説明

把持部材温度制御装置及びステアリング装置

【課題】把持部材表面に配置されたペルチェ素子による効率的な吸熱又は放熱を開始させ易くする把持部材温度制御装置を提供すること。
【解決手段】把持部材温度制御装置100は、車両に設置される把持部材2の表面に配置されるペルチェ素子3と、把持部材2と接する側のペルチェ素子3の設置面の温度を所定範囲内で維持させる設置面温度維持手段11とを備える。また、把持部材2は、中空構造の芯材201を備え、設置面温度維持手段11は、車両が駐車している間に、把持部材2の外部にある所定領域の空気を把持部材2の内部に流入させて設置面の温度を所定範囲内で維持させるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両を操作するために用いるステアリングホイール等の把持部材の表面温度を制御する把持部材温度制御装置及びその把持部材温度制御装置を備えるステアリング装置に関し、特に、エンジンを始動させるときに把持部材表面に配置されたペルチェ素子を効率的に作動させるようにする把持部材温度制御装置及びその把持部材温度制御装置を備えるステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、背中合わせに吸熱面及び放熱面を有するペルチェ素子を所定配列で外面に配置したステアリング装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このステアリング装置は、それらペルチェ素子に流す電流の向き及び大きさを制御することでペルチェ素子の表面のうちステアリングを握る操作者の皮膚と接する側の面(以下、「接触面」とする。)を温めたり冷やしたりすることにより、ステアリング装置の表面温度が高すぎたり低すぎたりした場合にも、操作者がそのステアリング装置を快適に握ることができるようにする。
【特許文献1】特開2007−101082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のステアリング装置は、車両を炎天下に駐車した場合であって、ペルチェ素子の表面のうちステアリング表面と接する側の面(以下、「設置面」とする。)の温度が過度に上昇してしまった場合、その後にエンジンを始動させ、ペルチェ素子の接触面を冷却すべくその接触面で吸熱を開始させようとするときの反作用として生じる設置面での放熱が適切に機能せず、結果的に接触面を効率的に冷却できない場合が生じ得る。
【0005】
上述の点に鑑み、本発明は、把持部材表面に配置されたペルチェ素子による効率的な吸熱又は放熱を実現させ易くする把持部材温度制御装置及びその把持部材温度制御装置を備えるステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、第一の発明に係る把持部材温度制御装置は、車両に設置される把持部材の表面に配置されるペルチェ素子と、前記把持部材と接する側の前記ペルチェ素子の設置面の温度を所定範囲内に維持する設置面温度維持手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、第二の発明は、第一の発明に係る把持部材温度制御装置であって、前記設置面温度維持手段は、車両が駐車している間、前記設置面の温度を所定範囲内に維持することを特徴とする。
【0008】
また、第三の発明は、第一又は第二の発明に係る把持部材温度制御装置であって、前記把持部材は、芯材を備え、該芯材の表面に前記設置面を接触させながら、該芯材の外周に断熱構造を配置させることを特徴とする。
【0009】
また、第四の発明は、第一乃至第三の何れかの発明に係る把持部材温度制御装置であって、前記把持部材は、中空構造の芯材を備え、前記設置面温度維持手段は、前記芯材の外部の所定領域にある空気を前記芯材の内部に流入させて前記設置面の温度を所定範囲内に維持することを特徴とする。
【0010】
また、第五の発明は、第一乃至第四の何れかの発明に係る把持部材温度制御装置を備えるステアリング装置である。
【発明の効果】
【0011】
上述の手段により、本発明は、把持部材表面に配置されたペルチェ素子による効率的な吸熱又は放熱を実現させ易くする把持部材温度制御装置及びその把持部材温度制御装置を備えるステアリング装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【実施例】
【0013】
図1は、本発明に係る把持部材温度制御装置を備えるステアリング装置の構成例を示すブロック図であり、ステアリング装置100は、車両等の操舵に用いられる装置であって、制御部1、ステアリングホイール2、ペルチェ素子3及び温度測定器4から構成される。
【0014】
制御部1は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えたコンピュータであって、例えば、接触面温度制御手段10及び設置面温度維持手段11のそれぞれに対応するプログラムをROMに記憶しながら、各手段に対応する処理をCPUに実行させる。
【0015】
ステアリングホイール2は、車両の操作者がステアリング操作を行う際に手で握る把持部材である環状のリム20、リム20の回転を支えるハブ21、及び、リム20とハブ21とを連結する複数のスポーク22から構成される。
【0016】
リム20及びスポーク22は、それぞれ中空構造であり、ハブ21の内部に設置された排熱用ファン23を用いながら、ステアリングホイール2の外部の空気をその内部に取り入れ、取り入れた空気で押し出すようにしてステアリングホイール2の内部の空気を流出させる(破線矢印参照。)。
【0017】
ここで「中空構造」とは、空気が通れる空洞がある構造であって、外面の断面形状に沿ってその空洞の断面形状が限定される必要はなく(例えば、リム20の断面形状が円形であってもその内部の空洞の断面形状が円形になる必要はない。)、その空洞の断面積は、一定であってもよく、変化するものであってもよい。
【0018】
また、その空洞は、物体(その空洞を含む物体)の中心を通過するものであってもよく、中心を通過しないものであってもよい。
【0019】
さらに、その空洞は、蜂の巣状に複数の空洞を組み合わせたものであってもよい。空洞の表面積を増大させ、物体内部を流れる空気による排熱効果を高めることができるからである。
【0020】
なお、リム20の断面形状は、典型的には円形であるが、楕円形等の操作者が握り易い他の形状であってもよい。
【0021】
図2は、図1の破線円で囲まれた部分にあるリム20の表面を拡大した図であり、多数のペルチェ素子3がリム20の表面に配置された状態を示す。
【0022】
また、図3は、図2に示すリム20のX−X断面図であり、中空管状の芯材201が断熱材202によって被覆され、ペルチェ素子3の設置面が芯材201に直接接している状態を示す。
【0023】
芯材201は、ステアリングホイール2の芯を構成する一定の強度を備えた部材であり、例えば、鉄若しくはアルミニウム等の金属材料、又は、それら金属材料をカーボングラファイト等の炭素繊維で覆ったものであって、ペルチェ素子3の設置面で発生する熱を芯材201の広い範囲に伝播させ放熱効果を高められるよう高い熱伝導性を備える。
【0024】
断熱材202は、リム20の外部と内部との間の熱伝導を抑えるための部材であり、例えば、発泡スチロールであって、直射日光による熱をリム20の内部空間に伝えにくくし、リム20の内部空間の温度上昇を抑えるようにする。
【0025】
また、断熱材202は、以下に説明するように、芯材201の周りの密閉した空気層Vを利用した魔法(保温)瓶のような構成であってもよい。
【0026】
図4は、リム20の別の実施例であり、二重中空構造を有するリム20Aの断面図を示し、図5は、図4に示すリム20AのY−Y断面図を示す。
【0027】
リム20Aは、芯材201と外殻材203との間に密閉した空気層Vを有し、ペルチェ素子3の設置面を芯材201に接触させながら、一方で、ペルチェ素子3の接触面を外殻材203の外表面から露出させるようにする。操作者の皮膚が接触面に直接触れられるようにするためである。
【0028】
なお、ペルチェ素子3の接触面は、操作者の皮膚に対する熱的効果(操作者がリム20を握れるようリム20の表面(すなわち、ペルチェ素子3の接触面である。)の温度を制御できるという効果である。)を実現できる限り、外殻材203に内包されていてもよい。
【0029】
また、空気層Vは、好適には、真空に近い状態であり、空気層V内の対流によって外殻材203表面の熱が芯材201表面に伝わるのをできるだけ抑えるようにする。
【0030】
外殻材203は、ステアリングホイール2の外殻を構成する一定の強度を備えた部材であり、例えば、鉄若しくはアルミニウム等の金属材料、又は、カーボングラファイト若しくは強化プラスチック等の炭素繊維が含まれる。
【0031】
ここで再び、図1を参照しながら、ステアリング装置100の他の構成要素について説明する。
【0032】
ペルチェ素子3は、一方の面で吸熱を行いながら他方の面で放熱を行う素子であって、ステアリングホイール2の表面に複数配置される。
【0033】
ペルチェ素子3は、可動部を有さず小型でメンテナンスが容易であり、騒音も発生させることもなく、かつ、電流の方向に応じて吸熱面と放熱面とを切り替えることができるため、ステアリングホイール2のような把持部材の表面温度を制御するための用途に好適である。
【0034】
ペルチェ素子3のそれぞれは、ステアリングホイール2の表面に吸熱専用又は放熱専用として固定的に配置され、電力供給のオン、オフにより吸放熱を開始或いは停止させてもよく、ステアリングホイール2の表面に吸放熱両用として固定的に配置され、流す電流の方向を切り替えることにより吸熱面と放熱熱とを動的に切り替えるようにしてもよい。
【0035】
また、ペルチェ素子3は、本実施例において正方形の表面を有するが、円形、楕円形、多角形等の他の形状から成る表面を有していてもよく、好適には、円形、線対称の正多角形、点対称の正偶数多角形等が用いられる。全方位における長さ(表面積)の偏りが少なくリム20の表面に隙間無く敷き詰めることができるからである。
【0036】
温度測定器4は、各種温度を測定するための機器であり、例えば、ペルチェ素子3の接触面に取り付けられたプローブ41を介してペルチェ素子3の接触面の温度を測定して制御部1に出力し、ペルチェ素子3の接触面における吸熱又は放熱をフィードバック制御させるようにする。
【0037】
また、温度測定器4は、リム20の内面に取り付けられたプローブ42を介して間接的にペルチェ素子3の設置面の温度を測定する。なお、温度測定器4は、ペルチェ素子3の設置面に直接取り付けられたプローブ42を介してペルチェ素子3の設置面の温度を直接的に測定するようにしてもよい。
【0038】
次に、制御部1が有する各種手段について説明する。
【0039】
接触面温度制御手段10は、ペルチェ素子3の接触面の温度を制御するための手段であり、例えば、車両のドアロックが解錠された場合であって、温度測定器4によって測定された接触面の温度が閾値T1(例えば、40℃)以上の場合に(夏場の炎天下では、ダッシュボードやステアリングホイール2の表面の温度が70℃以上になる場合がある。)、ペルチェ素子3の接触面で吸熱を行わせることでその接触面の温度を閾値T1未満に低下させる。
【0040】
なお、閾値T1を40℃に設定することは、ペルチェ素子3における消費電力を極力抑えながら、低温火傷(操作者が42℃以上のステアリングホイール2の表面に所定時間触れた場合に低温火傷を引き起こす場合がある。)を回避するために必要十分な条件であるためであり、更に低い温度を閾値T1に設定することを妨げるものではない。
【0041】
また、接触面温度制御手段10は、車両のドアロックが解錠された場合であって、温度測定器4によって測定された接触面の温度が閾値T2(例えば、0℃)未満の場合に、ペルチェ素子3の接触面で放熱を行わせることでその接触面の温度を増大させるようにしてもよい。
【0042】
操作者がステアリングホイール2を握った場合に、その表面が低温であることによって不快感を与えてしまうことがないようにするためである。
【0043】
なお、接触面温度制御手段10は、車両のドアロックが解錠されたことを検知してからペルチェ素子3を作動させるが、エンジンの始動を検知してからペルチェ素子3の作動を開始させるようにしてもよい。発電機が発電した電気エネルギーを用いながらペルチェ素子3を作動させるためであり、車載バッテリに対する負荷を抑えるためである。
【0044】
設置面温度維持手段11は、ペルチェ素子3の設置面の温度を所定の温度範囲内に維持するための手段であり、例えば、車両が駐車している場合であって、ペルチェ素子3の設置面の温度が閾値T3(例えば、60℃)以上となった場合に、排熱用ファン23を自動的に作動させながらステアリングホイール2の外部にある比較的低温の空気を内部に取り入れ、閾値T3以上となった内部の空気を外部に排出させることにより、設置面の温度を閾値T3未満に低下させるようにする。
【0045】
ステアリングホイール2の外部の空気は、閾値T3より低い温度状態にある空気であり、例えば、車室内の複数の位置に設置された温度センサに基づいてその所在が検知され、車室内に配置された空気通路(例えば、エアコン用の空気通路である。)を介して、ステアリングホイール2の内部に取り込まれる。
【0046】
また、その外部の空気には、好適には、車室内において比較的温度が上昇し難いところである乗車席足下の空気が採用され、更には、車両外部の空気(例えば、車両下にある空気)が採用されてもよい。
【0047】
また、設置面温度維持手段11は、排熱用ファン23の作動や空気通路の弁切り替え等に必要な電気エネルギーを、車載バッテリから得るようにしてもよく、太陽光発電によって得るようにしてもよい。これら電気エネルギーが必要とされる場合、車両の外表面での太陽光発電が可能なものと考えられるからである。
【0048】
また、設置面温度維持手段11は、排熱用ファン23の作動に代え、或いは、それに加えて、ペルチェ素子3の設置面で吸熱を実行したり、或いは、カーエアコンを作動させたりして、設置面の温度を閾値T3未満に低下させるようにしてもよい。
【0049】
このように、設置面温度維持手段11は、僅かな消費電力で設置面の温度を閾値T3未満に維持し、ペルチェ素子3を常に有効に動作させることができる状態にしておくことで、ドアロックが解除されたときに開始される接触面温度制御手段10による接触面の迅速かつ確実な温度調節を可能とする。
【0050】
なお、設置面温度維持手段11は、車両が駐車している場合であって、ペルチェ素子3の設置面の温度が閾値T4(例えば、−10℃)未満となった場合、排熱用ファン23を自動的に作動させながらステアリングホイール2の外部の比較的高温の空気を内部に取り入れ、閾値T4未満となった内部の空気を外部に排出させることにより、設置面の温度を閾値T4以上に増大させるようにしてもよい。
【0051】
次に、図6及び図7を参照しながら、接触面目標温度と設置面上限(下限)温度との間の関係について説明する。
【0052】
ここで、「接触面目標温度」とは、接触面温度制御手段10が制御目標とする接触面の温度値であり、「設置面上限(下限)温度」とは、設置面温度維持手段11が、接触面温度制御手段10によるその接触面目標温度の実現を可能とするため、車両が駐車している間に維持しようとする設置面の限界温度値である。
【0053】
図6及び図7は共に、縦軸に接触面目標温度、横軸に設置面上限(下限)温度を配し、図6は、接触面で吸熱を行い設置面で放熱を行う場合における接触面目標温度と設置面上限温度との間の関係の代表例を示す図であり、反対に、図7は、接触面で放熱を行い設置面で吸熱を行う場合における接触面目標温度と設置面下限温度との間の関係の代表例を示す図である。
【0054】
図6は、設置面の温度が、たとえ高くとも、吸熱により接触面で実現しようとする温度(例えば、40℃)より所定温度(例えば、20℃)だけ高い上限温度(例えば、60℃)未満となる必要があり、設置面の温度がその上限温度以上となってしまった場合には、接触面で効率的な吸熱が行われなくなることを示す。
【0055】
同様に、図7は、設置面の温度が、たとえ低くとも、放熱により接触面で実現しようとする温度(例えば、20℃)より所定温度(例えば、20℃)だけ低い下限温度(例えば、0℃)以上となる必要があり、設置面の温度がその下限温度未満となってしまった場合には、接触面で効率的な放熱が行われなくなることを示す。
【0056】
以上の関係に基づいて、設置面温度維持手段11は、接触面温度制御手段10が採用した上述の閾値T1(接触面で吸熱を開始させるための温度条件)を図6の接触面目標温度(縦軸)に当てはめた上で、上述の閾値T2(接触面で吸熱を開始させるために維持すべき設置面の上限温度)を図6の設置面上限温度(横軸)から導き出すようにする。
【0057】
同様に、設置面温度維持手段11は、図7を参照し、接触面温度制御手段10が採用した上述の閾値T3(接触面で放熱を開始させるための温度条件)から上述の閾値T4(接触面で放熱を開始させるために維持すべき設置面の下限温度)を導き出すようにする。
【0058】
すなわち、ステアリング装置100に接触面で吸熱を実行させる場合であって、接触面温度制御手段10が接触面を20℃に制御しようとするときには、設置面温度維持手段11は、設置面を40℃未満に維持させるようにする(図6参照。)。
【0059】
また、ステアリング装置100に接触面で放熱を実行させる場合であって、接触面温度制御手段10が接触面を40℃に制御しようとするときには、設置面温度維持手段11は、設置面を20℃以上に維持させるようにする(図7参照。)。
【0060】
なお、ステアリング装置100は、図6及び図7に示すような比例関係(一次直線で表される関係である。)以外の関係(例えば、二次曲線で表される関係がある。)に基づいて、閾値T3及びT4を導き出すようにしてもよい。
【0061】
次に、図8を参照しながら、車両が駐車している間、ステアリング装置100がペルチェ素子3における設置面の温度を所定範囲(例えば、60℃未満)内に維持させる処理(以下、「設置面温度維持処理」とする。)について説明する。
【0062】
なお、図8は、設置面温度維持処理の流れを示すフローチャートであり、ステアリング装置100の制御部1は、車両がエンジンを停止させて駐車している間、周期的に(例えば、1分間隔である。)、この設置面温度維持処理を繰り返し実行するものとする。
【0063】
最初に、ステアリング装置100の制御部1は、ペルチェ素子3の接触面に取り付けられた温度プローブ41に対応する温度測定器4の出力に基づいてペルチェ素子3の接触面の温度を取得し(ステップS1)、その接触面の温度と閾値T1とを比較して、ステアリングホイール2の表面温度を調節する必要があるか否かを判定する(ステップS2)。
【0064】
接触面の温度が閾値T1未満の場合(ステップS2のNO)、制御部1は、設置面温度維持処理を一旦終了させる。設置面の温度調節が必要な程、接触面の温度が上昇していないからである。
【0065】
接触面の温度が閾値T1以上の場合(ステップS2のYES)、制御部1は、ペルチェ素子3の設置面に取り付けられた温度プローブ42に対応する温度測定器4の出力に基づいてペルチェ素子3の設置面の温度を取得し(ステップS3)、その設置面の温度と閾値T1に基づいて決定される閾値T3(図6参照。)とを比較して、ステアリングホイール2の表面温度をすぐにでも調節できるよう、設置面の温度を調節しておく必要があるか否かを判定する(ステップS4)。
【0066】
設置面の温度が閾値T3以上の場合(ステップS4のYES)、制御部1は、排熱用ファン23の作動を開始させ(ステップS5)、設置面の温度が閾値T3未満となるようにする。
【0067】
この場合、制御部1は、排熱用ファン23を所定時間(例えば、5分間)に亘って作動させるようにしても良く、設置面の温度が所定温度(例えば、閾値T3より5℃低い温度である。)になるまで作動させるようにしてもよい。
【0068】
設置面の温度が閾値T3未満の場合(ステップS4のNO)、制御部1は、排熱用ファン23の作動を開始させることなく、設置面温度維持処理を一旦終了させる。接触面における吸熱を実行させることができない程、設置面の温度が上昇していないからである。
【0069】
以上の構成により、ステアリング装置100は、設置面の温度を所定温度範囲内に維持させておくことにより、接触面における吸熱又は放熱をすぐにでも開始させることができるようにしておくことができる。
【0070】
また、ステアリング装置100は、車両が駐車している間に設置面の温度を所定温度範囲内に維持させておくことにより、炎天下や低温下に長時間駐車させた後であっても、運転を開始させるときには、ステアリングホイール2の表面温度を把持できる状態或いは快適な状態に調節することができる。
【0071】
さらに、ステアリング装置100は、芯材201の周りに断熱材202を配置することにより、炎天下や低温下に長時間駐車させた場合であっても、芯材201の内部の温度が環境温度に応じて大きく変動しないようにするので、接触面における吸熱又は放熱をすぐにでも開始させることができるようにしておくことができる。
【0072】
さらに、ステアリング装置100は、中空管材の芯材201を採用することにより、その内側の空気の入れ換えることで設置面の温度をより簡単に所定温度範囲内に維持させておくことができ、接触面における吸熱又は放熱をすぐにでも開始させることができるようにしておくことができる。
【0073】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなしに上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0074】
例えば、上述の実施例では、車両が駐車している間に設置面の温度を所定温度範囲内に維持させるようにするが、車両が走行している間に設置面の温度を所定温度範囲内に維持させることを除外するものではない。
【0075】
ペルチェ素子3を頻繁に、或いは、継続的に作動させることにより芯材201の内部の温度が過度に増大又は低下し、熱交換効率が悪化してしまう場合もあるからである。
【0076】
また、上述の実施例では、中空管状の芯材201を採用するが、中実の芯材を採用するようにしてもよい。
【0077】
また、上述の実施例において、把持部材は、ステアリングホイール2として説明されるが、シフトレバー、ハンドブレーキレバー、アームレスト等の他の装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明に係るステアリング装置の構成例を示す図である。
【図2】図1に示すリムの拡大図である。
【図3】図2に示すリムのX−X断面図である。
【図4】二重中空構造を有するリムの断面図である。
【図5】図4に示すリムのY−Y断面図である。
【図6】接触面で吸熱を行う場合の接触面目標温度と設置面上限温度との間の関係を示すグラフである。
【図7】接触面で放熱を行う場合の接触面目標温度と設置面下限温度との間の関係を示すグラフである。
【図8】設置面温度維持処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0079】
1 制御部
2 ステアリングホイール
3 ペルチェ素子
4 温度測定器
10 接触面温度制御手段
11 設置面温度維持手段
20、20A リム
21 ハブ
22 スポーク
23 排熱用ファン
41、42 プローブ
100 ステアリング装置
201 芯材
202 断熱材
203 外殻材
V 空気層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設置される把持部材の表面に配置されるペルチェ素子と、
前記把持部材と接する側の前記ペルチェ素子の設置面の温度を所定範囲内に維持する設置面温度維持手段と、
を備えることを特徴とする把持部材温度制御装置。
【請求項2】
前記設置面温度維持手段は、車両が駐車している間、前記設置面の温度を所定範囲内に維持する、
ことを特徴とする請求項1に記載の把持部材温度制御装置。
【請求項3】
前記把持部材は、芯材を備え、該芯材の表面に前記設置面を接触させながら、該芯材の外周に断熱構造を配置させる、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の把持部材温度制御装置。
【請求項4】
前記把持部材は、中空構造の芯材を備え、
前記設置面温度維持手段は、前記芯材の外部の所定領域にある空気を前記芯材の内部に流入させて前記設置面の温度を所定範囲内に維持する、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の把持部材温度制御装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載の把持部材温度制御装置を備えるステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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