説明

投写型表示装置

【課題】 一時的に投写映像を非表示状態にする機能を備える投写型表示装置において、光源を点灯させた状態においても、利便性を損なう事無く消費電力を削減することにある。
【解決手段】 一時的に投写映像を非表示状態にする機能を備える投写型表示装置であって、光源からの光を、駆動信号に応じて変調する液晶パネルと、入力映像信号を、前記液晶パネルを駆動する信号を生成する映像信号処理手段と、各部に電源を供給する電源供給手段と、前記電源供給手段からの電源供給を制御する、電源供給制御手段を備え、前記非表示状態において、前記液晶パネルの電源を供給したまま、前記映像信号処理手段の電源供給を停止することを特徴とする構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は投写型表示装置に関し、特に投写映像を一時的に隠す(ブランク)時の映像信号処理回路および液晶パネルの駆動に関するものである。
【背景技術】
【0002】
投写型表示装置には、スクリーン上の映像を一時的に隠す機能(ブランク機能)を備えている。このブランク機能は、プレゼンテーションにおける発表者が、投写映像以外に聴講者の視線を反らせたい場合など、一時的にスクリーン上の映像を隠すことにより、プレゼンテーションをサポートする機能である。
【0003】
通常ブランク機能は、入力映像信号に関係なく全黒映像を投写することによって実現している。また、直ぐに入力映像信号を投写できるように、光源は点灯したままにすることが多い。
【0004】
他にも、パワーマネージメントモード機能を備えている投写型表示装置もある。このパワーマネージメントモード機能とは、ある一定時間信号入力がない場合、自動的にランプを消灯することにより電力の節約を助ける機能である。また投写型表示装置では、輝度の劣化や、破壊による不点灯などの寿命を有する光源(例えば、高圧水銀ランプなど)を備えているものもあり、パワーマネージメントモード機能により光源の寿命を助ける役目も果たす。
【0005】
特許文献1では、入力信号がない場合、入力映像信号はあるが入力映像が投写されていない状態、あるいは入力映像が全黒映像の場合に、光源電力を最小値にする技術が開示されている。
【0006】
また特許文献2では、固体光源素子(LEDやレーザーなど)で構成された光源を備える投写型表示装置において、入力映像信号の入力が途絶えたことを検知した場合に、光源の輝度を低下させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−025054号公報
【特許文献2】特開2007−334092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ブランク機能やパワーマネージメントモードでは、映像を投写する必要がない為、光源点灯や映像信号処理回路で消費する電力は、基本的には無駄な電力となる。その為、パワーマネージメント機能では、光源を消灯することにより電力削減を実現している。
【0009】
ただし、両機能共に再度入力信号を投写することを前提とした機能であるため、光源を消灯した場合には、短時間で再度光源を点灯することになる。
【0010】
高圧水銀ランプなどを光源とする場合、短時間での点灯・消灯の繰返しは光源の短寿命化に繋がる。また、消灯後に再点灯する場合は、光源を一定温度まで冷やさなければ点灯しないこともある。
【0011】
加えて、光源によっては輝度が安定するまで時間がかかってしまう為、入力映像信号の投写を再開した場合に、投写映像が安定するまでの時間が必要となる。
【0012】
その為、先行技術では光源を消灯せずに輝度を落とす(電力を落とす)ことによって、利便性を損なうことなく、電力の削減を実現する技術を開示している。
【0013】
しかしながら投写型表示装置は近年、入力信号のデジタル化、高解像度化、高階調化、高度なカラーマネージメント技術の搭載、台形歪補正の搭載など、高画質・高機能化に伴うデジタル信号処理量が増大している。そのため、高速に動作するデジタルICを多く搭載することとなり、結果的に光源以外での消費電力が増加する傾向にある。
【0014】
上述の特許文献に開示された従来技術では、光源の消費電力のみの削減となってしまう為、よりいっそう消費電力を削減する為には、映像信号処理回路や液晶パネル、および液晶パネルの駆動回路などの消費電力削減も必要となる。
【0015】
しかしながら、光源が点灯している状態で単純に映像信号処理回路や液晶パネル、液晶駆動回路の電源供給を停止させただけでは、投写映像に不要な映像が表示されてしまう。たとえば液晶パネルがノーマリーホワイトである場合、液晶パネルの電源供給を停止させてしまうと、光源が点灯しているために、投写映像は全白表示になってしまう。
【0016】
そこで本発明の目的は、光源を点灯させた状態においても、利便性を損なう事無く消費電力を削減することを可能にした投写型表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、一時的に投写映像を非表示状態にする機能を備える投写型表示装置であって、光源からの光を、駆動信号に応じて変調する液晶パネルと、入力映像信号を、前記液晶パネルを駆動する信号を生成する映像信号処理手段と、各部に電源を供給する電源供給手段と、前記電源供給手段からの電源供給を制御する、電源供給制御手段を備え、前記非表示状態において、前記液晶パネルの電源を供給したまま、前記映像信号処理手段の電源供給を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の目的は、光源を点灯させた状態においても、利便性を損なう事無く消費電力を削減することを可能にした投写型表示装置を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1における投写型表示装置のシステム構成を示すブロック図
【図2】実施例1における投写型表示装置のフローチャートを示す図
【図3】液晶パネルにおける印加電圧と透過率の関係を示す図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
[実施例1]
図1に実施例1である投写型表示装置のシステム構成を示す。
【0022】
図1において、映像信号処理回路3は外部からの入力映像信号10を、所定の映像信号11に変換する。例えば、入力映像信号10がアナログRGB信号の場合は、AD変換によってデジタル信号に変換し、必要に応じて映像サイズをスケーリングする。
【0023】
入力映像信号10が、DVIやHDMIなどのデジタル信号の場合は、各フォーマットに応じてデコードを行い、必要に応じてスケーリングを行う。
【0024】
液晶駆動信号生成回路4は、映像信号処理回路3にて生成された映像信号11から、液晶パネル7を駆動する為の液晶駆動信号12を生成する。液晶パネル7の方式によっては、デジタルデータを再度DA変換し、アナログ信号によって駆動する。
【0025】
液晶パネル7では、液晶駆動信号12に応じて透過率(あるいは反射率)を変えることによって、光源からの光を変調する。
【0026】
液晶パネル7を透過(あるいは反射)した光は、投写レンズ8によって拡大投写されることにより、入力映像信号10に応じた映像をスクリーンへ表示する。
【0027】
電源生成回路1はACケーブル101より入力されるAC電源をDC電源に変換し、各部に電源を供給する。
【0028】
制御回路2は通常マイコンなどのCPUで構成され、電源生成回路1にて生成された電源の供給を制御している。電源制御信号A24、電源制御信号B25は映像信号処理回路および液晶駆動信号生成回路4への電源供給を制御している。
【0029】
バラスト制御信号26は、光源6への電源供給を制御しており、点灯・消灯の制御だけでなく電力のモード制御も行っている。一般的な投写型表示装置では、通常投写時より低い電力にて光源を点灯させるエコモードを搭載しており、投写映像を通常より暗くする代わりに、電力削減および光源の長寿命化を目的とした投写モードである。
【0030】
バラスト5は、光源6を点灯・消灯する為の制御および電力供給を行う。制御回路2からのバラスト制御信号26にて点灯指示を受けると、光源6を点灯させる為に必要な高圧パルスを発生させ、点灯が開始された後は一定電力を供給する。また、前述したエコモードの指示を受けると、電力を調整する制御も行う。
【0031】
次に実施例1における動作について説明する。図2は投写型表示装置の非表示モードを開始してから、非表示モード解除動作を終了するまでの一連の流れを示したフローチャートである。
【0032】
ブランク機能やパワーマネージメント機能により、投写映像の非表示モードが開始されると、まずステップS01で液晶パネル7への非表示映像の書き込みを行う。通常非表示映像は全黒表示であるが、本発明はこれに限るものではない。
【0033】
液晶パネル7は、液晶駆動信号生成回路4からの液晶駆動信号12を、随時書き込む動作を行っている為、駆動信号の入力を固定電圧に切り換える回路を別途用意し、常に固定電圧で走査することで、非表示映像を表示することができる。図3は、液晶パネルの一般的な印加電圧と透過率(反射率)の関係を示している。液晶パネルのモードには通常ノーマリーブラックと、ノーマリーホワイトの2つのモードがあり、電圧を印加してい無い状態での透過率(反射率)によって分かれる。
【0034】
ノーマリーブラックは、電圧を印加していない状態で透過率(反射率)が低い状態である為、光源からの光が遮断され、投写映像は黒となる。反対に、電圧を印加していない状態で投写映像が白となるものが、ノーマリーホワイトである。
【0035】
駆動信号の入力を固定電圧に切り換える際には、液晶パネル7のモードに応じて印加電圧を設定することにより、ノーマリーホワイトの液晶パネルでも、非表示映像を投写できる。
【0036】
駆動信号の入力を切り換える回路、あるいは同等の機能を液晶パネル7に持たせてもよい。
【0037】
この駆動信号の入力切り換えによって、液晶駆動信号生成回路4の電源供給を停止しても、投写映像を乱すことを防ぐことができ、ユーザーに違和感無く非表示映像への切り換えが行える。
【0038】
駆動信号の切り換え後、制御回路2からバラスト5に減光指令を出し、バラスト5は出力電力を下げて光源6の減光を行う(ステップS02)。
【0039】
電源制御信号A24および電源制御信号B25によって、映像信号処理回路3および液晶駆動信号生成回路4の電源供給を停止する(ステップS03)。
【0040】
以上の制御にて、光源電力と映像表示系電力の両方の電力を削減した非表示モードを実現することができる。
【0041】
ブランク機能からの復帰や、パワーマネージメント機能における映像入力信号の検知によって、非表示モードの解除となった場合(ステップS04)には、まずステップS03にて電源供給を停止した回路に、電源供給を再開する(ステップS05)。
【0042】
映像信号処理回路3や液晶駆動信号生成回路4は、通常電源供給を開始した後、動作を安定させる為のリセット動作や、レジスタへの初期値設定など、初期化作業が必要となる(ステップS06)。回路構成(ICの仕様)によっては、回路の初期化は必要ない場合もある。
【0043】
映像信号処理回路3および液晶駆動信号精製回路4の動作安定後、光源6の減光解除を行い、通常投写時の輝度に戻す(ステップS07)。
【0044】
最後に液晶パネル7の入力信号を、液晶駆動信号生成回路4からの駆動信号12に切り換えることによって、非表示モードから復帰することができる。
【0045】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 電源生成回路
2 制御回路
3 映像信号処理回路
4 液晶駆動信号生成回路
5 バラスト
6 光源
7 液晶パネル
8 投写レンズ
9 光学ユニット
10 入力映像信号
11 映像信号
12 液晶駆動信号
20 バラスト電源
21 映像信号処理回路電源
22 液晶駆動信号精製回路電源
23 液晶パネル電源
24 電源制御信号A
25 電源制御信号B
26 バラスト制御信号
100 投写型表示装置
101 ACケーブル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一時的に投写映像を非表示状態にする機能を備える投写型表示装置であって、
光源からの光を、駆動信号に応じて変調する液晶パネルと、
入力映像信号を、前記液晶パネルを駆動する信号を生成する映像信号処理手段と、
各部に電源を供給する電源供給手段と、
前記電源供給手段からの電源供給を制御する、電源供給制御手段を備え、
前記非表示状態において、前記液晶パネルの電源を供給したまま、前記映像信号処理手段の電源供給を停止することを特徴とする投写型表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−80090(P2013−80090A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219775(P2011−219775)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】