説明

把持装置及び搬送装置

【課題】被把持部材が小型であっても、被把持部材を損傷させることなく把持する。
【解決手段】把持パット26は、内部空間48に圧縮空気が供給されると、把持装置22の中央に位置する鉛直方向の軸線52上の点を中心としてダイヤフラム部44が円板状に変形する。ダイヤフラム部44が円板状に変形すると、4つの接触部46によって囲まれる円形の領域は、把持装置22が把持するレンズよりも半径が約0.5mm大きくなる。内部空間48内が大気圧にされると、把持パット26が気圧差による外力を受けなくなり、接触部46それぞれがレンズに側方から接触する。つまり、把持装置22は、接触部46がレンズに接触する圧力でレンズを把持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被把持部材を把持する把持装置及び搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、成形体を保持した保持手段を反転させたのち、その保持手段が成形体を所定の機器に載置する成形体の取り出しシステムを開示する。
【0003】
【特許文献1】特開2003−39507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の取り出しシステムは、ランナと一体であるレンズでなければ損傷を防止することができず、小型のレンズを取り出すこともできないという問題があった。
【0005】
本発明は、被把持部材が小型であっても、被把持部材を損傷させることなく把持することができる把持装置及び搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の特徴とするところは、流体の圧力変化を所定の軸線から離れる方向の力又は所定の軸線に近づく方向の力に変換する変換手段と、この変換手段が変換した力により被把持部材の幅よりも大きく開き又は小さく閉じ、且つ自身の弾性により被把持部材の幅よりも小さく閉じ又は大きく開くことによって、被把持部材を把持又は開放するように被把持部材に接触する接触部とを有する把持装置にある。
【0007】
好適には、前記変換手段及び前記接触部は、一体に成型されている。
【0008】
また、好適には、流体の圧力変化に応じて一方向に流体の流れを許し、逆方向への流体の流れを阻止するよう動作する逆止弁をさらに有し、前記変換手段は、前記逆止弁の動作に応じて生じる流体の圧力変化を力に変換する。
【0009】
また、好適には、前記接触部は、樹脂製の光学部品を被把持部材として接触する。
【0010】
また、好適には、前記接触部は、幅が6mm以下の被把持部材を把持又は開放する。
【0011】
また、本発明の第2の特徴とするところは、被把持部材を把持する把持装置と、この把持装置に対して流体の圧力を変化させる変圧手段と、前記把持装置を移動させる移動手段とを有し、前記把持装置は、前記変圧手段による流体の圧力変化を所定の軸線から離れる方向の力又は所定の軸線に近づく方向の力に変換する変換手段と、この変換手段が変換した力により被把持部材の幅よりも大きく開き又は小さく閉じ、且つ自身の弾性により被把持部材の幅よりも小さく閉じ又は大きく開くことによって、被把持部材を把持又は開放するように被把持部材に接触する接触部とを有する搬送装置にある。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、被把持部材が小型であっても、被把持部材を損傷させることなく把持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1において、本発明の実施形態に係る搬送装置10の概要が示されている。搬送装置10は、搬送アーム12、駆動部14、変圧部16及び制御部18を有し、例えばCD(Compact Disc)、MD(Mini Disc)、DVD(Digital Video Disc)等の光ピックアップ用対物レンズ、若しくは、コリメータレンズ、光デバイス用ホログラム素子、グレイティング素子又は携帯電話用の撮像レンズ等の樹脂製光学部品(成型品:被把持部材)を所定の位置で把持して移動させ、他の位置で開放(即ち搬送)する。
【0014】
搬送アーム12は、例えば鉛直方向の回転軸を中心に回転する回転部20と、この回転部20の底面に配置される例えば16個の把持装置22とを有し、把持装置22それぞれが気圧の変化に応じて被把持部材を把持可能にされている。
【0015】
駆動部14は、搬送アーム12を水平方向(X方向及びY方向の2方向)及び鉛直方向(Z方向)に移動させるとともに、回転部20を回転(回転角度θ)させる4軸の駆動源である。
【0016】
変圧部16は、上述した把持装置22が被把持部材を例えば気圧の低下により把持し、気圧の上昇により開放するように、把持装置22それぞれに対して個別に所定の圧力の空気を供給する。
【0017】
制御部18は、搬送アーム12が所定の領域(3次元空間)内で所定の移動をするように駆動部14を制御するとともに、把持装置22それぞれが所定のタイミングで被把持部材を把持又は開放するように変圧部16を制御する。
【0018】
次に、把持装置22について詳述する。
図2は、被把持部材(DVDのピックアップ用のレンズ)を把持した状態の把持装置22を側方から見た断面図である。把持装置22は、回転部20に固定される例えば金属製のヘッド24と、このヘッド24に固定されてレンズを把持及び開放する把持パット26とから構成される。
なお、把持装置22が把持する被把持部材としてのレンズは、例えば外周が円形であり、外径が6mm以下である。
【0019】
ヘッド24は、接続アダプタ28と、固定スリーブ30とから構成される。接続アダプタ28は、把持パット26の後述する環状部42が側方から嵌め合わされる孔部32と、変圧部16から供給される所定の圧力の空気を後述する内部空間48に導く貫通孔34とを有し、上部が回転部20に例えば締め付けられて固定されるようになっている。固定スリーブ30は、接続アダプタ28の上部を上方に突出させる穴部36が上面に設けられ、接続アダプタ28に対して上方から被せられることにより、把持パット26の環状部42を孔部32とともに側方から固定する。
【0020】
把持パット26は、例えば鉛直方向(図2において上下方向)に延びる筒状の側壁部40と、ヘッド24に固定される環状部42と、ダイヤフラム部44と、レンズに接触する例えば4つの接触部46(図3参照)とを具備し、例えばシリコンゴムなどの弾性を有する部材によって一体に成型されている。また、把持パット26は、側壁部40、環状部42、ダイヤフラム部44及び接触部46に囲まれて外気(外部の気圧)と隔たれた内部空間48を接続アダプタ28とともに形成する。
なお、図2において、把持パット26は、図3のC−O−D線断面により示されている。
【0021】
側壁部40は、外力に応じて変形し、外力を受けていない状態では例えば鉛直方向に延びる筒状の形態を維持するようにされている。環状部42は、側壁部40の上部に設けられており、上述したように接続アダプタ28及び固定スリーブ30により固定される。
【0022】
ダイヤフラム部44は、例えば4つの補強リブ50が上面に形成されており、外力を受けていない状態では例えば上方に突出して内部空間48と接触部46とを隔てる略円錐形にされた膜状の隔壁である。ただし、ダイヤフラム部44は、例えば内部空間48内の気圧が外気圧よりも高くされると、把持装置22の中央に位置する鉛直方向の軸線52上の点を中心として円板状に変形するようにされている。つまり、ダイヤフラム部44は、側壁部40及び接触部46に支持された外周部分と中心部分とが、補強リブ50を形成された部分よりも変形しやすくされている。
【0023】
接触部46は、ダイヤフラム部44よりも下方で側壁部40の内側に例えば等間隔で配置され、ダイヤフラム部44によって内部空間48から隔たれた部分がレンズに側方から接触するようにされている。また、4つの接触部46によって囲まれる円形の領域(内接円)は、図3に示すように、把持パット26が外力を受けていない状態では把持装置22が把持するレンズの外径よりも直径が小さくなるようにされている。
【0024】
図4は、内部空間48内の気圧が外気圧よりも高くされた状態の把持装置22を側方から見た断面図である。把持パット26は、例えば内部空間48に圧縮空気が供給されると、内部空間48の気圧が外気圧よりも高くなるので、図5にも示すように、把持装置22の中央に位置する鉛直方向の軸線52上の点を中心としてダイヤフラム部44が円板状に変形する。ダイヤフラム部44が円板状に変形すると、4つの接触部46によって囲まれる円形の領域は、把持装置22が把持するレンズよりも半径が例えば約0.5mm大きくなる。つまり、把持パット26は、圧縮空気が内部空間48に供給されることによって生じる内部空間48内の気圧の変化を、ダイヤフラム部44が接触部46を軸線52上の点から離す方向の力に変換し、接触部46によって囲まれる円形の領域を開くようにされている。
【0025】
次に、搬送装置10の動作について説明する。
図6は、搬送装置10が被把持部材であるレンズを搬送する場合に行う動作(S10)を示すフローチャートである。
図6に示すように、ステップ100(S100)において、変圧部16は、制御部18の制御に応じて把持装置22に圧縮空気を供給することにより内部空間48内の気圧を外気圧よりも高くする。すなわち、図4及び図5に示したように把持パット26が開く。
【0026】
ステップ102(S102)において、駆動部14は、制御部18の制御に応じて搬送アーム12を所定の位置まで移動させ、回転部20を所定の回転角度まで回転させることにより、レンズを把持可能な把持位置に(レンズの側方に接触部46それぞれが位置するように)把持装置22を移動させる。
【0027】
ステップ104(S104)において、変圧部16は、制御部18の制御に応じて内部空間48を大気圧にする。把持パット26が気圧差による外力を受けなくなると、接触部46それぞれがレンズに側方から接触する。つまり、把持装置22は、接触部46がレンズに接触する圧力でレンズを把持する。
【0028】
ステップ106(S106)において、駆動部14は、制御部18の制御に応じて搬送アーム12を所定の位置まで移動させ、回転部20を所定の回転角度まで回転させることにより、レンズが搬送先に位置するように把持装置22を搬送先に移動させる。
【0029】
ステップ108(S108)において、変圧部16は、制御部18の制御に応じて把持装置22に圧縮空気を供給することにより内部空間48内の気圧を外気圧よりも高くする。すなわち、把持装置22がレンズを開放し、レンズの搬送が完了する。
【0030】
次に、把持装置22の変形例について説明する。
図7は、レンズを把持した状態の把持装置22の変形例を側方から見た断面図である。なお、把持装置22の変形例において、図2に示した把持装置22を構成する部分と実質的に同一のものには、同一の符号が付してある。
また、図7において、把持パット26は、図8のE−O−F線断面により示されている。
【0031】
把持装置22の変形例は、ダイヤフラム部44の略中央に貫通孔54が設けられており、内部空間48内にボール弁56が入れられている。ボール弁56は、例えば中空のボール状に形成された部材であり、内部空間48内で生じる気流によって内部空間48内を自在に移動可能にされている。また、4つの接触部46によって囲まれる円形の領域は、図8にも示すように側壁部58によって円形に開口するようにされている。なお、側壁部58によって開口する部分は、把持パット26が外力を受けていない状態では把持装置22が把持するレンズの外径よりも内径が小さくなるようにされている。
【0032】
したがって、把持パット26は、例えば内部空間48に圧縮空気が供給されると、圧縮空気が内部空間48から貫通孔54を通って外部へ流れることを阻止するようにボール弁56が貫通孔54を塞ぎ、図9にも示すように、把持装置22の中央に位置する鉛直方向の軸線52上の点を中心としてダイヤフラム部44が円板状に変形する。ダイヤフラム部44が円板状に変形すると、4つの接触部46及び側壁部58によって囲まれる円形の領域は、把持装置22が把持するレンズよりも半径が例えば約0.5mm大きくなる。つまり、把持パット26は、圧縮空気が内部空間48に供給されると(接触部46及び側壁部58によって囲まれる円形の領域が)開くようにされている。
【0033】
一方、内部空間48が変圧部16によって大気圧にされると、把持装置22は、接触部46及び側壁部58がレンズに側方から接触するとともに、ボール弁56が移動可能になって貫通孔54を開口させ、レンズを把持する。
ここで、接触部46及び側壁部58がレンズを把持して、ボール弁56が貫通孔54から離れると、レンズ、ダイヤフラム部44及びボール弁56で囲まれていた空間は、空気が内部空間48に向けて流れ(内部空間48内の空気とともに吸引され)、気圧が大気圧よりも低下する。つまり、把持装置22は、接触部46及び側壁部58によってレンズを把持するとともに、ボール弁56が貫通孔54を開閉する逆止弁として機能するので、気圧差を利用してレンズを吸着することができる。
【0034】
なお、上記実施形態においては、内部空間48内の気圧が大気圧である場合に把持装置22がレンズを把持するように形成された把持パット26を例に説明したが、これに限定されることなく、例えば内部空間48内の気圧が大気圧である場合に把持装置22がレンズを開放するように把持パット26が形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態に係る搬送装置の概略図である。
【図2】被把持部材を把持した状態の把持装置を側方から見た断面図である。
【図3】把持パットを下方(図2のAの方向)から見た下面図である。
【図4】内部空間内の気圧が外気圧よりも高くされた状態の把持装置を側方から見た断面図である。
【図5】図4に示した把持パットの状態の概略を示す斜視図である。
【図6】搬送装置が被把持部材であるレンズを搬送する場合に行う動作(S10)を示すフローチャートである。
【図7】レンズを把持した状態の把持装置の変形例を側方から見た断面図である。
【図8】把持装置の変形例の把持パットを下方(図7のBの方向)から見た下面図である。
【図9】把持装置の変形例の内部空間内の気圧が外気圧よりも高くされた状態の把持装置を側方から見た断面図である。
【符号の説明】
【0036】
10 搬送装置
12 搬送アーム
14 駆動部
16 変圧部
18 制御部
20 回転部
22 把持装置
24 ヘッド
26 把持パット
28 接続アダプタ
30 固定スリーブ
32 孔部
34 貫通孔
40 側壁部
42 環状部
44 ダイヤフラム部
46 接触部
48 内部空間
50 補強リブ
52 軸線
54 貫通孔
56 ボール弁
58 側壁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の圧力変化を所定の軸線から離れる方向の力又は所定の軸線に近づく方向の力に変換する変換手段と、
この変換手段が変換した力により被把持部材の幅よりも大きく開き又は小さく閉じ、且つ自身の弾性により被把持部材の幅よりも小さく閉じ又は大きく開くことによって、被把持部材を把持又は開放するように被把持部材に接触する接触部と
を有する把持装置。
【請求項2】
前記変換手段及び前記接触部は、一体に成型されている
請求項1記載の把持装置。
【請求項3】
流体の圧力変化に応じて一方向に流体の流れを許し、逆方向への流体の流れを阻止するよう動作する逆止弁をさらに有し、
前記変換手段は、
前記逆止弁の動作に応じて生じる流体の圧力変化を力に変換する
請求項1又は2記載の把持装置。
【請求項4】
前記接触部は、
樹脂製の光学部品を被把持部材として接触する
請求項1乃至3いずれか記載の把持装置。
【請求項5】
前記接触部は、
幅が6mm以下の被把持部材を把持又は開放する
請求項1乃至4いずれか記載の把持装置。
【請求項6】
被把持部材を把持する把持装置と、
この把持装置に対して流体の圧力を変化させる変圧手段と、
前記把持装置を移動させる移動手段と
を有し、
前記把持装置は、
前記変圧手段による流体の圧力変化を所定の軸線から離れる方向の力又は所定の軸線に近づく方向の力に変換する変換手段と、
この変換手段が変換した力により被把持部材の幅よりも大きく開き又は小さく閉じ、且つ自身の弾性により被把持部材の幅よりも小さく閉じ又は大きく開くことによって、被把持部材を把持又は開放するように被把持部材に接触する接触部と
を有する搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate