説明

投写光学系、投写用ユニットおよび投写型表示装置

【課題】ズーム状態が変化しても、スクリーン(被投写面)上に投写画像を適正に投写し得るプロジェクタを提供する。
【解決手段】投写レンズの手前に透明平板104を配置し、ズーム調整用リング103の回転に連動して透明平板104を傾斜させる。透明平板104が傾斜すると、投写レンズに対する表示素子の見かけの位置が、投写光学系の光軸に垂直な方向に変位する。これにより、スクリーン上における投写画像の位置が、そのズーム状態において適正となる位置に調整される。透明平板104の傾斜制御は、たとえば、カム孔102aとピン104bからなる伝達機構によって実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投写光学系、投写用ユニットおよび投写型表示装置に関し、特に、斜め投写型の投写型表示装置に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
表示素子(液晶パネル等)上の画像を被投写面(スクリーン等)上に拡大投写する投写型表示装置(以下、「プロジェクタ」という)が商品化され広く普及している。この種のプロジェクタでは、スクリーンとプロジェクタ本体との距離を短くするために、投写光学系の広角化とともに、投写光の進行方向を投写光学系の光軸に対して傾斜させる、斜め投写の構成をとるプロジェクタが提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1に記載の発明では、投写光学系として大画角の広角レンズが用いられ、表示素子とスクリーンを投写光学系の光軸に対して互いに相反する方向にシフトさせることにより、投写距離の短縮が実現されている。
【0004】
また、特許文献2に記載の発明では、投写光学系として屈折光学系と反射面が用いられ、表示素子上の画像を屈折光学系と反射面の間に中間像として結像させ、この中間像を反射面によって拡大投写することにより、投写距離の短縮が実現されている。
【特許文献1】特開平5−100312号公報
【特許文献2】特開2004−258620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、広角で斜め投写の構成をとるプロジェクタでは、ズーム機能が付加された場合に、ズーム状態の変化に応じてスクリーン上における投写画像の投写位置が大きくずれ、投写画像の一部がスクリーンからはみ出してしまうとの問題が生じる。さらに、上記特許文献2に記載の構成においては、ズーム状態を変化させるに応じて中間像の結像位置が大きくシフトするため、結像位置のシフト範囲を全てカバーするためには、かなり大きな反射面が必要となるとの問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような問題を回避するためになされたものであり、ズーム状態が変化しても、スクリーン上に投写画像を適正に投写し得るプロジェクタを提供することを課題とする。加えて、上記特許文献2に記載の構成に本発明が適用された場合にも、ズーム状態の変化によって生じる中間像のシフトを抑制でき、よって、反射面の大型化を抑制できるプロジェクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に鑑み本発明は、それぞれ以下の特徴を有する。
【0008】
請求項1の発明は、表示素子上の画像を被投写面上に拡大投写する投写型表示装置に用いる投写光学系に関するものである。この投写光学系は、前記被投写面上における投写画像のサイズを調整するズーム調整部と、前記投写光学系の光軸に対する前記表示素子の光学的な位置を前記ズーム調整部における前記投写画像のサイズ変更に応じて前記光軸に垂直な方向に変位させるシフト調整部とを備える。
【0009】
この発明によれば、ズーム状態に応じて表示素子の光学的な位置が適宜調整され、これにより、被投写面上における投写画像の位置が、投写画像のサイズに対して適正な位置に調整される。よって、ズーム状態が変化しても、スクリーン(被投写面)上に投写画像を適正に投写することができる。
【0010】
請求項1に記載の投写光学系において、前記シフト調整部は、前記ズーム調整部における前記投写画像のサイズ変更に応じて、前記被投写面上における前記投写画像の基準端のシフトを抑制するよう、前記光軸に対する前記表示素子の光学的な位置を調整するよう構成され得る。こうすれば、基準端を、たとえば、スクリーンの境界位置近傍に設定したとしても、投写画像のサイズ変更によって、この基準端がスクリーンからはみ出すことはない。したがって、投写画像のサイズが変更されても、投写画像をスクリーン上に円滑に投写することができる。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の投写光学系において、前記ズーム調整部は、周方向に回転駆動されるに応じて前記投写画像のズーム状態が変化するズーム調整用リングを備え、また、前記シフト調整部は、前記表示素子の光学的な位置を前記光軸に垂直な方向に変位させる光学素子と、前記ズーム調整用リングの回転駆動量を前記光学素子の変位量に変換して前記光学素子に伝達する伝達機構を有する。
【0012】
この発明によれば、光学素子がズーム調整用リングに機構的に連動する。このため、別途、光学素子を駆動するための駆動源が不要となり、コストの低減と構成の簡素化が図られる。
【0013】
請求項3の発明は、請求項2に記載の投写光学系において、前記光学素子は透明平板であって、この透明平板を前記光軸に対し傾斜させることにより、前記光軸に対する前記表示素子の光学的な位置が変化することを特徴とする。
【0014】
この発明によれば、透明平板を傾斜させるのみで表示素子の光学的な位置を変化させることができる。よって、構成の簡素化を図ることができ、また、透明平板としてガラス板等の安価な素子を用いることができるため、コストの低減を図ることができる。
【0015】
請求項3に記載の投写光学系において、前記伝達機構は、前記ズーム調整用リングに連動するとともに前記光学素子の変位方向に傾斜したカム溝を有する円筒体と、前記透明平板に突設されるとともに前記カム溝に係合する突起とを有するよう構成され得る。こうすれば、伝達機構が、突起とカムによって構成されるため、構成の簡素化を図ることができる。
【0016】
請求項4の発明は、表示素子と、該表示素子上の画像を被投写面上に拡大投写する投写光学系とを具備する投写用ユニットに関するものである。この投写用ユニットは、前記被投写面上における投写画像のサイズを調整するズーム調整部と、前記投写光学系の光軸に対する前記表示素子の光学的な位置を、前記ズーム調整部における前記投写画像のサイズ変更に応じて、前記光軸に垂直な方向に変位させるシフト調整部とを備える。
【0017】
この発明によれば、ズーム状態に応じて表示素子の光学的な位置が適宜調整され、これにより、被投写面上における投写画像の位置が、投写画像のサイズに対して適正な位置に調整される。よって、ズーム状態が変化しても、スクリーン(被投写面)上に投写画像を適正に投写することができる。
【0018】
請求項4に記載の投写用ユニットにおいて、前記シフト調整部は、前記ズーム調整部における前記投写画像のサイズ変更に応じて、前記被投写面上における前記投写画像の基準端のシフトを抑制するよう前記光軸に対する前記表示素子の光学的な位置を調整するよう構成され得る。
【0019】
こうすれば、基準端を、たとえば、スクリーンの境界位置近傍に設定したとしても、投写画像のサイズ変更によって、この基準端がスクリーンからはみ出すことはない。したがって、投写画像のサイズが変更されても、投写画像をスクリーン上に円滑に投写することができる。
【0020】
さらに、請求項4に記載の投写用ユニットにおいて、前記ズーム調整部は、周方向に回転駆動されるに応じて前記投写画像のズーム状態が変化するズーム調整用リングを備える。また、前記シフト調整部は、前記表示素子を支持するとともに前記表示素子の位置を前記光軸に垂直な方向に変位させるシフト機構と、前記ズーム調整用リングの回転駆動量を前記シフト機構に伝達する伝達機構とを有するよう構成され得る。こうすれば、光学素子がズーム調整用リングに機構的に連動するため、別途、光学素子を駆動するための駆動源が不要となり、コストの低減と構成の簡素化が図られる。
【0021】
請求項5の発明は、表示素子と、該表示素子上の画像を被投写面上に拡大投写する投写光学系とを具備する投写用ユニットに関するものである。この投写用ユニットは、前記被投写面上における投写画像のサイズを調整するズーム調整部と、前記ズーム調整部における調整量を検出するためのズーム検出部と、前記投写光学系の光軸に対する前記表示素子の光学的な位置を前記光軸に垂直な方向で且つ前記投写画像のサイズ変更時に前記投写画像の基準端のシフトを抑制する方向に変位させるシフト調整部とを具備する。
【0022】
この発明によれば、ズーム検出部における検出結果に応じて適宜シフト調整部の駆動を制御することにより、ズーム変更時における投写画像のシフトが抑制される。
【0023】
請求項5に記載の投写用ユニットにおいて、前記ズーム調整部は、周方向に回転駆動されるに応じて前記投写画像のズーム状態が変化するズーム調整用リングを備えるよう構成され得る。このとき、前記ズーム検出部は、前記ズーム調整用リングの回転位置を検出するためのセンサを備え、さらに、前記シフト調整部は、前記表示素子を支持するとともに前記表示素子の位置を前記光軸に垂直な方向に変位させるシフト機構と、該シフト機構を駆動する駆動源を備えるよう構成され得る。
【0024】
こうすれば、ズーム調整用リングの回転位置に応じて投写画像のズーム状態が検出される。したがって、センサにおける検出結果に応じてシフト機構の駆動源が駆動制御されることにより、ズーム変更時における投写画像のシフトが抑制される。
【0025】
請求項6の発明は、請求項1ないし3の何れか一項に記載の投写光学系を具備する投写型表示装置である。また、請求項7の発明は、請求項4または5に記載の投写用ユニットを具備する投写型表示装置である。これらの発明によれば、上記請求項1ないし5と同様の作用効果が奏される。
【0026】
なお、請求項5に記載の投写用ユニットと、前記ズーム検出部からの出力信号に基づいて前記投写画像のズーム状態を検出するとともに、その検出結果に応じて、前記シフト調整部を駆動制御する駆動制御部とを有するよう投写型表示装置を構成することもできる。
【0027】
この投写型表示装置によれば、ズーム状態に応じて表示素子の光学的な位置が適宜調整され、これにより、被投写面上における投写画像の位置が、投写画像のサイズに対して適正な位置に調整される。よって、ズーム状態が変化しても、スクリーン(被投写面)上に投写画像を適正に投写することができる。
【0028】
さらに、この投写型表示装置において、前記駆動制御部は、前記投写画像のサイズ変更に応じて、前記被投写面上における前記投写画像の基準端のシフトを抑制するよう前記シフト調整部を駆動制御するよう構成され得る。
【0029】
こうすれば、基準端を、たとえば、スクリーンの境界位置近傍に設定したとしても、投写画像のサイズ変更によって、この基準端がスクリーンからはみ出すことはない。したがって、この発明によれば、投写画像のサイズが変更されても、投写画像をスクリーン上に円滑に投写することができる。
【発明の効果】
【0030】
上記の如く本発明によれば、ズーム状態が変化しても、スクリーン(被投写面)上に投写画像を適正に投写し得るプロジェクタを提供することができる。
【0031】
なお、本発明が特許文献2に記載の構成に適用された場合には、ズーム状態の変化に応じて生じる中間像のシフトが抑制されるため、この中間像を拡大投写する反射面の大型化を抑制することができる。なお、この作用効果については、以下に示す実施の形態の説明においてさらに明らかにする。
【0032】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下に示す実施の形態に何ら制限されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。本実施の形態は、斜め投写型のプロジェクタに本発明を適用したものである。
【0034】
図1は、実施の形態に係るプロジェクタに搭載される投写光学系100の構成を示す図である。なお、同図(a)ないし(e)は、それぞれ、投写光学系100の光入射側を正面としたときの左側面図、右側面図、上側面図、下側面図および正面図である。
【0035】
図において、101は支持部、102は円筒状の外部鏡筒、103はズーム調整用リング、104は透明平板である。外部鏡筒102は、周方向に回転可能に支持部101に支持されている。ズーム調整用リング103は、外部鏡筒102と一体的に周方向に回転する。ズーム調整用リング103が回転されると、投写光学系100内部に配されたレンズ群の一部が光軸方向に変位し、これにより、スクリーン(被投写面)上における投写画像のサイズが変更される。透明平板104は、所定の厚みを有する円板状のガラス板によって構成されている。
【0036】
なお、外部鏡筒102内には、光学部品(レンズ群等)を固定するための鏡筒(光学部品固定用鏡筒105)が挿通されている。この鏡筒は、支持部101に対し、周方向に回転することなく装着されている。
【0037】
図2は、外部鏡筒102を除去した状態の投写光学系100を示す図である。なお、同図(a)ないし(d)は、それぞれ、投写光学系100の光入射側を正面としたときの左側面図、右側面図、上側面図および下側面図である。
【0038】
図示の如く、透明平板104は、外部鏡筒102内に挿通された光学部品固定用鏡筒105内に、上下方向に傾斜可能に、軸104aを介して装着されている。光学部品固定用鏡筒105の上下面には、投写光学系100の光軸方向に沿ってガイド孔105aが形成されている。一方、透明平板104には、上下方向に突出するピン104bが配されており、このピン104bが、光学部品固定用鏡筒105の上下面に形成されたガイド孔105aを介して外部に突出している。
【0039】
図1に戻り、外部鏡筒102の上下面には、投写光学系100の光軸方向に傾斜した2つのカム孔102aがそれぞれ形成されている。これら2つのカム孔102aに、透明平板104の上下に配された2つのピン104bが、それぞれ係合している。なお、上下面に形成された2つのカム孔102aは、同一方向に同様に傾斜している。したがって、ズーム調整用リング103を周方向に回転させ、これによりカム孔102aを周方向に回転させると、透明平板104の上下面に配された2つのピン104bが、2つのカム孔102aに沿って、投写光学系100の光軸方向にそれぞれ変位する。
【0040】
このとき、2つのカム孔102は、上記のとおり同一方向に同様に傾斜しているため、2つのピン104bは、ズーム調整用リング103の回転に伴って、互いに反対方向に、同じ量だけ変位する。したがって、透明平板104は、ズーム調整用リング103の回転に伴って、上下面が相反する方向に同じ量だけ変位される。その結果、透明平板104は、ズーム調整用リング103の回転に伴って、前後方向に傾斜することとなる。
【0041】
図3は、透明平板104の作用を示す図である。同図(a)は、透明平板104が投写光学系100の光軸に垂直となるように配置されたときの状態を示し、同図(b)は、同図(a)の状態から透明平板104が上下方向に傾斜したときの状態を示す図である。
【0042】
透明平板104が同図(a)の状態にあるとき、表示素子200を通過した光(平行光)は、透明平板104によって屈折されることなくそのまま直進し、投写レンズ106に到達する。これに対し、透明平板104が同図(b)のように傾斜すると、表示素子200を通過した光(平行光)は、透明平板104によって屈折され、その結果、同図(a)の場合よりも光軸から離れた位置において投写レンズ106に入射する。この場合、投写レンズ106に対する表示素子200の見かけの位置は、同図の破線で示す位置となる。つまり、この場合、表示素子200は、透明平板104が傾斜することにより、その光学的な位置が、投写レンズ106の光軸から離れる方向に変位することとなる。
【0043】
なお、このように、表示素子200の光学的な位置が上下方向に変位すると、それに伴って、スクリーン上における投写画像の位置が上下方向に変位する。本実施の形態では、この作用を利用して、ズーム状態の変更に伴って生じる投写画像のシフトが抑制される。具体的には、ズーム調整用リング103の回転量に応じて透明平板104を傾斜させることにより、以下の如く、スクリーン上における投写画像の下端(基準端)のシフトが抑制される。なお、カム孔102aの形状は、ズーム調整用リング103の回転量を、透明平板104に適する駆動量、すなわち、スクリーン上における投写画像の下端(基準端)のシフトを抑制するための駆動量に変換できる形状とされている。
【0044】
図4(a)は、本実施の形態に係る投写光学系100の動作を説明する図である。なお、同図(b)は、表示素子200を上下方向(光軸に垂直な方向)に変位させない場合の動作を、本実施の形態と対比して説明する図である。
【0045】
まず、同図(b)を参照して、ワイド端にて表示画像をスクリーン全面に投写している状態から、ズーム調整用リング103を手動または電動にて回転させて、投写状態をテレ端に変化させると、同図(b)のように表示素子200を上下方向に変位させない場合には、投写画像の下端(基準端)がワイド端時よりも下方にシフトする。このため、投写画像の下端部分がスクリーンからはみ出してしまう。この場合、プロジェクタ本体の前端を持ち上げる等して、投写画像をスクリーン上に移動させる必要がある。
【0046】
ところが、斜め投写型のプロジェクタでは、プロジェクタ本体の前端を少し持ち上げただけでも、スクリーン上において投写画像が大きく移動するため、投写画像をスクリーン上の適正な位置に移動させるには、中々面倒な作業が必要となる。また、このようにしてテレ端に適する状態に調整した後、表示状態を再びワイド端に戻すような場合には、そのままでは投写画像の上端部がスクリーンからはみ出すこととなるため、今度は、プロジェクタ本体の前端を下げる等して、投写画像をスクリーン内に移動させる必要がある。
【0047】
これに対し、本実施の形態では、同図(a)に示す如く、テレ端時にはワイド端時よりも表示素子200の光学的な位置が下方に変位される。これにより、表示状態をワイド端からテレ端に変化させ、あるいは、テレ端からワイド端に変化させても、投写画像の下端(基準端)は上下にシフトせず、よって、投写画像の下端部または上端部がスクリーン外にはみ出すことはない。
【0048】
なお、この表示素子200の光学的な位置変位は、上記の如く、透明平板104がズーム調整用リング103の回転に応じて傾斜されることにより行われる。ここで、透明平板104の傾斜量は、投写画像の下端(基準端)が、ズーム状態が変化しても上下にシフトしないような量に調整される。この調整は、カム孔102aの形状を適正に設定することにより実現される。
【0049】
以上のとおり、本実施の形態によれば、投写画像のサイズ(ズーム状態)を変化させても、投写画像の下端(基準端)が上下にシフトすることがないため、如何なるズーム状態においても、投写画像をスクリーン内に位置づけることができる。よって、ズーム状態の変更時にプロジェクタ本体の前端を持ち上げる等の面倒な作業を回避することができ、ユーザメリットの高いプロジェクタを提供することができる。
【0050】
また、本実施の形態によれば、また、ピン104bとカム孔102aを形成するのみで、ズーム調整用リング103の駆動と透明平板104の駆動を連動させることができるため、ズーム調整と投写画像シフトの連携機構を極めて簡素なものとすることができる。
【0051】
さらに、本実施の形態によれば、ズーム調整用リング103の変位量を検出するためのセンサや、その検出結果に応じて表示素子200を変位させるための駆動源等が不要となるため、構成の簡素化とともにコストの低減を図ることができる。
【0052】
なお、本発明の実施形態は、上記以外にも種々の変更が可能である。
【0053】
たとえば、上記実施の形態では、投写光学系100からの光を直接スクリーン上に投写するようにしたが、たとえば、図5(a)および図6(a)に示すように、投写光学系100からの光を、ミラー300で反射して、スクリーン上に投写するようにすることもできる。なお、図5(a)は、据え置きタイプのプロジェクタに本発明を適用した場合の構成例であり、図6(a)は、天吊タイプのプロジェクタに本発明を適用した場合の構成例である。また、図5(b)および図6(b)は、表示素子200を上下方向(光軸に垂直な方向)に変位させない場合の状態を、本実施の形態と対比して説明する図である。
【0054】
図5(a)および図6(a)の構成例においても、上記実施の形態と同様、ズーム調整用リング103の回転に応じて、表示素子200の光学的な位置が上下方向(投写光学系100の光軸に垂直な方向)に変位される。このとき、表示素子200の変位量は、投写画像のサイズ(ズーム状態)が変化しても、投写画像の下端(基準端)が上限に変位しないよう調整される。なお、この調整は、上記実施の形態と同等、カム孔102aの形状を調整することにより実現される。
【0055】
よって、これらの構成例においても、投写画像のサイズ(ズーム状態)を変化させても、投写画像の下端(基準端)が上下にシフトすることがないため、如何なるズーム状態においても、投写画像をスクリーン内に位置づけることができる。
【0056】
なお、これらの構成例では、表示素子200の中間像が投写光学系100とミラー300の間に生成される。図7(a)は、本実施の形態のように表示素子200の光学的な位置を上下方向に変位させる場合の中間像の状態を示す図、図7(b)は、表示素子200の光学的な位置を上下方向に変位させない場合の中間像の状態を示す図である。
【0057】
同図(b)に示す如く、表示素子200の光学的な位置を上下に変位させない場合には、テレ端時における中間像の生成位置がワイド端時における中間像の生成位置に対して大きくずれるため、比較的広い反射領域を有する大きなミラー300が必要となる。これに対し、本実施の形態の如く、表示素子200の光学的な位置を上下に変位させる場合には、テレ端時における中間像の生成位置がワイド端時における中間像の生成位置に対してそれ程大きくずれないため、ミラー300の反射領域を狭くでき、その分、ミラー300を小型化することができる。
【0058】
なお、図5ないし図7には、ミラー300が投写光学系100とは別に示されているが、ミラー300を投写光学系100内に収容するようにしても良い。すなわち、本発明に係る投写光学系は、投写レンズからの光を被投写面に向けて拡大投写するミラーを適宜含み得るものである。
【0059】
ところで、上記実施の形態では、透明平板104を傾斜させることにより表示素子200の光学的な位置を上下方向に変位させるようにしたが、表示素子200を物理的に上下に変位させて、投写レンズ106に対する表示素子200の相対位置を変位させるようにすることもできる。
【0060】
図8は、この場合の構成例(投写用ユニット)を示す図である。なお、この構成例は、請求項6ないし8に記載の投写用ユニットの実施例に対応するものである。
【0061】
この構成例では、外部鏡筒102の外周部にギア110が一体的に形成されている。投写光学系100は、シャーシ401上の支持板402に支持部101が固着されることにより、シャーシ401に装着されている。
【0062】
シャーシ401にはZ軸ステージ403が装着され、このZ軸ステージ403上に、R(Red)、G(Green)、B(Blue)用の表示素子200と、これら表示素子200を透過した光を合成して投写光学系100へと導くダイクロプリズム(図示せず)からなる光学アセンブルが設置されている。Z軸ステージ403の駆動軸にはギア403aが装着されており、このギア403aは投写光学系100側のギア110が噛合している。
【0063】
ズーム調整用リング103の回転に伴ってギア110が回転すると、これに噛合するギア403aが回転し、Z軸ステージ403が駆動される。これにより、Z軸ステージ403上に設置された光学アセンブルが、上下方向(投写光学系100の光軸に直交する方向)に変位し、表示素子200が上下方向に変位する。
【0064】
この構成例によれば、上記実施の形態と同じくズーム調整用リング103の回転に連動して表示素子200が上下方向に変位するため、上記実施の形態と同様の効果が奏される。すなわち、投写画像のサイズ(ズーム状態)を変化させても、投写画像の下端(基準端)が上下にシフトせず、よって、如何なるズーム状態においても、投写画像をスクリーン内に位置づけることができる。
【0065】
なお、図8の構成例ではZ軸ステージ403を用いて表示素子200を上下方向に変位させるようにしたが、これ以外の機構を用いて表示素子200を変位させるようにすることもできる。
【0066】
図9は、偏心カムを用いて表示素子200を変位させる場合の構成例(投写用ユニット)を示す図である。同図(a)は、本構成例に係る投写用ユニットの側面図、同図(b)(c)は、同図(a)を同図の左側から見たときの図である。なお、この構成例も、上記図8の構成例と同じく、請求項6ないし8に記載の投写用ユニットの実施例に対応するものである。
【0067】
この構成例では、外部鏡筒102の外周に偏心カム120が一体的に装着されている。
【0068】
また、シャーシ401には、上下方向に伸びるガイド孔412aを有する4つのガイド412が植設されている。これらガイド412には、ガイド孔412aにピン411aが係合するようにして、可動ステージ411が上下方向に変位可能に装着されている。可動ステージ411とシャーシ401の間にはバネ413が介挿され、これにより、可動ステージ411の上端が偏心カム120に圧接されている。可動ステージ411上には、R(Red)、G(Green)、B(Blue)用の表示素子200と、これら表示素子200を透過した光を合成して投写光学系100へと導くダイクロプリズム(図示せず)からなる光学アセンブルが設置されている。
【0069】
この構成例では、ズーム調整用リング103の回転に伴って偏心カム120が回転すると、偏心カム120の回転軸から偏心カム120と可動ステージ411の接点までの距離が変化する。これにより、可動ステージ411が上下方向に変位し、表示素子200が上下方向に変位する。
【0070】
同図(b)は、可動ステージ411が最も押し下げられたときの状態を示す図である。この状態から、ズーム調整用リング103が回転され偏心カム411が同図において時計方向に回転されると、偏心カム120の回転軸から偏心カム120と可動ステージ411の接点までの距離が短くなり、バネ401の付勢によって可動ステージ411が上方向に変位する。これにより、表示素子200が光学アセンブリとともに上方向に変位する。
【0071】
なお、この構成例においても、偏心カム120の形状は、ズーム調整用リング103の回転量を、表示素子200に適する駆動量、すなわち、スクリーン上における投写画像の下端(基準端)のシフトを抑制するための駆動量に変換できる形状とされている。
【0072】
この構成例によれば、上記実施の形態と同じくズーム調整用リング103の回転に連動して表示素子200が上下方向に変位するため、上記実施の形態と同様の効果が奏される。すなわち、投写画像のサイズ(ズーム状態)を変化させても、投写画像の下端(基準端)が上下にシフトせず、よって、如何なるズーム状態においても、投写画像をスクリーン内に位置づけることができる。
【0073】
ところで、上記実施の形態および各構成例においては、ズーム調整用リング103の回転に機構的に連動させて、表示素子200の光学的位置を変位させるようにしたが、ズーム調整用リング103の回転に電気的に連動させて、表示素子200の光学的位置を変位させるようにすることもできる。
【0074】
図10は、この場合の構成例(投写用ユニット)を示す図である。なお、この構成例は、請求項9および10に記載の投写用ユニットの実施例に対応するものである。
【0075】
この構成例では、外部鏡筒102の外周部にギア130が一体的に形成されている。投写光学系100は、シャーシ401上の支持板402に支持部101が固着されることにより、シャーシ401に装着されている。
【0076】
シャーシ401にはZ軸ステージ403が装着され、このZ軸ステージ403上に、R(Red)、G(Green)、B(Blue)用の表示素子200と、これら表示素子200を透過した光を合成して投写光学系100へと導くダイクロプリズム(図示せず)からなる光学アセンブルが設置されている。Z軸ステージ403の駆動軸にはモータ422の駆動軸が連結されている。さらに、支持板402には、ポテンショメータ421が装着され、ポテンショメータ421のボリューム軸に装着されたギア421aが投写光学系側のギア130に噛合している。
【0077】
ズーム調整用リング103の回転に伴ってギア130が回転すると、これに連結されたポテンショメータ421のボリューム軸が回転する。ここで、ポテンショメータ421は、ボリューム軸の回転に応じて抵抗値が変わり、出力端子の電圧値が変動するよう構成されている。したがって、ポテンショメータ421の出力電圧からズーム調整用リング103の回転位置ないしズーム調整量が検出され得る。
【0078】
本構成例では、ポテンショメータ421の出力電圧からズーム調整量が検出され、その検出結果に応じて、モータ422が駆動される。これにより、Z軸ステージ403が駆動され、表示素子200が、ズーム調整量に応じた位置に変位される。
【0079】
図11は、図10に示す投写用ユニットを駆動制御する制御回路の構成を示す図である。なお、同図に示すズーム検出回路501およびステージ駆動制御回路502は、請求項12に記載の駆動制御部の実施例に対応する。
【0080】
ズーム検出回路501は、ポテンショメータ501の出力電圧をA/D変換し、CPUにてズーム調整量を検出する。ステージ駆動制御回路502は、ズーム検出回路501によって検出されたズーム調整量に応じて、モータの回転方向と回転量を決定し、モータ422を駆動する。これにより、Z軸ステージ403が上方向または下方向に変位され、表示素子200がズーム調整量に応じて変位される。
【0081】

なお、この構成例において、ステージ駆動制御回路502は、ズーム検出回路501によって検出されたズーム調整量を、表示素子200に適する変位量、すなわち、スクリーン上における投写画像の下端(基準端)のシフトを抑制するための変位量に変換し、その変位量となるようモータ422を駆動する。
【0082】
この構成例によれば、上記実施の形態と同じくズーム調整用リング103の回転に連動して表示素子200が上下方向に変位するため、上記実施の形態と同様の効果が奏される。すなわち、投写画像のサイズ(ズーム状態)を変化させても、投写画像の下端(基準端)が上下にシフトせず、よって、如何なるズーム状態においても、投写画像をスクリーン内に位置づけることができる。
【0083】
以上、本発明の実施形態および構成例について説明したが、本発明は、これらによって限定されるものではない。なお、上記では、ズーム調整時に投写画像の基準端がシフトするのを抑制するようにしたが、この方法の他に、ズーム調整時に投写画像の一部がスクリーンからはみ出さないようスクリーン上における投写画像の位置を調整するようにすることもできる。この場合の調整も、表示素子200の光学的な位置を調整することにより実現できる。
【0084】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】実施の形態に係る投写光学系の構成を示す図
【図2】実施の形態に係る投写光学系の構成を示す図
【図3】実施の形態に係る投写光学系の作用を説明する図
【図4】実施の形態に係る投写光学系の動作を説明する図
【図5】実施の形態に係るプロジェクタの他の構成例を示す図
【図6】実施の形態に係るプロジェクタの他の構成例を示す図
【図7】実施の形態に係るプロジェクタの効果を説明する図
【図8】実施の形態に係る投写用ユニットの構成を示す図
【図9】実施の形態に係る投写用ユニットの他の構成例を示す図
【図10】実施の形態に係る投写用ユニットの他の構成例を示す図
【図11】実施の形態に係る投写用ユニットおよびその制御系の構成を示す図
【符号の説明】
【0086】
100 投写光学系
102 外部鏡筒
103 ズーム調整用リング
104 透明平板
104b ピン
105 光学部品固定用鏡筒
110 ギア
120 偏心カム
130 ギア
200 表示素子
403 Z軸ステージ
403a ギア
411 可動ステージ
411a ピン
412 ガイド
412a ガイド孔
413 バネ
421 ポテンショメータ
421a ギア
422 モータ
501 ズーム検出回路
502 ステージ駆動制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示素子上の画像を被投写面上に拡大投写する投写型表示装置に用いる投写光学系において、
前記被投写面上における投写画像のサイズを調整するズーム調整部と、
前記投写光学系の光軸に対する前記表示素子の光学的な位置を前記ズーム調整部における前記投写画像のサイズ変更に応じて前記光軸に垂直な方向に変位させるシフト調整部とを有する、
ことを特徴とする投写光学系。
【請求項2】
請求項1に記載の投写光学系において、
前記ズーム調整部は、周方向に回転駆動されるに応じて前記投写画像のズーム状態が変化するズーム調整用リングを備え、
前記シフト調整部は、前記表示素子の光学的な位置を前記光軸に垂直な方向に変位させる光学素子と、前記ズーム調整用リングの回転駆動量を前記光学素子の変位量に変換して前記光学素子に伝達する伝達機構を有する、
ことを特徴とする投写光学系。
【請求項3】
請求項2に記載の投写光学系において、
前記光学素子は透明平板であって、該透明平板を前記光軸に対し傾斜させることにより、前記光軸に対する前記表示素子の光学的な位置が変化する、
ことを特徴とする投写光学系。
【請求項4】
表示素子と、該表示素子上の画像を被投写面上に拡大投写する投写光学系とを具備する投写用ユニットにおいて、
前記被投写面上における投写画像のサイズを調整するズーム調整部と、
前記投写光学系の光軸に対する前記表示素子の光学的な位置を前記ズーム調整部における前記投写画像のサイズ変更に応じて前記光軸に垂直な方向に変位させるシフト調整部とを有する、
ことを特徴とする投写用ユニット。
【請求項5】
表示素子と、該表示素子上の画像を被投写面上に拡大投写する投写光学系とを具備する投写用ユニットにおいて、
前記被投写面上における投写画像のサイズを調整するズーム調整部と、
前記ズーム調整部における調整量を検出するためのズーム検出部と、
前記投写光学系の光軸に対する前記表示素子の光学的な位置を前記光軸に垂直な方向で且つ前記投写画像のサイズ変更時に前記投写画像の基準端のシフトを抑制する方向に変位させるシフト調整部とを具備する、
ことを特徴とする投写用ユニット。
【請求項6】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の投写光学系を具備する投写型表示装置。
【請求項7】
請求項4または5に記載の投写用ユニットを具備する投写型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−185709(P2008−185709A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−18100(P2007−18100)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】