抑止機能付集排水パイプ
【課題】本発明は、斜面の安定や地滑り抑止対策としてアンカー機能と集排水機能とを併せ持つ抑止機能付集排水パイプに関し、地山を安定させるとともに、施工工事を容易にして工期短縮のできる抑止機能付集排水パイプにすることが課題である。
【解決手段】後端部が地表面側に先端部が地面内部に埋設される集排水パイプ2と、該集排水パイプの先端部に設けられる袋体3と、前記集排水パイプと前記袋体との境目に配設されてグラウト材の前記集排水パイプ内部への侵入を阻止する仕切り部材4と、前記集排水パイプの先端部に定着部を形成するためにグラウト材を注入するグラウト注入パイプ6と、前記集排水パイプの内部に配設され該パイプの先端部側に形成される定着部5に先端部7bが配設される引張材7と、を有してなる抑止機能付集排水パイプ1とするものである。
【解決手段】後端部が地表面側に先端部が地面内部に埋設される集排水パイプ2と、該集排水パイプの先端部に設けられる袋体3と、前記集排水パイプと前記袋体との境目に配設されてグラウト材の前記集排水パイプ内部への侵入を阻止する仕切り部材4と、前記集排水パイプの先端部に定着部を形成するためにグラウト材を注入するグラウト注入パイプ6と、前記集排水パイプの内部に配設され該パイプの先端部側に形成される定着部5に先端部7bが配設される引張材7と、を有してなる抑止機能付集排水パイプ1とするものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盛土や擁壁等の地滑り防止対策や、軟弱地盤の圧密促進若しくは宅地造成における軟弱地盤改良等に使用される、アンカー機能と集排水機能とを併せ持つ抑止機能付集排水パイプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地山や法面若しくは擁壁の崩落を防止するアンカー機能に、排水機能を併せ持つようにしたものが知られている(特許文献1参照)。これは、例えば、透水性外管内に間隙を介して不透水性内管を設け、該内管と上記間隙との連通部を有し、同連通部に上記外管と上記内管との集水継手を設けてなる多重管を、地山不安定部の地表面から地山安定部に向かって仰角に埋設したものである。
【特許文献1】特開平06−88335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の抑止機能付集排水パイプでは、多重管でなりそのアンカー機能は専用のアンカー材があるわけではないので、大きな支持強度が発揮されるものではない。また、部品点数が多く、それを必要長さに順次組立ながら現地で削孔に埋設するので、必ずしも効率的な作業とはいえないという課題がある。
本発明に係る抑止機能付集排水パイプは、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る抑止機能付集排水パイプの上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、後端部が地表面側に先端部が地面内部に埋設される集排水パイプと、該集排水パイプの先端部に設けられる袋体と、前記集排水パイプと前記袋体との境目に配設されてグラウト材の前記集排水パイプ内部への侵入を阻止する仕切り部材と、前記集排水パイプの先端部に定着部を形成するためにグラウト材を注入するグラウト注入パイプと、前記集排水パイプの内部に配設され該パイプの先端部側に形成される定着部に先端部が配設される引張材と、を有してなることである。
【0005】
前記グラウト注入パイプは、集排水パイプの内部に配設されるとともに前記仕切り部材を貫通して前記袋体内部にその先端部が到達するようにして配設されていること、;
前記グラウト注入パイプは、袋体を貫通して削孔の奥にパイプの先端部が至り、前記袋体を貫通する部分の途中に袋体用注入孔が別に設けられていること、;
前記定着部内において袋体の先に集排水パイプが配設され、グラウト注入パイプが当該集排水パイプの外側に配設され、引張材の先端部が当該集排水パイプの内部に配設されるとともに、この集排水パイプと当該引張材との間隙に硬化材が充填されていること、;
前記集排水パイプの後端部に、袋体が設けられていること、;
を含むものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の抑止機能付集排水パイプによれば、地山の排水機能とアンカー機能とが発揮されるとともに、グラウト材の注入によって定着部を形成するので、施工が容易であり工数低減となる。また、定着部の袋体がグラウト材によって膨張し削孔の内壁に密着して、安定した定着部となる。
また、定着部を、削孔の空間部に直接に、グラウト材を注入して固化させることで形成し、定着部の付着強度を強化することもできる。この定着部をグラウト材で形成する際に、予め集排水パイプに硬化材を充填したものを球根部に挿入してグラウト材を注入すれば、グラウト材の使用量を軽減できて、工期も短縮されコスト低減となる。
また、抑止機能付集排水パイプの地表面側の後端部に袋体を設けることで、不安定部分を両端の袋体で挟み、地山の安定に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係る抑止機能付集排水パイプ1は、図1に示すように、後端部2aが地表面側に先端部2bが地面内部に埋設される集排水パイプ2と、該集排水パイプ2の先端部2bに設けられる袋体3と、前記集排水パイプ2と前記袋体3との境目に配設されてグラウト材の前記集排水パイプ内部への侵入を阻止する仕切り部材4と、前記集排水パイプ2の先端部2bに定着部5を形成するためにグラウト材を注入するグラウト注入パイプ6と、前記集排水パイプ2の内部に配設され該パイプ2の先端部2b側に形成される定着部5に先端部7aが配設させる引張材7と、を有してなる。
【0008】
前記グラウト注入パイプ6は、集排水パイプ2の内部に配設されるとともに前記仕切り部材4を貫通して前記袋体3内部にその先端部6aが到達するようにして配設されている。また、前記引張材7は、例えばPC鋼より線でなるストランドを合成樹脂製の外覆をアンボンドタイプにして被覆してなるものであり、左右2カ所に配設され、定着板8に所望の緊張力を付加されてウエッジ9で、クサビ式でそれぞれ定着されている。
【0009】
前記引張材7の定着には、図2に示すように、引張材7の後端部7aに固着されている、外周部にネジ溝を刻設してなるマンション(金属製定着具)に裸着させるナット10で定着させるネジ式の場合もある。
【0010】
前記定着板8には、所用厚さの四角形板であり、前記集排水パイプ2で集めた水を外に排水するための排水孔8aが設けられている。
【0011】
前記集排水パイプ2は、例えば、ポリエチレン製(PE製)等の合成樹脂製の筒体であり、その周囲には地盤等の水をパイプ内部に集水するための孔が任意に設けられている。また、その直径は略40mm〜90mm程度である。また、全体の長さは、地盤の定着部分に到達させて、更に5m乃至10m程度挿入できるようにするので、設置場所に応じて適宜長さにする必要がある。
【0012】
その場合には、図3乃至図4に示すように、一定長さの集排水パイプ2に対して、中間接続具2cが用いられる。図4(B)に示すように、この中間接続具2cの内部に、前記グラウト注入パイプ6と引張材7とを挿通させて固定する挿通部2d,2eが、金型で一体に成型されて設けられる。集排水パイプ2の内部で下側には水が集水されて流下するのでその流下面積を確保すべく、前記挿通部2d,2eによって前記注入パイプ6と引張材7とを、中間部若しくは上部に配設する。
【0013】
なお、前記挿通部2d,2eを集排水パイプ2と一体成形することに限らず、同図4(B)の空間部の形状を外形とするスペーサ11として、これを中間接続具2c内部に固定して、前記挿通部2d,2eを形成することもできる。
【0014】
また、図1(A)に示すように、引張材7の先端部7bは、端部治具12により引張材7と袋体3とを結束具13で結束されて、固定されている。
【0015】
このような本発明に係る抑止機能付集排水パイプ1は、例えば、図5に示すように、切土法面や盛土に使用することで、引張材に緊張録を付与することで、切土法面や盛土に軽い拘束を与え、更に地下水位が高い盛土において地震時の液状化防止のための排水機能を付与するものである。
【0016】
また、図6に示すように、地滑り地を対象にして、地滑り地の横ボーリング工に使用する集水パイプに、アンカー機能を付加するようにすることができる。グラウンドアンカー14とともに作用してアンカー機能の強化および補助となる。
【0017】
その他、一般的な地盤圧密工法を示す図7(A)に代わって、同図7(B)に示すように、集排水パイプ1を軟弱地盤15に垂直に打ち込み、受圧板を設けて引張材7に緊張力を付与して、圧密沈下を促進させるようにするものである。なお、この場合には、集排水パイプ2の内部に集水された水を地表面に吸い上げる装置(例えば、ポンプ等)が必要となる。
【0018】
また、アンカー機能があるので、図8(A),(B)に示すように、マンホールや石油タンクのような地盤に埋設してあるものの浮き上がりを抑止することができる。更に、その集配水機能により、地盤の液状化の防止にも作用する。同図8(A)は、集排水パイプ2で集めた水を、マンホール16内に排水する場合と、同図8(B)は、前記水を地上にくみ上げて排水する場合とを示している。このほか、橋脚,浄水槽,風力発電の基礎などにも適用できる。
【0019】
また、この抑止機能付集排水パイプ1の施工には、例えば、盛土の法面などに仰角(約5°程度)でする場合、ボーリング機で削孔して、孔先端部に拡径した球根部Aを作る。そして、本発明に係る抑止機能付集排水パイプ1を、袋体3のある先端側から削孔内に差し込み、長さに応じて中間接続具2cを介在させて連接し、引張材7及びグラウト注入パイプ6も固定させながら差し込んでいく。
【0020】
前記グラウト注入パイプ6で、グラウト材をグラウト注入装置で注入する。これにより、袋体3がグラウト材により膨張し、地盤の球根部Aに充填された状態になる。グラウト材は仕切り部材4により、定着部5から自由長部の集排水パイプ2内部に侵入することはない。
【0021】
そして、前記グラウト材が硬化して袋体3による定着部5が形成された後に、地表面側の法面で、コンクリート製の受圧板などに定着板8を設置して、クサビ式(図1)若しくはネジ式(図2)により、ジャッキで引張材7に緊張力を付与して定着させる。このようにして、本発明に係る抑止機能付集排水パイプ1が補強用のアンカー体として、且つ、地山の集排水パイプとして機能するものである。
【0022】
本発明の他の実施例に係る抑止機能付集排水パイプ1aとしては、図9に示すように、定着部5の構造に係るもので、削孔の先端部の球根部Aに直接的にグラウト材を注入して、地盤等にグラウト材が密着した球根部Aを形成するようにしたものである。
【0023】
集排水パイプ2の先端部の仕切り部材4を境にして、その先にグラウト注入パイプ6の先端部6aを地盤の球根部A内に直接突出させ、引張材7の先端部7bも同様に球根部A内に突出させる。前記仕切り部材4においては、長さの短くしてある袋体3を取り付け、結束具13でグラウト材が自由長部の集排水パイプ2側に侵入しないように構成している。
【0024】
また、前記グラウト注入パイプ6は、前記袋体3を貫通して削孔の奥にパイプの先端部6aが至るとともに、前記袋体3を貫通する部分の途中に袋体用注入孔6bが別に設けられている。これにより、前記パイプ6で球根部Aにグラウト材を注入すると、同時に、前記袋体3にもグラウト材が注入され、当該袋体3が膨張して削孔内に充填される。
【0025】
これにより、球根部Aのグラウト材が削孔内から地表側へ漏出するのを防止する。更に、この球根部Aを加圧して地山に押しつける効果もある。また、仕切り部材4における図中の右側の結束具13により、球根部Aに注入されたグラウト材が、自由長部の集排水パイプ2内への侵入が防止される。
【0026】
前記集排水パイプ1aにより、球根部Aがグラウト材で地盤内に密実に形成され、定着部として強固なものとなる。
【0027】
本発明の他の実施例に係る抑止機能付集排水パイプ1bは、図10に示すように、定着部5内において袋体3の先に集排水パイプ2が配設され、グラウト注入パイプ6が当該集排水パイプ2の外側に配設され、引張材7の先端部7bが当該集排水パイプ2の内部に配設されるとともに、この集排水パイプ2と当該引張材7との間隙に、例えば、合成樹脂による硬化材17が充填されてなるものである。
【0028】
前記定着部5における集排水パイプ2の先端部には、筒状の終端パイプ18が設けられている。このように、集排水パイプ1bの先端部を予め定着部として形成しておくことで、削孔に挿入した後に、球根部Aに注入するグラウト材は少なくて済む。よって地山にこの抑止機能付集排水パイプ1bを設置する工期を短縮させることができる。更に、定着部5としての強度も向上する。
【0029】
本発明の他の実施例に係る抑止機能付集排水パイプ1cは、図11に示すように、集排水パイプ1cの後端部2aの側において、袋体3aが設けられているものである。この袋体3aにグラウト材を充填させることで、抑止機能付集排水パイプ1cの両端で定着されて、受圧板の代わりとなって盛土等の不安定部の緩みを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る抑止機能付集排水パイプ1の正面図(A)と、側面図(B)と、X−X線に沿った断面図(C)である。
【図2】同引張材7の地表側の定着部材が、ネジ式である場合の一部半断面図(A)と、その側面図(B)とである。
【図3】同本発明の抑止機能付集排水パイプ1において、集排水パイプ2に中間接続具2cで長さを延長する様子を示す半断面図である。
【図4】中間接続具2cの判断面図(A)と、Y−Y線に沿った断面図(B)である。
【図5】本発明に係る抑止機能付集排水パイプ1の使用例の説明図である。
【図6】同本発明に係る抑止機能付集排水パイプ1の使用例の説明図である。
【図7】従来の盛土とサンドパイルによる軟弱地盤の改良工法を示す説明図(A)と、本発明の抑止機能付集排水パイプ1を使用した改良工法を示す説明図(B)とである。
【図8】本発明の抑止機能付集排水パイプ1をマンホールの浮き上がり防止に使用した例の説明図(A),(B)である。
【図9】他の実施例に係る抑止機能付集排水パイプ1aの半断面図(A)と、側面図(B)とである。
【図10】同他の実施例に係る抑止機能付集排水パイプ1bの半断面図(A)と、側面図(B)とである。
【図11】同 他の実施例に係る抑止機能付集排水パイプ1cの半断面図(A)と、側面図(B)とである。
【符号の説明】
【0031】
1,1a,1b,1c 抑止機能付集排水パイプ、
2 集水パイプ、
2a 後端部、
2b 先端部、
2c 中間接続具、
2d,2e 挿通部、
3,3a 袋体、
4 仕切り部材、
5 定着部、
6 グラウト注入パイプ、
6a 先端部、
6b 袋体用注入孔、
7 引張材、
7a 後端部、
7b 先端部、
8 定着板、
8a 排水孔、
9 ウエッジ、
10 ナット、
11 スペーサ、
12 端部治具、
13 結束具、
14 グラウンドアンカー、
15 軟弱地盤、
16 マンホール、
17 硬化材。
【技術分野】
【0001】
本発明は、盛土や擁壁等の地滑り防止対策や、軟弱地盤の圧密促進若しくは宅地造成における軟弱地盤改良等に使用される、アンカー機能と集排水機能とを併せ持つ抑止機能付集排水パイプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地山や法面若しくは擁壁の崩落を防止するアンカー機能に、排水機能を併せ持つようにしたものが知られている(特許文献1参照)。これは、例えば、透水性外管内に間隙を介して不透水性内管を設け、該内管と上記間隙との連通部を有し、同連通部に上記外管と上記内管との集水継手を設けてなる多重管を、地山不安定部の地表面から地山安定部に向かって仰角に埋設したものである。
【特許文献1】特開平06−88335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の抑止機能付集排水パイプでは、多重管でなりそのアンカー機能は専用のアンカー材があるわけではないので、大きな支持強度が発揮されるものではない。また、部品点数が多く、それを必要長さに順次組立ながら現地で削孔に埋設するので、必ずしも効率的な作業とはいえないという課題がある。
本発明に係る抑止機能付集排水パイプは、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る抑止機能付集排水パイプの上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、後端部が地表面側に先端部が地面内部に埋設される集排水パイプと、該集排水パイプの先端部に設けられる袋体と、前記集排水パイプと前記袋体との境目に配設されてグラウト材の前記集排水パイプ内部への侵入を阻止する仕切り部材と、前記集排水パイプの先端部に定着部を形成するためにグラウト材を注入するグラウト注入パイプと、前記集排水パイプの内部に配設され該パイプの先端部側に形成される定着部に先端部が配設される引張材と、を有してなることである。
【0005】
前記グラウト注入パイプは、集排水パイプの内部に配設されるとともに前記仕切り部材を貫通して前記袋体内部にその先端部が到達するようにして配設されていること、;
前記グラウト注入パイプは、袋体を貫通して削孔の奥にパイプの先端部が至り、前記袋体を貫通する部分の途中に袋体用注入孔が別に設けられていること、;
前記定着部内において袋体の先に集排水パイプが配設され、グラウト注入パイプが当該集排水パイプの外側に配設され、引張材の先端部が当該集排水パイプの内部に配設されるとともに、この集排水パイプと当該引張材との間隙に硬化材が充填されていること、;
前記集排水パイプの後端部に、袋体が設けられていること、;
を含むものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の抑止機能付集排水パイプによれば、地山の排水機能とアンカー機能とが発揮されるとともに、グラウト材の注入によって定着部を形成するので、施工が容易であり工数低減となる。また、定着部の袋体がグラウト材によって膨張し削孔の内壁に密着して、安定した定着部となる。
また、定着部を、削孔の空間部に直接に、グラウト材を注入して固化させることで形成し、定着部の付着強度を強化することもできる。この定着部をグラウト材で形成する際に、予め集排水パイプに硬化材を充填したものを球根部に挿入してグラウト材を注入すれば、グラウト材の使用量を軽減できて、工期も短縮されコスト低減となる。
また、抑止機能付集排水パイプの地表面側の後端部に袋体を設けることで、不安定部分を両端の袋体で挟み、地山の安定に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明に係る抑止機能付集排水パイプ1は、図1に示すように、後端部2aが地表面側に先端部2bが地面内部に埋設される集排水パイプ2と、該集排水パイプ2の先端部2bに設けられる袋体3と、前記集排水パイプ2と前記袋体3との境目に配設されてグラウト材の前記集排水パイプ内部への侵入を阻止する仕切り部材4と、前記集排水パイプ2の先端部2bに定着部5を形成するためにグラウト材を注入するグラウト注入パイプ6と、前記集排水パイプ2の内部に配設され該パイプ2の先端部2b側に形成される定着部5に先端部7aが配設させる引張材7と、を有してなる。
【0008】
前記グラウト注入パイプ6は、集排水パイプ2の内部に配設されるとともに前記仕切り部材4を貫通して前記袋体3内部にその先端部6aが到達するようにして配設されている。また、前記引張材7は、例えばPC鋼より線でなるストランドを合成樹脂製の外覆をアンボンドタイプにして被覆してなるものであり、左右2カ所に配設され、定着板8に所望の緊張力を付加されてウエッジ9で、クサビ式でそれぞれ定着されている。
【0009】
前記引張材7の定着には、図2に示すように、引張材7の後端部7aに固着されている、外周部にネジ溝を刻設してなるマンション(金属製定着具)に裸着させるナット10で定着させるネジ式の場合もある。
【0010】
前記定着板8には、所用厚さの四角形板であり、前記集排水パイプ2で集めた水を外に排水するための排水孔8aが設けられている。
【0011】
前記集排水パイプ2は、例えば、ポリエチレン製(PE製)等の合成樹脂製の筒体であり、その周囲には地盤等の水をパイプ内部に集水するための孔が任意に設けられている。また、その直径は略40mm〜90mm程度である。また、全体の長さは、地盤の定着部分に到達させて、更に5m乃至10m程度挿入できるようにするので、設置場所に応じて適宜長さにする必要がある。
【0012】
その場合には、図3乃至図4に示すように、一定長さの集排水パイプ2に対して、中間接続具2cが用いられる。図4(B)に示すように、この中間接続具2cの内部に、前記グラウト注入パイプ6と引張材7とを挿通させて固定する挿通部2d,2eが、金型で一体に成型されて設けられる。集排水パイプ2の内部で下側には水が集水されて流下するのでその流下面積を確保すべく、前記挿通部2d,2eによって前記注入パイプ6と引張材7とを、中間部若しくは上部に配設する。
【0013】
なお、前記挿通部2d,2eを集排水パイプ2と一体成形することに限らず、同図4(B)の空間部の形状を外形とするスペーサ11として、これを中間接続具2c内部に固定して、前記挿通部2d,2eを形成することもできる。
【0014】
また、図1(A)に示すように、引張材7の先端部7bは、端部治具12により引張材7と袋体3とを結束具13で結束されて、固定されている。
【0015】
このような本発明に係る抑止機能付集排水パイプ1は、例えば、図5に示すように、切土法面や盛土に使用することで、引張材に緊張録を付与することで、切土法面や盛土に軽い拘束を与え、更に地下水位が高い盛土において地震時の液状化防止のための排水機能を付与するものである。
【0016】
また、図6に示すように、地滑り地を対象にして、地滑り地の横ボーリング工に使用する集水パイプに、アンカー機能を付加するようにすることができる。グラウンドアンカー14とともに作用してアンカー機能の強化および補助となる。
【0017】
その他、一般的な地盤圧密工法を示す図7(A)に代わって、同図7(B)に示すように、集排水パイプ1を軟弱地盤15に垂直に打ち込み、受圧板を設けて引張材7に緊張力を付与して、圧密沈下を促進させるようにするものである。なお、この場合には、集排水パイプ2の内部に集水された水を地表面に吸い上げる装置(例えば、ポンプ等)が必要となる。
【0018】
また、アンカー機能があるので、図8(A),(B)に示すように、マンホールや石油タンクのような地盤に埋設してあるものの浮き上がりを抑止することができる。更に、その集配水機能により、地盤の液状化の防止にも作用する。同図8(A)は、集排水パイプ2で集めた水を、マンホール16内に排水する場合と、同図8(B)は、前記水を地上にくみ上げて排水する場合とを示している。このほか、橋脚,浄水槽,風力発電の基礎などにも適用できる。
【0019】
また、この抑止機能付集排水パイプ1の施工には、例えば、盛土の法面などに仰角(約5°程度)でする場合、ボーリング機で削孔して、孔先端部に拡径した球根部Aを作る。そして、本発明に係る抑止機能付集排水パイプ1を、袋体3のある先端側から削孔内に差し込み、長さに応じて中間接続具2cを介在させて連接し、引張材7及びグラウト注入パイプ6も固定させながら差し込んでいく。
【0020】
前記グラウト注入パイプ6で、グラウト材をグラウト注入装置で注入する。これにより、袋体3がグラウト材により膨張し、地盤の球根部Aに充填された状態になる。グラウト材は仕切り部材4により、定着部5から自由長部の集排水パイプ2内部に侵入することはない。
【0021】
そして、前記グラウト材が硬化して袋体3による定着部5が形成された後に、地表面側の法面で、コンクリート製の受圧板などに定着板8を設置して、クサビ式(図1)若しくはネジ式(図2)により、ジャッキで引張材7に緊張力を付与して定着させる。このようにして、本発明に係る抑止機能付集排水パイプ1が補強用のアンカー体として、且つ、地山の集排水パイプとして機能するものである。
【0022】
本発明の他の実施例に係る抑止機能付集排水パイプ1aとしては、図9に示すように、定着部5の構造に係るもので、削孔の先端部の球根部Aに直接的にグラウト材を注入して、地盤等にグラウト材が密着した球根部Aを形成するようにしたものである。
【0023】
集排水パイプ2の先端部の仕切り部材4を境にして、その先にグラウト注入パイプ6の先端部6aを地盤の球根部A内に直接突出させ、引張材7の先端部7bも同様に球根部A内に突出させる。前記仕切り部材4においては、長さの短くしてある袋体3を取り付け、結束具13でグラウト材が自由長部の集排水パイプ2側に侵入しないように構成している。
【0024】
また、前記グラウト注入パイプ6は、前記袋体3を貫通して削孔の奥にパイプの先端部6aが至るとともに、前記袋体3を貫通する部分の途中に袋体用注入孔6bが別に設けられている。これにより、前記パイプ6で球根部Aにグラウト材を注入すると、同時に、前記袋体3にもグラウト材が注入され、当該袋体3が膨張して削孔内に充填される。
【0025】
これにより、球根部Aのグラウト材が削孔内から地表側へ漏出するのを防止する。更に、この球根部Aを加圧して地山に押しつける効果もある。また、仕切り部材4における図中の右側の結束具13により、球根部Aに注入されたグラウト材が、自由長部の集排水パイプ2内への侵入が防止される。
【0026】
前記集排水パイプ1aにより、球根部Aがグラウト材で地盤内に密実に形成され、定着部として強固なものとなる。
【0027】
本発明の他の実施例に係る抑止機能付集排水パイプ1bは、図10に示すように、定着部5内において袋体3の先に集排水パイプ2が配設され、グラウト注入パイプ6が当該集排水パイプ2の外側に配設され、引張材7の先端部7bが当該集排水パイプ2の内部に配設されるとともに、この集排水パイプ2と当該引張材7との間隙に、例えば、合成樹脂による硬化材17が充填されてなるものである。
【0028】
前記定着部5における集排水パイプ2の先端部には、筒状の終端パイプ18が設けられている。このように、集排水パイプ1bの先端部を予め定着部として形成しておくことで、削孔に挿入した後に、球根部Aに注入するグラウト材は少なくて済む。よって地山にこの抑止機能付集排水パイプ1bを設置する工期を短縮させることができる。更に、定着部5としての強度も向上する。
【0029】
本発明の他の実施例に係る抑止機能付集排水パイプ1cは、図11に示すように、集排水パイプ1cの後端部2aの側において、袋体3aが設けられているものである。この袋体3aにグラウト材を充填させることで、抑止機能付集排水パイプ1cの両端で定着されて、受圧板の代わりとなって盛土等の不安定部の緩みを抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る抑止機能付集排水パイプ1の正面図(A)と、側面図(B)と、X−X線に沿った断面図(C)である。
【図2】同引張材7の地表側の定着部材が、ネジ式である場合の一部半断面図(A)と、その側面図(B)とである。
【図3】同本発明の抑止機能付集排水パイプ1において、集排水パイプ2に中間接続具2cで長さを延長する様子を示す半断面図である。
【図4】中間接続具2cの判断面図(A)と、Y−Y線に沿った断面図(B)である。
【図5】本発明に係る抑止機能付集排水パイプ1の使用例の説明図である。
【図6】同本発明に係る抑止機能付集排水パイプ1の使用例の説明図である。
【図7】従来の盛土とサンドパイルによる軟弱地盤の改良工法を示す説明図(A)と、本発明の抑止機能付集排水パイプ1を使用した改良工法を示す説明図(B)とである。
【図8】本発明の抑止機能付集排水パイプ1をマンホールの浮き上がり防止に使用した例の説明図(A),(B)である。
【図9】他の実施例に係る抑止機能付集排水パイプ1aの半断面図(A)と、側面図(B)とである。
【図10】同他の実施例に係る抑止機能付集排水パイプ1bの半断面図(A)と、側面図(B)とである。
【図11】同 他の実施例に係る抑止機能付集排水パイプ1cの半断面図(A)と、側面図(B)とである。
【符号の説明】
【0031】
1,1a,1b,1c 抑止機能付集排水パイプ、
2 集水パイプ、
2a 後端部、
2b 先端部、
2c 中間接続具、
2d,2e 挿通部、
3,3a 袋体、
4 仕切り部材、
5 定着部、
6 グラウト注入パイプ、
6a 先端部、
6b 袋体用注入孔、
7 引張材、
7a 後端部、
7b 先端部、
8 定着板、
8a 排水孔、
9 ウエッジ、
10 ナット、
11 スペーサ、
12 端部治具、
13 結束具、
14 グラウンドアンカー、
15 軟弱地盤、
16 マンホール、
17 硬化材。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
後端部が地表面側に先端部が地面内部に埋設される集排水パイプと、
該集排水パイプの後端部に設けられる袋体と、
前記集排水パイプと前記袋体との境目に配設されてグラウト材の前記集排水パイプ内部への侵入を阻止する仕切り部材と、
前記集排水パイプの先端部に定着部を形成するためにグラウト材を注入するグラウト注入パイプと、
前記集排水パイプの内部に配設され該パイプの先端部側に形成される定着部に先端部が配設される引張材と、を有してなること、
を特徴とする抑止機能付集排水パイプ。
【請求項2】
グラウト注入パイプは、集排水パイプの内部に配設されるとともに前記仕切り部材を貫通して前記袋体内部にその先端部が到達するようにして配設されていること、
を特徴とする請求項1に記載の抑止機能付集排水パイプ。
【請求項3】
グラウト注入パイプは、袋体を貫通して削孔の奥にパイプの先端部が至り、前記袋体を貫通する部分の途中に袋体用注入孔が別に設けられていること、
を特徴とする請求項1に記載の抑止機能付集排水パイプ。
【請求項4】
定着部内において袋体の先に集排水パイプが配設され、グラウト注入パイプが当該集排水パイプの外側に配設され、引張材の先端部が当該集排水パイプの内部に配設されるとともに、この集排水パイプと当該引張材との間隙に硬化材が充填されていること、
を特徴とする請求項3に記載の抑止機能付集排水パイプ。
【請求項5】
集排水パイプの後端部に、袋体が設けられていること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の抑止機能付集排水パイプ。
【請求項1】
後端部が地表面側に先端部が地面内部に埋設される集排水パイプと、
該集排水パイプの後端部に設けられる袋体と、
前記集排水パイプと前記袋体との境目に配設されてグラウト材の前記集排水パイプ内部への侵入を阻止する仕切り部材と、
前記集排水パイプの先端部に定着部を形成するためにグラウト材を注入するグラウト注入パイプと、
前記集排水パイプの内部に配設され該パイプの先端部側に形成される定着部に先端部が配設される引張材と、を有してなること、
を特徴とする抑止機能付集排水パイプ。
【請求項2】
グラウト注入パイプは、集排水パイプの内部に配設されるとともに前記仕切り部材を貫通して前記袋体内部にその先端部が到達するようにして配設されていること、
を特徴とする請求項1に記載の抑止機能付集排水パイプ。
【請求項3】
グラウト注入パイプは、袋体を貫通して削孔の奥にパイプの先端部が至り、前記袋体を貫通する部分の途中に袋体用注入孔が別に設けられていること、
を特徴とする請求項1に記載の抑止機能付集排水パイプ。
【請求項4】
定着部内において袋体の先に集排水パイプが配設され、グラウト注入パイプが当該集排水パイプの外側に配設され、引張材の先端部が当該集排水パイプの内部に配設されるとともに、この集排水パイプと当該引張材との間隙に硬化材が充填されていること、
を特徴とする請求項3に記載の抑止機能付集排水パイプ。
【請求項5】
集排水パイプの後端部に、袋体が設けられていること、
を特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の抑止機能付集排水パイプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−170115(P2007−170115A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−372016(P2005−372016)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(390029012)株式会社エスイー (28)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(390029012)株式会社エスイー (28)
【Fターム(参考)】
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