説明

手摺の照明装置

【課題】トイレ室内に設置される手摺に部分的に照明を行う照明装置を備え付けることで、トイレ室を主照明装置により全体的に照明しなくても暗がりの中で手摺の位置が分るようにする。
【解決手段】水平な棚板58と、棚板58から立ち上がる縦の棒状の手摺60とを有し、トイレ室の壁面に設置される手摺の、棒状の手摺60の全体若しくは一部を光透過性材料で構成するとともに、手摺60の一端側から光透過性材料の内部に光を投光する状態にLED22を光源として棚板58に埋込状態に設け、LED22からの光によって手摺60の樹脂材64からなる部分を光らせるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はトイレ室の衛生設備器具としての手摺の照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来トイレ室などの衛生設備室には主照明装置が備えられ、その主照明装置によって室全体を照明するようにしていた。
【0003】
しかしながら夜就寝中に起き出して手摺を使用するような場合、主照明装置により室全体を照明してしまうことは不経済であるばかりでなく、暗がりに慣れた目に眩しさを感じさせてしまい、また目を覚まさせてしまうといった不都合がある。
【0004】
また従来用いられている主照明装置は白熱灯や蛍光灯を用いたものであって消費電力が大きく、しかも電球切れを生じ易いためにほぼ一定期間毎に電球交換を行わなければならないといった面倒があった。
【0005】
また従来の白熱灯や蛍光灯を用いた照明装置の場合、照明装置自体が大型であるため、その設置箇所については自ずと制限があった。
尚、本発明に対する先行技術として下記特許文献1,特許文献2に開示されたものがある。
【0006】
【特許文献1】特開平10−248663号公報
【特許文献2】特開昭63−265059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上のような事情を背景とし、トイレ室内に設置される手摺に部分的に照明を行う照明装置を備え付けることで、トイレ室を主照明装置により全体的に照明しなくても暗がりの中で目的とする作業が行えるようにすることを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はこのような課題を解決するために案出されたものである。
而して請求項1は、衛生設備室としてのトイレ室の壁面に接して設置される水平な棚板から立ち上がる縦の手摺の全体若しくは一部を光透過性材料で構成するとともに、該手摺の一端側から該光透過性材料の内部に光を投光する状態にLEDを光源として前記棚板に埋込状態に設け、該LEDからの光によって該手摺の該光透過性材料からなる部分を光らせるようになしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2のものは、請求項1において、前記手摺を棒状の光不透過性の木材と棒状の光透過性の樹脂材とを、該光透過性の樹脂材を前記壁面に向け、合せた形態で構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記棚板の下面にはトイレットペーパーホルダが取り付けてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0011】
以上のように請求項1のものは、壁面に接して設置される水平な棚板から立ち上がる縦の手摺の全体若しくは一部を光透過性材料で構成して、棚板に埋込状態に設けたLEDからの光を手摺の一端側から光透過性材料に投光して光らせるようになしたもので、このようにしておけば暗がりの中で容易に手摺の位置を知ることができ、暗がりの中にあっても支障なく手摺を使用できるようになる。
【0012】
従って手摺を使用するに際して、敢えて衛生設備室の主照明装置を点灯させて室全体を照明する必要がなく経済的であるとともに、例えば夜間就寝中に起き出して手摺を使用する必要が生じた場合においても、主照明装置によって眩しさを感じたり或いは眠気を覚ましてしまう不都合がなくなる。
【0013】
更にこの請求項1においてはその手摺を光らせることによって、衛生設備室内を光によって演出することができ、室内の雰囲気,美観を高めることができる。
またこの請求項1のものにおいては光源としてLEDを用いていることから、消費電力が少なくて済み、またLEDはその寿命が著しく長いために定期的に電球交換を行わなければならないといった問題も生じない。
更にLEDは小型であるためこれを光透過性材料の内部に光を投光する状態に棚板に容易に埋込状態に組み込むことができる。
【0014】
この場合において手摺全体を光透過性の樹脂材にて構成することが考えられる。しかしながらこのようにすると手摺が滑り易くなってしまう恐れが生ずる。
ここにおいて請求項2のものは、その手摺を棒状の光不透過性の木材と棒状の光透過性の樹脂材とを、光透過性の樹脂材を壁面に向け、合わせた形態で構成したもので、このようにしておけば手摺を手で握ったときに滑りを生じるのを良好に防止することができる。
ここで棚板の下面にはトイレットペーパーホルダを取り付けておくことができる(請求項3)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に本発明の実施例を参考例とともに図面に基づいて詳しく説明する。
図1(図1は参考例を示す)において、10はトイレ室内に設置された収納キャビネットであって、12は前面の扉であり、14は天板、16は背板、18はキャビネット内に上下複数段に設けられた棚板である。
【0016】
棚板18には、(B)に示しているように内部に空洞部20が設けてあり、そこに照明装置における光源としてのLED22が設置されている。この例においてLED22は後方向きで配向されている。
【0017】
棚板18は、前部が光不透過性の木材24で、また後部が光透過性であるアクリル樹脂26にて構成されており、LED22からの光がそのアクリル樹脂26で構成された部分から外部、即ち収納キャビネット10内部に照射されるようになっている。
【0018】
ここで棚板18の後端面には金属製の反射板28が設けてあり、LED22からの光はその反射板28で反射された上、キャビネット内に照射される。
【0019】
このようにしておけば、従来暗がりであった収納キャビネット10内部を明るく照らし出すことができ、従って収納キャビネット10の棚板18上に載せたトイレットペーパー30等の物品を出し入れする際や、収納キャビネット10内で物品を探したりその他所定の作業をする際にそれらの作業が行い易くなる。
【0020】
また収納キャビネット10への物品の出し入れや収納キャビネット10内での作業を目的とする場合、敢えて衛生設備室の主照明装置を点灯させて室全体を照明する必要がなく経済的であるとともに、例えば夜間就寝中に起き出して収納キャビネット10内の物品を取り出す必要が生じた場合においても、主照明装置によって眩しさを感じたり或いは眠気を覚ましてしまう不都合がない。
【0021】
また本例では照明装置の光源としてLED22を用いていることから消費電力が少なくて済み、またLED22はその寿命が著しく長いために定期的に電球交換を行わなければならないといった問題も生じない。
更にLED22は小型であるためこれを棚板18内部に容易に組み込むことができるとともに、LED22を棚板18によって内部に保護した状態とすることができる。
【0022】
また本例ではLED22を棚板18の奥部に埋設しているため、特に暗がりとなり易い収納キャビネット10の内奥部をより効果的に明るく照らし出すことができる。
【0023】
図2は他の参考例を示したもので、この例では扉12の取手32を棒状部材で構成し且つこれを湾曲状にして扉12の前面から突出する状態で設けている。
ここで取手32は、その全体が光透過性であるアクリル樹脂からなっている。
【0024】
扉12の内部には空洞部33が設けられていて、そこに照明装置における光源としてのLED22が、取手32内部に投光する状態で配設されている。この空洞部33にはまた、LED22を電源と接続するための電気コード36が収容されている。
【0025】
34は扉12の前面且つ取手32の後側に位置する部分に設けられた金属プレートであって、その前面が半艶又は艶状態に処理されている。
この例ではLED22からの光によって取手32を光らせることができ、そして取手32からの光はまた扉12の前面にも照射されて半艶又は艶状態の金属プレート34によって前方へと反射される。
【0026】
このようにしておけば、暗がりの中においても収納キャビネット10の扉12の取手32が分かり易く、従って敢えて主照明装置により衛生設備室全体を照明しなくても、暗がりの中で容易に取手32を見つけることができ、扉12の開閉作業を支障なく行うことができる。
【0027】
またこのように扉12を部分的に光らせることによって、衛生設備室の光による演出効果を高め得、衛生設備室内の雰囲気,美観を良好となすことができる。
本例においても光源としてLED22を用いていることから、LED22によりもたらされる上記効果を享受することができる。
【0028】
また取手32からの光を半艶又は艶状態とした金属プレート34にて反射するようにしているため、取手32だけでなくその周辺が明るくなり、取手32の視認性をより高めることができるとともに、金属プレート34により反射光がぼんやりとして見え、光による演出効果を高めることができる。
【0029】
図3は更に他の参考例を示したもので、この例では扉12の取手38を、長円形状の環状を成す周壁部40と底部42とを有する形態で構成し、これを扉12の前面に形成した凹所内に埋込状態で設けている。
取手38は内側に凹部44を有しており、その一部が指掛け部46((B)(ウ)参照)とされている。
【0030】
周壁部40は、表面の第一層48と奥部の第二層50との積層構造をなしており、その第一層48が金属ないし樹脂メッキからなる光不透過性材料で構成されている。また第二層50は図中右半分が第一層48と同様の光不透過性材料で、また左半分つまり指掛け部46を有する側の左半分が光透過性材料47で構成されている。
尚この光透過性材料47は色付のものとされている。また底部42は半透明とされている。
【0031】
而して扉12の空洞部33内部には照明装置における光源としてのLED22と電気コード36とが埋設され、そのLED22から、光透過性材料47から成る部分の内部に光が投光されるようになっている。
【0032】
この例では、LED22によって取手12における周壁部40の左側半分、即ち光透過性材料47で構成された部分を光らせるようにしており、而して同部分からの光は取手12の表面(前面)からは直接前方に照射されず、指を挿入すべき凹部44のみがその光によって照らされる。
【0033】
従って本例によれば、取手38から発せられた光が直接目に入るのを防止し、周辺に漏れた光によって取手38の位置を知ることができる。
また光透過性材料47は色付のものを用いており、これによってより鮮やかな色で発色させることができる。
【0034】
図4は本発明の実施例を示している。この例において56はトイレ室の壁面に設置された棚手摺で、水平な棚板58と縦の棒状の手摺60とを有している。
棚板58の下面にはトイレットペーパーホルダ61が取り付けられており、これによりトイレットペーパー62が保持されている。
【0035】
縦の棒状の手摺60は、光不透過性材料である断面半円形状の棒状の木材63と、光透過性材料である断面半円形状の樹脂材64(アクリル樹脂)とを合わせた形態を成している。そしてその樹脂材64の内部に光を投光する状態で、照明装置における光源としてのLED22が設けられている。
【0036】
一方棚板58の前端部下面には照明棒66が設けられている。
照明棒66は、その全体が光透過性材料で構成されており、そしてその内部に光を投光する状態で、光源としてのLED22が設けられている(図4(B)参照)。
本例では、LED22によって棒状の手摺60の半分、具体的には光透過性材料である樹脂材64からなる部分全体が光り、また棚板58の下面に設けた照明棒66全体が光り、それらからの光によって手摺60ないしその周辺部及び棚板58下方を明るく照らし出す。
【0037】
このような構成にしておけば、主照明装置によって室全体を照明しなくても、暗がりの中で容易に手摺60の位置を知ることができ、暗がりの中にあっても支障なく手摺60を使用できるとともに、トイレ室内を光によって演出することができ、室内の雰囲気,美観を高めることができる。
またこの手摺60においても光源としてLED22を用いていることから、LED22によりもたらされる上記効果を享受することができる。
【0038】
この場合において手摺60全体を光透過性の樹脂材64にて構成すると手摺が滑り易くなってしまう恐れが生ずるが、本例では手摺60を棒状の光不透過性の木材63と棒状の光透過性の樹脂材64とを合わせた構成としているため、手摺60を手で握ったときに滑りを生じるのを良好に防止することができる。
【0039】
更に棚板58の下面にトイレットペーパーホルダ61と併せて照明棒66を設置し、その照明棒66をLED22によって光らせるようにしているため、室全体を主照明装置により照明しなくても暗がりの中で照明棒66による局部照明によってトイレットペーパー62の位置を容易に知ることができ、これを使用することができる。
【0040】
更にまたこの例においても棚板58の下方周辺を局所照明するものであるため、暗がりの中においてトイレ室を光により演出することができ、その雰囲気,美観を高めることができるとともに、光源としてLEDを用いていることからLEDによりもたらされる上記効果を享受することができる。
【0041】
図5は他の参考例を示している。
同図において68はトイレ室に設置された便器で、70はトイレ室の床、72は側壁である。74はその側壁72の内壁面材であって((B)参照)、その下端が床70との間に隙間Sを形成する状態で配設されている。
【0042】
この内壁面材74の裏側には、側壁72下端部において且つ図6(A)に示しているようにトイレ室の周縁に沿って複数のLED22が所定ピッチで下向きに配設されており、それらLED22からの光が隙間Sを通して床70に照射されるようになっている。
【0043】
尚図6(B)に示しているように、側壁72の下端部且つ内壁面材74の裏側位置に棒状の光透過性材料からなる照明棒76を横設しておいて、その内部にLED22からの光を投光し、これにより照明棒76を光らせることによって、上記隙間Sを通じ床70を照明するようになすこともできる。
【0044】
このように本例の照明装置によれば、トイレ室を使用する際に足元部分を明るく照らし出すことができる。またトイレ室の周縁に沿って側壁72の足元部分を照明状態とすることができ、トイレ室を光によって演出でき、その雰囲気,美観を高めることができる。
更に光源としてLED22を用いていることから、LED22による上記効果を享受することができる。
【0045】
以上本発明の実施例を参考例とともに詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその主旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】参考例を示す図である。
【図2】他の参考例を示す図である。
【図3】更に他の参考例を示す図である。
【図4】本発明の実施例を示す図である。
【図5】更に他の参考例を示す図である。
【図6】図5の参考例の要部を示す図である。
【符号の説明】
【0047】
10 収納キャビネット
12 扉
18,58 棚板
22 LED
24,63 木材
26 アクリル樹脂
28 反射板
32,38 取手
34 金属プレート
40 周壁部
42 底部
44 凹部
47 光透過性材料
48 第一層
50 第二層
60 手摺
61 トイレットペーパーホルダ
64 樹脂材
66,76 照明棒
70 床
72 側壁
74 内壁面材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛生設備室としてのトイレ室の壁面に接して設置される水平な棚板から立ち上がる縦の手摺の全体若しくは一部を光透過性材料で構成するとともに、該手摺の一端側から該光透過性材料の内部に光を投光する状態にLEDを光源として前記棚板に埋込状態に設け、該LEDからの光によって該手摺の該光透過性材料からなる部分を光らせるようになしたことを特徴とする手摺の照明装置。
【請求項2】
請求項1において、前記手摺を棒状の光不透過性の木材と棒状の光透過性の樹脂材とを、該光透過性の樹脂材を前記壁面に向け、合せた形態で構成したことを特徴とする手摺の照明装置。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記棚板の下面にはトイレットペーパーホルダが取り付けてあることを特徴とする手摺の照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−46976(P2009−46976A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264588(P2008−264588)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【分割の表示】特願平11−300648の分割
【原出願日】平成11年10月22日(1999.10.22)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】