説明

投写型表示装置

【課題】光源の異常の原因究明を有効に支援する機能を備えた投写型表示装置を提供すること。
【解決手段】投写型表示装置1は、装置内の温度を検出する温度センサ21,22と、不揮発性のメモリ32と、マイクロコンピュータ31とを備える。マイクロコンピュータ31は、光源11の累積点灯時間を計時し、温度センサ21,22の検出温度を、その温度が検出されたときの累積点灯時間を特定可能な形式でメモリ32に記録する。これにより、光源11への給電が停止されるときの温度と累積点灯時間とが対応付けられた給電停止データ41、光源11の異常が検出されたときの温度と累積点灯時間とが対応付けられたランプ異常データ42、累積点灯時間が予め定められた時間を経過するごとの温度を含む定時データ44、及び温度センサ22の検出温度が予め定められた条件を満たすごとの温度と累積点灯時間とが対応付けられた温度異常データ43などが記録される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源の光から生成された映像光を投射することにより映像を表示する投写型表示装置に関し、特に、光源の異常の原因究明を支援する機能を備えた投写型表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
投写型表示装置は、光源の光を映像信号に基づいて変調もしくはスイッチングし、それにより得られた映像光をスクリーンなどの被投影面へ投射することにより映像を表示する装置である。そのため、投写型表示装置は、光源と、映像信号に基づいて光源の光を映像光へ変換する機器と、映像光をスクリーンなどの被投影面へ投射する光学素子とを備える。また、光源の光から映像光を生成する方式として、DMD(Digital Micromirror Device)方式及び液晶方式などが存在する。
【0003】
投写型表示装置は、映像光を拡大して離れた被投影面へ投射するため、高輝度の高圧水銀ランプを光源として備えることが多い。高圧水銀ランプなどの高出力の光源は、点灯しているときにバルブの部分において高温になる。また、高圧水銀ランプは、温度が高くなり過ぎると黒く変色する、もしくは破裂することがあり、温度が低くなり過ぎると、フリッカーなどの故障が生じやすくなることが知られている。そのため、投写型表示装置は、光源の温度を適正な範囲内に維持するため、光源を強制的に空冷するファンを備えている。
【0004】
また、投写型表示装置の光源は、点灯時間が長くなるにつれて経時的に劣化する消耗品であるため、交換可能に取り付けられている。
【0005】
即ち、投写型表示装置の光源の異常は、点灯中の温度及び累積点灯時間と深い因果関係がある。そして、光源が、寿命を全うして異常状態に至ったのか、或いは他の原因で異常状態に至ったのかを管理することは、投写型表示装置の提供者にとって非常に重要である。
【0006】
例えば、特許文献1に示される投写型表示装置は、製品番号、対応機種、製造番号、メンテナンスに関する経歴及び光源の使用時間などの管理情報をメモリに記録する機能を備えている。その管理情報は、使用不可の状態に至った光源が、寿命時間に至るまで使用されたのか否かを把握することに寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3446912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の投写型表示装置は、光源の累積点灯時間が寿命時間に至る前に光源の異常が生じた場合に、原因の特定を有効に支援する機能を備えていないという問題点を有している。そのため、光源の異常の原因を究明するために、様々な使用条件の下での再現試験の実施、及び異常が生じた光源そのものに対する事後的な解析など、多大な時間及び労力を伴う作業が必要となる。
【0009】
本発明の目的は、光源の異常の原因究明を有効に支援する機能を備えた投写型表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る投写型表示装置は、光源と、光源の光から生成された映像光を投射する光学素子とを備え、さらに、以下の各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、装置内の温度を検出する温度センサである。
(2)第2の構成要素は、光源の累積点灯時間を計時する計時部である。
(3)第3の構成要素は、不揮発性メモリである。
(4)第4の構成要素は、温度センサの検出温度をその温度が検出されたときの累積点灯時間を特定可能な形式で不揮発性メモリに記録する温度記録部である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る投写型表示装置においては、光源の異常と深い因果関係がある装置内の温度の履歴が、その温度が検出されたときの累積点灯時間に対応する状態で不揮発性メモリに記録される。そのため、不揮発性メモリに記録された情報は、光源の異常の原因究明に大きく寄与する。例えば、不揮発性メモリの情報は、光源の異常の原因が、定格点灯時間を超える点灯時間にあるのか、又は点灯中の温度条件にあるのかの識別に寄与する。即ち、本発明において、不揮発性メモリに装置内の温度を記録する機能は、光源の異常の原因究明を有効に支援する機能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る投写型表示装置1の主要部のブロック図である。
【図2】投写型表示装置1が実行する温度記録処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【図3】投写型表示装置1が不揮発性メモリに記録する温度履歴データの一部である給電停止データの構成を示す図である。
【図4】投写型表示装置1が不揮発性メモリに記録する温度履歴データの一部であるランプ異常データの構成を示す図である。
【図5】投写型表示装置1が不揮発性メモリに記録する温度履歴データの一部である温度異常データの構成を示す図である。
【図6】投写型表示装置1が不揮発性メモリに記録する温度履歴データの一部である定時データの構成を示す図である。
【図7】定時データの具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0014】
<装置の構成>
まず、図1を参照しつつ、本発明の実施形態に係る投写型表示装置1の主要な構成について説明する。投写型表示装置1は、光源の光を映像信号に基づいて変調もしくはスイッチングし、それにより生成された映像光をスクリーンなどの被投影面へ投射することにより映像を表示する装置である。図1に示されるように、投写型表示装置1は、光源であるランプ11、集光レンズ12,15、カラーホイール13、ライトパイプ14、表示デバイス16、投写レンズ17、温度センサ21,22、吸気ファン23、排気ファン24、マイクロコンピュータ31、メモリ32、ランプ電源回路33、映像入力回路34及び操作部35を備えている。
【0015】
<集光レンズ>
集光レンズ12は、ランプ11の出射光をカラーホイール13の一部に集光する。また、集光レンズ15は、ライトパイプ14から出力される光束を表示デバイス16の受光部へ集光する。
【0016】
<ランプ>
ランプ11は、映像光の元となる光を出射する光源であり、例えば、高圧水銀ランプである。ランプ11は、ソケットに対して取り外し可能に取り付けられている。これにより、消耗品であるランプ11は交換可能に構成されている。
【0017】
<カラーホイール>
カラーホイール13は、ランプ11の出射光を時分割で複数の色の光へ変換する装置である。カラーホイール13は、それぞれ異なる色のフィルタが円周方向に沿って配列された円盤状の部材である。そして、カラーホイール13は、モータによって回転駆動されることにより、複数のフィルタ各々が、順次、ランプ11の光の経路上に移動する。これにより、カラーホイール13を通過した光は、モータの回転速度に応じた周期で順次異なる色に切り替わる。
【0018】
カラーホイール13のフィルタは、例えば、赤、緑、青及び白の4色のフィルタを含む。その他、カラーホイール13のフィルタが、赤、緑及び青の3色のフィルタである場合、又は、イエロー、シアン及びマゼンタなどの複数の補色のフィルタである場合も考えられる。カラーホイール13が採用されることにより、複数の色の光源を個別に設ける必要がなくなる。
【0019】
<ライトパイプ>
ライトパイプ14は、カラーホイール13からの光束を、その断面における強度を均一化する光学素子である。ライトパイプ14は、四角形の断面を有する角筒状に形成され、内側に光の反射面が形成された光学素子である。ライトパイプ14により均一化された光束は、集光レンズ15を通過して表示デバイス16へ入力される。
【0020】
<映像入力回路>
映像入力回路34は、外部から映像信号を入力し、その映像信号を表示デバイス16へ伝送する回路である。また、映像入力回路34は、必要に応じて、入力された映像信号に各種の補正処理を施す機能も備えている。
【0021】
<表示デバイス>
表示デバイス16は、映像入力回路34を通じて入力される映像信号に基づいて、入射された光を変調もしくはスイッチングすることにより映像光を生成する光学デバイスである。投写型表示装置1がDMD方式の装置である場合、DMDが表示デバイス16として採用される。
【0022】
DMDは、映像信号のピクセル各々に対応する可動式の複数の微小ミラーを備えている。また、DMDは、複数の微小ミラー各々の向きを、カラーホイール13による光の色の切り替え周波数よりも十分に大きな周波数で変更することができる。そして、DMDは、カラーホイール13による光の色の切り替え周期に同期して、ピクセルごとに、映像信号の各ピクセルにおける各色の輝度に応じて、各色の光を投写レンズ17に向けて反射する時間帯とそれ以外の時間帯との比率を調節する。これにより、DMDから投写レンズ17へ向かう反射光は、映像信号に対応した映像光となる。
【0023】
また、投写型表示装置1が液晶方式の装置である場合、表示デバイス16は、透過型もしくは反射型の液晶パネルにより構成される。なお、表示デバイス16が液晶パネルである場合、ランプ11の出射光がダイクロイックミラーなどによって3原色の光に分光され、分光により得られた3原色の光が表示デバイス16へ入力されることが多い。
【0024】
<投写レンズ>
投写レンズ17は、表示デバイス16から出力される映像光を拡大しつつスクリーンなどの被投影面へ投射する光学素子である。
【0025】
<温度センサ>
温度センサ21,22は、投写型表示装置1の筐体内部の温度を検出するセンサであり、例えば、サーミスタなどである。温度センサ21,22の検出信号は、マイクロコンピュータ31へ入力される。
【0026】
本実施形態においては、温度センサ21,22には、第一温度センサ21及び第二温度センサ22が含まれる。第一温度センサ21は、装置内における吸気口の部分の温度を検出する吸気温度センサである。また、第二温度センサ22は、装置内における排気口の部分もしくはランプ11の周辺部の温度を検出するセンサである。
【0027】
なお、吸気口は、投写型表示装置1の筐体に形成された貫通孔であり、外気の入口である。また、排気口は、投写型表示装置1の筐体に形成された貫通孔であり、空気の出口である。
【0028】
以下、第一温度センサ21の検出温度を第一温度もしくは吸気温度と称し、第二温度センサ22の検出温度を第二温度もしくはランプ温度と称する。第一温度は、通常、投写型表示装置1が設置されている環境の温度に相当する。また、投写型表示装置1において、最も高温になる部分はランプ11である。そのため、第二温度は、ランプ11の温度もしくはランプ11の温度と相関の高い温度である。
【0029】
<ファン>
吸気ファン23は、吸気口の内側の位置に配置され、外気を強制的に装置内へ吸引するファンである。一方、排気ファン24は、排気口の内側の位置に配置され、装置内の空気を強制的に装置外へ排出するファンである。
【0030】
<操作部>
操作部35は、投写型表示装置1に対するユーザの操作入力を検出する回路である。例えば、操作部35は、スイッチ又はタッチパネルなどにより構成され、映像出力のON/OFFを切り替える操作などを検出する。また、操作部35は、操作ボタン及びその操作ボタンに対する操作に対応した無線信号を送信する回路を備えたリモート操作器と、その無線信号を受信してマイクロコンピュータ31へ伝送する無線受信回路とにより構成される場合もある。操作部35によって検出された操作信号は、マイクロコンピュータ31に入力される。
【0031】
<マイクロコンピュータ>
マイクロコンピュータ31は、投写型表示装置1が備える各機器を制御するプロセッサである。例えば、マイクロコンピュータ31は、第一温度に応じて吸気ファン23及び排気ファン24の回転速度を調節する。より具体的には、マイクロコンピュータ31は、第一温度が予め定められた適正範囲を超えた場合に、吸気ファン23及び排気ファン24の回転速度をアップさせ、第一温度が予め定められた適正範囲を下回った場合に、吸気ファン23及び排気ファン24の回転速度をダウンさせる。
【0032】
また、マイクロコンピュータ31は、操作部35によって映像出力のON/OFFの操作が検出された場合に、その操作に対応した信号であるランプ給電開始信号又はランプ給電停止信号をランプ電源回路33へ出力する。
【0033】
吸気ファン23及び排気ファン24の回転速度の制御により、ランプ11の黒色化及び破裂、並びにランプ11のフリッカーなどの不具合が防止される。
【0034】
なお、マイクロコンピュータ31が、第二温度のレベルに応じて吸気ファン23及び排気ファン24の回転速度を調節することも考えられる。また、マイクロコンピュータ31が、第一温度及び第二温度の少なくとも一方が各々の適正範囲を逸脱したときに吸気ファン23及び排気ファン24の回転速度を調節することも考えられる。
【0035】
<メモリ>
メモリ32は、マイクロコンピュータ31によるデータの書き込み及び読み出しが可能な不揮発性メモリであり、例えば、EEPROMなどである。
【0036】
<ランプ電源回路>
ランプ電源回路33は、ランプ11に対する給電を制御する回路である。より具体的には、ランプ電源回路33は、ランプ給電開始信号がマイクロコンピュータ31から入力された場合に、ランプ11に対して電流を供給し、ランプ11を点灯させる。また、ランプ電源回路33は、ランプ給電停止信号がマイクロコンピュータ31から入力された場合に、ランプ11に対する電流の供給を停止し、ランプ11を消灯させる。
【0037】
また、ランプ電源回路33は、ランプ11の異常を検出する機能も備えている。例えば、ランプ電源回路33は、ランプ11に供給される電流を検出する電流検出素子331を備える。そして、ランプ電源回路33は、ランプ11に対する給電中に、電流検出素子331が予め定められた許容範囲を逸脱する電流値を検出した場合に、ランプ11が異常であると判定する。ランプ11が異常である旨の信号は、マイクロコンピュータ31に入力される。なお、ランプ電源回路33は、ランプ11の異常を検出する異常検出部の一例である。
【0038】
<温度記録処理>
次に、図2に示されるフローチャートを参照しつつ、投写型表示装置1のマイクロコンピュータ31が実行する温度記録処理の手順の一例について説明する。図2に示される温度記録処理は、ランプ11が点灯されたとき、即ち、マイクロコンピュータ31がランプ電源回路33に対してランプ給電開始信号を出力したときに開始される。なお、以下の説明において、S1からS10は、処理の手順の識別符号である。
【0039】
<ステップS1>
温度記録処理において、まず、マイクロコンピュータ31は、ランプ11の点灯が開始されてからの経過時間の計時を開始する(S1)。これ以後、マイクロコンピュータ31は、ランプ電源回路33に対してランプ給電停止信号を出力するまで時間の計時を継続する。
【0040】
<ステップS2−S6>
次に、マイクロコンピュータ31は、ランプ11への給電の停止条件が成立したか否かを判別する処理を実行する(S2−S4)。本実施形態においては、ランプ11への給電の停止条件は、次の3つである。第1停止条件は、映像出力OFFの操作が検知されたことである。第2停止条件は、ランプ電源回路33によってランプ11の異常が検知されたことである。第3停止条件は、第二温度が予め定められた許容範囲を逸脱した状態である温度異常が検知されたことである。マイクロコンピュータ31は、第1停止条件の判別(S2)、第2停止条件の判別(S3)及び第3停止条件の判別(S4)を行う。
【0041】
第3停止条件は、例えば、吸気口又は排気口が塞がれてしまった場合、吸気ファン23もしくは排気ファン24が故障した場合、或いは投写型表示装置1が許容範囲を逸脱する温度の環境に設置されている場合などに成立する。
【0042】
そして、マイクロコンピュータ31は、ランプ11への給電の停止条件のうちの少なくとも1つが成立した場合、そのときの第一温度及び第二温度と、その時点までのランプ11の累積点灯時間とが対応付けられたデータをメモリ32に記録する(S5)。
【0043】
さらに、マイクロコンピュータ31は、ランプ電源回路33に対してランプ給電停止信号を出力することにより、ランプ11に対する給電を停止し、ランプ11を消灯させる。これにより、当該温度記録処理は終了する。
【0044】
<給電停止の際に記録されるデータ>
以下、図3から図5に示されるデータ構成図を参照しつつ、累積点灯時間の計時方法と、ステップS5においてメモリ32に記録されるデータについて説明する。
【0045】
まず、第1停止条件から第3停止条件のいずれが成立した場合でも、マイクロコンピュータ31は、図3に示される給電停止データ41をメモリ32に記録する。
【0046】
給電停止データ41は、ランプ11への給電の停止条件が成立したとき、即ち、ランプ11に対する給電が停止されるときのランプ11の累積点灯時間411と、そのときに第一温度センサ21及び第二温度センサ22によって検出される第一温度412及び第二温度413とが対応付けられたデータである。
【0047】
給電停止データ41は、ランプ11に対する給電が停止されるときに、最新のデータのみがメモリ32に残される。但し、ランプ11が交換されるときに、給電停止データ41は初期化される。また、給電停止データ41における累積点灯時間411の初期値は、0時間に相当する値である。
【0048】
そして、マイクロコンピュータ31は、ステップS1で開始された処理により得られるランプ11の今回の点灯時間と、前回の給電停止の際に給電停止データ41に含めて記録された累積点灯時間411とを随時加算することにより、最新の累積点灯時間を算出する。このように、マイクロコンピュータ31は、前回のランプ11の消灯時の累積点灯時間と、今回のランプ11の点灯時間との加算により、最新の累積点灯時間411を計時する。なお、そのような計時を行うマイクロコンピュータ31は、ランプ11の累積点灯時間を計時する計時部の一例である。
【0049】
また、マイクロコンピュータ31は、ステップS5において、ランプ11に対する給電の停止条件が成立したときに算出される累積点灯時間を、給電停止データ41の累積点灯時間411としてメモリ32に記録する。
【0050】
なお、ステップS5において給電停止データ41を記録する処理を行うマイクロコンピュータ31は、ランプ11に対する給電の停止(S6)が実行されるときに温度を記録する第一温度記録部の一例である。さらに、同処理を行うマイクロコンピュータ31は、ステップS3においてランプ11の異常が検出されたときに温度を記録する第二温度記録部の一例でもある。
【0051】
ステップS3において、第2停止条件が成立した場合、即ち、ランプ11の異常が検知された場合、マイクロコンピュータ31は、図4に示されるランプ異常データ42をメモリ32に記録する。
【0052】
ランプ異常データ42は、ランプ11の異常が検知されたときのランプ11の累積点灯時間421と、そのときに第一温度センサ21及び第二温度センサ22によって検出される第一温度422及び第二温度423とが対応付けられたデータである。
【0053】
ランプ異常データ42は、ランプ11の異常が検知されたときに、最新のデータのみがメモリ32に残される。但し、ランプ11が交換されるときに、ランプ異常データ42は初期化される。なお、ステップS5においてランプ異常データ42を記録する処理を行うマイクロコンピュータ31は、第二温度記録部の一例である。
【0054】
ところで、ランプ11の異常が正しく検知された場合、通常は、給電停止データ41及びランプ異常データ42が常に同じデータとなる。さらに、ランプ11は交換され、両データは初期化される。そのため、ランプ異常データ42の記録が省略され、給電停止データ41が、ランプ異常データ42の代わりに利用されるてもよい。
【0055】
一方、ランプ11の異常が、兆候の段階で早期に検知されること、或いは、ランプ11の異常が、ランプ電源回路33の誤動作によって検知されてしまうことなどが考慮される場合、給電停止データ41及びランプ異常データ42が個別に記録されることが望ましい。
【0056】
ステップS4において、第3停止条件が成立した場合、即ち、第二温度の異常が検知された場合、マイクロコンピュータ31は、図5に示される温度異常データ43をメモリ32に記録する。
【0057】
温度異常データ43は、第二温度の異常が検知されたときのランプ11の累積点灯時間421と、そのときに第一温度センサ21及び第二温度センサ22によって検出される第一温度432及び第二温度433とが対応付けられたデータである。
【0058】
温度異常データ43は、第二温度の異常が検知されるごとに記録され、最新のN回分のデータがメモリ32に残される。但し、ランプ11が交換されるときに、温度異常データ43は初期化される。
【0059】
なお、温度異常データ43が、第一温度の異常が検知さときのランプ11の累積点灯時間421と、そのときの第一温度及び第二温度とを含むデータであることも考えられる。
【0060】
なお、ステップS5において温度異常データ43を記録する処理を行うマイクロコンピュータ31は、第四温度記録部の一例である。即ち、マイクロコンピュータ31は、第二温度センサ22の検出温度が予め定められた条件を満たすごとの第二温度と累積点灯時間431とを相互に対応付けてメモリ32に記録する。
【0061】
ランプ11の異常が検知されたときにランプ11への給電を停止する理由は、故障が生じて電気的に短絡した状態となったランプ11に対して過剰な電流が流れることを防止するためである。
【0062】
また、第二温度の異常が検知されたときにランプ11への給電を停止する理由は、ランプ11の点灯を継続することによってランプ11の故障が発生することを防止するためである。
【0063】
<ステップS7−S8>
一方、ステップS2からS4の処理において、第1停止条件から第3停止条件のいずも成立しなかった場合、マイクロコンピュータ31は、計時中の累積点灯時間が、予め定められた複数の検査時間各々を経過したか否かを判別する(S7)。複数の検査時間は、例えば、ランプ11の仕様上の寿命時間である定格点灯時間Ltを一定の時間間隔で区分した時間であることが考えられる。
【0064】
なお、複数の検査時間は、必ずしも一定の時間間隔で設定されるとは限らない。例えば、複数の検査時間は、定格点灯時間Ltを、定格点灯時間Ltに近づくほど時間間隔が短くなるように区分した時間であることも考えられる。
【0065】
そして、マイクロコンピュータ31は、随時計算される累積点灯時間が、複数の検査時間各々を経過するごとの第一温度センサ21及び第二温度センサ22の検出温度を、図6に示される定時データ44としてメモリ32に記録する(S8)。定時データ44に含められる第一温度及び第二温度は、それらの温度が検出されたときの累積点灯時間である検査時間を特定可能な形式でメモリ32に記録される。なお、ステップS8において定時データ44を記録する処理を行うマイクロコンピュータ31は、第三温度記録部の一例である
【0066】
<定時に記録されるデータ>
以下、図6に示されるデータ構成図を参照しつつ、ステップS8においてメモリ32に記録される定時データ44について説明する。
【0067】
定時データ44は、累積点灯時間が予め定められた複数の検査時間を経過するごとの温度センサ21,22の検出温度である第一温度441及び第二温度442が、その温度が検出されたときの累積点灯時間を特定可能な形式でメモリ32に記録されるデータである。
【0068】
図6に示される例では、複数の検査時間は、ランプ11の仕様上の寿命時間である定格点灯時間Ltを10時間間隔で区分した時間である。そして、定時データ44は、複数の検査時間各々に対応するデータの記録位置に記録された第一温度441及び第二温度442の各データを含む。即ち、図6に示される定時データ44は、第一温度441及び第二温度442の各データの記録位置により、その温度が検出されたときの累積点灯時間を特定可能に構成されている。
【0069】
なお、定時データ44が、温度異常データ43と同様に、第一温度441及び第二温度442とそれらの温度が検出されたときの累積点灯時間とが対応付けられたデータであることも考えられる。そのような形式の定時データ44に含まれる第一温度441及び第二温度442も、それらの温度が検出されたときの累積点灯時間を特定可能な形式でメモリ32に記録されているといえる。
【0070】
<ステップS9−S10>
また、ステップS2からS4の処理において、第1停止条件から第3停止条件のいずも成立しなかった場合、マイクロコンピュータ31は、ステップS7の処理に加え、計時中の累積点灯時間がランプ11の定格点灯時間Ltを経過したか否かの判別処理を行う(S9)。
【0071】
そして、累積点灯時間がランプ11の定格点灯時間Ltを経過している場合、マイクロコンピュータ31は、警報処理を実行する(S10)。この警報処理としては、例えば、不図示のブザーを通じて警報音を出力する処理、不図示の表示ランプもしくは表示パネルを通じて警告メッセージを出力する処理などが考えられる。
【0072】
なお、累積点灯時間がランプ11の定格点灯時間Ltを経過している場合、マイクロコンピュータ31が、映像出力OFFの操作が検知されたときと同様に、給電停止データ41の記録(S5)及びランプ11への給電の停止(S6)を行うことも考えられる。
【0073】
そして、マイクロコンピュータ31は、ランプ11への給電の停止条件が成立するまで、ステップS2からステップS4までの処理と、ステップS7からステップS10までの処理とを繰り返す。
【0074】
<効果>
ランプ11に対する給電が停止されるときに記録される給電停止データ41は、最新の累積点灯時間411を含む。従って、ランプ11の異常が発生した場合、給電停止データ41は、ランプ11の寿命時間である定格点灯時間Ltを超える使用時間に原因があるのか、それ以外に原因があるのかの判断材料を提供する。このように、給電停止データ41は、ランプ11の異常の原因究明に寄与する。
【0075】
また、ランプ異常データ42は、ランプ11が異常となった時点の装置内の温度の記録であり、ランプ11の異常の直接的な原因の究明に寄与するデータである。
【0076】
図7は、定時データ44の具体例を示す図である。図7に示される例において、第一温度441(吸気温度)の適正範囲は5℃から35℃までの範囲であり、第二温度442(ランプ温度)の目標値は80℃であるとする。なお、図7において、"ブランク"と示されている部分は、未だ温度データが記録されていない部分である。
【0077】
図7示される例では、ランプ11の累積点灯時間が20時間を経過したときに、第二温度442が目標値を大きく上回る温度まで上昇している。一方、同じ時点において、第一温度(吸気温度)は適正範囲内である。これらのことから、ランプ11の累積点灯時間が20時間を経過したときに、排気口が何らかの異物で塞がれ、ランプ11の冷却が不十分となった結果、ランプ11が高温になった可能性が高い。
【0078】
また、前述したように、マイクロコンピュータ31は、第一温度センサ21の検出温度が適正範囲を超えると吸気ファン23及び排気ファン24の回転速度を上げてランプ11の温度の上昇を防ぐ。しかしながら、図7に示される例では、ランプ11の累積点灯時間が40時間を経過したときに、第一温度441(吸気温度)が適正範囲を超えている。そのため、ランプ11の冷却が不十分となり、第二温度442が、目標値を上回る温度まで上昇してしまった可能性が高い。
【0079】
図7の例のように、累積点灯時間が既定時間を経過するごとに記録される定時データ44は、ランプ11が異常に至る過程における装置内の温度の変遷の記録であり、ランプ11の異常の原因究明に寄与するデータである。
【0080】
また、検出温度が予め定められた条件を満たすごとに記録される温度異常データ43も、定時データ44と同様に、ランプ11が異常に至る過程における装置内の温度の変遷の記録であり、ランプ11の異常の原因究明に寄与するデータである。特に、温度異常データ43は、温度センサ21,22の検出温度が適正範囲から外れたときの情報、即ち、ランプ11の異常との因果関係が深い情報のみがピックアップされたデータである。そのため、温度異常データ43は、比較的小さなデータサイズで、重要な情報を提供することができる。
【0081】
また、ランプ11の異常が発生した場合、異常につながる温度の履歴が記録されていなければ、ランプ11が、製造時の不純物の混入などによる不良品であることが推定される。
【0082】
以上に示したように、マイクロコンピュータ31によってメモリ32に記録される温度の履歴データは、ランプ11の異常の原因究明に大きく寄与する。その結果、ランプ11の異常の原因究明が容易となる。
【0083】
また、本実施形態においては、メモリ32に記録される温度データに、吸気口の部分における第一温度と、排気口の部分における第二温度とが含まれる。これにより、ランプ11の異常の原因が、外気の温度にあるのか、或いは、吸気口もしくは排気口が塞がれたことにあるのかを推定することが容易となり、ランプ11の異常の原因究明がさらに容易となる。
【0084】
<その他>
以上に示された実施形態の変形例として、マイクロコンピュータ31が、給電停止データ41、ランプ異常データ42、温度異常データ43及び定時データ44のうちの1つ乃至3つのみをメモリ34に記録する例も考えられる。
【0085】
また、メモリ34への温度データの記録が、温度センサ21,22の検出温度をトリガとして行われる例として、他の実施例も考えられる。例えば、温度センサ21,22の検出温度が、異常ではない程度で、適正範囲から外れた場合に、マイクロコンピュータ31が、ランプ11への給電の停止を行うことなく、温度異常データ43と同様のデータをメモリ32に記録することが考えられる。
【0086】
また、以上に示された実施形態において、第一温度センサ21が省略された構成、或いは、他の温度センサが、記録用の温度を検出する温度センサとして追加された構成なども考えられる。
【符号の説明】
【0087】
1 投写型表示装置、11 ランプ、12,15 集光レンズ、13 カラーホイール、14 ライトパイプ、16 表示デバイス、17 投写レンズ、21 第一温度センサ、22 第二温度センサ、23 吸気ファン、24 排気ファン、31 マイクロコンピュータ、32 メモリ(不揮発性メモリ)、33 ランプ電源回路、34 映像入力回路、35 操作部、41 給電停止データ、42 ランプ異常データ、43 温度異常データ、44 定時データ、331 電流検出素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、該光源の光から生成された映像光を投射する光学素子と、を備える投写型表示装置であって、
装置内の温度を検出する温度センサと、
前記光源の累積点灯時間を計時する計時部と、
不揮発性メモリと、
前記温度センサの検出温度をその温度が検出されたときの前記累積点灯時間を特定可能な形式で前記不揮発性メモリに記録する温度記録部と、を備えることを特徴とする投写型表示装置。
【請求項2】
前記温度記録部は、前記光源に対する給電が停止されるときの前記温度センサの検出温度と前記累積点灯時間とを相互に対応付けて前記不揮発性メモリに記録する第一温度記録部を含む、請求項1に記載の投写型表示装置。
【請求項3】
前記光源の異常を検出する異常検出部をさらに備え、
前記温度記録部は、前記光源の異常が検出されたときの前記温度センサの検出温度と前記累積点灯時間とを相互に対応付けて前記不揮発性メモリに記録する第二温度記録部を含む、請求項1又は請求項2に記載の投写型表示装置。
【請求項4】
前記温度記録部は、前記累積点灯時間が予め定められた時間を経過するごとの前記温度センサの検出温度を、その温度が検出されたときの前記累積点灯時間を特定可能な形式で前記不揮発性メモリに記録する第三温度記録部を含む、請求項1から請求項3のいずれかに記載の投写型表示装置。
【請求項5】
前記温度記録部は、前記温度センサの検出温度が予め定められた条件を満たすごとの前記温度センサの検出温度と前記累積点灯時間とを相互に対応付けて前記不揮発性メモリに記録する第四温度記録部を含む、請求項1から請求項4のいずれかに記載の投写型表示装置。
【請求項6】
前記温度センサは、
装置内における外気の入口の部分の温度を検出する第一温度センサと、
装置内における空気の出口の部分もしくは前記光源の周辺部の温度を検出する第二温度センサと、を含む、請求項1から請求項5のいずれかに記載の投写型表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−141482(P2012−141482A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−352(P2011−352)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】