説明

手摺り部材

【課題】光触媒を使用して外表面に殺菌、抗菌、防汚、防カビ、消臭等の機能を付与し、外表面を常に清潔に保つことで、握ることによる心理的な抵抗や躊躇する気持ちをなくし、安全性確保のための目的を十分に達成することができる手摺り部材を提供する。
【解決手段】硬質や半硬質、軟質の熱可塑性合成樹脂を用いた基材層14の軸芯部に補強のための金属芯13を埋設し、前記基材層14の外面を基材層と同様の熱可塑性合成樹脂で形成された薄い被覆層15で覆い、この被覆層15は溶融させた状態の熱可塑性合成樹脂に白い粉末状の酸化チタンが混合されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、室内や室外の階段や廊下、衛生機器の周辺や浴室等の壁面等に、安全性確保のために取付ける手摺りを形成する手摺り部材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、室内や室外の階段や廊下の壁面には、階段の昇降や廊下の歩行時における転倒事故を防止するための手摺りが設置されている。
また、衛生機器の周辺や浴室等の壁面にも、用便や入浴時の転倒事故を防止するための手摺りが設置されている。
【0003】
図10に例示するように、前者の階段や廊下に設置する手摺り1としては、合成樹脂単体や芯材の表面を合成樹脂層で被覆した、断面円形や長円形の長い棒状の握り棒2を、複数のブラケット3で壁面4に固定するようにしたものや、これとは別に、アルミ等の押し出し型材等で長尺に形成された硬質の芯材を、壁面に複数のブラケットで固定し、上記芯材に適当な硬度の合成樹脂を用いて下部切り離しの円筒状等に形成された笠木を外嵌固定し、この笠木が握り部分となるようにしたものがよく用いられている。
【0004】
また、図11のように、後者の衛生機器5の周辺や浴室に設置する手摺り1は、外面を合成樹脂層で被覆した鋼管等の金属パイプを用い、この金属パイプを手摺りとして必要な形状に折り曲げ加工して手摺り部材6とし、これを壁面7に取り付ける構造になっている。
【特許文献1】特開2000−62128号公報
【特許文献2】特開2000−107275号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のような従来の手摺り1は、多数の人が直接手で握ることになるので、手の汚れや細菌、指紋等が手摺り部材の外面に付着することになり、目には見えなくても、実際には極めて不清潔な状態にある。
【0006】
また、衛生機器の周辺や浴室においては、湿度が高いため、汚れていると細菌の繁殖が激しく、また、手摺り部材の外面にカビが発生することがある。上記ように、従来の手摺り部材は、どうしても不清潔感が強いため、極力握らないようにしようという心理がはたらき、安全性を確保するための目的を十分に果たすことができないという問題がある。
【0007】
そこで、この発明の課題は、光触媒や光触媒を含む触媒組成物の光触媒効果を利用して、外表面に殺菌、抗菌、防汚、防カビ、消臭等の機能を付与し、外表面を常に清潔に保つことで、握ることに心理的な抵抗や躊躇する気持ちをなくし、安全性確保のための目的を十分に達成することができる手摺り部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のような課題を解決するため、第1の発明の手摺り部材は、硬質や半硬質、軟質の熱可塑性合成樹脂を用いた基材層の軸芯部に補強のための金属芯を埋設した手摺り部材において、前記基材層の外面を基材層と同様の熱可塑性合成樹脂で形成された薄い被覆層で覆い、この被覆層は溶融させた状態の熱可塑性合成樹脂に白い粉末状の酸化チタンが混合されていることを特徴とする。
【0009】
第2の発明の手摺り部材は、硬質の芯材と、この芯材に外嵌する合成樹脂製のハンドレールとで形成された手摺り部材において、芯材は、外面が円弧状の上壁と、この上壁の両側から垂下して対向する一対の側壁とを有し、両側壁の下端部に外面が上壁と同一の円弧状となる係合壁を設け、アルミを用いて押し出し成形によって長尺に形成され、ハンドレールは、軟質や半硬質の熱可塑性合成樹脂を用いて形成した基材層と、この基材層の外面を覆う薄い被覆層とからなり、被覆層は溶融させた状態の熱可塑性合成樹脂に白い粉末状態の酸化チタンが混合され、前記芯材に対して外嵌するよう下部が切り放された円筒状で、下部の両側切り放し縁には係合壁に対する係合片が内側に向けて突設されていることを特徴とする。
第3の発明の手摺り部材は、パイプ状の芯材の外面を基材層で覆った手摺り部材であって、前記基材層の外面を薄い被覆層で覆い、被覆層は溶融させた状態の熱可塑性合成樹脂に白い粉末状態の酸化チタンが混合されていることを特徴とする。
【0010】
上記した各請求項の発明において、手摺り部材を形成する合成樹脂としては、例えば、塩化ビニル、ABS樹脂、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリアセタール等を例示することができ、これらの合成樹脂において、軟質、半硬質、硬質を適宜選択して用い、溶融させた状態のこの合成樹脂に混合する光触媒としては、酸化チタンを用いることができ、この酸化チタンは、イルメナイト鉱石を原料とする白い粉末のパウダー状である。
【0011】
上記白い粉末状態の酸化チタンは、屋内の蛍光灯や電灯の光、屋外においては太陽光をエネルキー源として活性をおび、その結果、強い光触媒作用を持つ物質であり、この酸化チタンを混合した合成樹脂で手摺り部材を形成することにより、手摺り部材の表面に対して、殺菌、抗菌、防汚、防カビ、消臭等の機能を発揮させることができ、細菌の死骸も分解することにより、手摺り部材の表面を常に清潔に保つことになる。
【0012】
また、光触媒を含む触媒組成物の光触媒も、光触媒として、酸化チタンを用い、上記触媒組成物は、四価金属のリン酸塩、二価金属の水酸化物、酸化チタンの混合物とすることにより、光触媒機能と悪臭成分を吸着する吸着機能を備え、更に抗菌機能を併せ持つ消臭剤であり、この組成物には、さらに二酸化珪素及び/又は銀成分を含んでもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、この発明によると、手摺り部材を形成する最外層の合成樹脂層に、光触媒又は光触媒を含む触媒組成物を混合したので、光触媒が、屋内の蛍光灯や電灯の光、太陽光をエネルギー源として活性をおび、強い光触媒作用を持つことにより、手摺り部材の表面に対して、殺菌、抗菌、防汚、防カビ、消臭等の機能を発揮させることができ、細菌の死骸も分解することにより、指紋や手垢をなくし細菌を死滅させることで手摺り部材の表面を常に清潔に保つことができ、手摺り部材を握ることに心理的な抵抗や躊躇する気持ちをなくし、手摺り部材を安心して握ることができるので、安全性を確保するための手摺り部材の目的を十分に果たすことができるようになる。
【0014】
また、手摺り部材を形成する最外層の合成樹脂層に光触媒を含む触媒組成物を混合したので、手摺り部材が、生活環境の悪臭、その他の様々な悪臭成分を吸着、分解し、無臭化することになり、しかも、自然光や蛍光灯の光によって吸着機能が再生し、光のもとで抗菌作用を持ち、長期間にわたって消臭効果を持続すると共に、光触媒機能を発現維持するものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、この発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
図1乃至図3に示す第1の実施の形態は、図10で例示したような、階段や廊下等に設置する手摺りを形成するために適した手摺り部材Aとして握り棒の例を示している。
【0016】
図1に示す第1の例の握り棒11は、光触媒又は光触媒を含む触媒組成物12を混合した硬質や半硬質、軟質の熱可塑性合成樹脂を用いて円軸状に形成され、必要に応じて軸芯部に補強のための金属芯13を埋設した構造になっている。単独で使用する場合の光触媒としては、硫化物半導体、酸化物半導体、光酸化物半導体などの光半導体群より選ばれた一種であり、例えば、酸化チタンを用いることができる。
【0017】
ここで、この第1の実施の形態及び以降の各実施の形態で使用する光触媒を含む触媒組成物としては、例えば、四価金属のリン酸塩、二価金属の水酸化物、光触媒の混合物であり、四価金属が、チタン、ジルコニウム、ハフニウム及び錫からなる群より選ばれた少なくとも一種であり、二価金属は、遷移金属であり、この遷移金属としては、銅、亜鉛、鉄、コバルト及びニッケルからなる群より選ばれた少なくとも一種である。
【0018】
また、光触媒には、硫化物半導体、酸化物半導体、光照射によって酸化能を発揮する光酸化触媒などの光半導体からなる群より選ばれた一種であり、例えば、これらの内から酸化チタンを用いると共に、上記した四価金属のリン酸塩と二価金属の水酸化物との割合は、金属原子比換算で、二価金属/四価金属=0.1〜10であり、四価金属のリン酸塩と二価金属の水酸化物との総量100重量部に対する光触媒の割合は、1〜1000重量部である。この組成物には、さらに二酸化珪素及び/又は銀成分を含んでもよい。
【0019】
このような光触媒を含む触媒組成物は、ホルムアルデヒド、タバコや生ゴミ、トイレのような生活環境の悪臭、その他の様々な悪臭成分を吸着、分解し、無臭化すると共に、自然光や蛍光灯の光によって吸着機能が再生し、光のもとで抗菌作用を持ち、長期間にわたって消臭効果を持続すると共に、光触媒機能を発現するものであり、上述した光触媒を含む触媒組成物としては、武田薬品工業株式会社の商品名「セブントールN−PC」を使用することができる。
【0020】
また、上記握り棒11の形成に用いる合成樹脂としては、塩化ビニル、ABS樹脂、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリアセタール等を例示することができ、このような合成樹脂に添加する酸化チタンは、元々イルメナイト鉱石を原料とする純白な粉末であり、屋内の蛍光灯や電灯の光、屋外の太陽光をエネルギー源として活性をおび、その結果、強い光触媒作用を持つパウダー状の物質であり、この酸化チタン又は光触媒を含む触媒組成物12を混合した合成樹脂で握り棒11を形成することにより、握り棒11の表面に対して、殺菌、抗菌、防汚、防カビ、消臭等の機能を発揮させることができる。
【0021】
このような、光触媒又は光触媒を含む触媒組成物12の機能を有効に発揮させるためには、合成樹脂内の光触媒又は光触媒を含む触媒組成物12に蛍光灯や電灯の光、太陽光が照射されるように握り棒11を設置すればよく、握り棒11を形成するための合成樹脂には、透明、半透明、着色の何れのものを用いてもよい。
【0022】
また、握り棒11を形成する合成樹脂に、表面粗面化材として木粉や竹粉、石粉、麻、綿、毛糸のような短尺繊維等を、光触媒又は光触媒を含む触媒組成物12の機能を阻害しない程度量を混合し、握り棒11の表面を握ったときに滑り止めや温かみのある感触が得られるようにしてもよい。
【0023】
図2に示す第2の例の握り棒11は、第1の例で述べたものと同様の硬質や半硬質、軟質の熱可塑性合成樹脂を用いて円軸状に形成した基材層14と、この基材層14の外面を覆う薄い被覆層15とからなり、上記被覆層15が基材層14と同様の熱可塑性合成樹脂に光触媒又は光触媒を含む触媒組成物12を混合した合成樹脂で形成され、必要に応じて基材層14の軸芯部に補強のための金属芯13を埋設した構造になっている。
【0024】
この第2の例において、光触媒又は光触媒を含む触媒組成物12を混合する被覆層15の合成樹脂には、透明、半透明、着色の何れを用いてもよいが、透明もしくは半透明の合成樹脂を用いた場合、透視できる基材層14の合成樹脂の色彩や柄模様を自由に設定するようにでき、必要ならば、この被覆層15を形成する合成樹脂に、上記表面粗面化材を混合するようにしてもよい。
【0025】
図3に示す第3の例の握り棒11は、第1の例で述べたものと同様の硬質や半硬質、軟質の熱可塑性合成樹脂を用いて円軸状に形成した基材層14と、この基材層14の外面を覆う薄い合成樹脂の中間層16と、この中間層16の外面を覆う薄い被覆層15とからなり、上記被覆層15が基材層14と同様の熱可塑性合成樹脂に光触媒又は光触媒を含む触媒組成物12を混合した合成樹脂で形成され、必要に応じて基材層14の軸芯部に補強のための金属芯13を埋設した構造になっている。
【0026】
この第3の例の被覆層15は、上記第2の例と同じであるが、透明もしくは半透明の合成樹脂を用いた場合、中間層16の合成樹脂は色彩や柄模様を自由に設定することがてき、例えば、異色の合成樹脂を同時に押し出し成形して木目模様を表現するようにしてもよく、被覆層15から木目模様が目視でき、見た目が木質調の握り棒11となり、必要ならば、この被覆層15を形成する合成樹脂に、上記表面粗面化材を混合するようにしてもよい。
【0027】
図4乃至図6に示す第2の実施の形態は、階段や廊下等に設置する手摺りを形成するための手摺り部材Aが、硬質の芯材17と、この芯材17に外嵌する合成樹脂製のハンドレール(笠木)18とで形成された例である。
【0028】
この第2の実施の形態において、硬質の芯材17は、外面が円弧状の上壁19と、この上壁19の両側から垂下して対向する一対の側壁20とを有し、両側壁20の下端部に外面が上壁と同一の円弧状となる係合壁21を設けた断面形状を有し、アルミ等の材料を用いて押し出し成形によって長尺に形成されている。
【0029】
また、ハンドレール18は、第1の実施の形態で述べたものと同様の軟質や半硬質の熱可塑性合成樹脂を用い、芯材17に対して外嵌するよう下部が切り放された円筒状で、下部の両側切り放し縁には係合壁21に対する係合片22が内側に向けて突設され、更に、内周面の両側に、上壁19の端縁に係合する突条23が設けられた断面形状になっている。
【0030】
図4に示す第1の例のハンドレール18は、光触媒又は光触媒を含む触媒組成物12を混合した軟質や半硬質の熱可塑性合成樹脂を用いて形成され、該合成樹脂の条件や合成樹脂に添加した光触媒又は光触媒を含む触媒組成物12の機能及び表面粗面化材の混合については、第1の実施の形態で述べた通りであ。
【0031】
図5に示す第2の例のハンドレール18は、第1の実施の形態で述べたものと同様の軟質や半硬質の熱可塑性合成樹脂を用いて形成した基材層24と、この基材層24の外面を覆う薄い被覆層25とからなり、上記被覆層25が基材層24と同様の熱可塑性合成樹脂に光触媒又は光触媒を含む触媒組成物12を混合した合成樹脂で形成されている。
【0032】
この第2の例では、光触媒又は光触媒を含む触媒組成物12を混合する被覆層25については、第1の実施の形態の被覆層15と同様の構造と機能になっている。
図6に示す第3の例のハンドレール18は、第1の実施の形態で述べたものと同様の軟質や半硬質の熱可塑性合成樹脂を用いて形成した基材層24と、この基材層24の外面を覆う合成樹脂の中間層26と、この中間層26の外面を覆う薄い被覆層25とからなり、上記被覆層25が基材層24と同様の熱可塑性合成樹脂に光触媒又は光触媒を含む触媒組成物12を混合した合成樹脂で形成されている。
【0033】
この第3の例の被覆層25は、上記第1の実施の形態の被覆層15と同様の構造と機能になっている。
図7乃至図9に示す第3の実施の形態は、図11で例示したように、衛生機器の周辺や浴室等の壁面等に設置する手摺りを形成するために適した手摺り部材Aの例であり、基本的には、鋼管、ステンレス、アルミ、セラミック等の硬質のパイプを用いた芯材27と、この芯材27の外面を覆う円形の合成樹脂層とで形成されている。
【0034】
図7に示す第1の例の手摺り部材Aは、芯材27として用いたパイプの外面を覆う外層28が光触媒又は光触媒を含む触媒組成物12を混合した軟質や半硬質の熱可塑性合成樹脂を用いて形成されている。
【0035】
上記外層28の形成に用いる合成樹脂としては、第1の実施の形態で述べたものと同様の軟質や半硬質の熱可塑性合成樹脂を用い、この合成樹脂に光触媒又は光触媒を含む触媒組成物12を混合した外層28は、上記第1の実施の形態の被覆層15と同様の構造と機能になっている。
【0036】
図8に示す第2の例の手摺り部材Aは、芯材27の外面を覆う合成樹脂層が、第1の実施の形態で述べたものと同様の軟質や半硬質の熱可塑性合成樹脂を用いた基材層29と、この基材層29の外面を覆う薄い被覆層30とからなり、上記被覆層30が基材層29と同様の熱可塑性合成樹脂に光触媒又は光触媒を含む触媒組成物12を混合した合成樹脂で形成されている。
【0037】
この第2の例では、光触媒又は光触媒を含む触媒組成物12を混合する被覆層30が、上記第1の実施の形態の被覆層15と同様の構造と機能になっている。
図9に示す第3の例の手摺り部材Aは、芯材27の外面を覆う合成樹脂層が、第2の例と同様の基材層29と、この基材層29の外面を覆う合成樹脂の中間層31と、この中間層の外面を覆う被覆層30とからなり、上記被覆層30が基材層29と同様の熱可塑性合成樹脂に光触媒又は光触媒を含む触媒組成物12を混合した合成樹脂で形成されている。
【0038】
この第3の例の被覆層30は、上記第1の実施の形態の被覆層15と同様の構造と機能になっている。
上記第3の実施の形態において、図示とは別に、芯材27に用いるパイプの径を太くし、このパイプに対して各例で示した外層の樹脂層を薄く形成し、又はパイプに代えて木製の円軸材を採用し、同様に外層の樹脂層を薄く形成することにより手摺り部材を形成するようにしてもよい。
【0039】
上記各実施の形態において、合成樹脂からなる握り棒11やハンドレール18、外層28、中間層16、26、31、被覆層15、25、30の形成は、押し出し成形、射出成形、溶融させた合成樹脂内に金属芯13や芯材27を浸漬させることで層をつくる浸漬方法、溶融させた合成樹脂を上から塗布する塗布方法を、単用もしくは複合して採用することにより各合成樹脂層を形成することができ、光触媒又は光触媒を含む触媒組成物12は、上記した溶融状態の各合成樹脂に対して所定量を混合攪拌すればよい。
【0040】
ここで、各実施の形態において、合成樹脂に混入する光触媒又は光触媒を含む触媒組成物12の混合量は、例えば、合成樹脂に対して光触媒又は光触媒を含む触媒組成物12を3〜30%(重量)程度の範囲で選択すればよく、混合量が3%以下であると光触媒効果の発生が少なく、また30%を越えると光触媒効果の発生の割にコスト的に高くつくことになる。
【0041】
この発明の手摺り部材は、上記のような構成であり、図10で示したように、第1乃至第3の実施の形態の手摺り部材Aは、階段や通路の壁面にブラケット等の既知の取付け手段を用いて取り付けることで手摺りを形成し、また、第3の実施の形態において、芯材27に金属パイプを用いた手摺り部材Aは、必要な形状に折り曲げ加工することにより、フランジによるビス止め等の手段を用い、図11で示したように、衛生機器5の周辺や浴室の壁面に設置して手摺りとする。
【0042】
上記のような各実施の形態の手摺り部材Aは、手摺り部材Aを形成する合成樹脂全体もしくは最外層となる合成樹脂層が、光触媒又は光触媒を含む触媒組成物12を混合した合成樹脂で形成されているので、上記光触媒又は光触媒を含む触媒組成物12の光触媒が、屋内の蛍光灯や電灯の光、屋外の太陽光をエネルキー源として活性をおび、その結果、強い光触媒作用を持つことになり、手摺り部材Aの表面に対して、病原菌等の殺菌、抗菌、有機物の分解、防汚、防カビ、等の機能を発揮させることができ、しかも、合成樹脂層内に混入することにより、光触媒が減ったりなくなることがなく、上記した機能を長期にわたって維持することができる。
【0043】
従って、手の汚れや細菌、指紋等が手摺り部材Aの外面に付着しても、光触媒の光触媒作用により、汚れを分解すると共に細菌を死滅させて分解させることになり、手摺り部材Aの外面は常に清潔に保たれ、心理的に安心して握ることができるので、手摺り部材Aとしての安全性を確保するための目的を十分に果たすことができる。
【0044】
また、手摺り部材Aを形成する合成樹脂全体もしくは最外層となる合成樹脂層に光触媒を含む触媒組成物を混合することにより、手摺り部材Aが、ホルムアルデヒド、タバコや生ゴミ、トイレのような生活環境の悪臭、その他の様々な悪臭成分を吸着、分解し、無臭化することになり、しかも、自然光や蛍光灯の光によって吸着機能が再生し、光のもとで抗菌作用を持ち、長期間にわたって消臭効果を持続すると共に、光触媒機能を発現することができることになる。
【0045】
更に、光触媒の光触媒作用は、タバコのヤニの臭いの原因となる粒子成分や悪臭成分のバクテリアを分解することができ、手摺り部材Aの設置によって室内空気の清浄化が図れることになり、しかも光触媒、例えば、酸化チタンの場合は水とでも抗菌性能を発揮するので、衛生機器の周辺や浴室で手摺り部材Aを使用しても、カビや黄ばみの発生を防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
この発明は、室内や室外の階段や廊下、衛生機器の周辺や浴室等の壁面等に、安全性確保のために取付ける手摺りに応用できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1の実施の形態の手摺り部材を示す第1の例の縦断正面図
【図2】第1の実施の形態の手摺り部材を示す第2の例の縦断正面図
【図3】第1の実施の形態の手摺り部材を示す第3の例の縦断正面図
【図4】第2の実施の形態の手摺り部材を示す第1の例の縦断正面図
【図5】第2の実施の形態の手摺り部材を示す第2の例の縦断正面図
【図6】第2の実施の形態の手摺り部材を示す第3の例の縦断正面図
【図7】第3の実施の形態の手摺り部材を示す第1の例の縦断正面図
【図8】第3の実施の形態の手摺り部材を示す第2の例の縦断正面図
【図9】第3の実施の形態の手摺り部材を示す第3の例の縦断正面図
【図10】階段や廊下に設置した手摺りを示す斜視図
【図11】衛生機器の周辺に設置した手摺りを示す斜視図
【符号の説明】
【0048】
A手摺り部材
11握り棒
12光触媒又は光触媒を含む触媒組成物
13金属芯
14基材層
15被覆層
16中間層
17芯材
18ハンドレール
19上壁
20側壁
21係合壁
22係合片
23突条
24基材層
25被覆層
26中間層
27芯材
28外層
29基材層
30被覆層
31中間層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質や半硬質、軟質の熱可塑性合成樹脂を用いた基材層の軸芯部に補強のための金属芯を埋設した手摺り部材において、
前記基材層の外面を基材層と同様の熱可塑性合成樹脂で形成された薄い被覆層で覆い、この被覆層は溶融させた状態の熱可塑性合成樹脂に粉末状の酸化チタンが混合されていることを特徴とする手摺り部材。
【請求項2】
硬質の芯材と、この芯材に外嵌する合成樹脂製のハンドレールとで形成された手摺り部材において、
芯材は、外面が円弧状の上壁と、この上壁の両側から垂下して対向する一対の側壁とを有し、両側壁の下端部に外面が上壁と同一の円弧状となる係合壁を設け、アルミを用いて押し出し成形によって長尺に形成され、
ハンドレールは、軟質や半硬質の熱可塑性合成樹脂を用いて形成した基材層と、この基材層の外面を覆う薄い被覆層とからなり、被覆層は溶融させた状態の熱可塑性合成樹脂に粉末状態の酸化チタンが混合され、前記芯材に対して外嵌するよう下部が切り放された円筒状で、下部の両側切り放し縁には係合壁に対する係合片が内側に向けて突設されていることを特徴とする手摺り部材。
【請求項3】
パイプ状の芯材の外面を基材層で覆った手摺り部材であって、
前記基材層の外面を薄い被覆層で覆い、被覆層は溶融させた状態の熱可塑性合成樹脂に粉末状態の酸化チタンが混合されていることを特徴とする手摺り部材。
【請求項4】
基材層の外面を薄い合成樹脂の中間層で覆い、この中間層の外面を薄い被覆層で覆ったことを特徴とする請求項1−3の何れかの項に記載された手摺り部材。
【請求項5】
被覆層に、四価金属のリン酸塩と二価金属の水酸化物からなる触媒組成物が混合されており、四価金属は、チタン、ジルコニウム、ハフニウム及び錫からなる群より選ばれた少なくとも一種であり、二価金属は、銅、亜鉛、鉄、コバルト及びニッケルからなる群より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする請求項1−4の何れかの項に記載された手摺り部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−297912(P2007−297912A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−182702(P2007−182702)
【出願日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【分割の表示】特願2002−109811(P2002−109811)の分割
【原出願日】平成14年3月6日(2002.3.6)
【出願人】(502028898)ワイエム工業株式会社 (6)
【Fターム(参考)】