手摺装置
【課題】手の載置や把持を行う手段を単純化させ、手摺桿の操作に手首の方向転換を必要とせず、使用者の双方の手が手摺装置から離れてしまって転落する虞を解消した手摺装置を提供すること。
【解決手段】壁面Wに固着される手摺支持具1における上板部5には手載せ表面部4が被着され、手摺桿2は手摺支持具に軸着され、手摺桿が便器のような腰掛体前側上方を横切る位置と壁面前方における壁面に沿う位置とでそれぞれ係脱可能に係止される係止装置を有する。
【解決手段】壁面Wに固着される手摺支持具1における上板部5には手載せ表面部4が被着され、手摺桿2は手摺支持具に軸着され、手摺桿が便器のような腰掛体前側上方を横切る位置と壁面前方における壁面に沿う位置とでそれぞれ係脱可能に係止される係止装置を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ室や浴室における手摺装置、特にトイレ室での便座に対する着座や起立に、または浴室内での着座や起立に有用な手摺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者等、脚の弱い使用者が手による支えを加えて便座に対する着座や起立を行うためにトイレ室内に手摺を設置することはよく知られた事柄であり、最近では使用者が便座に着座しているときには、手摺桿が便器の前側上方を横切る位置に係止され、使用者が便座に着座しようとするとき、又は便座から起立して離れようとするときには手摺桿を邪魔にならない位置に移動させる事例(例えば、特許文献1参照。)も見られる。
【0003】
使用者が便座に着座しているときに、手摺桿が便器の前側上方を横切る位置に係止される手摺装置は、手摺桿が便器の前後方向の側部に位置する手摺装置に比較して、特に着座位置での使用者が手摺桿を両手で把持したり、手摺桿に寄りかかったりすることができるから、着座位置における使用者の姿勢を安定させるので、使用者が着座位置から転倒する事故を可成り防止することができることや、介助者が脱衣等の作業を容易に行えることなどで有用である。しかしながらかかる手摺装置は部品点数が多く、安価に設置することが困難であると共に、入室時や退室時に手摺が充分に使用されなかったり、縦方向の手摺と横方向の手摺との使い分けや持替えには手首を方向転換して行わなければならず、操作を無意識に行うことができなかったり、可動式手摺桿の上げ下げ操作の際、可動式手摺桿の回動を行う手と固定式手摺桿で身体を支持する手とが絡み合ってしまい、固定式手摺桿から手を離さなければ回動操作ができないような事態が生じて使用者に転倒の虞を生じたりする。またトイレ室への出入の際に手摺桿を利用することができない。したがってこれらの点について改良する余地を残している。浴室内での腰掛箇所についても同様のことが云える。
【0004】
【特許文献1】特開2004−73840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、使用者が腰掛体に着座しているときに、手摺桿が腰掛体の前側上方を横切る位置に係止される手摺装置において、手の載置や把持を行う手段を単純化させ、手の載置や把持の高さをほぼ一定させ且つ手摺桿の操作に手首の方向転換を必要とせず、使用者の双方の手が手摺装置から離れてしまって転落する虞を解消し、入室および退室の際にも有効利用が図られる手摺装置を提供することにある。なお本発明にかかる手摺装置は、腰掛便器が設置されたトイレ室や腰掛箇所が存在する浴室において使用されるものであり、腰掛体はこれら腰掛便器、腰掛箇所を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明にかかる手摺装置は、腰掛体の前後方向に沿う壁面に固着される側板部の上縁に手載せ表面部が上面に被着された上板部を、且つ下縁に下板部を、それぞれ対向して突設させて短尺断面コ字状に形成された手摺支持具と、該手摺支持具の該上板部と該下板部との間に立設された支軸と、支持側端と把持側端とを有すると共に該支持端側に近接して該支軸に水平に軸着され少なくとも水平回転可能な手摺桿と、該手摺桿が該腰掛体の前側上方を横切る位置と該壁面前方における該壁面に沿う位置とでそれぞれ係脱可能に係止される係止装置とを具備したこと主な特徴とする。
【0007】
そして手載せ表面部と手摺桿との手の移行を容易にするために、該手載せ表面部と該手摺桿との高低差を小さく形成したことを主な特徴とする。
【0008】
また手載せ表面部の一般的な態様として、前記手摺支持具の前記手載せ表面部は、円滑な平板状に形成されていることを特徴とする。
【0009】
さらに手載せ表面部に掴み易さを加えるために、前記手摺支持具の前記手載せ表面部は、平板の上方に円筒状の突出部が突設されているものであることを特徴とする。
【0010】
また手載せ表面部に掴み易さ加える他の態様として、前記手摺支持具の前記手載せ表面部は、平板の上方に球状の突出部が突設されているものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、次のような効果を奏する。
A.手摺支持具の上部に存在する手載せ表面部を、使用者の身体を支持する手段として使用することにより、手摺装置の全体の部品点数を少なくして安価に製造することができる。
B.身体の荷重を最大に支持しなくてはならない使用者の腰掛体への着座、または腰掛体からの起立の際には、壁面に固定されていて動くことのない手摺支持具における手載せ表面部に手を載置して利用することになるから、確実に体重を預けることができるので着座動作や起立動作を安定して行うことができる。
C.手摺桿と手摺支持具における手載せ表面部とはほぼ同高にされている態様では、手摺桿と手摺支持具における手載せ表面部との間において、両手を使用する場合の一方の手の把持または載置から他方の手の把持または載置への移行、片手を使用する場合の手摺桿と手摺支持具における手載せ表面部との間の移動は、ほぼ水平方向で行われるから、操作は容易且つ安全であり精神的な負担も少ない。
D.手摺桿を把持する手首の方向と手摺支持具における手載せ表面部に載置する手首の方向は同一の方向であり、使用者は手首の方向転換を伴わないですべての操作を行うことができるから、この点でも操作は容易且つ安全であり精神的な負担も少ない。
【0012】
E.典型的なトイレ室での使用例では、トイレ室内で少なくとも使用者の一方の手が手摺桿または手摺支持具の円滑表面部のいずれかを把持または載置した状態にあって身体を支持することができ、両手を離さなければならない事態を生ずることがないから安全で、使用者の転倒防止に役立つ。
F.典型的なトイレ室での使用例では、トイレ室への出入の際には、手摺桿は壁面に沿う位置に係止されているから、手摺桿を利用して歩行することができる。
G.平板の上方に円筒状突出部が突設されている手摺支持具の手載せ表面部を具備する態様では、掴み易さを加えることができると同時に、手に加えられる水平方向の応力も手載せ表面部に容易に伝達されるから、使用者の安全性をより高めることができる。
H.平板の上方に球状突出部が突設されている手摺支持具の手載せ表面部を具備する態様では、さらに掴み易さを加えることができると同時に、手に加えられる水平方向の応力も手載せ表面部に容易に伝達されるから、使用者の安全性をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態について、以下実施例において、添付図面を参照しながら具体的に説明する。
【実施例】
【0014】
本発明の実施例について添付図面を参照して説明する。
図1には、本発明に係る手摺装置をトイレ室に適用した状況が示される。図1において符号Fは床を示し、また符号Wは便器Tの前後方向に沿う一側の壁面である。手摺装置は、手摺支持具1と水平な手摺桿2を具備し、手摺桿2は実線で示されるように便器Tの前側上方を横切る位置と、二点鎖線で示されるように壁面W前方における壁面Wに沿う位置との間を水平回動可能であり、これらの両位置で係止させることができる。なお手摺支持具1は、手摺桿2が便器Tの前側上方を横切る適切な位置に配置されるように壁面W上に位置決めして壁面Wに固着される。図2は手摺桿2が便器Tを横切る状態の手摺装置を、さらに図3は手摺桿2が壁面Wに沿う状態の手摺装置を示している。本発明では、手摺桿2を便器Tの前側上方を横切る位置と、壁面W前方における壁面Wに沿う位置とでそれぞれ係脱可能に係止される係止装置については格別限定されるものではないが、かかる係止装置を含む実施例を以下説明する。
【0015】
手摺装置において手摺支持具1は、図2乃至図7に示されるように、短尺断面コ字状に形成される。即ち便器Tの前後方向に沿う壁面Wに固着される側板部3の上縁に手載せ表面部4が上面に被着された上板部5を、そして側板部3の下縁に下板部6をそれぞれ対向して突設させて形成されている。手摺支持具1の主要部は金属等の硬質材料製であるが、上面に被着する手載せ表面部4は、使用者の手が載置されるために、手触りのよい繊維補強合成樹脂等で製造されると共に角隅部も面取りが施されている。また図4乃至図7に示されるように、この実施例では、下板部6もその上面に繊維補強合成樹脂層7が被着されたものとされていて、加工性の向上に役立っている。図6および図7に示されるように、手摺支持具1の側板部3は固着ねじ8,8によって壁面Wに固着される。図4および図5に示されるように、手摺支持具1の上板部5と下板部6との間にはその中央付近に手摺桿2を軸着した支軸9が、上下から上板部5および下板部6を通してビス10,10を支軸9の支軸螺孔11,11にねじ込むことによって立設されることになる。なお上面板6を通してねじ込まれるビス10のビス頭は手載せ表面部4内に収容されてしまうから手載せ表面部4の上面には露出せず手触りを悪化させることはない。
【0016】
そして図6および図7に示されるように、手摺支持具1の下板部6上には、支軸9を中心としていずれも手摺桿2の後述する下方部19が嵌合可能であるトイレ室の壁面Wに沿う方向の前後凹溝12、およびトイレ室の壁面Wと垂直な方向に延びる左右凹溝13が凹設されると共に、トイレ室の壁面W側における前後凹溝12と左右凹溝13の間には後述する停止突起27の突起螺脚部27bを螺着するための凹螺孔14,14が凹設されている。この凹螺孔14は手摺装置をトイレ室の左右いずれの壁面Wにも支障なく設置することができるようにするために、手摺支持具1の下板部6における前後方向において左右凹溝13を中心として対称的に2箇所凹設されており、設置する壁面Wに応じてその1箇所のみが選択されて停止突起27の突起螺脚部27bが螺着される。さらにこの実施例では、後述する手摺桿2内に収容された発条部材29の先端部30が押圧接触するための支軸9を中心とする凹部弧状平面15が形成されていることを特徴とする。これらの前後凹溝12、左右凹溝13、凹螺孔14,14、凹部弧状平面15等はすべて加工が容易な下板部6における上面に被着された繊維補強合成樹脂層7に形成される。
【0017】
次に手摺桿2について説明する。手摺桿2は図8にその縦断面が示されるように、両上縁に水平フランジ16,16が突設された口字形断面を有する金属等の剛質材料製の手摺骨格17に対して、発泡ウレタン樹脂のような軟質合成樹脂製で倒C字形断面を有する軟質手摺被覆層18が水平フランジ16,16を包込むように手摺骨格17上部を被覆した断面構造を有する。手摺桿2の断面で特徴的な点は、手摺桿2の下方部19が底面20の両側から両縦面21,21が立上がる箱状断面を有していることである。手摺桿2は手摺が手摺支持具1によって支持される側の支持側端22から使用者によって把持される側の把持側端23迄延長し、支持側端22および把持側端23にはそれぞれ端部キャップ24,24が嵌着されている。水平な手摺桿2は支持側端22に近接した箇所で支軸9に水平回動可能および上下移動可能に軸着されている。即ち手摺桿2の支持側端22に近接して内部にブロック25が内蔵固定され、ブロック25には上下方向に手摺桿2の水平回動可能および上下移動可能な軸受26が取付けられている。そして軸受26を支軸9に挿通させることにより手摺桿2が支軸9に軸着されることになる。
【0018】
手摺桿2は支軸9を中心に水平回動可能にまた上下移動可能とされ、手摺桿2を持上げた状態で水平回動させ、手摺支持具1の下板部6における前後凹溝12の位置、即ち手摺桿2がトイレ室の壁面Wに沿った位置において手摺桿2を降下させれば、手摺桿2の下方部19は下板部6の前後凹溝12に嵌合して係止される。同様に手摺支持具1の下板部6における左右凹溝13の位置、即ち手摺桿2が壁面Wと垂直である便器Tの前方上方を横切る位置で手摺桿2を降下させれば、手摺桿2の下方部19は下板部6の左右凹溝13に嵌合して係止される。このように手摺桿2自体の断面形状そのものが手摺桿2の係止手段の一部を構成することになっているから、係止手段の構造を単純化することで係止手段の故障の発生を極力防止することができると共に、部品点数を少なくして安価に製造することができる。また手摺桿2の水平回動操作および前後凹溝12および左右凹溝13位置での上下動操作は、手摺桿2の操作のみで行うために、操作は簡単で使用者の負担にならず、別体の操作手段を必要としないので部品点数を少なくして安価に製造することができる。図2および図6,図7,図9に示される停止突起27は、本実施例では交換可能なように手摺桿2の縦面21に当接する外周が合成樹脂層で被覆された突起頭部27aと下板部6の凹螺孔14に螺着するための突起螺脚部27bを備えた別体の部品を螺着して形成されている。前述のように凹螺孔14は下板部6に2箇所凹設されているが、一個のみしか必要とされない停止突起27は、壁面Wに沿う位置に手摺桿2が回動された場合に手摺桿2の把持側端23が壁面Wの前方を向いた側の一方の凹螺孔14のみに部品を螺着して形成される。
【0019】
そして図7に示されるように、手摺桿2が壁面W前方における壁面Wに沿う位置において手摺桿2の下方部19が前後凹溝12に嵌合すると、支軸9より把持側端寄り(支持側端22の反対側寄り)の手摺桿2における縦面21が該停止突起27に当接し、手摺桿2を持上げた場合にも、手摺桿2がさらに水平回動して手摺桿2が壁面Wに接近することを防止する。同様に図6に示されるように、手摺桿2が便器Tの前側上方を横切る位置において手摺桿2の下方部19が左右凹溝13に嵌合すると、支軸9より支持側端22寄りの手摺桿2における縦面21が停止突起27に当接し、手摺桿2を持上げた場合にも、手摺桿2がさらに水平回動して便器Tに着座している使用者側に接近することを防止する。このように停止突起27は、手摺桿2を回動する場合に手摺桿2の嵌合すべき前後凹溝12および左右凹溝13の位置を案内するばかりでなく手摺桿2の過度の回動を防止する。下板部6に当初から固定された停止突起27を突設することも可能であるが、停止突起27を別体の部品で形成すれば、消耗したときに交換も可能であり、手摺支持具1を便器Tの左右いずれの壁面Wに設置する場合でも、下板部6に2箇所凹設されている凹螺孔14のいずれかに部品を螺着して停止突起27を形成することにより、同一構造の手摺支持具1を使用することができる。
【0020】
図4乃至図7に示されるように、手摺桿2に内蔵固定されたブロック25の把持側端23方向の支軸9に近接した箇所には、縦孔28が穿設され、内部に下方に向けて付勢する発条部材29が収容されている。そして手摺支持具1に軸着された手摺桿2における発条部材29の先端部30は前記した手摺支持具1における下板部6の凹部弧状平面15に接触して押圧する。この押圧によって手摺桿2を持上げる反力が発生する。手摺桿2の重力に対して発条部材29に調整した弾力を付与することにより、手摺桿2から手を離した状態では、手摺桿2の下方部19が前後凹溝12または左右凹溝13に確実に嵌合されると共に、これら嵌合状態から手摺桿2を持上げる場合には僅かな力で持上げることができるようになるので、虚弱な使用者でも手摺桿2の操作を容易に行うことができる。
【0021】
次に本発明の手摺装置の使用方法について説明する。この発明の手摺装置では、使用者の手が把持または載置する対象は手摺桿2および手摺支持具1上の手載せ表面部4の両者である。図10乃至図14には手摺装置を使用する典型的な例が示されている。図10に示されるように、扉Dからトイレ室に入室した使用者は、入室後直ちに壁面Wに沿う位置の手摺桿2を一方の手で把持して前進する。次いで図11に示されるように、身体を回転させながら他方の手を手摺支持具1上の手載せ表面部4に載置させ、手載せ表面部4に体重を負担させた状態で便器Tの便座に着座する。さらに図12に示されるように、一方の手で壁面Wに沿う位置にある手摺桿2を持上げて壁面Wに沿う位置における手摺桿2の係止を解除した後に使用者側に引寄せるように回動させ、便器T前方上方を横切る位置で手摺桿2を降下させてこの位置で手摺桿2を係止する。そして図13に示されるように、着座位置を調節した後に便座に着座した状態で両手や腕を手摺桿2に載置するなどして身体を支える。
【0022】
便座に着座した状態からトイレ室を退室する場合には、図12に示される状態に戻るように、便座に着座したまま他方の手を手載せ表面部4に載置させ、一方の手で手摺桿2を持上げて便器T前方上方を横切る位置での係止を解除した後に前方に回動して壁面Wに沿う位置で手摺桿2を降下させ手摺桿2を係止させる。そして体重を手載せ表面部4に載置した他方の手に負担させた状態で起立し、他方の手を手載せ表面部4から連続する手摺桿2に移動して持替え、そのまま前進してトイレ室を退出する。以上のように典型的な使用例では、トイレ室内で少なくとも使用者の一方の手が手摺桿2または手摺支持具1の手載せ表面部4のいずれかを把持または載置した状態にあって身体を支持することができ、両手を離さなければならない事態を生ずることがないから、使用者の転倒を防止することができる。またトイレ室への出入の際には、手摺桿2は壁面Wに沿う位置に係止されているから、手摺桿2を利用して歩行することができる。
【0023】
本発明では、手摺支持具1の上部に存在する手載せ表面部4を、使用者の身体を支持する手段として使用することにより、手摺装置の全体の部品点数を少なくして安価に製造することができる。また前記使用例でも明らかなように、身体の荷重を最大に支持しなくてはならない使用者の便座への着座、または便座からの起立の際には、壁面Wに固定されていて動くことのない手摺支持具1における手載せ表面部4に手を載置して利用することになるから、確実に体重を預けることができるので着座動作や起立動作を安定して行うことができる。そして手摺桿2と手摺支持具1における手載せ表面部4とはほぼ同高にされているから、手摺桿2と手摺支持具1における手載せ表面部4との間において、両手を使用する場合の一方の手の把持または載置から他方の手の把持または載置への移行、片手を使用する場合の手摺桿2と手摺支持具1における手載せ表面部4との間の移動は、ほぼ水平方向で行われるから、操作は容易且つ安全であり精神的な負担も少ない。同時に手摺桿2を把持する手首の方向と手摺支持具1における手載せ表面部4に載置する手首の方向は同一の方向であり、使用者は手首の方向転換を伴わないですべての操作を行うことが可能であるから、この点でも操作は容易且つ安全であり精神的な負担も少ない。
【0024】
次に手摺支持具1における手載せ表面部4の変形例について説明する。図14には、平板の上方に円筒状突出部31が突設されている手摺支持具1の手載せ表面部4を具備する手摺装置が示されており、その他の手摺装置の構成は前記した例と同様である。このように円筒状突出部31を突設させることによって、手載せ表面部4が掴み易くなると同時に、手に加えられる水平方向の応力が手載せ表面部4に容易に伝達されるから、使用者の安全性をより高めることができる。また図15には、平板の上方に球状突出部32が突設されている手摺支持具1の手載せ表面部4を具備する手摺装置が示されており、その他の手摺装置の構成は前記した例と同様である。このように球状突出部32を突設させることによって、さらに手載せ表面部4が掴み易くなると同時に、円筒状突出部31が突設されている場合と同様に、手に加えられる水平方向の応力が手載せ表面部4に容易に伝達されるから、使用者の安全性をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】手摺装置を設置したトイレ室の斜視図である。
【図2】手摺桿が壁面と垂直な状態の手摺装置の斜視図である。
【図3】手摺桿が壁面に沿う状態の手摺装置の斜視図である。
【図4】手摺桿が下ろされた状態の手摺装置の縦断面図である。
【図5】手摺桿が持上げられた状態の手摺装置の縦断面図である。
【図6】手摺桿が壁面と垂直な状態の手摺装置の横断面図である。
【図7】手摺桿が壁面に沿う状態の手摺装置の横断面図である。
【図8】手摺桿の縦断面図である。
【図9】停止突起の部品を示す斜視図である。
【図10】手摺装置の1番目の使用状態を示す上面図である。
【図11】手摺装置の2番目の使用状態を示す上面図である。
【図12】手摺装置の3番目の使用状態を示す上面図である。
【図13】手摺装置の4番目の使用状態を示す上面図である。
【図14】手摺支持具における手載せ表面部の変形例を示す斜視図である。
【図15】手摺支持具における手載せ表面部の他の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 手摺支持具
2 手摺桿
3 側板部
4 手載せ表面部
5 上板部
6 下板部
9 支軸
31 円筒状突出部
32 球状突出部
W 壁面
R 手摺装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ室や浴室における手摺装置、特にトイレ室での便座に対する着座や起立に、または浴室内での着座や起立に有用な手摺装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者等、脚の弱い使用者が手による支えを加えて便座に対する着座や起立を行うためにトイレ室内に手摺を設置することはよく知られた事柄であり、最近では使用者が便座に着座しているときには、手摺桿が便器の前側上方を横切る位置に係止され、使用者が便座に着座しようとするとき、又は便座から起立して離れようとするときには手摺桿を邪魔にならない位置に移動させる事例(例えば、特許文献1参照。)も見られる。
【0003】
使用者が便座に着座しているときに、手摺桿が便器の前側上方を横切る位置に係止される手摺装置は、手摺桿が便器の前後方向の側部に位置する手摺装置に比較して、特に着座位置での使用者が手摺桿を両手で把持したり、手摺桿に寄りかかったりすることができるから、着座位置における使用者の姿勢を安定させるので、使用者が着座位置から転倒する事故を可成り防止することができることや、介助者が脱衣等の作業を容易に行えることなどで有用である。しかしながらかかる手摺装置は部品点数が多く、安価に設置することが困難であると共に、入室時や退室時に手摺が充分に使用されなかったり、縦方向の手摺と横方向の手摺との使い分けや持替えには手首を方向転換して行わなければならず、操作を無意識に行うことができなかったり、可動式手摺桿の上げ下げ操作の際、可動式手摺桿の回動を行う手と固定式手摺桿で身体を支持する手とが絡み合ってしまい、固定式手摺桿から手を離さなければ回動操作ができないような事態が生じて使用者に転倒の虞を生じたりする。またトイレ室への出入の際に手摺桿を利用することができない。したがってこれらの点について改良する余地を残している。浴室内での腰掛箇所についても同様のことが云える。
【0004】
【特許文献1】特開2004−73840号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、使用者が腰掛体に着座しているときに、手摺桿が腰掛体の前側上方を横切る位置に係止される手摺装置において、手の載置や把持を行う手段を単純化させ、手の載置や把持の高さをほぼ一定させ且つ手摺桿の操作に手首の方向転換を必要とせず、使用者の双方の手が手摺装置から離れてしまって転落する虞を解消し、入室および退室の際にも有効利用が図られる手摺装置を提供することにある。なお本発明にかかる手摺装置は、腰掛便器が設置されたトイレ室や腰掛箇所が存在する浴室において使用されるものであり、腰掛体はこれら腰掛便器、腰掛箇所を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明にかかる手摺装置は、腰掛体の前後方向に沿う壁面に固着される側板部の上縁に手載せ表面部が上面に被着された上板部を、且つ下縁に下板部を、それぞれ対向して突設させて短尺断面コ字状に形成された手摺支持具と、該手摺支持具の該上板部と該下板部との間に立設された支軸と、支持側端と把持側端とを有すると共に該支持端側に近接して該支軸に水平に軸着され少なくとも水平回転可能な手摺桿と、該手摺桿が該腰掛体の前側上方を横切る位置と該壁面前方における該壁面に沿う位置とでそれぞれ係脱可能に係止される係止装置とを具備したこと主な特徴とする。
【0007】
そして手載せ表面部と手摺桿との手の移行を容易にするために、該手載せ表面部と該手摺桿との高低差を小さく形成したことを主な特徴とする。
【0008】
また手載せ表面部の一般的な態様として、前記手摺支持具の前記手載せ表面部は、円滑な平板状に形成されていることを特徴とする。
【0009】
さらに手載せ表面部に掴み易さを加えるために、前記手摺支持具の前記手載せ表面部は、平板の上方に円筒状の突出部が突設されているものであることを特徴とする。
【0010】
また手載せ表面部に掴み易さ加える他の態様として、前記手摺支持具の前記手載せ表面部は、平板の上方に球状の突出部が突設されているものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、次のような効果を奏する。
A.手摺支持具の上部に存在する手載せ表面部を、使用者の身体を支持する手段として使用することにより、手摺装置の全体の部品点数を少なくして安価に製造することができる。
B.身体の荷重を最大に支持しなくてはならない使用者の腰掛体への着座、または腰掛体からの起立の際には、壁面に固定されていて動くことのない手摺支持具における手載せ表面部に手を載置して利用することになるから、確実に体重を預けることができるので着座動作や起立動作を安定して行うことができる。
C.手摺桿と手摺支持具における手載せ表面部とはほぼ同高にされている態様では、手摺桿と手摺支持具における手載せ表面部との間において、両手を使用する場合の一方の手の把持または載置から他方の手の把持または載置への移行、片手を使用する場合の手摺桿と手摺支持具における手載せ表面部との間の移動は、ほぼ水平方向で行われるから、操作は容易且つ安全であり精神的な負担も少ない。
D.手摺桿を把持する手首の方向と手摺支持具における手載せ表面部に載置する手首の方向は同一の方向であり、使用者は手首の方向転換を伴わないですべての操作を行うことができるから、この点でも操作は容易且つ安全であり精神的な負担も少ない。
【0012】
E.典型的なトイレ室での使用例では、トイレ室内で少なくとも使用者の一方の手が手摺桿または手摺支持具の円滑表面部のいずれかを把持または載置した状態にあって身体を支持することができ、両手を離さなければならない事態を生ずることがないから安全で、使用者の転倒防止に役立つ。
F.典型的なトイレ室での使用例では、トイレ室への出入の際には、手摺桿は壁面に沿う位置に係止されているから、手摺桿を利用して歩行することができる。
G.平板の上方に円筒状突出部が突設されている手摺支持具の手載せ表面部を具備する態様では、掴み易さを加えることができると同時に、手に加えられる水平方向の応力も手載せ表面部に容易に伝達されるから、使用者の安全性をより高めることができる。
H.平板の上方に球状突出部が突設されている手摺支持具の手載せ表面部を具備する態様では、さらに掴み易さを加えることができると同時に、手に加えられる水平方向の応力も手載せ表面部に容易に伝達されるから、使用者の安全性をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態について、以下実施例において、添付図面を参照しながら具体的に説明する。
【実施例】
【0014】
本発明の実施例について添付図面を参照して説明する。
図1には、本発明に係る手摺装置をトイレ室に適用した状況が示される。図1において符号Fは床を示し、また符号Wは便器Tの前後方向に沿う一側の壁面である。手摺装置は、手摺支持具1と水平な手摺桿2を具備し、手摺桿2は実線で示されるように便器Tの前側上方を横切る位置と、二点鎖線で示されるように壁面W前方における壁面Wに沿う位置との間を水平回動可能であり、これらの両位置で係止させることができる。なお手摺支持具1は、手摺桿2が便器Tの前側上方を横切る適切な位置に配置されるように壁面W上に位置決めして壁面Wに固着される。図2は手摺桿2が便器Tを横切る状態の手摺装置を、さらに図3は手摺桿2が壁面Wに沿う状態の手摺装置を示している。本発明では、手摺桿2を便器Tの前側上方を横切る位置と、壁面W前方における壁面Wに沿う位置とでそれぞれ係脱可能に係止される係止装置については格別限定されるものではないが、かかる係止装置を含む実施例を以下説明する。
【0015】
手摺装置において手摺支持具1は、図2乃至図7に示されるように、短尺断面コ字状に形成される。即ち便器Tの前後方向に沿う壁面Wに固着される側板部3の上縁に手載せ表面部4が上面に被着された上板部5を、そして側板部3の下縁に下板部6をそれぞれ対向して突設させて形成されている。手摺支持具1の主要部は金属等の硬質材料製であるが、上面に被着する手載せ表面部4は、使用者の手が載置されるために、手触りのよい繊維補強合成樹脂等で製造されると共に角隅部も面取りが施されている。また図4乃至図7に示されるように、この実施例では、下板部6もその上面に繊維補強合成樹脂層7が被着されたものとされていて、加工性の向上に役立っている。図6および図7に示されるように、手摺支持具1の側板部3は固着ねじ8,8によって壁面Wに固着される。図4および図5に示されるように、手摺支持具1の上板部5と下板部6との間にはその中央付近に手摺桿2を軸着した支軸9が、上下から上板部5および下板部6を通してビス10,10を支軸9の支軸螺孔11,11にねじ込むことによって立設されることになる。なお上面板6を通してねじ込まれるビス10のビス頭は手載せ表面部4内に収容されてしまうから手載せ表面部4の上面には露出せず手触りを悪化させることはない。
【0016】
そして図6および図7に示されるように、手摺支持具1の下板部6上には、支軸9を中心としていずれも手摺桿2の後述する下方部19が嵌合可能であるトイレ室の壁面Wに沿う方向の前後凹溝12、およびトイレ室の壁面Wと垂直な方向に延びる左右凹溝13が凹設されると共に、トイレ室の壁面W側における前後凹溝12と左右凹溝13の間には後述する停止突起27の突起螺脚部27bを螺着するための凹螺孔14,14が凹設されている。この凹螺孔14は手摺装置をトイレ室の左右いずれの壁面Wにも支障なく設置することができるようにするために、手摺支持具1の下板部6における前後方向において左右凹溝13を中心として対称的に2箇所凹設されており、設置する壁面Wに応じてその1箇所のみが選択されて停止突起27の突起螺脚部27bが螺着される。さらにこの実施例では、後述する手摺桿2内に収容された発条部材29の先端部30が押圧接触するための支軸9を中心とする凹部弧状平面15が形成されていることを特徴とする。これらの前後凹溝12、左右凹溝13、凹螺孔14,14、凹部弧状平面15等はすべて加工が容易な下板部6における上面に被着された繊維補強合成樹脂層7に形成される。
【0017】
次に手摺桿2について説明する。手摺桿2は図8にその縦断面が示されるように、両上縁に水平フランジ16,16が突設された口字形断面を有する金属等の剛質材料製の手摺骨格17に対して、発泡ウレタン樹脂のような軟質合成樹脂製で倒C字形断面を有する軟質手摺被覆層18が水平フランジ16,16を包込むように手摺骨格17上部を被覆した断面構造を有する。手摺桿2の断面で特徴的な点は、手摺桿2の下方部19が底面20の両側から両縦面21,21が立上がる箱状断面を有していることである。手摺桿2は手摺が手摺支持具1によって支持される側の支持側端22から使用者によって把持される側の把持側端23迄延長し、支持側端22および把持側端23にはそれぞれ端部キャップ24,24が嵌着されている。水平な手摺桿2は支持側端22に近接した箇所で支軸9に水平回動可能および上下移動可能に軸着されている。即ち手摺桿2の支持側端22に近接して内部にブロック25が内蔵固定され、ブロック25には上下方向に手摺桿2の水平回動可能および上下移動可能な軸受26が取付けられている。そして軸受26を支軸9に挿通させることにより手摺桿2が支軸9に軸着されることになる。
【0018】
手摺桿2は支軸9を中心に水平回動可能にまた上下移動可能とされ、手摺桿2を持上げた状態で水平回動させ、手摺支持具1の下板部6における前後凹溝12の位置、即ち手摺桿2がトイレ室の壁面Wに沿った位置において手摺桿2を降下させれば、手摺桿2の下方部19は下板部6の前後凹溝12に嵌合して係止される。同様に手摺支持具1の下板部6における左右凹溝13の位置、即ち手摺桿2が壁面Wと垂直である便器Tの前方上方を横切る位置で手摺桿2を降下させれば、手摺桿2の下方部19は下板部6の左右凹溝13に嵌合して係止される。このように手摺桿2自体の断面形状そのものが手摺桿2の係止手段の一部を構成することになっているから、係止手段の構造を単純化することで係止手段の故障の発生を極力防止することができると共に、部品点数を少なくして安価に製造することができる。また手摺桿2の水平回動操作および前後凹溝12および左右凹溝13位置での上下動操作は、手摺桿2の操作のみで行うために、操作は簡単で使用者の負担にならず、別体の操作手段を必要としないので部品点数を少なくして安価に製造することができる。図2および図6,図7,図9に示される停止突起27は、本実施例では交換可能なように手摺桿2の縦面21に当接する外周が合成樹脂層で被覆された突起頭部27aと下板部6の凹螺孔14に螺着するための突起螺脚部27bを備えた別体の部品を螺着して形成されている。前述のように凹螺孔14は下板部6に2箇所凹設されているが、一個のみしか必要とされない停止突起27は、壁面Wに沿う位置に手摺桿2が回動された場合に手摺桿2の把持側端23が壁面Wの前方を向いた側の一方の凹螺孔14のみに部品を螺着して形成される。
【0019】
そして図7に示されるように、手摺桿2が壁面W前方における壁面Wに沿う位置において手摺桿2の下方部19が前後凹溝12に嵌合すると、支軸9より把持側端寄り(支持側端22の反対側寄り)の手摺桿2における縦面21が該停止突起27に当接し、手摺桿2を持上げた場合にも、手摺桿2がさらに水平回動して手摺桿2が壁面Wに接近することを防止する。同様に図6に示されるように、手摺桿2が便器Tの前側上方を横切る位置において手摺桿2の下方部19が左右凹溝13に嵌合すると、支軸9より支持側端22寄りの手摺桿2における縦面21が停止突起27に当接し、手摺桿2を持上げた場合にも、手摺桿2がさらに水平回動して便器Tに着座している使用者側に接近することを防止する。このように停止突起27は、手摺桿2を回動する場合に手摺桿2の嵌合すべき前後凹溝12および左右凹溝13の位置を案内するばかりでなく手摺桿2の過度の回動を防止する。下板部6に当初から固定された停止突起27を突設することも可能であるが、停止突起27を別体の部品で形成すれば、消耗したときに交換も可能であり、手摺支持具1を便器Tの左右いずれの壁面Wに設置する場合でも、下板部6に2箇所凹設されている凹螺孔14のいずれかに部品を螺着して停止突起27を形成することにより、同一構造の手摺支持具1を使用することができる。
【0020】
図4乃至図7に示されるように、手摺桿2に内蔵固定されたブロック25の把持側端23方向の支軸9に近接した箇所には、縦孔28が穿設され、内部に下方に向けて付勢する発条部材29が収容されている。そして手摺支持具1に軸着された手摺桿2における発条部材29の先端部30は前記した手摺支持具1における下板部6の凹部弧状平面15に接触して押圧する。この押圧によって手摺桿2を持上げる反力が発生する。手摺桿2の重力に対して発条部材29に調整した弾力を付与することにより、手摺桿2から手を離した状態では、手摺桿2の下方部19が前後凹溝12または左右凹溝13に確実に嵌合されると共に、これら嵌合状態から手摺桿2を持上げる場合には僅かな力で持上げることができるようになるので、虚弱な使用者でも手摺桿2の操作を容易に行うことができる。
【0021】
次に本発明の手摺装置の使用方法について説明する。この発明の手摺装置では、使用者の手が把持または載置する対象は手摺桿2および手摺支持具1上の手載せ表面部4の両者である。図10乃至図14には手摺装置を使用する典型的な例が示されている。図10に示されるように、扉Dからトイレ室に入室した使用者は、入室後直ちに壁面Wに沿う位置の手摺桿2を一方の手で把持して前進する。次いで図11に示されるように、身体を回転させながら他方の手を手摺支持具1上の手載せ表面部4に載置させ、手載せ表面部4に体重を負担させた状態で便器Tの便座に着座する。さらに図12に示されるように、一方の手で壁面Wに沿う位置にある手摺桿2を持上げて壁面Wに沿う位置における手摺桿2の係止を解除した後に使用者側に引寄せるように回動させ、便器T前方上方を横切る位置で手摺桿2を降下させてこの位置で手摺桿2を係止する。そして図13に示されるように、着座位置を調節した後に便座に着座した状態で両手や腕を手摺桿2に載置するなどして身体を支える。
【0022】
便座に着座した状態からトイレ室を退室する場合には、図12に示される状態に戻るように、便座に着座したまま他方の手を手載せ表面部4に載置させ、一方の手で手摺桿2を持上げて便器T前方上方を横切る位置での係止を解除した後に前方に回動して壁面Wに沿う位置で手摺桿2を降下させ手摺桿2を係止させる。そして体重を手載せ表面部4に載置した他方の手に負担させた状態で起立し、他方の手を手載せ表面部4から連続する手摺桿2に移動して持替え、そのまま前進してトイレ室を退出する。以上のように典型的な使用例では、トイレ室内で少なくとも使用者の一方の手が手摺桿2または手摺支持具1の手載せ表面部4のいずれかを把持または載置した状態にあって身体を支持することができ、両手を離さなければならない事態を生ずることがないから、使用者の転倒を防止することができる。またトイレ室への出入の際には、手摺桿2は壁面Wに沿う位置に係止されているから、手摺桿2を利用して歩行することができる。
【0023】
本発明では、手摺支持具1の上部に存在する手載せ表面部4を、使用者の身体を支持する手段として使用することにより、手摺装置の全体の部品点数を少なくして安価に製造することができる。また前記使用例でも明らかなように、身体の荷重を最大に支持しなくてはならない使用者の便座への着座、または便座からの起立の際には、壁面Wに固定されていて動くことのない手摺支持具1における手載せ表面部4に手を載置して利用することになるから、確実に体重を預けることができるので着座動作や起立動作を安定して行うことができる。そして手摺桿2と手摺支持具1における手載せ表面部4とはほぼ同高にされているから、手摺桿2と手摺支持具1における手載せ表面部4との間において、両手を使用する場合の一方の手の把持または載置から他方の手の把持または載置への移行、片手を使用する場合の手摺桿2と手摺支持具1における手載せ表面部4との間の移動は、ほぼ水平方向で行われるから、操作は容易且つ安全であり精神的な負担も少ない。同時に手摺桿2を把持する手首の方向と手摺支持具1における手載せ表面部4に載置する手首の方向は同一の方向であり、使用者は手首の方向転換を伴わないですべての操作を行うことが可能であるから、この点でも操作は容易且つ安全であり精神的な負担も少ない。
【0024】
次に手摺支持具1における手載せ表面部4の変形例について説明する。図14には、平板の上方に円筒状突出部31が突設されている手摺支持具1の手載せ表面部4を具備する手摺装置が示されており、その他の手摺装置の構成は前記した例と同様である。このように円筒状突出部31を突設させることによって、手載せ表面部4が掴み易くなると同時に、手に加えられる水平方向の応力が手載せ表面部4に容易に伝達されるから、使用者の安全性をより高めることができる。また図15には、平板の上方に球状突出部32が突設されている手摺支持具1の手載せ表面部4を具備する手摺装置が示されており、その他の手摺装置の構成は前記した例と同様である。このように球状突出部32を突設させることによって、さらに手載せ表面部4が掴み易くなると同時に、円筒状突出部31が突設されている場合と同様に、手に加えられる水平方向の応力が手載せ表面部4に容易に伝達されるから、使用者の安全性をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】手摺装置を設置したトイレ室の斜視図である。
【図2】手摺桿が壁面と垂直な状態の手摺装置の斜視図である。
【図3】手摺桿が壁面に沿う状態の手摺装置の斜視図である。
【図4】手摺桿が下ろされた状態の手摺装置の縦断面図である。
【図5】手摺桿が持上げられた状態の手摺装置の縦断面図である。
【図6】手摺桿が壁面と垂直な状態の手摺装置の横断面図である。
【図7】手摺桿が壁面に沿う状態の手摺装置の横断面図である。
【図8】手摺桿の縦断面図である。
【図9】停止突起の部品を示す斜視図である。
【図10】手摺装置の1番目の使用状態を示す上面図である。
【図11】手摺装置の2番目の使用状態を示す上面図である。
【図12】手摺装置の3番目の使用状態を示す上面図である。
【図13】手摺装置の4番目の使用状態を示す上面図である。
【図14】手摺支持具における手載せ表面部の変形例を示す斜視図である。
【図15】手摺支持具における手載せ表面部の他の変形例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1 手摺支持具
2 手摺桿
3 側板部
4 手載せ表面部
5 上板部
6 下板部
9 支軸
31 円筒状突出部
32 球状突出部
W 壁面
R 手摺装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腰掛体の前後方向に沿う壁面に固着される側板部の上縁に手載せ表面部が上面に被着された上板部を、且つ下縁に下板部を、それぞれ対向して突設させて短尺断面コ字状に形成された手摺支持具と、該手摺支持具の該上板部と該下板部との間に立設された支軸と、支持側端と把持側端とを有すると共に該支持端側に近接して該支軸に水平に軸着され少なくとも水平回転可能な手摺桿と、該手摺桿が該腰掛体の前側上方を横切る位置と該壁面前方における該壁面に沿う位置とでそれぞれ係脱可能に係止される係止装置とを具備することを特徴とする手摺装置。
【請求項2】
前記手載せ表面部と前記手摺桿との高低差を小さく形成したことを特徴とする請求項1記載の手摺装置。
【請求項3】
前記手摺支持具の前記手載せ表面部は、円滑な平板状に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の手摺装置。
【請求項4】
前記手摺支持具の前記手載せ表面部は、平板の上方に円筒状の突出部が突設されているものであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の手摺装置。
【請求項5】
前記手摺支持具の前記手載せ表面部は、平板の上方に球状の突出部が突設されているものであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の手摺装置。
【請求項1】
腰掛体の前後方向に沿う壁面に固着される側板部の上縁に手載せ表面部が上面に被着された上板部を、且つ下縁に下板部を、それぞれ対向して突設させて短尺断面コ字状に形成された手摺支持具と、該手摺支持具の該上板部と該下板部との間に立設された支軸と、支持側端と把持側端とを有すると共に該支持端側に近接して該支軸に水平に軸着され少なくとも水平回転可能な手摺桿と、該手摺桿が該腰掛体の前側上方を横切る位置と該壁面前方における該壁面に沿う位置とでそれぞれ係脱可能に係止される係止装置とを具備することを特徴とする手摺装置。
【請求項2】
前記手載せ表面部と前記手摺桿との高低差を小さく形成したことを特徴とする請求項1記載の手摺装置。
【請求項3】
前記手摺支持具の前記手載せ表面部は、円滑な平板状に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の手摺装置。
【請求項4】
前記手摺支持具の前記手載せ表面部は、平板の上方に円筒状の突出部が突設されているものであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の手摺装置。
【請求項5】
前記手摺支持具の前記手載せ表面部は、平板の上方に球状の突出部が突設されているものであることを特徴とする請求項1または請求項2記載の手摺装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−69582(P2008−69582A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−250281(P2006−250281)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000110479)ナカ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000110479)ナカ工業株式会社 (125)
【Fターム(参考)】
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