説明

投写型表示装置

【課題】十分なコントラスト比の映像を得るとともに、冷却ファンの騒音値の抑制、または、冷却効率低下の抑制が可能な投写型表示装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る投写型表示装置1は、液晶ライトバルブ2と、液晶ライトバルブ2に照射する光を発生する光源を備える。そして、光源から液晶ライトバルブ2に至る光路上に配置され、光源からの光のうち所定の偏光の光のみを透過する入射偏光板8と、入射偏光板8と液晶ライトバルブ2との間に配置され、入射偏光板8からの光に位相差を発生させる光学補償板10とを備える。光学補償板10は、当該光学補償板10の光軸Cに対して、液晶ライトバルブ2の液晶分子2bの配向方向と同じ方向に傾斜される。光学補償板10の垂直方向Eと、当該光学補償板10の光軸Cとがなす角度θbは、映像のコントラスト比が最大となる当該角度αの0.4〜0.7倍である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ライトバルブ起因の光漏れを低減する光学補償板を備える投写型表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の投写型表示装置では、誘導光学系や投写レンズ等の光学系を構成する様々な光学要素に起因して、光漏れおよび迷光(不要光)が生じるため、特に暗い室内で映像をスクリーン上に投写した場合などには、暗い映像が十分に暗く写らない。そのため、投写された映像において十分なコントラスト比が得られず、臨場感に欠けるという問題があった。特に液晶ライトバルブを用いた投写型表示装置においては、入射された光の位相を変更するという液晶ライトバルブの特性に起因して、遮断すべき透過光を完全に遮断できず、映像信号処理による対応にも限界があった。そのため、投写型表示装置では、コントラスト比の向上について要請が強かった。
【0003】
特許文献1に記載の液晶プロジェクタ装置は、以上のような問題を解決するための装置であり、液晶分子の入射側および出射側に配置される第1,第2の偏光板を備える。そして、第1の偏光板と液晶分子との間、または、第2の偏光板と液晶分子との間に配置された光学異方性素子を備え、その光学異方性素子を、液晶分子の配向方向と同じ方向に傾斜させている。これにより、投写された映像のコントラスト比を可及的に向上させている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−011298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コントラスト比の向上のみを目的とするのであれば、液晶ライトバルブの液晶分子の配向方向と同じ方向に、コントラスト比が最大となる角度で、光学異方性素子を傾斜させて配置すればよい。しかしながら、この配置にした場合には、偏光板と光学異方性素子との間隔、光学異方性素子と液晶ライトバルブとの間隔を大きくしなければならず、冷却機構による冷却効率が低くなるという問題があった。また、冷却効率の低下を抑制するために、例えば、冷却ファンの回転数を高くすると、冷却機構からの騒音が大きくなるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解決するためになされたものであり、十分なコントラスト比の映像を得るとともに、冷却ファンの騒音値の抑制、または、冷却効率低下の抑制が可能な投写型表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る投写型表示装置は、スクリーン上に映像を投写する投写型表示装置であって、液晶ライトバルブと、前記液晶ライトバルブに照射する光を発生する光源とを備える。そして、前記光源から前記液晶ライトバルブに至る光路上に配置され、前記光源からの光のうち所定の偏光の光のみを透過する偏光板と、前記偏光板と前記液晶ライトバルブとの間に配置され、前記偏光板からの光に位相差を発生させる光学補償板とを備える。前記光学補償板は、当該光学補償板の光軸に対して、前記液晶ライトバルブの液晶分子の配向方向と同じ方向に傾斜される。前記光学補償板の垂直方向と、当該光学補償板の光軸とがなす角度は、前記映像のコントラスト比が最大となる当該角度の0.4〜0.7倍である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の投写型表示装置によれば、光学補償板10の傾斜角度を、スクリーン上に投写される映像のコントラスト比が最大となる傾斜角度の0.4〜0.7倍にしている。これにより、十分なコントラスト比の映像を得ることができるとともに、冷却機構の騒音値の抑制、または、冷却効率低下の抑制を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<実施の形態1>
図1は、液晶ライトバルブを備える本実施の形態に係る投写型表示装置の基本構成を示す図である。図1に示すように、本実施の形態に係る投写型表示装置1は、液晶ライトバルブ2と、光源系3と、光学素子と、入射偏光板8と、出射偏光板9と、光学補償板10とを備える。光学素子は、光源系3が備える光源3aと、入射偏光板8との間に配置されるインテグレータレンズ4、および、偏光変換素子5、および、コンデンサレンズ6、および、フィールドレンズ7の少なくともいずれか一つを含む。本実施の形態に係る光学素子は、これら全てを含むものとして説明する。
【0010】
投写型表示装置1は、投写光学系11と、冷却機構12と、スクリーンSCとをさらに備える。投写光学系11は、液晶ライトバルブ2の後段に配置され、スクリーンSCは、投写光学系11の後段に配置される。図1に係る投写型表示装置1は、1色の光の光路に関する構成である。しかし、本実施の形態に係る投写型表示装置1は、それに限ったものではなく、赤、緑、青の各色について上述の構成(液晶ライトバルブ2〜光学補償板10)を備え、光合成素子(図示せず)によって各色の画像光を合成してから、その光を投写光学系11によってスクリーンSCに投写させるようにしてもよい。こうして、本実施の形態に係る投写型表示装置1は、スクリーンSC上に映像を投写する。冷却機構12は、入射偏光板8、光学補償板10、液晶ライトバルブ2、出射偏光板9を冷却する。
【0011】
液晶ライトバルブ2は、投写する光の各画素に対応する液晶表示素子を多数(例えば、数十万個)平面的に配列したものであり、画素情報に応じて各液晶表示素子を動作する。これにより、液晶ライトバルブ2は、入射された光の位相を画素ごとに変更する。
【0012】
光源系3は、光源3aと、反射鏡3bとを備える。本実施の形態に係る投写型表示装置1が備える光源3aは、液晶ライトバルブ2に照射する光を発生する。反射鏡3bは、光源3aから出射された光を、インテグレータレンズ4から光学補償板10を介して、液晶ライトバルブ2に反射する。こうして、光源系3は、光を液晶ライトバルブ2に照射する。
【0013】
光源3aは、一般的に、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプが用いられるが、その他の発光デバイス、例えば、LED(Light Emitting Diode)、レーザ、無電極放電ランプを用いてもかまわない。
【0014】
反射鏡3bは、放物面や楕円面の形状で形成されるが、光が偏光変換素子5内に集光されるものであれば、どのような形状、構造であってもよく、特に限定されるものではない。例えば、反射鏡3bの形状を放物面、または、楕円面にして、反射鏡3bからインテグレータレンズ4に出射される光の方向を光軸C(z軸)と略平行にする場合には、光源系3とインテグレータレンズ4との間に凹レンズを配置するなどすればよい。
【0015】
インテグレータレンズ4は、光源系3から液晶ライトバルブ2に至る光路上に配置され、光源系3からの光を分割し、後述するコンデンサレンズ6およびフィールドレンズ7により、分割された光を液晶ライトバルブ2に重畳して照度分布を均一化させる。そして、均一化された光を後述するコンデンサレンズ6およびフィールドレンズ7により、液晶ライトバルブ2に照射する。インテグレータレンズ4は、第1のレンズアレイ4aと、第1のレンズアレイ4aの後段側に離間配置された第2のレンズアレイ4bとを備える。各レンズアレイ4a,4bはともに、複数の凸レンズが縦横に配置される。第1のレンズアレイ4aの各凸レンズと、第2のレンズアレイ4bの各凸レンズとは、それぞれ互いに対応して設けられ、対応する凸レンズ同士は、互いの正面方向に配置される。
【0016】
偏光変換素子5は、インテグレータレンズ4の後段に配置され、インテグレータレンズ4から出射された光を、1種類の直線偏光の光に変換して出射する。図2は、本実施の形態に係る偏光変換素子5を、y方向の正から負の向きに視た図である。図2に示すように、偏光変換素子5は、x軸方向に適当な間隔をあけて複数個配置された偏光分離膜5a、および、反射膜5b、および、λ/2位相差板5cを備える。複数の偏光分離膜5aは、光軸C方向(z方向)に対して傾斜(例えば、45°)させて配置される。反射膜5bは、偏光分離膜5a同士の間において、光軸C方向(z方向)に対して傾斜(例えば、45°)させて配置される。λ/2位相差板5cは、偏光変換素子5の液晶ライトバルブ2側の面上であって、偏光分離膜5aを透過した光が照射される部分に配置される。
【0017】
以上の構成からなる偏光変換素子5の作用について説明する。偏光変換素子5に入射された光は、偏光分離膜5aによってs偏光の光と、p偏光の光とに分離される。p偏光の光は、偏光分離膜5aを透過し、λ/2位相差板5cにてs偏光の光に変換された後、偏光変換素子5から出射される。一方、s偏光の光は、偏光分離膜5aにより反射され、反射膜5bによってさらに反射された後、偏光変換素子5から出射される。これにより、偏光変換素子5から出射される光は、概ねがs偏光の光となる。なお、偏光変換素子5から、概ねがp偏光の光を出射することを望む場合には、図2の構成の代わりに、反射膜5bで反射された光が1回通過する光路上に、λ/2位相差板5cを配置する構成とすればよい。
【0018】
図1に係るコンデンサレンズ6は、偏光変換素子5の後段に配置され、フィールドレンズ7は、コンデンサレンズ6の後段に配置される。コンデンサレンズ6およびフィールドレンズ7は、インテグレータレンズ4で分割された光束を液晶ライトバルブ2に重畳させる。これにより、光源3aから出射された光は、光軸Cに垂直な断面方向の照度分布が均一化された状態で液晶ライトバルブ2に入射される。つまり、インテグレータレンズ4、および、コンデンサレンズ6、および、フィールドレンズ7は、光源3aからの光を所定の照度分布の光に均一に変換して液晶ライトバルブ2に照射する。
【0019】
本実施の形態に係る投写型表示装置1が備える偏光板である入射偏光板8は、光源3aから液晶ライトバルブ2に至る光路上に配置され、光源3aからの光のうち所定の偏光の光のみを透過する。本実施の形態では、入射偏光板8は、フィールドレンズ7の後段に配置され、第1の直線偏光の光を透過し、第1の直線偏光と偏光軸が90°の角度をなす第2の直線偏光の光を吸収、または、反射する。偏光変換素子5から出射される光が、概ねp偏光の光である場合には、第1の直線偏光はp偏光、第2の直線偏光はs偏光に相当する。出射偏光板9は、液晶ライトバルブ2の出射側に配置されており、出射偏光板9の透過軸は、入射偏光板8の透過軸と直交している。液晶ライトバルブ2は、入射偏光板8から出射され、光学補償板10を通過した第1の直線偏光の光を、第2の直線偏光の光に変換して出射偏光板9に出射するか、または、第1の直線偏光の光のまま出射偏光板9に出射する。
【0020】
光学補償板10を通過した第1の直線偏光の光が、液晶ライトバルブ2により第2の直線偏光の光に変換された場合、出射偏光板9に入射される第2の直線偏光の光は、出射偏光板9を透過し、光が投写光学系11に到達する。一方、光学補償板10を通過した第1の直線偏光の光が、液晶ライトバルブ2により第2の直線偏光の光に変換されなかった場合、出射偏光板9に入射される第1の直線偏光の光は、出射偏光板9を透過しないため、光が投写光学系11に到達しない。
【0021】
図3および図4は、光学補償板10と液晶ライトバルブ2との配置を説明する概略図である。液晶ライトバルブ2は、対向基板(入射側基板)2aと、TFT基板(出射側基板)と、それら基板の間に封入される液晶分子2bとを備える。なお、図3では、便宜上、TFT基板は図示していない。本実施の形態に係る液晶分子2bは、垂直配向型であり、液晶ライトバルブ2に電圧がかからない場合、出射偏光板9にて光が吸収されるため、スクリーンSC上には、光源3aからの光は到達しない。なお、液晶分子2bは、対向基板2aの垂直方向に対して角度θaを有して配列されることにより、電圧印加時の液晶分子2bの配向方向を制御すると共に、液晶分子2bの応答速度を速くすることが可能となる。一般的に、この角度θaは、プレチルト角と呼ばれる。この角度(以下、プレチルト角θa)を大きくすると、応答速度は速くなるが、視野角依存性が大きくなるため、スクリーンSCに投写される映像のコントラスト比が低下する。
【0022】
このコントラスト比の低下を防ぐために、本実施の形態に係る投写型表示装置1は、光学補償板10を備える。光学補償板10は、入射偏光板8と液晶ライトバルブ2との間に配置され、入射偏光板8からの光に位相差を発生させる。光学補償板10は、光学補償板10の光軸Cに対して、液晶ライトバルブ2の液晶分子2bの配向方向と同じ方向に傾斜されている。以下、光学補償板10の垂直方向と、光学補償板10の光軸Cとがなす角度をθbと記し、光学補償板10の垂直方向をEと記すこともある。
【0023】
こうして、図3に示すように、液晶分子2bをプレチルト角θaで傾けた場合に、光学補償板10を傾けることにより、プレチルト角θaにより生じるコントラスト比の低下を抑制し、液晶ライトバルブ2に起因する光漏れを低減することが可能となる。なお、光学補償板10の基材の屈折の影響により、入射偏光板8からの光(光線30)に、所望の位相差を発生させるためには、角度θbはプレチルト角θaより大きいことが好ましい。また、光学補償板10は、リタデーションの絶対値が液晶ライトバルブ2の液晶分子2bのリタデーションと等しく、符号が異なる場合が好ましい。
【0024】
図4において、矢印2cは、液晶ライトバルブ2における液晶分子2bの配向方向を、液晶ライトバルブ2の平面に投射した方向を表す。この方向(矢印2c)は、入射偏光板8の透過軸または吸収軸(矢印8a)に対して45°傾いている。従って、角度θdは、45°である。また、光学補償板10の傾斜方向(以下、回転方向)は、θbであり、上述したように、液晶分子2bの配向方向と同じ方向に回転させている。そのため、xy平面と平行な面において、光学補償板10の断面と直交する破線Fと、矢印8aと平行な破線Gとがなす角度θcは、45°となる。位置31は、光学補償板10の四隅の内、液晶ライトバルブ2に最も近い位置を示している。図4に示すように、光学補償板10を傾けることにより、液晶ライトバルブ2に入射される光のうち、角度を有して入射される光の影響を低減することができる。その結果、プレチルト角θa起因のコントラスト比低下を抑制することができる。次に、上述の効果が得られる理由について説明する。
【0025】
図5は、光学補償板10の回転角度θbとコントラスト比の関係を示す図である。図5は、測定データであり、縦軸は、スクリーンSC上に投写される映像のコントラスト比の相対値を表している。ここでは、コントラスト比が最大になる角度θbを角度αとし、そのときのコントラスト比の相対値を100%としている。横軸は、光学補償板10の回転角度θbを示す。つまり、横軸における0は、光学補償板10を傾斜させない状態を示し、横軸におけるαは、上述の角度αだけ、液晶分子2bの配向方向と同じ方向に光学補償板10を回転させた状態を示す。例えば、0.5αは、角度αの0.5倍の角度で光学補償板10を回転させた状態を示す。また、同図の円形のプロットは、光学補償板10を配置した場合の測定値、四角のプロットは、光学補償板10を配置しない場合の測定値を示す。
【0026】
円形のプロットと、四角のプロットを比較すれば、液晶ライトバルブ2に角度を有して光が入射される影響が、光学補償板10を配置することにより低減していることが確認できる。また、円形のプロット同士を比較すれば、光学補償板10の傾斜角度θbに応じて、スクリーンSCに投写される映像のコントラスト比が変化することが確認できる。例えば、回転角度θbが0.4αである場合には、最大コントラスト比の75%以上のコントラスト比を得ることができることがわかる。
【0027】
以上より、液晶分子2bをプレチルト角θaで傾けた場合に、光学補償板10を液晶分子2bの配向方向と同じ方向に傾けることにより、コントラスト比が改善することが確認できた。そして、コントラスト比の向上のみを目的とするのであれば、回転角度θbを角度αにすればよいことも確認できる。しかしながら、この場合には、次のような問題が生じていた。
【0028】
図6は、回転角度θbを角度αにしたときの問題点を説明するための図である。光学補償板10の角度αは、液晶分子2bのプレチルト角θaが大きくなるに従い、大きくする必要がある。そのため、入射偏光板8と液晶ライトバルブ2の間隔Dを大きくする必要があるが、間隔Dを大きくすると、冷却領域が広くなる。冷却領域を広くした場合に、冷却領域が広くなる前の冷却レベルと同じにするためには、冷却機構12の負荷が大きくなる。例えば、冷却機構12が、冷却ファンである場合、冷却ファンの回転数を高くする必要が生じ、その結果、ファンによる騒音値が高くなる。一方、冷却機構12の負荷を大きくしない場合には、冷却効率が低下する。
【0029】
図6では、冷却機構(冷却ファン)12の風の向き51と、入射偏光板8、光学補償板10、および、液晶ライトバルブ2の配置が示されている。冷却機構12は、−y方向に配置され、入射偏光板8、光学補償板10、および、液晶ライトバルブ2それぞれを、y方向に風を流すことにより冷却する。一般的に、光学補償板10の効果を高めるためには、液晶ライトバルブ2側に、図示しない光学補償用のフィルムを配置する。従って、図6の構成の場合、光学補償板10の回転角度θbが大きくなるほど、液晶ライトバルブ2側に配置された光学補償板用のフィルム面は冷却しにくくなる。
【0030】
図7に、光学補償板10の回転角度θbと、冷却機構(冷却ファン)12の騒音値dBAとの関係を示す。縦軸は、冷却機構12の騒音値dBAを示し、横軸は光学補償板10の回転角度θbを示す。ここで、回転角度θbが0°の場合に、騒音値βで冷却機構12を動作させたときの液晶ライトバルブ2の温度を基準温度とした。そして、角度αまでの回転角度θbにおいて、その基準温度と同じ温度を維持するために、冷却機構12を動作させたときの騒音値をプロットした。なお、図7に示されるαは、図5と同様の値である。図7から、回転角度θbが、0.5α以下である場合には、概ね騒音値は変化せず、0.75α、…、αとなるにつれて急激に騒音値は高くなることが確認できる。騒音値dBAは、人間の聴覚感度を考慮に入れた値であり、β+3dBAは、騒音値β時の、2倍の騒音であることを示す。β+9dBAの場合は、騒音値β時の、3dBA×3、つまり、2の3乗(8)倍の騒音となる。よって、低騒音を維持するためには、回転角度θbを0.5α以下にすることが望ましいが、0.7α以下であれば、回転角度θbが0°のときの騒音値βの2倍以下に抑えることができる。
【0031】
そこで、本実施の形態に係る投写型表示装置1では、光学補償板10の垂直方向Eと、当該光学補償板10の光軸Cとがなす角度θbは、スクリーンSC上に投写される映像のコントラスト比が最大となる当該角度αの0.4〜0.7倍にする。つまり、光学補償板10の回転角度θbが、0.4α以上であるため、本実施の形態に係る投写型表示装置では、最大値の75%以上の十分なコントラスト比を得ることができる(図5)。また、光学補償板10の回転角度θbは、0.7α以下であるため、本実施の形態に係る投写型表示装置の騒音値を、回転角度θbを0°とした場合の騒音値の2倍以下に抑えることができる(図7)。これにより、冷却機構12の騒音値、または、冷却効率低下を抑制することができる。特に、回転角度θbを0.5αにした場合には、騒音値を、回転角度θbを0°とした場合の騒音値の1.1倍程度に抑えつつ、最大値の75%以上のコントラスト比を得ることができる。
【0032】
なお、一般的に、液晶ライトバルブ2の液晶分子2bのプレチルト角θaに対する上述の角度αは、6〜8°といわれている。そのため、光学補償板10の回転角度θbを、3〜4°程度にすれば、上述の効果を得ることができる。
【0033】
図8は、光学補償板10を固定ホルダ71で固定した場合の一例を示す図である。この図8に示すように、本実施の形態に係る投写型表示装置は、入射偏光板8に対する固定ホルダ70と、光学補償板10に対する固定ホルダ71とを備える。固定ホルダ71は、単一の角度θbでのみ光学補償板10を固定する。
【0034】
以上のような本実施の形態に係る投写型表示装置によれば、固定ホルダ71に、調整機構を設ける必要がないため、構造を簡略化することができる。さらに、光学補償板10の回転角度θbが所望の値、例えば、4°のとき、4°以外の角度にならないため、液晶ライトバルブ2における冷却効率低下を確実に防ぐことができる。つまり、固定ホルダ71により固定しているため、騒音値が上がる、あるいは、液晶ライトバルブ2の温度が上昇するといった不具合を確実に防ぐことができる。
【0035】
また、本実施の形態に係る投写型表示装置は、筐体である光学素子保持筐体を備える。図8には、光学素子保持筐体の側面72a,72bが示されている。光学素子保持筐体は、上述の光学素子、つまり、インテグレータレンズ4、コンデンサレンズ6およびフィールドレンズ7等を保持する。図8に示すように、光学補償板10の固定ホルダ71は、光学素子保持筐体の側面72a,72bに接触または固着されている。このような構成からなる投写型表示装置によれば、固定精度を向上させることができる。従って、騒音値が上がる、あるいは、液晶ライトバルブ2の温度が上昇するといった不具合を確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施の形態1に係る投写型表示装置の基本構成を示す図である。
【図2】実施の形態1に係る投写型表示装置の構成を示す図である。
【図3】実施の形態1に係る投写型表示装置の構成を示す図である。
【図4】実施の形態1に係る投写型表示装置の構成を示す図である。
【図5】実施の形態1に係る投写型表示装置の効果を示す図である。
【図6】回転角度θbを角度αにしたときの問題点を説明するための図である。
【図7】実施の形態1に係る投写型表示装置の効果を示す図である。
【図8】実施の形態1に係る投写型表示装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1 投写型表示装置、2 液晶ライトバルブ、2a 対向基板、2b 液晶分子、3 光源系、3a 光源、3b 反射鏡、4 インテグレータレンズ、4a 第1のレンズアレイ、4b 第2のレンズアレイ、5 偏光変換素子、5a 偏光分離膜、5b 反射膜、5c λ/2位相差板、6 コンデンサレンズ、7 フィールドレンズ、8 入射偏光板、9 出射偏光板、10 光学補償板、11 投写光学系、12 冷却機構、30 光線、31 位置、70,71 固定ホルダ、72a,72b 側面、SC スクリーン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリーン上に映像を投写する投写型表示装置であって、
液晶ライトバルブと、
前記液晶ライトバルブに照射する光を発生する光源と、
前記光源から前記液晶ライトバルブに至る光路上に配置され、前記光源からの光のうち所定の偏光の光のみを透過する偏光板と、
前記偏光板と前記液晶ライトバルブとの間に配置され、前記偏光板からの光に位相差を発生させる光学補償板とを備え、
前記光学補償板は、当該光学補償板の光軸に対して、前記液晶ライトバルブの液晶分子の配向方向と同じ方向に傾斜され、
前記光学補償板の垂直方向と、当該光学補償板の光軸とがなす角度は、前記映像のコントラスト比が最大となる当該角度の0.4〜0.7倍である、
投写型表示装置。
【請求項2】
単一の前記角度でのみ前記光学補償板を固定する固定ホルダをさらに備える、
請求項1に記載の投写型表示装置。
【請求項3】
前記光源と前記偏光板との間に配置された光学素子と、
前記光学素子を保持する筐体とをさらに備え、
前記固定ホルダは、前記筐体の側面に接触または固着されている、
請求項2に記載の投写型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−66550(P2010−66550A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233124(P2008−233124)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】