説明

打撃貫入試験装置

【課題】ロッドを打撃して地中に貫入し、地盤強度を調査する打撃貫入試験装置の提供。
【解決手段】本発明は、貫入ロッド2がハンマ44による打撃を受ける際に発生するハンマ44のリバウンドを検出するリバウンド検出センサ50を設ける一方、リバウンド検出信号により無端チェーン35の移動速度を遅くするように構成している。そのため、地盤の強度が大きくて、ハンマ44のリバウンドが生じると、これがリバウンド検出センサ50により検出される。このリバウンド検出により、無端チェーン35の移動速度が遅くなり、係止部材37とハンマ44に取付けられた爪45に係合するタイミングが遅らされる。その間に、ハンマ44のリバウンドが終了し、係止部材37が爪45に係合する際には、リバウンドによる爪45の落下動作はなく、係止部材37は衝撃を加えることなく爪45と係合することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端に貫入コーンを持つ貫入ロッドを打撃して地中に貫入し、地盤強度を調査する打撃貫入試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、打撃貫入試験装置としては、特許文献1に開示された自動貫入試験機が知られている。この自動貫入試験機は、立設されたガイドロッドに沿って移動自在なハンマと、このハンマの下方に配置され、ハンマによる打撃で地中に貫入される貫入ロッドと、ハンマの移動方向と平行に上下方向に回動できる無端帯のチェーンとを備えている。前記ハンマには、拡開可能に設けられた係止部が設けられており、また前記チェーンには等間隔で3個の上昇具が配置されている。前記係止部の一端は上昇具の移動路に位置しており、チェーンの上下方向の循環送りにともなって移動する上昇具に係止されることで、ハンマが上昇するように構成されている。また、前記係止部の移動路上には解除部材が設けられており、前述のように上昇する係止部に当接してこれを回動させて上昇具との係合を解除し、ハンマが自重で落下するように構成されている。
【0003】
【特許文献1】実公平6−49611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の自動貫入試験機においては、ハンマは貫入ロッドに打撃力を与える際に、地盤の強度が大きいと、その衝撃によるリバウンドが大きなものとなっている。そのため、リバウンド時のハンマの落下速度も大きくなり、上昇具がハンマ係止具に係合する際に、大きな衝撃となって上昇具または係止具のいずれかが破損するばかりか、係止具を循環送りする駆動源にも衝撃が加わり、これを破損する等の問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題に鑑みて創成されたものであり、昇降可能に案内されたハンマと、このハンマによる打撃を受けて地中に貫入する貫入ロッドと、前記ハンマに後退可能に設けられた爪と、前記爪と係合可能な位置を移動するように無端循環移動部材に連結された係止部材と、前記爪の移動路上に設けられてこれを後退させる解除部材とを備えた打撃貫入試験装置であって、前記貫入ロッドを打撃する際のハンマのリバウンドを検出するリバウンド検出センサを設ける一方、このリバウンド検出センサのリバウンド検出により無端循環移動部材の移動速度を制御するように構成したことを特徴とする。
【0006】
なお、前記リバウンド検出センサがハンマの停止を検出すると、無端循環移動部材の移動速度を復帰させるようにしてもよい。また、前記無端循環移動部材は、ハンマが貫入ロッドを打撃する間に係止部材を爪と係合する直前位置に達するように循環送りされる構成であってもよい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の打撃貫入試験装置によれば、ハンマが貫入ロッドを打撃する際に、地盤の強度が大きいと、ハンマのリバウンドが大きくなり、これがリバウンド検出センサにより検出される。このリバウンド検出センサのリバウンド検出により、無端循環移動部材の移動速度が制御され、無端循環部材に固定された係止部材とハンマと一体の爪との係合タイミングが遅れる。この間に、ハンマのリバウンドが収束し、係止部材がハンマと一体の爪に係合する際には、爪は停止状態にある。そのため、係合部材は衝撃を受けることなく爪と係合し、ハンマを円滑に上昇させることができる。
【0008】
また、前記リバウンド検出センサがハンマの停止を検出すると、無端循環移動部材の移動速度を復帰させるようにしているため、次回のハンマによる打撃をほぼ同一サイクルタイムで行うことができる。さらに、前記無端循環移動部材はハンマが貫入ロッドを打撃する間に係止部材を爪と係合する直前位置に達するように循環送りされるため、常に同じタイミングでハンマを上昇させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1および
図2において、1は打撃貫入試験装置であり、ベースユニット10と、これに搭載さ
れた打撃ユニット20とから構成されている。前記ベースユニット10は、基台10
aに立設された第1支柱11を有し、この第1支柱11には昇降台12が昇降自在
に案内されている。この昇降台12には、第1支柱11の背面側に位置してスプロケ
ット13が回転可能に設けられており、このスプロケット13は第1支柱11の背面
に鉛直方向に直線的に延びるように固定されたチェーン部材11aに噛合している。
また、このスプロケット13はパウダクラッチ(図示せず)とワンウエイクラッチ
(図示せず)を内蔵したクラッチ機構(図示せず)を介してユニット昇降モータ14
に連結されており、このユニット昇降モータ14の駆動を受けて回転できるように構
成されている。前記ワンウエイクラッチ(図示せず)は、昇降台12を上昇させる方向にスプロケット13を回転させるようユニット昇降モータ14が駆動(以下、この駆動を正駆動という)する時、このユニット昇降モータ14の駆動をスプロケット13に伝達し、ユニット昇降モータ14がこれとは逆に駆動(以下、この駆動を逆駆動という)する時には空転するようになっている。また、前記パウダクラッチ(図示せず)は、封入された磁性パウダを励磁することにより、この励磁電圧に応じた回転抵抗を安定的に発生することのできるクラッチである。このパウダクラッチ(図示せず)は、ユニット昇降用モータ14の駆動軸とスプロケット13側の駆動軸との間に介在し、ユニット昇降用モータ14からスプロケット13側へ伝達されるトルクを制御するように構成されている。なお、ユニット昇降モータ14は、駆動停止時に駆動軸を固定するロック機構を備えているため、ユニット昇降モータ14停止時に昇降台12の位置が保持される。
【0010】
前記打撃ユニット20は、エレベータユニット30と、ハンマユニット40とから構成されている。前記エレベータユニット30は、前記昇降台12上に着脱可能に固定されたテーブル31を有し、このテーブル31には第2支柱32が立設されている。この第2支柱32はその長手方向にわたって前面側を開口した空洞部32aを有しており、この空洞部32aの上部には従動スプロケット33を持つ従動スプロケット軸33aが配置されている。また、前記空洞部32aの下部には、駆動スプロケット34を持つ駆動スプロケット軸34aが配置されており、これら従、駆動スプロケット33,34には無端循環移動部材の一例の無端チェーン35が巻き掛けられ噛合している。また、前記駆動スプロケット軸34aにはテーブル31に設けられたハンマ操作モータ36の出力軸(図示せず)が連結されており、従、駆動スプロケット33,34に巻回された無端チェーン35が循環送りされるように構成されている。さらに、前記無端チェーン35には、その両側に位置して係止部材37が一体に固定されており、これら係止部材37が後記する爪45に係合してこれを上昇させるように構成されている。
【0011】
また、前記第2支柱32の空洞部32aには無端チェーン35の移動路に近接する位置でしかも前記爪45の移動路上に解除部材38が配置されている。この解除部材38は、係止部材37の上昇にともなって上昇する爪45を後退する方向に回動させ、係止部材37と爪45との係合を解除するように構成されている。
【0012】
一方、前記ハンマユニット40は前記テーブル31に軸受台40aを介して挿通自在でかつ昇降台12を貫通するように取付けられたガイドスリーブ41を有し、このガイドスリーブ41の上端にはノッキングヘッド42が固定されている。このノッキングヘッド42の下面には穴部42aが設けられており、この穴部42aには貫入ロッド2の上端に設けられたおねじ部2aが位置してしかも貫入ロッド2の段部がノッキングヘッド42の下面に当接するように構成されている。また、前記貫入ロッド2の下端にはめねじ部(図示せず)が形成されており、このねじ部には同じ構造の貫入ロッド(図示せず)のおねじ部が螺合して貫入ロッド2が継ぎ足し可能に構成されている。なお、最下端の貫入ロッド2には貫入コーン2bが連結されることから、めねじ部に半球状の突部(図示せず)が連結されており、貫入コーン2bに設けられた半球状の穴部(図示せず)に係合して貫入試験終了時に貫入ロッド2が地中に貫入された貫入コーン2bから容易に離脱できるように構成されている。
【0013】
前記ハンマユニット40は前記ノッキングヘッド42を挟むように立設された一対のガイドレール43,43を有し、このガイドレール43,43にはハンマ44が前記ノッキングヘッド42の上方位置で昇降自在に案内されている。このハンマ44は、前記ガイドレール43に案内される上部ブロック44aと、これを緩衝機構(図示せず)により保持する下部ブロック44bと、下部ブロック44bに固定された打撃ブロック44cとからなっている。このハンマ44の質量は30kgあり、ノッキングヘッド42を打撃する時に貫入ロッド2に十分な打撃力を伝達できるように構成されている。また、前記上部ブロック44aには爪45が回動して後退自在に軸支されており、この爪45の先端は前記無端チェーンが通過できる間隙を持って二分されている。さらに、この爪45はプランジャ46により押圧されて前記係止部材37の移動路上に突出しており、係止部材37に係止されて上昇可能に構成されている。しかも、この爪45は上昇途中で解除部材38に当接して回動し、係止部材37との係合が解除されてハンマ44をその自重で落下させるように構成されている。
【0014】
前記ユニット昇降モータ14は操作部(図示せず)から上昇指令信号が出力される間正駆動し、昇降台12が上昇する方向にスプロケット13を低速度で回転させるように構成されている。また、前記ユニット昇降モータ14は操作部から下降指令信号が出力される間逆駆動し、昇降台12が下降する方向にスプロケット13を低速度で回転させてスプロケット13をフリー状態とするように構成されている。一方、前記ハンマ操作モータ36はハンマ上昇指令信号が出力される間低速度でしかも係止部材37が上昇する方向に回転するように構成されている。また、前記ハンマ操作モータ36はハンマ下降指令信号が出力される間低速度で回転し、係止部材37に係合する爪45を下降させるように構成されている。さらに、前記ハンマ操作モータ36はパルスエンコーダ(図示せず)を内蔵しており、ハンマ操作モータ36の位置を原点位置として記憶できるように構成されている。しかも、これらモータ14,36は操作部から貫入試験開始指令信号により駆動されるように構成されており、ユニット昇降モータ14は逆駆動してスプロケット13をフリー状態として、昇降台12の自重が貫入ロッド2に加わるように構成されている。また、前記ハンマ操作モータ36はハンマ44を上昇させる方向に回転した後、ハンマ44がノッキングヘッド42を打撃するまでの間に係止部材37をハンマ44に係止された爪45の下方に位置させる速度で回転するように構成されている。なお、前記ハンマ操作モータ36はサーボモータであってもよい。
【0015】
次に、本発明の要部について説明する。前記第2支柱32にはハンマ44の上部ブロック44aの移動路に近接してリバウンド検出センサ50が取付けられており、ハンマ44がノッキングヘッド42に当接する間オン信号を出力する一方で、ハンマ44がノッキングヘッド42から離れるとオフ信号を出力するように構成されている。また、このリバウンド検出センサ50の検出信号はハンマ操作モータ36を制御するように構成されており、リバウンド検出センサ50がオン信号を検出してすぐにオフ信号を検出すると、その速度を減速するように構成されている。さらに、このハンマ操作モータ36はオン信号が所定時間継続すると、その速度を復帰させて無端チェーン35を通常速度で上昇させるように構成されている。
【0016】
上記打撃貫入試験装置1において、まずユニット昇降モータ14に手動操作により
上昇指令信号を与えてこれを正駆動して昇降台12を所定の位置まで上昇させる。次に、ハンマ操作モータ36に手動操作によりハンマ上昇指令信号を与えてこれを駆動して、無端チェーン35に循環動作を与えて係止部材37を上昇させる。これにともない、係止部材37がハンマ44の爪45に当接し、ハンマ44が係止部材37と一体に上昇し、爪45が解除部材38に当接しない位置で停止する。続いて、下端に貫入コーン2bが取付けられた貫入ロッド2が地表に立てられ、その上部がガイドスリーブ41に挿通されてノッキングヘッド42を押し上げながらその穴部に挿入される。この状態で、操作部から手動操作により下降指令信号が与えられると、スプロケットのロック状態がわずかに緩和され、パウダクラッチも作動して昇降台12が自重でゆっくりと下降する。ガイドスリーブ41が、貫入ロッド2により完全に押し上げられるまで昇降台を下降させる。続いて手動動作によりハンマ操作モータ36にハンマ下降指令信号を与えて打撃ブロック44cとノッキングヘッド42が接触する位置まで下降させ、その位置で停止させる。この時のハンマ操作モータ36の位置が原点位置として記憶される。
【0017】
この状態で、操作部から貫入試験開始指令信号が出力されると、ユニット昇降モータ14が正駆動し、昇降台12が下降する方向にスプロケット13を回転させる。この時、昇降台12はワンウエイクラッチの作用で自由落下状態となり、昇降台12の自重が貫入ロッド2にかかる。同時に、ハンマ操作モータ36も回転し、無端チェーン35が係止部材37を上昇させる方向に循環動作する。そのため、図3に示すように係止部材37の上昇とともにこれに係合する爪45が上昇し、同時にハンマ44がガイドレール43に案内されて上昇する。このハンマ44が上昇して爪45が解除部材38に当接すると、図4に示すように解除部材38が爪45を回動するので、係止部材37と爪45とが離脱し、ハンマ44はその自重でガイドレール43に沿って落下し、ノッキングヘッド42を打撃する。このハンマ44の打撃力が貫入ロッド2に伝達され、貫入ロッド2とともにその先端の貫入コーン2bが地中に貫入される。この作業が繰り返し行われ、所定深さ毎の打撃回数が計測されて地盤の強度が算出される。
【0018】
この間、ハンマ44が上昇する時にはノッキングヘッド42から離脱するので、リバウンド検出センサ50はオフ信号を出力し、ハンマ44が落下してノッキングヘッド42を打撃する時には、リバウンド検出センサ50はオン信号を出力する。この時、地盤が硬いと、ハンマ44の打撃の際のリバウンドが大きくなり、図5に示すようにリバウンド検出センサ50はオン信号を出力してからすぐにオフ信号を出力する。これがリバウンドの検出と判断され、ハンマ操作モータ36が減速され、無端チェーン35の循環送りが遅くなる。そのため、係止部材37の上昇速度が遅くなり、爪45との係合タイミングが遅れる。この間に、ハンマ44のリバウンドが収束するので、係止部材37が爪45と係合する時には、爪45は停止状態となり、係止部材37は爪45から衝撃を受けることなく係合でき、爪45および係止部材37のいずれも破損するようなことは皆無となる。また、係止部材37を循環動作させるハンマ操作モータ36も衝撃を受けることがなく、その損傷も皆無となる。
【0019】
なお、本実施態様では、係止部材37は無端チェーン35に1個取付けられているが、複数個の係止部材(図示せず)を取付けてもよい。この場合、ハンマ操作モータ36の回転速度を上げることなく、ハンマ44による打撃サイクルを短くし、試験に要する時間を短縮することが可能になる。また、爪45は回動するように構成されているが、平行に後退するように構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る打撃貫入試験装置の要部を切り欠いた概略説明図。
【図2】本発明に係るハンマユニットの要部拡大図。
【図3】本発明に係るハンマが上昇開始時の要部動作説明図。
【図4】本発明に係るハンマが最上昇位置に達した時の要部動作説明図。
【図5】本発明にかかるハンマのリバウンドの状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0021】
1 打撃貫入試験装置
2 貫入ロッド
2a おねじ部
2b 貫入コーン

10 ベースユニット
10a 基台
11 第1支柱
11a チェーン部材
12 昇降台
13 スプロケット
14 ユニット昇降モータ

20 打撃ユニット

30 エレベータユニット
31 テーブル
32 第2支柱
32a 空洞部
33 従動スプロケット
33a 従動スプロケット軸
34 駆動スプロケット
34a 駆動スプロケット軸
35 無端チェーン
36 ハンマ操作モータ
37 係止部材
38 解除部材

40 ハンマユニット
40a 軸受台
41 ガイドスリーブ
42 ノッキングヘッド
42a 穴部
43 ガイドレール
44 ハンマ
44a 上部ブロック
44b 下部ブロック
44c 打撃ブロック
45 爪
46 プランジャ

50 リバウンド検出センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降可能に案内されたハンマと、このハンマによる打撃を受けて地中に貫入する貫入ロッドと、前記ハンマに後退可能に設けられた爪と、前記爪と係合可能な位置を移動するように無端循環移動部材に連結された係止部材と、前記爪の移動路上に設けられてこれを後退させる解除部材とを備えた打撃貫入試験装置であって、
前記貫入ロッドを打撃する際のハンマのリバウンドを検出するリバウンド検出センサを設ける一方、
このリバウンド検出センサのリバウンド検出により無端循環移動部材の移動速度を制御するように構成したことを特徴とする打撃貫入試験装置。
【請求項2】
リバウンド検出センサがハンマの停止を検出すると、無端循環移動部材の移動速度を復帰させることを特徴とする請求項1に記載の打撃貫入試験装置。
【請求項3】
前記無端循環移動部材は、ハンマが貫入ロッドを打撃する間に係止部材を爪と係合する直前位置に達するように循環送りされることを特徴とする請求項1または2に記載の打撃貫入試験装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−231699(P2008−231699A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−69472(P2007−69472)
【出願日】平成19年3月16日(2007.3.16)
【出願人】(000227467)日東精工株式会社 (263)
【Fターム(参考)】