説明

把持装置および把持装置を備えた布地処理ロボット

【課題】簡易な構成で、多種の対象物に対して複数の機能を有した把持装置および把持装置を備えた布地処理ロボットを提供することである。
【解決手段】把持装置200は、固定把持部材240、可動把持部材261、スライド装置220、把持本体部210およびモータ270からなる。把持装置200においては、把持本体部210に固定された固定把持部材240に対して、スライド装置220により可動把持部材261を直線的に移動させ、かつモータ270により可動把持部材261を回動することにより固定把持部材240の先端部および可動把持部材261の先端可動部材262を近接させ、対象物である布地(洗濯物)を把持するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布地、布製品、特に衣服を把持する把持装置および把持装置を備えた布地処理ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、工具または部材を把持するための種々の把持装置が開発および研究されている。特に、ロボットに内蔵される把持装置においては、3次元において自在に動かせるよう、まるで人間の手のように動くように、5指の開発が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、搬送回転体を要せずに紙葉類を移動させることができるロボットを内蔵して紙葉類を取扱い処理するロボット内蔵型紙葉類処理装置が開示されている。
【0004】
特許文献1記載のロボット内蔵型紙葉類処理装置は、装置本体に紙葉類を取扱い処理するロボットを内蔵したロボット内蔵型紙葉類処理装置であって、装置本体に設けられる紙葉類収納部と、この紙葉類収納部と対応して設けられる紙葉類移動先との間に、紙葉類を計数し、かつ紙葉類を保持して移動させるハンド部を先端に備えたロボットアームを介装したものである。
【0005】
また、特許文献2には、ボデイ内に塵埃等が進入することを阻止するとともに、ワークを把持する一組の把持部材の平行精度を保持することにあるチャック装置が開示されている。
【0006】
特許文献2記載のチャック装置は、一組の流体圧出入ポートが形成されたボデイと、ボデイの内部に形成されたシリンダ室に沿って往復動作するピストンを含むシリンダ機構と、ボデイの一端部に形成された凹部内に所定角度回動自在に軸支された一組の把持部材と、把持部材の溝部に係合する一組のコロ部材が回動自在に軸着され、一組のコロ部材の回動作用下にピストンの直線運動を一組の把持部材に伝達するジョイント部材と、ボデイの一端部に装着され、凹部を閉塞するカバー部材と、を備えたものである。
【0007】
また、特許文献3には、指部の柔軟性を向上させ、対象物を安定して把持するようにしたロボットハンドが開示されている。
【0008】
特許文献3記載のロボットハンドは、複数個の指リンクと、指リンクを連接する指関節とからなる指部を備えたロボットハンドにおいて、指リンクの少なくとも1個を、第1の部材と、第1の部材の表面に密着される第2の部材と、少なくとも第2の部材を被覆する第3の部材とから構成すると共に、第2の部材の剛性を、第1の部材および第3の部材の剛性よりも低く設定するように構成したものである。
【0009】
特許文献4には、布状体を折り畳む機械及び仕上げする機械等に、自動的に布状体を拡げて供給できる布状体自動投入機を得ることを課題とする布状体自動投入機が開示されている。
【0010】
特許文献4記載の布状体自動投入機は、布状体を折り畳む機械及び仕上げする機械等に布状体を拡げて供給する装置であって、無端ベルト上を搬送されてきた布状体が貯留されるシューターと、布状体を掴持し移動する複数の掴持チャックと、掴持チャックが移動するレールと、布状体を押圧する押さえローラと、布状体を案内支持するガイドローラと、布状体を支持し移動する移動プレートとからなるものである。
【0011】
特許文献5には、洗濯、脱水後のおしぼりなどの方形状布片を自動的に折り畳む装置が開示されている。
【0012】
特許文献5記載の方形状布片の掴み装置は、山積みとなった方形状布片から上下動して該布片の一枚を掴んで吊す第一掴み部材を設け、第一掴み部材の前面の一方の側部に吊り下がった布片をあてがう壁を、他方の側部に布片の下部を壁に向けて押し当て布片を一時的に固定する端押え板を設け、吊り下がった布片の最下端を検知するセンサを壁の下部に設け、検知された布片の最下端を掴む第二掴み部材を設けて布片の垂れ下がった最下端を掴むものである。
【0013】
特許文献6には、汚れた方形状布片の洗濯から仕上及び出荷までの工程を全自動化する方形状布片の洗濯物の全自動仕上方法および装置が開示されている。
【0014】
特許文献6記載の方形状布片の洗濯物の全自動仕上方法および装置は、汚れた方形状布片(1)の洗濯からアイロン掛の全工程を自動化した方法であって、洗濯され山積にされた該布片(1)の一つを掴んで展開する展開工程を含むものである。
【0015】
非特許文献1には、布地物体のハンドリングにおける摘みと捲り機能を有するロボットハンドによる洗濯物の把握が開示されている。
【0016】
非特許文献1には、洗濯物の後片付け作業において要求される布地の把持位置把持方法として、一対の回転体により摘みと捲り機能を実現することが記載されている。
【0017】
また、非特許文献2には、視覚情報を用いた輪郭情報に基づく折れ重なった布生地の展開が開示されている。接着テープ利用型の4本足デバイスで布生地を持ち上げることが開示されている。
【0018】
また、非特許文献3には、布取扱いシステムのための視覚装置とフレキシブルロボットハンドが開示されている。特許文献3記載の布取扱いシステムのための視覚装置とフレキシブルロボットハンドは、Fig18およびFig20に示すように、当該一対の棒状部材からなる把持装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平5−81510号公報
【特許文献2】特開平10−80888号公報
【特許文献3】特開2005−88096号公報
【特許文献4】特開平10−29736号公報
【特許文献5】特開平11−128596号公報
【特許文献6】特開平7−213797号公報
【非特許文献1】大澤文明、柿倉正義、“布地物体のハンドリング 摘みと捲り機能を有するロボットハンドによる洗濯物の把握”、日本、東京電機大学工学部、原稿受付日平成10年1月16日、記事連番0007、SC-98-7、37-42頁、
【非特許文献2】小野栄一、喜多伸之、坂根茂幸、“視覚情報を用いた輪郭情報に基づく折れ重なった布生地の展開”日本、日本ロボット学会誌、Vol.15、No.2,pp275〜283,1997、
【非特許文献3】秦清治、他3名“VisionSystem and Flexible Robot Hand for Cloth Handling Robot System”、Authorized licenseduse limited to: RITSUMEIKAN UNIVERSITY. Downloaded on August 27, 2009 at 05:28from IEEE Xplore. Restrictions apply、692〜697頁、
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
このように、特許文献1から特許文献3記載の装置は、対象物を把持する装置についてそれぞれ開示がなされている。
【0021】
しかしながら、特許文献1および特許文献2記載の装置では、対象物の厚みの変化に対応できるものではない。すなわち、特許文献1記載の装置では、紙類にのみ効果があり、特許文献2では、対象となる同一サイズのワークに対してのみ効果がある。
また、特許文献3記載の装置は、駆動源の個数が10個以上必要となり、コスト増加が問題となる。
【0022】
また、特許文献4から特許文献6記載の装置は、対象物を展開する装置について開示がなされている。
【0023】
しかしながら、把持を行うための駆動させる部材の個数が、6個または7個と多く、それにより、コスト増加が問題となる。さらに、対象物であるおしぼりまたはシーツ等の特定対象物を展開する部材も、当該装置以外にさらにガイドローラまたは上下ローラ等の追加の装置を使用しており、コスト増加が問題となる。
【0024】
また、非特許文献1には、複数のローラにより布地を捲る装置が開示されているが、種々の厚みの異なる布地を捲ることができず、さらに当該布地を展開することもできない。また、非特許文献2には、視覚センサにより布生地を認識する技術のみが開示されているが、布生地を捲るおよび布生地を展開する技術については、開示がされていない。
【0025】
また、非特許文献3には、一対の棒状部材からなるハンドが開示されているが、同一機構により一対の棒状部材が相反する動作を行うことにより把持を行うため、所定の厚みの対象物しか把持することができない。すなわち、種々の厚みの布地を把持することができない。
【0026】
本発明の目的は、簡易な構成で、多種の対象物に対して複数の機能を有した把持装置および把持装置を備えた布地処理ロボットを提供することである。
【0027】
本発明の他の目的は、簡易な構成で、多種の厚みの布地物を捲るおよび展開する機能を有した把持装置および把持装置を備えた布地処理ロボットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
(1)
一局面に従う把持装置は、対象物を把持する把持装置であって、第1保持部材と、第1保持部材に対向して設けられた第2保持部材と、第2保持部材を直線的に移動する移動装置と、第1保持部材および移動装置を保持する把持部本体と、第2保持部材を回動する回動機構と、を含み、移動装置により第2保持部材を直線的に移動させ、かつ回動機構により第2保持部材を回動することにより第1保持部材の先端部および第2保持部材の先端部を近接させ、対象物を把持するものである。
【0029】
把持装置は、第1保持部材、第2保持部材、移動装置、把持部本体および回動機構からなる。把持装置においては、移動装置により第2保持部材を直線的に移動させ、回動機構により第2保持部材を回動することにより第1保持部材の先端部および第2保持部材の先端部を近接させ、対象物を把持するものである。
【0030】
この場合、第1保持部材は、把持本体部に固定されているので、駆動系を省略することができ、コスト低下を図ることができる。また、第2保持部材を移動させる移動装置および第2保持部材を回動させる回動機構を備えているので、多種の厚みの布地物に対応することができ、多種の厚みの布地物を捲ることができ、把持装置を複数備えることで布地物の展開を行うことができる。
【0031】
(2)
回動機構は、第2保持部材の回転を停止し、移動装置は、把持部本体に固定された第1保持部材に対して第2保持部材を直線的に移動させてもよい。
【0032】
この場合、第1保持部材は、把持本体部に固定されているので、駆動系を省略することができ、コスト低下を図ることができる。また、第2保持部材の回転を停止しつつ、スライド移動させるので、対象物を捲り上げ掴むことができる。
【0033】
(3)
移動装置は、支持部材と、支持部材を直線的に移動する移動機構と、を含み、支持部材は、一端側に移動機構を有し、他端側に回動機構を有することが好ましい。
【0034】
この場合、支持部材を設けることで、第2保持部材の長さを短くし、回動機構の回動力を少なくすることができる。また、第2保持部材の長さを短くできるので、第2保持部材の回動方向の微調整も容易に行うことができる。
【0035】
(4)
第1保持部材および第2保持部材の少なくとも一方の先端部は、ゴム材を含んでもよい。
【0036】
第1保持部材および第2保持部材の少なくとも一方の先端部は、ゴム材を含むので、対象物を確実に保持することができる。また、第2保持部材の先端側にゴム材を設けることで、対象物を容易に捲ることができ、好ましい。
【0037】
(5)
第2保持部材は、先端部を伸縮する伸縮構造を有し、かつ先端部の進退を付勢する付勢機構を有することが好ましい。
【0038】
この場合、第2保持部材は、先端部の進退を付勢する付勢機構を有するので、対象物への破損等を防止することができる。また、付勢機構の付勢力を調整することで、対象物を確実に把持することができる。
【0039】
(6)
対象物は、布製品であってもよい。
【0040】
この場合、対象物は、布製品であるので、ハンカチ、お絞り、タオル、バスタオル、マット、カーペット、衣類、下着、手ぬぐい、布団、毛布、シーツ等、種々の布製品に対して把持することができる。
【0041】
(7)
他の曲面にかかる布地処理ロボットは、把持装置と、把持装置と支持するロボットアームと、把持装置により把持される対象物を撮像する撮像装置と、撮像装置からのデータに基づいて把持装置およびロボットアームを制御する制御装置とを含むものである。
【0042】
布地処理ロボットは、把持装置、ロボットアーム、撮像装置、制御装置を含み、制御装置により撮像装置からのデータに基づいて把持装置およびロボットアームが制御される。
【0043】
この場合、ロボットアームに装着される把持装置は、多種の厚みの布地物に対応することができ、多種の厚みの布地物を捲ることができる。その結果、ロボットアームは、駆動部位を減じた方式となるので、製造コストおよびランニングコスト(修理、点検、使用電力を含み)を低減させることができる。
【0044】
(8)
布地処理ロボットを複数備えることが好ましい。
【0045】
この場合、把持装置を有する布地処理ロボットが複数設けられるので、容易に布地物の展開を行うことができる。
【発明の効果】
【0046】
本発明に係る把持装置および布地処理ロボットによれば、簡易な構成で、多種の対象物に対して複数の機能を有する把持を行うことができる。特に、多種の厚みの布地物を捲るおよび展開することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】一実施の形態に係る把持装置を備えた布地処理ロボットの一例の外観を示す模式的斜視図
【図2】図1の把持装置の内部構成を示す模式的構成図
【図3】図1の把持装置を拡大した模式的平面図
【図4】図3に示した把持装置の動作を説明するための模式図
【図5】図3に示した把持装置の動作を説明するための模式図
【図6】把持装置の他の動作を示す模式図
【図7】把持装置のさらに他の動作を示す模式図
【図8】他のゴム部材からなる先端可動部材を示す模式図
【図9】他のゴム部材からなる先端可動部材を示す模式図
【図10】他のゴム部材からなる先端可動部材を示す模式図
【図11】他のゴム部材からなる先端可動部材を示す模式図
【図12】他のゴム部材からなる先端可動部材を示す模式図
【図13】他のゴム部材からなる先端可動部材を示す模式図
【図14】他のゴム部材からなる先端可動部材を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を用いて説明する。本実施の形態においては、まず、布地を把持する把持装置を備えた布地処理ロボットについて説明を行い、後に当該把持装置について説明を行う。なお、本実施の形態においては、布地を把持する把持装置について説明するが、布地には、絹、毛織物、木綿等が含まれ、また、本発明の把持装置は、ビニル地、ナイロン地等、他の任意のものにも適用することができる。
【0049】
(一実施の形態)
図1は、一実施の形態に係る把持装置を備えた布地処理ロボット100の一例の外観を示す模式的斜視図である。
【0050】
図1に示すように、布地処理ロボット100は、把持装置200、ロボットアーム150、カメラ160および制御部300からなる。図1においては、布地処理ロボット100を一対(2個)設けてあり、布地処理ロボット100の間に台610および台620が設けられている。
【0051】
図1に示すように、把持装置200は、ロボットアーム150の先端側部分に回動自在に取り付けられている。したがって、ロボットアーム150は、把持装置200を3次元空間内で自由自在に動かすことができる。また、カメラ160は、ロボットアーム150の上部から把持装置200近傍を撮像できるように設けられている。
【0052】
制御部300は、カメラ160により撮像されたデータに基づいて、ロボットアーム150および把持装置200の動作を制御する。以下、把持装置200の内部構成について群述する。
【0053】
図2は、図1の把持装置200の内部構成を示す模式的構成図である。
【0054】
図2に示すように、把持装置200の制御システム301は、制御部310、モータ270、スライド装置220、圧力センサ280およびインターフェイス部350を含む。
【0055】
把持装置200の制御部310は、インターフェイス部350からのカメラ160の撮像されたデータに基づいてスライド装置220およびモータ270の駆動を指示する。具体的な制御部310の動きについては、後述する。
【0056】
なお、本実施の形態においては、制御部310は、布地処理ロボット100の制御部300と別に設けることとしているが、これに限定されず、制御部310を設けず、布地処理ロボット100の制御部300と同一の制御部において制御してもよい。
【0057】
続いて、把持装置200の構造および動作について説明を行う。図3は、図1の把持装置200を拡大した模式的平面図である。
【0058】
図3に示すように、把持装置200は、主に把持本体部210、スライド装置220、スライド部材230、固定把持部材240、支持部材250、可動把持部材261、先端可動部材262、バネ機構263、モータ270および圧力センサ280を含む。
【0059】
図3に示すように、把持本体部210の一端側には、固定把持部材240がボルトBTにより固設されており、固定把持部材240の先端に圧力センサ280が設けられ、固定把持部材240に近接または離間する方向に延在してスライド装置220が設けられる。
【0060】
スライド装置220のスライド部材230には、長手方向を有する支持部材250の一端側が固定されている。支持部材250の他端側には、モータ270が設けられており、当該モータ270の軸に可動把持部材261の一端側が固設されている。
【0061】
また、可動把持部材261には、先端可動部材262が伸縮可能に設けられており、バネ機構263が可動把持部材261の延在方向に先端可動部材262を付勢するように設けられる。また、先端可動部材262は、棒状のゴム部材からなる。
【0062】
続いて、図4および図5は、図3に示した把持装置200の動作の一例を説明するための模式図である。
【0063】
まず、図4に示すように、制御部310からの指示に基づいて、スライド装置220は、スライド部材230を矢印H1の方向に移動させる。ここで、制御部310は、スライド装置220にスライド部材230を移動させる距離Lを指示する。この距離Lは、把持装置200により把持しようとする布地を、カメラ160で撮像し、その撮像されたデータに基づいて布地の厚みL1を算出し、距離Lが決定される。ここで、距離Lは、布地を重ねて捲くり上げる場合には、2(L1)の厚みに近似する値になり、単布地の場合には、L1の厚みに近似する値になる。その結果、支持部材250、可動把持部材261および先端可動部材262が矢印H1の方向に距離Lだけ移動する。すなわち、すなわち、把持装置200の片方(固定把持部材240)を固定させ、もう片方(支持部材250等)を平行にスライドさせる。
【0064】
なお、布地の厚みL1は、把持装置200により当該布地を把持した際の圧力センサ340の値に応じて厚みL1を推定してもよい。
また、スライド装置220の距離Lを大きく設定することにより、5指ハンド等と異なり、毛布または布団など厚みの大きな布地に対しても対応することができる。すなわち、5指ハンドでは、厚みの大きな布地を把持する場合には5指の大きさをそれぞれ大きくする必要があるが、本発明の把持装置200においては、スライド装置220の距離L(スライド距離)を大きく設定するだけで容易に対応することができる。また、このスライド距離Lを大きくするためにスペーサを用いてもよい。例えば、把持本体部210および固定把持部材240の間にスペーサを設けてもよい。
【0065】
続いて、図5に示すように、制御部310からの指示に基づいて、モータ270が回転を行う。その結果、可動把持部材261および先端可動部材262が矢印R1の方向に回動する。そして、図5に示すように、ゴム部材からなる先端可動部材262が固定保持部材240側に移動する。
【0066】
このように、固定保持部材240に布地を接触させつつ、先端可動部材262が回動することにより、ゴム部材の摩擦で布地を捲くり上げ掴みができる。また、制御部310は、圧力センサ340からの圧力信号に基づいてモータ270の回転を停止させる。それにより、布地を傷つけることを防止することができる。
【0067】
続いて、図1から図5に説明した把持装置200および布地処理ロボット100について具体的な一例の動作説明を行う。以下においては、布地、特に洗濯物を対象として、説明を行う。
【0068】
まず、制御部300は、図1に示した台610上に乱雑に山積みされた洗濯物(図示せず)をカメラ160で撮影するよう指示する。次に、制御部300は、その撮像データに基づいて、山積みされた洗濯物の最上部を把持装置200により把持するよう指示する。そして、図3から図5に示したように、制御部300は、把持装置200により洗濯物を把持し、布地処理ロボット100により当該洗濯物が上方へ搬送され、所定の高さから把持装置200の把持を開放させるよう指示する。その結果、洗濯物が台610上に落下する。この落下動作は、洗濯物を少しでも広げた状態で置き、洗濯物の形状を認識するための動作である。
【0069】
次いで、制御部300は、再度カメラ160で撮像したデータに基づいて当該洗濯物の2箇所の把持点および洗濯物の幅を認識し、把持装置200を一の把持点の位置に移動し、図3から図5の動作を繰返す。その結果、把持装置200が一の把持点において洗濯物を把持する。
【0070】
続いて、制御部300は、他方の布地処理ロボット100に対して、洗濯物の他の把持点を把持させる。この場合、他の把持点は、台610上にあってもよく、台610の上方に位置してもよい。把持装置200により、他の把持点を空中で把持することができる。そして、洗濯物の幅に合わせて一対の布地処理ロボット100を広げることにより洗濯物が展開される。
【0071】
最後に、制御部300は、一対の布地処理ロボット100に対して、台620(折り畳み装置等)の上方に当該洗濯物を移動させ、把持装置200の把持を開放させ、台620上に洗濯物を載置させる。
【0072】
なお、上記の実施例において、一の把持点および他の把持点は、洗濯物の縁である場合について説明を行ったが、それに限定されず、他の任意の場所を認識してもよい。例えば、シャツ等の場合には、左右両肩の袖と導体部の繋ぎ目の縁の2点を選択してもよく、他の任意の場所を選択してもよい。
【0073】
図6は、把持装置200の他の動作を示す模式図である。
【0074】
図3、図4および図6に示すように、制御部310は、スライド装置220のみにさらに矢印H1の方向にスライド移動するよう指示をしてもよい。この場合、捲り上げ掴みが不要な布地であっても、確実に把持を行うことができる。すなわち、把持するポイントのある布地、例えば、タオルを引掛ける紐の輪が取り付けられている場合等に有効である。
【0075】
図7は、把持装置200のさらに他の動作を示す模式図である。
【0076】
図7に示すように、制御部310は、モータ270に矢印−Rの方向に回転させるように指示する。それにより、台610上に載置された洗濯物の弛みを、伸ばすことができる。その結果、洗濯物の形状が不明な場合には、洗濯物の弛みを伸ばして、カメラ160により洗濯物を撮像し、洗濯物の形状を的確に把握することができる。
【0077】
(変形例1)
以下、一実施の形態に係る把持装置200の変形例について説明を行う。図8は、先端可動部材262の代わりに先端可動部材262aを用いる変形例を示す模式図である。
【0078】
図8に示すように、主にゴム部材からなる先端可動部材262aの一部には、ゴム部材よりも剛性の高い樹脂部材、金属部材、木部材の少なくとも1からなる部材262bが設けられている。それにより、布地を把持する際に、先端可動部材262aの過度の変形を抑制することができる。
【0079】
(変形例2)
図9は、先端可動部材262の代わりにゴム部材からなる先端可動部材262cを用いる変形例を示す模式図である。
【0080】
図9に示すように、ゴム部材からなる先端可動部材262cは、球体を水平面で分割し、さらに半分に分割した、いわゆる4分の1の形状であってもよい。この場合、半径部となる面により布地等を捲ることができる。
【0081】
(変形例3)
図10は、先端可動部材262の代わりに主にゴム部材からなる先端可動部材262dを用いる変形例を示す模式図である。
【0082】
図8に示すように、主にゴム部材からなる先端可動部材262dの一部には、ゴム部材よりも剛性の高い樹脂部材、金属部材、木部材の少なくとも1からなる部材262eが設けられている。それにより、布地を把持する際に、先端可動部材262dの過度の変形を抑制することができる。
【0083】
(変形例4)
図11は、ゴム部材からなる先端可動部材262の代わりにゴム部材からなる先端可動部材262fを用いる変形例を示す模式図である。
【0084】
図11に示すように、ゴム部材からなる先端可動部材262fは、球体を水平面で分割した形状であってもよい。この場合、厚みのある布地であっても、湾曲面により布地の広い範囲に摩擦を与え、捲り上げを行うことができる。
【0085】
(変形例5)
図12は、先端可動部材262の代わりにゴム部材からなる先端可動部材262gを設けたものである。
【0086】
図12に示すように、先端可動部材262gは、湾曲部262hを有するゴム部材であってもよい。
【0087】
(変形例6)
図13は、先端可動部材262の代わりに主にゴム部材からなる先端可動部材262iを設けたものである。
【0088】
図13に示すように、主にゴム部材からなる先端可動部材262iは、湾曲部262jを有するゴム部材であってもよい。また、先端可動部材262iの一部には、ゴム部材よりも剛性の高い樹脂部材、金属部材、木部材の少なくとも1からなる部材262kが設けられている。それにより、布地を把持する際に、先端可動部材262iの過度の変形を抑制することができる。
【0089】
(変形例7)
図14は、先端可動部材262の代わりに先端可動部材262lを用いる変形例を示す模式図である。
【0090】
図14に示すように、先端可動部材262lは、固定車輪形状262nおよび止め具262mを有するゴム部材であってもよい。固定車輪形状262nは、止め具262mにより先端可動部材262lに固定されており、固定車輪形状262nは、ゴム部材、ゴム部材よりも剛性の高い樹脂部材、金属部材、木部材の少なくとも1からなる部材であることが好ましい。
【0091】
以上のように、本発明に係る把持装置200においては、固定把持部材240が把持本体部210に固定されているので、片方の駆動系を省略することができ、コスト低下を図ることができる。また、可動把持部材261を移動させるスライド装置220およびスライド部材230と、可動把持部材261を回動させるモータ270とを備えているので、多種の厚みの布地に対応して捲ることができ、把持装置200を複数備えることで布地物の展開を行うことができる。また、布地物(布地)とは、ハンカチ、お絞り、タオル、バスタオル、マット、カーペット、衣類、下着、手ぬぐい、布団、毛布、シーツ等の布製品を含むものである。
【0092】
さらに、具体的に、スライド装置220の距離Lを調整することにより、厚みの大きな布地から厚みの小さな布地まで、あらゆる布地に対して一の把持装置200で対応し、捲くり上げを行うことができる。
【0093】
さらに、支持部材250を設けることで、可動把持部材261の長さを短くし、モータ270の回動力を少なくすることができる。また、モータ270を支持部材250の先端に設けることで、可動把持部材261の回動方向の微調整も容易に行うことができる。例えば、矢印R1の方向に回動させることにより布地を捲くり上げ、矢印−R1の方向に回動させることにより布地を伸ばすことができる。すなわち、この場合のモータ270の回動力が少なくて済む。
【0094】
さらに、先端可動部材262は、ゴム部材を含むので、布地との間に摩擦を生じさせ、布地を確実に保持することができ、布地を容易に捲ることができる。さらに、可動把持部材261は、先端部の進退を付勢するバネ機構263を有するので、布地への破損等を防止することができる。また、バネ機構263の付勢力を調整することで、布地を確実に把持することができる。
【0095】
また、布地処理ロボット100においては、把持装置200を有するロボットアーム150がそれぞれ複数設けられるので、容易に布地物の一方を把持し、他方を把持し、それらの把持装置200の間隔を広げることで、対象となる布地の展開を行うことができる。
【0096】
本発明においては、布地物(布地または洗濯物)が対象物に相当し、把持装置200が把持装置に相当し、固定把持部材240が第1保持部材に相当し、可動把持部材261が第2保持部材に相当し、スライド装置220およびスライド部材230が移動装置に相当し、スライド部材230が移動機構に相当し、把持本体部210が把持部本体に相当し、モータ270が回動機構に相当し、先端可動部材262が先端部に相当し、支持部材250が支持部材に相当し、バネ機構263が付勢機構に相当し、ロボットアーム150がロボットアームに相当し、カメラ160が撮像装置に相当し、制御部310および制御部300が制御装置に相当し、布地処理ロボット100が布地処理ロボットに相当する。
【0097】
本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0098】
100 布地処理ロボット
150 ロボットアーム
160 カメラ
200 把持装置
210 把持本体部
220 スライド装置
230 スライド部材
240 固定把持部材
250 支持部材
261 可動把持部材
262 先端可動部材
263 バネ機構
270 モータ
300 制御部
310 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物を把持する把持装置であって、
第1保持部材と、
前記第1保持部材に対向して設けられた第2保持部材と、
前記第2保持部材を直線的に移動する移動装置と、
前記第1保持部材および前記移動装置を保持する把持部本体と、
前記第2保持部材を回動する回動機構と、を含み、
前記把持部本体に固定された前記第1保持部材に対して、前記移動装置により前記第2保持部材を直線的に移動させ、かつ前記回動機構により前記第2保持部材を回動することにより前記第1保持部材の先端部および前記第2保持部材の先端部を近接させ、前記対象物を把持する把持装置。
【請求項2】
前記回動機構は、前記第2保持部材の回転を停止し
前記移動装置は、前記把持部本体に固定された前記第1保持部材に対して前記第2保持部材を直線的に移動させる、請求項1記載の把持装置。
【請求項3】
前記移動装置は、
支持部材と、
前記支持部材を直線的に移動する移動機構と、を含み、
前記支持部材は、一端側に前記移動機構を有し、他端側に前記回動機構を有する、請求項1または2に記載の把持装置。
【請求項4】
前記第1保持部材および前記第2保持部材の少なくとも一方の前記先端部は、前記対象物を把持するゴム材を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の把持装置。
【請求項5】
前記第2保持部材は、前記先端部を伸縮する伸縮構造を有し、かつ前記先端部の進退を付勢する付勢機構を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の把持装置。
【請求項6】
前記対象物は、布製品である、請求項1から5のいずれか1項に記載の把持装置。
【請求項7】
前記請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の把持装置と、
前記把持装置と支持するロボットアームと、
前記把持装置により把持される対象物を撮像する撮像装置と、
前記撮像装置からのデータに基づいて前記把持装置および前記ロボットアームを制御する制御装置とを含む、布地処理ロボット。
【請求項8】
前記請求項7の布地処理ロボットを複数備えたことを特徴とする布地処理ロボット。



【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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