投影システム、投影方法、投影プログラム及び投影ベクトル演算装置
【課題】投影装置の設置位置及び姿勢への制約をなくしつつ、厳密な射影歪補正を行うことにより、所望の映像を正確に投影させることができる投影技術を提供する。
【解決手段】投影対象となる投影平面Tに対する投影を行う投影媒体410と、直交する2つの制御軸を有し、制御軸を中心とした回転角を成分とする投影ベクトルdにしたがって、投影媒体410の投影方向を制御する投影機構420と、制御軸の交点を原点とする3次元直交座標系に対して所定の位置関係を有する仮想投影平面Pと、投影平面Tとの間において、原点を介した投影平面T上の投影位置とこれに対応する仮想投影平面P上の位置との中心射影変換に基づいて、投影ベクトルdを演算する投影演算部430とを有する。
【解決手段】投影対象となる投影平面Tに対する投影を行う投影媒体410と、直交する2つの制御軸を有し、制御軸を中心とした回転角を成分とする投影ベクトルdにしたがって、投影媒体410の投影方向を制御する投影機構420と、制御軸の交点を原点とする3次元直交座標系に対して所定の位置関係を有する仮想投影平面Pと、投影平面Tとの間において、原点を介した投影平面T上の投影位置とこれに対応する仮想投影平面P上の位置との中心射影変換に基づいて、投影ベクトルdを演算する投影演算部430とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、スクリーンなどの投影平面に対して、レーザ光などの投影媒体によって特定の映像を投影するための投影システム、投影方法、投影プログラム及び投影ベクトル演算装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スクリーン等の投影平面に対して、所望の映像を投影するために、投影装置が用いられている。例えば、投影媒体として可視レーザ光を用いる投影装置は、投影平面の大小を問わず、比較的鮮明な映像を投影することができる(特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−86266号公報
【特許文献2】特開2008−158495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような従来技術においては、次のいずれかの制約があった。
(1)投影装置の投影方向と投影平面(スクリーン等)の法線方向を一致させる必要がある。
(2)投影装置の設置位置及び姿勢を限定して、投影像の近似的な射影歪み補正を行う必要がある。
【0005】
つまり、投影平面に対して、所望の映像が投影されるようにするためには、投影平面に対する投影装置の設置位置及び姿勢が固定されている必要がある。このため、任意の投影場所に投影装置を設置して、投影する場合、正確な映像を投影させることが困難であった。
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、投影装置の設置位置及び姿勢への制約をなくしつつ、厳密な射影歪補正を行うことにより、所望の映像を正確に投影させることができる投影システム、投影方法、投影プログラム及び投影ベクトル演算装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1の投影システムは、投影対象となる投影平面に対する投影を行う投影媒体と、直交する2つの制御軸を有し、前記制御軸を中心とした回転角を成分とする投影ベクトルにしたがって、前記投影媒体の投影方向を制御する投影機構と、前記制御軸の交点を原点とする3次元直交座標系に対して所定の位置関係を有する仮想的な仮想投影平面と、前記投影平面との間において、前記原点を介した中心射影変換に基づいて、前記投影ベクトルを演算する投影演算部と、を有することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の投影システムにおいて、前記投影演算部は、前記投影平面における異なる4点を頂点とする校正枠を設定する校正枠設定部と、前記仮想投影平面に、前記校正枠の4点に前記中心射影変換に基づいて対応する点を頂点とする射影校正枠を設定する射影校正枠設定部と、2次元平面上での平行でない2直線の交点を求める交点関数を用いて、前記投影平面上の投影位置と前記校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記校正枠の対角線との交点若しくは前記投影位置に対応する仮想投影平面上の位置と前記射影校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記射影校正枠の対角線との交点を求める交点演算部と、直交しない2平面上で相互に対応する2直線上の任意の点の間の中心射影変換を行う透視関数を用いて、前記投影平面上の投影位置と前記校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記校正枠の対角線との交点と、前記投影位置に対応する仮想投影平面上の位置と前記射影校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記射影校正枠の対角線との交点とを相互に変換可能な透視演算部と、交点関数を用いて、前記透視演算部により変換した交点に基づき、前記投影平面上の投影位置若しくは前記投影位置に対応する前記仮想投影平面上の位置を演算する投影位置演算部と、前記投影位置演算部によって演算した投影位置若しくはこれに対応する前記射影平面上の位置に基づいて、前記投影ベクトルを演算する投影ベクトル演算部と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項8の投影方法は、請求項1の発明を方法の観点から捉えたものであり、請求項9の投影プログラムは、請求項1の発明をコンピュータプログラムの観点から捉えたものである。請求項10の投影ベクトル演算装置は、請求項1の発明の一部を構成する装置の観点から捉えたものである。
【0010】
以上のような請求項1、2、8〜10の発明では、投影媒体と投影平面の設置位置及び姿勢などの位置関係が、あらかじめ固定的に決定されていなくても、仮想的な仮想投影平面を導入することにより、投影平面に対応する投影ベクトルを正確に求めることができ、投影媒体による投影を、正確に行うことができる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の投影システムにおいて、前記投影平面上の投影位置に関する情報を記憶する記憶部と、前記投影位置に関する情報を前記投影演算部に出力する出力部と、を有する映像情報出力装置を備えたことを特徴とする。
【0012】
以上のような請求項3の発明では、あらかじめ記憶部に記憶された投影位置に関する情報に基づいて、投影機構が投影媒体を正確な方向に制御して、所望の位置に投影させることができる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項の投影システムにおいて、前記校正枠設定部及び前記射影校正枠設定部を有し、運用前若しくは要求に応じて、前記校正枠及び前記射影校正枠の設定を行うキャリブレーション部を有することを特徴とする。
【0014】
以上のような請求項4の発明では、投影媒体と投影平面の位置関係が変わっても、キャリブレーション部による設定を行うことによって、投影媒体の投影平面への正確な投影を担保することができる。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1項の投影システムにおいて、前記投影媒体の基本投影方向若しくは前記投影機構の姿勢を変更可能な可動筐体に設けられていることを特徴とする。
【0016】
以上のような請求項5の発明では、投影媒体の基本投影方向が、投影対象領域の中央近辺を投影するように、設置者が手動等により投影機構の姿勢設定を行うことにより、投影媒体が投影対象領域の全域を投影可能となる。
【0017】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか1項の投影システムにおいて、前記投影機構は、除震手段を備えた設置機構に設けられていることを特徴とする。
【0018】
以上のような請求項6の発明では、外部環境からの振動が加わっても、その影響を除震手段によって排除できるので、投影媒体による正確な投影動作を維持できる。
【0019】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか1項の投影システムにおいて、前記投影演算部及び前記投影機構との間で、情報の入出力が可能なユーザインタフェースを備えることを特徴とする。
【0020】
以上のような請求項7の発明では、ユーザインタフェースを介して、投影演算部や投影機構の内部状態の入出力が可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、投影装置の設置位置及び姿勢への制約をなくしつつ、厳密な射影歪補正を行うことにより、所望の映像を正確に投影させることができる投影システム、投影方法、投影プログラム及び投影ベクトル演算装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の投影動作モデルを示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態を示す全体構成図である。
【図3】図2に示す実施形態の機能ブロック図である。
【図4】本発明の投影動作原理における球座標系、3次元直交座標系及び2次元線形座標系を示す説明図である。
【図5】本発明の投影動作原理における仮想投影平面を示す説明図である。
【図6】本発明の投影動作原理における投影平面上の校正枠と仮想投影平面上の射影校正枠の頂点及び対角線の交点の中心射影変換を示す説明図である。
【図7】本発明の投影動作原理における仮想投影平面上の投影点から四角形のいずれかの頂点を結ぶ直線と、四角形の対角線との交点を示す説明図である。
【図8】図7の交点の投影平面への中心射影変換を示す説明である。
【図9】図8の射影された交点から求める投影点を示す説明図である。
【図10】図2に示す実施形態の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】本発明のキャリブレーション手法の一例を示す説明図である。
【図12】本発明のキャリブレーション手法の他の一例を示す説明図である。
【図13】本発明の他の実施形態における投影手法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の投影システムの一実施形態を、図面を参照して説明する。
[A.投影動作モデル]
まず、本実施形態が導入する投影動作モデルを、図1を参照して説明する。この投影動作モデルは、3次元空間において、投影装置が映像を投影対象とする平面上へ投影する動作をモデル化したものである。
【0024】
投影媒体としては、点光源とみなすことのできる光源及びその光源から放射される投影光を想定する。例えば、可視レーザ光及びその発振器を用いることができる。投影対象とする平面を、投影平面Tと呼ぶ。
【0025】
上記投影光には、投影平面Tへ投影された場合に、目的とする映像を構成するための各種の要素が含まれている。すなわち、ある瞬間の投影光は、映像ベクトルI=(Ip,c,t)Tを要素とする。そして、目的とする映像は、このような映像ベクトルIの集合として表現することができる。
【0026】
各映像ベクトルIを構成する要素は、表示位置ベクトルIp、色強度ベクトルc、時間値tである。表示位置ベクトルIpは、映像ベクトルIが定義される仮想的な映像平面上の位置を表す。色強度ベクトルcは、位置ベクトルIpが示す位置での光の強度や発色を表す。時間値tは、表示する時間を表す。
【0027】
ここで、点光源の位置を原点Oとする任意の3次元座標系を導入する。そして、この点光源から投影平面Tへの映像を投影する動作を考える。ある映像ベクトルIに基づいて点光源から放射される投影光は、投影平面T上の点pへ投影される。この投影位置pは、映像ベクトルIにおける表示位置ベクトルIpを、適切に座標変換した点として考えることができる。このとき、原点Oから投影位置pへの投影方向は、方向ベクトルdにより一意に決まる。
【0028】
ここで、導入した3次元座標系を球座標系として考える。すると、投影位置pは、1つの動径r、2つの偏角θ,φによって、p=(r,θ,φ)Tと表現される。このとき、方向ベクトルdは、pの成分のうち、2つの偏角θ,φのみから構成される2次元ベクトルによって、d=(θ,φ)Tと表現することができる。なお、MTは、行列Mの転置行列を表す。
【0029】
この方向ベクトルdを投影ベクトルと呼ぶ。上記により、任意の表示位置ベクトルIpに、一意に定まる投影ベクトルdが存在することもわかる。
【0030】
以上を前提とすると、映像ベクトルIの集合に基づく所望の映像の投影動作は、次のように表現できる。すなわち、点光源からの光は、各映像ベクトルIにおける時間値tの時間において、色強度ベクトルcに対応する投影光を、表示位置ベクトルIpから一意に変換される投影ベクトルdが示す方向へ放射される。これが、全ての映像ベクトルIに基づいて連続して行われることにより、投影光が映像を構成する。
【0031】
[B.実施形態の構成]
[1.全体構成]
本実施形態の投影システムの構成を、図2及び図3を参照して説明する。なお、図2は、本実施形態の外観及び使用例を示す説明図である。図3は、本実施形態の構成を示す機能ブロック図である。すなわち、本実施形態の投影システム100は、投影平面T、映像情報出力装置300及び投影装置400等により構成されている。
【0032】
[2.投影平面]
投影平面Tは、投影装置400が投影対象とする平面である。投影装置400による投影位置は、投影平面T上のいずれかに存在する。この投影平面Tは、例えば、多数の観衆向けの大型の投影スクリーン等によって構成することが考えられる。
【0033】
但し、本発明は、投影平面Tに対する投影装置400の設置位置及び姿勢の制約が少ないという利点を有している。これは、投影平面Tとしては、人間が投影画像を視認できるあらゆる面を想定可能であることを意味する。例えば、投影平面Tとして、人造の若しくは天然の壁面を利用することもできる。
【0034】
本実施形態においては、投影平面Tにおける映像の投影領域に、任意の映像ベクトルに対応する投影位置を特定するための2次元座標系を導入する。投影位置は、当該2次元座標系における2次元ベクトルによって表現できる。この2次元ベクトルが、上記の投影動作モデルで示した投影ベクトルdである。なお、投影平面Tは、任意の投影位置に対応する2次元座標系での2次元ベクトルが計測できる構造であってもよい。このための計測手段としては、例えば、定規や距離計などの測距器を用いて測定するものや、レーザ光とカメラを用いて位置計測するものなどが考えられるが、特定の手段には限定されない。
【0035】
[3.映像情報出力装置]
映像情報出力装置300は、投影するための映像ベクトルを含む映像に関する情報(映像情報)を、投影装置400、その他の表示装置に対して出力する装置である。この映像情報出力装置300は、例えば、所定のオペレーティングシステム及びアプリケーションプログラムによって動作するコンピュータによって実現することができる。映像情報には、映像ベクトルの他、映像に付帯するその他の情報が含まれる。したがって、映像情報出力装置300は、投影の際に、映像ベクトルとその他の情報を同期させて出力することもできる。
【0036】
かかる映像情報出力装置300においては、映像情報が、ハードディスク、メモリ、光ディスク等の記憶媒体に記憶されており、この情報がアプリケーションプログラムによって呼び出されて、ディスプレイ等の表示手段に表示される。この表示手段は、例えば、投影平面Tに投影される映像と同様の映像を表示することができる。
【0037】
なお、映像情報出力装置300は、マウス、キーボード、リモコン、スイッチ、ディスプレイ(タッチパネル)等の入力手段を備えている。この入力手段によって、操作者Aが、投影装置400を制御するための投影装置制御情報を入力することができる。映像情報出力装置300は、この投影装置制御情報も映像情報の一部として出力することができる。
【0038】
このような映像情報出力装置300は、上記のオペレーティングシステム、アプリケーションプログラム等のプログラムの働きにより、図3に示すように、記憶部301、入力部310、抽出部320、出力部330としての機能を有している。
【0039】
記憶部301は、あらかじめ映像情報等を記憶する手段である。この記憶部301は、上記のハードディスク、メモリ、光ディスク等の記憶媒体によって構成することができる。
【0040】
入力部310は、入力手段等の外部からの情報の入力を受け付けるインタフェースである。抽出部320は、記憶部301に記憶された情報から、映像情報等を抽出する手段である。出力部330は、抽出部320によって抽出された映像情報等を投影装置400に出力するインタフェースである。
【0041】
[4.投影装置]
投影装置400は、図3に示すように、投影媒体410、投影機構420、投影演算部430、投影情報インタフェース440、可動筐体450、設置機構460及びユーザインタフェース470等を有している。
【0042】
[4−1.投影媒体]
投影媒体410は、投影平面Tを投影するための媒体と、その媒体を出力する装置を含む概念である。例えば、代表的な媒体としては、レーザ光若しくはその他の集光した光である。また、電磁波や超音波を使用することもできる。つまり、媒体としては、投影方向が特定できる程度の指向性を有するものであれば、用途に適したものを自由に選択することができる。そして、媒体を出力する装置としては、採用する媒体に応じて、光源、光学部材、発振器等を適宜選択して用いることになる。なお、重力などの外乱の影響を補正可能であれば、液体や粒子などの物質及びその出力装置を用いてもよい。
【0043】
投影媒体410における媒体の到達距離若しくは出力レベル、発色、形状、大きさ等は、投影装置400の外部(例えば、映像情報出力装置300)から入力される映像情報、ユーザインタフェース470を介して入力される制御情報若しくは投影装置400にあらかじめ設定された内部条件等に基づいて制御される。例えば、投影光の色、形状、大きさ等は、映像情報出力装置300及び投影装置400のいずれか一方若しくは双方において、調整し、決定することができる。
【0044】
[4−2.投影機構]
投影機構420は、与えられた任意の映像ベクトルが、後述する仮想投影平面上に意図した通りに投影されるよう、投影媒体410の投影方向を制御する機構である。この投影機構420は、2つの投影方向制御軸を有する。2つの投影方向制御軸は、上記の映像ベクトルに対応する投影ベクトルにより制御される。この投影機構420としては、周知のあらゆる技術を適用できる。例えば、アクチュエータとしてモータを適用して、光源の照射方向を変える2軸制御装置を用いることが考えられる。アクチュエータとしては、例えば、ガルバノメータを適用することも可能である。
【0045】
投影ベクトルは、基本的には、投影演算部430により演算されたものが入力される。但し、映像情報出力装置300の入力手段から、直接投影ベクトルを入力して、投影機構420を動作させることもできる。また、後述するユーザインタフェース470から、直接的に投影媒体410の投影方向を制御する情報を入力できるように構成してもよい。
【0046】
投影機構420においては、現在の投影媒体410の姿勢に対応する投影ベクトルが、投影方向制御パラメータとして、常にメモリ等の記憶部に記憶される。投影ベクトルが外部から入力された場合にも、それが記憶部に記憶され、これに従って投影機構420が動作する。
【0047】
手動等により投影媒体410の姿勢を変更した場合にも、これに対応する投影ベクトルが記憶部に記憶され、その時点での投影媒体410の姿勢に対応する投影ベクトルとして利用可能となる。後述するキャリブレーションにおいては、(i)第1の方法 (a)〜(c)で説明した操作の際の投影ベクトルが利用される。
【0048】
なお、投影ベクトルと投影方向の制御結果とに生じる誤差をキャンセルするために、実際の投影方向を検出し、フィードバック制御を行わせるように構成することもできる。つまり、投影方向を決定する投影機構420の出力角度をセンシングし(例えば、ロータリエンコーダ等により可能)、入力を補正する閉ループ制御を行うことにより、入力と出力との相違をキャンセルすることができる。
【0049】
[4−3.投影演算部]
投影演算部430は、要求判定部431、キャリブレーション部432、交点演算部433、透視演算部434、投影位置演算部435、投影ベクトル演算部436等を有している。要求判定部431は、外部からのキャリブレーション要求の有無、映像ベクトルの取得による投影要求の有無を判定する手段である。
【0050】
キャリブレーション部432は、本システム運用前若しくは投影装置400の位置姿勢の変更後のキャリブレーションを行う手段である。キャリブレーション部432は、校正枠設定部432a、射影校正枠設定部432b、校正値演算部432cを有している。校正枠設定部432aは、投影平面T上の校正枠を設定する手段である。射影校正枠設定部432bは、後述する仮想投影平面P上の射影校正枠を設定する手段である。校正値演算部432cは、校正枠及び射影校正枠に基づいて、校正値を算出する手段である。これらのキャリブレーションの詳細については、後述する。
【0051】
交点演算部433は、校正枠若しくは射影校正枠における2頂点と任意の点とを結ぶ2直線と、校正枠若しくは射影校正枠における対角線との2つの交点についての交点係数ベクトルを求める手段である。透視演算部434は、校正値及び交点係数ベクトルに基づいて、2つの交点に対応する投影平面T上の射影点若しくは仮想投影平面P上の射影点を求める手段である。
【0052】
投影位置演算部435は、交点演算部433及び透視演算部434の演算結果に基づいて、校正枠若しくは射影校正枠における2頂点と2つの射影点を結ぶ直線の交点について、交点係数ベクトルを求める手段である。投影ベクトル演算部436は、投影位置演算部435によって求めた交点係数ベクトルに基づいて、投影ベクトルを求める手段である。
【0053】
このような投影演算部430による演算の詳細については、後述する。また、上記の演算を制御する情報を、映像情報出力装置300以外(例えば、後述するユーザインタフェース470等)から、入力できるように構成してもよい。
【0054】
なお、投影演算部430は、所定のプログラムによって、上記の各部の機能を実現できるコンピュータによって構成することができる。例えば、各部の機能を実現するASICやCPU等のICチップやその他の周辺回路によって構成したり、複数の機能を集約したシステムLSIによって構成する等、種々考えられるものであり、特定のものには限定されない。
【0055】
[4−4.投影情報インタフェース]
投影情報インタフェース440は、投影演算部430と外部(映像情報出力装置300など)との間のインタフェースである。投影情報インタフェース440には、映像情報出力装置300の出力部330が接続される。この投影情報インタフェース440は、映像情報出力装置300からの情報の入力を受け付けて、投影演算部430へ映像情報等を出力する。なお、投影情報インタフェース440は、投影装置400の内部状態を、外部へ出力することもできる。
【0056】
[4−5.可動筐体]
可動筐体450は、手動若しくはアクチュエータ制御により、その姿勢を変更できる筐体である。この可動筐体450は、内部に投影機構420を有している。このため、投影機構420の姿勢(投影媒体410の基準となる投影方向)は、可動筐体450の可動範囲内で、任意に設定できる。
【0057】
[4−6.設置機構]
設置機構460は、投影装置400の構成要素を支持し、運用環境内に固定するための構造物である。設置機構460として、どのような機構を採用するかは自由である。例えば、設置機構460を、構成要素を据え置くための台座、構成要素を吊り下げるためのフック、構成要素を設置面に吸着させるための吸盤や磁石などにより構成することができる。
【0058】
ただし、投影装置400が正確な投影動作を行うためには、外部環境からの振動の影響を受けないようにすることが望ましい。したがって、設置機構460に、除震機能を備えてもよい。例えば、バネ、スプリング、ダンパ等の弾性体による支持部材を備えることが考えられる。
【0059】
[4−7.ユーザインタフェース]
ユーザインタフェース470は、投影情報インタフェース440を介さずに、情報の入出力を行う手段である。このユーザインタフェース470には、上記の入力手段と同様の入力手段や、ディスプレイ、プリンタ等の出力手段を接続することが考えられる。操作者Aは、入力手段を介して、投影媒体410の投影方向を制御する情報、投影演算部430による演算を制御する情報等を、直接入力することができる。
【0060】
また、出力手段に投影装置400の内部状態を出力若しくは表示することにより、操作者Aが、キャリブレーション進行状況等の内部状態を確認できる。ただし、ユーザインタフェース470の実装は必須ではなく、必要に応じて実装すればよい。入力可能な情報についても、自由である。
【0061】
なお、上記の映像情報出力装置300及び投影装置400において、入出力される情報、演算値、演算結果等、各種の処理に必要な情報は、コンピュータが備えるレジスタ、メモリ、ハードディスク等の記憶媒体に確保された記憶領域に記憶され、適宜利用される。各記憶領域が、各情報の記憶部を構成するものとなるが、これは、周知の技術により構成可能なため、説明は省略する。記憶部として、どのような種類、容量の記憶媒体を使用するかは自由である。情報の記憶形式として、どのようなものを採用するか等についても自由である。
【0062】
[C.投影動作原理]
上記のような投影動作モデル及び装置構成を前提として行う投影動作の原理を、図4〜9を参照して説明する。
[1.球座標系及び3次元直交座標系の導入]
まず、投影媒体410の方向を決定するための投影機構420の2つの制御軸は、理論的には直交し一点で交わる。そこで、図4に示すように、この交点上に原点を有する球座標系ΣSを導入する。球座標系ΣSにおける任意の座標は、1つの動径rと、2つの偏角θ,φを成分として表すことができる。なお、r≧0,−π/2≦θ≦π/2, −π≦φ<πである。
【0063】
球座標系ΣSにおいて、2つの偏角θ,φのみを成分とする2次元ベクトルd=(θ,φ)Tは、上記の投影ベクトルdである。上記の2つの投影方向制御軸は、投影ベクトルdの両成分に対応する。したがって、投影媒体410の姿勢である投影方向は、投影ベクトルdにより制御できる。
【0064】
球座標系ΣSにおいて、θ=0,φ=0となる投影媒体410の姿勢を、投影媒体410の基本投影方向とする。投影媒体410の姿勢が、基本投影方向となるときの投影ベクトルdO=(0,0)Tを、基本投影ベクトルと呼ぶ。
【0065】
また、同時に、任意の座標が、x,y,zを成分として表され、次の条件を満足する3次元直交座標系ΣCを導入する。
(a)ΣSのθ成分の回転軸とx軸とが一致する。
(b)ΣSのφ成分の回転軸とy軸とが一致する。
(c)基本投影ベクトルに対応する直線LdO上に、正のz軸が存在する。
【0066】
このとき、ΣS,ΣCは、双方の原点が一致する。そして、r>0,−π/2<θ<π/2である場合、ΣSの任意の座標に一意に対応するΣCの座標が存在する。同様に、ΣCの任意の座標に一意に対応するΣSの座標が存在する。
【0067】
投影平面T上の投影対象領域の全域に対して投影するためには、投影媒体410の基本投影ベクトルdOが、投影対象領域の中央近辺を投影するように、操作者Aが、設置機構460の設置及び可動筐体450の姿勢設定を行うことが望ましい。
【0068】
なお、投影平面Tは、図4に示すように、ΣS,ΣCの原点を通らない任意の位置に配置されているものとする。また、投影平面Tの法線は、ΣCのx,y成分の軸のいずれとも一致しないものとする。
【0069】
[2.2次元線形座標系の導入]
ここで、投影平面T上に投影動作に適した任意の2次元線形座標系ΣTを導入する。これは、任意の映像ベクトル(表示位置ベクトルIpを含む)に基づく投影が行われる場合に、その表示位置ベクトルIpに対応する投影平面T上の投影位置Tpを特定することを目的とする。
【0070】
映像が意図したとおりに投影平面T上に投影されるならば、ΣTは、表示位置ベクトルIpが定義される座標系ΣIと同一であると定義できる。若しくは、ΣTは、ΣIを適切に線形変換した座標系と定義できる。
【0071】
つまり、上述のΣCにおける投影平面Tに対する投影位置Cpは、ΣTにおける投影位置Tpと、一意に対応する。このため、任意の投影ベクトルdが、Cpを投影することは、Tpを投影することと同義である。このTpは、上述の投影位置ベクトルである。このため、任意の投影位置ベクトルTpに一意に対応する投影ベクトルdが存在すると言える。
【0072】
上記の投影装置400と投影平面Tのモデルに基づいて、ΣTの任意の座標を、これに対応するΣSの座標に変換する関数を同定する。この関数を同定することで、本実施形態による投影動作が可能となる。
【0073】
このようなΣTからΣSへの線形変換を行う関数を同定できない場合、投影平面Tには意図した通りの映像が投影されず、射影歪の影響を受けて歪んで投影される。従来の手法では、この射影歪の影響を排除するために、関数の同定に投影環境の位置姿勢に関する情報を必要としていた。この情報とは、例えば、ΣCにおけるΣTの原点位置や投影平面Tの法線ベクトルなどである。
【0074】
もし、投影装置400及び投影平面Tの位置姿勢が固定されていて、投影環境の位置姿勢に関する情報が既知であれば、関数の同定に問題はない。しかし、投影装置400若しくは投影平面Tは、可搬であることが便利である。また、操作者Aが、投影装置400若しくは投影平面Tを自由に所望の位置に設置し、容易に投影動作を行えることが望ましい。このような投影動作の利便性を考慮すると、投影動作のための位置姿勢に関する情報は不要とし、位置姿勢の制約、位置姿勢の正確な設計、装置の正確な配置、正確な測量などは、極力排除すべきである。
【0075】
[3.仮想投影平面の導入]
これに対処するために、本実施形態においては、図5に示すように、ΣCにおけるz=1となる仮想的な平面Pを導入する。さらに、この平面Pに対して、2次元直交座標系ΣPを導入する。ΣPは、ΣCを、そのz軸に沿って、平面Pへ正射影した座標系である。このとき、ΣPにおける任意の点Ppは、適切な座標変換により、ΣCにおける点Cpに一意に対応付けられる。
【0076】
任意の投影ベクトルdにより投影平面T上の点Cuを投影したとき、ΣCの原点COとCuを結ぶ線分は、平面Pと交点Cvで交わる。投影ベクトルdとCuが一意に対応することと同様に、投影ベクトルdとCvも一意に対応する。このことから、CuとCvとが、一意に対応することが導かれる。
【0077】
このCuとCvとの関係は、ΣCの原点COを介した投影平面Tと平面Pとの相互的な中心射影変換を意味する。この平面Pを仮想投影平面と呼ぶ。
【0078】
任意の投影ベクトルdについて、仮想投影平面P上のΣPにおける投影点Pvは、一意に対応付けられる。よって、ΣCに対して所定の位置に固定されている仮想投影平面Pにおいて、投影点Pvは、投影ベクトルdの別形式の表現と言える。このPvを、仮想投影位置ベクトルと呼ぶ。
【0079】
d=(θ,φ)T,Pv=(x,y)Tとしたとき、dとPvとの関係は式(1),(2)のとおり表される。
【数1】
【数2】
【0080】
上記の中心射影変換においては、投影平面Tの法線と仮想投影平面Pの法線とが一致しているときに限り、両平面の位置姿勢に関する情報を用いることなく、適切な線形変換により、投影平面T上の点Cuと仮想投影平面P上の点Cvとの相互変換ができる。しかし、多くの場合には、両平面の法線は一致しないため、非線形変換となってしまう。このため、従来手法においては、点Cuと点Cvとを相互変換させるには、両平面の位置姿勢に関する情報が必要となっていた。また、かかる情報がない場合には、線形変換による近似解を求めるにとどまっていた。
【0081】
[4.交点関数の導入]
この問題を解決するために、本実施形態においては、新たな中心射影変換の同定方法を用いる。このために、交点関数及び透視関数と呼ぶ2つの重要な関数を導入する。
【0082】
まず、交点関数について述べる。すなわち、ある2次元平面上で、平行でない2つの直線S,Tを考える。直線S,T上の異なる2点の組をそれぞれ{s0,s1},{t0,t1}としたとき、両直線の交点cが、式(3)のとおりに表されるとする。
【数3】
【0083】
このとき、係数s,tは、I(S,T)なる関数により、式(4)のとおり求めることができる。
【数4】
ただし、det[a b]は、a,bを小行列とする行列の行列式を表す。
【0084】
このベクトル関数I(S,T)を、交点関数と呼ぶ。また、I(S,T)により求められた解ベクトル(s,t)Tを、交点係数ベクトルと呼ぶ。
【0085】
[5.透視関数の導入]
続いて、直交しない2つの平面上で相互に対応する直線同士の中心射影変換を考える。平面U上の直線ULに乗る2点{u0,u1}が、この中心射影変換により、それぞれ平面V上の直線VLに乗る2点{v0, v1}に射影されるとする。同様に、UL上の別の点u=(1−M)u0+Mu1が、VL上の点v=(1−MI)v0+MIv1へ射影されるとする。このとき、M,MIは既知とする。
【0086】
同様に、UL上の別の点u’=(1−N)u0+Nu1が、VL上の点v’=(1−nI)v0+nIv1へ射影されるとする。Nは既知であるとすれば、このnIは、関数P(M,MI,N)により、既知の係数M,MI,Nのみを用いて、式(5)のとおり求めることができる。
【数5】
この関数P(M,MI,N)を透視関数と呼ぶ。
【0087】
[6.平面間の中心射影変換]
この透視関数P(M,MI,N)により2つの直線上で対応する任意の点の間の中心射影変換を同定できた。そこで、これを拡張して、2つの平面(ここでは投影平面T,仮想投影平面Pとする)上で対応する任意の点の間の中心射影変換を同定することを考える。この問題を解決するためには、次の4つのプロセスを実行すればよい。
【0088】
[6−1.第1のプロセス]
投影平面T上の任意の四角形TRを考える。四角形TRの2つの対角線TD20,TD31が、それぞれ端点の組{Tv0,Tv2},{Tv1,Tv3}を有しているとする。そして、この対角線同士の交点TcRが、式(6)で表されるとする。
【数6】
【0089】
ここで、問題の中心射影変換により、四角形TRが仮想投影平面P上の四角形PRへ射影されたと考える。PRの2つの対角線PD20,PD31が、それぞれ端点の組{Pv0,Pv2},{Pv1,Pv3}で表されるとする。そして、この対角線同士の交点PcRが、式(7)で表されるとする。
【数7】
TvnとPvnで表される各点同士は、図6に示すとおり、この中心射影変換における対応点である。
【0090】
まず、これら2種類の対角線同士の交点TcR,PcRに関する交点係数ベクトルを、上記の交点関数を用いて式(8),(9)のとおり求める。
【数8】
【数9】
【0091】
[6−2.第2のプロセス]
次に、図7に示すとおり、投影平面T上の任意の点Tpを導入する。この点Tpと対角線TD31のいずれかの端点Tvaとを端点の組{Tp,Tva}とする線分TSaを考える。この線分TSaと対角線TD20との交点Tc20が、式(10)で表されるとする。
【数10】
【0092】
同様に、Tpと対角線TD20のいずれかの端点Tvbとを端点の組{Tp,Tvb}とする線分TSbを考える。この線分TSbと対角線TD31との交点Tc31が、式(11)で表されるとする。
【数11】
【0093】
このとき、交点Tc20,Tc31に関する交点係数ベクトルを、式(12),(13)のとおり求める。
【数12】
【数13】
【0094】
ただし、Tvaは、次のような基準で選択する。すなわち、線分TSaが、その線分上で対角線TD20と交点を結ぶように、Tvaとして、Tv1またはTv3を選択する。もし、TpがTD31上にある場合は、Tv1,Tv3のどちらを選択してもよい。ただし、TpがTv1上にある場合はTv3を選択する。一方、TpがTv3上にある場合は、Tv1を選択する。
【0095】
同様に、Tvbは、次のような基準で選択する。すなわち、線分TSbが、その線分上で対角線TD31と交点を結ぶように、Tvbとして、Tv0またはTv2を選択する。もし、TpがTD20上にある場合は、Tv0,Tv2のどちらを選択してもよい。ただし、TpがTv0上にある場合は、Tv2を選択する。一方、TpがTv2上にある場合は、Tv0を選択する。
【0096】
[6−3.第3のプロセス]
図8に示すとおり、上記の中心射影変換により、投影平面T上の点Tc20が、仮想投影平面Pにおける対角線PD20上の点Pc20へ射影されたときを考える。このとき、点Pc20が、式(14)のとおり表されるとする。式(14)中の係数Pn20は、前プロセスまでに求めておいた係数Tm20, Pm20,Tn20を用いて、透視関数によって求めることができる。具体的には、式(15)のとおりである。
【0097】
【数14】
【数15】
【0098】
同様に、投影平面T上の点Tc31が、仮想投影平面Pにおける対角線PD31上の点Pc31へ射影されたときを考える。このとき、点Pc31が、式(16)のとおり表されるとする。式(16)中の係数Pn31は、前プロセスまでに求めておいた係数Tm31,Pm31,Tn31を用いて、透視関数によって求めることができる。具体的には、式(17)のとおりである。
【数16】
【数17】
【0099】
[6−4.第4のプロセス]
図9に示すとおり、投影平面T上の線分TSa,TSbにおけるTp以外の端点が、上記の中心射影変換により、それぞれ仮想投影平面P上の点Pva,Pvbへ射影されたとする。ここで、2点{Pva,Pc20}が乗る直線PLpaと、2点{Pvb,Pc31}が乗る直線PLpbとの交点Ppは、式(18)のとおり表される。このとき、式(19)のとおり、交点Ppに関する交点係数ベクトルを求めることができる。
【0100】
【数18】
【数19】
【0101】
上記のプロセスによって、問題の中心射影変換を同定することができた。これは、2つの平面の位置姿勢によらず、両平面上の対応する既知の四角形に関する情報のみを用いている。したがって、ある投影環境下における任意の投影ベクトルdによる投影位置について、投影平面Tと仮想投影平面Pとの間の中心射影変換を考えれば、上記第1〜4のプロセスを実行することで、一方の平面上の投影位置が決定すれば、他方の平面上の投影位置を求められ、相互に変換可能であることがわかる。上記のプロセスを、透視プロセスと呼ぶ。
【0102】
透視プロセスにおいて、係数Tn20,Tn31は、投影ベクトルdが更新される毎に、式(10)〜(13)から求めなければならない。しかし、係数Tm20,Tm31,Pm20,Pm31については、本システムの運用に先立って、一度だけ求めておけばよい。若しくは、運用中に何らかの理由で投影装置400の位置姿勢など投影環境が変化した際に、一度だけ求め直せばよい。
【0103】
すなわち、係数Tm20,Tm31,Pm20,Pm31は、運用前のキャリブレーションにより得られる係数である。これらの係数に関係する透視プロセスにおいて、四角形TRを校正枠と呼ぶ。また、四角形PRを、射影校正枠と呼ぶ。さらに、このキャリブレーションにより得られた係数を校正値と呼ぶ。
【0104】
本システムにおいては、投影動作の準備として、投影平面T上の任意の校正枠とそれに対応する仮想投影平面P上の射影校正枠について、投影ベクトルを用いてそれらの4つの頂点を投影することにより、校正値を求めておく。これにより、投影平面T上の任意の投影位置Tuに対応する仮想投影平面P上の投影位置Pvを正確に求めることができる。さらに、このPvから、式(2)により、対応する投影ベクトルdを求められるため、目標とする投影位置Tuを正確に投影することができる。
【0105】
[D.実施形態の作用]
本システムの動作手順の詳細を、図10のフローチャートを参照して説明する。本システムの動作は、主として、1.初期設定、2.キャリブレーション、3.キャリブレーション要求判定、4.投影位置更新要求判定、5.投影ベクトル演算、6.投影動作等の手順を含んでいる。
【0106】
[1.初期設定…ステップ1001]
まず、操作者Aは、本システムを設置する。例えば、あらかじめ設置された投影平面Tの前方に、投影装置400を配置する。映像情報出力装置300等は任意の場所に配置する。つまり、この設置作業においては、投影平面T及び投影装置400を、投影ベクトルdの設定範囲内で、投影媒体410が投影平面Tの投影対象領域全域を投影可能となるように設置すればよい。その際、上記のように、基本投影ベクトルdOが、投影対象領域の中心あたりを投影するように、設置機構460及び可動筐体450の姿勢を設定する。
【0107】
そして、映像情報出力装置300を投影装置400に接続する。これにより、映像情報出力装置300からの投影情報が、投影装置400に与えられるようにする。操作者Aは、映像情報出力装置300に接続された入力手段を操作することにより、所望の情報を入力することができる。
【0108】
[2.キャリブレーション…ステップ1002〜1005]
キャリブレーションは、校正枠設定部432aによる校正枠の設定(ステップ1003)、射影校正枠設定部432bによる射影校正枠の設定(ステップ1004)、校正値演算部432cによる校正値の算出(ステップ1005)を行う処理である。校正枠及び射影校正枠は、上記のように、投影システム100において、中心射影変換を同定するために必要となる。したがって、キャリブレーションは、設置された投影システム100の運用に先立って若しくはキャリブレーション要求の入力があった場合に行われる。
【0109】
キャリブレーションは、上記の動作原理のとおり実行される。このとき、プログラムがキャリブレーション状態に遷移し、投影平面T及び映像情報出力装置300におけるディスプレイには、キャリブレーション画面が表示される。
【0110】
[2−1.校正枠の設定…ステップ1003]
まず、校正枠設定の際には、校正枠の4つの頂点に相当する投影位置ベクトルと、同頂点を投影する投影ベクトルとを対応付ける。かかる対応付け並びに校正枠の設定には、次の2通りの方法が考えられる。
【0111】
(i)第1の方法
第1の方法は、予め設定(メモリ等の記憶部に記憶)された投影位置(投影領域の4隅やその近傍など)に、適切な映像ベクトルが投影されるように、対応する各投影ベクトルを制御するように変更する。
【0112】
例えば、図12に示すように、(X0±X,Y0±Y)Tと表される4つの投影位置ベクトルを定める。操作者Aは、各投影位置ベクトルTpa〜Tpdに対応する投影平面T上の位置を、投影装置400の投影媒体410が投影するように操作する。校正枠設定部432aは、各投影位置ベクトルTpa〜Tpdに対して、これらを投影した時の投影ベクトルda〜ddを対応付ける。操作者Aによる投影媒体410の操作方法には、次のいずれかの方法がある。
【0113】
(a)映像情報出力装置300の入力手段から、投影機構420を制御する情報を入力することにより、映像情報出力装置300経由で投影媒体410の姿勢を操作する。
(b)投影装置400のユーザインタフェース470から、投影機構420を制御する情報を入力し、投影媒体410の姿勢を操作する。
(c)投影媒体410の姿勢を手動にて操作する。
【0114】
これらの方法は、あらかじめ上記のように投影位置ベクトルが決められた投影平面T上の4点(例えば、画像表示領域の4隅、画像表示領域に表された4箇所の識別マーク等)に、順次可視レーザ光を照射していくことで、キャリブレーションを進めることができる。これらの方法によれば、後述する遠隔投影操作において、遠隔地にある映像情報出力装置300や操作者Aとは独立して、各地の投影装置400と投影平面Tとのキャリブレーションを行うことができる。
【0115】
(ii)第2の方法
一方、第2の方法は、あらかじめ設定(メモリ等の記憶部に記憶)された投影ベクトルdに対応する映像ベクトルによって、投影平面Tに投影する方法である。例えば、図11に示すように、(θ0±θ,φ0±φ)Tと表される4つの投影ベクトルda〜ddにより、投影平面Tに対応する映像ベクトルを順次投影する。
【0116】
各映像ベクトルの投影像について、上記のような計測手段によって、投影平面上の座標系ΣTにおける投影位置を計測し、その座標値と位置決定のイベントを、投影装置400のユーザインタフェース470若しくは映像情報出力装置300経由で本校正情報を投影装置400へ与える。校正枠設定部432aは、各投影ベクトルda〜ddに、投影位置ベクトルTpa〜Tpdを対応付ける。
【0117】
この方法であれば、投影平面T上の投影位置の座標値を計測し、その位置決定のイベントを映像情報出力装置300に与えることによって、順次キャリブレーションを進めることができる。なお、4頂点分の投影ベクトルが投影平面T内に収まらない場合には、操作者Aの入力操作により修正指令を与えるが、投影ベクトルは投影装置400において再計算される。
【0118】
なお、上記の第1の方法及び第2の方法ともに、設定される4つの投影ベクトルは、すべて異なっていて、いずれか3つの投影ベクトルによる投影位置が同一直線上に無ければよい。このため、上記の例のような投影ベクトルに限定する必要はない。
【0119】
同時に、このようなキャリブレーションによって、任意の映像ベクトルにおける表示位置ベクトルと投影位置ベクトルとの対応関係を、投影ベクトルを介して同定する。ΣTはΣIと同一であるか、若しくは線形変換したものであるため、それぞれ映像が定義される領域を基準に正規化することで、一方のベクトルから他方のベクトルへ容易に変換できる。
【0120】
[2−2.射影校正枠の設定…ステップ1004]
射影校正枠設定部432bは、上記のように、4つの投影位置ベクトルTpa〜Tpdに対応付けられた4つの投影ベクトルda〜ddから、式(1)により、仮想投影平面P上の対応する4つの仮想投影位置ベクトルを求める。
【0121】
[2−3.校正値の算出…ステップ1005]
上記のように設定された校正枠および射影校正枠に基づいて、式(6)〜式(9)により、校正値を求める。これにより、キャリブレーションが完了する。
【0122】
[3.キャリブレーション要求判定…ステップ1006]
要求判定部431は、キャリブレーション要求イベントの有無を判定して、キャリブレーション部432のフロー制御を行う。例えば、投影装置400と投影平面Tとの相対的な位置姿勢など、投影環境が運用中に変化してしまった場合に、校正値の更新が必要になる。
【0123】
このとき、操作者Aが、映像情報出力装置300の入力手段若しくはユーザインタフェース470を介して、キャリブレーション要求イベントを入力する。要求判定部431は、入力されたキャリブレーション要求イベントを検出した場合、キャリブレーション部432にキャリブレーションを開始させる。
【0124】
[4.映像ベクトル取得…ステップ1007]
映像情報出力装置300は、所望の動画などの映像を投影するための映像ベクトルの集合(映像ベクトル系列)を、投影装置400へ逐次出力する。投影装置400における要求判定部431は、映像ベクトルの取得により、投影要求があったと判定して、投影演算部430における投影のための演算処理を開始させる。このとき、要求判定部431は、映像ベクトル系列における各映像ベクトルを順次取得し、各映像ベクトルの時刻要素に関連するタイミングで、後段のステップへ出力してもよい。
【0125】
また、映像ベクトル系列は、メモリ等に設定された映像記憶領域に、一時的に記憶してもよい。この際、要求判定部431は、記憶した映像ベクトル系列から、各映像ベクトルの時刻要素に従って、現在投影すべき映像ベクトルを取得し、後段のステップへ出力してもよい。
【0126】
[5.投影ベクトル演算…ステップ1008〜1012]
投影演算部430においては、取得された映像ベクトルの要素である表示位置ベクトルから、キャリブレーションで同定された対応関係により、一意に対応する投影位置ベクトルへ変換する。この投影位置ベクトルにより交点係数ベクトルを求める。
【0127】
つまり、投影演算部430の交点演算部433は、式(10)〜(13)により、新たな投影位置ベクトルが示す投影点及び既に求められている校正枠における2頂点の間をそれぞれ結ぶ2直線と、当該校正枠における対角線との2つの交点についての交点係数ベクトルを求める(ステップ1009)。
【0128】
透視演算部434は、式(14)〜(17)により、既に求められている校正値、交点係数ベクトル及び投影平面T上の2つの交点に基づいて、当該2つの交点に対応する仮想投影平面Pの2つの射影点を求める(ステップ1010)。なお、上記の説明では、投影平面T上の2点から、仮想投影平面P上の2つの射影点を求めていたが、両者は相互に変換可能である。
【0129】
さらに、投影位置演算部435は、式(18)(19)により、既に求められている2つの射影点及び射影校正枠の2頂点を結ぶ2直線の交点についての交点係数ベクトルを求める(ステップ1011)。なお、上記の説明では、仮想投影平面P上の2直線の交点から、交点係数ベクトルを求めていたが、投影平面T上の2直線の交点から、交点係数ベクトルを求める場合も同様である。
【0130】
投影ベクトル演算部436は、ステップ1011で求めた交点係数ベクトルに基づいて、式(2)により、投影ベクトルを求める(ステップ1012)。なお、投影方向制御軸のずれなどの、投影装置400における投影機構420の実装精度により、投影ベクトルの補正が必要となる場合を考慮して、適切な投影ベクトル補正機能を実装し、求められた投影ベクトルを補正してもよい。
【0131】
[6.投影動作…ステップ1013〜1015]
上記のように求められた投影ベクトルによって、投影機構420は、投影媒体410の投影方向制御パラメータを更新する(ステップ1013)この投影方向制御パラメータにしたがって、投影機構420が動作するので、投影媒体410が、投影平面T上の目標とする投影位置を投影する(ステップ1014)。この時、投影媒体410は、対応する映像ベクトルの要素である色強度ベクトルに従って発色を制御し、時間値に従って投影時間を制御する。そして、投影を継続する場合には、ステップ1006に戻る(ステップ1015)。
【0132】
[E.実施形態の効果]
以上のような本実施形態によれば、投影装置400に対する投影平面Tの位置姿勢を計測する必要も、投影平面Tに対して投影装置400を固定的に設置する必要もなく、投影平面Tと仮想投影平面Pとの中心射影変換において、厳密な射影歪補正を行うことにより、意図した通りに正確な映像を投影できる。
【0133】
また、投影平面Tと投影装置400との相対的な位置姿勢が変動しても、キャリブレーションを行うことにより、正確な投影動作を維持できる。このため、投影装置400及び投影平面Tの双方若しくは一方を持ち運び可能な利便性の高いものとすることができる。また、設置の自由度が高まるので、様々な設置場所に本システムを設置することができる。例えば、屋外の壁面を投影平面Tとする場合であっても、正確な投影を行うことができる。
【0134】
[F.他の実施形態]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。図2に示した機能ブロック図は、概念的なものであり、これらの機能を実現する具体的な回路は種々考えられ、特定のものには限定されない。なお、本発明は、上記の処理に対応してコンピュータ及び周辺回路を動作させる投影方法、投影プログラムとしても把握できる。ハードウェア処理によって実現する範囲とソフトウェア処理によって実現する範囲も自由である。上記の投影演算部を実現するコンピュータを、独立した投影ベクトル演算装置として構成することも可能である。
【0135】
上記の各装置の接続方法は、自由である。例えば、携帯可能な小型軽量の投影装置400を、映像情報出力装置300のコンピュータに接続する場合に、USBのバス給電により駆動するように構成することもできる。
【0136】
さらに、映像情報出力装置300と投影装置400とを接続する媒体を、有線若しくは無線の通信ネットワークを介して実現してもよい。これにより、遠隔地に設置された投影平面T及び投影装置400を、映像情報出力装置300によって操作することができる。例えば、複数の遠隔地にある投影平面Tに、それぞれ同一若しくは異なる映像を投影させることもできる。
【0137】
また、投影装置400の一部を、映像情報出力装置300に構成することもできる。例えば、投影演算部430を、映像情報出力装置300に設けてもよい。キャリブレーション部432のみを、映像情報出力装置300に設けてもよい。さらに、映像情報出力装置300を、投影装置400と一体に構成することもできる。
【0138】
さらに、投影媒体410と投影平面Tとの間に介在させる投影機構420の一部として、以下に例示するような光学素子421を用いて、上記投影動作原理を近似的に利用した投影システムを構成することも可能である。
【0139】
すなわち、図13に示すように、点光源411からの投影光を、格子状若しくは2次元的に配置された光学要素421を介して、投影平面Tに所望の映像を投影する投影システムを構成する。
【0140】
光学要素421としては、例えば、音響光学素子、電気光学素子及び平面鏡などが考えられる。この光学要素421は、点光源411から放射された投影光を透過若しくは反射させ、関与する投影光の投影方向を変化させることで、投影平面T上に意図した通りの映像を投影する。図13の例では、格子状に配置された投影光を透過させる光学要素421を用いて説明している。
【0141】
すべての光学要素421は、点光源411の前方に設定された平面Tf上に、ある瞬間の映像に含まれる全ての映像ベクトルから求められる投影ベクトルdsと交わるように配置される。このとき、光学要素421が乗る平面Tf上では、意図した通りの映像が投影されるものとし、点光源411から同平面Tfまでの投影ベクトルdsは、あらかじめ設計により固定的に決定され、投影装置400におけるメモリ等の記憶部に記憶されている。
【0142】
各光学要素421は、それぞれ直交する2つの投影方向制御軸ax,ayを持っている。各光学要素421における投影方向制御軸ax,ayは、入射した投影光の放射角度を変化させることができるように、投影機構420の制御部によって独立して制御される。
【0143】
かかる実施形態においては、キャリブレーションは、キャリブレーション部432によって、上記の実施形態と同様に行う。このとき、初期に対象となる投影ベクトルda〜ddに対応させて、制御部が光学要素421の投影方向制御軸ax,ayを制御することで、キャリブレーションを行う。
【0144】
そして、投影演算部430における各演算部が、上記投影原理動作により、映像ベクトルの要素である表示位置ベクトルから、投影位置ベクトルを求め、これに対応する投影ベクトルdを求める。実際の投影光の放射方向の制御は、制御部が、求められる投影ベクトルdに対応する光学要素421の投影方向制御軸ax,ayを制御することにより行う。
【0145】
但し、制御部は、光学要素421からの投影光の放射角度が、求められた投影ベクトルdの原点Oを投影方向制御ax,ay同士の交点に移動した新たな投影ベクトルdnに一致するように制御する。
【0146】
各光学要素421における2つの投影方向制御軸ax,ayの交点(原点)は、上記投影動作原理の原点Oとは同一ではない。このため、かかる制御方法では、意図した通りの映像を、厳密に投影平面Tに投影することはできない。但し、点光源411から光学要素421が乗る平面Tfまでの距離が、同平面Tfから投影平面Tfまでの距離と比較して十分に小さい場合には、事実上問題のない近似解としての投影ベクトルdnが得られる。
【0147】
なお、反射を利用する光学要素421のより具体的な例としては、電極のON/OFFに応じて独立に駆動される微少な反射鏡を、多数配置したデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)や、モータ駆動の反射鏡によって、所望の角度の反射光を得られるガルバノスキャナ等が考えられる。DMDを利用したデジタルライトプロセッシング(DLP)プロジェクタは、反射光によって投影画像を得るため、透過光によって投影画像を得る液晶プロジェクタと比較して、光のロスが少ないという利点がある。また、ガルバノスキャナは、投影画像が巨大で画素のスケールが大きい場合に適しており、太陽光を集光させたものを利用することも可能である。
【0148】
さらに、上記の投影平面への投影位置を計測する計測手段として、本発明の投影装置と、カメラ等の撮像装置を用いる方法も実現可能である。これは、例えば、投影平面に対して、その投影領域の対角線と重なるように、レーザ光を2本の直線状に照射する。この対角線上のレーザ光と、投影ベクトルによる投影像とを、同時に撮像装置によって撮像し、特願2008−152769(本発明の発明者が発明し、本出願の出願人が出願)において開示されたポインティングシステムによる指示位置検出原理によって、撮影像の射影歪を除去した後、投影ベクトルの投影領域に対する位置を求めることができる。
【符号の説明】
【0149】
100…投影システム
300…映像情報出力装置
301…記憶部
310…入力部
320…抽出部
330…出力部
400…投影装置
410…投影媒体
420…投影機構
430…投影演算部
431…要求判定部
432…キャリブレーション部
432a…校正枠設定部
432b…射影校正枠設定部
432c…校正値演算部
433…交点演算部
434…透視演算部
435…投影位置演算部
436…投影ベクトル演算部
440…投影情報インタフェース
450…可動筐体
460…設置機構
470…ユーザインタフェース
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、スクリーンなどの投影平面に対して、レーザ光などの投影媒体によって特定の映像を投影するための投影システム、投影方法、投影プログラム及び投影ベクトル演算装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、スクリーン等の投影平面に対して、所望の映像を投影するために、投影装置が用いられている。例えば、投影媒体として可視レーザ光を用いる投影装置は、投影平面の大小を問わず、比較的鮮明な映像を投影することができる(特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−86266号公報
【特許文献2】特開2008−158495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような従来技術においては、次のいずれかの制約があった。
(1)投影装置の投影方向と投影平面(スクリーン等)の法線方向を一致させる必要がある。
(2)投影装置の設置位置及び姿勢を限定して、投影像の近似的な射影歪み補正を行う必要がある。
【0005】
つまり、投影平面に対して、所望の映像が投影されるようにするためには、投影平面に対する投影装置の設置位置及び姿勢が固定されている必要がある。このため、任意の投影場所に投影装置を設置して、投影する場合、正確な映像を投影させることが困難であった。
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものであり、その目的は、投影装置の設置位置及び姿勢への制約をなくしつつ、厳密な射影歪補正を行うことにより、所望の映像を正確に投影させることができる投影システム、投影方法、投影プログラム及び投影ベクトル演算装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、請求項1の投影システムは、投影対象となる投影平面に対する投影を行う投影媒体と、直交する2つの制御軸を有し、前記制御軸を中心とした回転角を成分とする投影ベクトルにしたがって、前記投影媒体の投影方向を制御する投影機構と、前記制御軸の交点を原点とする3次元直交座標系に対して所定の位置関係を有する仮想的な仮想投影平面と、前記投影平面との間において、前記原点を介した中心射影変換に基づいて、前記投影ベクトルを演算する投影演算部と、を有することを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の投影システムにおいて、前記投影演算部は、前記投影平面における異なる4点を頂点とする校正枠を設定する校正枠設定部と、前記仮想投影平面に、前記校正枠の4点に前記中心射影変換に基づいて対応する点を頂点とする射影校正枠を設定する射影校正枠設定部と、2次元平面上での平行でない2直線の交点を求める交点関数を用いて、前記投影平面上の投影位置と前記校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記校正枠の対角線との交点若しくは前記投影位置に対応する仮想投影平面上の位置と前記射影校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記射影校正枠の対角線との交点を求める交点演算部と、直交しない2平面上で相互に対応する2直線上の任意の点の間の中心射影変換を行う透視関数を用いて、前記投影平面上の投影位置と前記校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記校正枠の対角線との交点と、前記投影位置に対応する仮想投影平面上の位置と前記射影校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記射影校正枠の対角線との交点とを相互に変換可能な透視演算部と、交点関数を用いて、前記透視演算部により変換した交点に基づき、前記投影平面上の投影位置若しくは前記投影位置に対応する前記仮想投影平面上の位置を演算する投影位置演算部と、前記投影位置演算部によって演算した投影位置若しくはこれに対応する前記射影平面上の位置に基づいて、前記投影ベクトルを演算する投影ベクトル演算部と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項8の投影方法は、請求項1の発明を方法の観点から捉えたものであり、請求項9の投影プログラムは、請求項1の発明をコンピュータプログラムの観点から捉えたものである。請求項10の投影ベクトル演算装置は、請求項1の発明の一部を構成する装置の観点から捉えたものである。
【0010】
以上のような請求項1、2、8〜10の発明では、投影媒体と投影平面の設置位置及び姿勢などの位置関係が、あらかじめ固定的に決定されていなくても、仮想的な仮想投影平面を導入することにより、投影平面に対応する投影ベクトルを正確に求めることができ、投影媒体による投影を、正確に行うことができる。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の投影システムにおいて、前記投影平面上の投影位置に関する情報を記憶する記憶部と、前記投影位置に関する情報を前記投影演算部に出力する出力部と、を有する映像情報出力装置を備えたことを特徴とする。
【0012】
以上のような請求項3の発明では、あらかじめ記憶部に記憶された投影位置に関する情報に基づいて、投影機構が投影媒体を正確な方向に制御して、所望の位置に投影させることができる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1〜3のいずれか1項の投影システムにおいて、前記校正枠設定部及び前記射影校正枠設定部を有し、運用前若しくは要求に応じて、前記校正枠及び前記射影校正枠の設定を行うキャリブレーション部を有することを特徴とする。
【0014】
以上のような請求項4の発明では、投影媒体と投影平面の位置関係が変わっても、キャリブレーション部による設定を行うことによって、投影媒体の投影平面への正確な投影を担保することができる。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1項の投影システムにおいて、前記投影媒体の基本投影方向若しくは前記投影機構の姿勢を変更可能な可動筐体に設けられていることを特徴とする。
【0016】
以上のような請求項5の発明では、投影媒体の基本投影方向が、投影対象領域の中央近辺を投影するように、設置者が手動等により投影機構の姿勢設定を行うことにより、投影媒体が投影対象領域の全域を投影可能となる。
【0017】
請求項6の発明は、請求項1〜5のいずれか1項の投影システムにおいて、前記投影機構は、除震手段を備えた設置機構に設けられていることを特徴とする。
【0018】
以上のような請求項6の発明では、外部環境からの振動が加わっても、その影響を除震手段によって排除できるので、投影媒体による正確な投影動作を維持できる。
【0019】
請求項7の発明は、請求項1〜6のいずれか1項の投影システムにおいて、前記投影演算部及び前記投影機構との間で、情報の入出力が可能なユーザインタフェースを備えることを特徴とする。
【0020】
以上のような請求項7の発明では、ユーザインタフェースを介して、投影演算部や投影機構の内部状態の入出力が可能となる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、投影装置の設置位置及び姿勢への制約をなくしつつ、厳密な射影歪補正を行うことにより、所望の映像を正確に投影させることができる投影システム、投影方法、投影プログラム及び投影ベクトル演算装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の投影動作モデルを示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態を示す全体構成図である。
【図3】図2に示す実施形態の機能ブロック図である。
【図4】本発明の投影動作原理における球座標系、3次元直交座標系及び2次元線形座標系を示す説明図である。
【図5】本発明の投影動作原理における仮想投影平面を示す説明図である。
【図6】本発明の投影動作原理における投影平面上の校正枠と仮想投影平面上の射影校正枠の頂点及び対角線の交点の中心射影変換を示す説明図である。
【図7】本発明の投影動作原理における仮想投影平面上の投影点から四角形のいずれかの頂点を結ぶ直線と、四角形の対角線との交点を示す説明図である。
【図8】図7の交点の投影平面への中心射影変換を示す説明である。
【図9】図8の射影された交点から求める投影点を示す説明図である。
【図10】図2に示す実施形態の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】本発明のキャリブレーション手法の一例を示す説明図である。
【図12】本発明のキャリブレーション手法の他の一例を示す説明図である。
【図13】本発明の他の実施形態における投影手法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の投影システムの一実施形態を、図面を参照して説明する。
[A.投影動作モデル]
まず、本実施形態が導入する投影動作モデルを、図1を参照して説明する。この投影動作モデルは、3次元空間において、投影装置が映像を投影対象とする平面上へ投影する動作をモデル化したものである。
【0024】
投影媒体としては、点光源とみなすことのできる光源及びその光源から放射される投影光を想定する。例えば、可視レーザ光及びその発振器を用いることができる。投影対象とする平面を、投影平面Tと呼ぶ。
【0025】
上記投影光には、投影平面Tへ投影された場合に、目的とする映像を構成するための各種の要素が含まれている。すなわち、ある瞬間の投影光は、映像ベクトルI=(Ip,c,t)Tを要素とする。そして、目的とする映像は、このような映像ベクトルIの集合として表現することができる。
【0026】
各映像ベクトルIを構成する要素は、表示位置ベクトルIp、色強度ベクトルc、時間値tである。表示位置ベクトルIpは、映像ベクトルIが定義される仮想的な映像平面上の位置を表す。色強度ベクトルcは、位置ベクトルIpが示す位置での光の強度や発色を表す。時間値tは、表示する時間を表す。
【0027】
ここで、点光源の位置を原点Oとする任意の3次元座標系を導入する。そして、この点光源から投影平面Tへの映像を投影する動作を考える。ある映像ベクトルIに基づいて点光源から放射される投影光は、投影平面T上の点pへ投影される。この投影位置pは、映像ベクトルIにおける表示位置ベクトルIpを、適切に座標変換した点として考えることができる。このとき、原点Oから投影位置pへの投影方向は、方向ベクトルdにより一意に決まる。
【0028】
ここで、導入した3次元座標系を球座標系として考える。すると、投影位置pは、1つの動径r、2つの偏角θ,φによって、p=(r,θ,φ)Tと表現される。このとき、方向ベクトルdは、pの成分のうち、2つの偏角θ,φのみから構成される2次元ベクトルによって、d=(θ,φ)Tと表現することができる。なお、MTは、行列Mの転置行列を表す。
【0029】
この方向ベクトルdを投影ベクトルと呼ぶ。上記により、任意の表示位置ベクトルIpに、一意に定まる投影ベクトルdが存在することもわかる。
【0030】
以上を前提とすると、映像ベクトルIの集合に基づく所望の映像の投影動作は、次のように表現できる。すなわち、点光源からの光は、各映像ベクトルIにおける時間値tの時間において、色強度ベクトルcに対応する投影光を、表示位置ベクトルIpから一意に変換される投影ベクトルdが示す方向へ放射される。これが、全ての映像ベクトルIに基づいて連続して行われることにより、投影光が映像を構成する。
【0031】
[B.実施形態の構成]
[1.全体構成]
本実施形態の投影システムの構成を、図2及び図3を参照して説明する。なお、図2は、本実施形態の外観及び使用例を示す説明図である。図3は、本実施形態の構成を示す機能ブロック図である。すなわち、本実施形態の投影システム100は、投影平面T、映像情報出力装置300及び投影装置400等により構成されている。
【0032】
[2.投影平面]
投影平面Tは、投影装置400が投影対象とする平面である。投影装置400による投影位置は、投影平面T上のいずれかに存在する。この投影平面Tは、例えば、多数の観衆向けの大型の投影スクリーン等によって構成することが考えられる。
【0033】
但し、本発明は、投影平面Tに対する投影装置400の設置位置及び姿勢の制約が少ないという利点を有している。これは、投影平面Tとしては、人間が投影画像を視認できるあらゆる面を想定可能であることを意味する。例えば、投影平面Tとして、人造の若しくは天然の壁面を利用することもできる。
【0034】
本実施形態においては、投影平面Tにおける映像の投影領域に、任意の映像ベクトルに対応する投影位置を特定するための2次元座標系を導入する。投影位置は、当該2次元座標系における2次元ベクトルによって表現できる。この2次元ベクトルが、上記の投影動作モデルで示した投影ベクトルdである。なお、投影平面Tは、任意の投影位置に対応する2次元座標系での2次元ベクトルが計測できる構造であってもよい。このための計測手段としては、例えば、定規や距離計などの測距器を用いて測定するものや、レーザ光とカメラを用いて位置計測するものなどが考えられるが、特定の手段には限定されない。
【0035】
[3.映像情報出力装置]
映像情報出力装置300は、投影するための映像ベクトルを含む映像に関する情報(映像情報)を、投影装置400、その他の表示装置に対して出力する装置である。この映像情報出力装置300は、例えば、所定のオペレーティングシステム及びアプリケーションプログラムによって動作するコンピュータによって実現することができる。映像情報には、映像ベクトルの他、映像に付帯するその他の情報が含まれる。したがって、映像情報出力装置300は、投影の際に、映像ベクトルとその他の情報を同期させて出力することもできる。
【0036】
かかる映像情報出力装置300においては、映像情報が、ハードディスク、メモリ、光ディスク等の記憶媒体に記憶されており、この情報がアプリケーションプログラムによって呼び出されて、ディスプレイ等の表示手段に表示される。この表示手段は、例えば、投影平面Tに投影される映像と同様の映像を表示することができる。
【0037】
なお、映像情報出力装置300は、マウス、キーボード、リモコン、スイッチ、ディスプレイ(タッチパネル)等の入力手段を備えている。この入力手段によって、操作者Aが、投影装置400を制御するための投影装置制御情報を入力することができる。映像情報出力装置300は、この投影装置制御情報も映像情報の一部として出力することができる。
【0038】
このような映像情報出力装置300は、上記のオペレーティングシステム、アプリケーションプログラム等のプログラムの働きにより、図3に示すように、記憶部301、入力部310、抽出部320、出力部330としての機能を有している。
【0039】
記憶部301は、あらかじめ映像情報等を記憶する手段である。この記憶部301は、上記のハードディスク、メモリ、光ディスク等の記憶媒体によって構成することができる。
【0040】
入力部310は、入力手段等の外部からの情報の入力を受け付けるインタフェースである。抽出部320は、記憶部301に記憶された情報から、映像情報等を抽出する手段である。出力部330は、抽出部320によって抽出された映像情報等を投影装置400に出力するインタフェースである。
【0041】
[4.投影装置]
投影装置400は、図3に示すように、投影媒体410、投影機構420、投影演算部430、投影情報インタフェース440、可動筐体450、設置機構460及びユーザインタフェース470等を有している。
【0042】
[4−1.投影媒体]
投影媒体410は、投影平面Tを投影するための媒体と、その媒体を出力する装置を含む概念である。例えば、代表的な媒体としては、レーザ光若しくはその他の集光した光である。また、電磁波や超音波を使用することもできる。つまり、媒体としては、投影方向が特定できる程度の指向性を有するものであれば、用途に適したものを自由に選択することができる。そして、媒体を出力する装置としては、採用する媒体に応じて、光源、光学部材、発振器等を適宜選択して用いることになる。なお、重力などの外乱の影響を補正可能であれば、液体や粒子などの物質及びその出力装置を用いてもよい。
【0043】
投影媒体410における媒体の到達距離若しくは出力レベル、発色、形状、大きさ等は、投影装置400の外部(例えば、映像情報出力装置300)から入力される映像情報、ユーザインタフェース470を介して入力される制御情報若しくは投影装置400にあらかじめ設定された内部条件等に基づいて制御される。例えば、投影光の色、形状、大きさ等は、映像情報出力装置300及び投影装置400のいずれか一方若しくは双方において、調整し、決定することができる。
【0044】
[4−2.投影機構]
投影機構420は、与えられた任意の映像ベクトルが、後述する仮想投影平面上に意図した通りに投影されるよう、投影媒体410の投影方向を制御する機構である。この投影機構420は、2つの投影方向制御軸を有する。2つの投影方向制御軸は、上記の映像ベクトルに対応する投影ベクトルにより制御される。この投影機構420としては、周知のあらゆる技術を適用できる。例えば、アクチュエータとしてモータを適用して、光源の照射方向を変える2軸制御装置を用いることが考えられる。アクチュエータとしては、例えば、ガルバノメータを適用することも可能である。
【0045】
投影ベクトルは、基本的には、投影演算部430により演算されたものが入力される。但し、映像情報出力装置300の入力手段から、直接投影ベクトルを入力して、投影機構420を動作させることもできる。また、後述するユーザインタフェース470から、直接的に投影媒体410の投影方向を制御する情報を入力できるように構成してもよい。
【0046】
投影機構420においては、現在の投影媒体410の姿勢に対応する投影ベクトルが、投影方向制御パラメータとして、常にメモリ等の記憶部に記憶される。投影ベクトルが外部から入力された場合にも、それが記憶部に記憶され、これに従って投影機構420が動作する。
【0047】
手動等により投影媒体410の姿勢を変更した場合にも、これに対応する投影ベクトルが記憶部に記憶され、その時点での投影媒体410の姿勢に対応する投影ベクトルとして利用可能となる。後述するキャリブレーションにおいては、(i)第1の方法 (a)〜(c)で説明した操作の際の投影ベクトルが利用される。
【0048】
なお、投影ベクトルと投影方向の制御結果とに生じる誤差をキャンセルするために、実際の投影方向を検出し、フィードバック制御を行わせるように構成することもできる。つまり、投影方向を決定する投影機構420の出力角度をセンシングし(例えば、ロータリエンコーダ等により可能)、入力を補正する閉ループ制御を行うことにより、入力と出力との相違をキャンセルすることができる。
【0049】
[4−3.投影演算部]
投影演算部430は、要求判定部431、キャリブレーション部432、交点演算部433、透視演算部434、投影位置演算部435、投影ベクトル演算部436等を有している。要求判定部431は、外部からのキャリブレーション要求の有無、映像ベクトルの取得による投影要求の有無を判定する手段である。
【0050】
キャリブレーション部432は、本システム運用前若しくは投影装置400の位置姿勢の変更後のキャリブレーションを行う手段である。キャリブレーション部432は、校正枠設定部432a、射影校正枠設定部432b、校正値演算部432cを有している。校正枠設定部432aは、投影平面T上の校正枠を設定する手段である。射影校正枠設定部432bは、後述する仮想投影平面P上の射影校正枠を設定する手段である。校正値演算部432cは、校正枠及び射影校正枠に基づいて、校正値を算出する手段である。これらのキャリブレーションの詳細については、後述する。
【0051】
交点演算部433は、校正枠若しくは射影校正枠における2頂点と任意の点とを結ぶ2直線と、校正枠若しくは射影校正枠における対角線との2つの交点についての交点係数ベクトルを求める手段である。透視演算部434は、校正値及び交点係数ベクトルに基づいて、2つの交点に対応する投影平面T上の射影点若しくは仮想投影平面P上の射影点を求める手段である。
【0052】
投影位置演算部435は、交点演算部433及び透視演算部434の演算結果に基づいて、校正枠若しくは射影校正枠における2頂点と2つの射影点を結ぶ直線の交点について、交点係数ベクトルを求める手段である。投影ベクトル演算部436は、投影位置演算部435によって求めた交点係数ベクトルに基づいて、投影ベクトルを求める手段である。
【0053】
このような投影演算部430による演算の詳細については、後述する。また、上記の演算を制御する情報を、映像情報出力装置300以外(例えば、後述するユーザインタフェース470等)から、入力できるように構成してもよい。
【0054】
なお、投影演算部430は、所定のプログラムによって、上記の各部の機能を実現できるコンピュータによって構成することができる。例えば、各部の機能を実現するASICやCPU等のICチップやその他の周辺回路によって構成したり、複数の機能を集約したシステムLSIによって構成する等、種々考えられるものであり、特定のものには限定されない。
【0055】
[4−4.投影情報インタフェース]
投影情報インタフェース440は、投影演算部430と外部(映像情報出力装置300など)との間のインタフェースである。投影情報インタフェース440には、映像情報出力装置300の出力部330が接続される。この投影情報インタフェース440は、映像情報出力装置300からの情報の入力を受け付けて、投影演算部430へ映像情報等を出力する。なお、投影情報インタフェース440は、投影装置400の内部状態を、外部へ出力することもできる。
【0056】
[4−5.可動筐体]
可動筐体450は、手動若しくはアクチュエータ制御により、その姿勢を変更できる筐体である。この可動筐体450は、内部に投影機構420を有している。このため、投影機構420の姿勢(投影媒体410の基準となる投影方向)は、可動筐体450の可動範囲内で、任意に設定できる。
【0057】
[4−6.設置機構]
設置機構460は、投影装置400の構成要素を支持し、運用環境内に固定するための構造物である。設置機構460として、どのような機構を採用するかは自由である。例えば、設置機構460を、構成要素を据え置くための台座、構成要素を吊り下げるためのフック、構成要素を設置面に吸着させるための吸盤や磁石などにより構成することができる。
【0058】
ただし、投影装置400が正確な投影動作を行うためには、外部環境からの振動の影響を受けないようにすることが望ましい。したがって、設置機構460に、除震機能を備えてもよい。例えば、バネ、スプリング、ダンパ等の弾性体による支持部材を備えることが考えられる。
【0059】
[4−7.ユーザインタフェース]
ユーザインタフェース470は、投影情報インタフェース440を介さずに、情報の入出力を行う手段である。このユーザインタフェース470には、上記の入力手段と同様の入力手段や、ディスプレイ、プリンタ等の出力手段を接続することが考えられる。操作者Aは、入力手段を介して、投影媒体410の投影方向を制御する情報、投影演算部430による演算を制御する情報等を、直接入力することができる。
【0060】
また、出力手段に投影装置400の内部状態を出力若しくは表示することにより、操作者Aが、キャリブレーション進行状況等の内部状態を確認できる。ただし、ユーザインタフェース470の実装は必須ではなく、必要に応じて実装すればよい。入力可能な情報についても、自由である。
【0061】
なお、上記の映像情報出力装置300及び投影装置400において、入出力される情報、演算値、演算結果等、各種の処理に必要な情報は、コンピュータが備えるレジスタ、メモリ、ハードディスク等の記憶媒体に確保された記憶領域に記憶され、適宜利用される。各記憶領域が、各情報の記憶部を構成するものとなるが、これは、周知の技術により構成可能なため、説明は省略する。記憶部として、どのような種類、容量の記憶媒体を使用するかは自由である。情報の記憶形式として、どのようなものを採用するか等についても自由である。
【0062】
[C.投影動作原理]
上記のような投影動作モデル及び装置構成を前提として行う投影動作の原理を、図4〜9を参照して説明する。
[1.球座標系及び3次元直交座標系の導入]
まず、投影媒体410の方向を決定するための投影機構420の2つの制御軸は、理論的には直交し一点で交わる。そこで、図4に示すように、この交点上に原点を有する球座標系ΣSを導入する。球座標系ΣSにおける任意の座標は、1つの動径rと、2つの偏角θ,φを成分として表すことができる。なお、r≧0,−π/2≦θ≦π/2, −π≦φ<πである。
【0063】
球座標系ΣSにおいて、2つの偏角θ,φのみを成分とする2次元ベクトルd=(θ,φ)Tは、上記の投影ベクトルdである。上記の2つの投影方向制御軸は、投影ベクトルdの両成分に対応する。したがって、投影媒体410の姿勢である投影方向は、投影ベクトルdにより制御できる。
【0064】
球座標系ΣSにおいて、θ=0,φ=0となる投影媒体410の姿勢を、投影媒体410の基本投影方向とする。投影媒体410の姿勢が、基本投影方向となるときの投影ベクトルdO=(0,0)Tを、基本投影ベクトルと呼ぶ。
【0065】
また、同時に、任意の座標が、x,y,zを成分として表され、次の条件を満足する3次元直交座標系ΣCを導入する。
(a)ΣSのθ成分の回転軸とx軸とが一致する。
(b)ΣSのφ成分の回転軸とy軸とが一致する。
(c)基本投影ベクトルに対応する直線LdO上に、正のz軸が存在する。
【0066】
このとき、ΣS,ΣCは、双方の原点が一致する。そして、r>0,−π/2<θ<π/2である場合、ΣSの任意の座標に一意に対応するΣCの座標が存在する。同様に、ΣCの任意の座標に一意に対応するΣSの座標が存在する。
【0067】
投影平面T上の投影対象領域の全域に対して投影するためには、投影媒体410の基本投影ベクトルdOが、投影対象領域の中央近辺を投影するように、操作者Aが、設置機構460の設置及び可動筐体450の姿勢設定を行うことが望ましい。
【0068】
なお、投影平面Tは、図4に示すように、ΣS,ΣCの原点を通らない任意の位置に配置されているものとする。また、投影平面Tの法線は、ΣCのx,y成分の軸のいずれとも一致しないものとする。
【0069】
[2.2次元線形座標系の導入]
ここで、投影平面T上に投影動作に適した任意の2次元線形座標系ΣTを導入する。これは、任意の映像ベクトル(表示位置ベクトルIpを含む)に基づく投影が行われる場合に、その表示位置ベクトルIpに対応する投影平面T上の投影位置Tpを特定することを目的とする。
【0070】
映像が意図したとおりに投影平面T上に投影されるならば、ΣTは、表示位置ベクトルIpが定義される座標系ΣIと同一であると定義できる。若しくは、ΣTは、ΣIを適切に線形変換した座標系と定義できる。
【0071】
つまり、上述のΣCにおける投影平面Tに対する投影位置Cpは、ΣTにおける投影位置Tpと、一意に対応する。このため、任意の投影ベクトルdが、Cpを投影することは、Tpを投影することと同義である。このTpは、上述の投影位置ベクトルである。このため、任意の投影位置ベクトルTpに一意に対応する投影ベクトルdが存在すると言える。
【0072】
上記の投影装置400と投影平面Tのモデルに基づいて、ΣTの任意の座標を、これに対応するΣSの座標に変換する関数を同定する。この関数を同定することで、本実施形態による投影動作が可能となる。
【0073】
このようなΣTからΣSへの線形変換を行う関数を同定できない場合、投影平面Tには意図した通りの映像が投影されず、射影歪の影響を受けて歪んで投影される。従来の手法では、この射影歪の影響を排除するために、関数の同定に投影環境の位置姿勢に関する情報を必要としていた。この情報とは、例えば、ΣCにおけるΣTの原点位置や投影平面Tの法線ベクトルなどである。
【0074】
もし、投影装置400及び投影平面Tの位置姿勢が固定されていて、投影環境の位置姿勢に関する情報が既知であれば、関数の同定に問題はない。しかし、投影装置400若しくは投影平面Tは、可搬であることが便利である。また、操作者Aが、投影装置400若しくは投影平面Tを自由に所望の位置に設置し、容易に投影動作を行えることが望ましい。このような投影動作の利便性を考慮すると、投影動作のための位置姿勢に関する情報は不要とし、位置姿勢の制約、位置姿勢の正確な設計、装置の正確な配置、正確な測量などは、極力排除すべきである。
【0075】
[3.仮想投影平面の導入]
これに対処するために、本実施形態においては、図5に示すように、ΣCにおけるz=1となる仮想的な平面Pを導入する。さらに、この平面Pに対して、2次元直交座標系ΣPを導入する。ΣPは、ΣCを、そのz軸に沿って、平面Pへ正射影した座標系である。このとき、ΣPにおける任意の点Ppは、適切な座標変換により、ΣCにおける点Cpに一意に対応付けられる。
【0076】
任意の投影ベクトルdにより投影平面T上の点Cuを投影したとき、ΣCの原点COとCuを結ぶ線分は、平面Pと交点Cvで交わる。投影ベクトルdとCuが一意に対応することと同様に、投影ベクトルdとCvも一意に対応する。このことから、CuとCvとが、一意に対応することが導かれる。
【0077】
このCuとCvとの関係は、ΣCの原点COを介した投影平面Tと平面Pとの相互的な中心射影変換を意味する。この平面Pを仮想投影平面と呼ぶ。
【0078】
任意の投影ベクトルdについて、仮想投影平面P上のΣPにおける投影点Pvは、一意に対応付けられる。よって、ΣCに対して所定の位置に固定されている仮想投影平面Pにおいて、投影点Pvは、投影ベクトルdの別形式の表現と言える。このPvを、仮想投影位置ベクトルと呼ぶ。
【0079】
d=(θ,φ)T,Pv=(x,y)Tとしたとき、dとPvとの関係は式(1),(2)のとおり表される。
【数1】
【数2】
【0080】
上記の中心射影変換においては、投影平面Tの法線と仮想投影平面Pの法線とが一致しているときに限り、両平面の位置姿勢に関する情報を用いることなく、適切な線形変換により、投影平面T上の点Cuと仮想投影平面P上の点Cvとの相互変換ができる。しかし、多くの場合には、両平面の法線は一致しないため、非線形変換となってしまう。このため、従来手法においては、点Cuと点Cvとを相互変換させるには、両平面の位置姿勢に関する情報が必要となっていた。また、かかる情報がない場合には、線形変換による近似解を求めるにとどまっていた。
【0081】
[4.交点関数の導入]
この問題を解決するために、本実施形態においては、新たな中心射影変換の同定方法を用いる。このために、交点関数及び透視関数と呼ぶ2つの重要な関数を導入する。
【0082】
まず、交点関数について述べる。すなわち、ある2次元平面上で、平行でない2つの直線S,Tを考える。直線S,T上の異なる2点の組をそれぞれ{s0,s1},{t0,t1}としたとき、両直線の交点cが、式(3)のとおりに表されるとする。
【数3】
【0083】
このとき、係数s,tは、I(S,T)なる関数により、式(4)のとおり求めることができる。
【数4】
ただし、det[a b]は、a,bを小行列とする行列の行列式を表す。
【0084】
このベクトル関数I(S,T)を、交点関数と呼ぶ。また、I(S,T)により求められた解ベクトル(s,t)Tを、交点係数ベクトルと呼ぶ。
【0085】
[5.透視関数の導入]
続いて、直交しない2つの平面上で相互に対応する直線同士の中心射影変換を考える。平面U上の直線ULに乗る2点{u0,u1}が、この中心射影変換により、それぞれ平面V上の直線VLに乗る2点{v0, v1}に射影されるとする。同様に、UL上の別の点u=(1−M)u0+Mu1が、VL上の点v=(1−MI)v0+MIv1へ射影されるとする。このとき、M,MIは既知とする。
【0086】
同様に、UL上の別の点u’=(1−N)u0+Nu1が、VL上の点v’=(1−nI)v0+nIv1へ射影されるとする。Nは既知であるとすれば、このnIは、関数P(M,MI,N)により、既知の係数M,MI,Nのみを用いて、式(5)のとおり求めることができる。
【数5】
この関数P(M,MI,N)を透視関数と呼ぶ。
【0087】
[6.平面間の中心射影変換]
この透視関数P(M,MI,N)により2つの直線上で対応する任意の点の間の中心射影変換を同定できた。そこで、これを拡張して、2つの平面(ここでは投影平面T,仮想投影平面Pとする)上で対応する任意の点の間の中心射影変換を同定することを考える。この問題を解決するためには、次の4つのプロセスを実行すればよい。
【0088】
[6−1.第1のプロセス]
投影平面T上の任意の四角形TRを考える。四角形TRの2つの対角線TD20,TD31が、それぞれ端点の組{Tv0,Tv2},{Tv1,Tv3}を有しているとする。そして、この対角線同士の交点TcRが、式(6)で表されるとする。
【数6】
【0089】
ここで、問題の中心射影変換により、四角形TRが仮想投影平面P上の四角形PRへ射影されたと考える。PRの2つの対角線PD20,PD31が、それぞれ端点の組{Pv0,Pv2},{Pv1,Pv3}で表されるとする。そして、この対角線同士の交点PcRが、式(7)で表されるとする。
【数7】
TvnとPvnで表される各点同士は、図6に示すとおり、この中心射影変換における対応点である。
【0090】
まず、これら2種類の対角線同士の交点TcR,PcRに関する交点係数ベクトルを、上記の交点関数を用いて式(8),(9)のとおり求める。
【数8】
【数9】
【0091】
[6−2.第2のプロセス]
次に、図7に示すとおり、投影平面T上の任意の点Tpを導入する。この点Tpと対角線TD31のいずれかの端点Tvaとを端点の組{Tp,Tva}とする線分TSaを考える。この線分TSaと対角線TD20との交点Tc20が、式(10)で表されるとする。
【数10】
【0092】
同様に、Tpと対角線TD20のいずれかの端点Tvbとを端点の組{Tp,Tvb}とする線分TSbを考える。この線分TSbと対角線TD31との交点Tc31が、式(11)で表されるとする。
【数11】
【0093】
このとき、交点Tc20,Tc31に関する交点係数ベクトルを、式(12),(13)のとおり求める。
【数12】
【数13】
【0094】
ただし、Tvaは、次のような基準で選択する。すなわち、線分TSaが、その線分上で対角線TD20と交点を結ぶように、Tvaとして、Tv1またはTv3を選択する。もし、TpがTD31上にある場合は、Tv1,Tv3のどちらを選択してもよい。ただし、TpがTv1上にある場合はTv3を選択する。一方、TpがTv3上にある場合は、Tv1を選択する。
【0095】
同様に、Tvbは、次のような基準で選択する。すなわち、線分TSbが、その線分上で対角線TD31と交点を結ぶように、Tvbとして、Tv0またはTv2を選択する。もし、TpがTD20上にある場合は、Tv0,Tv2のどちらを選択してもよい。ただし、TpがTv0上にある場合は、Tv2を選択する。一方、TpがTv2上にある場合は、Tv0を選択する。
【0096】
[6−3.第3のプロセス]
図8に示すとおり、上記の中心射影変換により、投影平面T上の点Tc20が、仮想投影平面Pにおける対角線PD20上の点Pc20へ射影されたときを考える。このとき、点Pc20が、式(14)のとおり表されるとする。式(14)中の係数Pn20は、前プロセスまでに求めておいた係数Tm20, Pm20,Tn20を用いて、透視関数によって求めることができる。具体的には、式(15)のとおりである。
【0097】
【数14】
【数15】
【0098】
同様に、投影平面T上の点Tc31が、仮想投影平面Pにおける対角線PD31上の点Pc31へ射影されたときを考える。このとき、点Pc31が、式(16)のとおり表されるとする。式(16)中の係数Pn31は、前プロセスまでに求めておいた係数Tm31,Pm31,Tn31を用いて、透視関数によって求めることができる。具体的には、式(17)のとおりである。
【数16】
【数17】
【0099】
[6−4.第4のプロセス]
図9に示すとおり、投影平面T上の線分TSa,TSbにおけるTp以外の端点が、上記の中心射影変換により、それぞれ仮想投影平面P上の点Pva,Pvbへ射影されたとする。ここで、2点{Pva,Pc20}が乗る直線PLpaと、2点{Pvb,Pc31}が乗る直線PLpbとの交点Ppは、式(18)のとおり表される。このとき、式(19)のとおり、交点Ppに関する交点係数ベクトルを求めることができる。
【0100】
【数18】
【数19】
【0101】
上記のプロセスによって、問題の中心射影変換を同定することができた。これは、2つの平面の位置姿勢によらず、両平面上の対応する既知の四角形に関する情報のみを用いている。したがって、ある投影環境下における任意の投影ベクトルdによる投影位置について、投影平面Tと仮想投影平面Pとの間の中心射影変換を考えれば、上記第1〜4のプロセスを実行することで、一方の平面上の投影位置が決定すれば、他方の平面上の投影位置を求められ、相互に変換可能であることがわかる。上記のプロセスを、透視プロセスと呼ぶ。
【0102】
透視プロセスにおいて、係数Tn20,Tn31は、投影ベクトルdが更新される毎に、式(10)〜(13)から求めなければならない。しかし、係数Tm20,Tm31,Pm20,Pm31については、本システムの運用に先立って、一度だけ求めておけばよい。若しくは、運用中に何らかの理由で投影装置400の位置姿勢など投影環境が変化した際に、一度だけ求め直せばよい。
【0103】
すなわち、係数Tm20,Tm31,Pm20,Pm31は、運用前のキャリブレーションにより得られる係数である。これらの係数に関係する透視プロセスにおいて、四角形TRを校正枠と呼ぶ。また、四角形PRを、射影校正枠と呼ぶ。さらに、このキャリブレーションにより得られた係数を校正値と呼ぶ。
【0104】
本システムにおいては、投影動作の準備として、投影平面T上の任意の校正枠とそれに対応する仮想投影平面P上の射影校正枠について、投影ベクトルを用いてそれらの4つの頂点を投影することにより、校正値を求めておく。これにより、投影平面T上の任意の投影位置Tuに対応する仮想投影平面P上の投影位置Pvを正確に求めることができる。さらに、このPvから、式(2)により、対応する投影ベクトルdを求められるため、目標とする投影位置Tuを正確に投影することができる。
【0105】
[D.実施形態の作用]
本システムの動作手順の詳細を、図10のフローチャートを参照して説明する。本システムの動作は、主として、1.初期設定、2.キャリブレーション、3.キャリブレーション要求判定、4.投影位置更新要求判定、5.投影ベクトル演算、6.投影動作等の手順を含んでいる。
【0106】
[1.初期設定…ステップ1001]
まず、操作者Aは、本システムを設置する。例えば、あらかじめ設置された投影平面Tの前方に、投影装置400を配置する。映像情報出力装置300等は任意の場所に配置する。つまり、この設置作業においては、投影平面T及び投影装置400を、投影ベクトルdの設定範囲内で、投影媒体410が投影平面Tの投影対象領域全域を投影可能となるように設置すればよい。その際、上記のように、基本投影ベクトルdOが、投影対象領域の中心あたりを投影するように、設置機構460及び可動筐体450の姿勢を設定する。
【0107】
そして、映像情報出力装置300を投影装置400に接続する。これにより、映像情報出力装置300からの投影情報が、投影装置400に与えられるようにする。操作者Aは、映像情報出力装置300に接続された入力手段を操作することにより、所望の情報を入力することができる。
【0108】
[2.キャリブレーション…ステップ1002〜1005]
キャリブレーションは、校正枠設定部432aによる校正枠の設定(ステップ1003)、射影校正枠設定部432bによる射影校正枠の設定(ステップ1004)、校正値演算部432cによる校正値の算出(ステップ1005)を行う処理である。校正枠及び射影校正枠は、上記のように、投影システム100において、中心射影変換を同定するために必要となる。したがって、キャリブレーションは、設置された投影システム100の運用に先立って若しくはキャリブレーション要求の入力があった場合に行われる。
【0109】
キャリブレーションは、上記の動作原理のとおり実行される。このとき、プログラムがキャリブレーション状態に遷移し、投影平面T及び映像情報出力装置300におけるディスプレイには、キャリブレーション画面が表示される。
【0110】
[2−1.校正枠の設定…ステップ1003]
まず、校正枠設定の際には、校正枠の4つの頂点に相当する投影位置ベクトルと、同頂点を投影する投影ベクトルとを対応付ける。かかる対応付け並びに校正枠の設定には、次の2通りの方法が考えられる。
【0111】
(i)第1の方法
第1の方法は、予め設定(メモリ等の記憶部に記憶)された投影位置(投影領域の4隅やその近傍など)に、適切な映像ベクトルが投影されるように、対応する各投影ベクトルを制御するように変更する。
【0112】
例えば、図12に示すように、(X0±X,Y0±Y)Tと表される4つの投影位置ベクトルを定める。操作者Aは、各投影位置ベクトルTpa〜Tpdに対応する投影平面T上の位置を、投影装置400の投影媒体410が投影するように操作する。校正枠設定部432aは、各投影位置ベクトルTpa〜Tpdに対して、これらを投影した時の投影ベクトルda〜ddを対応付ける。操作者Aによる投影媒体410の操作方法には、次のいずれかの方法がある。
【0113】
(a)映像情報出力装置300の入力手段から、投影機構420を制御する情報を入力することにより、映像情報出力装置300経由で投影媒体410の姿勢を操作する。
(b)投影装置400のユーザインタフェース470から、投影機構420を制御する情報を入力し、投影媒体410の姿勢を操作する。
(c)投影媒体410の姿勢を手動にて操作する。
【0114】
これらの方法は、あらかじめ上記のように投影位置ベクトルが決められた投影平面T上の4点(例えば、画像表示領域の4隅、画像表示領域に表された4箇所の識別マーク等)に、順次可視レーザ光を照射していくことで、キャリブレーションを進めることができる。これらの方法によれば、後述する遠隔投影操作において、遠隔地にある映像情報出力装置300や操作者Aとは独立して、各地の投影装置400と投影平面Tとのキャリブレーションを行うことができる。
【0115】
(ii)第2の方法
一方、第2の方法は、あらかじめ設定(メモリ等の記憶部に記憶)された投影ベクトルdに対応する映像ベクトルによって、投影平面Tに投影する方法である。例えば、図11に示すように、(θ0±θ,φ0±φ)Tと表される4つの投影ベクトルda〜ddにより、投影平面Tに対応する映像ベクトルを順次投影する。
【0116】
各映像ベクトルの投影像について、上記のような計測手段によって、投影平面上の座標系ΣTにおける投影位置を計測し、その座標値と位置決定のイベントを、投影装置400のユーザインタフェース470若しくは映像情報出力装置300経由で本校正情報を投影装置400へ与える。校正枠設定部432aは、各投影ベクトルda〜ddに、投影位置ベクトルTpa〜Tpdを対応付ける。
【0117】
この方法であれば、投影平面T上の投影位置の座標値を計測し、その位置決定のイベントを映像情報出力装置300に与えることによって、順次キャリブレーションを進めることができる。なお、4頂点分の投影ベクトルが投影平面T内に収まらない場合には、操作者Aの入力操作により修正指令を与えるが、投影ベクトルは投影装置400において再計算される。
【0118】
なお、上記の第1の方法及び第2の方法ともに、設定される4つの投影ベクトルは、すべて異なっていて、いずれか3つの投影ベクトルによる投影位置が同一直線上に無ければよい。このため、上記の例のような投影ベクトルに限定する必要はない。
【0119】
同時に、このようなキャリブレーションによって、任意の映像ベクトルにおける表示位置ベクトルと投影位置ベクトルとの対応関係を、投影ベクトルを介して同定する。ΣTはΣIと同一であるか、若しくは線形変換したものであるため、それぞれ映像が定義される領域を基準に正規化することで、一方のベクトルから他方のベクトルへ容易に変換できる。
【0120】
[2−2.射影校正枠の設定…ステップ1004]
射影校正枠設定部432bは、上記のように、4つの投影位置ベクトルTpa〜Tpdに対応付けられた4つの投影ベクトルda〜ddから、式(1)により、仮想投影平面P上の対応する4つの仮想投影位置ベクトルを求める。
【0121】
[2−3.校正値の算出…ステップ1005]
上記のように設定された校正枠および射影校正枠に基づいて、式(6)〜式(9)により、校正値を求める。これにより、キャリブレーションが完了する。
【0122】
[3.キャリブレーション要求判定…ステップ1006]
要求判定部431は、キャリブレーション要求イベントの有無を判定して、キャリブレーション部432のフロー制御を行う。例えば、投影装置400と投影平面Tとの相対的な位置姿勢など、投影環境が運用中に変化してしまった場合に、校正値の更新が必要になる。
【0123】
このとき、操作者Aが、映像情報出力装置300の入力手段若しくはユーザインタフェース470を介して、キャリブレーション要求イベントを入力する。要求判定部431は、入力されたキャリブレーション要求イベントを検出した場合、キャリブレーション部432にキャリブレーションを開始させる。
【0124】
[4.映像ベクトル取得…ステップ1007]
映像情報出力装置300は、所望の動画などの映像を投影するための映像ベクトルの集合(映像ベクトル系列)を、投影装置400へ逐次出力する。投影装置400における要求判定部431は、映像ベクトルの取得により、投影要求があったと判定して、投影演算部430における投影のための演算処理を開始させる。このとき、要求判定部431は、映像ベクトル系列における各映像ベクトルを順次取得し、各映像ベクトルの時刻要素に関連するタイミングで、後段のステップへ出力してもよい。
【0125】
また、映像ベクトル系列は、メモリ等に設定された映像記憶領域に、一時的に記憶してもよい。この際、要求判定部431は、記憶した映像ベクトル系列から、各映像ベクトルの時刻要素に従って、現在投影すべき映像ベクトルを取得し、後段のステップへ出力してもよい。
【0126】
[5.投影ベクトル演算…ステップ1008〜1012]
投影演算部430においては、取得された映像ベクトルの要素である表示位置ベクトルから、キャリブレーションで同定された対応関係により、一意に対応する投影位置ベクトルへ変換する。この投影位置ベクトルにより交点係数ベクトルを求める。
【0127】
つまり、投影演算部430の交点演算部433は、式(10)〜(13)により、新たな投影位置ベクトルが示す投影点及び既に求められている校正枠における2頂点の間をそれぞれ結ぶ2直線と、当該校正枠における対角線との2つの交点についての交点係数ベクトルを求める(ステップ1009)。
【0128】
透視演算部434は、式(14)〜(17)により、既に求められている校正値、交点係数ベクトル及び投影平面T上の2つの交点に基づいて、当該2つの交点に対応する仮想投影平面Pの2つの射影点を求める(ステップ1010)。なお、上記の説明では、投影平面T上の2点から、仮想投影平面P上の2つの射影点を求めていたが、両者は相互に変換可能である。
【0129】
さらに、投影位置演算部435は、式(18)(19)により、既に求められている2つの射影点及び射影校正枠の2頂点を結ぶ2直線の交点についての交点係数ベクトルを求める(ステップ1011)。なお、上記の説明では、仮想投影平面P上の2直線の交点から、交点係数ベクトルを求めていたが、投影平面T上の2直線の交点から、交点係数ベクトルを求める場合も同様である。
【0130】
投影ベクトル演算部436は、ステップ1011で求めた交点係数ベクトルに基づいて、式(2)により、投影ベクトルを求める(ステップ1012)。なお、投影方向制御軸のずれなどの、投影装置400における投影機構420の実装精度により、投影ベクトルの補正が必要となる場合を考慮して、適切な投影ベクトル補正機能を実装し、求められた投影ベクトルを補正してもよい。
【0131】
[6.投影動作…ステップ1013〜1015]
上記のように求められた投影ベクトルによって、投影機構420は、投影媒体410の投影方向制御パラメータを更新する(ステップ1013)この投影方向制御パラメータにしたがって、投影機構420が動作するので、投影媒体410が、投影平面T上の目標とする投影位置を投影する(ステップ1014)。この時、投影媒体410は、対応する映像ベクトルの要素である色強度ベクトルに従って発色を制御し、時間値に従って投影時間を制御する。そして、投影を継続する場合には、ステップ1006に戻る(ステップ1015)。
【0132】
[E.実施形態の効果]
以上のような本実施形態によれば、投影装置400に対する投影平面Tの位置姿勢を計測する必要も、投影平面Tに対して投影装置400を固定的に設置する必要もなく、投影平面Tと仮想投影平面Pとの中心射影変換において、厳密な射影歪補正を行うことにより、意図した通りに正確な映像を投影できる。
【0133】
また、投影平面Tと投影装置400との相対的な位置姿勢が変動しても、キャリブレーションを行うことにより、正確な投影動作を維持できる。このため、投影装置400及び投影平面Tの双方若しくは一方を持ち運び可能な利便性の高いものとすることができる。また、設置の自由度が高まるので、様々な設置場所に本システムを設置することができる。例えば、屋外の壁面を投影平面Tとする場合であっても、正確な投影を行うことができる。
【0134】
[F.他の実施形態]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。図2に示した機能ブロック図は、概念的なものであり、これらの機能を実現する具体的な回路は種々考えられ、特定のものには限定されない。なお、本発明は、上記の処理に対応してコンピュータ及び周辺回路を動作させる投影方法、投影プログラムとしても把握できる。ハードウェア処理によって実現する範囲とソフトウェア処理によって実現する範囲も自由である。上記の投影演算部を実現するコンピュータを、独立した投影ベクトル演算装置として構成することも可能である。
【0135】
上記の各装置の接続方法は、自由である。例えば、携帯可能な小型軽量の投影装置400を、映像情報出力装置300のコンピュータに接続する場合に、USBのバス給電により駆動するように構成することもできる。
【0136】
さらに、映像情報出力装置300と投影装置400とを接続する媒体を、有線若しくは無線の通信ネットワークを介して実現してもよい。これにより、遠隔地に設置された投影平面T及び投影装置400を、映像情報出力装置300によって操作することができる。例えば、複数の遠隔地にある投影平面Tに、それぞれ同一若しくは異なる映像を投影させることもできる。
【0137】
また、投影装置400の一部を、映像情報出力装置300に構成することもできる。例えば、投影演算部430を、映像情報出力装置300に設けてもよい。キャリブレーション部432のみを、映像情報出力装置300に設けてもよい。さらに、映像情報出力装置300を、投影装置400と一体に構成することもできる。
【0138】
さらに、投影媒体410と投影平面Tとの間に介在させる投影機構420の一部として、以下に例示するような光学素子421を用いて、上記投影動作原理を近似的に利用した投影システムを構成することも可能である。
【0139】
すなわち、図13に示すように、点光源411からの投影光を、格子状若しくは2次元的に配置された光学要素421を介して、投影平面Tに所望の映像を投影する投影システムを構成する。
【0140】
光学要素421としては、例えば、音響光学素子、電気光学素子及び平面鏡などが考えられる。この光学要素421は、点光源411から放射された投影光を透過若しくは反射させ、関与する投影光の投影方向を変化させることで、投影平面T上に意図した通りの映像を投影する。図13の例では、格子状に配置された投影光を透過させる光学要素421を用いて説明している。
【0141】
すべての光学要素421は、点光源411の前方に設定された平面Tf上に、ある瞬間の映像に含まれる全ての映像ベクトルから求められる投影ベクトルdsと交わるように配置される。このとき、光学要素421が乗る平面Tf上では、意図した通りの映像が投影されるものとし、点光源411から同平面Tfまでの投影ベクトルdsは、あらかじめ設計により固定的に決定され、投影装置400におけるメモリ等の記憶部に記憶されている。
【0142】
各光学要素421は、それぞれ直交する2つの投影方向制御軸ax,ayを持っている。各光学要素421における投影方向制御軸ax,ayは、入射した投影光の放射角度を変化させることができるように、投影機構420の制御部によって独立して制御される。
【0143】
かかる実施形態においては、キャリブレーションは、キャリブレーション部432によって、上記の実施形態と同様に行う。このとき、初期に対象となる投影ベクトルda〜ddに対応させて、制御部が光学要素421の投影方向制御軸ax,ayを制御することで、キャリブレーションを行う。
【0144】
そして、投影演算部430における各演算部が、上記投影原理動作により、映像ベクトルの要素である表示位置ベクトルから、投影位置ベクトルを求め、これに対応する投影ベクトルdを求める。実際の投影光の放射方向の制御は、制御部が、求められる投影ベクトルdに対応する光学要素421の投影方向制御軸ax,ayを制御することにより行う。
【0145】
但し、制御部は、光学要素421からの投影光の放射角度が、求められた投影ベクトルdの原点Oを投影方向制御ax,ay同士の交点に移動した新たな投影ベクトルdnに一致するように制御する。
【0146】
各光学要素421における2つの投影方向制御軸ax,ayの交点(原点)は、上記投影動作原理の原点Oとは同一ではない。このため、かかる制御方法では、意図した通りの映像を、厳密に投影平面Tに投影することはできない。但し、点光源411から光学要素421が乗る平面Tfまでの距離が、同平面Tfから投影平面Tfまでの距離と比較して十分に小さい場合には、事実上問題のない近似解としての投影ベクトルdnが得られる。
【0147】
なお、反射を利用する光学要素421のより具体的な例としては、電極のON/OFFに応じて独立に駆動される微少な反射鏡を、多数配置したデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)や、モータ駆動の反射鏡によって、所望の角度の反射光を得られるガルバノスキャナ等が考えられる。DMDを利用したデジタルライトプロセッシング(DLP)プロジェクタは、反射光によって投影画像を得るため、透過光によって投影画像を得る液晶プロジェクタと比較して、光のロスが少ないという利点がある。また、ガルバノスキャナは、投影画像が巨大で画素のスケールが大きい場合に適しており、太陽光を集光させたものを利用することも可能である。
【0148】
さらに、上記の投影平面への投影位置を計測する計測手段として、本発明の投影装置と、カメラ等の撮像装置を用いる方法も実現可能である。これは、例えば、投影平面に対して、その投影領域の対角線と重なるように、レーザ光を2本の直線状に照射する。この対角線上のレーザ光と、投影ベクトルによる投影像とを、同時に撮像装置によって撮像し、特願2008−152769(本発明の発明者が発明し、本出願の出願人が出願)において開示されたポインティングシステムによる指示位置検出原理によって、撮影像の射影歪を除去した後、投影ベクトルの投影領域に対する位置を求めることができる。
【符号の説明】
【0149】
100…投影システム
300…映像情報出力装置
301…記憶部
310…入力部
320…抽出部
330…出力部
400…投影装置
410…投影媒体
420…投影機構
430…投影演算部
431…要求判定部
432…キャリブレーション部
432a…校正枠設定部
432b…射影校正枠設定部
432c…校正値演算部
433…交点演算部
434…透視演算部
435…投影位置演算部
436…投影ベクトル演算部
440…投影情報インタフェース
450…可動筐体
460…設置機構
470…ユーザインタフェース
【特許請求の範囲】
【請求項1】
投影対象となる投影平面に対する投影を行う投影媒体と、
直交する2つの制御軸を有し、前記制御軸を中心とした回転角を成分とする投影ベクトルにしたがって、前記投影媒体の投影方向を制御する投影機構と、
前記制御軸の交点を原点とする3次元直交座標系に対して所定の位置関係を有する仮想的な仮想投影平面と、前記投影平面との間において、前記原点を介した前記投影平面上の投影位置とこれに対応する前記仮想投影平面上の位置との中心射影変換に基づいて、前記投影ベクトルを演算する投影演算部と、
を有することを特徴とする投影システム。
【請求項2】
前記投影演算部は、
前記投影平面における異なる4点を頂点とする校正枠を設定する校正枠設定部と、
前記仮想投影平面に、前記校正枠の4点に前記中心射影変換に基づいて対応する点を頂点とする射影校正枠を設定する射影校正枠設定部と、
2次元平面上での平行でない2直線の交点を求める交点関数を用いて、前記投影平面上の投影位置と前記校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記校正枠の対角線との交点若しくは前記投影位置に対応する仮想投影平面上の位置と前記射影校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記射影校正枠の対角線との交点を求める交点演算部と、
直交しない2平面上で相互に対応する2直線上の任意の点の間の中心射影変換を行う透視関数を用いて、前記投影平面上の投影位置と前記校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記校正枠の対角線との交点と、前記投影位置に対応する仮想投影平面上の位置と前記射影校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記射影校正枠の対角線との交点とを相互に変換可能な透視演算部と、
前記校正枠若しくは前記射影校正枠の頂点及び前記透視演算部により変換した交点に基づき、前記投影平面上の投影位置若しくは前記投影位置に対応する前記仮想投影平面上の位置を演算する投影位置演算部と、
前記投影位置演算部によって演算した投影位置若しくはこれに対応する前記仮想投影平面上の位置に基づいて、前記投影ベクトルを演算する投影ベクトル演算部と、
を有することを特徴とする請求項1記載の投影システム。
【請求項3】
前記投影平面上の投影位置に関する情報を記憶する記憶部と、前記投影位置に関する情報を前記投影演算部に出力する出力部と、を有する請求項1又は請求項2記載の投影システム。
【請求項4】
前記校正枠設定部及び前記射影校正枠設定部を有し、運用前若しくは要求に応じて、前記校正枠及び前記射影校正枠の設定を行うキャリブレーション部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の投影システム。
【請求項5】
前記投影機構は、前記投影媒体の基本投影方向若しくは前記投影機構の姿勢を変更可能な可動筐体に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の投影システム。
【請求項6】
前記投影機構は、除震手段を備えた設置機構に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の投影システム。
【請求項7】
前記投影演算部及び前記投影機構との間で、情報の入出力が可能なユーザインタフェースを備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の投影システム。
【請求項8】
直交する2つの制御軸を有し、投影対象となる投影平面に対する投影を行う投影媒体の投影方向を制御する投影機構を、コンピュータが、前記制御軸を中心とした回転角を成分とする投影ベクトルにしたがって制御することにより、前記投影平面に対する投影を行わせる投影方法において、
前記コンピュータは、校正枠設定部、射影校正枠設定部、交点演算部、透視演算部、投影位置演算部及び投影ベクトル演算部を有し、
前記校正枠設定部が、前記投影平面における異なる4点を頂点とする校正枠を設定し、
前記射影校正枠設定部が、前記制御軸の交点を原点とする3次元直交座標系に対して所定の位置関係を有する仮想的な仮想投影平面に、前記校正枠の4点に前記中心射影変換に基づいて対応する点を頂点とする射影校正枠を設定し、
前記交点演算部が、2次元平面上での平行でない2直線の交点を求める交点関数を用いて、前記投影平面上の投影位置と前記校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記校正枠の対角線との交点若しくは前記投影位置に対応する仮想投影平面上の位置と前記射影校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記射影校正枠の対角線との交点を求め、
前記透視演算部が、直交しない2平面上で相互に対応する2直線上の任意の点の間の中心射影変換を行う透視関数を用いて、前記投影平面上の投影位置と前記校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記校正枠の対角線との交点と、前記投影位置に対応する仮想投影平面上の位置と前記射影校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記射影校正枠の対角線との交点とについて、いずれか一方から他方へ変換し、
前記投影位置演算部が、前記校正枠若しくは前記射影校正枠の頂点及び変換した前記交点に基づき、前記投影平面上の投影位置若しくは前記投影位置に対応する前記仮想投影平面上の位置を演算し、
前記投影ベクトル演算部が、演算した投影位置若しくはこれに対応する前記仮想投影平面上の位置に基づいて、前記投影ベクトルを演算する、
ことを特徴とする投影方法。
【請求項9】
直交する2つの制御軸を有し、投影対象となる投影平面に対する投影を行う投影媒体の投影方向を制御する投影機構を、コンピュータに、前記制御軸を中心とした回転角を成分とする投影ベクトルにしたがって制御させることにより、前記投影平面に対する投影を行わせる投影プログラムにおいて、
前記コンピュータに、
前記投影平面における異なる4点を頂点とする校正枠を設定する処理と、
前記制御軸の交点を原点とする3次元直交座標系に対して所定の位置関係を有する仮想的な仮想投影平面に、前記校正枠の4点に前記中心射影変換に基づいて対応する点を頂点とする射影校正枠を設定する処理と、
2次元平面上での平行でない2直線の交点を求める交点関数を用いて、前記投影平面上の投影位置と前記校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記校正枠の対角線との交点若しくは前記投影位置に対応する仮想投影平面上の位置と前記射影校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記射影校正枠の対角線との交点を求める処理と、
直交しない2平面上で相互に対応する2直線上の任意の点の間の中心射影変換を行う透視関数を用いて、前記投影平面上の投影位置と前記校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記校正枠の対角線との交点と、前記投影位置に対応する仮想投影平面上の位置と前記射影校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記射影校正枠の対角線との交点とについて、いずれか一方から他方へと変換する処理と、
前記校正枠若しくは前記射影校正枠の頂点及び変換した前記交点に基づき、前記投影平面上の投影位置若しくは前記投影位置に対応する前記仮想投影平面上の位置を演算する処理と、
演算した投影位置若しくはこれに対応する前記仮想投影平面上の位置に基づいて、前記投影ベクトルを演算する処理と、
を実行させることを特徴とする投影プログラム。
【請求項10】
直交する2つの制御軸を有し、前記投影媒体の投影方向を制御する投影機構を制御するために、前記制御軸を中心とした回転角を成分とする投影ベクトルを求める投影ベクトル演算装置において、
前記制御軸の交点を原点とする3次元直交座標系に対して所定の位置関係を有する仮想的な仮想投影平面と、前記投影平面との間において、前記原点を介した前記投影平面上の投影位置とこれに対応する前記仮想投影平面上の位置との中心射影変換により、前記投影ベクトルを演算する投影演算部を有することを特徴とする投影ベクトル演算装置。
【請求項1】
投影対象となる投影平面に対する投影を行う投影媒体と、
直交する2つの制御軸を有し、前記制御軸を中心とした回転角を成分とする投影ベクトルにしたがって、前記投影媒体の投影方向を制御する投影機構と、
前記制御軸の交点を原点とする3次元直交座標系に対して所定の位置関係を有する仮想的な仮想投影平面と、前記投影平面との間において、前記原点を介した前記投影平面上の投影位置とこれに対応する前記仮想投影平面上の位置との中心射影変換に基づいて、前記投影ベクトルを演算する投影演算部と、
を有することを特徴とする投影システム。
【請求項2】
前記投影演算部は、
前記投影平面における異なる4点を頂点とする校正枠を設定する校正枠設定部と、
前記仮想投影平面に、前記校正枠の4点に前記中心射影変換に基づいて対応する点を頂点とする射影校正枠を設定する射影校正枠設定部と、
2次元平面上での平行でない2直線の交点を求める交点関数を用いて、前記投影平面上の投影位置と前記校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記校正枠の対角線との交点若しくは前記投影位置に対応する仮想投影平面上の位置と前記射影校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記射影校正枠の対角線との交点を求める交点演算部と、
直交しない2平面上で相互に対応する2直線上の任意の点の間の中心射影変換を行う透視関数を用いて、前記投影平面上の投影位置と前記校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記校正枠の対角線との交点と、前記投影位置に対応する仮想投影平面上の位置と前記射影校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記射影校正枠の対角線との交点とを相互に変換可能な透視演算部と、
前記校正枠若しくは前記射影校正枠の頂点及び前記透視演算部により変換した交点に基づき、前記投影平面上の投影位置若しくは前記投影位置に対応する前記仮想投影平面上の位置を演算する投影位置演算部と、
前記投影位置演算部によって演算した投影位置若しくはこれに対応する前記仮想投影平面上の位置に基づいて、前記投影ベクトルを演算する投影ベクトル演算部と、
を有することを特徴とする請求項1記載の投影システム。
【請求項3】
前記投影平面上の投影位置に関する情報を記憶する記憶部と、前記投影位置に関する情報を前記投影演算部に出力する出力部と、を有する請求項1又は請求項2記載の投影システム。
【請求項4】
前記校正枠設定部及び前記射影校正枠設定部を有し、運用前若しくは要求に応じて、前記校正枠及び前記射影校正枠の設定を行うキャリブレーション部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の投影システム。
【請求項5】
前記投影機構は、前記投影媒体の基本投影方向若しくは前記投影機構の姿勢を変更可能な可動筐体に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の投影システム。
【請求項6】
前記投影機構は、除震手段を備えた設置機構に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の投影システム。
【請求項7】
前記投影演算部及び前記投影機構との間で、情報の入出力が可能なユーザインタフェースを備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の投影システム。
【請求項8】
直交する2つの制御軸を有し、投影対象となる投影平面に対する投影を行う投影媒体の投影方向を制御する投影機構を、コンピュータが、前記制御軸を中心とした回転角を成分とする投影ベクトルにしたがって制御することにより、前記投影平面に対する投影を行わせる投影方法において、
前記コンピュータは、校正枠設定部、射影校正枠設定部、交点演算部、透視演算部、投影位置演算部及び投影ベクトル演算部を有し、
前記校正枠設定部が、前記投影平面における異なる4点を頂点とする校正枠を設定し、
前記射影校正枠設定部が、前記制御軸の交点を原点とする3次元直交座標系に対して所定の位置関係を有する仮想的な仮想投影平面に、前記校正枠の4点に前記中心射影変換に基づいて対応する点を頂点とする射影校正枠を設定し、
前記交点演算部が、2次元平面上での平行でない2直線の交点を求める交点関数を用いて、前記投影平面上の投影位置と前記校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記校正枠の対角線との交点若しくは前記投影位置に対応する仮想投影平面上の位置と前記射影校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記射影校正枠の対角線との交点を求め、
前記透視演算部が、直交しない2平面上で相互に対応する2直線上の任意の点の間の中心射影変換を行う透視関数を用いて、前記投影平面上の投影位置と前記校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記校正枠の対角線との交点と、前記投影位置に対応する仮想投影平面上の位置と前記射影校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記射影校正枠の対角線との交点とについて、いずれか一方から他方へ変換し、
前記投影位置演算部が、前記校正枠若しくは前記射影校正枠の頂点及び変換した前記交点に基づき、前記投影平面上の投影位置若しくは前記投影位置に対応する前記仮想投影平面上の位置を演算し、
前記投影ベクトル演算部が、演算した投影位置若しくはこれに対応する前記仮想投影平面上の位置に基づいて、前記投影ベクトルを演算する、
ことを特徴とする投影方法。
【請求項9】
直交する2つの制御軸を有し、投影対象となる投影平面に対する投影を行う投影媒体の投影方向を制御する投影機構を、コンピュータに、前記制御軸を中心とした回転角を成分とする投影ベクトルにしたがって制御させることにより、前記投影平面に対する投影を行わせる投影プログラムにおいて、
前記コンピュータに、
前記投影平面における異なる4点を頂点とする校正枠を設定する処理と、
前記制御軸の交点を原点とする3次元直交座標系に対して所定の位置関係を有する仮想的な仮想投影平面に、前記校正枠の4点に前記中心射影変換に基づいて対応する点を頂点とする射影校正枠を設定する処理と、
2次元平面上での平行でない2直線の交点を求める交点関数を用いて、前記投影平面上の投影位置と前記校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記校正枠の対角線との交点若しくは前記投影位置に対応する仮想投影平面上の位置と前記射影校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記射影校正枠の対角線との交点を求める処理と、
直交しない2平面上で相互に対応する2直線上の任意の点の間の中心射影変換を行う透視関数を用いて、前記投影平面上の投影位置と前記校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記校正枠の対角線との交点と、前記投影位置に対応する仮想投影平面上の位置と前記射影校正枠のいずれかの頂点を通る直線と前記射影校正枠の対角線との交点とについて、いずれか一方から他方へと変換する処理と、
前記校正枠若しくは前記射影校正枠の頂点及び変換した前記交点に基づき、前記投影平面上の投影位置若しくは前記投影位置に対応する前記仮想投影平面上の位置を演算する処理と、
演算した投影位置若しくはこれに対応する前記仮想投影平面上の位置に基づいて、前記投影ベクトルを演算する処理と、
を実行させることを特徴とする投影プログラム。
【請求項10】
直交する2つの制御軸を有し、前記投影媒体の投影方向を制御する投影機構を制御するために、前記制御軸を中心とした回転角を成分とする投影ベクトルを求める投影ベクトル演算装置において、
前記制御軸の交点を原点とする3次元直交座標系に対して所定の位置関係を有する仮想的な仮想投影平面と、前記投影平面との間において、前記原点を介した前記投影平面上の投影位置とこれに対応する前記仮想投影平面上の位置との中心射影変換により、前記投影ベクトルを演算する投影演算部を有することを特徴とする投影ベクトル演算装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−230925(P2010−230925A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77493(P2009−77493)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(390005223)株式会社タムラ製作所 (526)
【Fターム(参考)】
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