説明

手洗吐水装置

【課題】手洗吐水管のデザインの自由度を高く確保しつつ、手洗吐水管からの吐水開始までの時間を効果的に短くすることのできる手洗吐水装置を提供する。
【解決手段】手洗吐水装置22において、手洗吐水管26の上向きの内部空間の一部を埋込部材46によって埋めることにより、上向きの内部空間の他部を吐水口28に到る手洗水の上昇流路50として形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はトイレにおける便器の洗浄タンクの上部に手洗吐水管を設け、ボールタップからの給水を手洗吐水管に導いて先端部の吐水口から手洗鉢に吐水する手洗吐水装置に関し、特に吐水開始までの時間を短縮化するための技術手段に特徴を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
トイレの便器の洗浄タンクには、その底部に排水弁が設けられるとともに、内部にはボールタップが設けられ、便器洗浄時に排水弁が開かれて、内部に貯えられた洗浄水が便器に向けて排出されるとともに、ボールタップのタンク内給水口から給水が開始され、タンク内部に洗浄水が補給されるようになっている。
また一般に洗浄タンクにはその上部に手洗鉢が設けられて、そこに手洗吐水管が設けられ、ボールタップからのタンク内給水時にその一部が手洗吐水管へと導かれて、そこから手洗鉢に向けて吐水されるようになっている。
【0003】
この手洗吐水管を含む手洗吐水装置では、通常の水栓の吐水管からの吐水と異なって手洗吐水管からの吐水を止めると、即ち止水を行うと、通常は手洗吐水管の内部空間を埋めている水が、ボールタップのタンク内給水口を通じて洗浄タンク内へと抜けてしまい、手洗吐水管の内部空間は空の状態となる。
従って次に再びボールタップからの給水によって手洗吐水管から手洗水を出そうとすると、先ず一旦空の状態となった手洗吐水管の内部空間をボールタップからの給水で満たさないといけない。
【0004】
通常の水栓の吐水管からの吐水の場合、止水を行ったときに吐水管内部の水は流出してしまわずに吐水管内に留まっており、従ってハンドル等にて開閉弁を開操作すると直ちに吐水管から吐水が行われる。
しかるに洗浄タンクの手洗鉢に設けられた手洗吐水管の場合、先ずその内部空間を水で満たした上でなければ、吐水口からの吐水ができない。
即ち手洗吐水管に給水開始してから一定時間経った後でないと吐水が行われず、その間に一定のタイムラグが生じる。
【0005】
ところで、近年、手洗吐水装置における手洗吐水管にもデザイン性が強く求められるようになってきており、そうした中で手洗吐水管の形状(外部に現れた本体部の形状)を4角形状その他の角形状としたりすることで手洗吐水管が大型化する傾向があり、この場合、従来よりも手洗吐水管の内部空間の容積が大となって、そこに水を満たすまでに時間が長くかかってしまう。
【0006】
つまり手洗吐水管から吐水が開始されるまでの所要時間が従来よりも長くなってしまい、使用者に対し苛立ちや不快感を与えてしまう。
一方でこれを避けようとして吐水管を細くすると、そのことが吐水管のデザインの自由度を大きく制約することになってしまう。
【0007】
尚、本発明に関連する先行技術として下記特許文献1に開示されたものがある。
このものは、吐水口の直上流位置に水流の流れを変える遮水部材を設け、その遮水部材にて水流を一旦堰き止めて上方へと押し上げた後、吐水口から水流を幅広に吐水するようになしたものである。
但しこの特許文献1に開示のものは、通常の水栓の吐水装置に関するものであるのに加え、遮水部材を設けることによって吐水口からの吐水が却って遅れてしまうものであり、本発明とは異なったものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−74343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上のような事情を背景とし、手洗吐水管のデザインの自由度を高く確保しつつ、手洗吐水管からの吐水開始までの時間を効果的に短くすることのできる手洗吐水装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
而して請求項1のものは、便器の洗浄タンクの上部に手洗吐水管を設け、ボールタップからの給水を該手洗吐水管に導いて先端部の吐水口から手洗鉢に吐水する手洗吐水装置において、前記吐水口よりも低い位置の水導入口から該吐水口に到るまで延びる前記手洗吐水管の上向きの内部空間の一部を埋込部材によって埋めるか又は/及び閉鎖部材によって閉鎖空間とすることにより、前記上向きの内部空間の他部を、前記吐水口に到る手洗水の上昇流路となしてあることを特徴とする。
【0011】
請求項2のものは、請求項1において、前記埋込部材を前記手洗吐水管とは別体の部材となし、該埋込部材には外面に凸部を設けて、該凸部において該埋込部材を前記手洗吐水管に嵌合状態に取り付けてあることを特徴とする。
【0012】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記手洗吐水管が、筒状をなす下部と外部に露出する上側の本体部とを有していて、該本体部において前記上向きの内部空間の一部が前記埋込部材にて埋められ又は/及び閉鎖部材にて閉鎖されていることを特徴とする。
【0013】
請求項4のものは、請求項3において、前記埋込部材の形状が、該埋込部材の底部と前記手洗吐水管の前記下部との間に隙間を形成する形状となしてあることを特徴とする。
【0014】
請求項5のものは、請求項3において、前記手洗吐水管の前記下部と前記本体部の先端側部分とを管体にて接続し、該本体部の基端側部分において該管体を前記閉鎖部材として該管体の外側空間を前記閉鎖空間となしてあることを特徴とする。
【0015】
請求項6のものは、請求項5において、前記管体が伸縮可能なチューブであることを特徴とする。
【0016】
請求項7のものは、請求項5において、前記管体は前記手洗吐水管の前記下部から一体に延び出しており、先端部が前記本体部における前記先端側部分に嵌合状態に接続してあることを特徴とする。
【0017】
請求項8のものは、請求項3〜7何れかにおいて、前記上昇流路の勾配が最も急となるように、前記手洗吐水管の上向きの内部空間を埋め又は/及び閉鎖してあることを特徴とする。
【0018】
請求項9のものは、請求項1〜8の何れかにおいて、前記埋込部材は柔軟性を有する部材であることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0019】
以上のように本発明は、手洗吐水管の上向きの内部空間の一部を埋込部材によって埋めるか又は閉鎖部材によって閉鎖空間とし、若しくはその両方とを行うことによって、上向きの内部空間の他部を吐水口に到る手洗水の上昇流路となしたものである。
【0020】
本発明によれば、手洗吐水管の内部空間を部分的に水で埋め、満たすだけで、吐水口から手洗水を吐水させることが可能となり、従って手洗吐水管への給水開始から手洗水の吐水開始までの時間を短縮化することができる。
また手洗吐水管の内部空間の全部を水で満たす必要が無くなるので、手洗吐水管を大型化することも容易に行うことができ、手洗吐水管のデザインの自由度を高めることができる。
【0021】
本発明では、埋込部材を手洗吐水管とは別体の部材となして、その外面に凸部を設け、その凸部において埋込部材を手洗吐水管に嵌合状態に取り付けるようになしておくことができる(請求項2)。
【0022】
埋込部材を手洗吐水管の内部に埋め込んだ場合、通水時に埋込部材が手洗吐水管の内部で移動すると、埋込部材が手洗吐水管に当って不快な音を発生させる恐れが生ずる。
ここにおいて埋込部材に凸部を設けておいて、その凸部において手洗吐水管に嵌合状態に取り付けるようになした場合、その凸部を一部圧縮させるようにして埋込部材を手洗吐水管に嵌合させることが可能であり、そのようにすることで、埋込部材を手洗吐水管に対し相対移動しない状態にしっかりと固定状態となすことができる。
【0023】
またこの埋込部材を比較的寸法のばらつき易い樹脂の成形品にて構成した場合、その寸法のばらつきを上記の凸部の圧縮によって吸収することができ、埋込部材に寸法のばらつきがある場合であっても、埋込部材を手洗吐水管の内部に良好に嵌合状態に固定することが可能となる。
【0024】
通常、手洗吐水管は筒状をなす下部と、外部に露出する上側の本体部とを有する形態をなしている。
この場合、本体部において上記の上向きの内部空間の一部を埋込部材にて埋め又は/及び閉鎖部材にて閉鎖するようになしておくことができる(請求項3)。
【0025】
下部の筒状部に対し上側の本体部の方が一般に太く、大型で内部空間の容積も大であるのが通常であるから、このようにすることにより手洗吐水管の内部空間を効果的に大きく埋め又は閉鎖することができる。そしてこれにより吐水口から手洗水が吐水されるまでの時間を効果高く短縮化することができる。
【0026】
この場合において埋込部材の形状を、その底部と手洗吐水管の上記の下部との間に隙間を形成する形状となしておくことができる(請求項4)。
このようにしておけば、手洗吐水管の内部に溜まろうとする水を、その隙間を通じて良好に管外に排出することができる。
【0027】
一方請求項5に従って、手洗吐水管の上記の下部と本体部の先端側部分とを管体にて接続し、本体部の基端側部分においてその管体を上記の閉鎖部材として管体の外側空間を上記の閉鎖空間となしておくことができる(請求項5)。
この場合においても、手洗吐水管における本体部の内部に効果的に手洗水の通過しない、即ち水洗水にて満たすことを必要としない閉鎖空間を形成することができる。
【0028】
この場合において、その管体は伸縮可能なチューブにて構成しておくことができ(請求項6)、このようにすることで、手洗吐水管における筒状の下部と、本体部の先端側部分との接続作業を作業性良く良好に行うことができる。
【0029】
上記請求項5において、管体を手洗吐水管の下部から一体に延び出させ、その先端部を本体部における先端側部分に嵌合状態に接続しておくことができる(請求項7)。
【0030】
本発明では、上昇流路の勾配が最も急となるように、手洗吐水管の上向きの内部空間を埋め又は/及び閉鎖するようになしておくことが望ましい(請求項8)。
【0031】
このようにすることで、手洗吐水管からの吐水を停止した際即ち止水した際、その内部の水を良好に下方に抜くことができる。
特に、長期間手洗吐水管を使用しない場合に、その内部に水が溜まったままとなる部分の発生を無くすことができ、そこで菌が繁殖する等の問題を生じないようにすることができる。
【0032】
本発明では、上記埋込部材として例えば樹脂の薄肉ブロー成形品,ゴム弾性体その他のエラストマー,スポンジ,発泡樹脂等の、柔軟性を有する部材を用いることができる(請求項9)。
このような柔軟性のある部材を埋込部材として用いることで、成形精度をそれほど高くしなくても、容易に埋込部材を手洗吐水管の内部に嵌合させることができる利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態の手洗吐水装置を洗浄タンク等とともに示した図である。
【図2】同実施形態の手洗吐水装置を示した図である。
【図3】同実施形態の手洗吐水装置を分解して示した図である。
【図4】図2のIV−IV視断面図である。
【図5】同実施形態における埋込部材の図である。
【図6】本発明の他の実施形態の要部の図である。
【図7】本発明の更に他の実施形態の要部の図である。
【図8】本発明の更に他の実施形態の要部の図である。
【図9】比較例としての手洗吐水装置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10はトイレ内に設置された便器の洗浄タンクで底部に排水弁が設けられ、その排水弁の開弁により、内部に貯えられた洗浄水を排出口12から便器に向けて勢い良く排出する。
洗浄タンク10の内部にはまた、ボールタップ14が設けられている。
ボールタップ14は、洗浄タンク10の内部の洗浄水の水位に連動して昇降するフロート16と、給水弁(図示省略)と、フロート16及び給水弁を連繋し、フロート16の下降及び上昇に連動して給水弁を開閉させる連繋アーム18と、給水弁の開弁によりタンク内に給水を行うタンク内給水口20とを有している。
【0035】
22は手洗吐水装置で、この手洗吐水装置22は、洗浄タンク10の蓋体にて構成される手洗鉢24に設けられた手洗吐水管26と、ボールタップ14からの給水の一部を手洗吐水管26に導く蛇腹管から成る導管27とを有している。
この手洗吐水装置22は、タンク内給水口20から洗浄タンク10内への給水時に、給水の一部を手洗吐水管26に導いてそこから、詳しくは先端の吐水口28から手洗鉢24に向けて吐水させる。
手洗吐水管26からの吐水は、手洗鉢24の底部の排水口30(図2参照)から洗浄タンク10内に落下せしめられる。
【0036】
図2に示しているように、手洗吐水管26は筒状(ここでは円筒状)をなす下部32と、外部に露出する上側の本体部34とを有している。
下部32は、上端部に外方に張り出した大形の鍔状部36を有している。その鍔状部36の外周端には嵌合部38が設けられ、この嵌合部38が、本体部34の下端部に内嵌状態に嵌合している。
【0037】
下部32は雄ねじ部40を有していて、この雄ねじ部40に対し、手洗鉢24の裏面側でナット42が螺合され、このナット42の螺合により下部32が、鍔状部36とナット42とで手洗鉢24を上下両面から挟む状態に、手洗鉢24に固定されている。
【0038】
本体部34は、図4に示しているように横断面形状が4角形状をなしているとともに、先端(上端)から下方に進むにつれて横断面の形状が大形状化する形態をなしており、そして最も大形状化した下端部に対して、上記の下部32の嵌合部38が嵌入状態に接続されている。
【0039】
図9の比較例図に示しているように、従来の手洗吐水装置22Aにあっては、手洗吐水管26の内部空間の全体が手洗水の通水空間をなしており、従って吐水口28から手洗水を吐水するためには、先ず手洗吐水管26の内部空間全体に水を満たしてからでなければ、吐水口28から手洗水を吐水することができなかった。
【0040】
そこでこの実施形態では、図2に示しているように手洗吐水管26の内部、具体的には上側の本体部34の内部に、埋込部材46が埋め込んであり、吐水口28よりも低い位置の水導入口48から吐水口28に到るまで延びる、手洗吐水管26の上向きの内部空間の一部が、その埋込部材46によって埋められている。
この結果、上向きの内部空間のうち埋込部材46で埋められた空間以外の他の空間によって、吐水口28まで到る手洗水の上昇流路50が、手洗吐水管26の内部に形成されている。
【0041】
図3〜図5に、埋込部材46の形状が具体的に示してある。
尚、本実施形態では手洗吐水管26及び埋込部材46の何れもが樹脂製とされている。
具体的には、手洗吐水管26はABS樹脂にて構成され、また埋込部材46はポリプロピレン樹脂にて構成されている。
またこの埋込部材46は薄肉のブロー成形品にて構成されている。
【0042】
図示のように埋込部材46は上壁52と、下壁54と、一対の側壁56とを有する、横断面形状が概略4角形状をなす部材で、内部中空構造とされており、そしてその前端(図5(A)中右端)が前端壁58にて閉鎖され、また後端(図5(A)中左端)が開口60を一部除いて後端壁62にて閉鎖されている。
尚、開口60があっても、空気の逃げ場がないため、水が埋込部材の中に入ることはない。
尚この埋込部材46もまた、手洗吐水管26における本体部34と同様に、上端から下方に進むにつれて横断面形状が大形状化する形態をなしている。
【0043】
この埋込部材46は、下壁54に断面コ字形状で下向きに突出し、且つ長手方向に沿って連続的に延びる突条部65が設けられている。
そしてこの突条部65の下面と、上壁52の上面とに、同じく長手方向に沿って連続的に延びるリブ(凸部)64が設けられている。
一方、一対の側壁56には外向きに凸形状をなす凸曲部(凸部)66が、同じく長手方向に沿って連続的に形成されている。
【0044】
埋込部材46は、上壁52のリブ64を手洗吐水管26における本体部34の上壁68(図4参照)に圧接させ、また下壁54の、詳しくは突条部65の下面のリブ64を本体部34の下壁70の内面に、更に一対の側壁56の凸曲部66を対応する本体部34の一対の側壁72の内面にそれぞれ圧接させる状態に、本体部34の内部に内嵌状態に嵌合せしめられている。
【0045】
このとき一対のリブ64は、本体部34への上向きの押込みの圧力によって一部が圧潰変形せしめられており、同様に一対の凸曲部66がその押込みの圧力で圧縮変形せしめられており、それら圧潰,圧縮変形状態の下で、埋込部材46が本体部34の内部に組み付けられている。
【0046】
以上のようにして埋込部材46が本体部34に埋め込まれることによって、この埋込部材46の下側に、突条部65にて左右に分かれた(吐水口28まで到る)手洗水の上昇流路50が形成されている。
図に示しているようにこの実施形態では、勾配が最も急となるような上昇流路50が形成されるように、手洗吐水管26の上向きの内部空間が埋込部材46にて埋められている。
【0047】
尚、埋込部材46が一対のリブ64及び凸曲部66において本体部34に内嵌せしめられることによって、図4に示すように埋込部材46における上壁52と手洗吐水管26における本体部34の上壁68との間、及び突条部65と本体部34の下壁70との間に微小な隙間Sが生ぜしめられている。
更に、埋込部材46の一対の側壁56と本体部34の対応する一対の側壁72との間に微小な隙間Sが生ぜしめられている。
【0048】
埋込部材46にはまた、図3及び図5に示しているように、その底部76に下向きに部分的に突出した突出部78が設けられている。
そしてこの突出部78が、手洗吐水管26における下部32の上記の鍔状部36に当接せしめられている。
【0049】
埋込部材46の底部76は、この突出部78周りの部分が平面視コ字形状の凹部80をなしており、そしてこの凹部80において、埋込部材46の底部76と下部32との間に隙間Sが形成されている。
そしてこの隙間Sが形成されていることによって、手洗吐水管26からの手洗水の吐水を停止したとき、本体部34内部の水がその隙間Sを通じて良好に下部32を通じ下方へと抜け出ることができる。
【0050】
この実施形態では、洗浄タンク10内部の洗浄水が排出口12から排出されて、フロート16が内部の水位とともに下降すると、ここにおいてボールタップ14の給水弁が開いて、タンク内給水口20から洗浄タンク10内に給水が行われる。
またその一部が、蛇腹管から成る導管27を通じて手洗吐水管26へと導かれる。
【0051】
このとき、手洗水は先ず下部32の内部を埋めながら手洗吐水管26の内部を上昇し、そして埋込部材46による埋込空間の残りの空間、即ち上向きの内部空間の残りの空間にて形成される上昇流路50の内部を引続いて上昇し、そして先端部の吐水口28に到って、そこから手洗鉢24に向けて吐水される。
【0052】
一方ボールタップ14からの給水が停止すると、手洗吐水管26内部の手洗水は、タンク内給水口20を通じて洗浄タンク10内部に抜き出され、ここにおいて手洗吐水管26の内部の空間は再び空の状態となる。
このとき、手洗吐水管26内部において、埋込部材46と本体部34との間の隙間S,Sの内部の水は、埋込部材46の底部76と下部32との間の隙間Sを通じて良好に下部32を通じ下方へと抜け出ることができる。
尚この実施形態において、上記埋込部材46は中空構造のものであり、従ってこの埋込部材46は、手洗吐水管26の上向きの内部空間を部分的に閉鎖する閉鎖部材と考えることもできる。
【0053】
この実施形態では、埋込部材46を樹脂の薄肉ブロー成形品にて構成しているが、これをゴム弾性体その他のエラストマー,発泡樹脂その他の軟質部材にて構成することも可能である。
【0054】
またこの実施形態では埋込部材46を手洗吐水管26と別体に構成して、これを手洗吐水管26内部に組み込んでいるが、同種若しくは別種の埋込部材を手洗吐水管26に一体に構成するといったことも可能である。
【0055】
以上のような本実施形態によれば、手洗吐水管26の内部空間を部分的に水で埋め、満たすだけで、吐水口28から手洗水を吐水させることができ、従って手洗吐水管26への給水開始から手洗水の吐水開始までの時間を短縮化することができる。
また手洗吐水管26の内部空間の全部を水で満たす必要が無くなるので、手洗吐水管26を大型化することも容易に行うことができ、手洗吐水管26のデザインの自由度を高めることができる。
【0056】
本実施形態では、埋込部材46を手洗吐水管26とは別体の部材となして、その外面にリブ64の凸曲部66を設け、それらリブ64,凸曲部66において埋込部材46を手洗吐水管26に嵌合状態に取り付けるようになしている。
【0057】
埋込部材46を手洗吐水管26の内部に埋め込むことにより、通水時にその埋込部材46が手洗吐水管26の内部で移動すると、埋込部材46が手洗吐水管26に当って不快な音を発生させる恐れが生じるが、この実施形態では埋込部材46にリブ64,凸曲部66を設けてそれらリブ64,凸曲部66において手洗吐水管26に嵌合状態に取り付けているため、そのリブ64,凸曲部66を圧縮させるようにして埋込部材46を手洗吐水管26に嵌合させることが可能であり、そのようにすることで、埋込部材46を手洗吐水管26に対し相対移動しない状態にしっかりと固定することができる。
【0058】
またこの埋込部材46を、比較的寸法のばらつき易い樹脂の成形品にて構成しているにも拘らず、その寸法のばらつきを上記のリブ64,凸曲部66の圧縮によって吸収することができ、埋込部材46に寸法のばらつきがある場合であっても、埋込部材46を手洗吐水管26の内部に良好に嵌合状態に固定することができる。
【0059】
また本実施形態では、手洗吐水管26の大形をなす本体部34において手洗吐水管26の内部空間の一部を埋込部材46にて埋めるようになしていることから、手洗吐水管26の内部空間を効果的に大きく埋めることができ、これにより吐水口28から手洗水が吐水されるまでの時間を効果高く短縮化することができる。
【0060】
本実施形態では、上昇流路50の勾配が最も急となるように、手洗吐水管26の上向きの内部空間を埋めており、手洗吐水管26からの吐水を停止した際即ち止水した際、その内部の水を良好に下方に抜くことができる。
特に、長期間手洗吐水管26を使用しない場合に、その内部に水が溜まったままとなる部分の発生を無くすことができ、そこで菌が繁殖する等の問題を生じないようにすることができる。
【0061】
本実施形態では、上記埋込部材46として樹脂の薄肉ブロー成形品を用いており、このような柔軟性のある部材を埋込部材46として用いることで、成形精度をそれほど高くしなくても、容易に埋込部材46を手洗吐水管26の内部に嵌合させることができる。
【0062】
図6は本発明の他の実施形態を示している。
この例は、手洗吐水管26、詳しくは本体部34の内部に一対の閉鎖壁82を設けて、それら閉鎖壁82と82との間の空間を、吐水口28に到る手洗水の上昇流路50となし、そして閉鎖壁82の外側の空間を閉鎖空間となした例である。
尚、これら閉鎖壁82の外側の空間を全て埋めておけば、この場合には手洗吐水管26内部に埋込部材を手洗吐水管26と一体に構成したことになる。
【0063】
図7は本発明の更に他の実施形態を示している。
この例は、手洗吐水管26における下部32と本体部34の先端側部分34aとを、伸縮性を有するチューブ(管体)84にて接続し、本体部34の基端側部分においてチューブ84を閉鎖部材として、チューブ84の外側空間を閉鎖空間となし、そしてチューブ84の内部空間を手洗水の上昇流路50として構成した例である。
【0064】
尚チューブ84の下端部と上端部とは、それぞれ下部32と先端側部分34aとに形成した差込口86にこれを差し込んである。
チューブ84には、蛇腹部90が伸縮部として設けてあり、チューブ84は、この蛇腹部90において長手方向に伸縮可能である。
【0065】
図7(B)は、下部32を本体部34から外した状態で、蛇腹部90においてチューブ84を長手方向に伸ばした状態を示している。
図示のようにこの例では、チューブ84の上端部を先端側部分34Aの差込口86に差し込んで接続し、そして図中下端を本体部34から突き出した状態として、これを下部32の差込口86に差し込んで接続し、その後チューブ84を収縮させるようにこれを押し込んで下部32を本体部34に組み付けることができる。このようにすることで、簡単に下部32と先端側部分34aとをチューブ84にて接続状態とすることができる。
【0066】
本実施形態においても、手洗吐水管26における本体部34の内部に効果的に手洗水の通過しない、即ち水洗水にて満たすことを必要としない閉鎖空間を形成することができる。
また下部32と先端側部分34aとを接続する管体をチューブ84にて構成することで、下部32と先端側部分34aとの接続作業を作業性良く良好に行うことができる。
【0067】
図8は本発明の更に他の実施形態を示している。
この例は、下部32から管体88を一体に延び出させ、そしてその先端部88aを、本体部34の先端側部分34aに嵌合状態に接続し、そしてその管体88を閉鎖部材として、その外側に閉鎖空間を形成し、また管体88の内部に吐水口28に到る手洗水の上昇流路50を形成した例である。
【0068】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 洗浄タンク
14 ボールタップ
22 手洗吐水装置
24 手洗鉢
26 手洗吐水管
28 吐水口
34 本体部
46 埋込部材
50 上昇流路
64 リブ
65 突条部
66 凸曲部
76 底部
82 閉鎖壁
84 チューブ(管体)
88 管体
隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の洗浄タンクの上部に手洗吐水管を設け、ボールタップからの給水を該手洗吐水管に導いて先端部の吐水口から手洗鉢に吐水する手洗吐水装置において、
前記吐水口よりも低い位置の水導入口から該吐水口に到るまで延びる前記手洗吐水管の上向きの内部空間の一部を埋込部材によって埋めるか又は/及び閉鎖部材によって閉鎖空間とすることにより、前記上向きの内部空間の他部を、前記吐水口に到る手洗水の上昇流路となしてあることを特徴とする手洗吐水装置。
【請求項2】
請求項1において、前記埋込部材を前記手洗吐水管とは別体の部材となし、該埋込部材には外面に凸部を設けて、該凸部において該埋込部材を前記手洗吐水管に嵌合状態に取り付けてあることを特徴とする手洗吐水装置。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記手洗吐水管が、筒状をなす下部と外部に露出する上側の本体部とを有していて、該本体部において前記上向きの内部空間の一部が前記埋込部材にて埋められ又は/及び閉鎖部材にて閉鎖されていることを特徴とする手洗吐水装置。
【請求項4】
請求項3において、前記埋込部材の形状が、該埋込部材の底部と前記手洗吐水管の前記下部との間に隙間を形成する形状となしてあることを特徴とする手洗吐水装置。
【請求項5】
請求項3において、前記手洗吐水管の前記下部と前記本体部の先端側部分とを管体にて接続し、該本体部の基端側部分において該管体を前記閉鎖部材として該管体の外側空間を前記閉鎖空間となしてあることを特徴とする手洗吐水装置。
【請求項6】
請求項5において、前記管体が伸縮可能なチューブであることを特徴とする手洗吐水装置。
【請求項7】
請求項5において、前記管体は前記手洗吐水管の前記下部から一体に延び出しており、先端部が前記本体部における前記先端側部分に嵌合状態に接続してあることを特徴とする手洗吐水装置。
【請求項8】
請求項3〜7何れかにおいて、前記上昇流路の勾配が最も急となるように、前記手洗吐水管の上向きの内部空間を埋め又は/及び閉鎖してあることを特徴とする手洗吐水装置。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかにおいて、前記埋込部材は柔軟性を有する部材であることを特徴とする手洗吐水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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