投影光学系
【課題】収差の発生を抑制できる投影光学系を提供する。
【解決手段】投影光学系は、第1面からの照射光を第2面に供給して、第1面の像を第2面に投影する。投影光学系は、照射光の光路に配置可能であり、照射光のうち、第1偏光成分の光と第2偏光成分の光との間で発生する位相差を低減する位相差補償部材E1と、光路に位相差補償部材E1が配置されるように位相差補償部材E1をリリース可能に保持する保持機構10とを備えている。
【解決手段】投影光学系は、第1面からの照射光を第2面に供給して、第1面の像を第2面に投影する。投影光学系は、照射光の光路に配置可能であり、照射光のうち、第1偏光成分の光と第2偏光成分の光との間で発生する位相差を低減する位相差補償部材E1と、光路に位相差補償部材E1が配置されるように位相差補償部材E1をリリース可能に保持する保持機構10とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影光学系、露光装置、及びデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、電子デバイス等のマイクロデバイスの製造工程において、露光光で基板を露光する露光装置が使用される。露光装置は、例えば下記特許文献に開示されているような投影光学系を備え、マスクからの露光光を投影光学系を介して基板に供給して、マスクのパターンの像を基板に投影する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0058421号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0122499号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
投影光学系において、収差が発生すると、例えば基板に形成されるパターンに欠陥が生じる等、露光不良が発生する可能性がある。その結果、不良デバイスが発生する可能性がある。
【0005】
本発明の態様は、収差の発生を抑制できる投影光学系を提供することを目的とする。また本発明の態様は、露光不良の発生を抑制できる露光装置を提供することを目的とする。また本発明の態様は、不良デバイスの発生を抑制できるデバイス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に従えば、第1面からの照射光を第2面に供給して、第1面の像を第2面に投影する投影光学系であって、照射光の光路に配置可能であり、照射光のうち、第1偏光成分の光と第2偏光成分の光との間で発生する位相差を低減する位相差補償部材と、光路に位相差補償部材が配置されるように位相差補償部材をリリース可能に保持する保持機構と、を備えた投影光学系が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様に従えば、第1面からの照射光を第2面に供給して、第1面の像を第2面に投影する投影光学系であって、照射光の光路に配置可能であり、照射光のうち、第1偏光成分の光と第2偏光成分の光との間で発生する位相差を低減する位相差補償部材と、光路に配置され、位相差補償部材と異なる複数の光学素子と、光学素子を保持する第1保持部材と、第1保持部材の一部に形成された開口を介して、光路内及び光路外の一方から他方へ位相差補償部材を移動して、位相差補償部材を交換する交換システムと、を備えた投影光学系が提供される。
【0008】
本発明の第3の態様に従えば、第1面からの照射光を第2面に供給して、第1面の像を第2面に投影する投影光学系であって、照射光の光路に配置可能であり、照射光のうち、第1偏光成分の光と第2偏光成分の光との間で発生する位相差を低減する位相差補償部材と、光路に配置され、位相差補償部材と異なる複数の光学素子と、光学素子を保持する第1保持部材と、位相差補償部材を保持する第2保持部材と、第1保持部材の少なくとも一部に配置され、光路に位相差補償部材が配置されるように第2保持部材をリリース可能に保持する保持機構と、を備えた投影光学系が提供される。
【0009】
本発明の第4の態様に従えば、第1〜第3のいずれか一つの態様の投影光学系を介して露光光で基板を露光する露光装置が提供される。
【0010】
本発明の第5の態様に従えば、投影光学系を介して露光光で基板を露光する露光装置であって、投影光学系において露光光の光路に配置可能であり、露光光のうち、第1偏光成分の光と第2偏光成分の光との間で発生する位相差を低減する位相差補償部材と、位相差補償部材を交換する交換システムと、を備えた露光装置が提供される。
【0011】
本発明の第6の態様に従えば、第5の態様の露光装置を用いて基板を露光することと、露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、収差の発生を抑制できる。また本発明によれば、露光不良の発生を抑制できる。また本発明によれば、不良デバイスの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る露光装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】第1実施形態に係る投影光学系の一部を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る位相差補償部材の一例を示す拡大断面図である。
【図4】位相差補償部材の光学特性の一例を示す図である。
【図5】第1実施形態に係る露光装置の動作の一例を示す図である。
【図6】第2実施形態に係る露光装置の動作の一例を示す図である。
【図7】第3実施形態に係る投影光学系の一部を示す図である。
【図8】第4実施形態に係る投影光学系の一部を示す図である。
【図9】第5実施形態に係る露光装置の一部を示す図である。
【図10】第6実施形態に係る投影光学系の一部を示す図である。
【図11】第6実施形態に係る投影光学系の一部を示す図である。
【図12】マイクロデバイスの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。水平面内の所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0015】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る露光装置EXの一例を示す概略構成図である。図1において、露光装置EXは、マスクMを保持して移動可能なマスクステージ1と、基板Pを保持して移動可能な基板ステージ2と、マスクステージ1に保持されているマスクMを露光光ELで照明する照明系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターンの像を基板ステージ2に保持されている基板Pに投影する投影光学系PLと、露光装置EX全体の動作を制御する制御装置3とを備えている。
【0016】
基板Pは、デバイスを製造するための基板である。基板Pは、例えばシリコンウエハのような半導体ウエハ等の基材に感光膜が形成されたものを含む。感光膜は、感光材(フォトレジスト)の膜である。
【0017】
マスクMは、基板Pに投影されるデバイスパターンが形成されたレチクルを含む。本実施形態において、マスクMは、例えばガラス板等の透明板にクロム等の遮光膜を用いて所定のパターンが形成された透過型マスクである。なお、マスクMが、反射型マスクでもよい。
【0018】
照明系ILは、所定の照明領域IRに露光光ELを照射する。照明領域IRは、照明系ILから射出される露光光ELが照射可能な位置を含む。照明系ILは、照明領域IRに配置されたマスクMの少なくとも一部を、均一な照度分布の露光光ELで照明する。照明系ILから射出される露光光ELとして、例えば水銀ランプから射出される輝線(g線、h線、i線)、及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、及びF2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)等が用いられる。本実施形態においては、露光光ELとして、紫外光(真空紫外光)であるArFエキシマレーザ光を用いる。
【0019】
本実施形態の照明系ILは、例えば米国特許出願公開第2006/0170901号明細書に開示されているような、ビームエキスパンダ、偏光状態切換光学系、回折光学素子、アフォーカル光学系(無焦点光学系)、ズーム光学系、偏光変換素子、オプティカルインテグレータ、及びコンデンサー光学系等を含む所定光学系と、例えば米国特許第6597002号明細書に開示されているような、マスクM上での露光光ELによる照明領域IRを規定する固定ブラインド、及び露光光ELによる基板Pの不要な露光を防止するための可動ブラインドを含むブラインド装置(マスキングシステム)とを備えている。
【0020】
また、本実施形態の照明系ILは、ダイポール照明用の二極照明絞り、及びクロスポール照明用の四極照明絞りを有する。制御装置3は、二極照明絞り及び四極照明絞りの少なくとも一方を露光光ELの光路に配置して、マスクMのライン・アンド・スペースパターンのラインパターンの長手方向に合わせた直線偏光照明を行うことができる。制御装置3は、マスクMのラインパターンに応じて、例えば二極照明絞りを露光光ELの光路に配置して、露光光ELのうち、S偏光成分(TE偏光成分)が主成分(例えばS偏光成分が90%以上)の露光光ELでマスクMをダイポール照明することができる。また、制御装置3は、マスクMのラインパターンに応じて、例えば二極照明絞りを露光光ELの光路に配置して、露光光ELのうち、P偏光成分(TM偏光成分)が主成分(例えばP偏光成分が90%以上)の露光光ELでマスクMをダイポール照明することができる。また、制御装置3は、マスクMのラインパターンに応じて、例えば四極照明絞りを露光光ELの光路に配置して、露光光ELのうち、S偏光成分(TE偏光成分)が主成分(例えばS偏光成分が90%以上)の露光光ELと、P偏光成分(TE偏光成分)が主成分(例えばP偏光成分が90%以上)の露光光ELとで、マスクMをクロスポール照明することができる。
【0021】
なお、照明系ILが、ランダム偏光光の露光光ELでマスクMを照明してもよい。
【0022】
マスクステージ1は、露光光ELの光路に対して可動である。マスクステージ1は、マスクMをリリース可能に保持するマスク保持部1Hを有する。本実施形態において、マスク保持部1Hは、マスクMのパターン形成面(表面)とXY平面とがほぼ平行となるように、マスクMを保持する。マスクステージ1は、第1定盤4のガイド面4G上を移動可能である。マスクステージ1は、ガイド面4G上において、照明領域IRにマスクMを保持して移動可能である。ガイド面4Gは、XY平面とほぼ平行である。マスクステージ1は、駆動システム5の作動により、ガイド面4G上で移動可能である。本実施形態において、駆動システム5は、ガイド面4G上でマスクステージ1を移動するための平面モータを含む。マスクステージ1を移動するための平面モータは、例えば米国特許第6452292号明細書に開示されているような、マスクステージ1に配置された可動子と、第1定盤4に配置された固定子とを有する。本実施形態においては、マスクステージ1は、平面モータを含む駆動システム5の作動により、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6つの方向に移動可能である。
【0023】
投影光学系PLは、所定の投影領域PRに露光光ELを照射する。投影領域PRは、投影光学系PLから射出される露光光ELが照射可能な位置を含む。投影光学系PLは、投影光学系PLの物体面からの露光光ELを、投影光学系PLの像面に供給して、物体面の像を像面に投影する。本実施形態においては、基板Pの露光時に、投影光学系PLの物体面に、マスクステージ1に保持されたマスクMのパターン形成面が配置され、投影光学系PLの像面に、基板ステージ2に保持された基板Pの露光面が配置される。投影光学系PLは、マスクMのパターン形成面からの露光光ELを基板Pの露光面に供給して、そのマスクMのパターンの像を、所定の投影倍率で基板Pに投影する。
【0024】
基板ステージ2は、露光光ELの光路に対して可動である。基板ステージ2は、基板Pをリリース可能に保持する基板保持部2Hを有する。本実施形態において、基板保持部2Hは、基板Pの露光面(表面)とXY平面とがほぼ平行となるように、基板Pを保持する。基板ステージ2は、第2定盤6のガイド面6G上を移動可能である。基板ステージ2は、ガイド面6G上において、投影領域PRに基板Pを保持して移動可能である。ガイド面6Gは、XY平面とほぼ平行である。基板ステージ2は、駆動システム7の作動により、ガイド面6G上で移動可能である。本実施形態において、駆動システム7は、ガイド面6G上で基板ステージ2を移動するための平面モータを含む。基板ステージ2を移動するための平面モータは、例えば米国特許第6452292号明細書に開示されているような、基板ステージ2に配置された可動子と、第2定盤6に配置された固定子とを有する。本実施形態においては、基板ステージ2は、平面モータを含む駆動システム7の作動により、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6つの方向に移動可能である。
【0025】
本実施形態においては、投影光学系PLとして、反射屈折光学系を適用する。本実施形態において、投影光学系PLを構成する反射屈折光学系の基準光軸AXは、Z軸と平行である。
【0026】
本実施形態の投影光学系PLは、第1結像光学系G1と、第2結像光学系G2と、第3結像光学系G3とを備えている。第1結像光学系G1は、屈折型であり、マスクMのパターンの第1中間像(1次像)を形成する。第2結像光学系G2は、マスクMのパターンの第2中間像(2次像)を形成する。本実施形態において、第2結像光学系G2は、第1中間像とほぼ等倍の第2中間像を形成する。第3結像光学系G3は、屈折型であり、第2中間像からの露光光ELに基づいて、マスクMのパターンの最終像を基板P上に形成する。第3結像光学系G3は、マスクMのパターンの縮小像を形成する。
【0027】
第1結像光学系G1は、光軸AX1を有し、第3結像光学系G3は、光軸AX3を有する。光軸AX1と光軸AX3とは、共通の単一光軸である基準光軸AXと一致する。基準光軸AXは、Z軸方向とほぼ平行である。マスクM及び基板Pは、Z軸方向と直交するXY平面(水平面)とほぼ平行である。第2結像光学系G2は、光軸AX2を有する。光軸AX2は、基準光軸AXと直交する。
【0028】
第1結像光学系G1は、複数の光学素子E1〜E7を備えている。本実施形態において、光学素子E1は、露光光ELの光路に配置可能であり、マスクMから投影光学系PLに供給された露光光ELのうち、第1偏光成分(例えばP偏光成分)の光と、第2偏光成分(例えばS偏光成分)の光との間で発生する位相差を低減する位相差補償部材である。光学素子E2〜E7は、露光光ELの光路に配置され、位相差補償部材E1と異なる複数のレンズである。以下の説明において、光学素子E1を適宜、位相差補償部材E1、と称し、光学素子E2〜E7を適宜、レンズE2〜E7、と称する。
【0029】
位相差補償部材E1は、レンズE2〜E7に対して、投影光学系PLの物体面(マスクMのパターン形成面)に最も近い位置に配置されている。換言すれば、位相差補償部材E1は、露光光ELの光路に配置される投影光学系PLの複数の光学素子のうち、投影光学系PLの物体面に最も近い位置に配置される。本実施形態において、位相差補償部材E1は、平行平板を含む。
【0030】
第2結像光学系G2は、露光光ELの光路に配置される複数の光学素子E8〜E10を備えている。本実施形態において、光学素子E8、E9は、露光光ELの光路に配置されるレンズである。光学素子E10は、露光光ELの光路に配置される凹面反射鏡である。以下の説明において、光学素子E8、E9を適宜、レンズE8、E9、と称し、光学素子E10を適宜、凹面反射鏡E10、と称する。
【0031】
第3結像光学系G3は、露光光ELの光路に配置される光学素子E12〜E15及び光学部材ASを備えている。本実施形態において、光学素子E12〜E15は、露光光ELの光路に配置されるレンズである。光学部材ASは、可変開口絞りである。以下の説明において、光学素子E12〜E15を適宜、レンズE12〜E15、と称し、光学部材ASを適宜、可変開口絞りAS、と称する。
【0032】
レンズE15は、レンズE12〜E14に対して、投影光学系PLの像面(基板Pの露光面)に最も近い位置に配置されている。換言すれば、レンズE15は、露光光ELの光路に配置される投影光学系PLの複数の光学素子のうち、投影光学系PLの像面に最も近い位置に配置される。
【0033】
また、投影光学系PLは、第1結像光学系G1と第2結像光学系G2との間の光路において第1中間像の形成位置の近傍に配置され、第1結像光学系G1からの光を第2結像光学系G2に偏向する第1反射面R1と、第2結像光学系G2と第3結像光学系G3との間の光路において第2中間像の形成位置の近傍に配置され、第2結像光学系G2からの光を第3結像光学系G3に偏向する第2反射面R2とを備えている。第1中間像は、第1反射面R1と第2結像光学系G2との間の光路に形成される。第2中間像は、第2結像光学系G2と第2反射面R2との間の光路に形成される。
【0034】
第1反射面R1及び第2反射面R2のそれぞれは平面である。本実施形態において、第1反射面R1と第2反射面R2とは、光学素子E11に配置されている。第1反射面R1と第2反射面R2との交線は、第1結像光学系G1のAX1、第2結像光学系G2のAX2、及び第3結像光学系G3のAX3と一点で交わる。
【0035】
また、投影光学系PLは、複数の光学素子E1〜E15及び光学部材ASを保持可能なハウジング(鏡筒)HGを備えている。本実施形態において、ハウジングHGは、複数のサブバレル(分割鏡筒)H1〜H15、及びサブバレルHSによって構成される。具体的には、ハウジングHGは、第1結像光学系G1の位相差補償部材E1、及びレンズE2〜E7のそれぞれを保持可能なサブバレルH1〜H7と、第2結像光学系G2のレンズE8、E9、及び凹面反射鏡E10を保持可能なサブバレルH8〜H10と、第3結像光学系G3のレンズE12〜E15、及び開口絞りASを保持可能なサブバレルH12〜H15、及びサブバレルHSとを含む。
【0036】
本実施形態において、光学素子E2〜E7、E12〜E15は、セルによって保持されており、サブバレルH2〜H7、H12〜H15は、フレームF2〜F7、F12〜F15を介して、光学素子E2〜E7、E12〜E15を保持するセルと接続される。また、光学素子E8〜E10は、セルによって保持されており、サブバレルH8〜H10は、光学素子E8〜E10を保持するセルと接続される。また、サブバレルHSは、可変開口絞りASの少なくとも一部と接続される。
【0037】
図2は、位相差補償部材E1の近傍を示す拡大図である。図2において、投影光学系PLは、露光光ELの光路に位相差補償部材E1が配置されるように、その位相差補償部材E1をリリース可能に保持する保持機構10を備えている。本実施形態において、保持機構10は、サブバレルH1と、位相差補償部材E1をリリース可能に保持する保持部材11と、サブバレルH1と保持部材11とを接続するフレームF1とを有する。
【0038】
本実施形態において、保持部材11は、位相差補償部材E1の下面の周縁領域を保持する保持面11Hを有する。位相差補償部材E1の下面の周縁領域は、保持面11Hと接触可能である。本実施形態において、保持面11Hに、気体を吸引可能な吸引口12が配置されている。吸引口12は、真空システム(不図示)と接続されている。位相差補償部材E1の下面の周縁領域と保持面11Hとが接触した状態で、真空システムが作動することによって、位相差補償部材E1の下面が保持面11Hに吸着保持される。また、真空システムの作動を停止することによって、保持面11Hから位相差補償部材E1を外すことができる。このように、本実施形態においては、保持機構10は、所謂、真空吸着機構を含み、位相差補償部材E1をリリース可能に保持できる。
【0039】
位相差補償部材E1は、保持機構10に保持されることによって、投影光学系PLの複数の光学素子E1〜E15のうち、投影光学系PLの物体面に最も近い位置に配置される。
【0040】
なお、保持部材11が、位相差補償部材E1の周縁領域を挟むことによって、その位相差補償部材E1を保持するクランプ機構を有してもよい。また、保持機構10が、所謂、静電チャック機構を有してもよい。
【0041】
また、本実施形態においては、サブバレルH2は、サブバレルH1をリリース可能に保持する保持機構20を有している。保持機構20は、サブバレルH2の少なくとも一部に配置されている。保持機構20は、露光光ELの光路に位相差補償部材E1が配置されるように、サブバレルH1をリリース可能に保持する。
【0042】
本実施形態において、保持機構20は、投影光学系PLの物体面(マスクステージ1に保持されたマスクMのパターン形成面)と面することができるサブバレルH2の上端(+Z側の端)に配置されている。
【0043】
本実施形態において、保持機構20は、サブバレルH1の下面を保持する保持面20Hを有する。本実施形態において、保持面20Hは、サブバレルH1の下面と対向可能なサブバレルH2の上面を含む。サブバレルH1の下面は、保持面20Hと接触可能である。本実施形態において、保持面20Hに、気体を吸引可能な吸引口22が配置されている。吸引口22は、真空システム(不図示)と接続されている。サブバレルH1の下面と保持面20Hとが接触した状態で、真空システムが作動することによって、サブバレルH1の下面が保持面20Hに吸着保持される。また、真空システムの作動を停止することによって、保持面20HからサブバレルH1を外すことができる。このように、本実施形態においては、保持機構20は、所謂、真空吸着機構を含み、サブバレルH1をリリース可能に保持できる。
【0044】
なお、保持機構20が、所謂、静電チャック機構を有してもよい。また、サブバレルH1とサブバレルH2とが、例えばボルト部材等を含む締結部材を介してリリース可能に接続されてもよい。
【0045】
保持機構10に保持される位相差補償部材E1は、サブバレルH1が保持機構20に保持されることによって、サブバレルH2〜H15に保持される光学素子E2〜E15に対して、投影光学系PLの物体面に最も近い位置に配置される。
【0046】
図3は、本実施形態に係る位相差補償部材E1の一例を示す拡大断面図である。図3に示すように、本実施形態においては、位相差補償部材E1は、露光光ELを透過可能な光透過部材30と、光透過部材30上に形成され、露光光ELのうち、第1偏光成分の光と第2偏光成分の光とが投影光学系PLを通過する際に、それら第1偏光成分の光と第2偏光成分の光との間で発生する位相差を低減する多層膜33とを有する。
【0047】
本実施形態において、光透過部材30は、平行平板である。本実施形態において、光透過部材30は、石英ガラスで形成されている。なお、光透過部材30が、蛍石で形成されてもよい。
【0048】
なお、本実施形態において、位相差補償部材E1以外の他の光学素子E2〜E15の少なくとも一つは、石英ガラスで形成される。なお、光学素子E2〜E15の少なくとも一つが、蛍石で形成されてもよい。また、光学素子E2〜E15の少なくとも一つが、例えばフッ化バリウム(BaF2)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、及びフッ化ストロンチウム(SrF2)等で形成されてもよい。
【0049】
多層膜33は、光透過部材30上に交互に積層された第1膜31及び第2膜32を含む。第1膜31は、露光光ELに対する屈折率と真空の屈折率との差が大きい物質で形成されている。第2膜32は、露光光ELに対する屈折率と真空の屈折率との差が小さい物質で形成されている。換言すれば、露光光ELに対する屈折率は、第1膜31のほうが、第2膜32より大きい。
【0050】
本実施形態において、第1膜31は、酸化アルミニウム(Al2O3)であり、第2膜32は、二酸化珪素(SiO2)である。なお、第1膜31が、例えば酸化アルミニウム(Al2O3)、フッ化ランタン(LaF3)、及びフッ化ガドリニウム(GdF3)からなる群から選択される1種類の材料で形成されてもよいし、2種類以上の組み合わせからなる材料で形成されてもよい。また、第2膜32が、二酸化珪素(SiO2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、及びフッ化アルミニウム(AlF3)からなる群から選択される1種類の材料で形成されてもよいし、2種類以上の組み合わせからなる材料で形成されてもよい。
【0051】
本実施形態において、多層膜33のうち、光透過部材30に最も近い膜は、第1膜31である。なお、光透過部材30に最も近い膜が、第2膜32でもよい。本実施形態において、多層膜33のうち、光透過部材30から最も遠い膜は、第2膜32である。
【0052】
本実施形態において、多層膜33は、投影光学系PLの物体面と面することができる光透過部材30の上面と、その上面の反対側の下面のそれぞれに配置されている。なお、多層膜33が光透過部材30の上面のみに配置されてもよいし、下面のみに配置されてもよい。
【0053】
本実施形態においては、投影光学系PLを構成する光学素子E1〜E15が有する複屈折によって生じる偏光収差(所定方向に振動する第1偏光成分の光と、所定方向と異なる方向に振動する第2偏光成分の光との位相差)が、多層膜33によって補償される。
【0054】
本実施形態においては、光学素子E1〜E15が有する固有複屈折及び応力複屈折の少なくとも一方によって生じる位相差が、多層膜33によって補償される。ここで、固有複屈折は、結晶性材料のような結晶の異方性に起因する複屈折であり、応力複屈折は、歪みのような応力が作用した場合に生じる複屈折である。
【0055】
図4は、本実施形態に係る多層膜33の位相差と入射角特性との関係を示す。図4において、縦軸は、多層膜33を透過した後の第1偏光成分(P偏光成分)の光と第2偏光成分(S偏光成分)の光との位相差であり、横軸は、多層膜33に対する露光光ELの入射角である。
【0056】
図4に示すように、多層膜33に対する露光光ELの入射角に応じて、P偏光成分の光とS偏光成分の光との位相差が変化する。また、図4に示すように、多層膜33を含む位相差補償部材E1の構造を調整することによって、光学特性を変化させ、入射角に応じた位相差の変化量を調整することができる。また、多層膜33を含む位相差補償部材E1の構造を調整することによって、P偏光成分の光の位相をS偏光成分の光の位相に対して進ませることができるし、S偏光成分の光の位相をP偏光成分の光の位相に対して進ませることもできる。多層膜33を含む位相差補償部材E1の構造は、例えば第1膜31の厚み、第2膜32の厚み、多層膜33全体の厚み、第1膜31と第2膜32との積層数、第1膜31を形成する材料の種類、第2膜32を形成する材料の種類、光透過部材30の厚み、及び光透過部材30を形成する材料の種類の少なくとも一つを含む。
【0057】
図4には、一例として、第1の構造(光学特性)を有する位相差補償部材E1の位相差と入射角特性との関係、第2の構造(光学特性)を有する位相差補償部材E1の位相差と入射角特性との関係、及び第3の構造(光学特性)を有する位相差補償部材E1の位相差と入射角特性との関係が示されている。
【0058】
本実施形態においては、投影光学系PLを構成する光学素子E1〜E15が有する複屈折によって生じる偏光収差(第1偏光成分の光と第2偏光成分の光との位相差)が低減されるように、すなわち、投影光学系PL全体の偏光収差が低減されるように、最適な構造を有する位相差補償部材E1が、露光光ELの光路に配置される。位相差補償部材E1が露光光ELの光路に配置されることによって、投影光学系PLの総合的な偏光収差が低減される。
【0059】
なお、投影光学系PLの偏光収差(第1偏光成分の光と第2偏光成分の光との位相差)を補償するための位相差補償部材E1の最適な構造は、例えば予備実験、あるいはシミュレーションによって決定することができる。
【0060】
次に、上述の構成を有する露光装置EXの動作の一例について説明する。
【0061】
露光光ELのうち、第1偏光成分の光と第2偏光成分の光との位相差に基づく投影光学系PLの偏光収差を補償するために、最適な構造(光学特性)を有する位相差補償部材E1が、保持機構10に保持される。上述のように、投影光学系PLの偏光収差を低減するための位相差補償部材E1の最適な構造(光学特性)は、予備実験、あるいはシミュレーションによって予め求めることができ、その求めた結果に応じて、最適な構造(光学特性)の位相差補償部材E1が製造され、保持機構10に保持される。
【0062】
制御装置3は、搬送システム(不図示)を用いて、マスクMをマスクステージ1に搬送し、基板Pを基板ステージ2に搬送する。マスクMがマスクステージ1に保持され、基板Pが基板ステージ2に保持されると、制御装置3は、基板Pの露光を開始する。
【0063】
本実施形態の露光装置EXは、マスクMと基板Pとを所定の走査方向に同期移動しつつ、マスクMからの露光光ELで基板Pを露光する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)である。本実施形態においては、基板Pの走査方向(同期移動方向)をY軸方向とし、マスクMの走査方向(同期移動方向)もY軸方向とする。露光装置EXは、基板Pを投影光学系PLの投影領域PRに対してY軸方向に移動するとともに、その基板PのY軸方向への移動と同期して、照明系ILの照明領域IRに対してマスクMをY軸方向に移動しつつ、マスクMを露光光ELで照明し、そのマスクMからの露光光ELを、投影光学系PLを介して基板Pに照射する。これにより、マスクM及び投影光学系PLを介して基板Pが露光され、基板PにマスクMのパターンの像が投影される。
【0064】
本実施形態においては、位相差補償部材E1によって、収差が低減された投影光学系PLを用いて基板Pを露光するので、露光不良の発生を抑制しつつ、基板Pを良好に露光することができる。
【0065】
ところで、例えば、位相差補償部材E1の表面が劣化したり、位相差補償部材E1の光学特性が変化したりする可能性がある。そのような位相差補償部材E1を使用し続けると、投影光学系PLの収差を十分に補償できず、例えば基板Pに形成されるパターンに欠陥が生じる等、露光不良が発生する可能性がある。
【0066】
また、例えば投影光学系PLの光学特性が経時的に変化することも考えられる。その場合、所定の構造(光学特性)を有する位相差補償部材E1を使用したのでは、その光学特性が変化した投影光学系PLの収差を十分に低減することが困難となる可能性がある。その結果、例えば基板Pに形成されるパターンに欠陥が生じる等、露光不良が発生する可能性がある。
【0067】
そこで、本実施形態においては、所定のタイミングで、位相差補償部材E1の交換処理が実行される。
【0068】
図5は、位相差補償部材E1を交換している状態の一例を示す図である。本実施形態において、露光装置EXは、位相差補償部材E1を搬送可能な搬送装置40を備えている。搬送装置40は、保持機構10から位相差補償部材E1を搬出する動作、及び位相差補償部材E1を保持機構10に搬入する動作の少なくとも一方を含む交換処理を実行可能である。
【0069】
位相差補償部材E1を交換するために、保持機構10から位相差補償部材E1を搬出するとき、制御装置3は、保持機構10の吸着保持動作を解除して、保持機構10から位相差補償部材E1をリリースする。制御装置3は、保持機構10からリリースされた位相差補償部材E1を、搬送装置40を用いて、保持機構10から搬出する。
【0070】
制御装置3は、搬送装置40を用いて、新たな位相差補償部材E1を、保持機構10に搬送する。新たな位相差補償部材E1は、投影光学系PLの収差を低減するために、その投影光学系PLに対して最適な構造(光学特性)を有する。
【0071】
制御装置3は、搬送装置40によって保持機構10に搬送された新たな位相差補償部材E1と保持面11Hとを接触させ、吸引口12を用いる吸引動作を開始する。これにより、新たな位相差補償部材E1が、保持機構10に保持される。以上により、位相差補償部材E1の交換処理が終了する。新たな位相差補償部材E1に交換した後、投影光学系PLを介して基板Pを露光することによって、基板Pを良好に露光することができる。
【0072】
なお、本実施形態においては、搬送装置40を用いて、保持機構10から位相差補償部材E1を搬出する動作、及び保持機構10に位相差補償部材E1を搬入する動作を実行する場合を例にして説明したが、搬送装置40を用いずに、例えば作業者が位相差補償部材E1を搬送してもよい。
【0073】
以上説明したように、本実施形態によれば、位相差補償部材E1を容易に交換することができる。したがって、最適な構造(光学特性)を有する位相差補償部材E1を用いて、投影光学系PLの収差を十分に低減できる。したがって、その収差が十分に低減された投影光学系PLを用いて、基板Pを良好に露光することができる。
【0074】
本実施形態においては、位相差補償部材E1は、投影光学系PLの複数の光学素子E1〜E15のうち、投影光学系PLの物体面に最も近い位置に配置される。したがって、他の光学素子E2〜E15に与える影響を抑えつつ、位相差補償部材E1の交換処理を円滑に実行することができる。
【0075】
また、本実施形態においては、位相差補償部材E1は、平行平板を含む。したがって、例えば交換前における位相差補償部材E1の位置に対して、交換後における位相差補償部材E1の位置が僅かにずれた場合でも、交換前と交換後とにおける位相差補償部材E1の光学特性の変化量を最小限に抑えることができる。これにより、例えば交換前に対する交換後の光学特性の変化を抑制しつつ、交換後における位相差補償部材E1の位置調整を円滑に実行することができる。
【0076】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0077】
図6は、第2実施形態に係る位相差補償部材E1を交換している状態の一例を示す図である。本実施形態において、露光装置EXは、サブバレルH1を搬送可能な搬送装置42を備えている。搬送装置42は、保持機構20からサブバレルH1を搬出する動作、及びサブバレルH1を保持機構20に搬入する動作の少なくとも一方を含む交換処理を実行可能である。本実施形態においては、制御装置3は、搬送装置42を用いてサブバレルH1を搬送して、位相差補償部材E1をサブバレルH1と一緒に交換する。
【0078】
位相差補償部材E1を交換するために、保持機構20からサブバレルH1を搬出するとき、制御装置3は、保持機構20の吸着保持動作を解除して、保持機構20から、位相差補償部材E1を保持したサブバレルH1をリリースする。制御装置3は、保持機構20からリリースされたサブバレルH1を、搬送装置42を用いて、保持機構20から搬出する。
【0079】
制御装置3は、搬送装置42を用いて、新たな位相差補償部材E1を保持したサブバレルH1を、保持機構20に搬送する。新たな位相差補償部材E1は、投影光学系PLの収差を低減するために、その投影光学系PLに対して最適な構造(光学特性)を有する。
【0080】
制御装置3は、搬送装置42によって保持機構20に搬送されたサブバレルH1と保持面20Hとを接触させ、吸引口22を用いる吸引動作を開始する。これにより、新たな位相差補償部材E1を保持したサブバレルH1が、保持機構20に保持される。以上により、位相差補償部材E1の交換処理が終了する。新たな位相差補償部材E1に交換した後、投影光学系PLを介して基板Pを露光することによって、基板Pを良好に露光することができる。
【0081】
なお、本実施形態においては、搬送装置42を用いて、保持機構20からサブバレルH1を搬出する動作、及び保持機構20にサブバレルH1を搬入する動作を実行する場合を例にして説明したが、搬送装置42を用いずに、例えば作業者がサブバレルH1を搬送してもよい。
【0082】
以上説明したように、本実施形態においても、他の光学素子E2〜E15に与える影響を抑えつつ、位相差補償部材E1を容易に交換することができる。したがって、最適な構造(光学特性)を有する位相差補償部材E1を用いて、投影光学系PLの収差を十分に低減できる。したがって、その収差が十分に低減された投影光学系PLを用いて、基板Pを良好に露光することができる。
【0083】
なお、本実施形態においては、ハウジングHGが、各光学素子E1〜E15のそれぞれを保持可能なサブバレルH1〜H15を有する場合を例にして説明したが、例えば位相差補償部材E1以外の光学素子E2〜E15を保持するサブバレルH2〜E15を一体として、ハウジングHGが、光学素子E2〜E15を保持するサブバレルと、位相差補償部材E1を保持するサブバレルH1とによって構成されてもよい。その場合においても、投影光学系PLの物体面と面することができる、光学素子E2〜E15を保持するサブバレルの上端に、サブバレルH1をリリース可能に保持できる保持機構20を設けることによって、位相差補償部材E1を、サブバレルH1と一緒に交換することができる。
【0084】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0085】
図7は、第3実施形態に係る投影光学系PLbの一部を示す図である。図7に示すように、本実施形態の投影光学系PLbは、露光光ELの光路に沿って配置される複数の位相差補償部材E1を有する。図7には、一例として、位相差補償部材E1が、露光光ELの光路に沿って3つ配置されている例を示す。
【0086】
例えば、投影光学系PLbの収差を低減するために、多層膜33を透過した後の第1偏光成分(P偏光成分)の光と第2偏光成分(S偏光成分)の光との位相差を大きくしたい場合、露光光ELの光路に配置される多層膜33の厚みを大きくしなければならない可能性がある。1つの光透過部材30上に、厚みが大きい多層膜33を形成すると、例えばその多層膜33にクラック等の欠陥が発生しやすくなる等、不具合が発生する可能性が高くなる。
【0087】
そこで、光透過部材30を複数設け、それら複数の光透過部材30のそれぞれに多層膜33を形成することによって、投影光学系PLの収差を低減するために露光光ELの光路に配置すべき多層膜33の厚みを確保しつつ、1つの光透過部材30に形成される多層膜33の厚みが大きくなることを抑制することができる。したがって、例えば多層膜33にクラック等が発生することを抑制しつつ、複数の位相差補償部材E1を用いて、投影光学系PLの収差を低減することができる。
【0088】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0089】
図8は、第4実施形態に係る投影光学系PLcの一例を示す図である。図8に示すように、投影光学系PLcは、位相差補償部材E15cを備えている。本実施形態においては、第3結像光学系G3が、位相差補償部材E15cを有する。位相差補償部材E15cは、光学素子E12〜E14に対して、投影光学系PLcの像面(基板Pの露光面)に最も近い位置に配置される。
【0090】
投影光学系PLcは、露光光ELの光路に位相差補償部材E15cが配置されるように、その位相差補償部材E15cをリリース可能に保持する保持機構50を備えている。本実施形態において、保持機構50は、サブバレルH15と、位相差補償部材E15cをリリース可能に保持する保持部材51と、サブバレルH15と保持部材51とを接続するフレームF15とを有する。
【0091】
本実施形態において、保持部材51は、位相差補償部材E15cの上面の周縁領域を保持する保持面51Hを有する。位相差補償部材E15cの上面の周縁領域は、保持面51Hと接触可能である。本実施形態において、保持面51Hに、気体を吸引可能な吸引口52が配置されている。吸引口52は、真空システム(不図示)と接続されている。位相差補償部材E15cの上面の周縁領域と保持面51Hとが接触した状態で、真空システムが作動することによって、位相差補償部材E15cの上面が保持面51Hに吸着保持される。また、真空システムの作動を停止することによって、保持面51Hから位相差補償部材E15cを外すことができる。このように、本実施形態においては、保持機構50は、所謂、真空吸着機構を含み、位相差補償部材E15cをリリース可能に保持できる。
【0092】
本実施形態においては、位相差補償部材E15cが、投影光学系PLの複数の光学素子のうち、投影光学系PLの像面に最も近い位置に配置される。したがって、位相差補償部材E15cの交換処理を円滑に実行することができる。
【0093】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0094】
図9は、第5実施形態に係る露光装置EXの一例を示す図である。図9において、投影光学系PLdは、露光光ELの光路に配置可能な位相差補償部材E1と、露光光ELの光路に配置され、位相差補償部材E1と異なる複数の光学素子E2〜E15と、光学素子E1〜E15を保持するハウジングHGdと、ハウジングHGdの一部に形成された開口55を介して、露光光ELの光路内及び光路外の一方から他方へ位相差補償部材E1を移動して、その位相差補償部材E1を交換する交換システム60とを備えている。なお、図9には、光学素子E1〜E15の図示が省略されている。
【0095】
本実施形態において、位相差補償部材E1は、保持部材56によって保持される。交換システム60は、保持部材56を移動して、位相差補償部材E1を交換する。本実施形態において、位相差補償部材E1を保持した保持部材56は、開口55を通過可能である。交換システム60は、開口55を介して、露光光ELの光路内及び光路外の一方から他方へ保持部材56を移動して、その位相差補償部材E1を交換する。
【0096】
交換システム60は、保持部材56を移動可能な搬送装置61を備えている。交換システム60は、搬送装置61を用いて、開口55を介して露光光ELの光路内及び光路外の一方から他方へ位相差補償部材E1を保持した保持部材56を移動して、位相差補償部材E1を移動する。
【0097】
本実施形態において、保持部材56は、プレート状の部材である。開口55は、保持部材の外形とほぼ相似であり、開口55の内面と保持部材56の外面とは良好に接触可能である。開口55の内面と保持部材56の外面との間には、ハウジングHGdの内部と外部との気体の出入りを抑制するシールが形成される。
【0098】
搬送装置61は、保持部材56の一端(−Y側の端)を保持して、保持部材56を移動する。保持部材56の他端(+Y側の端)は、ハウジングHGdの内面の少なくとも一部と接触することによって、ハウジングHGd(露光光ELの光路)に対して位置決めされる。
【0099】
なお、ハウジングの一部に形成された開口を介して投影光学系の光学素子を交換する交換システムの一例が、例えば米国特許出願公開第2007/0177122号明細書に開示されている。本実施形態において、位相差補償部材E1を交換するために、米国特許出願公開第2007/0177122号明細書に開示されている交換システムを用いることができる。
【0100】
なお、上述の第1〜第5実施形態においては、位相差補償部材E1の光透過部材30が平行平板である場合を例にして説明したが、屈折力を有する光学素子(レンズ)でもよい。
【0101】
<第6実施形態>
次に、第6実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0102】
図10は、第6実施形態に係る投影光学系PLeの一例を示す図である。図10において、投影光学系PLeは、物体面Oの像を像面Bに投影する。図10に示す投影光学系PLeは、特開2008−181125号公報の図3に開示されているような投影光学系であって、第1補正素子K1及び第2補正素子K2を備えている。第1補正素子K1は、投影光学系PLdの光学的に第1瞳面p1の近傍に配置されている。第2補正素子L2は、第1瞳面p1と第1中間像z1との間に配置されている。
【0103】
本実施形態においては、第1補正素子K1及び第2補正素子K2の少なくとも一方が、上述の各実施形態で説明したような位相差補償部材E1である。
【0104】
また、図10に示す投影光学系PLeがハウジングに収容される場合、例えば米国特許出願公開第2007/0177122号明細書に開示されているように、ハウジングの一部に開口を設け、交換システムを用いて、ハウジングに設けられた開口を介して、第1,第2補正素子(位相差補償部材)K1,K2を交換することができる。
【0105】
図11は、第6実施形態に係る投影光学系PLfの一例を示す図である。図11において、投影光学系PLfは、物体面Oの像を像面Bに投影する。図11に示す投影光学系PLfは、特開2008−181125号公報の図7に開示されているような投影光学系であって、第1補正素子K1、第2補正素子K2、及び第3補正素子K3を備えている。第1補正素子K1は、投影光学系PLfの光学的に第1瞳面p1の近傍に配置されている。第2補正素子L2は、第1瞳面p1と物体面Oとの間に配置されている。第3補正素子K3は、投影光学系PLfの光学的に第3瞳面p3の近傍に配置されている。
【0106】
本実施形態においては、第1補正素子K1、第2補正素子K2、及び第3補正素子K3の少なくとも一つが、上述の各実施形態で説明したような位相差補償部材E1である。
【0107】
また、図11に示す投影光学系PLfがハウジングに収容されている場合、例えば米国特許出願公開第2007/0177122号明細書に開示されているように、ハウジングの一部に開口を設け、交換システムを用いて、ハウジングに設けられた開口を介して、第1,第2,第3補正素子(位相差補償部材)K1,K2,K3を交換することができる。
【0108】
なお、上述の第1〜第6実施形態における基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
【0109】
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。
【0110】
さらに、ステップ・アンド・リピート方式の露光において、第1パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第1パターンの縮小像を基板P上に転写した後、第2パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第2パターンの縮小像を第1パターンと部分的に重ねて基板P上に一括露光してもよい(スティッチ方式の一括露光装置)。また、スティッチ方式の露光装置としては、基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写し、基板Pを順次移動させるステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
【0111】
また、例えば米国特許第第6611316号明細書に開示されているように、2つのマスクのパターンを、投影光学系を介して基板上で合成し、1回の走査露光によって基板上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置などにも本発明を適用することができる。また、プロキシミティ方式の露光装置、ミラープロジェクション・アライナーなどにも本発明を適用することができる。
【0112】
また、露光装置EXとして、米国特許第6341007号明細書、米国特許第6400441号明細書、米国特許第6549269号明細書、米国特許第6590634号明細書、米国特許第6208407号明細書、及び米国特許第6262796号明細書等に開示されているような、複数の基板ステージを備えたツインステージ型の露光装置にも適用できる。
【0113】
更に、米国特許第6897963号明細書、欧州特許出願公開第1713113号明細書等に開示されているような、基板を保持する基板ステージと、基準マークが形成された基準部材及び/又は各種の光電センサを搭載した計測ステージとを備えた露光装置にも本発明を適用することができる。また、複数の基板ステージと計測ステージとを備えた露光装置を採用することができる。
【0114】
また、例えば国際公開第99/49504号パンフレット等に開示されているような、液体を介して露光光で基板を露光する液浸露光装置に適用することもできる。
【0115】
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)、マイクロマシン、MEMS、DNAチップ、あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
【0116】
なお、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスクを用いたが、このマスクに代えて、例えば米国特許第6778257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する可変成形マスク(電子マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれる)を用いてもよい。また、非発光型画像表示素子を備える可変成形マスクに代えて、自発光型画像表示素子を含むパターン形成装置を備えるようにしても良い。
【0117】
上述の実施形態の露光装置は、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0118】
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図12に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、上述の実施形態に従って、マスクからの露光光で基板を露光すること、及び露光された基板を現像することを含む基板処理(露光処理)を含む基板処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
【0119】
なお、上述の各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、上述の各実施形態及び変形例で引用した露光装置などに関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【符号の説明】
【0120】
10…保持機構、20…保持機構、40…搬送装置、42…搬送装置、55…開口、56…保持部材、60…交換システム、61…搬送装置、E1…位相差補償部材、E2〜E15…光学素子、EL…露光光、H1…サブバレル、H2〜H15…サブバレル、HG…ハウジング、M…マスク、P…基板、PL…投影光学系
【技術分野】
【0001】
本発明は、投影光学系、露光装置、及びデバイス製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、電子デバイス等のマイクロデバイスの製造工程において、露光光で基板を露光する露光装置が使用される。露光装置は、例えば下記特許文献に開示されているような投影光学系を備え、マスクからの露光光を投影光学系を介して基板に供給して、マスクのパターンの像を基板に投影する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0058421号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0122499号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
投影光学系において、収差が発生すると、例えば基板に形成されるパターンに欠陥が生じる等、露光不良が発生する可能性がある。その結果、不良デバイスが発生する可能性がある。
【0005】
本発明の態様は、収差の発生を抑制できる投影光学系を提供することを目的とする。また本発明の態様は、露光不良の発生を抑制できる露光装置を提供することを目的とする。また本発明の態様は、不良デバイスの発生を抑制できるデバイス製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に従えば、第1面からの照射光を第2面に供給して、第1面の像を第2面に投影する投影光学系であって、照射光の光路に配置可能であり、照射光のうち、第1偏光成分の光と第2偏光成分の光との間で発生する位相差を低減する位相差補償部材と、光路に位相差補償部材が配置されるように位相差補償部材をリリース可能に保持する保持機構と、を備えた投影光学系が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様に従えば、第1面からの照射光を第2面に供給して、第1面の像を第2面に投影する投影光学系であって、照射光の光路に配置可能であり、照射光のうち、第1偏光成分の光と第2偏光成分の光との間で発生する位相差を低減する位相差補償部材と、光路に配置され、位相差補償部材と異なる複数の光学素子と、光学素子を保持する第1保持部材と、第1保持部材の一部に形成された開口を介して、光路内及び光路外の一方から他方へ位相差補償部材を移動して、位相差補償部材を交換する交換システムと、を備えた投影光学系が提供される。
【0008】
本発明の第3の態様に従えば、第1面からの照射光を第2面に供給して、第1面の像を第2面に投影する投影光学系であって、照射光の光路に配置可能であり、照射光のうち、第1偏光成分の光と第2偏光成分の光との間で発生する位相差を低減する位相差補償部材と、光路に配置され、位相差補償部材と異なる複数の光学素子と、光学素子を保持する第1保持部材と、位相差補償部材を保持する第2保持部材と、第1保持部材の少なくとも一部に配置され、光路に位相差補償部材が配置されるように第2保持部材をリリース可能に保持する保持機構と、を備えた投影光学系が提供される。
【0009】
本発明の第4の態様に従えば、第1〜第3のいずれか一つの態様の投影光学系を介して露光光で基板を露光する露光装置が提供される。
【0010】
本発明の第5の態様に従えば、投影光学系を介して露光光で基板を露光する露光装置であって、投影光学系において露光光の光路に配置可能であり、露光光のうち、第1偏光成分の光と第2偏光成分の光との間で発生する位相差を低減する位相差補償部材と、位相差補償部材を交換する交換システムと、を備えた露光装置が提供される。
【0011】
本発明の第6の態様に従えば、第5の態様の露光装置を用いて基板を露光することと、露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、収差の発生を抑制できる。また本発明によれば、露光不良の発生を抑制できる。また本発明によれば、不良デバイスの発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態に係る露光装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】第1実施形態に係る投影光学系の一部を示す図である。
【図3】第1実施形態に係る位相差補償部材の一例を示す拡大断面図である。
【図4】位相差補償部材の光学特性の一例を示す図である。
【図5】第1実施形態に係る露光装置の動作の一例を示す図である。
【図6】第2実施形態に係る露光装置の動作の一例を示す図である。
【図7】第3実施形態に係る投影光学系の一部を示す図である。
【図8】第4実施形態に係る投影光学系の一部を示す図である。
【図9】第5実施形態に係る露光装置の一部を示す図である。
【図10】第6実施形態に係る投影光学系の一部を示す図である。
【図11】第6実施形態に係る投影光学系の一部を示す図である。
【図12】マイクロデバイスの製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明するが、本発明はこれに限定されない。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。水平面内の所定方向をX軸方向、水平面内においてX軸方向と直交する方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ軸方向とする。また、X軸、Y軸、及びZ軸まわりの回転(傾斜)方向をそれぞれ、θX、θY、及びθZ方向とする。
【0015】
<第1実施形態>
第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態に係る露光装置EXの一例を示す概略構成図である。図1において、露光装置EXは、マスクMを保持して移動可能なマスクステージ1と、基板Pを保持して移動可能な基板ステージ2と、マスクステージ1に保持されているマスクMを露光光ELで照明する照明系ILと、露光光ELで照明されたマスクMのパターンの像を基板ステージ2に保持されている基板Pに投影する投影光学系PLと、露光装置EX全体の動作を制御する制御装置3とを備えている。
【0016】
基板Pは、デバイスを製造するための基板である。基板Pは、例えばシリコンウエハのような半導体ウエハ等の基材に感光膜が形成されたものを含む。感光膜は、感光材(フォトレジスト)の膜である。
【0017】
マスクMは、基板Pに投影されるデバイスパターンが形成されたレチクルを含む。本実施形態において、マスクMは、例えばガラス板等の透明板にクロム等の遮光膜を用いて所定のパターンが形成された透過型マスクである。なお、マスクMが、反射型マスクでもよい。
【0018】
照明系ILは、所定の照明領域IRに露光光ELを照射する。照明領域IRは、照明系ILから射出される露光光ELが照射可能な位置を含む。照明系ILは、照明領域IRに配置されたマスクMの少なくとも一部を、均一な照度分布の露光光ELで照明する。照明系ILから射出される露光光ELとして、例えば水銀ランプから射出される輝線(g線、h線、i線)、及びKrFエキシマレーザ光(波長248nm)等の遠紫外光(DUV光)、ArFエキシマレーザ光(波長193nm)、及びF2レーザ光(波長157nm)等の真空紫外光(VUV光)等が用いられる。本実施形態においては、露光光ELとして、紫外光(真空紫外光)であるArFエキシマレーザ光を用いる。
【0019】
本実施形態の照明系ILは、例えば米国特許出願公開第2006/0170901号明細書に開示されているような、ビームエキスパンダ、偏光状態切換光学系、回折光学素子、アフォーカル光学系(無焦点光学系)、ズーム光学系、偏光変換素子、オプティカルインテグレータ、及びコンデンサー光学系等を含む所定光学系と、例えば米国特許第6597002号明細書に開示されているような、マスクM上での露光光ELによる照明領域IRを規定する固定ブラインド、及び露光光ELによる基板Pの不要な露光を防止するための可動ブラインドを含むブラインド装置(マスキングシステム)とを備えている。
【0020】
また、本実施形態の照明系ILは、ダイポール照明用の二極照明絞り、及びクロスポール照明用の四極照明絞りを有する。制御装置3は、二極照明絞り及び四極照明絞りの少なくとも一方を露光光ELの光路に配置して、マスクMのライン・アンド・スペースパターンのラインパターンの長手方向に合わせた直線偏光照明を行うことができる。制御装置3は、マスクMのラインパターンに応じて、例えば二極照明絞りを露光光ELの光路に配置して、露光光ELのうち、S偏光成分(TE偏光成分)が主成分(例えばS偏光成分が90%以上)の露光光ELでマスクMをダイポール照明することができる。また、制御装置3は、マスクMのラインパターンに応じて、例えば二極照明絞りを露光光ELの光路に配置して、露光光ELのうち、P偏光成分(TM偏光成分)が主成分(例えばP偏光成分が90%以上)の露光光ELでマスクMをダイポール照明することができる。また、制御装置3は、マスクMのラインパターンに応じて、例えば四極照明絞りを露光光ELの光路に配置して、露光光ELのうち、S偏光成分(TE偏光成分)が主成分(例えばS偏光成分が90%以上)の露光光ELと、P偏光成分(TE偏光成分)が主成分(例えばP偏光成分が90%以上)の露光光ELとで、マスクMをクロスポール照明することができる。
【0021】
なお、照明系ILが、ランダム偏光光の露光光ELでマスクMを照明してもよい。
【0022】
マスクステージ1は、露光光ELの光路に対して可動である。マスクステージ1は、マスクMをリリース可能に保持するマスク保持部1Hを有する。本実施形態において、マスク保持部1Hは、マスクMのパターン形成面(表面)とXY平面とがほぼ平行となるように、マスクMを保持する。マスクステージ1は、第1定盤4のガイド面4G上を移動可能である。マスクステージ1は、ガイド面4G上において、照明領域IRにマスクMを保持して移動可能である。ガイド面4Gは、XY平面とほぼ平行である。マスクステージ1は、駆動システム5の作動により、ガイド面4G上で移動可能である。本実施形態において、駆動システム5は、ガイド面4G上でマスクステージ1を移動するための平面モータを含む。マスクステージ1を移動するための平面モータは、例えば米国特許第6452292号明細書に開示されているような、マスクステージ1に配置された可動子と、第1定盤4に配置された固定子とを有する。本実施形態においては、マスクステージ1は、平面モータを含む駆動システム5の作動により、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6つの方向に移動可能である。
【0023】
投影光学系PLは、所定の投影領域PRに露光光ELを照射する。投影領域PRは、投影光学系PLから射出される露光光ELが照射可能な位置を含む。投影光学系PLは、投影光学系PLの物体面からの露光光ELを、投影光学系PLの像面に供給して、物体面の像を像面に投影する。本実施形態においては、基板Pの露光時に、投影光学系PLの物体面に、マスクステージ1に保持されたマスクMのパターン形成面が配置され、投影光学系PLの像面に、基板ステージ2に保持された基板Pの露光面が配置される。投影光学系PLは、マスクMのパターン形成面からの露光光ELを基板Pの露光面に供給して、そのマスクMのパターンの像を、所定の投影倍率で基板Pに投影する。
【0024】
基板ステージ2は、露光光ELの光路に対して可動である。基板ステージ2は、基板Pをリリース可能に保持する基板保持部2Hを有する。本実施形態において、基板保持部2Hは、基板Pの露光面(表面)とXY平面とがほぼ平行となるように、基板Pを保持する。基板ステージ2は、第2定盤6のガイド面6G上を移動可能である。基板ステージ2は、ガイド面6G上において、投影領域PRに基板Pを保持して移動可能である。ガイド面6Gは、XY平面とほぼ平行である。基板ステージ2は、駆動システム7の作動により、ガイド面6G上で移動可能である。本実施形態において、駆動システム7は、ガイド面6G上で基板ステージ2を移動するための平面モータを含む。基板ステージ2を移動するための平面モータは、例えば米国特許第6452292号明細書に開示されているような、基板ステージ2に配置された可動子と、第2定盤6に配置された固定子とを有する。本実施形態においては、基板ステージ2は、平面モータを含む駆動システム7の作動により、X軸、Y軸、Z軸、θX、θY、及びθZ方向の6つの方向に移動可能である。
【0025】
本実施形態においては、投影光学系PLとして、反射屈折光学系を適用する。本実施形態において、投影光学系PLを構成する反射屈折光学系の基準光軸AXは、Z軸と平行である。
【0026】
本実施形態の投影光学系PLは、第1結像光学系G1と、第2結像光学系G2と、第3結像光学系G3とを備えている。第1結像光学系G1は、屈折型であり、マスクMのパターンの第1中間像(1次像)を形成する。第2結像光学系G2は、マスクMのパターンの第2中間像(2次像)を形成する。本実施形態において、第2結像光学系G2は、第1中間像とほぼ等倍の第2中間像を形成する。第3結像光学系G3は、屈折型であり、第2中間像からの露光光ELに基づいて、マスクMのパターンの最終像を基板P上に形成する。第3結像光学系G3は、マスクMのパターンの縮小像を形成する。
【0027】
第1結像光学系G1は、光軸AX1を有し、第3結像光学系G3は、光軸AX3を有する。光軸AX1と光軸AX3とは、共通の単一光軸である基準光軸AXと一致する。基準光軸AXは、Z軸方向とほぼ平行である。マスクM及び基板Pは、Z軸方向と直交するXY平面(水平面)とほぼ平行である。第2結像光学系G2は、光軸AX2を有する。光軸AX2は、基準光軸AXと直交する。
【0028】
第1結像光学系G1は、複数の光学素子E1〜E7を備えている。本実施形態において、光学素子E1は、露光光ELの光路に配置可能であり、マスクMから投影光学系PLに供給された露光光ELのうち、第1偏光成分(例えばP偏光成分)の光と、第2偏光成分(例えばS偏光成分)の光との間で発生する位相差を低減する位相差補償部材である。光学素子E2〜E7は、露光光ELの光路に配置され、位相差補償部材E1と異なる複数のレンズである。以下の説明において、光学素子E1を適宜、位相差補償部材E1、と称し、光学素子E2〜E7を適宜、レンズE2〜E7、と称する。
【0029】
位相差補償部材E1は、レンズE2〜E7に対して、投影光学系PLの物体面(マスクMのパターン形成面)に最も近い位置に配置されている。換言すれば、位相差補償部材E1は、露光光ELの光路に配置される投影光学系PLの複数の光学素子のうち、投影光学系PLの物体面に最も近い位置に配置される。本実施形態において、位相差補償部材E1は、平行平板を含む。
【0030】
第2結像光学系G2は、露光光ELの光路に配置される複数の光学素子E8〜E10を備えている。本実施形態において、光学素子E8、E9は、露光光ELの光路に配置されるレンズである。光学素子E10は、露光光ELの光路に配置される凹面反射鏡である。以下の説明において、光学素子E8、E9を適宜、レンズE8、E9、と称し、光学素子E10を適宜、凹面反射鏡E10、と称する。
【0031】
第3結像光学系G3は、露光光ELの光路に配置される光学素子E12〜E15及び光学部材ASを備えている。本実施形態において、光学素子E12〜E15は、露光光ELの光路に配置されるレンズである。光学部材ASは、可変開口絞りである。以下の説明において、光学素子E12〜E15を適宜、レンズE12〜E15、と称し、光学部材ASを適宜、可変開口絞りAS、と称する。
【0032】
レンズE15は、レンズE12〜E14に対して、投影光学系PLの像面(基板Pの露光面)に最も近い位置に配置されている。換言すれば、レンズE15は、露光光ELの光路に配置される投影光学系PLの複数の光学素子のうち、投影光学系PLの像面に最も近い位置に配置される。
【0033】
また、投影光学系PLは、第1結像光学系G1と第2結像光学系G2との間の光路において第1中間像の形成位置の近傍に配置され、第1結像光学系G1からの光を第2結像光学系G2に偏向する第1反射面R1と、第2結像光学系G2と第3結像光学系G3との間の光路において第2中間像の形成位置の近傍に配置され、第2結像光学系G2からの光を第3結像光学系G3に偏向する第2反射面R2とを備えている。第1中間像は、第1反射面R1と第2結像光学系G2との間の光路に形成される。第2中間像は、第2結像光学系G2と第2反射面R2との間の光路に形成される。
【0034】
第1反射面R1及び第2反射面R2のそれぞれは平面である。本実施形態において、第1反射面R1と第2反射面R2とは、光学素子E11に配置されている。第1反射面R1と第2反射面R2との交線は、第1結像光学系G1のAX1、第2結像光学系G2のAX2、及び第3結像光学系G3のAX3と一点で交わる。
【0035】
また、投影光学系PLは、複数の光学素子E1〜E15及び光学部材ASを保持可能なハウジング(鏡筒)HGを備えている。本実施形態において、ハウジングHGは、複数のサブバレル(分割鏡筒)H1〜H15、及びサブバレルHSによって構成される。具体的には、ハウジングHGは、第1結像光学系G1の位相差補償部材E1、及びレンズE2〜E7のそれぞれを保持可能なサブバレルH1〜H7と、第2結像光学系G2のレンズE8、E9、及び凹面反射鏡E10を保持可能なサブバレルH8〜H10と、第3結像光学系G3のレンズE12〜E15、及び開口絞りASを保持可能なサブバレルH12〜H15、及びサブバレルHSとを含む。
【0036】
本実施形態において、光学素子E2〜E7、E12〜E15は、セルによって保持されており、サブバレルH2〜H7、H12〜H15は、フレームF2〜F7、F12〜F15を介して、光学素子E2〜E7、E12〜E15を保持するセルと接続される。また、光学素子E8〜E10は、セルによって保持されており、サブバレルH8〜H10は、光学素子E8〜E10を保持するセルと接続される。また、サブバレルHSは、可変開口絞りASの少なくとも一部と接続される。
【0037】
図2は、位相差補償部材E1の近傍を示す拡大図である。図2において、投影光学系PLは、露光光ELの光路に位相差補償部材E1が配置されるように、その位相差補償部材E1をリリース可能に保持する保持機構10を備えている。本実施形態において、保持機構10は、サブバレルH1と、位相差補償部材E1をリリース可能に保持する保持部材11と、サブバレルH1と保持部材11とを接続するフレームF1とを有する。
【0038】
本実施形態において、保持部材11は、位相差補償部材E1の下面の周縁領域を保持する保持面11Hを有する。位相差補償部材E1の下面の周縁領域は、保持面11Hと接触可能である。本実施形態において、保持面11Hに、気体を吸引可能な吸引口12が配置されている。吸引口12は、真空システム(不図示)と接続されている。位相差補償部材E1の下面の周縁領域と保持面11Hとが接触した状態で、真空システムが作動することによって、位相差補償部材E1の下面が保持面11Hに吸着保持される。また、真空システムの作動を停止することによって、保持面11Hから位相差補償部材E1を外すことができる。このように、本実施形態においては、保持機構10は、所謂、真空吸着機構を含み、位相差補償部材E1をリリース可能に保持できる。
【0039】
位相差補償部材E1は、保持機構10に保持されることによって、投影光学系PLの複数の光学素子E1〜E15のうち、投影光学系PLの物体面に最も近い位置に配置される。
【0040】
なお、保持部材11が、位相差補償部材E1の周縁領域を挟むことによって、その位相差補償部材E1を保持するクランプ機構を有してもよい。また、保持機構10が、所謂、静電チャック機構を有してもよい。
【0041】
また、本実施形態においては、サブバレルH2は、サブバレルH1をリリース可能に保持する保持機構20を有している。保持機構20は、サブバレルH2の少なくとも一部に配置されている。保持機構20は、露光光ELの光路に位相差補償部材E1が配置されるように、サブバレルH1をリリース可能に保持する。
【0042】
本実施形態において、保持機構20は、投影光学系PLの物体面(マスクステージ1に保持されたマスクMのパターン形成面)と面することができるサブバレルH2の上端(+Z側の端)に配置されている。
【0043】
本実施形態において、保持機構20は、サブバレルH1の下面を保持する保持面20Hを有する。本実施形態において、保持面20Hは、サブバレルH1の下面と対向可能なサブバレルH2の上面を含む。サブバレルH1の下面は、保持面20Hと接触可能である。本実施形態において、保持面20Hに、気体を吸引可能な吸引口22が配置されている。吸引口22は、真空システム(不図示)と接続されている。サブバレルH1の下面と保持面20Hとが接触した状態で、真空システムが作動することによって、サブバレルH1の下面が保持面20Hに吸着保持される。また、真空システムの作動を停止することによって、保持面20HからサブバレルH1を外すことができる。このように、本実施形態においては、保持機構20は、所謂、真空吸着機構を含み、サブバレルH1をリリース可能に保持できる。
【0044】
なお、保持機構20が、所謂、静電チャック機構を有してもよい。また、サブバレルH1とサブバレルH2とが、例えばボルト部材等を含む締結部材を介してリリース可能に接続されてもよい。
【0045】
保持機構10に保持される位相差補償部材E1は、サブバレルH1が保持機構20に保持されることによって、サブバレルH2〜H15に保持される光学素子E2〜E15に対して、投影光学系PLの物体面に最も近い位置に配置される。
【0046】
図3は、本実施形態に係る位相差補償部材E1の一例を示す拡大断面図である。図3に示すように、本実施形態においては、位相差補償部材E1は、露光光ELを透過可能な光透過部材30と、光透過部材30上に形成され、露光光ELのうち、第1偏光成分の光と第2偏光成分の光とが投影光学系PLを通過する際に、それら第1偏光成分の光と第2偏光成分の光との間で発生する位相差を低減する多層膜33とを有する。
【0047】
本実施形態において、光透過部材30は、平行平板である。本実施形態において、光透過部材30は、石英ガラスで形成されている。なお、光透過部材30が、蛍石で形成されてもよい。
【0048】
なお、本実施形態において、位相差補償部材E1以外の他の光学素子E2〜E15の少なくとも一つは、石英ガラスで形成される。なお、光学素子E2〜E15の少なくとも一つが、蛍石で形成されてもよい。また、光学素子E2〜E15の少なくとも一つが、例えばフッ化バリウム(BaF2)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化ナトリウム(NaF)、及びフッ化ストロンチウム(SrF2)等で形成されてもよい。
【0049】
多層膜33は、光透過部材30上に交互に積層された第1膜31及び第2膜32を含む。第1膜31は、露光光ELに対する屈折率と真空の屈折率との差が大きい物質で形成されている。第2膜32は、露光光ELに対する屈折率と真空の屈折率との差が小さい物質で形成されている。換言すれば、露光光ELに対する屈折率は、第1膜31のほうが、第2膜32より大きい。
【0050】
本実施形態において、第1膜31は、酸化アルミニウム(Al2O3)であり、第2膜32は、二酸化珪素(SiO2)である。なお、第1膜31が、例えば酸化アルミニウム(Al2O3)、フッ化ランタン(LaF3)、及びフッ化ガドリニウム(GdF3)からなる群から選択される1種類の材料で形成されてもよいし、2種類以上の組み合わせからなる材料で形成されてもよい。また、第2膜32が、二酸化珪素(SiO2)、フッ化マグネシウム(MgF2)、及びフッ化アルミニウム(AlF3)からなる群から選択される1種類の材料で形成されてもよいし、2種類以上の組み合わせからなる材料で形成されてもよい。
【0051】
本実施形態において、多層膜33のうち、光透過部材30に最も近い膜は、第1膜31である。なお、光透過部材30に最も近い膜が、第2膜32でもよい。本実施形態において、多層膜33のうち、光透過部材30から最も遠い膜は、第2膜32である。
【0052】
本実施形態において、多層膜33は、投影光学系PLの物体面と面することができる光透過部材30の上面と、その上面の反対側の下面のそれぞれに配置されている。なお、多層膜33が光透過部材30の上面のみに配置されてもよいし、下面のみに配置されてもよい。
【0053】
本実施形態においては、投影光学系PLを構成する光学素子E1〜E15が有する複屈折によって生じる偏光収差(所定方向に振動する第1偏光成分の光と、所定方向と異なる方向に振動する第2偏光成分の光との位相差)が、多層膜33によって補償される。
【0054】
本実施形態においては、光学素子E1〜E15が有する固有複屈折及び応力複屈折の少なくとも一方によって生じる位相差が、多層膜33によって補償される。ここで、固有複屈折は、結晶性材料のような結晶の異方性に起因する複屈折であり、応力複屈折は、歪みのような応力が作用した場合に生じる複屈折である。
【0055】
図4は、本実施形態に係る多層膜33の位相差と入射角特性との関係を示す。図4において、縦軸は、多層膜33を透過した後の第1偏光成分(P偏光成分)の光と第2偏光成分(S偏光成分)の光との位相差であり、横軸は、多層膜33に対する露光光ELの入射角である。
【0056】
図4に示すように、多層膜33に対する露光光ELの入射角に応じて、P偏光成分の光とS偏光成分の光との位相差が変化する。また、図4に示すように、多層膜33を含む位相差補償部材E1の構造を調整することによって、光学特性を変化させ、入射角に応じた位相差の変化量を調整することができる。また、多層膜33を含む位相差補償部材E1の構造を調整することによって、P偏光成分の光の位相をS偏光成分の光の位相に対して進ませることができるし、S偏光成分の光の位相をP偏光成分の光の位相に対して進ませることもできる。多層膜33を含む位相差補償部材E1の構造は、例えば第1膜31の厚み、第2膜32の厚み、多層膜33全体の厚み、第1膜31と第2膜32との積層数、第1膜31を形成する材料の種類、第2膜32を形成する材料の種類、光透過部材30の厚み、及び光透過部材30を形成する材料の種類の少なくとも一つを含む。
【0057】
図4には、一例として、第1の構造(光学特性)を有する位相差補償部材E1の位相差と入射角特性との関係、第2の構造(光学特性)を有する位相差補償部材E1の位相差と入射角特性との関係、及び第3の構造(光学特性)を有する位相差補償部材E1の位相差と入射角特性との関係が示されている。
【0058】
本実施形態においては、投影光学系PLを構成する光学素子E1〜E15が有する複屈折によって生じる偏光収差(第1偏光成分の光と第2偏光成分の光との位相差)が低減されるように、すなわち、投影光学系PL全体の偏光収差が低減されるように、最適な構造を有する位相差補償部材E1が、露光光ELの光路に配置される。位相差補償部材E1が露光光ELの光路に配置されることによって、投影光学系PLの総合的な偏光収差が低減される。
【0059】
なお、投影光学系PLの偏光収差(第1偏光成分の光と第2偏光成分の光との位相差)を補償するための位相差補償部材E1の最適な構造は、例えば予備実験、あるいはシミュレーションによって決定することができる。
【0060】
次に、上述の構成を有する露光装置EXの動作の一例について説明する。
【0061】
露光光ELのうち、第1偏光成分の光と第2偏光成分の光との位相差に基づく投影光学系PLの偏光収差を補償するために、最適な構造(光学特性)を有する位相差補償部材E1が、保持機構10に保持される。上述のように、投影光学系PLの偏光収差を低減するための位相差補償部材E1の最適な構造(光学特性)は、予備実験、あるいはシミュレーションによって予め求めることができ、その求めた結果に応じて、最適な構造(光学特性)の位相差補償部材E1が製造され、保持機構10に保持される。
【0062】
制御装置3は、搬送システム(不図示)を用いて、マスクMをマスクステージ1に搬送し、基板Pを基板ステージ2に搬送する。マスクMがマスクステージ1に保持され、基板Pが基板ステージ2に保持されると、制御装置3は、基板Pの露光を開始する。
【0063】
本実施形態の露光装置EXは、マスクMと基板Pとを所定の走査方向に同期移動しつつ、マスクMからの露光光ELで基板Pを露光する走査型露光装置(所謂スキャニングステッパ)である。本実施形態においては、基板Pの走査方向(同期移動方向)をY軸方向とし、マスクMの走査方向(同期移動方向)もY軸方向とする。露光装置EXは、基板Pを投影光学系PLの投影領域PRに対してY軸方向に移動するとともに、その基板PのY軸方向への移動と同期して、照明系ILの照明領域IRに対してマスクMをY軸方向に移動しつつ、マスクMを露光光ELで照明し、そのマスクMからの露光光ELを、投影光学系PLを介して基板Pに照射する。これにより、マスクM及び投影光学系PLを介して基板Pが露光され、基板PにマスクMのパターンの像が投影される。
【0064】
本実施形態においては、位相差補償部材E1によって、収差が低減された投影光学系PLを用いて基板Pを露光するので、露光不良の発生を抑制しつつ、基板Pを良好に露光することができる。
【0065】
ところで、例えば、位相差補償部材E1の表面が劣化したり、位相差補償部材E1の光学特性が変化したりする可能性がある。そのような位相差補償部材E1を使用し続けると、投影光学系PLの収差を十分に補償できず、例えば基板Pに形成されるパターンに欠陥が生じる等、露光不良が発生する可能性がある。
【0066】
また、例えば投影光学系PLの光学特性が経時的に変化することも考えられる。その場合、所定の構造(光学特性)を有する位相差補償部材E1を使用したのでは、その光学特性が変化した投影光学系PLの収差を十分に低減することが困難となる可能性がある。その結果、例えば基板Pに形成されるパターンに欠陥が生じる等、露光不良が発生する可能性がある。
【0067】
そこで、本実施形態においては、所定のタイミングで、位相差補償部材E1の交換処理が実行される。
【0068】
図5は、位相差補償部材E1を交換している状態の一例を示す図である。本実施形態において、露光装置EXは、位相差補償部材E1を搬送可能な搬送装置40を備えている。搬送装置40は、保持機構10から位相差補償部材E1を搬出する動作、及び位相差補償部材E1を保持機構10に搬入する動作の少なくとも一方を含む交換処理を実行可能である。
【0069】
位相差補償部材E1を交換するために、保持機構10から位相差補償部材E1を搬出するとき、制御装置3は、保持機構10の吸着保持動作を解除して、保持機構10から位相差補償部材E1をリリースする。制御装置3は、保持機構10からリリースされた位相差補償部材E1を、搬送装置40を用いて、保持機構10から搬出する。
【0070】
制御装置3は、搬送装置40を用いて、新たな位相差補償部材E1を、保持機構10に搬送する。新たな位相差補償部材E1は、投影光学系PLの収差を低減するために、その投影光学系PLに対して最適な構造(光学特性)を有する。
【0071】
制御装置3は、搬送装置40によって保持機構10に搬送された新たな位相差補償部材E1と保持面11Hとを接触させ、吸引口12を用いる吸引動作を開始する。これにより、新たな位相差補償部材E1が、保持機構10に保持される。以上により、位相差補償部材E1の交換処理が終了する。新たな位相差補償部材E1に交換した後、投影光学系PLを介して基板Pを露光することによって、基板Pを良好に露光することができる。
【0072】
なお、本実施形態においては、搬送装置40を用いて、保持機構10から位相差補償部材E1を搬出する動作、及び保持機構10に位相差補償部材E1を搬入する動作を実行する場合を例にして説明したが、搬送装置40を用いずに、例えば作業者が位相差補償部材E1を搬送してもよい。
【0073】
以上説明したように、本実施形態によれば、位相差補償部材E1を容易に交換することができる。したがって、最適な構造(光学特性)を有する位相差補償部材E1を用いて、投影光学系PLの収差を十分に低減できる。したがって、その収差が十分に低減された投影光学系PLを用いて、基板Pを良好に露光することができる。
【0074】
本実施形態においては、位相差補償部材E1は、投影光学系PLの複数の光学素子E1〜E15のうち、投影光学系PLの物体面に最も近い位置に配置される。したがって、他の光学素子E2〜E15に与える影響を抑えつつ、位相差補償部材E1の交換処理を円滑に実行することができる。
【0075】
また、本実施形態においては、位相差補償部材E1は、平行平板を含む。したがって、例えば交換前における位相差補償部材E1の位置に対して、交換後における位相差補償部材E1の位置が僅かにずれた場合でも、交換前と交換後とにおける位相差補償部材E1の光学特性の変化量を最小限に抑えることができる。これにより、例えば交換前に対する交換後の光学特性の変化を抑制しつつ、交換後における位相差補償部材E1の位置調整を円滑に実行することができる。
【0076】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0077】
図6は、第2実施形態に係る位相差補償部材E1を交換している状態の一例を示す図である。本実施形態において、露光装置EXは、サブバレルH1を搬送可能な搬送装置42を備えている。搬送装置42は、保持機構20からサブバレルH1を搬出する動作、及びサブバレルH1を保持機構20に搬入する動作の少なくとも一方を含む交換処理を実行可能である。本実施形態においては、制御装置3は、搬送装置42を用いてサブバレルH1を搬送して、位相差補償部材E1をサブバレルH1と一緒に交換する。
【0078】
位相差補償部材E1を交換するために、保持機構20からサブバレルH1を搬出するとき、制御装置3は、保持機構20の吸着保持動作を解除して、保持機構20から、位相差補償部材E1を保持したサブバレルH1をリリースする。制御装置3は、保持機構20からリリースされたサブバレルH1を、搬送装置42を用いて、保持機構20から搬出する。
【0079】
制御装置3は、搬送装置42を用いて、新たな位相差補償部材E1を保持したサブバレルH1を、保持機構20に搬送する。新たな位相差補償部材E1は、投影光学系PLの収差を低減するために、その投影光学系PLに対して最適な構造(光学特性)を有する。
【0080】
制御装置3は、搬送装置42によって保持機構20に搬送されたサブバレルH1と保持面20Hとを接触させ、吸引口22を用いる吸引動作を開始する。これにより、新たな位相差補償部材E1を保持したサブバレルH1が、保持機構20に保持される。以上により、位相差補償部材E1の交換処理が終了する。新たな位相差補償部材E1に交換した後、投影光学系PLを介して基板Pを露光することによって、基板Pを良好に露光することができる。
【0081】
なお、本実施形態においては、搬送装置42を用いて、保持機構20からサブバレルH1を搬出する動作、及び保持機構20にサブバレルH1を搬入する動作を実行する場合を例にして説明したが、搬送装置42を用いずに、例えば作業者がサブバレルH1を搬送してもよい。
【0082】
以上説明したように、本実施形態においても、他の光学素子E2〜E15に与える影響を抑えつつ、位相差補償部材E1を容易に交換することができる。したがって、最適な構造(光学特性)を有する位相差補償部材E1を用いて、投影光学系PLの収差を十分に低減できる。したがって、その収差が十分に低減された投影光学系PLを用いて、基板Pを良好に露光することができる。
【0083】
なお、本実施形態においては、ハウジングHGが、各光学素子E1〜E15のそれぞれを保持可能なサブバレルH1〜H15を有する場合を例にして説明したが、例えば位相差補償部材E1以外の光学素子E2〜E15を保持するサブバレルH2〜E15を一体として、ハウジングHGが、光学素子E2〜E15を保持するサブバレルと、位相差補償部材E1を保持するサブバレルH1とによって構成されてもよい。その場合においても、投影光学系PLの物体面と面することができる、光学素子E2〜E15を保持するサブバレルの上端に、サブバレルH1をリリース可能に保持できる保持機構20を設けることによって、位相差補償部材E1を、サブバレルH1と一緒に交換することができる。
【0084】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0085】
図7は、第3実施形態に係る投影光学系PLbの一部を示す図である。図7に示すように、本実施形態の投影光学系PLbは、露光光ELの光路に沿って配置される複数の位相差補償部材E1を有する。図7には、一例として、位相差補償部材E1が、露光光ELの光路に沿って3つ配置されている例を示す。
【0086】
例えば、投影光学系PLbの収差を低減するために、多層膜33を透過した後の第1偏光成分(P偏光成分)の光と第2偏光成分(S偏光成分)の光との位相差を大きくしたい場合、露光光ELの光路に配置される多層膜33の厚みを大きくしなければならない可能性がある。1つの光透過部材30上に、厚みが大きい多層膜33を形成すると、例えばその多層膜33にクラック等の欠陥が発生しやすくなる等、不具合が発生する可能性が高くなる。
【0087】
そこで、光透過部材30を複数設け、それら複数の光透過部材30のそれぞれに多層膜33を形成することによって、投影光学系PLの収差を低減するために露光光ELの光路に配置すべき多層膜33の厚みを確保しつつ、1つの光透過部材30に形成される多層膜33の厚みが大きくなることを抑制することができる。したがって、例えば多層膜33にクラック等が発生することを抑制しつつ、複数の位相差補償部材E1を用いて、投影光学系PLの収差を低減することができる。
【0088】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0089】
図8は、第4実施形態に係る投影光学系PLcの一例を示す図である。図8に示すように、投影光学系PLcは、位相差補償部材E15cを備えている。本実施形態においては、第3結像光学系G3が、位相差補償部材E15cを有する。位相差補償部材E15cは、光学素子E12〜E14に対して、投影光学系PLcの像面(基板Pの露光面)に最も近い位置に配置される。
【0090】
投影光学系PLcは、露光光ELの光路に位相差補償部材E15cが配置されるように、その位相差補償部材E15cをリリース可能に保持する保持機構50を備えている。本実施形態において、保持機構50は、サブバレルH15と、位相差補償部材E15cをリリース可能に保持する保持部材51と、サブバレルH15と保持部材51とを接続するフレームF15とを有する。
【0091】
本実施形態において、保持部材51は、位相差補償部材E15cの上面の周縁領域を保持する保持面51Hを有する。位相差補償部材E15cの上面の周縁領域は、保持面51Hと接触可能である。本実施形態において、保持面51Hに、気体を吸引可能な吸引口52が配置されている。吸引口52は、真空システム(不図示)と接続されている。位相差補償部材E15cの上面の周縁領域と保持面51Hとが接触した状態で、真空システムが作動することによって、位相差補償部材E15cの上面が保持面51Hに吸着保持される。また、真空システムの作動を停止することによって、保持面51Hから位相差補償部材E15cを外すことができる。このように、本実施形態においては、保持機構50は、所謂、真空吸着機構を含み、位相差補償部材E15cをリリース可能に保持できる。
【0092】
本実施形態においては、位相差補償部材E15cが、投影光学系PLの複数の光学素子のうち、投影光学系PLの像面に最も近い位置に配置される。したがって、位相差補償部材E15cの交換処理を円滑に実行することができる。
【0093】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0094】
図9は、第5実施形態に係る露光装置EXの一例を示す図である。図9において、投影光学系PLdは、露光光ELの光路に配置可能な位相差補償部材E1と、露光光ELの光路に配置され、位相差補償部材E1と異なる複数の光学素子E2〜E15と、光学素子E1〜E15を保持するハウジングHGdと、ハウジングHGdの一部に形成された開口55を介して、露光光ELの光路内及び光路外の一方から他方へ位相差補償部材E1を移動して、その位相差補償部材E1を交換する交換システム60とを備えている。なお、図9には、光学素子E1〜E15の図示が省略されている。
【0095】
本実施形態において、位相差補償部材E1は、保持部材56によって保持される。交換システム60は、保持部材56を移動して、位相差補償部材E1を交換する。本実施形態において、位相差補償部材E1を保持した保持部材56は、開口55を通過可能である。交換システム60は、開口55を介して、露光光ELの光路内及び光路外の一方から他方へ保持部材56を移動して、その位相差補償部材E1を交換する。
【0096】
交換システム60は、保持部材56を移動可能な搬送装置61を備えている。交換システム60は、搬送装置61を用いて、開口55を介して露光光ELの光路内及び光路外の一方から他方へ位相差補償部材E1を保持した保持部材56を移動して、位相差補償部材E1を移動する。
【0097】
本実施形態において、保持部材56は、プレート状の部材である。開口55は、保持部材の外形とほぼ相似であり、開口55の内面と保持部材56の外面とは良好に接触可能である。開口55の内面と保持部材56の外面との間には、ハウジングHGdの内部と外部との気体の出入りを抑制するシールが形成される。
【0098】
搬送装置61は、保持部材56の一端(−Y側の端)を保持して、保持部材56を移動する。保持部材56の他端(+Y側の端)は、ハウジングHGdの内面の少なくとも一部と接触することによって、ハウジングHGd(露光光ELの光路)に対して位置決めされる。
【0099】
なお、ハウジングの一部に形成された開口を介して投影光学系の光学素子を交換する交換システムの一例が、例えば米国特許出願公開第2007/0177122号明細書に開示されている。本実施形態において、位相差補償部材E1を交換するために、米国特許出願公開第2007/0177122号明細書に開示されている交換システムを用いることができる。
【0100】
なお、上述の第1〜第5実施形態においては、位相差補償部材E1の光透過部材30が平行平板である場合を例にして説明したが、屈折力を有する光学素子(レンズ)でもよい。
【0101】
<第6実施形態>
次に、第6実施形態について説明する。以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成部分については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0102】
図10は、第6実施形態に係る投影光学系PLeの一例を示す図である。図10において、投影光学系PLeは、物体面Oの像を像面Bに投影する。図10に示す投影光学系PLeは、特開2008−181125号公報の図3に開示されているような投影光学系であって、第1補正素子K1及び第2補正素子K2を備えている。第1補正素子K1は、投影光学系PLdの光学的に第1瞳面p1の近傍に配置されている。第2補正素子L2は、第1瞳面p1と第1中間像z1との間に配置されている。
【0103】
本実施形態においては、第1補正素子K1及び第2補正素子K2の少なくとも一方が、上述の各実施形態で説明したような位相差補償部材E1である。
【0104】
また、図10に示す投影光学系PLeがハウジングに収容される場合、例えば米国特許出願公開第2007/0177122号明細書に開示されているように、ハウジングの一部に開口を設け、交換システムを用いて、ハウジングに設けられた開口を介して、第1,第2補正素子(位相差補償部材)K1,K2を交換することができる。
【0105】
図11は、第6実施形態に係る投影光学系PLfの一例を示す図である。図11において、投影光学系PLfは、物体面Oの像を像面Bに投影する。図11に示す投影光学系PLfは、特開2008−181125号公報の図7に開示されているような投影光学系であって、第1補正素子K1、第2補正素子K2、及び第3補正素子K3を備えている。第1補正素子K1は、投影光学系PLfの光学的に第1瞳面p1の近傍に配置されている。第2補正素子L2は、第1瞳面p1と物体面Oとの間に配置されている。第3補正素子K3は、投影光学系PLfの光学的に第3瞳面p3の近傍に配置されている。
【0106】
本実施形態においては、第1補正素子K1、第2補正素子K2、及び第3補正素子K3の少なくとも一つが、上述の各実施形態で説明したような位相差補償部材E1である。
【0107】
また、図11に示す投影光学系PLfがハウジングに収容されている場合、例えば米国特許出願公開第2007/0177122号明細書に開示されているように、ハウジングの一部に開口を設け、交換システムを用いて、ハウジングに設けられた開口を介して、第1,第2,第3補正素子(位相差補償部材)K1,K2,K3を交換することができる。
【0108】
なお、上述の第1〜第6実施形態における基板Pとしては、半導体デバイス製造用の半導体ウエハのみならず、ディスプレイデバイス用のガラス基板、薄膜磁気ヘッド用のセラミックウエハ、あるいは露光装置で用いられるマスクまたはレチクルの原版(合成石英、シリコンウエハ)等が適用される。
【0109】
露光装置EXとしては、マスクMと基板Pとを同期移動してマスクMのパターンを走査露光するステップ・アンド・スキャン方式の走査型露光装置(スキャニングステッパ)の他に、マスクMと基板Pとを静止した状態でマスクMのパターンを一括露光し、基板Pを順次ステップ移動させるステップ・アンド・リピート方式の投影露光装置(ステッパ)にも適用することができる。
【0110】
さらに、ステップ・アンド・リピート方式の露光において、第1パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第1パターンの縮小像を基板P上に転写した後、第2パターンと基板Pとをほぼ静止した状態で、投影光学系を用いて第2パターンの縮小像を第1パターンと部分的に重ねて基板P上に一括露光してもよい(スティッチ方式の一括露光装置)。また、スティッチ方式の露光装置としては、基板P上で少なくとも2つのパターンを部分的に重ねて転写し、基板Pを順次移動させるステップ・アンド・スティッチ方式の露光装置にも適用できる。
【0111】
また、例えば米国特許第第6611316号明細書に開示されているように、2つのマスクのパターンを、投影光学系を介して基板上で合成し、1回の走査露光によって基板上の1つのショット領域をほぼ同時に二重露光する露光装置などにも本発明を適用することができる。また、プロキシミティ方式の露光装置、ミラープロジェクション・アライナーなどにも本発明を適用することができる。
【0112】
また、露光装置EXとして、米国特許第6341007号明細書、米国特許第6400441号明細書、米国特許第6549269号明細書、米国特許第6590634号明細書、米国特許第6208407号明細書、及び米国特許第6262796号明細書等に開示されているような、複数の基板ステージを備えたツインステージ型の露光装置にも適用できる。
【0113】
更に、米国特許第6897963号明細書、欧州特許出願公開第1713113号明細書等に開示されているような、基板を保持する基板ステージと、基準マークが形成された基準部材及び/又は各種の光電センサを搭載した計測ステージとを備えた露光装置にも本発明を適用することができる。また、複数の基板ステージと計測ステージとを備えた露光装置を採用することができる。
【0114】
また、例えば国際公開第99/49504号パンフレット等に開示されているような、液体を介して露光光で基板を露光する液浸露光装置に適用することもできる。
【0115】
露光装置EXの種類としては、基板Pに半導体素子パターンを露光する半導体素子製造用の露光装置に限られず、液晶表示素子製造用又はディスプレイ製造用の露光装置や、薄膜磁気ヘッド、撮像素子(CCD)、マイクロマシン、MEMS、DNAチップ、あるいはレチクル又はマスクなどを製造するための露光装置などにも広く適用できる。
【0116】
なお、上述の実施形態においては、光透過性の基板上に所定の遮光パターン(又は位相パターン・減光パターン)を形成した光透過型マスクを用いたが、このマスクに代えて、例えば米国特許第6778257号明細書に開示されているように、露光すべきパターンの電子データに基づいて透過パターン又は反射パターン、あるいは発光パターンを形成する可変成形マスク(電子マスク、アクティブマスク、あるいはイメージジェネレータとも呼ばれる)を用いてもよい。また、非発光型画像表示素子を備える可変成形マスクに代えて、自発光型画像表示素子を含むパターン形成装置を備えるようにしても良い。
【0117】
上述の実施形態の露光装置は、本願請求の範囲に挙げられた各構成要素を含む各種サブシステムを、所定の機械的精度、電気的精度、光学的精度を保つように、組み立てることで製造される。これら各種精度を確保するために、この組み立ての前後には、各種光学系については光学的精度を達成するための調整、各種機械系については機械的精度を達成するための調整、各種電気系については電気的精度を達成するための調整が行われる。各種サブシステムから露光装置への組み立て工程は、各種サブシステム相互の、機械的接続、電気回路の配線接続、気圧回路の配管接続等が含まれる。この各種サブシステムから露光装置への組み立て工程の前に、各サブシステム個々の組み立て工程があることはいうまでもない。各種サブシステムの露光装置への組み立て工程が終了したら、総合調整が行われ、露光装置全体としての各種精度が確保される。なお、露光装置の製造は温度およびクリーン度等が管理されたクリーンルームで行うことが望ましい。
【0118】
半導体デバイス等のマイクロデバイスは、図12に示すように、マイクロデバイスの機能・性能設計を行うステップ201、この設計ステップに基づいたマスク(レチクル)を製作するステップ202、デバイスの基材である基板を製造するステップ203、上述の実施形態に従って、マスクからの露光光で基板を露光すること、及び露光された基板を現像することを含む基板処理(露光処理)を含む基板処理ステップ204、デバイス組み立てステップ(ダイシング工程、ボンディング工程、パッケージ工程などの加工プロセスを含む)205、検査ステップ206等を経て製造される。
【0119】
なお、上述の各実施形態の要件は、適宜組み合わせることができる。また、上述の各実施形態及び変形例で引用した露光装置などに関する全ての公開公報及び米国特許の開示を援用して本文の記載の一部とする。
【符号の説明】
【0120】
10…保持機構、20…保持機構、40…搬送装置、42…搬送装置、55…開口、56…保持部材、60…交換システム、61…搬送装置、E1…位相差補償部材、E2〜E15…光学素子、EL…露光光、H1…サブバレル、H2〜H15…サブバレル、HG…ハウジング、M…マスク、P…基板、PL…投影光学系
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面からの照射光を第2面に供給して、前記第1面の像を前記第2面に投影する投影光学系であって、
前記照射光の光路に配置可能であり、前記照射光のうち、第1偏光成分の光と第2偏光成分の光との間で発生する位相差を低減する位相差補償部材と、
前記光路に前記位相差補償部材が配置されるように前記位相差補償部材をリリース可能に保持する保持機構と、を備えた投影光学系。
【請求項2】
前記光路に配置され、前記位相差補償部材と異なる光学素子を複数有し、
前記位相差補償部材は、前記光学素子に対して前記第1面に最も近い位置に配置される請求項1記載の投影光学系。
【請求項3】
前記光路に配置され、前記位相差補償部材と異なる光学素子を複数有し、
前記位相差補償部材は、前記光学素子に対して前記第2面に最も近い位置に配置される請求項1記載の投影光学系。
【請求項4】
第1面からの照射光を第2面に供給して、前記第1面の像を前記第2面に投影する投影光学系であって、
前記照射光の光路に配置可能であり、前記照射光のうち、第1偏光成分の光と第2偏光成分の光との間で発生する位相差を低減する位相差補償部材と、
前記光路に配置され、前記位相差補償部材と異なる複数の光学素子と、
前記光学素子を保持する第1保持部材と、
前記第1保持部材の一部に形成された開口を介して、前記光路内及び前記光路外の一方から他方へ前記位相差補償部材を移動して、前記位相差補償部材を交換する交換システムと、を備えた投影光学系。
【請求項5】
前記位相差補償部材を保持する第2保持部材を備え、
前記交換システムは、前記第2保持部材を移動して、前記位相差補償部材を交換する請求項4記載の投影光学系。
【請求項6】
第1面からの照射光を第2面に供給して、前記第1面の像を前記第2面に投影する投影光学系であって、
前記照射光の光路に配置可能であり、前記照射光のうち、第1偏光成分の光と第2偏光成分の光との間で発生する位相差を低減する位相差補償部材と、
前記光路に配置され、前記位相差補償部材と異なる複数の光学素子と、
前記光学素子を保持する第1保持部材と、
前記位相差補償部材を保持する第2保持部材と、
前記第1保持部材の少なくとも一部に配置され、前記光路に前記位相差補償部材が配置されるように前記第2保持部材をリリース可能に保持する保持機構と、を備えた投影光学系。
【請求項7】
前記位相差補償部材は、前記光学素子に対して前記第1面に最も近い位置に配置される請求項6記載の投影光学系。
【請求項8】
前記位相差補償部材は、光透過部材と、前記光透過部材上に形成され、前記位相差を低減する多層膜とを有する請求項1〜7のいずれか一項記載の投影光学系。
【請求項9】
前記光透過部材は、平行平板である請求項8記載の投影光学系。
【請求項10】
前記位相差補償部材は、前記光路に沿って複数配置される請求項1〜9のいずれか一項記載の投影光学系。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項記載の投影光学系を介して露光光で基板を露光する露光装置。
【請求項12】
投影光学系を介して露光光で基板を露光する露光装置であって、
前記投影光学系において前記露光光の光路に配置可能であり、前記露光光のうち、第1偏光成分の光と第2偏光成分の光との間で発生する位相差を低減する位相差補償部材と、
前記位相差補償部材を交換する交換システムと、を備えた露光装置。
【請求項13】
前記交換システムは、前記投影光学系に設けられ、前記光路に前記位相差補償部材が配置されるように前記位相差補償部材をリリース可能に保持する保持機構と、前記位相差補償部材を搬送する搬送装置とを有する請求項12記載の露光装置。
【請求項14】
前記投影光学系は、前記光路に配置され、前記位相差補償部材と異なる複数の光学素子と、前記光学素子を保持する第1保持部材と、を備え、
前記交換システムは、前記第1保持部材の一部に形成された開口を介して、前記光路内及び前記光路外の一方から他方へ前記位相差補償部材を移動可能な搬送装置を有する請求項12記載の露光装置。
【請求項15】
前記位相差補償部材を保持する第2保持部材を備え、
前記搬送装置は、前記第2保持部材を移動して、前記位相差補償部材を移動する請求項14記載の露光装置。
【請求項16】
前記位相差補償部材は、前記投影光学系の複数の光学素子に対して前記第1面に最も近い位置に配置される請求項12〜15のいずれか一項記載の露光装置。
【請求項17】
前記投影光学系は、前記光路に配置され、前記位相差補償部材と異なる複数の光学素子と、前記光学素子を保持する第1保持部材と、を備え、
前記位相差補償部材を保持する第2保持部材を備え、
前記交換システムは、前記第1保持部材の少なくとも一部に配置され、前記光路に前記位相差補償部材が配置されるように前記第2保持部材をリリース可能に保持する保持機構と、前記第2保持部材を搬送する搬送装置とを有する請求項12記載の露光装置。
【請求項18】
前記保持機構は、前記第1面と面することができる前記第1保持部材の一端に配置される請求項17記載の露光装置。
【請求項19】
前記位相差補償部材は、光透過部材と、前記光透過部材上に形成され、前記位相差を低減する多層膜とを有する請求項12〜18のいずれか一項記載の露光装置。
【請求項20】
前記位相差補償部材は、前記光路に沿って複数配置される請求項12〜19のいずれか一項記載の露光装置。
【請求項21】
請求項11〜20のいずれか一項記載の露光装置を用いて基板を露光することと、
露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【請求項1】
第1面からの照射光を第2面に供給して、前記第1面の像を前記第2面に投影する投影光学系であって、
前記照射光の光路に配置可能であり、前記照射光のうち、第1偏光成分の光と第2偏光成分の光との間で発生する位相差を低減する位相差補償部材と、
前記光路に前記位相差補償部材が配置されるように前記位相差補償部材をリリース可能に保持する保持機構と、を備えた投影光学系。
【請求項2】
前記光路に配置され、前記位相差補償部材と異なる光学素子を複数有し、
前記位相差補償部材は、前記光学素子に対して前記第1面に最も近い位置に配置される請求項1記載の投影光学系。
【請求項3】
前記光路に配置され、前記位相差補償部材と異なる光学素子を複数有し、
前記位相差補償部材は、前記光学素子に対して前記第2面に最も近い位置に配置される請求項1記載の投影光学系。
【請求項4】
第1面からの照射光を第2面に供給して、前記第1面の像を前記第2面に投影する投影光学系であって、
前記照射光の光路に配置可能であり、前記照射光のうち、第1偏光成分の光と第2偏光成分の光との間で発生する位相差を低減する位相差補償部材と、
前記光路に配置され、前記位相差補償部材と異なる複数の光学素子と、
前記光学素子を保持する第1保持部材と、
前記第1保持部材の一部に形成された開口を介して、前記光路内及び前記光路外の一方から他方へ前記位相差補償部材を移動して、前記位相差補償部材を交換する交換システムと、を備えた投影光学系。
【請求項5】
前記位相差補償部材を保持する第2保持部材を備え、
前記交換システムは、前記第2保持部材を移動して、前記位相差補償部材を交換する請求項4記載の投影光学系。
【請求項6】
第1面からの照射光を第2面に供給して、前記第1面の像を前記第2面に投影する投影光学系であって、
前記照射光の光路に配置可能であり、前記照射光のうち、第1偏光成分の光と第2偏光成分の光との間で発生する位相差を低減する位相差補償部材と、
前記光路に配置され、前記位相差補償部材と異なる複数の光学素子と、
前記光学素子を保持する第1保持部材と、
前記位相差補償部材を保持する第2保持部材と、
前記第1保持部材の少なくとも一部に配置され、前記光路に前記位相差補償部材が配置されるように前記第2保持部材をリリース可能に保持する保持機構と、を備えた投影光学系。
【請求項7】
前記位相差補償部材は、前記光学素子に対して前記第1面に最も近い位置に配置される請求項6記載の投影光学系。
【請求項8】
前記位相差補償部材は、光透過部材と、前記光透過部材上に形成され、前記位相差を低減する多層膜とを有する請求項1〜7のいずれか一項記載の投影光学系。
【請求項9】
前記光透過部材は、平行平板である請求項8記載の投影光学系。
【請求項10】
前記位相差補償部材は、前記光路に沿って複数配置される請求項1〜9のいずれか一項記載の投影光学系。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項記載の投影光学系を介して露光光で基板を露光する露光装置。
【請求項12】
投影光学系を介して露光光で基板を露光する露光装置であって、
前記投影光学系において前記露光光の光路に配置可能であり、前記露光光のうち、第1偏光成分の光と第2偏光成分の光との間で発生する位相差を低減する位相差補償部材と、
前記位相差補償部材を交換する交換システムと、を備えた露光装置。
【請求項13】
前記交換システムは、前記投影光学系に設けられ、前記光路に前記位相差補償部材が配置されるように前記位相差補償部材をリリース可能に保持する保持機構と、前記位相差補償部材を搬送する搬送装置とを有する請求項12記載の露光装置。
【請求項14】
前記投影光学系は、前記光路に配置され、前記位相差補償部材と異なる複数の光学素子と、前記光学素子を保持する第1保持部材と、を備え、
前記交換システムは、前記第1保持部材の一部に形成された開口を介して、前記光路内及び前記光路外の一方から他方へ前記位相差補償部材を移動可能な搬送装置を有する請求項12記載の露光装置。
【請求項15】
前記位相差補償部材を保持する第2保持部材を備え、
前記搬送装置は、前記第2保持部材を移動して、前記位相差補償部材を移動する請求項14記載の露光装置。
【請求項16】
前記位相差補償部材は、前記投影光学系の複数の光学素子に対して前記第1面に最も近い位置に配置される請求項12〜15のいずれか一項記載の露光装置。
【請求項17】
前記投影光学系は、前記光路に配置され、前記位相差補償部材と異なる複数の光学素子と、前記光学素子を保持する第1保持部材と、を備え、
前記位相差補償部材を保持する第2保持部材を備え、
前記交換システムは、前記第1保持部材の少なくとも一部に配置され、前記光路に前記位相差補償部材が配置されるように前記第2保持部材をリリース可能に保持する保持機構と、前記第2保持部材を搬送する搬送装置とを有する請求項12記載の露光装置。
【請求項18】
前記保持機構は、前記第1面と面することができる前記第1保持部材の一端に配置される請求項17記載の露光装置。
【請求項19】
前記位相差補償部材は、光透過部材と、前記光透過部材上に形成され、前記位相差を低減する多層膜とを有する請求項12〜18のいずれか一項記載の露光装置。
【請求項20】
前記位相差補償部材は、前記光路に沿って複数配置される請求項12〜19のいずれか一項記載の露光装置。
【請求項21】
請求項11〜20のいずれか一項記載の露光装置を用いて基板を露光することと、
露光された基板を現像することと、を含むデバイス製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−102177(P2013−102177A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−281652(P2012−281652)
【出願日】平成24年12月25日(2012.12.25)
【分割の表示】特願2008−265070(P2008−265070)の分割
【原出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年12月25日(2012.12.25)
【分割の表示】特願2008−265070(P2008−265070)の分割
【原出願日】平成20年10月14日(2008.10.14)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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