説明

投射型表示装置および光学ユニット

【課題】短波長域用液晶パネルの液晶層に用いる材料自身の紫外線吸収スペクトルを改善することにより、短波長域用液晶パネルの耐光性を高めることのできる投射型表示装置および光学ユニットを提供すること。
【解決手段】投射型表示装置に用いる液晶パネルのうち、青色用液晶パネルでは、他の液晶パネル(赤色用液晶パネルおよび緑色用液晶パネル)に比して、液晶層の吸光度を300nmから350nmまでの波長域λ300-350で積分した積分値が小さい。また、青色用液晶パネルの液晶層は、赤色用液晶パネルおよび緑色用液晶パネルの液晶層に比して、長波長側の吸収端が短波長側に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の液晶パネルを備えた投射型表示装置および光学ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の液晶パネルをライトバルブとして備えた投射型表示装置では、光源部から出射された光を複数の液晶パネル毎で変調した後、合成し、かかる合成光を投射光学系によりスクリーン等の被投射部材に投射する。複数の液晶パネルとしては、赤色光が供給される赤色用液晶パネル、緑色光が供給される緑色用液晶パネル、および青色光が供給される青色用液晶パネルが多用されている。このような投射型表示装置において、青色用液晶パネルは、他の液晶パネルに比して供給される光の波長が短いため、液晶層が劣化しやすい。
【0003】
そこで、青色用液晶パネルについては、他の液晶パネル(緑色用液晶パネルおよび赤色用液晶パネル)と構成を相違させて青色用液晶パネルの寿命を延長する技術が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1では、例えば、青色用液晶パネルについては、他の液晶パネル(緑色用液晶パネルおよび赤色用液晶パネル)より、サイズを大きくすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−31545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成例のように、青色用液晶パネルのサイズを他の液晶パネル(緑色用液晶パネルおよび赤色用液晶パネル)のサイズより大きくした場合、第1基板および第2基板の設計や製造プロセス等を大幅に変更する必要があるため、好ましくない。
【0006】
ここに、本願発明者は、青色用液晶パネルの液晶層に用いる材料自身の紫外線吸収スペクトルを改善することにより、青色用液晶パネルの耐光性を高めることを提案するものであり、かかる構成によれば、第1基板および第2基板の設計や製造プロセス等を変更する必要がないという利点がある。
【0007】
なお、特許文献1には、青色用液晶パネルについては、他の液晶パネル(緑色用液晶パネルおよび赤色用液晶パネル)より、液晶層におけるターフェニル誘導体の濃度を低くすることが提案されているが、かかる構成は、青色用液晶パネルに対して、耐光性の低下因子であるターフェニル誘導体の含有量を少なくしようとするものであり、本願発明者が提案する紫外線吸収スペクトルを改善する構成と相違する。また、特許文献1では、青色用液晶パネルの液晶層に紫外線吸収剤を添加し、他の液晶パネル(緑色用液晶パネルおよび赤色用液晶パネル)の液晶層には紫外線吸収剤を添加しないことが提案されているが、紫外線吸収剤を添加しても、紫外線吸収剤によって光が吸収される前に液晶層が光を受けることを避けることが困難である以上、青色用液晶パネルの耐光性を十分に高めることは困難である。また、紫外線吸収剤が液晶層の配向特性等を変化させる可能性もある。
【0008】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、短波長域用液晶パネルの液晶層に用いる材料自身の紫外線吸収スペクトルを改善することにより、短波長域用液晶パネルの耐光性を高めることのできる投射型表示装置および光学ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る投射型表示装置は、光源部と、該光源部から互いに異なる波長域の光が供給される複数の液晶パネルと、該複数の液晶パネルから出射された光を合成して出射する光合成光学系と、該光合成光学系により合成された光を投射する投射光学系と、を有し、前記複数の液晶パネルのうち、最も短波長域の光が供給される短波長域用液晶パネルでは、他の液晶パネルより、液晶層の吸光度を300nmから350nmまでの波長域で積分した積分値が小さいことを特徴とする。
【0010】
本発明では、複数の液晶パネルのうち、短波長域用液晶パネルは、他の液晶パネルに比して、液晶層の吸光度を300nmから350nmまでの波長域で積分した積分値が小さい。すなわち、短波長域用液晶パネルでは、他の液晶パネルに比して、短波長域の光が入射した際の透過率が高い。それ故、短波長域用液晶パネルでは、他の液晶パネルに比して、短波長域の光が入射した場合でも、液晶層に用いた材料での励起が小さいといえ、劣化しにくいといえる。このため、短波長域用液晶パネルでは、他の液晶パネルに比して耐光性に優れている。一方、他の液晶パネルに入射する光は、短波長域用液晶パネルに入射する光に比して、波長が長いので、液晶層が劣化しにくい。従って、本発明に係る投射型表示装置では、いずれの液晶パネルでも、液晶層の劣化が発生しにくいので、長い期間にわたって品位の高い画像を投射表示することができる。
【0011】
本発明において、前記短波長域用液晶パネルでは、前記他の液晶パネルより、前記液晶層の紫外線吸収スペクトルにおける長波長側の吸収端が短波長側に位置することが好ましい。かかる構成によれば、短波長域用液晶パネルの耐光性をさらに高めることができる。従って、本発明に係る投射型表示装置では、いずれの液晶パネルでも、液晶層の劣化が発生しにくいので、長い期間にわたって品位の高い画像を投射表示することができる。
【0012】
また、本発明の別の形態に係る投射型表示装置は、光源部と、該光源部から互いに異なる波長域の光が供給される複数の液晶パネルと、該複数の液晶パネルから出射された光を合成して出射する光合成光学系と、該光合成光学系により合成された光を投射する投射光学系と、を有し、前記複数の液晶パネルのうち、最も短波長域の光が供給される短波長域用液晶パネルでは、他の液晶パネルより、液晶層の紫外線吸収スペクトルにおける長波長側の吸収端が短波長側に位置することを特徴とする。
【0013】
本発明では、複数の液晶パネルのうち、短波長域用液晶パネルは、他の液晶パネルに比して、液晶層の紫外線吸収スペクトルにおける長波長側の吸収端が短波長側に位置する。すなわち、短波長域用液晶パネルでは、他の液晶パネルに比して、短波長域の光が入射した際の透過域が低波長側まで伸びている。それ故、短波長域用液晶パネルでは、他の液晶パネルに比して、短波長域の光が入射した場合でも、液晶層に用いた材料での励起が小さいといえ、劣化しにくいといえる。このため、短波長域用液晶パネルでは、他の液晶パネルに比して耐光性に優れている。一方、他の液晶パネルに入射する光は、短波長域用液晶パネルに入射する光に比して、波長が長いので、液晶層が劣化しにくい。従って、本発明に係る投射型表示装置では、いずれの液晶パネルでも、液晶層の劣化が発生しにくいので、長い期間にわたって品位の高い画像を投射表示することができる。
【0014】
本発明において、前記短波長域用液晶パネルでは、前記他の液晶パネルより、前記液晶層の屈折率異方性が小さいことが好ましい。かかる構成によれば、短波長域用液晶パネルの耐光性をさらに高めることができるので、本発明に係る投射型表示装置では、長い期間にわたって品位の高い画像を投射表示することができる。
【0015】
本発明において、前記複数の液晶パネルは、前記他の液晶パネルとして、同一の液晶材料が前記液晶層に用いられた2以上の液晶パネルを含み、前記短波長域用液晶パネルでは、前記他の液晶パネルとは異なる液晶材料が前記液晶層に用いられていることが好ましい。かかる構成によれば、他の液晶パネルとして、同一の液晶パネルを用いることができるので、構成の簡素化を図ることができる。
【0016】
本発明において、前記複数の液晶パネルは、赤色光が供給される赤色用液晶パネル、緑色光が供給される緑色用液晶パネル、および青色光が供給される青色用液晶パネルを含み、前記青色用液晶パネルが前記短波長域用液晶パネルであり、前記赤色用液晶パネルおよび前記緑色用液晶パネルが前記他の液晶パネルである構成を採用することができる。
【0017】
また、本発明は、液晶パネルおよび光合成光学系を有する光学ユニットに適用することができる。すなわち、本発明に係る光学ユニットは、互いに異なる波長域の光が供給される複数の液晶パネルと、該複数の液晶パネルから出射された光を合成して出射する光合成光学系と、を有し、前記複数の液晶パネルのうち、最も短波長域の光が供給される短波長域用液晶パネルでは、他の液晶パネルより、前記液晶層の吸光度を300nmから350nmまでの波長域で積分した積分値が小さいことを特徴とする。
【0018】
また、本発明の別の形態に係る光学ユニットは、互いに異なる波長域の光が供給される複数の液晶パネルと、該複数の液晶パネルから出射された光を合成して出射する光合成光学系と、を有し、前記複数の液晶パネルのうち、最も短波長域の光が供給される短波長域用液晶パネルでは、他の液晶パネルより、前記液晶層の紫外線吸収スペクトルにおける長波長側の吸収端が短波長側に位置することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を適用した投射型表示装置および光学ユニットの概略構成図である。
【図2】本発明を適用した投射型表示装置および光学ユニットで用いられる液晶パネルの説明図である。
【図3】本発明を適用した投射型表示装置に用いた液晶の液晶層のUV(紫外線)吸収スペクトルを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の説明で参照する図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならしめてある。
【0021】
また、以下の説明において、互いに異なる波長域の光が供給される複数の液晶パネルとして、赤色光、緑色光、青色光が入射する液晶パネルを説明する。従って、以下の説明において、最も短波長域の光が供給される短波長域用液晶パネルは、青色用液晶パネルであり、他の液晶パネルは、赤色用液晶パネルおよび緑色用液晶パネルである。ここで、赤色光、緑色光、青色光において各々が対応する波長域は、620〜740nm、500〜570nm、430〜500nmである。また、以下の説明において、液晶パネルに関しては、共通の構成等を説明する際には液晶パネル100とし、複数の液晶パネル100の個々の構成を説明する際には、以下に示すように、
赤色用液晶パネル100R
緑色用液晶パネル100G
青色用液晶パネル100B
とし、変調する光の波長域に応じて、R(赤色用)、G(緑色用)、B(青色用)を付して説明する。
【0022】
[投射型表示装置および光学ユニットの構成例]
図1は、本発明を適用した投射型表示装置および光学ユニットの概略構成図であり、図1(a)、(b)は各々、透過型の液晶装置を用いた投射型表示装置の説明図、および反射型の液晶装置を用いた投射型表示装置の説明図である。
【0023】
図1(a)に示す投射型表示装置110は、液晶パネルとして透過型の液晶パネルを用いた例であるのに対して、図1(b)に示す投射型表示装置1000は、液晶パネルとして反射型の液晶パネルを用いた例である。但し、以下に説明するように、投射型表示装置110、1000はいずれも、光源部130、1021と、光源部130、1021から互いに異なる波長域の光が供給される複数の液晶パネル100と、複数の液晶パネル100から出射された光を合成して出射するクロスダイクロイックプリズム119、1027(光合成光学系)と、光合成光学系により合成された光を投射する投射光学系118、1029とを有している。また、投射型表示装置110、1000においては、液晶パネル100およびクロスダイクロイックプリズム119、1027(光合成光学系)を備えた光学ユニット200が用いられている。
【0024】
(投射型表示装置の第1例)
図1(a)に示す投射型表示装置110は、観察者側に設けられたスクリーン111に光を照射し、このスクリーン111で反射した光を観察する、いわゆる投影型の投射型表示装置である。投射型表示装置110は、光源112を備えた光源部130と、ダイクロイックミラー113、114と、液晶ライトバルブ115〜117と、投射光学系118と、クロスダイクロイックプリズム119(合成光学系)と、リレー系120とを備えている。
【0025】
光源112は、赤色光R、緑色光G、および青色光Bを含む光を供給する超高圧水銀ランプで構成されている。ダイクロイックミラー113は、光源112からの赤色光Rを透過させるとともに、緑色光G、および青色光Bを反射する構成となっている。また、ダイクロイックミラー114は、ダイクロイックミラー113で反射された緑色光Gおよび青色光Bのうち青色光Bを透過させるとともに緑色光Gを反射する構成となっている。このように、ダイクロイックミラー113、114は、光源112から出射した光を赤色光Rと緑色光Gと青色光Bとに分離する色分離光学系を構成する。
【0026】
ここで、ダイクロイックミラー113と光源112との間には、インテグレーター121および偏光変換素子122が光源112から順に配置されている。インテグレーター121は、光源112から照射された光の照度分布を均一化する構成となっている。また、偏光変換素子122は、光源112からの光を、例えばs偏光のような特定の振動方向を有する偏光にする構成となっている。
【0027】
液晶ライトバルブ115は、ダイクロイックミラー113を透過して反射ミラー123で反射した赤色光を画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置である。液晶ライトバルブ115は、λ/2位相差板115a、第1偏光板115b、液晶パネル100(赤色用液晶パネル100R)、および第2偏光板115dを備えている。ここで、液晶ライトバルブ115に入射する赤色光Rは、ダイクロイックミラー113を透過しても光の偏光は変化しないことから、s偏光のままである。
【0028】
λ/2位相差板115aは、液晶ライトバルブ115に入射したs偏光をp偏光に変換する光学素子である。また、第1偏光板115bは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。そして、液晶パネル100(赤色用液晶パネル100R)は、p偏光を画像信号に応じた変調によってs偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。さらに、第2偏光板115dは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ115は、画像信号に応じて赤色光Rを変調し、変調した赤色光Rをクロスダイクロイックプリズム119に向けて出射する構成となっている。
【0029】
なお、λ/2位相差板115a、および第1偏光板115bは、偏光を変換させない透光性のガラス板115eに接した状態で配置されており、λ/2位相差板115a、および第1偏光板115bが発熱によって歪むのを回避することができる。
【0030】
液晶ライトバルブ116は、ダイクロイックミラー113で反射した後にダイクロイックミラー114で反射した緑色光Gを画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置である。かかる液晶ライトバルブ116は、液晶ライトバルブ115と同様に、第1偏光板116b、液晶パネル100(緑色用液晶パネル100G)、および第2偏光板116dを備えている。液晶ライトバルブ116に入射する緑色光Gは、ダイクロイックミラー113、114で反射されて入射するs偏光である。第1偏光板116bは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。また、液晶パネル100(緑色用液晶パネル100G)は、s偏光を画像信号に応じた変調によってp偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。そして、第2偏光板116dは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ116は、画像信号に応じて緑色光Gを変調し、変調した緑色光Gをクロスダイクロイックプリズム119に向けて出射する構成となっている。
【0031】
液晶ライトバルブ117は、ダイクロイックミラー113で反射し、ダイクロイックミラー114を透過した後でリレー系120を経た青色光Bを画像信号に応じて変調する透過型の液晶装置である。かかる液晶ライトバルブ117は、液晶ライトバルブ115、116と同様に、λ/2位相差板117a、第1偏光板117b、液晶パネル100(青色用液晶パネル100B)、および第2偏光板117dを備えている。ここで、液晶ライトバルブ117に入射する青色光Bは、ダイクロイックミラー113で反射してダイクロイックミラー114を透過した後にリレー系120の後述する2つの反射ミラー125a、125bで反射することから、s偏光となっている。
【0032】
λ/2位相差板117aは、液晶ライトバルブ117に入射したs偏光をp偏光に変換する光学素子である。また、第1偏光板117bは、s偏光を遮断してp偏光を透過させる偏光板である。そして、液晶パネル100(青色用液晶パネル100B)は、p偏光を画像信号に応じた変調によってs偏光(中間調であれば円偏光又は楕円偏光)に変換する構成となっている。さらに、第2偏光板117dは、p偏光を遮断してs偏光を透過させる偏光板である。したがって、液晶ライトバルブ117は、画像信号に応じて青色光Bを変調し、変調した青色光Bをクロスダイクロイックプリズム119に向けて出射する構成となっている。なお、λ/2位相差板117a、および第1偏光板117bは、ガラス板117eに接した状態で配置されている。
【0033】
リレー系120は、リレーレンズ124a、124bと反射ミラー125a、125bとを備えている。リレーレンズ124a、124bは、青色光Bの光路が長いことによる光損失を防止するために設けられている。ここで、リレーレンズ124aは、ダイクロイックミラー114と反射ミラー125aとの間に配置されている。また、リレーレンズ124bは、反射ミラー125a、125bの間に配置されている。反射ミラー125aは、ダイクロイックミラー114を透過してリレーレンズ124aから出射した青色光Bをリレーレンズ124bに向けて反射するように配置されている。また、反射ミラー125bは、リレーレンズ124bから出射した青色光Bを液晶ライトバルブ117に向けて反射するように配置されている。
【0034】
クロスダイクロイックプリズム119は、2つのダイクロイック膜119a、119bをX字型に直交配置した色合成光学系である。ダイクロイック膜119aは青色光Bを反射して緑色光Gを透過する膜であり、ダイクロイック膜119bは赤色光Rを反射して緑色光Gを透過する膜である。従って、クロスダイクロイックプリズム119は、液晶ライトバルブ115〜117のそれぞれで変調された赤色光Rと緑色光Gと青色光Bとを合成し、投射光学系118に向けて出射するように構成されている。
【0035】
なお、液晶ライトバルブ115、117からクロスダイクロイックプリズム119に入射する光はs偏光であり、液晶ライトバルブ116からクロスダイクロイックプリズム119に入射する光はp偏光である。このようにクロスダイクロイックプリズム119に入射する光を異なる種類の偏光としていることで、クロスダイクロイックプリズム119において各液晶ライトバルブ115〜117から入射する光を合成できる。ここで、一般に、ダイクロイック膜119a、119bはs偏光の反射トランジスター特性に優れている。このため、ダイクロイック膜119a、119bで反射される赤色光R、および青色光Bをs偏光とし、ダイクロイック膜119a、119bを透過する緑色光Gをp偏光としている。投射光学系118は、投影レンズ(図示略)を有しており、クロスダイクロイックプリズム119で合成された光をスクリーン111に投射するように構成されている。
【0036】
(投射型表示装置の第2例)
図1(b)に示す投射型表示装置1000は、光源光を発生する光源部1021と、光源部1021から出射された光源光を赤色光R、緑色光G、および青色光Bの3色の色光に分離する色分離導光光学系1023と、色分離導光光学系1023から出射された各色の光源光によって照明される光変調部1025とを有している。また、投射型表示装置1000は、光変調部1025から出射された各色の像光を合成するクロスダイクロイックプリズム1027(合成光学系)と、クロスダイクロイックプリズム1027を経た像光をスクリーン(不図示)に投射する投射光学系1029とを備えている。
【0037】
かかる投射型表示装置1000において、光源部1021は、光源1021aと、一対のフライアイ光学系1021d、1021eと、偏光変換部材1021gと、重畳レンズ1021iとを備えている。本形態においては、光源部1021は、放物面からなるリフレクタ1021fを備えており、平行光を出射する。フライアイ光学系1021d、1021eは、システム光軸と直交する面内にマトリクス状に配置された複数の要素レンズからなり、これらの要素レンズによって光源光を分割して個別に集光・発散させる。偏光変換部材1021gは、フライアイ光学系1021eから出射した光源光を、例えば図面に平行なp偏光成分のみに変換して光路下流側光学系に供給する。重畳レンズ1021iは、偏光変換部材1021gを経た光源光を全体として適宜収束させることにより、光変調部1025に設けた複数の液晶パネル100を各々均一に重畳照明可能とする。
【0038】
色分離導光光学系1023は、クロスダイクロイックミラー1023aと、ダイクロイックミラー1023bと、反射ミラー1023j、1023kとを備える。色分離導光光学系1023において、光源部1021からの略白色の光源光は、クロスダイクロイックミラー1023aに入射する。クロスダイクロイックミラー1023aを構成する一方の第1ダイクロイックミラー1031aで反射された赤色光Rは、反射ミラー1023jで反射されダイクロイックミラー1023bを透過して、入射側偏光板1037r、p偏光を透過させる一方、s偏光を反射するワイヤーグリッド偏光板1032r、および光学補償板1039rを介して、p偏光のまま、液晶パネル100(赤色用液晶パネル100R)に入射する。
【0039】
また、第1ダイクロイックミラー1031aで反射された緑色光Gは、反射ミラー1023jで反射され、その後、ダイクロイックミラー1023bでも反射されて、入射側偏光板1037g、p偏光を透過させる一方、s偏光を反射するワイヤーグリッド偏光板1032g、および光学補償板1039gを介して、p偏光のまま、液晶パネル100(緑色用液晶パネル100G)に入射する。
【0040】
これに対して、クロスダイクロイックミラー1023aを構成する他方の第2ダイクロイックミラー1031bで反射された青色光Bは、反射ミラー1023kで反射されて、入射側偏光板1037b、p偏光を透過する一方、s偏光を反射するワイヤーグリッド偏光板1032b、および光学補償板1039bを介して、p偏光のまま、液晶パネル100(青色用液晶パネル100B)に入射する。なお、光学補償板1039r、1039g、1039bは、液晶パネル100への入射光および出射光の偏光状態を調整することで、液晶層の特性を光学的に補償している。
【0041】
このように構成した投射型表示装置1000では、光学補償板1039r、1039g、1039bを経て入射した3色の光は各々、各液晶パネル100において変調される。その際、液晶パネル100から出射された変調光のうち、s偏光の成分光は、ワイヤーグリッド偏光板1032r、1032g、1032bで反射し、出射側偏光板1038r、1038g、1038bを介してクロスダイクロイックプリズム1027に入射する。クロスダイクロイックプリズム1027には、X字状に交差する第1誘電体多層膜1027aおよび第2誘電体多層膜1027bが形成されており、一方の第1誘電体多層膜1027aは赤色光Rを反射し、他方の第2誘電体多層膜1027bは青色光Bを反射する。従って、3色の光は、クロスダイクロイックプリズム1027において合成され、投射光学系1029に出射される。そして、投射光学系1029は、クロスダイクロイックプリズム1027で合成されたカラーの像光を、所望の倍率でスクリーン(図示せず。)投射する。
【0042】
[液晶パネル100の構成]
(液晶パネル100の基本構成)
図2は、本発明を適用した投射型表示装置110、1000および光学ユニット200で用いられる液晶パネル100の説明図であり、図2(a)、(b)は各々、液晶パネル100を各構成要素と共に第2基板の側から見た平面図、およびそのH−H’断面図である。
【0043】
図2(a)、(b)に示すように、液晶パネル100(赤色用液晶パネル100R、緑色用液晶パネル100G、および青色用液晶パネル100B)では、第1基板10と第2基板20とが所定の隙間を介してシール材107によって貼り合わされており、シール材107は第2基板20の外縁に沿うように枠状に設けられている。かかる液晶パネル100は、TN(Twisted Nematic)モードやVA(Vertical Alignment)モードの液晶パネルとして構成されている。液晶パネル100において、シール材107は、光硬化樹脂や熱硬化性樹脂等からなる接着剤であり、両基板間の距離を所定値とするためのグラスファイバー、あるいはガラスビーズ等のギャップ材が配合されている。かかる構成の液晶パネル100において、第1基板10と第2基板20との間では、シール材107によって囲まれた領域内に液晶層50が保持されている。
【0044】
本形態において、第1基板10および第2基板20はいずれも四角形であり、液晶パネル100の略中央には、画素領域10aが四角形の領域として設けられている。かかる形状に対応して、シール材107も略四角形に設けられ、シール材107の内周縁と画素領域10aの外周縁との間には、略四角形の周辺領域10bが額縁状に設けられている。第1基板10において、画素領域10aの外側では、第1基板10の一辺に沿ってデータ線駆動回路101および複数の端子102が形成されており、この一辺に隣接する他の辺に沿って走査線駆動回路104が形成されている。なお、端子102には、フレキシブル配線基板(図示せず)が接続されており、第1基板10には、フレキシブル配線基板を介して各種電位や各種信号が入力される。
【0045】
第1基板10の一方側の基板面において、画素領域10aには、画素トランジスター(図示せず)、および画素トランジスターに電気的に接続する画素電極9aがマトリクス状に形成されており、かかる画素電極9aの上層側には配向膜16が形成されている。配向膜16は、ポリイミド等の樹脂膜、あるいはシリコン酸化膜等の斜方蒸着膜からなる。本形態において、配向膜16は、SiOX(x<2)、SiO2、TiO2、MgO、Al23、In23、Sb23、Ta25等の斜方蒸着膜からなる無機配向膜(垂直配向膜)である。なお、第1基板10の一方面側において、周辺領域10bには、画素電極9aと同時形成されたダミー画素電極9bが形成されている。ダミー画素電極9bについては、ダミーの画素トランジスターと電気的に接続された構成、ダミーの画素トランジスターが設けられずに配線に直接、電気的に接続された構成、あるいは電位が印加されていないフロート状態にある構成が採用される。かかるダミー画素電極9bは、第1基板10において配向膜16が形成される面を研磨により平坦化する際、画素領域10aと周辺領域10bとの高さ位置を圧縮し、配向膜16が形成される面を平坦面にするのに寄与する。また、ダミー画素電極9bを所定の電位に設定すれば、画素領域10aの外周側端部での液晶分子の配向の乱れを防止することができる。
【0046】
第2基板20において第1基板10と対向する一方面側には共通電極21が形成されており、共通電極21の上層には配向膜26が形成されている。配向膜26は、配向膜16と同様、ポリイミド等の樹脂膜、あるいはシリコン酸化膜等の斜方蒸着膜からなる。本形態において、配向膜26は、SiOX(x<2)、SiO2、TiO2、MgO、Al23、In23、Sb23、Ta25等の斜方蒸着膜からなる無機配向膜(垂直配向膜)である。かかる配向膜16、26は、例えば、液晶層50に用いた誘電異方性が負のネマチック液晶化合物を垂直配向させ、液晶パネル100をノーマリブラックのVAモードとして動作させる。共通電極21は、第2基板20の略全面あるいは複数の帯状電極として複数の画素に跨って形成されている。また、第2基板20において第1基板10と対向する一方面側には、共通電極21の下層側に遮光層108が形成されている。本形態において、遮光層108は、画素領域10aの外周縁に沿って延在する額縁状に形成されており、見切りとして機能する。ここで、遮光層108の外周縁は、シール材107の内周縁との間に隙間を隔てた位置にあり、遮光層108とシール材107とは重なっていない。なお、第2基板20において、遮光層108は、隣り合う画素電極9aにより挟まれた領域と重なる領域等にも形成されることがある。
【0047】
このように構成した液晶パネル100において、第1基板10には、シール材107より外側において第2基板20の角部分と重なる領域に、第1基板10と第2基板20との間で電気的導通をとるための基板間導通用電極109が形成されている。かかる基板間導通用電極109には、導電粒子を含んだ基板間導通材109aが配置されており、第2基板20の共通電極21は、基板間導通材109aおよび基板間導通用電極109を介して、第1基板10側に電気的に接続されている。このため、共通電極21は、第1基板10の側から共通電位が印加されている。
【0048】
シール材107は、略同一の幅寸法をもって第2基板20の外周縁に沿って設けられている。このため、シール材107は、略四角形である。但し、シール材107は、第2基板20の角部分と重なる領域では基板間導通用電極109を避けて内側を通るように設けられており、シール材107の角部分は略円弧状である。
【0049】
かかる構成の液晶パネル100において、画素電極9aおよび共通電極21をITO(Indium Tin Oxide)膜やIZO(Indium Zinc Oxide)膜等の透光性導電膜により形成すれば、透過型の液晶パネル100を構成することができる。かかる透過型の液晶パネル100では、第2基板20の側から入射した光が第1基板10を透過して出射される間に変調される。これに対して、画素電極9aおよび共通電極21のうち、例えば、共通電極21を透光性導電膜により形成し、画素電極9aをアルミニウム膜等の反射性導電膜により形成すれば、反射型の液晶パネル100を構成することができる。反射型の液晶パネル100では、第2基板20の側から入射した光が第1基板10で反射して出射される間に変調される。
【0050】
本形態において、液晶パネル100は、図1を参照して説明した投射型表示装置のライトバルブに用いられる。この場合、各液晶パネル100の各々には、各色の光が入射することになるので、カラーフィルターは形成されていない。
【0051】
(液晶パネル100の液晶層50の説明)
図3は、本発明を適用した投射型表示装置110、1000に用いた液晶パネル100の液晶層50のUV(紫外線)吸収スペクトルを示す説明図であり、図3(a)には、200nmから450nmまでのUV吸収スペクトルを示し、図3(b)には、200nmから350nm付近までのUV吸収スペクトルを拡大して示してある。なお、図3に示す吸収スペクトルは、液晶材料をn−ヘキサン溶液(液晶材料の濃度=5mg/L)にして測定した結果である。
【0052】
図2に示す液晶パネル100において、液晶層50には、ビフェニル系液晶材料、フェニルシクロヘキサン系液晶材料、シクロヘキサン系液晶材料、フェニルピリジミン系液晶材料、エステル系液晶材料、ジオキサン系液晶材料等が用いられている。ここで、液晶層50では、上記の液晶材料を単独で用いることがある他、駆動電圧の低下、耐熱性、粘度等に関して要求される性能を満たすために複数の液晶材料をブレンドして用いることが多い。一方、投射型表示装置110、1000に用いられている複数の液晶パネル100のうち、青色用液晶パネル100Bは、他の液晶パネル(赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100G)に比して供給される光の波長が短いため、液晶層50が劣化しやすい。
【0053】
そこで、本形態では、複数の液晶パネル100のうち、最も短波長域の光が供給される青色用液晶パネル100Bについては、他の液晶パネル(赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100G)に比して、耐光性に優れた液晶材料を用いて液晶層50を構成してある。より具体的には、ビフェニル系液晶材料、フェニルシクロヘキサン系液晶材料、シクロヘキサン系液晶材料、フェニルピリジミン系液晶材料、エステル系液晶材料、ジオキサン系液晶材料等の液晶材料のうち、使用する液晶材料やブレンド比を決定するにあたって、青色用液晶パネル100Bについては、赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100Gに比して、低波長域の光を吸収しにくい液晶材料が用いてある。これに対して、赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100Gには、耐光性よりも、駆動電圧の低下、耐熱性、粘度等を優先して液晶材料を選定してあり、赤色用液晶パネル100Rの液晶層50と、緑色用液晶パネル100Gの液晶層50とは、同一の液晶材料が同一の比率で配合されている。
【0054】
例えば、本形態では、青色用液晶パネル100Bの液晶層50には、図3に実線L1で示すUV吸収スペクトルを備えた液晶材料を用い、他の液晶パネル(赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100G)の液晶層50には、図3に破線L2で示すUV吸収スペクトルを備えた液晶材料が用いられている。
【0055】
かかる液晶材料では、図3に示すUV吸収スペクトルを比較すれば分かるように、青色用液晶パネル100Bの液晶層50は、赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100Gの液晶層50に比して、液晶層50の吸光度Aλを300nmから350nmまでの波長域λ300-350で積分した値が小さい。ここで、液晶層50の吸光度Aλは、液晶層からの透過光強度をI、入射光の光強度Ioとしたとき、Aλ=−log10(I/Io)と表される。また、液晶層50の吸光度Aλを300nmから350nmまでの波長域λ300-350で積分した積分値Sλは、次式(1)のとおり表される。
【0056】
【数1】

液晶層50に用いられる液晶材料は、通常、200nm〜300nm付近に最も長波長側の吸収極大(吸収ピーク)が認められる。本実施の形態においては、この吸収ピークの長波長側の吸収肩に相当し、単調減少する300〜350nmの波長域での吸光度に着目した。波長域が300nm未満の吸光度では、液晶材料の吸収極大(吸収ピーク)位置の違いにより、単調減少しないスペクトルとなる場合があるので採用していない。また、波長域が350nmより長波長領域の液晶層の吸光度Aλは、分光光度計の測定検出限界に近づき、測定誤差が大きくなるため、採用していない。
また、青色用液晶パネル100Bの液晶層50は、赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100Gの液晶層50に比して、長波長側の吸収端が短波長側に位置する。より具体的には、青色用液晶パネル100Bの液晶層50は、長波長側の吸収端λbが350nmであるのに対して、他の液晶パネル(赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100G)の液晶層50は、長波長側の吸収端λaが360nmである。
【0057】
ここで、UV吸収スペクトルが材料の共役性の存在等を示すことから、上記の構成は、青色用液晶パネル100Bの液晶層50では、例えば、分子骨格への−C≡C−の導入等により共役性の増大を図った液晶材料の使用を避けた組成や、かかる液晶材料の配合比を低減することにより実現することができる。
【0058】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態の投射型表示装置110、1000、および光学ユニット200に用いた複数の液晶パネル100のうち、青色用液晶パネル100Bでは、他の液晶パネル(赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100G)に比して、液晶層50の吸光度を300nmから350nmまでの波長域λ300-350で積分した値が小さい。また、青色用液晶パネル100Bの液晶層50は、赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100Gの液晶層50に比して、長波長側の吸収端が短波長側に位置する。すなわち、青色用液晶パネル100Bでは、赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100Gに比して、短波長域の光が入射した際の透過率が高い。それ故、青色用液晶パネル100Bでは、赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100Gに比して、短波長域の光が入射した場合でも、液晶層50に用いた材料での励起が小さいといえ、劣化しにくいといえる。このため、青色用液晶パネル100Bは、赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100Gに比して、耐光性に優れている。一方、赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100Gに入射する光は、青色用液晶パネル100Bに入射する光に比して、波長が長いので、液晶層50が劣化しにくい。従って、本形態の投射型表示装置110、1000、および光学ユニット200では、いずれの液晶パネル100でも、液晶層50の劣化が発生しにくいので、長い期間にわたって品位の高い画像を投射表示することができる。特に、液晶層50の劣化は、液晶パネル100への光入射強度が高い程、発生しやすいことから、本形態の構成は、液晶パネル100への光入射強度を高く設定した場合に効果的である。
【0059】
また、本形態において、赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100Gでは、液晶層50が劣化しにくいことから、同一の液晶層50が用いられている。このため、赤色用液晶パネル100Rと緑色用液晶パネル100Gとには、同一の液晶パネル100を用いることができるので、構成の簡素化を図ることができる。
【0060】
(液晶層50の屈折率異方性について)
上記実施の形態では、青色用液晶パネル100Bについては、赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100Gに比して、低波長域の光を吸収しにくい液晶材料を用いたが、さらに、青色用液晶パネル100Bについては、赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100Gに比して、屈折率異方性Δnが小さい液晶材料を用いてもよい。これは、青色用液晶パネル100Bに、種々の紫外線吸収スペクトルにおける長波長側の吸収端が短波長側に位置する液晶材料を選択した場合に、青色用液晶パネルに用いる液晶材料の屈折率異方性Δnを、赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100Gで用いる液晶材料の屈折率異方性Δnよりも小さくすることによって更に耐光性が向上することを見出したことによる。例えば、青色用液晶パネル100Bについては、屈折率異方性Δnが0.10程度の液晶材料を用い、赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100Gでは、屈折率異方性Δnが0.12程度の液晶材料を用いる。それ故、青色用液晶パネル100Bについては、赤色用液晶パネル100Rおよび緑色用液晶パネル100Gに比して、低波長域の光を吸収しにくく、かつ、屈折率異方性Δnが小さい液晶材料を用いれば、青色用液晶パネル100Bの耐光性をさらに向上することができる。なお、この屈折率異方性Δnが小さい液晶材料には、ビフェニル系液晶材料、フェニルシクロヘキサン系液晶材料、シクロヘキサン系液晶材料、フェニルピリジミン系液晶材料、エステル系液晶材料、ジオキサン系液晶材料等を単独あるいはブレンドしたものを好適に用いることができる。
【0061】
[他の実施の形態]
投射型表示装置については、光源部として、各色の光を出射するLED光源等を用い、かかるLED光源から出射された色光を各々、別の液晶パネルに供給するように構成してもよい。
【0062】
また、上記実施の形態では、赤色光、緑色光、青色光の3つの液晶パネル100を用いた例を説明したが、異なる色に対応する2つの液晶パネル100や、4つ以上の液晶パネル100を用いた場合に適用してもよい。
【0063】
また、上記実施の形態では、他の液晶パネル100では、同一の液晶材料を用いたが、他の液晶パネル100において異なる液晶材料を用いてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10・・第1基板、20・・第2基板、50・・液晶層、100・・液晶パネル、100R・・赤色用液晶パネル(他の液晶パネル)、100G・・緑色用液晶パネル(他の液晶パネル)、100R・・青色用液晶パネル(短波長域用液晶パネル)、110,1000・・・投射型表示装置、119,1027・・クロスダイクロイックプリズム(光合成光学系)、118,1029・・投射光学系、130,1021・・光源部、200・・光学ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部と、
該光源部から互いに異なる波長域の光が供給される複数の液晶パネルと、
該複数の液晶パネルから出射された光を合成して出射する光合成光学系と、
該光合成光学系により合成された光を投射する投射光学系と、
を有し、
前記複数の液晶パネルのうち、最も短波長域の光が供給される短波長域用液晶パネルでは、他の液晶パネルより、液晶層の吸光度を300nmから350nmまでの波長域で積分した積分値が小さいことを特徴とする投射型表示装置。
【請求項2】
前記短波長域用液晶パネルでは、前記他の液晶パネルより、前記液晶層の紫外線吸収スペクトルにおける長波長側の吸収端が短波長側に位置することを特徴とする請求項1に記載の投射型表示装置。
【請求項3】
光源部と、
該光源部から互いに異なる波長域の光が供給される複数の液晶パネルと、
該複数の液晶パネルから出射された光を合成して出射する光合成光学系と、
該光合成光学系により合成された光を投射する投射光学系と、
を有し、
前記複数の液晶パネルのうち、最も短波長域の光が供給される短波長域用液晶パネルでは、他の液晶パネルより、液晶層の紫外線吸収スペクトルにおける長波長側の吸収端が短波長側に位置することを特徴とする投射型表示装置。
【請求項4】
前記短波長域用液晶パネルでは、前記他の液晶パネルより、前記液晶層の屈折率異方性が小さいことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の投射型表示装置。
【請求項5】
前記複数の液晶パネルは、前記他の液晶パネルとして、同一の液晶材料が前記液晶層に用いられた2以上の液晶パネルを含み、
前記短波長域用液晶パネルでは、前記他の液晶パネルとは異なる液晶材料が前記液晶層に用いられていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の投射型表示装置。
【請求項6】
前記複数の液晶パネルは、赤色光が供給される赤色用液晶パネル、緑色光が供給される緑色用液晶パネル、および青色光が供給される青色用液晶パネルを含み、
前記青色用液晶パネルが前記短波長域用液晶パネルであり、
前記赤色用液晶パネルおよび前記緑色用液晶パネルが前記他の液晶パネルであることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の投射型表示装置。
【請求項7】
互いに異なる波長域の光が供給される複数の液晶パネルと、
該複数の液晶パネルから出射された光を合成して出射する光合成光学系と、
を有し、
前記複数の液晶パネルのうち、最も短波長域の光が供給される短波長域用液晶パネルでは、他の液晶パネルより、前記液晶層の吸光度を300nmから350nmまでの波長域で積分した積分値が小さいことを特徴とする光学ユニット。
【請求項8】
互いに異なる波長域の光が供給される複数の液晶パネルと、
該複数の液晶パネルから出射された光を合成して出射する光合成光学系と、
を有し、
前記複数の液晶パネルのうち、最も短波長域の光が供給される短波長域用液晶パネルでは、他の液晶パネルより、前記液晶層の紫外線吸収スペクトルにおける長波長側の吸収端が短波長側に位置することを特徴とする光学ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−15815(P2013−15815A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−37107(P2012−37107)
【出願日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】