説明

手持ち式刈払機

【課題】軽量で使い易く、丈夫で耐久性があり、製造コストが抑えられた手持ち式刈払機にすることと、土や小石の跳ね飛ばしによる危険性と刈り残しが大幅に改善され、刈刃の着脱操作が容易に行なえる手持ち式刈払機にすることを同時に実現させることにある。
【解決手段】ギヤケース11内の減速機構を、入力用の小径傘歯車41と大径傘歯車40との噛合による前段の減速と、大径傘歯車40と連動する小径平歯車31と第1短軸17に装着された第1大径平歯車22との噛合及び、小径平歯車31と第1短軸17に遊嵌支持された第2大径平歯車23との噛合による後段の減速とからなる、2段の減速を経る機構にした。そして、小径平歯車31と第2大径平歯車23とによる噛合を、逆転用の中間平歯車36を間に介在させた噛合にした。上刃7を第2大径平歯車23と連れ回り自在にさせ、下刃8を第1短軸17下端の装着部17aに嵌入係合させて、下方から1本のボルト25で挟み付けた。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、上下一対のディスク形バリカン刃を互いに相反する回転方向に大きく減速回転させる減速機構をギヤケース内に備える手持ち式刈払機に関する。
【従来技術】
【0002】
手持ち式刈払機は、エンジン又はモータを後端部に装着した手持ち用の操作杆の前端部に、刈刃を備えたギヤケースが取り付けられたものであり、エンジン又はモータから出力した回転動力は、操作杆内のドライブシャフトを通じてギヤケース内に入力されて減速される。
【0003】
刈払機用の刈刃の種類に、回転式のディスク形のバリカン刃がある。この刈刃を備えた手持ち式刈払機は、刈刃を高速回転させなければ、雑草を押し倒して刈り残しが生じ、刈刃を高速回転させると、刈払い作業中に、土や小石を強くはね飛ばす。
土や小石のはね飛ばしは、例えば、次のような危険性があることが、従来から指摘されている。即ち、小石が刈払作業者の顔や体に当たって怪我をすることがあり、土が目に入ることもある。道路傍で雑草の刈払い作業をすると、小石が自動車に当たって傷つけることがあったり大事故を引き起こす事もある、農業用ビニールハウスの近くで雑草の刈払い作業をすると、飛石がビニールハウスを壊すことがある。
土や小石のはね飛ばしが生じないように刈刃を地面から浮かせてて刈払い作業をすると、雑草を根元近くまで刈らないため、刈り取り作業の意味が無く雑草がすぐに生長して、後日に刈払い作業をやり直すことになる。
【0004】
刈り残しや、刈刃による土や小石のはね飛ばしは、刈刃が1枚構造の手持ち式刈払機において顕著にあらわれる。このため、上下に2枚の刈刃を重ね合わせて、2枚の刈刃うちの1枚を逆回転させる刈払い機が、例えば、以下の特許文献により開示されている。
【特許文献1】特開昭64−47310号公報
【特許文献2】特開昭64−30510号公報
【特許文献3】特開平11−253027号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の刈払機は、同文献の第1図に示すように、下刃6を減速回転させる傘歯車12,27Aの径に殆ど差がないため、しかも、下刃6及び上刃5の減速が各一組の歯車組みで行なわれているため、減速比が小さく、刈刃5,6を高速回転させる。この結果、刈刃が2枚構造であっても、土や小石を強く跳ね飛ばす危険性が高い。
また、この刈払機に用いられている中央周辺面が盛り上がった形状の刈刃5,6は、製造コストが高いものになっている。しかも、刈刃5,6の取り付け構造が複雑であるため、刃先が磨耗して再研磨する際の刈刃5,6の着脱作業が、一般のユーザーには容易に出来ないなどの不具合がある。
【0006】
特許文献2の刈払機は、同文献の図1に示すように、連結杆49の途中部分を折曲させた構造であり、図2に示す伝動軸53に可撓性材料が用いられている。このため、伝動軸53の回転時に、大きな摩擦抵抗が生じて動力伝達効率を低下させ、騒音や振動が発生し易い。
また、この刈払機は、上刃と下刃が同じ回転数で回転する構造であり、しかも、上刃と下刃が同じ刃数になっているため、上刃と下刃による各組の刃先どうしによる挟み切りが同じタイミングで行なわれる。この結果、各箇所の刃先による草や小径木の挟み切りが同時に行われるときに、上刃と下刃の回転に強い負荷が同時に加わって、上刃と下刃の回転が減速したり、停止するトラブルが発生し易い。
【0007】
特許文献3の刈払機は、同文献の図2に示すように、上述した従来技術1の刈払機よりも更に複雑な構造であるため、刈刃を再研磨する際の刈刃の着脱や刈刃の交換が、ユーザーでは出来ない。
また、本体ケース5内に部品が多数複雑に組み付けられているため、部品の製造コストや組立てコストが高くつく。
また、本体ケース5が、その内部を完全密閉構造にすることが容易でない大きなドーナツ形状であり、上下の接合部の範囲が広範囲に及ぶため、本体ケース5が歪んだり、数多くの止めネジの一部が緩んだりし易い。この結果、グリース漏れが生じたり、泥地や水辺での作業中に本体ケース5内に泥水等が侵入して、故障が発生することがある。
【0008】
本発明は上述した不具合に鑑みて提案されたものである。
即ち、本発明は、軽量で使い易く、丈夫で耐久性があり、製造コストが抑えられた手持ち式刈払機にすることと、土や小石の跳ね飛ばしによる危険性と刈り残しが大幅に改善され、刈刃の着脱操作が容易に行なえる手持ち式刈払機にすることを同時に実現させるために提案された
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の手持ち式刈払機は、同一軸心上に重ね合わせたディスク形バリカン刃よりなる上刃と下刃を、ギヤケース内の減速機構によって互いに相反する方向に減速回転させる手持ち式刈払機であって、
エンジン又はモータを後部に装着した操作杆が前記ギヤケースの後部から斜め上方に向けられており、
前記減速機構は、入力用の小径傘歯車と大径傘歯車との噛合による前段の減速と、該大径傘歯車と連動する小径平歯車と第1短軸に装着されている第1大径平歯車との噛合による後段の減速及び、前記小径平歯車と前記第1短軸に遊嵌支持されている第2大径平歯車との噛合による後段の減速とによる、前後2段の減速を経る機構であり、
前記小径平歯車と前記第2大径平歯車との噛合では、逆転用の中間平歯車を間に介在させた噛合であり、
前記上刃は、前記第2大径平歯車と連れ回りするように前記ギヤケースの下方に突出する装着部に係合され、前記下刃は、前記ギヤケースの下方に突出する前記第1短軸下端の装着部に係合された状態で、前記第1短軸の下面に装着した1本のボルトで下方から挟み付けられているところに特徴がある。
【0010】
請求項1の手持ち式刈払機は、立ち姿勢の刈払い作業者が操作杆を斜め前下方に向けながら、操作杆を手で左方向に操作して、刈刃の左側にある草や小径木を刈払うために使用される。
この手持ち式刈払機の動力源はエンジン又はモータである。このため、動力源から出力される回転は、いずれも高速回転である。この手持ち式刈払機では、低速回転時に生じ易い刈り残しと、高速回転時に生じ易い土や小石を強くはね飛ばしが、共に抑えられる程度まで、高速回転を減速機構で減速させて、上刃と下刃を回転させるようにした。
この減速機構を2段の減速を行なう構成とした理由は、一組の歯車による減速だけでは、大きく減速させるのが困難であるからである。後段の減速を行なう歯車組みを2組にし大きな理由は、上刃と下刃のうちの一方の刈刃を逆回転させて、上刃と下刃の各刃先をV字状に向き合わせた状態で、草や小径木を挟み切るようにするためである。
そして、本発明の手持ち式刈払機では、上刃や下刃の着脱がユーザーが容易に行なえるように、上刃と下刃の装着を1本のボルトで行なうようにした。
【0011】
請求項2では、更に、前記減速機構は、前記上刃と下刃を250〜450rpmまで減速回転させる減速歯車組みを備えている。
【0012】
即ち、上刃と下刃のいずれか一方の刈刃が、上記の回転数で正回転し、他方の刈刃が上記の回転数で逆回転することになる。上記の回転数は、危険な小石の跳ね飛ばしが抑えられ、刈り残しを生じさせ難いとされる回転数である。即ち、雑草が良く切れる最低回転数が200rpm以上であり、小石等をはね飛ばさない最高回転数が450rpmであることが、発明者による知見とテスト結果から得られた。
動力源から出力される回転数は、エンジンとモータの違いにより大きな違いがあり、また、エンジンやモータにも機種によっても違いがある。このため、搭載したエンジンやモータの出力回転数に合わせて、各歯車の径と歯数を設定して、上記範囲内の回転数が出力されるようにする。
【0013】
請求項3の手持ち式刈払機は、上記いずれかの構成において、前記上刃と前記下刃における刃数の差が、1〜10とされている。
【0014】
このように上刃と下刃の刃数を揃えないようにした理由は、上刃と下刃による各組の刃先どうしによる挟み切りが同じタイミングで行なわれる上述した不具合(段落番号「0006」の後段に記載。)を解消させるためである。
ディスク形バリカン刃には、その種類や大きさによって刃数が異なり、刃数が4つの十字形状のものもあれば、刃数が25に及ぶものもある。このため、刃数の差に、1〜10の範囲を持たせた。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の手持ち式刈払機は、以下の効果を奏する。
第1に、径と歯数の差が大きい歯車を噛合させた2組の歯車組みで、2段階で減速させる構造とした結果、従来の手持ち式刈払機よりも、大きく減速させることが出来るようになった点が挙げられる。このため、切れ味の悪さと、土や小石の跳ね飛ばしを抑えることが出来るようになった。
【0016】
第2に、この2段階の減速と、上刃と下刃を互いに逆回転させる減速機構が複雑でないため、この減速機構が、故障や騒音が少なく、低コストで製作出来るようになった点が挙げられる。
【0017】
第3に、上刃や下刃の再研磨の際に、ユーザーが1本のボルトを取り外すという簡単な操作で、上刃と下刃を取り外すことが出来るようになった点が挙げられる。
【0018】
第4に、操作杆をギヤケースの後部から斜め上方に向けた姿勢で装着させた結果、刃先で刈り払う状態が、操作杆の前方の左側という、作業者から見て、見易い位置になった点が挙げられる。この他にも、ギヤケースを内部密閉し易く変形しにくい小形の形状で構成した結果、泥地や水辺の刈払い作業でも、トラブル無く安心して作業が出来るようになった。
【0019】
請求項2の手持ち式刈払機によれば、前記上刃と下刃を250〜450rpmまで減速回転させる構成とした結果、切れ味の悪さと、土や小石の跳ね飛ばしによる不具合が最大限改善された手持ち式刈払機にすることが出来るようになった点が挙げられる。
【0020】
請求項3の刈払機によれば、前記上刃の刃数と前記下刃の刃数に、1〜10の差を設けた結果、上刃と下刃による各組の刃先どうしによる挟み切りが、同じタイミングで行なわれないようになった点が挙げられる。このため、挟み切りによる負荷の集中が抑えられ、上刃と下刃の回転速度の低下や回転停止などのトラブルの発生が格段に抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明を実施するための最良の形態は、次の実施例により、さらに明確なものになるであろう。
【実施例】
【0022】
図1は本発明の1実施形態による手持ち式刈払機の全体図である。
図1に示す実施形態の手持ち式刈払機1は、請求項1,2,3に記載の構成を全て備えている。この手持ち式刈払機1は、エンジン付き操作杆2の前端部に刈払機(ギヤケースの下方に刈刃を装着した草刈装置を指す。)10が装着されたものである。エンジン付き操作杆2は、中空パイプ構造を有する操作杆3の後部にエンジン4が装着され、操作杆3の途中部にハンドル5が取り付けられたものである。図示していないが、操作杆3の後部寄りの箇所に肩掛けベルトが取り付けられる。エンジン塔載型ではなくモータ搭載型の手持ち式刈払機ではモータ付き操作杆が用いられる。
【0023】
図2は刈払機の側面中央断面図、図3はギヤケースの一部を破断して示した拡大平面図である。
図2及び図3に示すように、刈払機10は、ギヤケース11の下方に、同一軸心を中心にして、互いに相反する方向に回転する上下2枚の刈刃(上刃7と下刃8)を備えたものである。
本実施形態では、ギヤケース11は、主ギヤケース12と、主ギヤケース12の後部上面中央箇所に装着した後部ギヤケース14とによる組み付け品が用いられている。
そして、主ギヤケース12内に平歯車どうしによる歯車組みを配置し、後部ギヤケース14内に傘歯車どうしによる歯車組みを配置して、ギヤケース11全体が大きく嵩張らないようにするとともに、各歯車組みの支持構造を安定させた。減速機構は、これらの歯車組みを合わせたものを指す。
【0024】
主ギヤケース12は、平面視略円形であり且つその後部が平面視方形に突出した形状を有する上板部12Aと、該上板部12Aの周縁から下方に向けた高さの低いスカート部12Bとを有する一体形成品である。
スカート部12Bの前部は円弧面で形成され、後部は円弧面よりも若干高さが低い、平面視コ形状の面で形成されている。スカート部12Bで囲まれた内側の中段高さの位置には下板13が組み付けられている。
下板13には下方に向けたリブ13aが突出形成されており、スカート部12Bの円弧面とリブ13aの各下縁部の高さを同じ高さに揃えて、スカート部12Bと上刃7で囲まれた内側空間内に刈り払った草や土などの侵入を防止させ、上刃7と下刃8の姿勢を安定させるようにしている。スカート部12Bの後部の下縁部は、下板13を取り付ける高さに合わせてある。
【0025】
後部ギヤケース14は、平面視円形の上板部14aと、上板部14aの周縁から下方に向けたスカート部14bと、後部から斜め上方に向けた短筒形状の操作杆装着部15と、スカート部14bの下縁から外側に突出させた装着面14c,14c・・とを有する一体形成品である。
図2を参照しつつ図3に示すように、後部ギヤケース14は、主ギヤケース12の上板部12Aの後部上面中央箇所に、螺子29,29・・を用いて装着されている。
【0026】
図4は図2における第1短軸周辺部分を示した拡大図である。
主ギヤケース12内の動力伝達構造を図2,図3及び図4に沿って説明する。
図4に示すように、主ギヤケース12の上板部12Aの主要部を形成している平面視円弧形状の中央内側箇所にはボールベアリング16が保持されており、このボールベアリング16に第1短軸17の上部が円滑回転自在に支持されている。
第1短軸17の高さ途中の箇所から下端近傍に至る途中部には、上下に2個のボールベアリング18,19が嵌装されており、さらにその外側には、短筒部の1形態であるフランジ付きリング20が嵌装されている。
フランジ付きリング20は、短筒部20aの上端縁に、外側に広がるドーナツ形状のフランジ面20bが一体形成され、短筒部20aの下端に、上刃7の肉厚に相当する高さのある底面視六角形状の装着部20cが形成されたものである。
下板13の開孔部13aの周縁には、ボールベアリング21が保持されており、フランジ付きリング20の短筒部20aは、その内側からボールベアリング21を挟んだ状態で該短筒部20a内に挿通している第1短軸17に円滑回転自在に保持されている。また、短筒部20aは、その外側から下板13に形成された開口縁13aの内側に保持されているボールベアリング21を挟んだ状態で、下板13に保持されている。このため、第1短軸17とフランジ付きリング20は、軸心を揃えて、個別に回転自在に支持された状態にある。
【0027】
図2及び図4に示すように、フランジ面20bと上板部12Aとの間には高さの低い空間が形成されており、この空間内に、第1大径平歯車22が第1短軸17に連動回転自在に軸支持された状態で位置している。
第1大径平歯車22と下板13との間にも高さの低い空間が形成されており、この空間内に、ドーナツ形状の第2大径平歯車23が、フランジ付きリング20のフランジ面20bに装着された状態で、第1短軸17の軸心を中心にして円滑回転自在に支持された状態で位置している。
【0028】
上刃7は、フランジ付きリング20の下面に形成されている底面視六角形状の装着部20c内に嵌め入れられて、下刃8で下受け支持されている。
下刃8は、第1短軸17の下面に形成されている底面視六角形状の装着部17a内に嵌め入れられて、更にその下からボルトプロテクター51で下受けした状態で、第1短軸17の下面から内部に向けて螺着したボルト25の頭部で下から挟み付けられている。このため、ボルト25を取り外すと、下刃8と上刃7が取り出せる。
ボルトプロテクター51は、下刃8を下支えして姿勢を安定させ、刈り払い作業中にボルト25の頭部が地面に擦れて磨耗するのを防ぐためにある。
【0029】
図5は、別形状の第2大径平歯車の中央辺り部分を示した側面断面図である。
図5に示す別形状の第2大径平歯車23Aは、図4に示す第2大径平歯車23とフランジ付きリング20の短筒部20aとを一体化させた形状を有する。図5に示す23aは筒部、23bは第2大径平歯車、23cは上板7を嵌め入れる高さが低い底面視六角形状の装着部を示している。図4に示す第2大径平歯車23とフランジ付きリング20に代えて、図5に示す第2大径平歯車23Aを用いてもよい。
【0030】
図6は図2における第2短軸の周辺部分を示した拡大図である。
後部ギヤケース14内の動力伝達構造を、図2を参照しつつ図3及び図6に沿って説明する。
図6に示すように、後部ギヤケース14の上板部14aにおける中央内側箇所には、ボールベアリング27が保持されている。ボールベアリング27の下方に位置する上板部12Aの後部箇所には、開孔12aが形成されており、この開孔12aを囲む上面箇所に、平面視リング形状を有する高さが低いリブ12bが上方に向けて形成されている。そして、このリブ12bの内側にボールベアリング28が保持されている。
第2短軸26は、後部ギヤケース14内において、これら上下のボールベアリング27,28に回転自在に保持されている。
【0031】
図2に示す筒状の操作杆装着部15内には、小径の入力用傘歯車41の軸部41aが回転自在に保持されている。この軸部41aの後端部とドライブシャフト44の前端部とが連結されている。図2及び図6に示すように、第2短軸26には大径傘歯車40が連れ回りする状態で装着されている。そして、後部ギヤケース14内において、入力用傘歯車41と大径傘歯車40とが噛合している。
【0032】
図6に示すように、第2短軸26の下端部26aは、下板13に形成されている開孔12a内から下方の主ギヤケース12の後部空間内に突出している。この下端部26aには、小径平歯車31が連れ回りする状態で装着されている。
図2及び図3、図6に示すように、主ギヤケース12内の後部において、小径平歯車31と第1大径平歯車22とが噛合している。
【0033】
図7はネジ軸の周辺部分を示した側面断面図である。
図3及び図7に示すように、主ギヤケース12内の後部側方には、ねじ軸32が下板13と主ギヤケース12の上板部12Aに支持された状態で立設している。ねじ軸32の軸中央には、上下2連のボールベアリング34,35を介して、逆回転用の小径の中間平歯車36が円滑回転自在に装着されている。この中間平歯車36は、小径平歯車31と第2大径平歯車23との間に介在して、小径平歯車31と第2大径平歯車23の双方に噛合している。
【0034】
減速機構による動力伝達では、下刃8を回転させる方向の動力伝達と、上刃7を回転させる方向の動力伝達とが、同時に進行する。
図2及び図3において、前者の動力伝達の流れを列記すると、エンジンの駆動力を受けてドライブシャフト44は、図3に示す矢(イ)方向に高速回転して、入力用の小径傘歯車41を同方向に高速回転させる。これにより、小径傘歯車41と噛合している大径傘歯車40が左回転し、このとき回転が減速される。大径傘歯車40とともに小径平歯車31も同方向に回転して第1大径平歯車22を右回転させ、このとき回転が更に減速される。この結果、下刃8が大きく減速されて右回転することになる。
【0035】
後者の動力伝達の流れを小径平歯車31から列記すると、小径平歯車31が減速されて左回転すると、小径平歯車31と噛合している図3及び図4に示す逆転用の小径の中間平歯車36が右回転する。これにより、この中間平歯車36と噛合している図2〜図4に示す第2大径平歯車23が左回転し、このとき回転が更に減速される。第2大径平歯車23の回転とともにフランジ付きリング20も同方向に回転し、この結果、フランジ付きリング20の下端部に係合している上刃7が大きく減速されて左回転することになる。
【0036】
図3及び図6,図7に示す上記実施形態では、小径平歯車31と第2大径平歯車23の間に中間平歯車36を介在させて、上刃7を下刃8に対して逆回転させる構造が示されているが、小径平歯車31と第1大径平歯車22との間に中間平歯車36を介在させて、下刃8を上刃7に対して逆回転させるようにしてもよい。
【0037】
図2及び図3に示すように、第2大径平歯車23は、第1大径平歯車22よりも若干大径とされ、これに合わせて歯数も若干多くなっている。このため、第2大径平歯車23と連動する上刃7は、下刃8の回転速度よりも若干ではあるが低速になる。
【0038】
動力源がエンジンの場合とモータの場合、また、エンジンやモータの機種の違いによって、出力回転数が大きく異なる。このため、搭載する動力源の種類や機種に対応させた減速機構を搭載することになる。このような場合でも、減速機構を構成する各歯車組みには変更はなく、各歯車の径や歯数を変更したり、これとともに第2短軸26の位置を変更する等して、減速比を変更することで対応できる。
【0039】
本実施形態では、上刃と下刃による刈払い効率を更に向上させるため、双方の刃数に差を持たせてあり、その具体例を図8と図9に示す。
図8は上刃の平面図、図9は下刃の平面図、図10は上刃と下刃による刈り払いを示した平面図である。
図8に示す上刃7は、中央に六角孔7aを有する平坦な形状の鉄製薄肉円板の外周に沿う等間隔を置いた15箇所に、平面視三角形状の刃7b.7b・・・が突出し、各刃7b.7b・・・の回転方向の片側縁に刃先7c.7c・・・が形成されたディスク型バリカン刃が用いられている。
【0040】
図9に示す下刃8は、図8に示す上刃7と同じ大きさを有する平坦な形状の鉄製薄肉円板の外周に沿う等間隔を置いた18箇所に、平面視三角形状の刃8b.8b・・・が突出し、各刃8b.8b・・・の回転方向の片側縁に刃先8c,8c・・・が形成されたディスク型バリカン刃が用いられている。このため、下刃8の刃数は、図8に示す上刃7の刃数よりも3つ多いことになる。
【0041】
図10に示すように、上刃7と下刃8は、ギヤケース11の下方において、第1短軸17の軸心Pを中心とする同一軸心上に重ね合わされて、上刃7が矢(ロ)方向に左回転し、下刃8が矢(ハ)方向に右回転する。
刈払い作業では、作業者が操作杆を手に持って刈払機10を矢(ハ)方向に操作させて行ない、その過程で、上刃7と下刃8の回転によって、夫々の刃先7c,7c・・,8c,8c・・で、上下の刈刃7,8の左側に位置する草Gや小径木等を刈り払う。
【0042】
本実施形態の手持ち式刈払機では、上述したように、上刃7と下刃8に至る回転数が大幅に減速されている。この減速後の上刃7と下刃8の回転数は、動力源から出力される回転数の如何に拘らず、250〜450rpmとされている。
【0043】
例えば、図2及び図3において、歯数が13の小径傘歯車41と歯数が43の大径傘歯車40とを噛合させ、更に、歯数が14の小径平歯車26と歯数が87の第1大径平歯車22を噛合させると、エンジンから出力された7000rpmの高速回転を340rpmまで減速させて下刃8を回転させる。
【0044】
また、歯数が13の小径傘歯車41と歯数が43の大径傘歯車40とを噛合させ、更に、この小径平歯車16と歯数が92の第2大径平歯車23とを中間平歯車36を間に介在させて噛合させると、エンジンから出力された7000rpmの高速回転を322rpmまで減速逆回転させて、上刃7を回転させる。
【0045】
前述したように上刃7と下刃8の回転数が250〜450rpmであると、刈り残しが大幅に抑えられ、刈刃による小石の跳ね飛ばしもが大幅に抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態による手持ち式刈払機1の全体図である。
【図2】刈払機10の側面中央断面図である。
【図3】ギヤケースの一部を破断して示した拡大平面図である。
【図4】図2における第1短軸周辺部分を示した拡大図である。
【図5】別形状の第2大径平歯車の中央辺り部分を示した側面断面図である。
【図6】図2における第2短軸の周辺部分を示した拡大図である。
【図7】ネジ軸の周辺部分を示した側面断面図である。
【図8】上刃の平面図である。
【図9】下刃の平面図である。
【図10】上刃と下刃による刈り払いを示した平面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 両手ハンドル式刈払機
2 エンジン付き操作杆
3 操作杆
7 上刃
7b 刃先
8 下刃
8b 刃先
10 刈払機
11 ギヤケース
12 主ギヤケース
13 下板
14 後部ギヤケース
15 操作杆装着部
17 第1短軸
17a (六角形状の)装着部
20 フランジ付きリング
20a 短筒部
20b フランジ面
22 第1大径平歯車
23 第2大径平歯車
26 第2短軸
26a 第2短軸下端部
31 小径平歯車
32 ねじ軸
36 (逆転用の)中間平歯車
40 大径傘歯車
41 (入力用の)小径傘歯車
44 ドライブシャフト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一軸心上に重ね合わせたディスク形バリカン刃よりなる上刃と下刃を、ギヤケース内の減速機構によって互いに相反する方向に減速回転させる手持ち式刈払機であって、
エンジン又はモータを後部に装着した操作杆が前記ギヤケースの後部から斜め上方に向けられており、
前記減速機構は、入力用の小径傘歯車と大径傘歯車との噛合による前段の減速と、該大径傘歯車と連動する小径平歯車と第1短軸に装着されている第1大径平歯車との噛合による後段の減速及び、前記小径平歯車と前記第1短軸に遊嵌支持されている第2大径平歯車との噛合による後段の減速とによる、前後2段の減速を経る機構であり、
前記小径平歯車と前記第2大径平歯車との噛合は、逆転用の中間平歯車を間に介在させた噛合とされ、
前記上刃は、前記第2大径平歯車と連れ回りするように前記ギヤケースの下方に突出する装着部に係合され、前記下刃は、前記ギヤケースの下方に突出する前記第1短軸下端の装着部に係合された状態で、前記第1短軸の下面に装着した1本のボルトで下方から挟み付けられていることを特徴とする手持ち式刈払機。
【請求項2】
前記減速機構は、前記上刃と下刃を250〜450rpmまで減速回転させる減速歯車組みを備える請求項1に記載の手持ち式刈払機。
【請求項3】
前記上刃の刃数と前記下刃の刃数には、1〜10枚の差が設けられている請求項1又は2に記載の手持ち式刈払機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−63452(P2010−63452A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271399(P2008−271399)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(591065480)ニシガキ工業株式会社 (14)
【Fターム(参考)】