説明

把持装置

【課題】 本発明は、自動旋盤の回転を停止させずにワークの供給・排出を行う把持装置において、耐久性が高く、高速回転においても焼き付きをおこさない把持装置を提供する事を目的とする。
【解決手段】 複数のクランプ部材を駆動源により開閉する把持装置において、クランプ部材に円柱状のシャフトと、円筒状の外輪を配置し、円柱状のシャフトには円筒状の外輪と勘合する箇所に複数の穴を構成し、複数の穴からエアーを排出するとともに、円筒状外輪がワークを把持する把持装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動旋盤で加工を行うワークの供給及び搬出に適した把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動旋盤で円柱状のワークを加工する場合、自動旋盤へワークを供給及び搬出するのにエアシリンダを内蔵した把持装置が使用されている。
【0003】
一般的には、自動旋盤のチャックを停止し、ワークを挿入してクランプを行ってから自動旋盤のチャックを回転し、加工を行う。
【0004】
加工後の搬出も自動旋盤の回転を停止してから搬出を行うので、サイクルタイムが長くなる要因になっている。
【0005】
サイクルタイムを短縮するために、自動旋盤の回転を止めずに供給及び搬出を行う方法も提案されている。
【0006】
実開平5−51583号公報には、ワークを供給する把持装置を回転自在に構成し、ワークを把持すると自動旋盤のチャックの回転にあわせて把持装置が回転するため、チャックを回転させたまま供給及び搬出を行うものである。
【0007】
しかしこの方法は固定装置全体を回転させるため、回転の始動抵抗が大きく、ワークをクランプ部材でクランプするまでの間、ワークとクランプ部材が擦れているのでワークを傷つけてしまうことがある。
【0008】
また、実開昭49−50880号公報や、特開2002−233986号公報のように把持装置のクランプ部材にローラーベアリングやボールベアリングなどの回転軸受けを配置し、ワークをベアリングの外輪で把持する方法が提案されている。
【0009】
この方法によればローラーベアリングまたはボールベアリングなどのベアリングを子爪に取付て、ワークとベアリングの外輪が接触して回転するため、回転の始動抵抗は少ないが、ローラーまたはボールと内輪及び外輪が金属接触しているため、接触による摩擦熱がベアリングに発生し、特に高速回転では摩擦熱により内部グリスが消耗し、焼き付きをおこして破損することがある。
【特許文献1】実開平5−51583号公報
【特許文献2】実開昭49−50880号公報
【特許文献3】特開2002−233986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、自動旋盤の回転を停止させずにワークの供給・排出を行う把持装置において、耐久性が高く、高速回転においても焼き付きをおこさない把持装置を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、複数のクランプ部材を駆動源により開閉する把持装置において、クランプ部材に円柱状のシャフトと、円筒状の外輪を配置し、円柱状のシャフトには円筒状の外輪と勘合する箇所に複数の穴を構成し、複数の穴からエアーを排出するとともに、円筒状外輪がワークを把持することを特徴とする把持装置を構成する。
【発明の効果】
【0012】
上記構成にすることにより、円柱状シャフトから排出されるエアーにより円筒状外輪と円柱状シャフトとの間で空気の層ができ、エアーベアリングが構成されるとともに、ワークと接触する外輪だけが回転するため、回転の始動抵抗が低く、ワークを傷つけてしまうことがない。
【0013】
また、外輪はローラーやボールなどと金属接触を行っていないので、回転による摩擦熱は発生せず、外輪とワークが接触するときに発生する摩擦熱も常にエアーにより冷却されるため、焼き付きの原因となる熱が発生しない。
【0014】
さらに、常にエアーの排出を行うことにより、加工により発生した粉塵が外輪とシャフトの間に入り込むのを防止するので、外部環境の影響を受けにくい。
【0015】
また、ローラーベアリングなどの場合、自動旋盤のチャックの中心と、把持装置のクランプ中心の間にわずかなズレがあっても、ワークを排出するときに把持装置がズレを吸収できないため、一つのベアリングに負荷が全てかかってしまい把持装置が振られてしまうが、上記構成にすることにより外輪とシャフトにはわずかな隙間が設けられており、フローティングしているため把持装置が振られることが無く、把持装置やロボットに余分な負荷がかからないので耐久性が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
図1に示すように、本実施例の把持装置はエアシリンダを内蔵し、3個のスライドが同期して開閉するチャック1と、3個のスライドに固定されたクランプ部材2と、図4に示すようにクランプ部材に固定したシャフト4と、シャフト4の外周に配置した外輪3より構成する。
【0018】
シャフト4と外輪3はわずかな隙間を設けてあり、押さえ板5と押さえパイプ6を外輪3の両側に配置して回転自在にするとともに、図面左右方向の動きを規制する。
【0019】
シャフト4のクランプ部材2の方向には、継手7が固定されており、シャフト4の中心に設けられた貫通穴と、外輪3と嵌合するシャフト4の円周方向外周側に設けられた複数の穴10が接続されている。
【0020】
押さえ板5は、ねじ9によりシャフト4に固定されるとともに、ねじ9は空気の流出を防止するためにシャフト4の貫通穴をシールしている。
【0021】
次に動作について説明する。
【0022】
チャック1が開いた状態でそれぞれのシャフト4に固定された継手7から、図示していない配管をとおして圧縮空気が供給されている。
【0023】
圧縮空気は継手7からシャフト4の円周方向外周側に設けられた複数の穴10に抜けていくため、外輪3の内周面とシャフト4の外周面の間に空気の層ができ、シャフト4と外輪3はフローティングした状態であるため、外輪3は低摺動で回転することができる。
【0024】
自動旋盤で加工を完了したワークを搬出するために把持装置がワーク8に近づき、クランプを行うと、まず外輪3がワーク8と接触し、ワーク8と外輪3の接触抵抗で外輪3が回転し、自動旋盤のチャックの回転を止めずにクランプすることができる。
【0025】
本実施例は、3方爪の把持装置を例に説明したが、2方爪の把持装置に関しても要旨を変更しない範囲で有効である。
【0026】
また、シャフトに設けた複数の穴に関しては、加工穴に限らず、多孔質金属などのエアーをとおす構成であればよい。
【0027】
さらに本実施例は、ワークの外周面を把持するための説明であったが、円筒状ワークの内周面を把持する構成としても良い
【産業上の利用可能性】
【0028】
上記把持装置は、自動旋盤で加工を行うワークの供給及び搬出に適した把持装置に関するものであるが、円柱形素材の突切り作業を行う工程などの回転を行うワークをクランプする作業であれば有効である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施例を示す正面図
【図2】ワークをクランプした状態を示す正面図
【図3】ワークをクランプした状態を示す側面図
【図4】本実施例の要部を示す断面図
【符号の説明】
【0030】
1 チャック
2 クランプ部材
3 外輪
4 シャフト
5 押さえ板
6 押さえパイプ
7 継ぎ手
8 ワーク
9 ねじ
10 穴


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明は、複数のクランプ部材を駆動源により開閉してワークを把持する把持装置において、クランプ部材に円柱状のシャフトと、円柱状のシャフトの外周に円筒状の外輪を配置し、円柱状のシャフトには円筒状の外輪と嵌合する箇所に複数の穴を構成し、複数の穴からエアーを排出するとともに、円筒状外輪がワークを把持することを特徴とする把持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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