説明

投影露光装置

【課題】裏面マークとレチクルマークとのアライメントにより、レチクルと感光性基板との位置合わせを行い、投影露光することが可能な露光方法を提供する。
【解決手段】感光性基板の裏面に設けられた裏面マークの位置を計測することで、レチクルR上のパターンを、投影光学系17を介して基板上に投影露光する装置であって、レチクル上に設けられたレチクルマークRMと共役な位置に第1の基準マークFM1を設けると共に、それらを計測する第1の計測センサが配置され、更に裏面マークと共役な位置に第2の基準マークFM2を設けると共に、それらを計測する第2の計測センサが配置されており、第1の基準マーク及び、第2の基準マークが基板ステージ上の感光性基板の厚さに対応する距離に配置されている投影露光装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置やプリント基板、LCD、MEMSの生産等に使用される投影露光方法に関するものであり、さらに詳細には、基板の裏面に設けられた裏面マークとレチクル上のレチクルマークの位置合わせを行い、レチクルパターンを感光性基板上に投影露光する投影露光装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パワートランジスタ、マイクロマシンまたはプリント基板等の製造においては、マスクのパターンを正確にシリコンウエハ、エポキシ樹脂等の感光性基板の所定の位置に露光することが重要である。上述の位置合わせは、通常、レチクル及び感光性基板のアライメントマークを重ね合わせるようにして行っている。特に、ある製造工程においては、感光性基板の両面にパターンを焼き付けることがあり、裏面のパターンに対する表面のパターンの位置を正確に合わせることが重要である。
【0003】
すなわち、表面にパターン形成された感光性基板を裏返して、裏側の面に露光してパターンを作る際、上記パターン形成済の面(裏返すことにより露光面に対し裏面側になる)に付された裏面マークとレチクルのレチクルマークの位置合わせを行い、裏面と表面のパターンの位置合わせを行う必要がある(以下、このようなアライメントを裏面アライメントという)。上記位置ズレの精度は、例えば、マイクロマシンの製造工程においては、線幅の微細化により、近年では0.5μm以下が要求される。
【0004】
従来より、この種の装置に於いて、上述の裏面アライメントは感光性基板の厚さ分、アライメント光学系のフォーカス位置が異なるという問題がある。これを解決する手段としては、特開昭63−24618(特許文献1)や特開平9−115812(特許文献2)が知られている。どちらの特許文献においても、感光性基板をレチクルと検出光学系との間から退避させた状態で、検出光学系によりレチクルのレチクルマークを検出してレチクルの位置合せを行ない、次に基板をレチクルと検出光学系との間に位置付けた状態で、検出光学系により基板の裏面マークを検出して基板の位置合せを行なう。
【0005】
特許文献1では、レチクルのレチクルマークを検出するとき、及び基板の裏面マークを検出するときの双方において、検出光学系の基準面に位置合せマークが結像する様に、検出光学系のレンズを動かす方法を取っている。
【0006】
一方、特許文献2では、レチクルのレチクルマークを検出するとき、及び基板の裏面マークを検出するときに、(1)基板ステージをZ方向に動かす、(2)基板の厚さに対応した透明部材を出し入れする、(3)投影光学系及び/またはレチクルをZ方向に動かすことで、検出光学系の基準面に位置合せマークが結像する様に制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−24618
【特許文献2】特開平9−115812
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1の方法では、基板の厚さ分フォーカスを制御するため、レンズをZ方向に駆動する必要があり、メカのガタ等によるドリフトが大きくなるという問題がある。更に、アライメント光学系はXY及びθ方向の計測の為、少なくとも2つ配置しなければならず、Z方向に駆動機構を有する光学系はコストアップになるという問題もある。
一方、特許文献2の方法では、レチクルマークのアライメントを行なった後に、(1)基板ステージをZ方向に動かす、(2)基板の厚さに対応した透明部材を出し入れする、(3)投影光学系及び/またはレチクルをZ方向に動かす必要がある。この駆動を行なう場合も、基板の厚さに対応する距離だけ基板ステージや光学部材等を動かす必要があり、Z方向駆動によるXY方向のドリフトや透明部材の挿入時の傾き誤差、投影光学系及び/またはレチクルのZ方向駆動によるXY方向のドリフトが大きくなるという問題が発生する。
【0009】
例えば、感光性基板としてウェハを用いた場合、ウェハの厚さは700μm±75μm程度である。上述の方法では、この分Z方向への機構の駆動が必要となる。XY方向の必要精度を0.5μmとすると、0.7mrad程度のXYドリフト量に抑える必要がある。これを実現する為の機構は非常に高価なものとなることは、容易に想像できる。これを基板ステージで行なう場合であるが、通常の露光装置に必要なZ駆動のストロークは、500μm程度とされている。一般的な基板ステージのZ駆動には、XY方向のシフトが少なく、小スペースで設計できる板バネが使われることが多いが、裏面アライメントに合わせた駆動ストロークを持たせることで、板バネの歪が倍に大きくなり、固定しているネジ部でのXYドリフトや基板ステージ自体の歪も大きくなる。駆動ストロークを大きくするとういうことは、この様に、更なる精度悪化や、スループットの低下を招く恐れもある。
【0010】
また、従来の方法では、裏面アライメント光学系によりレチクル上のレチクルマークをアライメントする。即ち、レチクルマークのウェハ面上投影像をリレー光学系によりリレーし、その共役な位置に検出光学系を配置する必要がある。しかし、レチクルマークのウェハ面上投影像の共役位置は、ウェハステージの駆動位置と干渉するので、実質的に、検出光学系を配置することは難しいという問題もある。
【0011】
本発明は上述の従来技術の問題点を考慮してなされたものであり、基板の厚さ分、各機構部分を駆動させなくても、裏面マークとレチクルマークとのアライメントにより、レチクルと感光性基板との位置合わせを行い、感光性基板上にレチクルパターンを投影露光することが可能な露光方法を提供することを目的とする。
【0012】
更には、レチクルマークのウェハ面上投影像を観察する共役位置に裏面アライメント光学系を配置しなくても、裏面マークとレチクルマークとのアライメントにより、レチクルと感光性基板との位置合わせを行い、感光性基板上にレチクルパターンを投影露光することが可能な露光方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の第1の手段においては、感光性基板の裏面に設けられた裏面マークの位置を計測することで、レチクル上のパターンを、投影光学系を介して基板上に投影露光する装置であって、前記レチクル上に設けられたレチクルマークと共役な位置に第1の基準マークを設けると共に、それらを計測する第1の計測センサが配置され、更に前記裏面マークと共役な位置に第2の基準マークを設けると共に、それらを計測する第2の計測センサが配置されており、前記第1の基準マーク及び前記第2の基準マークを基板ステージ上の前記感光性基板の厚さに対応する距離に配置する様にした。
【0014】
ここで図4を用いて、本発明に係る第1の手段の概要を説明する。図4は、レチクルR上のレチクルマークRMと第1基準マークFM1との共役関係、及びウェハW裏面に存在するウェハマークWMと第2基準マークFM2との共役関係を示したものである。レチクルアライメント顕微鏡14は、レチクルマークRMと共役な関係にあるマークのアライメントが可能な光学系であり、図4(A)はウェハWがウェハホルダ20上に搭載されていない状態で、レチクルアライメント顕微鏡14を用いてレチクルマークRMと基準マークFM1とをアライメントしているところを示している。この図では、共役条件を判り易く説明する為に、レチクルR上のパターンをウェハW面上に投影する為の投影光学系17、及びウェハW面と基準マーク22とを共役関係にする為のリレー光学系24を簡単なレンズを用いることで表現している。更には、ウェハホルダ20、リレー光学系24及び基準マーク22を連結させることで、ウェハホルダ20、リレー光学系24及び基準マーク22が、ウェハを駆動させる為のウェハステージ21(図示せず)上にあることを模式的に表している。
【0015】
実線で示された光束は、ウェハWを搭載しない状態で、レチクルマークRMと基準マークFM1とが共役な関係にあることを示している。即ち、レチクルR上のレチクルマークRMとウェハステージ21に設置された基準マーク22上の基準マークFM1とを、レチクルアライメント顕微鏡14によりアライメントすることが可能であり、アライメント動作により、レチクルマークRMと基準マークFM1の位置関係を計測することができる。
【0016】
図5(A)では、レチクルマークRMと基準マークFM1とをレチクルアライメント顕微鏡14にて計測する様子を示している。アライメント照明系101から出力された照明光は、レンズ102、ハーフミラー103及びレンズ104によりレチクルマークRMを照射する。同照明光は、リレー系100(投影光学系17及びリレー光学系24)により基準マークFM1上も照射する。レチクルマークRM及び基準マークFM1からの反射光は再び同じ光路を戻り、ハーフミラー103を透過した光束が、レンズ105により計測センサ106上に導かれる。図を見て分かる様に、レチクルマークRMと基準マークFM1は、計測センサ106面に対して共役な位置関係にあるので、レチクルマークRMの投影像と基準マークFM1の投影像とが計測センサ106上に投影されることになる。
【0017】
図5(B)にはレチクルマークRM、基準マークFM1、及び共役位置に無い基準マークFM2のパターン形状(黒い部分がクロム面、明るい部分がガラス面となる)を示しており、図5(C)の上図では計測センサ106上での投影像を示している(実際にはクロム面が反射するので、像の明暗は逆となるが、ここでは説明を簡単にする為、クロム面部分を黒く示している)。この計測センサ106は2次元CCDであり、投影像の光量強度分布データを、図5(C)の上図の点線の部分で図面上の上下方向に加算した計測データとして示すことが可能であり、これを図5(C)の下図で示している。共役関係にあるレチクルマークRM及び基準マークFM1は鮮明な像となって表れるが、非共役位置にある基準マークFM2は、デフォーカスによりアライメント精度に影響が無いレベルとなっているのが確認できる。
【0018】
ここで、基準マークFM1及び基準マークFM2を同じ形状にして重ね合せている理由は、両マーク共に基準マーク22上に形成されているので、デフォーカス量や位置が変化することが無い。よって、投影光学系のNA条件等で、基準マークFM2のデフォーカス像がアライメント精度に影響があった場合でも、一定のオフセットとなり、システムオフセットして取り除けば、アライメント再現性としては影響が出ない為である。
【0019】
次に図4(B)では、ウェハWをウェハホルダ20に設置したときの、ウェハ裏面アライメント光学系23を用いて、ウェハ裏面マークWMと基準マークFM2とをアライメントできる様に、ウェハステージ21を移動したところを示している。基準マークFM2は、上述の基準マークFM1が描画された基準マーク22のガラスプレートの反対面に描画されているので、ガラスプレートがピッチングまたはローリング誤差を持たない限り、その位置関係がずれることは無い。即ち、ウェハ裏面アライメント光学系23により基準マークFM2をアライメントすることで、ウェハ裏面アライメント光学系23と基準マークFM1との位置関係を計測することとなり、その結果、レチクルマークRMとウェハ裏面アライメント光学系23の計測点との距離D(以後、ベースライン値Dと称する)を求めることができる。
【0020】
更に、図4(B)では、設置されたウェハWのウェハ裏面マークWMと基準マークFM2が共役な関係にあることを実線で示している。即ち、基準マークFM2に対し、ウェハ裏面マークWMのズレ量xをウェハ裏面アライメント光学系23により計測することが可能であり、上述のベースライン値Dに計測したズレ量xを加えたD+xだけ、ウェハステージ21を移動することで、レチクルマークRMのウェハ上投影位置にウェハ裏面マークWMを重ね合わせることが可能となる。
【0021】
図6(A)では、基準マークFM2を裏面アライメント光学系23にて計測する様子を示している。アライメント照明系107から出力された照明光は、レンズ108、ハーフミラー109及びレンズ110により基準マークFM2を照射する。同照明光は、リレー光学系24によりウェハ裏面マークWM上も照射する。基準マークFM2及びウェハ裏面マークWMの反射光は再び同じ光路を戻り、ハーフミラー109を透過した光束が、レンズ111により計測センサ112上に導かれる。図を見て分かる様に、ウェハ裏面マークWMと基準マークFM2とは、計測センサ112面に対して共役な位置関係にあるので、ウェハ裏面マークWMの投影像と基準マークFM2の投影像とが計測センサ112上に投影されることとなる。
【0022】
図6(B)には、ウェハ裏面マークWM、基準マークFM2、及び共役位置に無い基準マークFM1のパターン形状(基準マークは黒い部分がクロム面、明るい部分がガラス面となる)を示しており、図6(C)の上図では、計測センサ112上での投影像を示している(実際にはクロム面が反射するので、像の明暗は逆となるが、ここでは簡単に説明する為、クロム面部分を黒く示している)。この計測センサ112は2次元CCDであり、投影像の光量強度分布データを、図6(C)の上図の点線の部分で図面上の上下方向に加算した計測データとして示すことが可能であり、これを図6(C)の下図で示している。共役関係にあるウェハ裏面マークWM及び基準マークFM2は鮮明な像となって表れるが、非共役位置にある基準マークFM1は、デフォーカスによりアライメント精度に影響が無いレベルとなっているのが確認できる。
【0023】
上述の様に、基準マークFM1及び基準マークFM2共に基準マーク22上に形成されているので、デフォーカス量や位置が変化することが無い。よって、基準マークFM1のデフォーカス像がアライメント精度に影響があった場合でも、一定のオフセットとなり、システムオフセットして取り除けば、アライメント再現性としては影響が出ないことが分かる。
【0024】
図4(C)では、D+xだけウェハステージ21を移動し、レチクルマークRMのウェハ上投影位置にウェハ裏面マークWMを重ね合わせた状態を示す。元々、設計値により、ウェハW上露光位置とウェハ裏面マークWMの位置との距離、及びレチクルマークRMとレチクル露光中心との距離は判っているので、これらを計算に加味することで、レチクルパターンの投影像を、ウェハ裏面マークWMの位置に応じて正確にウェハ表面に投影露光することができる。
【0025】
この様に、第1の基準マークFM1及び第2の基準マークFM2を、基板ステージ上の感光性基板の厚さに対応する距離に配置しているので、図4、図5、図6で説明した通り、一連のアライメント動作から露光動作に至るまで、感光性基板の厚さに対応したウェハステージ21のZ方向移動等の制御が不要となり、高いアライメント精度、高速処理が実現できる。更には、レチクルマークRM及び基準マークFM1のアライメント位置、並びに基準マークFM2及びウェハ裏面アライメント光学系23のアライメント位置はベースライン値Dだけ離すことができるので、ウェハ裏面アライメント光学系23を任意の位置に設置することが可能となる。
【0026】
次に、同等の効果が期待できる第2の手段としては、感光性基板の裏面に設けられた裏面マークの位置を計測することで、レチクル上のパターンを、投影光学系を介して基板上に投影露光する装置であって、レチクル上に設けられたレチクルマークと、基板ステージ上の共役な位置に基準マークを設けると共に、それらを計測する第1の計測センサが配置され、更に前記裏面マークと前記基準マークを同時に計測できる、前記感光性基板の厚さに対応する距離に2つの焦点を有するアライメント光学系を有し、更に前記アライメント光学系内に、前記基準マーク及び前記裏面マークを計測する第2の計測センサを配置する様にした。
【0027】
ここで図7を用いて、第2の手段の概略を説明する。図7はレチクルR上のレチクルマークRM及び基準マークFM1の共役関係、並びにウェハW裏面に存在するウェハ裏面マークWM及び基準マークFM1の共役関係を示したものである。レチクルアライメント顕微鏡14は、レチクルマークRMと共役な関係にあるマークのアライメントが可能な光学系であり、図7(A)はウェハWがウェハホルダ20上に搭載されていない状態で、レチクルアライメント顕微鏡14を用いてレチクルマークRMと基準マークFM1とをアライメントしているところを示している。この図では、共役条件を判り易く説明する為に、レチクルR上のパターンをウェハW面上に投影する為の投影光学系17、及びウェハW面と基準マーク22とを共役関係にする為のリレー光学系24を簡単なレンズを用いることで表現している。更には、ウェハホルダ20、リレー光学系24及び基準マーク22を連結させることで、ウェハホルダ20、リレー光学系24及び基準マーク22が、ウェハを駆動させる為のウェハステージ21(図示せず)上にあることを模式的に表している。
【0028】
実線で示された光束は、ウェハWを搭載しない状態で、レチクルマークRMと基準マークFM1とが共役な関係にあることを示している。即ち、レチクルR上のレチクルマークRMとウェハステージ21に設置された基準マーク22上の基準マークFM1とをレチクルアライメント顕微鏡14によりアライメントすることが可能であり、アライメント動作によりレチクルマークRMと基準マークFM1との位置関係を計測することができる。尚、詳細説明はFM2が存在しないこと以外は、図5の説明内容と同じなので、ここでは省略する。
【0029】
次に、図7(B)では、ウェハWをウェハホルダ20に設置した場合の、ウェハ裏面アライメント光学系23を用いて、ウェハ裏面マークWMと基準マークFM1とをアライメントできる様に、ウェハステージ21を移動したところを示している。2焦点光学系の搭載されたウェハ裏面アライメント光学系23により、基準マークFM1をアライメントすることで、ウェハ裏面アライメント光学系23と基準マークFM1との位置関係を計測することとなり、その結果、レチクルマークRMとウェハ裏面アライメント光学系23の計測点との距離D(以後、ベースライン値Dと称する)を求めることができる。
【0030】
更に、図7(B)では、設置されたウェハWのウェハ裏面マークWMと基準マークFM1との共役条件が、2焦点光学系(ここでは2焦点レンズ25を説明用に使用している)により、実線と点線の2つの光束に分かれていることを示している。後述するが、どちらの光束も計測センサ面では共役な関係にある。即ち、基準マークFM1に対し、ウェハ裏面マークWMのズレ量xをウェハ裏面アライメント光学系23により計測することが可能であり、上述のベースライン値Dに、計測されたズレ量xを加えたD+xだけウェハステージ21を移動することで、レチクルマークRMのウェハW上投影位置にウェハ裏面マークWMを重ね合わせることが可能となる。
【0031】
図8では、第2の手段に第4の手段を適用した場合について説明する。図8(A)では、基準マークFM1を裏面アライメント光学系23にて計測する様子を示している。アライメント照明系113から出力された照明光はレンズ114、ハーフミラー115、及び2焦点レンズ25により基準マークFM1を照射する。同照明光は、リレー光学系24によりウェハ裏面マークWM上も照射する。基準マークFM1及びウェハ裏面マークWMの反射光は再び同じ光路を戻り、ハーフミラー115を透過した光束が、レンズ116により計測センサ117上に導かれる。ウェハ裏面マークWMの投影像WM’は、2焦点レンズ25により、計測センサ117面に対して共役な位置関係にあることを、図8(A)の光束(点線で示す)で表している。更に、基準FM1も2焦点レンズ25により計測センサ117面に対して共役な位置関係となる(実線で示す)ので、ウェハ裏面マークWMの投影像WM’と基準マークFM1の投影像とが、計測センサ117面上に投影されることとなる。
【0032】
ここで、2焦点レンズ25について少し詳しく説明する。2焦点レンズとは、方解石という複屈折(透明な方解石を通して向こう側を見ると二重に見える光学的特徴)をおこす鉱物を用いたレンズであり、偏光方向に依存した2つの焦点を有する。照明光がランダム偏光なので、2焦点レンズ25により2つの焦点が形成されている。一方の偏光が実線の光束を示し、それに直交するもう一方向の偏光が点線の光束を示している。共に計測センサ117面と共役な条件にすることができる。
【0033】
図8(B)には、ウェハ裏面マークWMの投影像WM’、及び基準マークFM1のパターン形状(黒い部分がクロム面、明るい部分がガラス面となる)を示しており、図8(C)の上図では、計測センサ117上での投影像を示している(実際にはクロム面が反射するので、像の明暗は逆となるが、ここでは簡単に説明する為、クロム面部分を黒く示している)。この計測センサ117は2次元CCDであり、投影像の光量強度分布データを図8(C)の上図の点線の部分で図面上の上下方向に加算した計測データとして示すことが可能であり、これを図8(C)の下図で示している。共役関係にあるウェハ裏面マークWM、及び基準マークFM1が鮮明な投影像となっているのが確認できる。尚、第1実施例と異なり、FM2が存在していないので、基準マークFM1の位置とウェハ裏面マークWMの位置とを干渉しない様にすることが可能となる。
【0034】
図7(C)では、D+xだけウェハステージ21を移動し、レチクルマークRMのウェハ上投影位置にウェハ裏面マークWMを重ね合わせた状態を示す。元々、設計値により、ウェハW上露光位置とウェハ裏面マークWMの位置との距離、及びレチクルマークRMとレチクル露光中心との距離は判っているので、これらを計算に加味することで、レチクルパターンの投影像を、ウェハ裏面マークWMの位置に応じて正確にウェハ表面に投影露光することができる。
【0035】
この様に、2焦点光学系の焦点を感光性基板の厚さに対応する距離だけ離れる様に設計しているので、図7、図8で説明した通り、一連のアライメント動作から露光動作に至るまで、感光性基板の厚さに対応したウェハステージ21のZ方向移動等の制御が不要となり、高いアライメント精度、高速処理が実現できる。更には、レチクルマークRMと基準マークFM1とのアライメント位置、及び基準マークFM1とウェハ裏面アライメント光学系23とのアライメント位置は、ベースライン値Dだけ離すことができるので、ウェハ裏面アライメント光学系23を任意の位置に設置することが可能となる。
【0036】
尚、図7、図8による説明では、2焦点光学系を裏面アライメント光学系23内に設けているが、リレー光学系24内に2焦点光学系を設置しても同様の効果が得られるのは言うまでもない。これは、ウェハ裏面アライメント光学系23及びリレー光学系24を合わせて、アライメント光学系としての機能が得られる為である。
【0037】
同様の効果が期待できる手段として、第3の手段では、感光性基板の裏面に設けられた裏面マークの位置を計測することで、レチクル上のパターンを、投影光学系を介して基板上に投影露光する装置であって、基板ステージ上の前記裏面マークと共役な位置に基準マークを設けると共に、それらを計測する第1の計測センサが配置され、更に前記レチクル上に設けられたレチクルマークと前記基準マークとを同時に計測できる、前記感光性基板の厚さに対応する距離に2つの焦点を有するアライメント光学系を有し、更に前記アライメント光学系内に、前記基準マーク及びレチクルマークを計測する第2の計測センサを配置する様にした。
【0038】
ここで、図9を用いて、第3の手段の概要を説明する。図9は、レチクルR上のレチクルマークRM及び基準マークFM2、並びにウェハW裏面に存在するウェハマークWM及び基準マークFM2の共役関係を示したものである。図9(A)はウェハWがウェハホルダ20上に搭載されていない状態で、レチクルアライメント顕微鏡14を用いてレチクルマークRMと基準マークFM2とをアライメントしているところを示している。この図では、共役条件を判り易く説明する為に、レチクルR上のパターンをウェハW面上に投影する為の投影光学系17、及びウェハW面と基準マーク22とを共役関係にする為のリレー光学系24を簡単なレンズを用いることで表現している。更には、ウェハホルダ20、リレー光学系24及び基準マーク22を連結させることで、ウェハホルダ20、リレー光学系24及び基準マーク22がウェハを駆動させる為のウェハステージ21(図示せず)上にあることを模式的に表している。
【0039】
更に、第3の手段に第4の手段を適用した場合であるが、図9(A)ではウェハWを搭載しない状態で、レチクルマークRMと基準マークFM2との共役関係が2焦点光学系(ここでは2焦点レンズ26を説明用に使用している)により、実線と点線の2つの光束に分かれていることを示している。後述するが、どちらの光束も計測センサ面では共役な関係にある。即ち、レチクルR上のレチクルマークRMとウェハステージ21に設置された基準マーク22上の基準マークFM2とをレチクルアライメント顕微鏡14によりアライメントすることが可能であり、アライメント動作によりレチクルマークRMと基準マークFM2との位置関係を計測することができる。
【0040】
図10(A)では、レチクルマークRMと基準マークFM2の投影像FM2’とをレチクルアライメント顕微鏡14にて計測する様子を示している。アライメント照明系118から出力された照明光は、レンズ119、ハーフミラー120、及び2焦点レンズ26によりレチクルマークRMを照射する。同照明光は、リレー系100(投影光学系17及びリレー光学系24)により基準マークFM2上も照射する。レチクルマークRM及び基準マークFM2からの反射光は再び同じ光路を戻り、ハーフミラー120を透過した光束が、レンズ121により計測センサ122上に導かれる。図を見て分かる様に、レチクルマークRMと基準マークFM2とは、2焦点レンズ26により、計測センサ122面に対して共役な位置関係にあるので、レチクルマークRMの投影像と基準マークFM2の投影像FM2’とが計測センサ122上に投影されることになる。
【0041】
図10(B)には、レチクルマークRM(黒い部分がクロム面、明るい部分がガラス面となる)、及び基準マーク投影像FM2’を示しており、図10(C)の上図では、計測センサ122上での投影像を示している(実際にはクロム面が反射するので、像の明暗は逆となるが、ここでは簡単に説明する為、クロム面部分を黒く示している)。この計測センサ122は2次元CCDであり、投影像の光量強度分布データを図10(C)の上図の点線の部分で図面上の上下方向に加算した計測データとして示すことが可能であり、これを図10(C)の下図で示している。共役関係にあるレチクルマークRM、及び基準マークFM2が鮮明な投影像となっているのが確認できる。
【0042】
次に図9(B)では、ウェハWをウェハホルダ20に設置した場合の、ウェハ裏面アライメント光学系23を用いてウェハ裏面マークWMと基準マークFM2とをアライメントできる様に、ウェハステージ21を移動したところを示している。ウェハ裏面アライメント光学系23により基準マークFM2をアライメントすることで、ウェハ裏面アライメント光学系23と基準マークFM2との位置関係を計測することになり、その結果、レチクルマークRMとウェハ裏面アライメント光学系23の計測点との距離D(以後、ベースライン値Dと称する)を求めることができる。
【0043】
更に、図9(B)では、設置されたウェハWのウェハ裏面マークWMと基準マークFM2とが共役な関係にあることを実線で示している。即ち、基準マークFM2に対し、ウェハ裏面マークWMのズレ量xをウェハ裏面アライメント光学系23により計測することが可能であり、上述のベースライン値Dに、計測させたズレ量xを加えたD+xだけウェハステージ21を移動することで、レチクルマークRMのウェハW上投影位置にウェハ裏面マークWMを重ね合わせることが可能となる。尚、詳細説明については、FM1が存在しないこと以外は、図6の説明内容と同じなので、ここでは省略する。
【0044】
そして、図9(C)ではD+xだけウェハステージ21を移動し、レチクルマークRMのウェハ上投影位置にウェハ裏面マークWMを重ね合わせた状態を示す。元々、設計値により、ウェハW上露光位置とウェハ裏面マークWMの位置との距離、及びレチクルマークRMとレチクル露光中心との距離は判っているので、これらを計算に加味することで、レチクルパターンの投影像を、ウェハ裏面マークWMの位置に応じて正確にウェハ表面に投影露光することができる。
【0045】
この様に、2焦点光学系の焦点を感光性基板の厚さに対応する距離だけ離れる様に設計しているので、図9、図10で説明した通り、一連のアライメント動作から露光動作に至るまで、感光性基板の厚さに対応したウェハステージ21のZ方向移動等の制御が不要となり、高いアライメント精度、高速処理が実現できる。更には、レチクルマークRM及び基準マークFM2のアライメント位置、並びに基準マークFM2及びウェハ裏面アライメント光学系23のアライメント位置はベースライン値Dだけ離すことができるので、ウェハ裏面アライメント光学系23を任意の位置に設置することが可能となる。
【0046】
尚、2焦点レンズとして複屈折を用いた2焦点レンズ25、26を示したが、その他にも第5の手段として、2焦点光学系は軸上色収差を有する光学系であり、2つの異なる照明波長を用いれば、同様の効果を得ることができる。一般にウェハ表面に存在するマークを計測する場合、マークはレジスト等、感光性材料を介してアライメントが行われる。その為、レジスト膜厚による干渉縞の発生を抑える白色波長や、感光させる波長が使用できない等の制約より、長波長(0.5〜0.8μm程度の波長帯域)がアライメント用照明波長として使われる。
【0047】
しかし、感光性基板の裏面にあるマークにはレジスト等のアライメント精度に影響を与えるものが無い為、短波長、単波長等、あらゆる波長を選択することが可能となる。例えば2つの波長を用いて光学設計を行う際、感光性基板の厚さ分だけ軸上の色収差が発生する様にすれば、図7及び図10の実線と点線で示した光束の様な2焦点光学系を設計することが可能となる。但し、この場合、波長に応じて倍率色収差も発生する。よって、それぞれのマークをレンズ中心でアライメントするか、中心からの距離に応じた倍率色収差のソフトウェアによる補正等を考える必要がある。尚、この方法では、非計測面手前の対物レンズだけで2焦点レンズを構成する必要は無く、レチクルアライメント顕微鏡14やウェハ裏面アライメント光学系23内の全てのレンズにより、2つの焦点を発生させれば良い。但し、投影光学系を通る光は露光波長にする必要がある。
【0048】
第4の手段及び第5の手段どちらに於いても、2焦点を形成する光束は殆ど同じ場所を通るので、光学レンズ等の熱によるドリフト等が生じた場合であっても、両光束に同じ量の誤差が発生する。よって、光学系のテレセン(傾き)が変化しない限り、2焦点のXY方向の位置が変わることが無く、安定したアライメント精度を得ることができる。
【0049】
次に、第2の手段の2焦点光学系と同様の効果を得ることができる第6の手段としては、感光性基板の裏面に設けられた裏面マークの位置を計測することで、レチクル上のパターンを、投影光学系を介して基板上に投影露光する装置であって、レチクル上に設けられたレチクルマークと共役な基板ステージ上の位置に基準マークを設けると共に、それらを計測する第1の計測センサが配置され、更に前記裏面マークと共役な位置に配置された第2の計測センサと、前記基準マークと共役な位置に配置された第3の計測センサとを有し、前記第2の計測センサ及び前記第3の計測センサが前記感光性基板の厚さに対応する距離に配置する様にした。
【0050】
第6の手段の概略を説明するが、具体的な原理は、図7を用いて説明しているので、ここでは省略する。異なる部分は図8で説明したウェハ裏面アライメント光学系23の構成についてであり、図11にて説明を行う。図11(A)では、ウェハ裏面マークWMの投影像WM’と基準マークFM1とをウェハ裏面アライメント光学系23にて計測する様子を示している。アライメント照明系123から出力された照明光は、レンズ124、ハーフミラー125、及びレンズ126により基準マークFM1を照射する。同照明光は、リレー光学系24によりウェハ裏面マークWM上も照射する。基準マークFM1及びウェハ裏面マークWMからの反射光は再び同じ光路を戻り、ハーフミラー125を透過しレンズ127で導かれた光束のうち、ハーフミラー128を透過した光束が計測センサ129上に導かれる。一方、ハーフミラー128で反射した光束は、計測センサ130上に導かれる。
【0051】
図を見て分かる様に、計測センサ129は、基準マークFM1に対して計測センサ129の面が共役な位置関係(実線で示す)になる様に設置されており、計測センサ130は、ウェハ裏面マークの投影像WM’に対して計測センサ130の面が共役な位置関係(点線で示す)になる様に設置されている。よって、基準マークFM1の投影像が計測センサ129上に投影され、ウェハ裏面マークWMの投影像が計測センサ130上に投影されることになる。
【0052】
図11(B)には、ウェハ裏面マークWMの投影像WM’と基準マークFM1(黒い部分がクロム面、明るい部分がガラス面となる)とを示しており、図11(C)の上左図では、計測センサ129上での基準マークFM1の投影像を示している(実際にはクロム面が反射するので、像の明暗は逆となるが、ここでは簡単に説明する為、クロム面部分を黒く示している)。この計測センサ129は2次元CCDであり、投影像の光量強度分布データを図11(C)の上左図の点線の部分で図面上の上下方向に加算した計測データとして示すことが可能であり、これを図11(C)の下左図で示している。ここにはウェハ裏面マークWMの投影像もあるが、デフォーカス状態であり、マーク形状が異なり重なっていないので、基準マークFM1の計測に影響が無いのが確認できる。また、図11(C)の上右図では、計測センサ130上でのウェハ裏面マークWMの投影像を示している。この計測センサ130は2次元CCDであり、投影像の光量強度分布データを図11(C)の上右図の点線の部分で図面上の上下方向に加算した計測データとして示すことが可能であり、これを図11(C)の下右図で示している。ここには基準マークFM1の投影像もあるが、デフォーカス状態であり、マーク形状が異なり重なっていないので、ウェハ裏面マークWMの計測に影響が無いのが確認できる。
【0053】
これら計測センサ129により検出された基準マークFM1の位置と、計測センサ130により検出されたウェハ裏面マークWMの位置の相対ズレ量を求めることで、図7、図8で説明した内容と同様の効果が期待できる。尚、一般的にセンサを2つに分けた場合、その両方のセンサ位置がドリフトすることでアライメント誤差が発生する。しかし、この方法では、ハーフミラー128よりも基準マークFM1側は全て光学系を共有しているので、光学系にドリフトが発生しても同じ誤差となり、相対的誤差にはならない。又、ハーフミラー128よりも計測センサ側は拡大倍率が大きく、計測センサとしても2次元CCDを用いているので、アライメント誤差としては影響が少ない(例えば、投影倍率が20倍ならば、メカニカルなドリフトの影響は1/20となる)。
【0054】
次に、第3の手段の2焦点光学系と同様の効果を得ることができる第7の手段としては、感光性基板の裏面に設けられた裏面マークの位置を計測することで、レチクル上のパターンを、投影光学系を介して基板上に投影露光する装置であって、前記裏面マークと基板ステージ上の共役な位置に基準マークを設けると共に、それらを計測する第1の計測センサが配置され、更に前記レチクル上に設けられたレチクルマークと共役な位置に配置された第2の計測センサと、前記基準マークと共役な位置に配置された第3の計測センサとを有し、前記第2の計測センサ及び前記第3の計測センサが前記感光性基板の厚さに対応する距離に配置する様にした。
【0055】
第7の手段の概略を説明するが、具体的な原理は、図9を用いて説明しているので、ここでは省略する。異なる部分は、図10で説明したレチクルアライメント顕微鏡14の構成についてであり、図12にて説明を行う。図12(A)では、レチクルマークRMと基準マークFM2の投影像FM2’とをレチクルアライメント顕微鏡14にて計測する様子を示している。アライメント照明系131から出力された照明光は、レンズ132、ハーフミラー133、及びレンズ134により基準マークFM2を照射する。同照明光は、リレー系100(投影光学系17及びリレー光学系24)によりレチクルマークRM上も照射する。基準マークFM2及びレチクルマークRMからの反射光は再び同じ光路を戻り、ハーフミラー133を透過しレンズ135で導かれた光束のうち、ハーフミラー136を透過した光束が計測センサ137上に導かれる。一方、ハーフミラー136で反射した光束は、計測センサ138上に導かれる。
【0056】
図を見て分かる様に、計測センサ137は基準マークの投影像FM2’に対して計測センサ137の面が共役な位置関係(実線で示す)になる様に設置されており、計測センサ138はレチクルマークRMに対して計測センサ138の面が共役な位置関係(点線で示す)になる様に設置されている。よって、基準マークFM2の投影像が計測センサ137上に投影され、レチクルマークRMの投影像が計測センサ138上に投影されることとなる。
【0057】
図12(B)には、レチクルマークRMと基準マークFM2の投影像FM2’(黒い部分がクロム面、明るい部分がガラス面となる)を示しており、図12(C)の上左図では計測センサ138上でのレチクルマークRMの投影像を示している(実際にはクロム面が反射するので、像の明暗は逆となるが、ここでは簡単に説明する為、クロム面部分を黒く示している)。この計測センサ138は2次元CCDであり、投影像の光量強度分布データを図12(C)の上左図の点線の部分で図面上の上下方向に加算した計測データとして示すことが可能であり、これを図12(C)の下左図で示している。ここには基準マークFM2の投影像もあるが、デフォーカス状態であり、マーク形状が異なり重なっていないので、レチクルマークRMの計測に影響が無いのが確認できる。
また、図12(C)の上右図では、計測センサ137上での基準マークFM2の投影像を示している。この計測センサ137は2次元CCDであり、投影像の光量強度分布データを図12(C)の上右図の点線の部分で図面上の上下方向に加算した計測データとして示すことが可能であり、これを図12(C)の下右図で示している。ここにはレチクルマークRMの投影像もあるが、デフォーカス状態であり、マーク形状が異なり重なっていないので、基準マークFM2の計測に影響が無いのが確認できる。
【0058】
これら計測センサ138により検出されたレチクルマークRMの位置と、計測センサ137により検出された基準マークFM2の位置の相対ズレ量を求めることで、図9、図10で説明した内容と同様の効果が期待できる。尚、一般的にセンサを2つに分けた場合、その両方のセンサ位置がドリフトすることでアライメント誤差が発生する。しかし、この方法では、ハーフミラー136よりもレチクルマークRM側は全て光学系を共有しているので、光学系にドリフトが発生しても同じ誤差となるので、相対的誤差にはならない。又、ハーフミラー136よりも計測センサ側は拡大倍率が大きく、計測センサとしても2次元CCDを用いているので、アライメント誤差としては影響が少ない(例えば、投影倍率が20倍ならば、メカニカルなドリフトの影響は1/20となる)。
【発明の効果】
【0059】
以上の様に、本発明では第1の手段から第7の手段のうちの一つを用いて感光性基板の厚さに対応する様にしている。これらの方法により、一連のアライメント動作から露光動作に至るまで、感光性基板の厚さに対応したウェハステージ21のZ方向移動等の制御が不要となり、高いアライメント精度、高速処理が実現できる。更には、レチクルマークRM及び基準マークFMのアライメント位置、並びに基準マークFM及びウェハ裏面アライメント光学系23のアライメント位置はベースライン値Dだけ離すことができるので、ウェハ裏面アライメント光学系23を任意の位置に設置することが可能となる。しかし、一つの方法で行なわなくても、第1の手段から第7の手段の少なくとも2つを組み合わせることで同様の効果が期待できる。例えば、第1手段を用いる場合に、基準マークFM1と基準マークFM2とが重なる可能性がある。これは基準マーク22のプレートの厚さを大きくすれば解消するが、それではウェハの厚さに対応できない。そこで第6または第7の手段を用いて、計測センサを2つに分けて、それぞれの基準マークFM1とFM2とを別々の計測センサで計測すれば良い。僅かなドリフト誤差が発生しても、マーク同士が重なることによる問題は解決できる。
【0060】
例えば、第2の手段または第3の手段で2焦点光学系を用いた場合、ウェハの厚さに対応する様に2焦点光学系を設計すると、設計が難しく色々な制約を受ける可能性もある。そこで、設計し易い2焦点光学系のZ方向の距離とウェハの厚さの差分を、第6又は第7の手段を用いて、計測センサを2つに分けて、それぞれの基準マークFM1とFM2とを別々の計測センサで計測する様にしても良い。僅かなドリフト誤差が発生しても、2焦点光学系の設計自由度は大きくなる。
【0061】
勿論、計測センサを2つに分けることに問題があるならば、基準マークFM1と基準マークFM2とを設け、2焦点光学系のZ方向の距離と、基準マークFM1と基準マークFM2のZ方向の距離との差がウェハの厚さとなる様に設計すれば、同様の効果が期待できる。この様に、第1の手段から第7の手段を少なくとも2つ組み合わせることで、コスト、メカニカルな精度、装置の配置の為のスペース条件等、さまざまな用途に対応できる上に、一つの方法で実現する場合と同等の効果が期待できる。
【0062】
更に、第1の手段から第7の手段までは、一つの手段を用いて感光性基板の厚さに対応する様にしているが、感光基板の厚さは一定ではなく、第1の手段から第7の手段ではそれ以外の長さに設定することも可能である。例えば、ウェハの厚さの半分に設定した場合でも、一連のアライメント動作から露光動作に至るまで、感光性基板の厚さに対応したウェハステージ21のZ方向移動等の制御が半分で良いことになり、従来技術より高いアライメント精度、高速処理が実現できる。更に、レチクルマークRM及び基準マークFMのアライメント位置、並びに基準マークFM及びウェハ裏面アライメント光学系23のアライメント位置はベースライン値Dだけ離すことができるという効果は得ることができる。よって、完全にウェハの厚さに対応する条件としなくても、本発明の効果を用いることになるのは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】第1実施形態の説明図。
【図2】第2実施形態の説明図。
【図3】第3実施形態の説明図。
【図4】(A)第1の手段に於けるレチクルアライメントの説明図。(B)第1の手段に於けるベースライン計測、ウェハ裏面アライメント説明図。(C)第1の手段に於けるウェハ裏面マークと露光位置の位置合わせ説明図。
【図5】(A)第1の手段に於けるレチクルアライメント顕微鏡の共役条件図。(B)第1の手段に於けるレチクルアライメント顕微鏡の検出マーク形状図。(C)第1の手段に於けるレチクルアライメント顕微鏡の画像処理説明図。
【図6】(A)第1の手段に於けるウェハ裏面アライメント光学系の共役条件図。(B)第1の手段に於けるウェハ裏面アライメント光学系の検出マーク形状図。(C)第1の手段に於けるウェハ裏面アライメント光学系の画像処理説明図。
【図7】(A)第2の手段に於けるレチクルアライメントの説明図。(B)第2の手段に於けるベースライン計測、ウェハ裏面アライメント説明図。(C)第2の手段に於けるウェハ裏面マークと露光位置の位置合わせ説明図。
【図8】(A)第2の手段に於けるウェハ裏面アライメント光学系の共役条件図。(B)第2の手段に於けるウェハ裏面アライメント光学系の検出マーク形状図。(C)第2の手段に於けるウェハ裏面アライメント光学系の画像処理説明図。
【図9】(A)第3の手段に於けるレチクルアライメントの説明図。(B)第3の手段に於けるベースライン計測、ウェハ裏面アライメント説明図。(C)第3の手段に於けるウェハ裏面マークと露光位置の位置合わせ説明図。
【図10】(A)第3の手段に於けるレチクルアライメント顕微鏡の共役条件図。(B)第3の手段に於けるレチクルアライメント顕微鏡の検出マーク形状図。(C)第3の手段に於けるレチクルアライメント顕微鏡の画像処理説明図。
【図11】(A)第6の手段に於けるウェハ裏面アライメント光学系の共役条件図。(B)第6の手段に於けるウェハ裏面アライメント光学系の検出マーク形状図。(C)第6の手段に於けるウェハ裏面アライメント光学系の画像処理説明図。
【図12】(A)第7の手段に於けるレチクルアライメント顕微鏡の共役条件図。(B)第7の手段に於けるレチクルアライメント顕微鏡の検出マーク形状図。(C)第7の手段に於けるレチクルアライメント顕微鏡の画像処理説明図。
【図13】第1実施形態でウェハ裏面アライメント光学系が2本ある時の説明図。
【図14】(A)第1実施形態でウェハ裏面アライメント光学系が1本の時の右マーク検出。(B)第1実施形態でウェハ裏面アライメント光学系が1本の時の左マーク検出。
【図15】(A)第1実施形態でウェハ厚が標準の時のリレー光学系の側面図による説明図。(B)第1実施形態でウェハ厚が標準より薄いときの説明図。
【図16】(A)第2実施形態でウェハ裏面アライメント光学系による左マーク検出。(B)第2実施形態でウェハ裏面アライメント光学系による右マーク検出。
【図17】(A)第2実施形態でリレー光学系の側面図による左マーク検出を示した図。(B)第2実施形態でリレー光学系の側面図による右マーク検出を示した図。
【図18】(A)第3実施形態のウェハ裏面アライメント光学系によるベースライン計測図。(B)第3実施形態のウェハ裏面アライメント光学系による裏面マーク検出図。
【図19】(A)第3実施形態で第1の手段を用いた時を示すベースライン計測図。(B)第3実施形態で第1の手段を用いた時を示すウェハ裏面マーク計測図。
【図20】(A)第3実施形態で第2の手段を用いた時を示すベースライン計測図。(B)第3実施形態で第2の手段を用いた時を示すウェハ裏面マーク計測図。
【図21】(A)第3実施形態で第3の手段を用いた時を示すベースライン計測図。(B)第3実施形態で第3の手段を用いた時を示すウェハ裏面マーク計測図。
【図22】第1の手段を用いた時に基準マークFM1とFM2の形状を変えた時の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0064】
次に、図1を用いて、本発明を実施する際に用いられる第1形態の投影露光装置について説明する。制御装置1は、ステージ制御装置2、アライメント・フォーカス制御装置3、開口部制御装置4、及び露光量制御装置5に指令を出し、一連の制御を行うメイン制御システムである。
【0065】
この投影露光装置のシステムを簡単に説明していくと、i線やh、g線に代表されるレジストを感光可能な露光波長を射出する超高圧水銀灯6から射出された光束は、楕円鏡7により偏向され、照明均一手段であるロッド光学系9の入射面に集光される。ロッド光学系の入射手前には、上述の露光量制御装置5により制御される露光用シャッター8があり、露光開始の指令情報及び、積算露光量モニター(図示せず)の結果に基づく露光終了情報により開閉が制御されている。
【0066】
ロッド9から射出される均一化された照明光は、リレー光学系(レンズ10、ダイクロイックミラー11、レンズ13)によりレチクル上で所定の大きさに拡大され、所定の照明σでレチクルR上を照明する。その際、リレー光学系内には上述の照明σを決定する開口絞り12が瞳位置に設置されており、レチクルRの直上にはレチクルの視野を決定するブラインド15が設置されている。共に、上述の開口部制御装置4により制御される。
【0067】
レチクルRであるが、レチクルステージ16上に設置され、レチクルR上に配置された上述のレチクルマークRML、RMR(上述では1つのレチクルマークRMで説明したが、ここではレチクルアライメント顕微鏡14L、14Rそれぞれに対応した2つのレチクルマークRML、RMRを用いる)が、レチクルアライメント顕微鏡14L、14Rで観察できる位置に、レチクルRまたはレチクルアライメント顕微鏡14L、14Rを相対的に移動する。そして、アライメント・フォーカス制御装置3により、XY及びθ方向にレチクルアライメント顕微鏡14L、14Rに対するレチクルRのアライメント動作が行なわれる。
【0068】
レチクルアライメント顕微鏡14L、14Rに対して正確にレチクルが設置された状態で、図4(A)、図7(A)、図9(A)で説明した通り、ステージ制御装置2はウェハステージ21A上に設置された基準マーク22L、22R上のマークを、レチクルアライメント顕微鏡14L、14Rで観察できる位置にウェハステージ21Aを移動する。そして、アライメント・フォーカス制御装置3が、レチクルR位置と基準マーク22位置のアライメントを実行する。
【0069】
次に、図4(B)、図7(B)、図9(B)で説明した通り、ステージ制御装置2は、ウェハ裏面アライメント光学系23L、23Rで基準マーク22L、22Rを観察できる位置にウェハステージ21Aを移動する。そして、アライメント・フォーカス制御装置3が、ウェハ裏面アライメント光学系23L、23Rと基準マーク22L、22Rとのアライメントを実行する。この一連の動作により、制御装置1はレチクルパターンの投影像の位置とウェハ裏面アライメント光学系23L、23Rの計測位置との距離(ベースライン量)とを算出する。
【0070】
上述のレチクルアライメントとベースライン量との計測は、レチクルを交換した際に必ず行われる動作であり、その後、ウェハステージ21A上のウェハホルダ20AにウェハWが搭載される。ウェハWの裏面には、ウェハ裏面アライメント光学系23L、23Rで観察できる位置に、ウェハ裏面マークWMLとウェハ裏面マークWMRとが描画されている。尚、図1では、ウェハ裏面アライメント光学系23L、23Rからの照明光が基準マーク22L、22Rを透過し、リレー光学系24L、24Rでそれぞれ2回偏向されて、ウェハ裏面のウェハ裏面マークWML、WMRを照射し、その反射戻り光をウェハ裏面アライメント光学系23L、23Rで受光している様子を、点線を用いて簡略的に示している。詳細については、図4(B)、図4(C)、図7(B)、図7(C)、図9(B)、図9(C)を用いて説明しているので、ここではシーケンスに関する説明は省略する。
【0071】
図13には、ウェハステージ21A上のウェハホルダ20Aと、ウェハホルダ20Aの左右の切欠き部を利用して、ウェハ裏面アライメント光学系23L、23Rに、ウェハ裏面マークWML、WMRの画像をリレーするウェハステージ21Aに埋め込まれて配置されたリレー光学系24L、24Rとを示し、更には、基準マーク22L、22Rとウェハ裏面アライメント光学系23L、23Rとの位置関係を平面図で示している。また、図15は、リレー光学系24L、24R及び基準マーク22L、22Rの構造及び共役関係を説明する為の、第1の手段で説明した発明を例とした側面から見た断面図である。尚、レチクルアライメント顕微鏡14については、図5、図10、図12で説明しており、ウェハ裏面アライメント光学系23についても、図6、図8、図11で説明しているので、ここでは説明を省略し、アライメント光学系を構成する、基準マーク22、リレー光学系24についての説明を中心に行う。
【0072】
図15(A)で示した様に、リレー光学系24L、24Rは、2つの反射ミラー27、30とリレーレンズ28、29とで構成されており、ウェハ裏面マークWMは、基準マーク22のプレート上面に描画された基準マークFM2と共役であり、ウェハWの表面は、上述のプレート下面に描画された基準マークFM1と共役な関係になっている。基準マーク22のプレートの厚さは、標準的なウェハ厚(0.7mm)×プレート屈折率(1.6)程度であり、上述のプレート上面とウェハ表面の高さがほぼ一致する構成である。上述のベースライン計測時には、斜入射オートフォーカス系19を用いて、基準マーク22のプレート上面が露光面と一致する様に、ウェハステージ21AをZ方向に駆動する。ウェハのアライメントや露光時は、斜入射オートフォーカス系19を用いて、ウェハ表面が露光面と一致する様に制御されるので、上述の基準プレート上面とウェハ表面の高さをほぼ一致させておくことで、ベースライン計測、ウェハ裏面アライメント及び露光時に、殆どウェハステージ21AをZ駆動させる必要がなくなり、精度、スループット共に良好な結果が得られる。
【0073】
図15(B)ではウェハの厚さ公差は±75μm程度とされているので、例えば、ウェハの厚さが標準よりもdだけ薄い場合の共役関係を示している。上述の様に、ウェハアライメント時に、基準マーク22のプレート上面にフォーカスを合わせると、ベースライン計測及びウェハ裏面アライメントは良好に行えるが、露光の際、ウェハ表面と露光面とを合わせる為に、dだけウェハステージ21Aを上に駆動させる必要がある。但し、動かす量は数十μmZと小さいので、誤差としては小さい。仮に誤差が大きい場合でも、動かす量は数十μmZなので、例えば、アライメント光学系のNAが0.1程度ならば、アライメント光学系の焦点深度内となる。よって、少なくとも一回、ウェハ裏面アライメント後にウェハ露光面までスウェハステージを移動させ、その両方での基準マーク22の位置ズレ量を計測しておけば、ウェハステージが大きく上下駆動する際の駆動横ズレ誤差を補正することが可能になる。
【0074】
その他にも、ウェハの厚さ公差が小さいので、厚さの公差に応じてウェハ裏面アライメント光学系に焦点調整機構を設けてフォーカス位置の制御を行っても、誤差は小さい。更には、アライメント光学系の焦点深度内なので、元々ウェハ表面と露光面とを合わせた状態、即ち、基準マーク22のフォーカス位置からdだけズレたデフォーカス位置で、ベースライン計測やウェハ裏面アライメントを行っても誤差としては小さい。この様に、いずれの方法でアライメントを実行しても、本発明に於いては良好なスループット、アライメント精度が得られる。
【0075】
この第1実施形態では、ウェハ裏面アライメント光学系23L、23Rを採用しているが、ウェハWのアライメントはXY及びθ方向のアライメントなので、ウェハ裏面上離れた位置にあるウェハ裏面マークWMLとウェハ裏面マークWMRとをアライメントする必要があり、その2つのマーク位置をほぼ同時に計測してスループットを向上させることが目的である。図14(A)の様に、ウェハ裏面アライメント光学系23を一本だけ配置し、基準マーク22R及びウェハ裏面マークWMRを計測し、次に、図14(B)の様に、ウェハステージ21Aを右に移動して、ウェハ裏面アライメント光学系23により、基準マーク22L及びウェハ裏面マークWMLを計測する方法を取っても良い。スループットは遅くなるが、1本の光学系でアライメントを行うことが可能となるので、製造コストを抑えることができる。
【0076】
この様にしてレチクルRとウェハWの位置合わせを行なった後に、露光量制御装置5により制御される露光用シャッター8により、露光開始の指令情報及び積算露光量モニター(図示せず)の結果に基づく露光終了情報により開閉が制御され、レチクル上に露光光が照射される。レチクルR上のレチクルパターンを透過した光束は、投影光学系17によりその共役位置にあるレジストが塗布されたウェハW上に、上述のレチクルパターンの投影像を形成する。投影像の形成については、必要な解像度、焦点深度を得る為に、投影光学系の瞳位置に設置されたNA絞り18の絞りの大きさが、開口部制御装置4で制御されている。
【0077】
以上のように、露光の手順としては、レチクルRの設置、レチクルアライメント顕微鏡14を用いたレチクルRと基準マーク22とのアライメント、ウェハ裏面アライメント光学系23を用いた基準マーク22のアライメントによるベースライン計測、ウェハ裏面アライメント光学系23によるウェハ裏面マークWMアライメントの工程を経て、レチクルRのレチクルパターン像が投影光学系17によりその共役位置にあるレジストが塗布されたウェハW上に投影露光される。尚、図15では第1の手段を例に取り説明したが、第1の実施形態では、第1の手段から第7の手段いずれを用いても良好なスループット、アライメント精度を得ることが可能である。
【0078】
この様に、第1の実施形態では、リレー光学系24に少なくとも2つの反射面を設けて、ウェハWより上方に設置されたウェハ裏面アライメント光学系23を用いた方法について説明した。しかし、この方法では、図13で示した様に、ウェハステージ21Aの表面に基準マーク22を配置する必要があり、ウェハ裏面マーク数を増やした場合、ウェハステージの大きさを大きくする必要がある。そこで第2の実施形態では、リレー光学系24から反射面を除去し、ウェハWの下方にウェハ裏面アライメント光学系23を設置した方法について説明していく。
【0079】
尚、第2の実施形態では、第1の実施形態とウェハステージ21B、ウェハホルダ20B、及びリレー光学系24の構成が異なっている。ここでは、例えば4つのウェハ裏面マークWML、WMR、WMU、WMDを計測する場合について説明していく。尚、図4(B)、図7(B)、図9(B)で説明した様に、各ウェハ裏面マークWML、WMR、WMU、WMDに対応するリレー光学系24L、24R、24U、24D、及び基準マーク22L、22R、22U、22Dがあり、ウェハステージ21Bを順次移動することで、ウェハ裏面アライメント光学系23により、それぞれの位置でウェハ裏面マークWMと基準マーク22とを同時に計測できる構成となっている。
【0080】
まず、レチクルアライメント顕微鏡14L、14Rに対してレチクルRが設置された状態で、ステージ制御装置2が、ウェハステージ21B上に設置された基準マーク22L、22Rを、レチクルアライメント顕微鏡14L、14Rで観察できる位置にウェハステージ21Bを移動する。そして、アライメント・フォーカス制御装置3が、レチクルマークRML、RMRと基準マーク22L、22R位置とのアライメントを実行する。この様子を図2で示している。尚、それ以外の構成は第1の実施形態と同じなので、共通部分の説明については省略する。上述の様に、ウェハステージ21B上には、基準マーク22L、22R以外にも、ウェハ裏面マークWMU、WMDに対応する基準マーク22U、22Dが存在する。これらの基準マークはウェハステージ21Bに固定されており、互いの相対位置は変化することが無いので、上述のレチクルアライメント時に、少なくともレチクルマークRML、RMRと基準マーク22L、22R位置とのアライメントを実行すれば、XY及びθの位置ズレ誤差を計測することができる。但し、ウェハステージ21Bの熱膨張等により、お互いの基準マーク座標が変化することもある。この場合は、レチクルアライメント顕微鏡14L、14Rの少なくとも一方で、基準マーク22U、22Dが観察できる位置までウェハステージ21Bを移動し、各基準マークの相対位置を計測しておけば良い。
【0081】
図17は、図2に示されたリレー光学系24L、24Rを拡大した側面から見た断面図である。ウェハ裏面アライメント光学系23で、基準マーク22L上の基準マークFMLとウェハ裏面マークWMLとを計測できる位置に、ウェハステージ21Bを移動したときの様子を図17(A)に示し、リレー光学系24Lには、基準マークFMLとウェハ裏面マークWMLとを共役にするためのレンズ31L、32Lが設置されている。そのときの各部分の配置を示したのが、図16(A)の平面図となる。また、ウェハ裏面アライメント光学系23で、基準マーク22R上の基準マークFMRとウェハ裏面マークWMRとを計測できる位置に、ウェハステージ21Bを移動したときの様子を図17(B)に示し、リレー光学系24Rには、基準マークFMRとウェハ裏面マークWMRとを共役にするためのレンズ31R、32Rが設置されている。そのときの各部分の配置を示したのが、図16(B)の平面図となる。尚、同様にして、ウェハ裏面マークWMU、WMDに対応したリレー光学系24U、24Dと基準マークFMU、FMDとがあるが、ここでは説明を省略する。
【0082】
ウェハ裏面アライメント光学系23はウェハステージ21Bの移動により、図16の矢印で示した順に、各基準マークFMと各ウェハ裏面マークWMとの相対位置ズレ量を計測していく。予め、ベースライン計測により、レチクルRの投影位置、各基準マークFMのウェハステージ21B上の位置、及びウェハ裏面アライメント光学系23の計測位置は判っているので、上述の相対ズレ量から各ウェハ裏面マークの位置に対応したウェハ露光位置を算出することができる。尚、図17では第3の手段を例にとり説明したが、第2の実施形態では、第1の手段から第7の手段いずれを用いても良好なスループット、アライメント精度を得ることが可能である。
【0083】
この様に、第2の実施形態では、ウェハ裏面マーク毎にリレー光学系24及び基準マーク22を配置し、ウェハWより下方に設置されたウェハ裏面アライメント光学系23を用いた方法ついて説明した。しかし、この方法では、図17に示した様に、ウェハ裏面マーク毎にリレー光学系24及び基準マーク22を複数配置する必要があり、ウェハステージが重たくなり高価になる。そこで第3の実施形態では、リレー光学系24及び基準マーク22をウェハ裏面マーク下から切り離し、共通化する方法について説明していく。
【0084】
第3の実施形態では、第2の実施形態に比べ、ウェハステージ21C、ウェハホルダ20C、リレー光学系24の構成が異なってくる。ここでは、例えば8つのウェハ裏面マークWMを計測する場合について説明していく。尚、それ以外の構成は第1の実施形態と同じなので、共通部分の説明については省略する。但し、図4(B)、図7(B)、図9(B)で説明した内容と光学配置が異なるので、図19、図20、図21を用いて配置や共役関係については別途説明を行う。
【0085】
まず、レチクルアライメント顕微鏡14L、14Rに対してレチクルRが設置された状態で、ステージ制御装置2が、ウェハステージ21C上に設置された基準マーク22を、レチクルアライメント顕微鏡14L、14Rで観察できる位置にウェハステージ21Bを順次移動する。そして、アライメント・フォーカス制御装置3が、レチクルマークRML、RMRと基準マーク22上のFM位置とのアライメントを実行する。この様子が図3に示されている。レチクルマークRML、RMRと基準マーク22位置とのアライメントを実行すれば、ステージの走り座標基準でXY及びθの位置ズレ誤差を計測することができる。
【0086】
図19は、第1の手段を用いた場合における、図3に示されたウェハ裏面アライメント光学系23を拡大して側面から見た断面図である。ウェハWのウェハ裏面マークWMと同じ高さに配置されている基準マーク22上の基準マークFM2を、ウェハ裏面アライメント光学系23で計測できる位置にウェハステージ21Cを移動したときの様子が、図19(A)に示され、ウェハWのウェハ裏面マークWMを、ウェハ裏面アライメント光学系23で計測できる位置にウェハステージ21Cを移動したときの様子が、図19(B)に示される。
【0087】
尚、図19(A)に示す様に、レチクルマークRML、RMRと基準マーク22上の基準マークFM1位置とは共役であり、基準マークFM1はウェハW表面と同じ高さに配置されている。レチクルマークRML、RMRのウェハステージ上の投影位置と基準マークFM1とが重なる様に、ウェハステージ21Cをそれぞれ移動することで、レチクルアライメント顕微鏡14L、14Rにより、レチクルマークRML、RMRと基準マークFM1とのアライメントが可能となる。この様に、基準マーク22の位置をウェハ裏面マーク位置と別に配置することで、リレー光学系を取り除くことができる。尚、第1の手段においては、ウェハWの厚さに対応する様に、基準マーク22のプレート表裏に基準マークFM1及びFM2が配置されているので、誤差が発生しないが、その作用効果については、第1の手段で説明した通りである。
【0088】
図20は、第2の手段を用いた場合の、図3に示されたウェハ裏面アライメント光学系23を拡大して側面から見た断面図である。ウェハ裏面アライメント光学系23は、2焦点光学系である。ウェハWの表面と同じ高さに配置されている基準マーク22上の基準マークFM1を、ウェハ裏面アライメント光学系23で計測できる位置にウェハステージ21Cを移動したときの様子が、図20(A)に示され、ウェハWのウェハ裏面マークWMを、ウェハ裏面アライメント光学系23で計測できる位置にウェハステージ21Cを移動したときの様子が、図20(B)に示される。図を見れば判る様に、2焦点光学系の1つの焦点は基準マークFMであり、もう一つの焦点はウェハ裏面になる様に設計されている。
【0089】
尚、図20(A)に示す様に、レチクルマークRML、RMRと基準マーク22上の基準マークFM1位置とは共役であり、レチクルマークRML、RMRのウェハステージ上の投影位置と基準マークFM1とが重なる様に、ウェハステージ21Cをそれぞれ移動することで、レチクルアライメント顕微鏡14L、14RによりレチクルマークRML、RMRと基準マークFM1とのアライメントが可能になる。この様に、基準マーク位置を別に配置することで、リレー光学系を取り除くことができる。尚、第2の手段においては、ウェハ裏面アライメント光学系23に2焦点光学系を利用しているので、誤差が発生しないが、その作用効果については、第2の手段で説明した通りである。
【0090】
図21は、第3の手段を用いた場合の、図3に示されたウェハ裏面アライメント光学系23を拡大して側面から見た断面図である。レチクルアライメント顕微鏡14は、2焦点光学系である。ウェハWの裏面と同じ高さに配置されている基準マーク22上の基準マークFM2を、ウェハ裏面アライメント光学系23で計測できる位置にウェハステージ21Cを移動したときの様子が、図21(A)に示され、ウェハWのウェハ裏面マークWMを、ウェハ裏面アライメント光学系23で計測できる位置にウェハステージ21Cを移動したときの様子が、図21(B)に示される。図を見れば判る様に、2焦点光学系の1つの焦点は基準マークFM2であり、もう一つの焦点はウェハ表面になる様に設計されている。
【0091】
尚、レチクルアライメント顕微鏡14は2焦点光学系なので、レチクルマークRML、RMRと基準マーク22上の基準マークFM2位置とは計測センサ122上で共役であり、レチクルマークRML、RMRのウェハステージ上の投影位置と基準マークFM2とが重なる様にウェハステージ21Cをそれぞれ移動することで、レチクルアライメント顕微鏡14L、14Rにより、レチクルマークRML、RMRと基準マークFM2とのアライメントが可能となる。この様に、基準マーク位置を別に配置することで、リレー光学系を取り除くことができる。尚、第3の手段においては、レチクルアライメント顕微鏡14に2焦点光学系を利用しているので、誤差が発生しないが、その作用効果については、第3の手段で説明した通りである。
【0092】
以上、図19、図20、図21を用いて第3の実施形態に第1の手段から第3の手段を用いた場合について説明したが、第4の手段から第7の手段についても同様に用いることができるのは言うまでもない。第3の実施形態では、基準マーク22を別の位置に配置しているので、リレー光学系24を取り除くことが可能となっている。その為、図18の様にウェハ裏面マークを多数配置しても、そのウェハステージ21C及びウェハホルダ20Cの様に裏面マーク位置に開口を設け、ウェハ裏面アライメント光学系23で計測できる構成にするだけで良く、シンプルなステージ機構とすることが可能となる。尚、図18(A)は、ベースライン計測を行っている状態を示す平面図であり、図18(B)は、ウェハ裏面アライメントを実行している状態を示す平面図である。
【0093】
尚、第1の手段では、基準マーク22のプレート表裏に基準マークFM1及び基準マークFM2を設けているが、両面にパターンを描画するのが高価な場合には、片面にパターンが描画されたプレートを貼り合わせて両面にパターンを設ける様にしても良い。更に、基準マークFM1及び基準マークFM2の投影像が重なる問題については、図22の様に、パターン形状を変えて、投影像が重ならない様にすることも可能である。更に、基板の厚さが大きく異なる場合は、基準マークFM1及び基準マークFM2の間隔を変えた数種類の段差構造のプレートを用いて、基板の厚さに応じて最適なものを使い分けても良い。以上の様に、本発明の主旨を逸脱しない条件で、色々なバリエーションを考える事が可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 制御装置、
2 ステージ制御装置
3 アライメント・フォーカス制御装置
4 開口部制御装置
5 露光量制御装置
6 超高圧水銀灯
7 楕円鏡
8 露光用シャッター
9 ロッド光学系
10 レンズ
11 ダイクロイックミラー
12 開口絞り
13 レンズ
14 レチクルアライメント顕微鏡
15 ブラインド
16 レチクルステージ
17 投影光学系
18 NA可変絞り
19 斜入射オートフォーカス系
20,20A、B、C ウェハホルダ
21、21A、B、C ウェハステージ
22 基準マーク
23 ウェハ裏面アライメント光学系
24、24L、R リレー光学系
25、26 2焦点レンズ
27、30 反射ミラー、
28、29 リレーレンズ
101、107、113、118、123、131 アライメント照明系
102、104、105、108、109、111、113、114、116、119、121、124、126、127、132、134、135 レンズ
103、109、115、120、125、128、133、136 ハーフミラー
106、112、117、122、129、130、137、138 計測センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光性基板の裏面に設けられた裏面マークの位置を計測することで、レチクル上のパターンを、投影光学系を介して基板上に投影露光する装置であって、前記レチクル上に設けられたレチクルマークと共役な位置に第1の基準マークを設けると共に、それらを計測する第1の計測センサが配置され、更に前記裏面マークと共役な位置に第2の基準マークを設けると共に、それらを計測する第2の計測センサが配置されており、前記第1の基準マーク及び前記第2の基準マークが基板ステージ上の前記感光性基板の厚さに対応する距離に配置されていることを特徴とする投影露光装置。
【請求項2】
感光性基板の裏面に設けられた裏面マークの位置を計測することで、レチクル上のパターンを、投影光学系を介して基板上に投影露光する装置であって、レチクル上に設けられたレチクルマークと、基板ステージ上の共役な位置に基準マークを設けると共に、それらを計測する第1の計測センサが配置され、更に前記裏面マークと前記基準マークとを同時に計測できる、前記感光性基板の厚さに対応する距離に2つの焦点を有するアライメント光学系を有し、更に前記アライメント光学系内に、前記基準マーク及び前記裏面マークを計測する第2の計測センサが配置されていることを特徴とする投影露光装置。
【請求項3】
感光性基板の裏面に設けられた裏面マークの位置を計測することで、レチクル上のパターンを、投影光学系を介して基板上に投影露光する装置であって、基板ステージ上の前記裏面マークと共役な位置に基準マークを設けると共に、それらを計測する第1の計測センサが配置され、更に前記レチクル上に設けられたレチクルマークと前記基準マークとを同時に計測できる、前記感光性基板の厚さに対応する距離に2つの焦点を有するアライメント光学系を有し、更に前記アライメント光学系内に、前記基準マーク及びレチクルマークを計測する第2の計測センサが配置されていることを特徴とする投影露光装置。
【請求項4】
前記感光性基板の厚さに対応する距離に2つの焦点を有するアライメント光学系が複屈折レンズを用いたものであることを特徴とする、請求項2または3に記載の投影露光装置。
【請求項5】
前記感光性基板の厚さに対応する距離に2つの焦点を有するアライメント光学系が、軸上色収差を有する光学系であり、2つの異なる照明波長を用いたものであることを特徴とする、請求項2または3に記載の投影露光装置。
【請求項6】
感光性基板の裏面に設けられた裏面マークの位置を計測することで、レチクル上のパターンを、投影光学系を介して基板上に投影露光する装置であって、レチクル上に設けられたレチクルマークと共役な基板ステージ上の位置に基準マークを設けると共に、それらを計測する第1の計測センサが配置され、更に前記裏面マークと共役な位置に配置された第2の計測センサと、前記基準マークと共役な位置に配置された第3の計測センサとを有し、前記第2の計測センサ及び前記第3の計測センサが前記感光性基板の厚さに対応する距離に配置されていることを特徴とする投影露光装置。
【請求項7】
感光性基板の裏面に設けられた裏面マークの位置を計測することで、レチクル上のパターンを、投影光学系を介して基板上に投影露光する装置であって、前記裏面マークと基板ステージ上の共役な位置に基準マークを設けると共に、それらを計測する第1の計測センサが配置され、更に前記レチクル上に設けられたレチクルマークと共役な位置に配置された第2の計測センサと、前記基準マークと共役な位置に配置された第3の計測センサとを有し、前記第2の計測センサ及び前記第3の計測センサが前記感光性基板の厚さに対応する距離に配置されていることを特徴とする投影露光装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2011−114209(P2011−114209A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−269976(P2009−269976)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(501466938)株式会社目白プレシジョン (31)
【出願人】(509304531)有限会社西デザインコンサルティング (2)
【Fターム(参考)】