説明

投影装置

【課題】 簡単な構成で排気口に到達するまでに排気風の温度を低減させ、装置外装の温度上昇を抑制することで、ユーザーへの不快感を低減させる。
【解決手段】 ランプ熱を排気する流路の一部を熱伝導部材で形成し、この熱伝導部材を他の排気流路の一部も兼ねて構成することで、熱伝導部材を介してランプ熱を熱輸送することができる為、局所的に高温になる排気温度を低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタなどの投影装置において、光源などの高温部における排熱構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えばプロジェクタなどの投影装置では、光源から発せられた光に、画像表示素子より画像情報を付加し、外部スクリーンに投影している。このようなプロジェクタの内部には、高温になる高圧水銀ランプなどの光源を搭載しているのが一般的である。この光源は投影画面の明るさを決定する重要な構成要素の一つであり、特に近年では高輝度な映像を得るために高出力のランプを採用する傾向にある。
【0003】
ランプの出力が大きくなると、それに比例してランプから放出される発熱量が増大し、装置内部を構成する部品に影響を及ぼすことがあるため、従来ではファンを用いて強制冷却するのが一般的である。この場合、ランプを冷却した後の風は高温になる為、装置から排気される排気風の温度は高温になる。その結果、排気口が設けられた部位の装置外傷面近傍が高温になったり、高温になった排気風が使用者に触れるなどの状況では、使用者に不快感を与える可能性がある。
【0004】
そこで、従来では特許文献1に開示されているように、風向案内板を金属にすることで、排気温度を低減できることが知られている。しかし、この案内板をただ金属にするだけでは、板金の熱容量分の吸熱しか行えず、熱平衡に達した後は吸熱されなくたってしまうため、結果として排気温度の低減がそれほど期待できない。
【0005】
また特許文献2に開示されている方法では、本来冷却すべき熱量を冷却する風量以上にファンで吸気する必要が生じてしまうことから、ファン騒音を増大させてしまうことが懸念される。
【0006】
また特許文献3に開示されているように、2つの排気ファンの送風方向を交差させることで、2つの排気風を混合させて排気することでランプ排熱の局所的な高温部を緩和させて、結果として排気温度を低減させることが知られている。しかし、この構成が採用できる構成は2つのファンを隣接配置できる小型なプロジェクタに限られるだけでなく、2つの風を混合するスペースを必要とするため装置の大型化を招いてしまう。更に、ランプ熱を排気するファンの吸気面では温度が低減されていないため、ファン寿命を低下させてしまう可能性もある。
【0007】
また特許文献4に記載の方法では、大がかりな構成のためコスト増、装置の大型化を招いてしまう懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−170541号公報
【特許文献2】特開2007−171391号公報
【特許文献3】特開2008−52272号公報
【特許文献4】特開2007−322950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、装置の大きさ、騒音、コストを犠牲にせず、効率的に排気温度を低減させることができないといった問題点があった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、このような問題を解決し、簡単な構成で排気口に到達するまでに排気風の温度を低減させ、装置外装の温度上昇を抑制することで、ユーザーへの不快感を低減させたプロジェクタを提供することにある。また、排気温度を低減させることで、例え排気風がユーザー側へ送風されたとしても不快感を低減させたプロジェクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、ランプ熱を排気する第一のファンと、ランプ以外の熱を排気する第二のファンと、ランプから第一のファンまでを導く排気ダクトを有する投影装置において、排気ダクトの少なくとも一部は熱伝導部材(例えば板金)で構成する。そして、この熱伝導部材の一部を第二の排気ファンの風路の一部を構成して配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の投影装置によれば、第一のファンがランプを冷却することによって高温になった排気風がダクトを構成する熱伝導部材に吸熱されることで、排気温度を低減させることができる。更に、熱伝導部材に吸熱された熱量は熱伝導部材を熱伝導によって熱輸送され、第二のファンの風路まで運ばれることで、第二のファンによって装置外部に排熱される。
【0013】
つまり、第一のファンで冷却した熱量を、第二のファンからも常に外部へ排熱することで、ランプ熱から熱伝導部材への吸熱作用も著しく低下することなく、プロジェクタ使用時間の全てに渡って排気温度を低減させることができる。
【0014】
その結果、第一のファンから排気される排気温度は低減され、第二のファンから排気される排気温度は上昇する。そのため、排気温度が均一化され、排気風のMax温度を低減させることができることで、ユーザーの不快感を低減したプロジェクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明を説明するための模式図
【図2】本発明を説明するための主要部図
【図3】本発明の全体エアフローを示す図
【図4】本発明の全体構成図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0017】
[実施例1]
図4は、本発明のプロジェクタの全体構成を示す。
【0018】
図4において、1はランプ、2はランプ1を包含するランプハウス、3はランプ1から照射された光に画像情報を付加して投影する光学エンジンユニット、4はランプハウス2全体を冷却する軸流ファンであるランプ排気ファン、5は例えば装置内部配置される基板類など装置全体の空気を排気することを目的とした全体排気ファン、6は外装に設けられたランプ熱排気口、7は全体排気ファンからの風を装置外部へ排出する全体熱排気口、8はランプ排気ファン4からランプ熱排気口までの流路の一部を構成しつつ、装置内部に配置される電気基板を保持する板金を示す。
【0019】
光学エンジンユニット3は、ランプ1から放射された光を全反射ミラーを使って折り返した略L字型の構成をとる。また、9には導かれた光を色分離し、画像情報を付加して合成する色分離合成光学系9が配置されている。色分離合成光学系9に含まれる画像表示素子(不図示)は、色分離合成光学系9と隣接する表示素子駆動基板10に接続されることで、使用者の意図する画像情報を光に付加することができる。
【0020】
これらは、複数部品より構成される外装(不図示)によって包含され、プロジェクタを構成する。
【0021】
次に、図3に本発明のプロジェクタのエアフローを示す。
【0022】
本発明の構成では、大きく分けて3種類の流路が構成されている。第一の流路Aは装置前面に設けられた吸気口11より、装置内部に吸気されランプ排気ファン4によってランプハウス2内に吹付けられた後、排気ダクト13を通ってランプ熱排気口6より排気される流路(実線矢印で表記)である。
【0023】
第二の流路は、吸気口11より装置内部に侵入し、ランプリフレクタ(不図示)の内部を冷却するランプ冷却ファン12に吸気され、ランプリフレクタ内部に送風された後、排気ダクト13内で第一の流路Aに合流し、ランプ熱排気口6から排気される流路(一点鎖線で表記)である。
【0024】
第三の流路Cは装置前面に設けられた吸気口11より装置内部に吸気され、シロッコファン(不図示)によって色分離合成系9に送風されることで、色分離合成光学系9を構成する光学素子や画像表示素子、および表示素子駆動基板10を冷却した後、全体排気ファン5によって全体排気口7から排気される流路C(破線矢印で表記)がある。
【0025】
ここで、ランプ排気ファン4はランプハウス2の風上側に配置することで、直接的にランプ熱をファン4が受けることがないため、ファン寿命を低下させることのない構成をとっている。また、全体排気ファン5は装置の広範囲から吸気することが望ましいため、発熱体の風下側にファン5を配置する構成をとっている。更に、色分離合成光学系9を冷却した風を効率的に排気するために、図3のような略L字型の光学レイアウトにおいて、ランプが配置されている側とは反対側の側面近傍に配置されることが望ましい。その為、ランプ排気ファン4と全体排気ファン5は隣接せず、ある程度の距離をもって配置されている。
【0026】
また、ランプ1からの発熱量は、その他の発熱体(電気素子や光学部品)に比べて格段に大きいためランプ周辺に比べて、それ以外の領域は温度が低いことが周知の事実であり、一般的にランプ周囲が高温になるような装置内の温度分布になることが一般的である。
【0027】
ここで、図1および図2を用いてランプハウス周囲のエアフローを詳細に説明する。ランプ排気ファン4から送風された風はランプハウス内部を送風される風W1、およびランプハウスの図1および図2における上部を流れる風W2に分離される。そして、ランプ冷却ファン12より送風された風はランプリフレクタ1Rの内部に送風される風W3と共に、ランプ熱排気口6に到達するまでの空間(排気ダクト13)において混合され、ランプ熱排気口6より排気される。
【0028】
このような構成において、ランプ排気ファン4からランプ熱排気口6までの流路である排気ダクトの一部を基板保持板金8で構成する。そうすることで、ランプ1を冷却した後の高温になった風から基板保持板金で吸熱することができる。吸熱された熱は熱平衡を保とうとする作用が働くため、基板保持板金8を熱伝導しながら拡散していく(熱の流れを図1にH1、H2で図示する)。この時、図1に示すように基板保持板金8で全体排気ファンの風路Cの一部を構成することで、熱輸送された熱H1、H2は再び全体排気ファン5によって送風される風に熱伝達され、全体排気口7より装置外部に排出される。そのため、ランプ熱排気口6より排気される熱量を低減させることができるため、排気面における局所的な高温化を防止でき、ユーザーへの不快感を低減することができる。
【0029】
また、熱伝導部材への熱吸収の効率をより高めるために、図2に示すように基板保持板金8に対して略垂直に吹付けている構成でも良い。流れに対して板金が平行に配置された場合に比べて、垂直に配置された場合は、流れの衝突によって生じた流れの乱流成分が板金近傍で形成される温度境界層を破壊する為、流れと板金の間での熱交換が行われやすくなる。そのため、よりランプ熱排気口より排気される熱量を低減させることができるため、排気面における局所的な高温化を防止でき、ユーザーへの不快感を低減することができる。
【0030】
(図2には、基板保持板金8に対して略垂直方向に吹付ける(W3´)構成について図示しているが、本発明は基板保持板金に対する角度を限定していない。)。
【0031】
また、熱伝導部材から排気風への放熱効率をより高めるために、図1に示すように全体排気ファン5の吸い込み方向に対して、基板保持板金の一部8aを略垂直に配置し、例えば、パンチングメタルのような複数の開口を設けた形状にする。このような構成にした場合、流れに対して板金が平行に配置された場合に比べて、流れの衝突によって生じた流れの乱流成分が板金近傍で形成される温度境界層を破壊する為、流れと板金の間での熱交換が行われやすくなる。その結果、よりランプ熱排気口より排気される熱量を低減させることができるため、排気面における局所的な高温化を防止でき、ユーザーへの不快感を低減することができる。
【0032】
また、本発明ではランプ1の熱量を全体排気ファン5まで熱輸送するための手段として基板保持板金8を用いた構成で説明を行ったが、本発明はこの構成に限定されない。但し、EMI特性の観点より、電気基板と対向し、基板面積を包含する(基板面積よりも大きな)接地され板金を配置することが望ましいのは周知の事実である。そこで、本発明においては広い面積を有し、高い熱伝導率を持つ基板保持板金8を排気ダクトの一部とすることで、効率良い熱輸送を実現している。しかし、本発明は熱輸送するための手段として、板金に限定されなく、例えば高熱伝導率を有する樹脂部材でも代用可能である。
【0033】
このように、板金(熱伝導部材)での熱伝導を利用してランプ排気ファン以外の排気ファン近傍まで熱輸送を行うことで、排気熱を分散させて、局所的な排気温度の高温化、排気口部材の高温化を防止することができる。
【0034】
本発明は、高圧水銀ランプなどの高温になる光源を用いる光学装置、例えばプロジェクタに適用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 ランプ
1R ランプリフレクタ
2 ランプハウス
3 光学エンジンユニット
4 ランプ排気ファン
5 全体排気ファン
6 ランプ熱排気口
7 全体排気口
8、8a 基板保持板金
9 色分離光学系
10 画像表示素子駆動基板
11 吸気口
12 ランプ冷却ファン
13 排気ダクト
A、B、C 流路
W1、W2、W3、W3´ 流路Aにおけるエアフロー
H1、H2 熱の移動

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の発熱源である光源と、
第一の発熱源よりも、発熱量の小さい第二の発熱源と、
第一の発熱源で発生した熱量を排熱する第一の排気ファンと、
第二の発熱源で発生した熱量を排熱する第二の排気ファンと、
第一の発熱源から第一のファンまでを導く排気ダクトと、
を有する投影装置において、
前記排気ダクトの少なくとも一部は熱伝導部材で構成され、
該熱伝導部材の一部は、前記第二の排気ファンの風路の一部を構成して配置されていることを特徴とする投影装置。
【請求項2】
前期熱伝導部材は、投影装置内部に配置される電気基板のシールドを兼ねる板金であることを特徴とする請求項1に記載の投影装置。
【請求項3】
前記光源は、光源の周囲を覆う光源ハウスに包含され、
前記光源を冷却する風は、少なくとも前記発光管を冷却する第一の風路、前記光源ハウス内を導風される第二の風路、
前記光源ハウス外部を導風する第三の風路が構成され、第一の風路は前記板金と垂直方向に吹きつける構成を特徴とする請求項1又は請求項2に記載の投影装置。
【請求項4】
前記ファンの風路内に配置された前記板金の一部は、前記ファンの吸気方向とは垂直な面を有し、該垂直面には複数の開口が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の投影装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−189836(P2012−189836A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−53681(P2011−53681)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】