏡面調整用アクチュエータが仕切り板36aの前面に装着して収容される。この鏡面調整用アクチュエータには図示しないミラー板が装着される。背面側空間37bには上方に開口する凹所42(図1、図2、図3、図5)が形成されている。凹所42にはハウジング支持部材34が収容される(図3、図5)。背面側空間37bは図示しないハウジングカバーが装着されて閉じられる。ハウジング36の底面には回転軸S上に、ハウジング支持部材34のシャフト38と環状壁40を突出させる丸穴52(図2)が形成されている。
【0014】
図1のベース32はPA+GF樹脂等の硬質プラスチックによる一体成型品あるいはアルミ等の金属による一体鋳造品等で構成されている。ベース32は車体に固定される車体固定部32aと、車体固定部32aの下端部から側方に突出してハウジング支持部材34を回転自在に軸受支持する回転支持部32bを有する。図8はベース32の回転支持部32bを上から見た状態を示す。回転支持部32bには回転軸S上にシャフト挿通孔56とその外周側に環状壁収容溝58と、環状壁収容溝58のすぐ内周側にクラッチのベース側部分60が同軸に形成されている。シャフト挿通孔56はハウジング36が復帰位置にあるときにシャフト38を僅かなクリアランスで挿通する大きさに形成されている。環状壁収容溝58の内壁面58aおよび外壁面58bには、環状壁40(図7)の内壁面40aおよび外壁面40bとの当接箇所を設定する突条59,61が回転軸Sと平行な方向に延在してかつ周方向に等角度間隔に配置した状態に6本ずつ突出形成されている。環状壁収容溝58と環状壁40は、ハウジング36が復帰位置にあるときに内壁面58a(突条59の位置),40aどうしおよび外壁面58b(突条61の位置),40bどうしがクリアランスなしで当接する内径、外径に形成されている。環状壁収容溝58の溝幅は環状壁40の板厚の変化に合わせて、下方に行くに従い僅かに狭くなるように形成されている(図7)。環状壁収容溝58の深さは、ハウジング支持部材34がベース32に対し相対回転できる角度範囲内で、クラッチのミラー回転部側部分54とベース側部分60とが常に押圧当接し合える十分な深さに形成されている。クラッチのベース側部分60は環状壁収容溝58のすぐ内周側に山部60aと谷部60bの繰り返し構造を周方向に等ピッチで3回繰り返し形成して構成されている(図8)。山部60aと谷部60bの境界部分60cはそれぞれ傾斜面に形成されている(図10)。
【0015】
図1のドアミラーは例えば次の手順で組み立てられる。
(1)ハウジング36の凹所42にハウジング支持部材34を収容する。図3、図4、図5はこのときの状態を平面図、底面図、背面図でそれぞれ示す。
(2)ハウジング36の下面に形成された2個のねじ通し穴50(図4)にビス44(図1)をそれぞれ差し込んでハウジング支持部材34の下面のねじ穴にねじ込むことにより、ハウジング36とハウジング支持部材34とを相互に連結固定する。 図9はハウジング支持部材34とハウジング36の連結固定位置の断面(図4のB−B矢視位置の断面に相当)を示す。ハウジング支持部材34とハウジング36は、ハウジング36に形成されたねじ通し穴50からビス44を差し込んで、ハウジング支持部材34に形成されたねじ穴66にねじ込むことにより連結固定されている。
(3)ハウジング36の底面の丸穴52から下方に突出するシャフト38と環状壁40をベース32の回転支持部32bに形成されたシャフト挿通孔56と環状壁収容溝58にそれぞれ回転自在に差し込む(図7、図9)。
(4)前記図6に基づいて説明した手順でコイルばね46をシャフト38に嵌挿装着する。これにより、ハウジング36はハウジング支持部材34を介してベース32に連結されて、回転軸Sの周り方向に回転自在に軸受支持される(図7、図9)。
(5)ハウジング36の裏面側の開口(図1、図2、図3、図5に示すエッジ36cで囲まれた領域)にハウジングカバーを装着する。これによりハウジング支持部材34は、ハウジング36の下面から突出しているシャフト38および環状壁40を除く部分すなわち連結部39よりも上の部分がハウジング36の内部空間37に収容された状態となる。
(6)ハウジング36の前面側空間37aに鏡面調整用アクチュエータを装着し、該鏡面調整用アクチュエータにミラー板を装着する。
【0016】
図7は図1のドアミラーを組み立てて、ハウジング36が復帰位置にあるときに、回転軸Sを通る面で切断した状態を示す(図4、図8のA−A矢視位置の断面に相当)。ベース32の下部開口部は蓋64で閉じられている。ハウジング36が復帰位置にあるときはコイルばね46の付勢力はベース32とハウジング支持部材34との間に、回転軸Sに沿って相互に突き合わせる方向に付与され、クラッチのベース側部分60(図8)の山部60a、谷部60bとミラー回転部側部分54(図4)の谷部54b、山部54aとが相互に噛み合った状態(図10に示す状態)となる。これによりハウジング36を装着したハウジング支持部材34はベース32上に起立した状態に保持される。このとき環状壁40の内外壁面40a,40bと環状壁収容溝58の内外壁面58a,58bの突条59,61とはいずれも当接した状態となり、ハウジング36はがたつき無く復帰位置に保持される。シャフト38の外周面38bとシャフト挿通孔56の内周面56aとの間には僅かなクリアランスがある。
【0017】
ハウジング36が復帰位置にある状態からコイルばね46の付勢力に抗してハウジング36に手で回転軸Sの周り方向に力を加えると、クラッチのミラー回転部側部分54の傾斜面54c(図10)がベース側部分60の傾斜面60cを滑り上がってクラッチの噛み合いが外れる。このとき傾斜面54cの滑り上がりによりハウジング支持部材34がその分上方に移動する。前述のように環状壁40の板厚は下方に行くに従い僅かに薄くなるように形成され、環状壁収容溝58の溝幅は環状壁40の板厚の変化に合わせて、下方に行くに従い僅かに狭くなるように形成されているので(図7)、ハウジング支持部材34が上方に移動することにより、環状壁40の内外壁面40a,40bと環状壁収容溝58の内外壁面58a,58bの突条59,61との当接が緩められ(両壁面間に隙間が生じ)、ハウジング36は回転軸Sの周り方向に回転できるようになり、格納位置(後方可倒位置)あるいは格納位置とは反対側の前方可倒位置に変位する。このハウジング36が回転するときの軸受支持は、環状壁40の内外壁面40a,40bと環状壁収容溝58の内外壁面58a,58bとの摺動、あるいはシャフト38の外周面38bとシャフト挿通孔56の内周面56aとの摺動、あるいはこれら両摺動によって行われる。
【0018】
ハウジング36が復帰位置にある状態でハウジング36に無用な外力が加わって(例えばハウジング36に上から荷重がかかる等)、ハウジング支持部材34に掛かる曲げモーメント(図7のシャフト挿通孔56の中心位置Pを中心とする矢印Fで示す方向のモーメント)が増大してハウジング支持部材34に傾きが生じたときは、環状壁40の内外壁面40a,40bと環状壁収容溝58の内外壁面58a,58bの突条59,61とが押圧当接し、またシャフト38に傾きが生じてシャフト38の外周面38bとシャフト挿通孔56の内周面56aとが押圧当接して、これら3面の押圧当接で該外力を分担して支持する。したがってハウジング支持部材34は全体として高い剛性が得られ、外力に対して高い支持力が得られる。したがってハウジング支持部材34を金属でなくPA+GF樹脂等の硬質プラスチックによる一体成型品で作ってもシャフト38や環状壁40が折れたり曲がったり破損するのが防止される。ハウジング支持部材34およびベース32をいずれもPA+GF樹脂等の硬質プラスチックによる一体成型品で作ればドアミラーを安価に製造することができる。特にこの実施の形態によれば、ハウジング36が復帰位置にあるときに、環状壁40の内外壁面40a,40bと環状壁収容溝58の内外壁面58a,58bの突条59,61どうしがクリアランスなしで当接し、シャフト38の外周面38bとシャフト挿通孔56の内周面56aとは僅かなクリアランスで対面しているので、ハウジング36に外力が加わったときに、環状壁40の内外壁面40a,40bと環状壁収容溝58の内外壁面58a,58bの突条59,61どうしの押圧当接で該外力の多くの部分を支持し、シャフト38の外周面38bとシャフト挿通孔56の内周面56aとの押圧当接で該外力の残りの部分を支持するので、シャフト38に掛かる力を軽減してシャフト38が折れたり曲がったりするのをより確実に防止することができる。
【0019】
なお前記実施の形態1ではハウジング36とハウジング支持部材34を別体で構成して組み付けたが、両者を一体成型品または一体鋳造品として構成することもできる。
【0020】
《実施の形態2》
この発明のコイルばねとシャフトの装着構造を有する手動格納式ドアミラーの実施の形態2を説明する。これはシャフトをベース側に立設すると共に、シャフト中にハーネスを通すようにしたものである。実施の形態1と共通する部分には同一の符号を用いる。図11は実施の形態2によるシャフト38の側面図、図12はコイルばね46をシャフト38に装着した状態で示した図11のC−C矢視断面図、図13はハーネス62を通した状態で示した図12のD−D矢視断面図である。シャフト38はベース32の回転支持部32bに立設固定されている(図11、図13)。シャフト38にはミラー回転部35が回転自在に支持されている(図13)。シャフト38は中空に構成されている。シャフト38の先端部にはその先端面から相対向する側面にかけて切欠43が形成されている。切欠43はシャフト38の先端部からコイルばね46の引っ掛け部46aを進入させる進入口43aと、進入口43aに連続しかつ該進入口43aとは周方向にずれた位置に折り返して該進入口43aから進入した引っ掛け部46aを引っ掛けて保持する保持溝43bを有し、正面形状が全体として「J」字状に形成されている。また進入口43aと保持溝43bとの間には、ベース32の回転支持部32bを通って中空部38aに通されたハーネス62を引き出すハーネス出入口38cが形成されている。ハーネス出入口38cは切欠43とは独立した(切欠43とは不連続の)開口として形成することもできる。ハーネス62はミラー回転部35内に設置された鏡面調整用アクチュエータ等に駆動用電力を供給するものである。ハーネス出入口38cから引き出されたハーネス62は、シャフト38とコイルばね46との間の空間63を通ってコイルばね46の端部の開口部63aから引き出されてミラー回転部35内に導かれる。コイルばね46をシャフト38に装着する際には、ハーネス62をシャフト中空部38a、ハーネス出入口38c、コイルばね46に順次通してから、前記図6と同様の手順に従ってコイルばね46をシャフト38に装着する。
【0021】
なお実施の形態1のシャフト38をミラー回転部35側に立設する形式の手動格納式ドアミラーにおいても、実施の形態2と同様に、中空のシャフト38にハーネス出入口38cを形成して、ベース32の回転支持部32b、コイルばね46の端部の開口部63a、シャフト38とコイルばね46との間の空間63、ハーネス出入口38c、シャフト中空部38aを経由してハーネス62敷設することができる。
【符号の説明】
【0022】
32…ベース、32a…車体固定部、32b…回転支持部、35…ミラー回転部、36…ハウジング、38…シャフト、38a…中空部、38c…ハーネス出入口、42…凹所(収容部)、43…切欠、43a…進入口、43b…保持溝、46…コイルばね、46a…引っ掛け部、52…丸穴(ハウジングの開口部)、56…シャフト挿通孔、62…ハーネス、63…シャフトとコイルばねとの間の空間、63a…コイルの端部の開口部、S…回転軸
【技術分野】
【0001】
この発明は手動格納式車両用ドアミラー(以下「手動格納式ドアミラー」)においてコイルばねとシャフトとを装着する構造に関し、U字プレートを使用せずにコイルばねをシャフトに装着できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来の手動格納式ドアミラーとして下記特許文献1に記載のものがあった。これは車両のドアに取り付けられるベース(50)にシャフト(54)を立設固定し、シャフト(54)にフレーム(58)を該シャフト(54)の軸回り方向に回転自在に支持し、フレーム(58)にボデー(ハウジング)(74)を固定支持し、シャフト(54)にコイルばね(69)を嵌挿し、該コイルばね(69)を短縮した状態でシャフト(54)の上部にU字プレート(71)を嵌めて、コイルばね(69)がシャフト(54)から脱落しないように抜け止めして、コイルばね(69)をシャフト(54)に装着したものである(カッコ内の符号は特許文献1で使用されている符号を示す)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−216783号公報(図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1記載のドアミラーによれば、コイルばねをシャフトに装着するためにU字プレートが必要であった。
【0005】
この発明は上述の点に鑑みてなされたもので、U字プレートを使用せずにコイルばねをシャフトに装着できるようにしたドアミラーのコイルばねとシャフトの装着構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、車体に取り付けられるベースと、該ベースに回転自在に支持されて手動で格納位置と復帰位置に変位するミラー回転部と、該ミラー回転部が回転する回転軸上で該ベースまたは該ミラー回転部に立設されたシャフトと、該シャフトに嵌挿装着されて該ベースと該ミラー回転部とを圧接させるコイルばねとを具備する手動格納式ドアミラーにおいて、前記コイルばねを前記シャフトに装着する構造であって、前記コイルばねを構成する線材の端部を該コイルばねが巻回す円の中心方向に折り曲げて形成した引っ掛け部と、前記シャフトの端部に形成されて前記引っ掛け部を引っ掛けて保持する切欠とを具備し、該切欠が前記シャフトの端部から前記引っ掛け部を進入させる進入口と、該進入口に連続しかつ該進入口とは周方向にずれた位置に折り返して該進入口から進入した引っ掛け部を引っ掛けて保持する保持溝とを具備してなるものである。この発明によれば、U字プレートを使用せずにコイルばねをシャフトに装着することができる。
【0007】
この発明は、前記シャフトが中空シャフトで構成される場合は、例えば前記切欠を該シャフトの端部の相対向する面にそれぞれ形成し、前記引っ掛け部を該両切欠に引っ掛けて保持するように構成することができる。また、この発明は、前記シャフトが中空シャフトで構成され、該シャフトの中空部にハーネスが挿通される形式のドアミラーである場合は、シャフトの側面にハーネス出入口を形成し、該シャフトの中空部に挿通されたハーネスを該ハーネス出入口から該シャフトの外側に引き出し、さらに該シャフトと前記コイルばねとの間の空間を通って該コイルばねの端部の開口部から引き出すように構成することができる。
【0008】
この発明は、前記ミラー回転部が前記ベースに回転自在に支持されるハウジング支持部材と、該ハウジング支持部材に固定支持されるハウジングとを具備し、前記シャフトが前記ハウジング支持部材と一体に形成されているものとすることができる。この場合、前記ハウジングは前記ハウジング支持部材を収容して保持する収容部と、該ハウジング支持部材を該収容部に収容保持した状態で前記シャフトを該ハウジングの下面から外部に露出させる開口部を具備し、前記ベースは前記ハウジングの下面から露出する前記シャフトが回転自在に差し込まれるシャフト挿通孔を具備し、前記ベースの裏面側で前記シャフト挿通孔から突出する前記シャフトに前記コイルばねを短縮して嵌挿装着するように構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明のコイルばねとシャフトの装着構造を有する手動格納式ドアミラーの実施の形態1の要部を示す分解斜視図である。
【図2】図1の手動格納式ドアミラーのハウジング36単体の平面図である。
【図3】図1の手動格納式ドアミラーにおいて、ハウジング36の凹所42にハウジング支持部材34を収容した状態を示す平面図である。
【図4】図3の状態における底面図である。
【図5】図3の状態における背面図である。
【図6】図1のシャフト38に形成された切欠43とコイルばね46の各構造およびシャフト38に対するコイルばね46の装着手順を示す斜視図である。
【図7】図1の手動格納式ドアミラーを、ハウジング36が復帰位置にあるときに、回転軸Sを通る面で切断した部分断面図(図4、図8のA−A矢視位置の断面に相当)である。
【図8】図1のベース32の回転支持部32bの平面図である。
【図9】図1のドアミラーのハウジング支持部材34とハウジング36の連結固定位置の部分断面図(図4のB−B矢視位置の断面に相当)である。
【図10】図1のドアミラーのハウジング36が復帰位置にあるときに、クラッチのベース側部分60とミラー回転部側部分54とが噛み合った状態を示す一部拡大正面図である。
【図11】この発明のコイルばねとシャフトの装着構造の実施の形態2によるシャフト38に形成された切欠を示す側面図である。
【図12】図11のシャフトにコイルばねを装着した状態で示す図11のC−C矢視断面図である。
【図13】図11のシャフトにコイルばねを装着し、さらにハーネスを通した状態で示す図12のD−D矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
《実施の形態1》
この発明のコイルばねとシャフトの装着構造を有する手動格納式ドアミラーの実施の形態1を説明する。図1はこの実施の形態による手動格納式ドアミラーの構成を分解して示す。このドアミラーは右側用で、図1は背面側から見た状態を示す。図1ではハウジング(ミラーボデー)36の背面側に装着するハウジングカバー、鏡面調整用アクチュエータ、ミラー板等は図示を省略している。このドアミラーは車体外側に取り付けられるベース32と、ベース32に対し回転軸Sの周り方向に回転自在に軸受支持されるハウジング支持部材34(フレーム)と、ハウジング支持部材34に固定支持されるハウジング36を具備する。ハウジング36はハウジング支持部材34を内部空間37の凹所42に収容してビス44でハウジング支持部材34に固定支持される。このようにハウジング支持部材34とハウジング36とを相互に連結固定して一体化してミラー回転部35が構成される。ハウジング支持部材34とハウジング36とを一体化した状態では、ハウジング支持部材34のシャフト38とその外周側の環状壁40はハウジング36の下面から下方に向けて突出する。このシャフト38と環状壁40をベース32の回転支持部32bに形成されたシャフト挿通孔56と環状壁収容溝58(図8)にそれぞれ差し込み、次いでベース32の下面側からシャフト38にコイルばね46を短縮して嵌挿し、コイルばね46の下端部をシャフト38の下端部に固定することにより、ハウジング支持部材34とベース32は相互に連結される。これによりハウジング36は手動操作でハウジング支持部材34を伴って、ストッパで規制される角度範囲内で回転軸Sの周り方向に回転して格納位置(後方可倒位置)と復帰位置さらには前方側に倒れた位置(前方可倒位置)に変位可能となる。
【0011】
図1のハウジング支持部材34、ハウジング36、ベース32についてそれぞれ説明する。ハウジング支持部材34はPA+GF(ガラス繊維入りのポリアミド)樹脂等の硬質プラスチックによる一体成型品あるいはアルミ等の金属による一体鋳造品等で構成されている。図1に示すように、ハウジング支持部材34にはベース32と相対回転する回転軸S上に配置される中空丸棒状のシャフト38と、シャフト38よりも外周側に離れた位置でシャフト38に対し径方向に間隙を隔てて同軸に配置された円形の環状壁40が形成されている。シャフト38はハウジング支持部材34に一体に形成されているので、シャフト専用部品が不要となって部品点数が削減される。これにより組み付け作業の効率化が図られる。環状壁40の板厚は下方に行くに従い僅かに薄くなるように形成されている(図7)。環状壁40は、環状壁40とシャフト38を繋ぐ円板状の連結部39(図3,図7)を越えてそのまま上方に突出して環状壁延長部41を構成している。環状壁延長部41は環状壁40の剛性を高める働きをする。図7に示すように、環状壁40と連結部39とシャフト38で囲まれた空間内には、連結部39と環状壁40との境界部分(環状壁40のすぐ内周側)に、シャフト38および環状壁40と同軸に配置されたクラッチのミラー回転部側部分54が形成されている。クラッチのミラー回転部側部分54は図4に示すように、山部54aと谷部54bの繰り返し構造を周方向に等ピッチで3回繰り返し形成して構成されている。山部54aと谷部54bの境界部分54cはそれぞれ傾斜面に形成されている(図10)。
【0012】
図1においてシャフト38の先端部にはその先端面から相対向する側面にかけて切欠43が連続的に形成されている。またコイルばね46の下端部には引っ掛け部46aが形成されている。コイルばね46はその引っ掛け部46aをシャフト38の切欠43に差し込んで引っ掛ける(係止する)ことによりシャフト38に装着(抜け止め)される。シャフト38とコイルばね46の装着部の構造および装着手順を図6に示す。図6(a)に示すように、シャフト38の先端部には切欠43が形成されている。また図6(b)に示すように、コイルばね46を構成する線材の端部はコイルばね46が巻回す円の中心方向に(コイルばね46の中心軸と直交する方向に)折り曲げられて引っ掛け部46aを構成している。切欠43はシャフト38の先端部からコイルばね46の引っ掛け部46aを進入させる進入口43aと、進入口43aに連続しかつ該進入口43aとは周方向にずれた位置に折り返して該進入口43aから進入した引っ掛け部46aを引っ掛けて保持する保持溝43bを有する。コイルばね46は手作業でシャフト38に装着することができる。すなわちコイルばね46を図6(b)に示すようにシャフト38に嵌挿する(シャフト38をコイルばね46の中空部に差し込む)。コイルばね46の他端部がベース32の下面で係止された後、さらにコイルばね46をその付勢力に抗して押し込んで短縮して、図6(c)に示すように引っ掛け部46aを進入口43aに差し込む。引っ掛け部46aが進入口43aの底部に突き当たったら、コイルばね46全体をシャフト38の軸回り方向に約60度回転し、回転が係止された位置でコイルばね46から手を離すことにより、コイルばね46はその付勢力により伸長して、引っ掛け部46aは図6(d)に示すように保持溝43bに収容されて保持される。以上でコイルばね46はシャフト38に装着される。したがってU字プレートは不要である。
【0013】
図1のハウジング36はハウジング支持部材34よりも剛性が低いABS等のプラスチックによる一体成型品で作られている。図1に示すように、ハウジング36は内部空間37が仕切り板36aで前面側空間37aと背面側空間37bとに概ね仕切られている。前面側空間37a(図4)内には、図示しない鏡面調整用アクチュエータが仕切り板36aの前面に装着して収容される。この鏡面調整用アクチュエータには図示しないミラー板が装着される。背面側空間37bには上方に開口する凹所42(図1、図2、図3、図5)が形成されている。凹所42にはハウジング支持部材34が収容される(図3、図5)。背面側空間37bは図示しないハウジングカバーが装着されて閉じられる。ハウジング36の底面には回転軸S上に、ハウジング支持部材34のシャフト38と環状壁40を突出させる丸穴52(図2)が形成されている。
【0014】
図1のベース32はPA+GF樹脂等の硬質プラスチックによる一体成型品あるいはアルミ等の金属による一体鋳造品等で構成されている。ベース32は車体に固定される車体固定部32aと、車体固定部32aの下端部から側方に突出してハウジング支持部材34を回転自在に軸受支持する回転支持部32bを有する。図8はベース32の回転支持部32bを上から見た状態を示す。回転支持部32bには回転軸S上にシャフト挿通孔56とその外周側に環状壁収容溝58と、環状壁収容溝58のすぐ内周側にクラッチのベース側部分60が同軸に形成されている。シャフト挿通孔56はハウジング36が復帰位置にあるときにシャフト38を僅かなクリアランスで挿通する大きさに形成されている。環状壁収容溝58の内壁面58aおよび外壁面58bには、環状壁40(図7)の内壁面40aおよび外壁面40bとの当接箇所を設定する突条59,61が回転軸Sと平行な方向に延在してかつ周方向に等角度間隔に配置した状態に6本ずつ突出形成されている。環状壁収容溝58と環状壁40は、ハウジング36が復帰位置にあるときに内壁面58a(突条59の位置),40aどうしおよび外壁面58b(突条61の位置),40bどうしがクリアランスなしで当接する内径、外径に形成されている。環状壁収容溝58の溝幅は環状壁40の板厚の変化に合わせて、下方に行くに従い僅かに狭くなるように形成されている(図7)。環状壁収容溝58の深さは、ハウジング支持部材34がベース32に対し相対回転できる角度範囲内で、クラッチのミラー回転部側部分54とベース側部分60とが常に押圧当接し合える十分な深さに形成されている。クラッチのベース側部分60は環状壁収容溝58のすぐ内周側に山部60aと谷部60bの繰り返し構造を周方向に等ピッチで3回繰り返し形成して構成されている(図8)。山部60aと谷部60bの境界部分60cはそれぞれ傾斜面に形成されている(図10)。
【0015】
図1のドアミラーは例えば次の手順で組み立てられる。
(1)ハウジング36の凹所42にハウジング支持部材34を収容する。図3、図4、図5はこのときの状態を平面図、底面図、背面図でそれぞれ示す。
(2)ハウジング36の下面に形成された2個のねじ通し穴50(図4)にビス44(図1)をそれぞれ差し込んでハウジング支持部材34の下面のねじ穴にねじ込むことにより、ハウジング36とハウジング支持部材34とを相互に連結固定する。 図9はハウジング支持部材34とハウジング36の連結固定位置の断面(図4のB−B矢視位置の断面に相当)を示す。ハウジング支持部材34とハウジング36は、ハウジング36に形成されたねじ通し穴50からビス44を差し込んで、ハウジング支持部材34に形成されたねじ穴66にねじ込むことにより連結固定されている。
(3)ハウジング36の底面の丸穴52から下方に突出するシャフト38と環状壁40をベース32の回転支持部32bに形成されたシャフト挿通孔56と環状壁収容溝58にそれぞれ回転自在に差し込む(図7、図9)。
(4)前記図6に基づいて説明した手順でコイルばね46をシャフト38に嵌挿装着する。これにより、ハウジング36はハウジング支持部材34を介してベース32に連結されて、回転軸Sの周り方向に回転自在に軸受支持される(図7、図9)。
(5)ハウジング36の裏面側の開口(図1、図2、図3、図5に示すエッジ36cで囲まれた領域)にハウジングカバーを装着する。これによりハウジング支持部材34は、ハウジング36の下面から突出しているシャフト38および環状壁40を除く部分すなわち連結部39よりも上の部分がハウジング36の内部空間37に収容された状態となる。
(6)ハウジング36の前面側空間37aに鏡面調整用アクチュエータを装着し、該鏡面調整用アクチュエータにミラー板を装着する。
【0016】
図7は図1のドアミラーを組み立てて、ハウジング36が復帰位置にあるときに、回転軸Sを通る面で切断した状態を示す(図4、図8のA−A矢視位置の断面に相当)。ベース32の下部開口部は蓋64で閉じられている。ハウジング36が復帰位置にあるときはコイルばね46の付勢力はベース32とハウジング支持部材34との間に、回転軸Sに沿って相互に突き合わせる方向に付与され、クラッチのベース側部分60(図8)の山部60a、谷部60bとミラー回転部側部分54(図4)の谷部54b、山部54aとが相互に噛み合った状態(図10に示す状態)となる。これによりハウジング36を装着したハウジング支持部材34はベース32上に起立した状態に保持される。このとき環状壁40の内外壁面40a,40bと環状壁収容溝58の内外壁面58a,58bの突条59,61とはいずれも当接した状態となり、ハウジング36はがたつき無く復帰位置に保持される。シャフト38の外周面38bとシャフト挿通孔56の内周面56aとの間には僅かなクリアランスがある。
【0017】
ハウジング36が復帰位置にある状態からコイルばね46の付勢力に抗してハウジング36に手で回転軸Sの周り方向に力を加えると、クラッチのミラー回転部側部分54の傾斜面54c(図10)がベース側部分60の傾斜面60cを滑り上がってクラッチの噛み合いが外れる。このとき傾斜面54cの滑り上がりによりハウジング支持部材34がその分上方に移動する。前述のように環状壁40の板厚は下方に行くに従い僅かに薄くなるように形成され、環状壁収容溝58の溝幅は環状壁40の板厚の変化に合わせて、下方に行くに従い僅かに狭くなるように形成されているので(図7)、ハウジング支持部材34が上方に移動することにより、環状壁40の内外壁面40a,40bと環状壁収容溝58の内外壁面58a,58bの突条59,61との当接が緩められ(両壁面間に隙間が生じ)、ハウジング36は回転軸Sの周り方向に回転できるようになり、格納位置(後方可倒位置)あるいは格納位置とは反対側の前方可倒位置に変位する。このハウジング36が回転するときの軸受支持は、環状壁40の内外壁面40a,40bと環状壁収容溝58の内外壁面58a,58bとの摺動、あるいはシャフト38の外周面38bとシャフト挿通孔56の内周面56aとの摺動、あるいはこれら両摺動によって行われる。
【0018】
ハウジング36が復帰位置にある状態でハウジング36に無用な外力が加わって(例えばハウジング36に上から荷重がかかる等)、ハウジング支持部材34に掛かる曲げモーメント(図7のシャフト挿通孔56の中心位置Pを中心とする矢印Fで示す方向のモーメント)が増大してハウジング支持部材34に傾きが生じたときは、環状壁40の内外壁面40a,40bと環状壁収容溝58の内外壁面58a,58bの突条59,61とが押圧当接し、またシャフト38に傾きが生じてシャフト38の外周面38bとシャフト挿通孔56の内周面56aとが押圧当接して、これら3面の押圧当接で該外力を分担して支持する。したがってハウジング支持部材34は全体として高い剛性が得られ、外力に対して高い支持力が得られる。したがってハウジング支持部材34を金属でなくPA+GF樹脂等の硬質プラスチックによる一体成型品で作ってもシャフト38や環状壁40が折れたり曲がったり破損するのが防止される。ハウジング支持部材34およびベース32をいずれもPA+GF樹脂等の硬質プラスチックによる一体成型品で作ればドアミラーを安価に製造することができる。特にこの実施の形態によれば、ハウジング36が復帰位置にあるときに、環状壁40の内外壁面40a,40bと環状壁収容溝58の内外壁面58a,58bの突条59,61どうしがクリアランスなしで当接し、シャフト38の外周面38bとシャフト挿通孔56の内周面56aとは僅かなクリアランスで対面しているので、ハウジング36に外力が加わったときに、環状壁40の内外壁面40a,40bと環状壁収容溝58の内外壁面58a,58bの突条59,61どうしの押圧当接で該外力の多くの部分を支持し、シャフト38の外周面38bとシャフト挿通孔56の内周面56aとの押圧当接で該外力の残りの部分を支持するので、シャフト38に掛かる力を軽減してシャフト38が折れたり曲がったりするのをより確実に防止することができる。
【0019】
なお前記実施の形態1ではハウジング36とハウジング支持部材34を別体で構成して組み付けたが、両者を一体成型品または一体鋳造品として構成することもできる。
【0020】
《実施の形態2》
この発明のコイルばねとシャフトの装着構造を有する手動格納式ドアミラーの実施の形態2を説明する。これはシャフトをベース側に立設すると共に、シャフト中にハーネスを通すようにしたものである。実施の形態1と共通する部分には同一の符号を用いる。図11は実施の形態2によるシャフト38の側面図、図12はコイルばね46をシャフト38に装着した状態で示した図11のC−C矢視断面図、図13はハーネス62を通した状態で示した図12のD−D矢視断面図である。シャフト38はベース32の回転支持部32bに立設固定されている(図11、図13)。シャフト38にはミラー回転部35が回転自在に支持されている(図13)。シャフト38は中空に構成されている。シャフト38の先端部にはその先端面から相対向する側面にかけて切欠43が形成されている。切欠43はシャフト38の先端部からコイルばね46の引っ掛け部46aを進入させる進入口43aと、進入口43aに連続しかつ該進入口43aとは周方向にずれた位置に折り返して該進入口43aから進入した引っ掛け部46aを引っ掛けて保持する保持溝43bを有し、正面形状が全体として「J」字状に形成されている。また進入口43aと保持溝43bとの間には、ベース32の回転支持部32bを通って中空部38aに通されたハーネス62を引き出すハーネス出入口38cが形成されている。ハーネス出入口38cは切欠43とは独立した(切欠43とは不連続の)開口として形成することもできる。ハーネス62はミラー回転部35内に設置された鏡面調整用アクチュエータ等に駆動用電力を供給するものである。ハーネス出入口38cから引き出されたハーネス62は、シャフト38とコイルばね46との間の空間63を通ってコイルばね46の端部の開口部63aから引き出されてミラー回転部35内に導かれる。コイルばね46をシャフト38に装着する際には、ハーネス62をシャフト中空部38a、ハーネス出入口38c、コイルばね46に順次通してから、前記図6と同様の手順に従ってコイルばね46をシャフト38に装着する。
【0021】
なお実施の形態1のシャフト38をミラー回転部35側に立設する形式の手動格納式ドアミラーにおいても、実施の形態2と同様に、中空のシャフト38にハーネス出入口38cを形成して、ベース32の回転支持部32b、コイルばね46の端部の開口部63a、シャフト38とコイルばね46との間の空間63、ハーネス出入口38c、シャフト中空部38aを経由してハーネス62敷設することができる。
【符号の説明】
【0022】
32…ベース、32a…車体固定部、32b…回転支持部、35…ミラー回転部、36…ハウジング、38…シャフト、38a…中空部、38c…ハーネス出入口、42…凹所(収容部)、43…切欠、43a…進入口、43b…保持溝、46…コイルばね、46a…引っ掛け部、52…丸穴(ハウジングの開口部)、56…シャフト挿通孔、62…ハーネス、63…シャフトとコイルばねとの間の空間、63a…コイルの端部の開口部、S…回転軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられるベースと、該ベースに回転自在に支持されて手動で格納位置と復帰位置に変位するミラー回転部と、該ミラー回転部が回転する回転軸上で該ベースまたは該ミラー回転部に立設されたシャフトと、該シャフトに嵌挿装着されて該ベースと該ミラー回転部とを圧接させるコイルばねとを具備する手動格納式車両用ドアミラーにおいて、前記コイルばねを前記シャフトに装着する構造であって、
前記コイルばねを構成する線材の端部を該コイルばねが巻回す円の中心方向に折り曲げて形成した引っ掛け部と、前記シャフトの端部に形成されて前記引っ掛け部を引っ掛けて保持する切欠とを具備し、
該切欠が前記シャフトの端部から前記引っ掛け部を進入させる進入口と、該進入口に連続しかつ該進入口とは周方向にずれた位置に折り返して該進入口から進入した引っ掛け部を引っ掛けて保持する保持溝とを具備してなる装着構造。
【請求項2】
前記シャフトが中空シャフトで構成され、該シャフトの中空部にハーネスが挿通される手動格納式車両用ドアミラーであって、
前記シャフトの側面にハーネス出入口が形成され、該シャフトの中空部に挿通されたハーネスが該ハーネス出入口から該シャフトの外側に引き出され、さらに該シャフトと前記コイルばねとの間の空間を通って該コイルばねの端部の開口部から引き出される請求項1記載の装着構造。
【請求項3】
前記ミラー回転部が前記ベースに回転自在に支持されるハウジング支持部材と、該ハウジング支持部材に固定支持されるハウジングとを具備し、前記シャフトが前記ハウジング支持部材と一体に形成されている請求項1または2記載の装着構造。
【請求項4】
前記ハウジングは前記ハウジング支持部材を収容して保持する収容部と、該ハウジング支持部材を該収容部に収容保持した状態で前記シャフトを該ハウジングの下面から外部に露出させる開口部を具備し、
前記ベースは前記ハウジングの下面から露出する前記シャフトが回転自在に差し込まれるシャフト挿通孔を具備し、
前記ベースの裏面側で前記シャフト挿通孔から突出する前記シャフトに前記コイルばねを短縮して嵌挿装着する請求項3記載の装着構造。
【請求項1】
車体に取り付けられるベースと、該ベースに回転自在に支持されて手動で格納位置と復帰位置に変位するミラー回転部と、該ミラー回転部が回転する回転軸上で該ベースまたは該ミラー回転部に立設されたシャフトと、該シャフトに嵌挿装着されて該ベースと該ミラー回転部とを圧接させるコイルばねとを具備する手動格納式車両用ドアミラーにおいて、前記コイルばねを前記シャフトに装着する構造であって、
前記コイルばねを構成する線材の端部を該コイルばねが巻回す円の中心方向に折り曲げて形成した引っ掛け部と、前記シャフトの端部に形成されて前記引っ掛け部を引っ掛けて保持する切欠とを具備し、
該切欠が前記シャフトの端部から前記引っ掛け部を進入させる進入口と、該進入口に連続しかつ該進入口とは周方向にずれた位置に折り返して該進入口から進入した引っ掛け部を引っ掛けて保持する保持溝とを具備してなる装着構造。
【請求項2】
前記シャフトが中空シャフトで構成され、該シャフトの中空部にハーネスが挿通される手動格納式車両用ドアミラーであって、
前記シャフトの側面にハーネス出入口が形成され、該シャフトの中空部に挿通されたハーネスが該ハーネス出入口から該シャフトの外側に引き出され、さらに該シャフトと前記コイルばねとの間の空間を通って該コイルばねの端部の開口部から引き出される請求項1記載の装着構造。
【請求項3】
前記ミラー回転部が前記ベースに回転自在に支持されるハウジング支持部材と、該ハウジング支持部材に固定支持されるハウジングとを具備し、前記シャフトが前記ハウジング支持部材と一体に形成されている請求項1または2記載の装着構造。
【請求項4】
前記ハウジングは前記ハウジング支持部材を収容して保持する収容部と、該ハウジング支持部材を該収容部に収容保持した状態で前記シャフトを該ハウジングの下面から外部に露出させる開口部を具備し、
前記ベースは前記ハウジングの下面から露出する前記シャフトが回転自在に差し込まれるシャフト挿通孔を具備し、
前記ベースの裏面側で前記シャフト挿通孔から突出する前記シャフトに前記コイルばねを短縮して嵌挿装着する請求項3記載の装着構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−121494(P2011−121494A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281436(P2009−281436)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000148689)株式会社村上開明堂 (185)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000148689)株式会社村上開明堂 (185)
【Fターム(参考)】
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