説明

投射型表示装置及び表示方法

【課題】本発明はキーストン補正を行っても画像が暗くなる程度、精細度が悪くなる程度が軽減される投射型表示装置及び表示方法を提供する。
【解決手段】画像信号に基づいて変調された光学像を出射する光変調手段と、光変調手段から出射された光学像をスクリーンに投射する手段と、投射手段の光軸がスクリーンに直交しない状態でスクリーンに投射される光学像の歪を補正する手段とを具備し、補正手段は光変調手段から出射され歪を受けてスクリーンに投射された光学像が方形になり、該方形光学像のいずれかの境界辺が投射手段による台形の投射可能エリアの長辺境界辺と揃うように光変調手段から出射される光学像を補正する投射型表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は投射型表示装置及び表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ライトバルブやDMD(デジタル・マイクロミラー・デバイス)等を利用した投射型表示装置が知られている。例えば光変調手段として透過型液晶パネル(液晶ライトバルブ)を用いた投射型表示装置は、光源から出射された白色光を3原色光に分離し、分離された各色光を液晶ライトバルブで変調し、液晶ライトバルブを透過した光学像を投射レンズを介してスクリーンに投射するものである。
【0003】
このような投射型表示装置では、投射装置をスクリーンの中心に合わせて正面から光学像を投射する場合は、光軸がスクリーンと直交するため方形の光学像が投射される。しかし、前面に投射するフロントプロジェクタと呼ばれる装置では、全ての観測者が投射像を見易いように、投射レンズ光軸とライトバルブの中心を上下左右方向に任意量シフトさせて、任意方向へ光学的にオフセット投射させることが多い。しかし、光学的な手段で大きなシフトを実現することは困難である。
【0004】
そこで、更なる投射範囲のシフトのために、スクリーンの中心よりも下側に投射装置を配置し、投射レンズ光軸を斜め上向きにして拡大投射することも行われている。これは一般に「あおり投射」と呼ばれる投射方式の一種であり、投射レンズの中心よりも上方に画像を投射する方式である。なお、あおり投射には上方に投射する垂直あおり投射と、左右方向に投射する水平あおり投射と、それらを混合したものがある。
【0005】
上方にあおり投射した場合、スクリーンに投射された画像はスクリーンの上にいくほど上方向に伸び、かつ左右方向に広がり逆台形状に歪む(この歪をキーストン歪と称する)という不具合がある。このようなあおり投射に基づくキーストン歪を信号処理により補正することが考えられている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0006】
特許文献1、特許文献2に記載のキーストン補正は、液晶ライトバルブを透過した光学像を歪みと逆方向に予め歪ませておいて、歪を受けた場合に投射像が方形となるようにするものである。すなわち、本来方形の投射像が逆台形状に歪むので、光学像を台形に補正しておく。ただし、逆台形の投射可能エリアの下辺(短辺境界辺)と補正後の矩形の投射像の下辺とが一致するように補正する。そのため、この補正による光学像の縮小の程度は焦点距離が長い一般的な投射距離では大きな問題とならないが、インテリジェントボード用途等に代表される、最大画角40度を超える様な超短焦点表示装置では、僅かな投射範囲のシフトのために装置全体を大きく傾斜させる(シフト角度は25.1度程度)必要があるだけでなく、キーストン補正後の投射像は表示装置が本来表示可能な投射可能エリアのごく一部分となる。このため、実効光束が減る(画像が暗くなる)、実効表示画素数が少なくなる(画像の精細度が悪くなる)と云う2つの顕著な不具合が発生する。さらに、大きな不要光(迷光)エリアの存在に起因する様々な二次的不具合が発生する可能性も高い。
【特許文献1】特開2004−120614号公報(段落0005乃至段落0007)
【特許文献2】特開2007−17537号公報(段落0003乃至段落0004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように従来の投射型表示装置には、キーストン補正により画像が暗くなる、精細度が悪くなるという欠点がある。
【0008】
本発明の目的はキーストン補正を行っても画像が暗くなる程度、精細度が悪くなる程度が軽減される投射型表示装置及び表示方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決し目的を達成するために、本発明は以下に示す手段を用いている。
【0010】
投射型表示装置は、光源からの光が入射され、画像信号に基づいて変調された光学像を出射する光変調手段と、前記光変調手段から出射された光学像をスクリーンに投射する投射手段と、前記投射手段の光軸が前記スクリーンに直交しない状態でスクリーンに投射される光学像の歪を補正する補正手段とを具備し、前記補正手段は前記光変調手段から出射され前記歪を受けてスクリーンに投射された光学像が方形になり、該方形光学像のいずれかの境界辺が前記投射手段による台形の投射可能エリアの長辺境界辺と揃うように前記光変調手段から出射される光学像を補正するものである。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明によれば、光変調手段から出射され歪を受けてスクリーンに投射された光学像が方形になり、方形光学像のいずれかの境界辺が投射手段による台形の投射可能エリアの長辺境界辺と揃うように光変調手段から出射される光学像を補正することにより、キーストン補正後の投射像が表示装置が本来表示可能な投射可能エリアに占める割合が大きくなり、実効光束が減る程度や実効表示画素数が少なくなる程度が軽減される投射型表示装置及び表示方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明による投射型表示装置及び表示方法の実施の形態を説明する。
【0013】
図1は光学的オフセット投射の原理を示す。図1の(a)に示すように、投射レンズ2の光軸と、ライトバルブのアクティブエリア4の下端(投射像は一般に上下反転するため、図1のアクティブエリア4の上端が表示スクリーン上では下端となる)を一致させると、光軸を下端とする投射エリア6にアクティブエリア4の画像が投射される。つまり投射レンズ2は、ライトバルブのインアクティブエリア(仮想エリア)8の画像を光軸を上端とする投射エリア10に投射することが可能な構造を有している。
【0014】
投射レンズ2を本来の目的であるライトバルブのアクティブエリア4の画像のみをスクリーンに投射するのであれば、図1の(b)に示すように、投射レンズ2の投射可能範囲であるイメージエリア12はアクティブエリア4をカバーする円(通常投射レンズは球面構成であるため、イメージアリアも円である)であればよい。
【0015】
しかし、この状態では、投射レンズ2の光軸と投射像の中心とが一致するため、投射像が表示装置の置机や装置本体の影に隠れる等の不具合が生じる。このため、図1の(c)に示すように、投射レンズ2のイメージエリア14を拡大し、投射レンズ2の光軸とライトバルブの中心を任意量オフセットさせることで、投射像を光学的にシフトさせ、投射像が表示装置の置机や装置本体の影に隠れる等の不具合を回避することが考えられている。
【0016】
しかし、この手段はシフト量に応じた投射レンズのイメージエリア拡大が必要であるため、形状、コスト、性能(投射距離)に影響を与えることが多く、大きなシフト量を実現することが困難である。
【0017】
そのため、一般的なフロントプロジェクタの使用において多くの観測者へ更なる見易さを提供する目的として、投射像の更なるシフトのため、図2(b)に示すように表示装置20の光軸を水平方向から任意量傾けて、あおり投射し、投射像24をh2だけ上方にシフトすることが考えられている。図2の(a)は表示装置20の光軸が水平方向と一致している図1の原理による光学的オフセット投射を示す。図2の(b)に示すように、表示装置20自体をスクリーン22に対して任意角度傾ける(表示装置20の光軸を投射可能エリアの中心からオフセットさせる)と、投射位置を上方へ更にシフトし、シフト量をh1からh2まで拡大することが可能である。しかし、表示装置20の光軸がスクリーンに対して直交していないので、傾斜角度に応じた量だけ、実際の投射像26は上方になるにつれて拡大し、キーストン歪が生じる。
【0018】
このあおり投射により発生したキーストン歪を受けた投射像26を信号処理によるキーストン補正処理により通常投射状態(表示装置20の光軸がスクリーン22の中心と一致する、すなわちスクリーンに対して直交する状態)の投射像24に等しくなるように映像圧縮補正する手段が既に実用一般化されている。
【0019】
しかし、従来のキーストン補正は、図2の(b)に示すように、補正後の投射像24の下辺境界辺が逆台形の投射可能エリア26の下辺(短辺)境界辺と一致するように補正している。この補正による光学像の縮小の程度(投射可能エリア26と補正後の実際の投射像24との差分)は、図3の(a)に示すような焦点距離が長い一般的な投射距離(約5m以上)では大きな問題とならないが、図3の(b)に示すようなインテリジェントボード用途等に代表される、最大画角40度を超える様な超短焦点(約2m以内)表示装置では、僅かな投射エリアシフトのために装置全体を大きく傾斜させる(シフト角度は25.1度程度)必要があるだけでなく、キーストン補正後の光学像の投射エリアは表示装置が本来表示可能な投射エリアのごく一部分となるという不具合が発生する
この不具合を具体的に言い換えると、投射可能エリア26全体の投射光束のごく一部が投射像(表示エリア)24となるため、
(1) 実効光束が減る(画像が暗くなる)、
(2) 実効表示画素数が少なくなる(画像の精細度が悪くなる)、
と云う2つの顕著な不具合が発生する。さらに、大きな不要光(迷光)エリアの存在に起因する様々な二次的不具合が発生する可能性も高い。
【0020】
図4はこの不具合を解決した本発明の実施形態の原理を説明するための図である。図4の(a)は図3の(b)と同じである。
【0021】
本発明の実施形態は図4の(b)または(c)に示すように、逆台形の投射可能エリア26の上辺(光軸に遠い辺、あるいはシフト方向の上辺)境界辺である長辺境界辺を基準としてキーストン補正する。すなわち、投射像24の上辺境界辺が投射可能エリア26の上辺境界辺と揃うように補正する。そのため、キーストン補正後の投射像(表示エリア)24が本来表示装置が表示可能な投射可能エリア26に占める割合を大きくすることができ、明るさ、有効画素数が2倍近く改善されていることが目視比較にて充分判断できる。さらに、投射像24がシフト方向の上側に投射されているので、従来と同じシフト量hを得ようとした場合、表示装置20自体をスクリーン22に対して傾ける角度が小さくて済む(25.1度から10.7度に減少)という利点もある。傾斜角度が小さいことはランプの動作安定性の観点から好ましい。ランプは水平状態で使用するのが前提であり、余り傾けると動作が不安定になることが知られている。
【0022】
図4の(b)は投射像24の横幅を従来と同じ(台形の投射可能エリア26の短辺境界辺と同じ)とした場合であり、投射像24の下辺の横幅が台形の平行ではない対辺に接しておらず、投射像を拡大する余地を僅かに残している。図4の(c)は投射像24Aの横幅を画像のアスペクト比を変えない範囲内で最大とした(表示装置の光軸に近い投射像24Aの下辺境界辺の両端が台形の投射可能エリア26の平行ではない対辺と接する)場合である。図4の(c)の場合は投射像を最大限拡張するので、明るさ、有効画素数が非常に改善される。図4の(b)は多少の拡張の余地を残しているので、図4の(c)の場合に比べると明るさ、有効画素数は多少落ちるが、左右方向にマージンがあるので後述するように設置後の位置ずれがあっても表示が欠けることがない効果がある。
【0023】
図5は本発明の一実施の形態による投射型表示装置のブロック図である。
【0024】
表示装置の動作を制御するマイクロコンピュータ(CPU)102が設けられる。CPU102には、リモコン104や操作部106からの指示を受ける入力回路(図示せず)が設けられている。
【0025】
表示装置は光源ランプ108の点灯や消灯を行なうランプ電源回路110と、光源ランプ108を冷却するためのファン112を駆動するファン駆動回路114、及び液晶パネル(ライトバルブ)116を有し、光源ランプ108からの光を液晶パネル116に照射するようにしている。映像処理回路132には、信号入力端子130が接続され、テレビジョン放送信号を受信処理した映像信号やパソコンからの情報信号が信号入力端子130から供給されるようになっている。
【0026】
映像処理回路132からの信号は歪補正回路134を介して液晶駆動回路136に供給され、この液晶駆動回路136によって液晶パネル116を駆動することで、液晶パネル116の透過光の強度を変調し、液晶パネル116からの光学像を投射レンズ118を介してスクリーン(図示せず)に投射し表示するようにしている。歪補正回路134がAPI部であり、その中にルックアップテーブルを備える。
【0027】
液晶パネル116としては、単枚式であっても良いが、複数(例えば3枚)の液晶パネルを用いた多板式であっても良い。多板式の場合、3枚の液晶パネルをそれぞれR(赤),G(緑),B(青)の原色信号で駆動し、光源ランプからの光をR光,G光,B光に分光して各液晶パネルに入射し、それぞれの液晶パネルの透過光を再合成してスクリーンに投射する構成となっている。
【0028】
138は傾きセンサーであり、表示装置の垂直方向の傾斜角度を測定する角度センサーとして機能するものである。この傾きセンサー138の検出結果は、CPU102に供給され、傾斜角度に関するデータを歪補正回路134に供給し、歪補正回路134は、垂直あおり投射による歪を補正すべく、液晶パネル116に表示する映像を傾斜角度に応じて補正するようにしている。
【0029】
リモコン104には電源キー121、メニューキー122の他に、自動台形歪補正キー123及び台形歪を手動で補正する補正キー124、125を備えている。
【0030】
次にこのような投射型表示装置のキーストン補正を図6を参照して説明する。液晶パネル116から出射された方形の光学像を垂直方向にあおり投射すると、図4の(a)に示すように投射像は上方になるにつれて垂直方向の上端部が上方向に伸び、かつ上端部になるに従って水平方向に広がり、全体として逆台形に歪む。そのため、歪補正回路134により液晶パネル116の表示画像をキーストン歪みと逆形状の台形に変形しておくことにより、補正後の投射像を方形とすることができる。歪みの形状は装置の傾斜角度(シフト角度、あおり角度)に応じているので、歪補正回路134は傾きセンサー138によって検出した傾斜角度(図4の(b)、(c)では10.7度)を基に補正のための液晶パネル116の表示画像の形状を制御する。液晶パネル116で表示される補正画像の形状を図6の(a)、(b)に示す。図6の(a)、(b)はそれぞれ図4の(b)、(c)の補正を行う場合の補正画像28、28Aの形状を示す。
【0031】
補正画像28、28Aは垂直方向には縮小せずに水平方向のみ縮小する。縮小の度合いは下端部が最も小さく(幅が広い)、上端部になるにつれて水平方向に縮んで画像が削られる(即ち黒表示となる)。補正画像28、28Aが歪により拡大されると、正規の方形の投射像が得られる。また、傾きセンサー138によって検出した傾斜角度が大きくなるほど、投射可能エリア26は幅広の逆台形になるので、補正画像の台形の短辺もより幅が狭くなる。
【0032】
このような垂直あおり投射による投射像の歪が生じた場合は、例えばリモコン104に設けた自動台形歪補正キー123を押すことにより、CPU102はそれに応答して傾きセンサー24からの測定結果を基に歪補正回路134を制御して、図6で説明したような補正を行うことができる。
【0033】
また、図示していないが、水平あおり投射の場合は図6が90度回転するだけで他は同じである。すなわち、例えば右方向にあおり投射した場合は、画像が右側方向に伸び、かつ右端部にいくに従って垂直方向に広がり、全体として逆台形に歪むようになる。
【0034】
これに対して、歪補正回路134は、液晶パネル116に供給する映像信号を補正し、液晶パネル116に投射光学像の歪と逆形状の画像を表示するように制御する。つまり、補正映像は、右端部が垂直方向に縮んで表示領域が削られ(即ち黒表示となり)、かつ左端部にいくに従って垂直方向の表示領域の長さが徐々に長くなるように補正され、その結果、投射画像が正規の方形画像になるように制御される。
【0035】
このような水平あおり投射による台形歪の補正は、ユーザがリモコン104に設けた台形歪補正キー124又は125を押すことにより、CPU102はそれに応答して歪補正回路134を制御して補正を行うようにしている。
【0036】
例えば、スクリーンに対して右側方向にあおり投射している場合は、右側の台形歪補正キー125を押すことで補正が成され、歪量が大きい場合はキー125の操作回数を多くし、補正画像の補正量を大きくするようにしている。したがって、ユーザは、投射された画像を見ながら投射画像が正規の方形画像に近づくように補正することができる。また、左方向にあおり投射された場合は、左側の台形歪補正キー124を押すことで画像歪を補正することができる。
【0037】
上述の説明は垂直方向あるいは水平方向のみのあおり投射に関するが、現実的には垂直方向と水平方向の両者のあおり投射する場合が多い。従来は、図7に一点鎖線で示すように、補正後の方形のいずれかの頂点を歪四角形の光軸に最も近い頂点に一致させるように補正するが、本実施形態では図7に破線で示すように補正後の方形のいずれかの三頂点を歪四角形の境界辺と接するように補正する。図7は右上斜め方向にあおり投射した場合を示す。これにより、キーストン補正後の投射像が表示装置が本来表示可能な投射可能エリアに占める割合が大きくなり、上記と同様な効果が得られる。
【0038】
垂直あおり投射歪の補正は傾斜角度に応じて自動補正としたが、水平あおり投射歪の補正を手動としたのは、実際の投射歪が複雑な形状になるため、手動補正では補正操作が難しいのと、表示装置がスクリーンに対して水平方向にどれだけ傾いているかを検出するための検出手段がない(たとえ、検出手段があっても構成が複雑になる)ことによる。
【0039】
次に台形歪の補正の仕方について、もう少し詳しく説明する。
【0040】
一般に映像処理回路132内でR、G、Bのデジタル画像信号はフレームメモリ等に一時記憶され、これらに記憶された1画面分の画像信号は書き込まれた順序に従って読み出されて出力され、液晶パネル116の対応する画素に順次書き込まれていくようになっている。したがってフレームメモリからの読み出しを制御することにより、液晶パネル113に表示する映像の形状を任意に補正することが可能になる。
【0041】
例えば、図6の(b)の補正を行う場合は、液晶パネルの最下端の水平ラインの画素については、全ての画素に表示し、上端部にいくにしたがって左右両側の画素の駆動しない領域を徐々に広げるようにすれば良い。その結果、スクリーン上では、方形に補正された画像24Aが表示されることになる。
【0042】
但し、液晶パネルの上端部では表示される画素の数が少なくなるため、正常な映像に対し左右の両側部分が欠落して歪んだ画面になってしまう。したがってスクリーン上端部に表示される映像信号についてはデータ圧縮を行い、少ない画素で1ライン分を表示するようにし、スクリーン中央部分についてはデータ圧縮の度合いを低くし、スクリーンの下端部については映像信号の圧縮は行わず、通常通りに1ライン分を表示するようにすれば良い。
【0043】
図8は本実施形態の表示装置20を天井に設置する天吊り使用状態における適用例を示す図である。天吊り設置を行う場合は、投射型表示装置のみならず、表示スクリーン30も固定であるケースが一般的である。82は図4の(a)の従来例における投射可能エリアであり、84は本実施形態の投射可能エリアである。本実施形態の補正後の投射像86は光学的オフセットとあおり投射により天井からhだけシフトされる。
【0044】
このように所定の位置にセットされた固定スクリーン30に対して図8に示したように天吊り設置する場合、投射型表示装置の倍率(スクリーンサイズ)に応じて、本体の僅かな角度変動が投射可能エリアを大きくシフトさせることになる。しかし、投射型表示装置の設置時にスクリーンサイズと位置を正確に合わせ込むことは大変困難である。
【0045】
図9はこの不具合を改善する適用例である。図4の(b)に示す補正を行った後に、僅かに確保される投射可能エリア84の余裕範囲内に於いて、投射像86の表示位置を電気的に微調整可能とすれば、設置者は投射可能エリア84を概略設置した後、画像処理、即ちリモコン等を用いて投射像86の表示位置をスクリーンに正確に合わせることが可能である。
【0046】
その際、投射型表示装置が光学ズーム機能を具備している場合には、光学ズームによる正確なサイズ調整が可能であるが、常設を基本とする短焦点表示装置には光学ズームが具備されない場合がある。この場合には、図10に示す通り、キーストン補正後の投射像86を投射可能エリア88の余裕の範囲内にて、左右上下の位置のシフトのみならず投射可能エリアの電気的ズームも可能であるから、設置者は更に簡単に投射型表示装置の設置作業を為すことが可能である。
【0047】
以上説明したように、本実施形態によれば、投射可能エリア(=ライトバルブアクティブエリア)内の映像表示領域(投射像の位置)を変更するだけの手法であるため、基本的にAPI(Application Programmable Interface)部の変更のみで対処でき、コストアップその他追加部材を必要とせずに、従来のキーストン補正におけるあおり角度(傾斜角度)の減少が可能である。この結果、
1.投射可能エリアにおける実際の投射像の占める割合が増加するため、同一光学特性を有する表示装置においてより明るく投射表示することが可能である。
【0048】
2.投射可能エリアにおける実際の投射像の占める割合が増加するため、実効的な解像力が改善する。即ち画質劣化等の弊害が小さくなる。
【0049】
3.特に天吊り設置において、従来のキーストン補正後の表示サイズに等しいサイズに補正する場合には、補正後の投射位置やサイズの微調が可能となり、設置角度感低減効果も相まって、設置が楽になる。
【0050】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】投射型表示装置で用いられる光学的オフセットの原理を示す図。
【図2】投射型表示装置で用いられるあおり投射の原理を示す図。
【図3】投射距離の違いによる投射可能エリアと実際の投射像との差を示す図。
【図4】本発明の実施形態によるキーストン補正の原理を示す図。
【図5】本発明の実施形態による投射型表示装置の回路構成を示すブロック図。
【図6】本発明の実施形態によるキーストン補正画像を示す図。
【図7】本発明の実施形態による斜め方向あおり投射時の補正画像を示す図。
【図8】天吊り使用状態の本発明の実施形態を示す図。
【図9】天吊り使用状態の本発明の実施形態における投射像の表示位置を電気的に微調整する適用例を示す図。
【図10】天吊り使用状態の本発明の実施形態における投射像の倍率を電気的に微調整する適用例を示す図。
【符号の説明】
【0052】
2…投射レンズ、4…ライトバルブのアクティブエリア、6,10…投射可能エリア、8…ライトバルブのインアクティブエリア、20…投射型表装置、22…スクリーン、24…投射像、26…投射エリア、28…補正像、134…歪補正回路、136…傾きセンサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光が入射され、画像信号に基づいて変調された光学像を出射する光変調手段と、
前記光変調手段から出射された光学像をスクリーンに投射する投射手段と、
前記投射手段の光軸が前記スクリーンに直交しない状態でスクリーンに投射される光学像の歪を補正する補正手段とを具備し、
前記補正手段は前記光変調手段から出射され前記歪を受けてスクリーンに投射された光学像が方形になり、該方形光学像のいずれかの境界辺が前記投射手段による台形の投射可能エリアの長辺境界辺と揃うように前記光変調手段から出射される光学像を補正する投射型表示装置。
【請求項2】
前記補正手段は前記方形光学像の前記いずれかの境界辺の長さが前記台形の投射可能エリアの短辺境界辺と等しいように補正することを特徴とする請求項1記載の投射型表示装置。
【請求項3】
前記台形の投射可能エリア内で前記方形光学像の表示位置を可変する手段をさらに具備する請求項2記載の投射型表示装置。
【請求項4】
前記補正手段は前記投射手段の光軸に近い前記方形光学像の境界辺の両端が前記台形の投射可能エリアの並行ではない対辺と接するように補正することを特徴とする請求項1記載の投射型表示装置。
【請求項5】
光源からの光が入射され、画像信号に基づいて変調された光学像を出射する光変調手段と、
前記光変調手段から出射された光学像をスクリーンに投射する投射手段と、
前記投射手段の光軸が前記スクリーンに直交しない状態でスクリーンに投射される光学像の歪を補正する補正手段とを具備し、
前記補正手段は前記光変調手段から出射され前記歪を受けてスクリーンに投射された光学像が方形になり、該方形光学像のいずれかの3頂点が前記投射手段による四角形の投射可能エリアの境界辺と接するように前記光変調手段から出射される光学像を補正する投射型表示装置。
【請求項6】
光源からの光が入射され、画像信号に基づいて変調された光学像を出射する光変調手段と、前記光変調手段から出射された光学像をスクリーンに投射する投射手段とを具備する投射型表示装置の表示方法において、
前記投射手段の光軸が前記スクリーンに直交しない状態でスクリーンに投射される光学像の歪を補正する補正ステップを具備し、
前記補正ステップは前記光変調手段から出射され前記歪を受けてスクリーンに投射された光学像が方形になり、該方形光学像のいずれかの境界辺が前記投射手段による台形の投射可能エリアの長辺境界辺と揃うように前記光変調手段から出射される光学像を補正する表示方法。
【請求項7】
前記補正ステップは前記方形光学像の前記いずれかの境界辺の長さが前記台形の投射可能エリアの短辺境界辺と等しいように補正することを特徴とする請求項6記載の表示方法。
【請求項8】
前記台形の投射可能エリア内で前記方形光学像の表示位置を可変するステップをさらに具備する請求項7記載の表示方法。
【請求項9】
前記補正ステップは境界辺の両端が前記台形の投射可能エリアの並行ではない対辺と接するように補正することを特徴とする請求項6載の表示方法。
【請求項10】
光源からの光が入射され、画像信号に基づいて変調された光学像を出射する光変調手段と、前記光変調手段から出射された光学像をスクリーンに投射する投射手段とを具備する投射型表示装置の表示方法において、
前記投射手段の光軸が前記スクリーンに直交しない状態でスクリーンに投射される光学像の歪を補正する補正ステップを具備し、
前記補正ステップは前記光変調手段から出射され前記歪を受けてスクリーンに投射された光学像が方形になり、該方形光学像のいずれかの3頂点が前記投射手段による四角形の投射可能エリアの境界辺と接するように前記光変調手段から出射される光学像を補正する表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−36884(P2009−36884A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199593(P2007−199593)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】