説明

打ち抜き金型

【課題】 1つの打ち抜き金型で複数の異なる全長に対応した製品を打ち抜くことを可能とすることで、製造コストを低減させることを課題とする。
【解決手段】 ダイ44に載置された被加工部材にパンチ42が接触し、パンチ42がダイ44に形成された貫通孔50に嵌合することで、ダイ44に載置された被加工部材52が打ち抜かれる。このとき、被加工部材52は、パンチ42の打ち抜き面42Bの外形に沿って打ち抜かれる。そこで、パンチ42の打ち抜き面42Bに段差面60を形成することで、パンチ42自体のサイズを変更することなく、打ち抜き面42Bの外形を変更させることが可能となる。これにより、貫通孔50のサイズを変更する必要もなくなり、設計変更等によって製品の全長が変更する度に、新規の打ち抜き金型を用意する必要がない。したがって、製品の成形コストを低く抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスによって原反を打ち抜く打ち抜き金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンピューター等のデータ記録再生媒体として使用されている磁気テープ等の記録テープを単一のリールに巻装し、そのリールをケース内に収容している記録テープカートリッジが知られている。この記録テープの先端には、リーダーピンやリーダーテープ、リーダーブロックといったリーダー部材が設けられており、ドライブ装置側に設けられた引出手段でリーダー部材を記録テープカートリッジの開口から引き出して、このリーダー部材に固着された記録テープをドライブ装置側の巻取リールに巻装するようになっている(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、リーダー部材として用いられるリーダーテープは、通常PET等の原反シートを打ち抜き金型(プレス金型)で打ち抜くことで形成される。リーダーテープの端面の精度(切断面精度・真直性)は、リーダーテープに接合される磁気テープと同様に、通常の金属プレス品よりも高い精度が要求される。つまり、リーダーテープを形成する打ち抜き金型は、非常に高い精度が要求される。
【0004】
一方、リーダーテープの全長は、ドライブ装置との兼ね合いで決定されるため、使用するドライブ装置によって異なる。そこで、リーダーテープの長さに対応したリーダーテープを形成する打ち抜き金型を用意する必要がある。つまり、リーダーテープの全長が変更する度に、打ち抜き金型を新規に製作する必要がある。このように、リーダーテープの全長に対応させて打ち抜き金型を新規に作成することは、リーダーテープの成形コストのアップに繋がる。
【特許文献1】特開2004−342203号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、1つの打ち抜き金型で複数の異なる全長に対応した製品を打ち抜くことを可能とすることで、製品の製造コストを低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の打ち抜き金型は、貫通孔が形成されたダイと、前記貫通孔へ嵌合されて、前記ダイに載置された被加工部材を打ち抜くパンチと、を有する打ち抜き金型において、前記被加工部材に接触する前記パンチの打ち抜き面には段差面が形成され、前記貫通孔には、前記段差面に当接し段差面部分の打ち抜きを阻止するブロックが嵌合されていることを特徴としている。
【0007】
請求項1の発明では、ダイに載置された被加工部材にパンチが接触し、パンチがダイに形成された貫通孔に嵌合することで、ダイに載置された被加工部材が打ち抜かれる。
【0008】
このとき、被加工部材は、パンチの打ち抜き面の外形に沿って打ち抜かれる。そこで、パンチの打ち抜き面に段差面を形成することで、パンチ自体のサイズを変更することなく、打ち抜き面の外形を変更させることが可能となる。
【0009】
これにより、パンチ自体のサイズを変更させることがないので、貫通孔のサイズを変更する必要もなくなり、設計変更等によって製品の全長が変更する度に、新規の打ち抜き金型を用意する必要がない。したがって、製品の成形コストを低く抑えることができる。
【0010】
また、貫通孔に嵌合されたブロックによって、パンチの打ち抜き面に形成された段差面によって被加工部材が打ち抜かれるのを阻止する構成とすることで、パンチが貫通孔に嵌合された際にパンチが傾くのを防止できる。これにより、パンチの安定性を保持することができる。
【0011】
本発明の請求項2に記載の打ち抜き金型は、前記段差面の大きさを変更して、打ち抜きサイズを変更することを特徴としている。
【0012】
請求項2の発明では、パンチの打ち抜き面に形成された段差面の大きさを変更するだけで、被加工部材を打ち抜くサイズを変更できる。これにより、全長が異なる製品を成形するために、複数の打ち抜き金型を製作する必要がなく、1つの打ち抜き金型で全長が異なる製品を成形することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上記構成としたので、1つの打ち抜き金型で複数の異なる全長に対応した製品を打ち抜くことを可能となるので、製造コストを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本実施形態に係る打ち抜き金型40について説明する。ここでは、図1に示すように、例えば、磁気テープカートリッジ10(図8参照)に搭載されるリーダーテープ30を成形する打ち抜き金型40を例にとって説明する。
【0015】
図2に示すように、打ち抜き金型40は、パンチ42をホルダするパンチホルダ46と、ダイ44をホルダするダイホルダ48を有している。パンチホルダ46とダイホルダ48は、図示しないガイドポストによって位置決めされており、パンチホルダ46はダイホルダ48に対して垂直方向に移動可能とされている。
【0016】
パンチ42にはつば部42Aが設けられており、このつば部42Aはパンチホルダ46の段部46Aに図示しないボルトで固定されている。これにより、パンチホルダ46の移動に伴って、パンチ42はダイ44に対して上下方向に移動する構成となっている。
【0017】
図2及び図3(A)に示すように、ダイ44には、パンチ42が嵌合可能な貫通孔50が形成されている。これにより、パンチ42が下降すると、ダイ44の貫通孔50に嵌合されるようになっている。なお、図3以降では、パンチ42のつば部42Aの図示は省略する。
【0018】
図3(B)に示すように、ダイ44のパンチ42に対向する面には、被加工部材52(シート状のPET)が載置される。そして、パンチ42が下降して、ダイ44に形成された貫通孔50に嵌合すると、パンチ42の打ち抜き面42Bの外形形状に沿ってせん断力が作用して、被加工部材52が打ち抜かれる。
【0019】
パンチ42の打ち抜き面42Bは、後述するリーダーテープ30と同形状となっている。すなわち、打ち抜き面42Bの長手方向の一方の端部は、リーダーテープ30の張出部34に対応する形状の突出部58が形成されている。また、パンチ42の一方の端部には、リーダーテープ30の孔部32を形成するためのパンチ53が嵌合能な孔部56が設けられている。このような形状のパンチ42とダイ44によって被加工部材52が打ち抜かれることで、図に示すような形状のリーダーテープ30が形成される。
【0020】
ここで、設計変更等により、リーダーテープ30の全長が変更された場合について説明する。
【0021】
例えば、図3(B)に示すように、全長Lのリーダーテープ30を形成する場合、長手方向の寸法がLのパンチ42が使用される。そして、このパンチ42を用いて、図の点線に示す、全長M(ただし、L>M)のリーダーテープ76を形成する場合、図4に示すように、パンチ42の打ち抜き面42Bの他方の端部(突出部58が形成された側と反対側の端部)に、長手方向のサイズが(L−M)の段差面60を形成する。
【0022】
一方、ダイ44に形成された貫通孔50は、パンチ42の外形と同じ形状とされており、一方の端部はパンチ42の突出部58に対応した形状とされている。また、他方の端部近傍には、貫通孔50を間において裏面に、略長方形状の凹部62が形成されている。
【0023】
凹部62には、ブロック64のつば部材66が嵌合されるようになっている。ブロック64は、つば部材66と、つば部材66の略中央部分から延設する凸部68とで構成されており、一方向から見て略T字状とされている。つば部材66にはネジ穴70が形成されている。このネジ穴70に挿通したネジ72を、凹部62に形成されたタップ74に羅合させることで、図5に示すように、ブロック64はダイ44の裏側から取り付けられるようになっている。
【0024】
ブロック64をダイ44の裏面から取り付けたとき、ブロック64の凸部68はダイ44の貫通孔50に嵌合される。貫通孔50に嵌合された凸部68の頂面68Aは、ダイ44の表面44Aとほぼ同じ高さになるように形成されている。また、頂面68Aの角部68Bは、段差面60の隅部60Bが当接するようになっている。これにより、ダイ44の貫通孔50にパンチ42が嵌合されたとき、パンチ42の段差面60はブロック64の凸部68の頂面68Aによって支持され、隅部60Bと角部68Bとの間でせん断力を発生させて、全長Mのリーダーテープ76が打ち抜かれる。
【0025】
なお、本実施形態では、段差面60の支持面60Aの面積とほぼ同じ大きさの面積の凸部68を有するブロック64を貫通孔50に嵌合させる構成としたが、必ずしも凸部68の頂面68Aを段差面60の支持面60Aの面積とほぼ同じ面積にする必要はなく、凸部68の角部68Bと段差面60の隅部60Bを当接させれば、支持面60Aのサイズは特に限定されない。
【0026】
また、パンチ42の打ち抜き面42Bに段差面60を形成し、全長Mのリーダーテープ76を形成した後に、このパンチ42を用いて全長Lのリーダーテープ30を形成する場合は、図7に示すように、打ち抜き面42Bを段差面60の支持面60Aと同一高さになるように研削する。そして、ダイ44の貫通孔50に嵌合されたブロック64(図5参照)を取り外し、パンチ42を貫通孔50に嵌合させればよい。このとき、パンチ42を下降させる距離(ストローク)を、全長Mのリーダーテープ76を形成した場合よりも研削した分だけ大きくする必要がある。
【0027】
このように、設計変更等により、求められるリーダーテープの全長が変化しても、段差面60を形成したり、段差面60の支持面60Aに合わせて打ち抜き面42Bを研削するだけで、全長の異なるリーダーテープを形成することが可能となる。
【0028】
次に、本発明の第1の実施形態の作用について説明する。
【0029】
ダイ44に載置された被加工部材52にパンチ42が接触し、このパンチ42が貫通孔50に嵌合することで、記録テープTの端部に取り付けられるリーダーテープ30が形成される。
【0030】
このとき、リーダーテープ30は、パンチ42の打ち抜き面42Bの外形に沿って打ち抜かれることにより形成される。そこで、パンチ42の打ち抜き面42Bに段差面60を形成することで、パンチ42自体のサイズを変更することなく、打ち抜き面42Bの外形を変更させることが可能となる。
【0031】
これにより、パンチ42自体のサイズを変更させることがないので、貫通孔50のサイズを変更する必要もなくなり、設計変更等によってリーダーテープ30の全長が変更する度に、新規の打ち抜き金型を用意する必要がない。したがって、リーダーテープ30のコストを低く抑えることができる。
【0032】
また、ブロック64によって段差面60を支持する構成とすることで、パンチ42が貫通孔50に嵌合された際に、パンチ42が傾くのを防止できる。これにより、パンチ42の安定性を保持することができる。
【0033】
以上のような構成の打ち抜き金型40で成形されたリーダーテープ30が搭載された記録テープカートリッジ10について、図8を用いて簡単に説明する。なお、説明の便宜上、記録テープを磁気テープTとし、記録テープカートリッジ10を磁気テープカートリッジ10とする。また、図において、磁気テープカートリッジ10のドライブ装置への装填方向を矢印Aで示し、それを磁気テープカートリッジ10の前方向(前側)とする。そして、矢印Aと直交する矢印B方向を右方向(右側)とする。
【0034】
磁気テープカートリッジ10は、略矩形箱状のケース12を有している。ケース12の内部には、リール20が回転可能に収容されている。このリール20は、軸心部を構成する有底円筒状のリールハブ22と、その上端部に設けられる上フランジ24とが一体に成形され、下フランジ26がリールハブ22の下端部に超音波溶着されて構成されている。そして、そのリールハブ22の外周面に、情報記録再生媒体としての磁気テープTが巻回され、上フランジ24及び下フランジ26によって、その巻回された磁気テープTの幅方向の端部が保持されている。
【0035】
また、ケース12の壁12Aには、リール20に巻装された磁気テープTを引き出すための開口18が形成されており、この開口18から引き出される磁気テープTの自由端部には、プラスチック製のリーダーテープ30が、接続用テープとしてのスプライステープ28によって取り付けられている。
【0036】
リーダーテープ30は、ドライブ装置の引出部材(図示省略)が磁気テープTを引き出すために係合する被引出部材であり、その先端近傍には引出部材が係合する孔部32が穿設されている。そして、その孔部32の後端よりも若干後方寄りの上下両サイドには、それぞれ上下方向に向かって張り出す張出部34が形成されている。この張出部34が、開口18近傍の上ケース14の内面及び下ケース16の内面にそれぞれ形成された図示しない収納凹部に収納(挿入)されることにより、リーダーテープ30がケース12内において、壁12Bに沿って配置(保持)される構成である。
【0037】
なお、本実施形態では、記録テープカートリッジ10に搭載されるリーダーテープ30を打ち抜く打ち抜き金型40を例にとって説明したが、特にリーダーテープ30の打ち抜き金型40に限定されるものではなく、原反から製品を打ち抜く打ち抜き金型であれば、本発明を適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】打ち抜き金型の概略斜視図である。
【図2】打ち抜き金型の概略側面図である。
【図3】全長Lのリーダーテープの打ち抜き金型の概略斜視図であり、(A)打ち抜く前の状態を示す図であり、(B)打ち抜いた状態を示す図である。
【図4】全長Mのリーダーテープの打ち抜き金型の概略分解斜視図である。
【図5】全長Mのリーダーテープの打ち抜き金型の概略斜視図である。
【図6】全長Mのリーダーテープの打ち抜き金型の概略断面図であり、(A)打ち抜く前の状態を示す図であり、(B)打ち抜いた状態を示す図である。
【図7】全長Lのリーダーテープの打ち抜き金型の概略断面図であり、(A)打ち抜く前の状態を示す図であり、(B)打ち抜いた状態を示す図である。
【図8】打ち抜き金型で成形されたリーダーテープが搭載された磁気テープカートリッジの概略斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
10 記録テープカートリッジ
30 リーダーテープ
40 打ち抜き金型
42 パンチ
44 ダイ
50 貫通孔
52 被加工部材
60 段差面
64 ブロック
76 リーダーテープ
T 磁気テープ(記録テープ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔が形成されたダイと、前記貫通孔へ嵌合されて、前記ダイに載置された被加工部材を打ち抜くパンチと、を有する打ち抜き金型において、
前記被加工部材に接触する前記パンチの打ち抜き面には段差面が形成され、前記貫通孔には、前記段差面に当接し段差面部分の打ち抜きを阻止するブロックが嵌合されていることを特徴とする打ち抜き金型。
【請求項2】
前記段差面の大きさを変更して、打ち抜きサイズを変更することを特徴とする請求項1に記載の打ち抜き金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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