説明

投薬のレベルを自動的に制御するための方法および装置

【課題】患者の生理学的状態に関する関連する情報を捕捉し、苦痛の処置を最適化するために投薬の量を自動的に調節し、そしてその患者の生活の質を改善する方法および装置を提供すること。
【解決手段】患者の生理学的状態に関する関連する情報を捕捉し、苦痛の処置を最適化するために投薬の量を自動的に調節し、そしてその患者の生活の質を改善する方法および装置が提供される。本発明の好ましい実施態様は、疼痛の処置を効果的にして患者の生活の質を改善するするために、苦痛レベル、副作用および患者の傷害に関する情報を捕らえ、そしてその患者の医師によって選択された所定のレベル内で薬剤の量を自動的に調節する方法および装置に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、薬剤レベルを自動的に患者に合わせるための方法および装置に関し、より詳細には、患者制御鎮痛法において、投与の基底速度およびボーラス速度を患者の痛みの強度に基づいて調節することに関する。
【背景技術】
【0002】
注入ポンプは、液体薬剤を患者に自動的に投与するために使用される。この液体薬剤は、薬剤の供給源から供給され、カテーテルまたは他の注入デバイスによって患者に送達される。液体薬剤が注入される様式は、種々の注入モードを有し得る注入ポンプによって制御される。典型的には、注入ポンプは、以下の5つの注入の基本モードで作動し得る:1)連続モード(ここで、ポンプは単一容量を単一速度で送達する);2)自動ポンプモード(ここで、ポンプは液体薬剤を、閾速度まで徐々に増加し、ある期間その閾速度にとどまり、次いで徐々に減少するような速度で送達する);3)断続モード(ここで、ポンプは個別の液体容量を、比較的長い期間を空けて送達(例えば、3時間毎に1液体容量)する);4)カスタムモード(ここで、ポンプは25回の異なる期間の各々の間、固有の注入速度を送達するようにプログラムされ得る);および5)患者制御鎮痛(PCA)モード(この間、ポンプは、患者の要求に応答して鎮痛剤のボーラスを定期的に注入する)。
【0003】
疼痛管理法において、疼痛除去薬または鎮痛薬は、注入ポンプによって、患者の静脈、あるいは硬膜外腔または硬膜下腔内へと患者に送達される。通常、薬剤は基底速度と呼ばれる一定速度で送達される。医師は、ポンプに基底速度をプログラムする。しかし、患者は、所望するなら、苦痛レベルを下げるために制限内でさらなる薬剤を自己投与し得る。これはボーラスコードを介してなされる。患者はボーラスコード上のボタンを押し、そしてポンプは薬剤の小ボーラスを患者に送達する。ボーラスコードのボタンを押すことに応答して提供される薬剤の最大レベルは、医師によってポンプにプログラムされる。ボーラスの解放をもたらす押しボタンの最大数はまた、医師によってポンプにプログラムされる。一旦ポンプが医師によってプログラムされると、患者は必要なときはいつでも、要求の間の時間に関係なく、ボーラスを自己投与し得る。しかし、患者がプログラムされたボーラスの最大数を超える場合、さらなる所望のボーラスは少しも成功せず、薬剤の送達は起こらない。
【0004】
医師は、副作用のレベルを軽減するために、期間の間、常に患者に与えられる薬剤の量を制限する。いくつかの鎮痛薬は、大きな望ましくない副作用(例えば、吐き気、嘔吐、痒みおよび錯乱、心臓減圧および呼吸減圧)を有するか、または十分な量になると死をもたらし得る。患者の機能(例えば、運動および意識)は、痛みおよび副作用に影響される。
【0005】
鎮痛剤の量の制御、すなわち、患者に有効な基底速度、ボーラス用量およびボーラス用量の最大数は、競争要件の繊細なバランスである。鎮痛を増大させるため、医師はより多くの薬剤を処方する。しかし、大用量のある鎮痛剤は副作用を増大し得、患者の機能を損ない得る。鎮痛剤の使用によって、患者が動き回り得るのに十分なまで痛みが軽減される。あるレベルの錯乱を生じる鎮痛剤を使用することによって、患者の運動が減じる。
【0006】
急性の治療の間、患者がさらなる鎮痛薬をより多く必要とした場合、常に副作用および患者の機能性を考慮しながら、PCA基底速度、ボーラス速度、およびボーラス量を、より頻繁に調節し得ることが重要である。
【0007】
注入モードは、介護者または医師によって注入ポンプにプログラムされる。病院または他の介護施設において、医師または介護者は、プログラムされた注入モード、用量および頻度により患者が適切に鎮痛されているか否かを調べるために、1日に1回または2回患者を往診し得る。患者が自宅で、または介護施設を離れて投薬を受けている場合、このような往診の頻度は少なくなり得る。ほとんどのプレプログラムモードにおいて、モード、用量および頻度を1日に1回または2回再検査することが十分であり得る。しかし、患者がPCAモードである場合、この患者の状態は、変わり得、医師または介護者によるより頻繁な調節およびより頻繁な往診を必要とする。患者が、さらなる調整または往診を医師または介護者から受けることができない場合、自宅または病院であろうと、この患者は非常に痛み、長時間の間適切な鎮痛を受けることができない。
【0008】
Coutreらの特許文献1は、注入ポンプ管理システムを開示し、ここで、患者の生理的徴候は、バイオフィードバックループにおいて使用される。このシステムは、患者の生理的徴候を評価し、これらの徴候に基づく代替の注入処置を提案する。次いで、その提案された改変が確認のためにオペレーターに送られる。送達速度の変更は、オペレーター(医師または介護者)によってなされるため、患者は任意の鎮痛を受け得る前に、オペレーターが提案された変更を評価し得るまで待たなければならない。
【特許文献1】米国特許第5,643,212号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
患者制御鎮痛法において、患者の苦痛レベル、副作用および任意の機能障害を考慮して薬剤レベルを調節する自動的な方法が必要である。患者の苦痛レベル、副作用および機能障害を考慮して介護者または医師と接触することなく、患者による入力に応答して自動的に薬剤レベルを調節するための装置が必要である。患者制御鎮痛法において、診断基準の所定のセットを使用して薬剤レベルを自動的に調節する方法が必要である。この方法は患者特異的であり、さらに、患者に介護者または医師と接触することなく調節された薬剤を投与する能力を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、以下の手段を提供する。
(項目1) プログラム可能な注入ポンプから投与される患者の投薬のレベルを自動的に制御するための方法であって、以下の工程:
その注入ポンプを、患者特異的な所定の範囲の投薬のセットでプログラムする工程;
その患者の現在の投薬の評価を開始する工程;
その患者の苦痛のレベルに関する情報を得る工程;
その患者の副作用に関する情報を得る工程;
その患者の機能障害に関する情報を得る工程;
その患者の現在の投薬に関する情報を得る工程;
その患者の現在の投薬、苦痛レベル、副作用、および機能障害を、その患者特異的な所定の範囲の投薬のセットで評価する工程;ならびに
その評価に基づいて、その患者の投薬の投与を制御する工程、
を包含する、方法。
(項目2) 上記患者の現在の投薬に関する情報を得る工程が、所定の時間にわたってその患者に投与された投薬の量に関する情報を保存することを包含する、項目1に記載の方法。
(項目3) 上記患者の投薬の投与を制御する工程が、基底送達速度、ボーラス用量、および所定の時間枠内に許容されるボーラスの数の改変を包含する、項目1に記載の方法。
(項目4) 上記患者の苦痛レベルに関する情報を得る工程が、さらに、許容されるボーラスの最大数を超えるその患者によってなされるボーラス要求の数を保存することを包含する、項目1に記載の方法。
(項目5) 上記患者の苦痛レベル、副作用、および機能障害に関する情報を得る工程が、さらに、その患者の苦痛のレベル、副作用、および機能障害に関してその患者に質問する工程を包含する、項目2に記載の方法。
(項目6) 上記患者の副作用に関する情報を得る工程が、さらに、その患者の副作用の独立した評価を提供する工程を包含する、項目2に記載の方法。
(項目7) 上記患者の機能障害に関する情報を得る工程が、さらに、その患者の機能障害の独立した評価を提供する工程を包含する、項目2に記載の方法。
(項目8) 患者の投薬のレベルを自動的に制御するための注入ポンプを操作するためのルーチンであって、その注入ポンプがそのルーチンを実行するためのコントローラおよびそのルーチンを保存するためのメモリを備え、その患者の現在の投薬の評価についての要求に対して応答性であり;そのルーチンは;
そのメモリに保存された患者特異的な所定の範囲の投薬のセット;
その患者の苦痛レベルに関する情報を得るための手順;
その患者の副作用に関する情報を得るための手順;
その患者の機能障害に関する情報を得るための手順;
その患者の現在の投薬に関する情報を得るための手順;
その患者の現在の投薬、苦痛のレベル、副作用、および機能障害を、患者特異的な所定の範囲の投薬のセットで、評価するための手順;ならびに
その評価に基づいてその患者の投薬を改変するための手順、
を包含する、ルーチン。
(項目9) 液体医薬を患者に投与するための注入ポンプであって、以下:
その患者に連結するように適合された液体注入デバイス;
その液体注入デバイスに連結された導管;
その液体医薬を、その導管を通ってその患者へとその液体注入デバイスを介して送り出すためのポンプ機構;
そのポンプ機構を制御するためのコントローラであって、その患者に投与された液体医薬の量を制御する、コントローラ;
患者特異的な所定の速度およびその患者に投与されるべき液体医薬の量のセットを保存するメモリ;
その患者の苦痛レベル、副作用、および機能障害に関する情報を得るためのデータ獲得ルーチン;ならびに
その患者の苦痛レベル、その患者の副作用、その患者の機能障害、およびその患者に投与されるべき液体医薬の現在の速度および量に関するデータを処理するため、ならびにその患者に投与されるべきその液体医薬の速度および量を患者特異的な所定の範囲の投薬のセットに従って自動的に変更するための制御ルーチン、
を備える、注入ポンプ。
(項目10) さらに、上記メモリが、所定の時間にわたって上記患者に投与される液体医薬に関するデータを保存し、そして上記改変ルーチンが、その患者に投与される液体医薬に関するデータを処理する、項目9に記載の注入ポンプ。
(項目11) 上記患者に投与される液体医薬の現在の速度および量が、基底送達速度、ボーラス用量、および所定の時間枠内に許容されるボーラスの数を含む、項目10に記載の注入ポンプ。
(項目12) 上記患者の苦痛のレベルに関するデータが、ボーラスの最大数を超えるその患者によってなされるボーラス要求の数を含む、項目11に記載の注入ポンプ。
(項目13) 上記患者の苦痛のレベル、副作用、および機能障害に関するデータが、その患者の苦痛のレベル、副作用、および機能障害に関してその患者に質問することに応答して保存されるデータを含む、項目11に記載の注入ポンプ。
(項目14) 上記患者の副作用に関するデータが、その患者の副作用の独立した評価から保存されたデータを含む、項目11に記載の注入ポンプ。
(項目15) 上記患者の機能障害に関するデータが、その患者の機能障害の独立した評価から保存されたデータを含む、項目11に記載の注入ポンプ。
(項目16) プログラム可能な注入ポンプから投与される患者の医薬のレベルを自動的に制御するための方法であって、以下:
その注入ポンプを患者特異的な所定の範囲の投薬のセットでプログラムする工程;
その患者の現在の投薬を評価する工程;
その患者の生理学的状態を評価する工程;ならびに
その患者の投薬の投与を、その評価に基づいて投薬の所定の範囲内に制御する工程、
を包含する、方法。
(項目17) 上記患者の生理学的状態を評価する工程が、その患者の苦痛のレベル、その患者の副作用、およびその患者の機能障害を評価することを包含する、項目16に記載の方法。
(項目18) さらに、上記患者の生理学的状態についてその患者に質問する工程;およびその患者の応答を保存する工程を包含する、項目16に記載の方法。
【0011】
(発明の要旨)
本発明の好ましい実施態様は、疼痛の処置を効果的にして患者の生活の質を改善するするために、苦痛レベル、副作用および患者の傷害に関する情報を捕らえ、そしてその患者の医師によって選択された所定のレベル内で薬剤の量を自動的に調節する方法および装置に関する。
【0012】
プログラム可能な注入ポンプによって提供されるべき鎮痛剤を処方する前に、医師または介護者は、特定の患者のためにポンプをプログラムしなければならない。特定のPCA処置のプログラミングに加えて、本発明の好ましい実施態様に従って、基底速度、ボーラス用量の最大数および各ボーラス用量の容量をプログラミングすることによって、プログラム可能な注入ポンプはPCA処置を改変するためのルーチンを含む。PCA改変ルーチンは、プリプログラムされた基底速度の値、特定の患者についてのボーラス数および量(これらは、医師または介護者によって入力される)を記憶する。このルーチンはまた、鎮痛アルゴリズムを含み、患者の苦痛レベル、副作用および機能障害を考慮した入力に応じて、PCA処置を改変する。
【0013】
苦痛レベルは2つの方法のいずれかを使用してか、またはその2つの方法の組み合わせによって決定され得る。第1の方法では、プログラム可能な注入ポンプは、患者によるボーラス要求の回数を記憶し、それが処方期間にわたってボーラスの送達をもたらしたか否かを記憶する。患者が、短期間の間に可能な最大数を超えたかなりの数のボーラス要求を行う場合、これは、患者の苦痛レベルが高い徴候として使用される。苦痛レベルを決定する第2の方法は、患者に直接質問し、そして患者の反応を評価することである。これら両方の方法の組み合わせがまた使用され得る。
【0014】
副作用の情報は、これら2つの方法のいずれか、またはこれら2つの組み合わせを使用することによって決定され得る。第1の方法において、患者は特定の副作用についての様々な質問を受ける。第2の方法において、患者が病院または介護者がいる他の施設にいる場合、介護者は、患者の副作用についての質問に対する患者の回答をその患者のカルテに記録する。介護者はまた、その患者の副作用についての観察結果をその患者のカルテに記録し得る。患者のカルテに記録されたデータは、後にプログラム可能な注入ポンプに入力され得る。これら両方の方法の組み合わせがまた使用され得る。
【0015】
同様に、注入ポンプによって促される特定の要望に応答して、患者の機能障害に関する情報が、患者あるいは介護者、または両方の組み合わせによって入力され得る。
【0016】
全てのデータの入力が完了した後、このデーターはアルゴリズムによって処理され、そして患者のPCA投薬速度はこのアルゴリズムに適合されるか、またはアルゴリズムによって表示される場合は、調節される。
【0017】
本発明の代替の実施態様において、患者のバイタルサインがモニターされる場合、これらのバイタルサインは副作用および患者の機能に関するデータを提供するために使用され得る。バイタルサインのデータはデータポートを介してプログラム可能な注入ポンプに入力され得、アルゴリズムによって処理され得、そして患者のPCA投薬が調節され得る。
【0018】
本発明のこれらおよび他の特徴および利点は、好ましい実施態様の詳細な説明を考慮すると当業者に明らかであり、これは図面、以下に提示される簡単な説明を参照してなされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(好ましい実施態様の詳細な説明)
ここで図面、特に図1および1Aを参照すると、本発明を具体化する携帯型注入ポンプが本明細書中に示され、そして一般に参照番号10によって同定される。注入ポンプ10はカテーテル13を介して患者11に液体薬剤を提供する。ボーラスコード15はポンプ10に接続される。患者11はボーラスボタン17を押すことによってボーラス要求を行う。ボーラスボタン17からの信号はボーラスコード15を通り、ボーラス注入要求スイッチ332まで伝わり(図2を参照のこと)、この要求がコントローラー200によって処理される(図2を参照のこと)。
【0020】
注入ポンプ10は、患者の鎮痛剤の自動調節を提供する。カセット12はポンプ10に挿入可能である。携帯型ポンプ10は、患者に接続されたポーチまたは他のデバイス(示されず)によって持ち運ばれ得、そのためポンプ10は患者がどこへ行こうと持ち運ばれ得る。
【0021】
注入ポンプ10は、キーパッド14(これを介して使用者は、データーおよびコマンドを入力し得る)、選択的にバックライトで照らされた使用者にテキストメッセージを表示するためのドットマトリックスまたはLCDディスプレイ16、周囲光のレベルを検出するための光センサ18、ならびに一組の発光ダイオード(LED)20(ポンプ10の正常動作を表示するための緑色LED、およびアラームまたはポンプ10の異常動作状態を表示するための赤色LED)を備える。以下に記載されるように、ディスプレイ16がバックライトで照らされる場合、周囲光センサ18によって感知される光のレベルは制御のために使用される。好ましくはRS−232ポートである、データポート22は、ポンプ10とリモートコントローラーまたは他のデバイスとの間にデーターをダウンロードおよびアップロードするために使用される。データポート22は、バイタルサインモニターからのバイタルサインデータ(例えば、心拍数、呼吸数など)をアップロードするために使用される。
【0022】
ドア30は、複数のヒンジ32を介して注入ポンプ10の上部に中軸的に接続される。ドア30の裏面33(これは図1に示される)は、その中に形成された一組のスロット34を有し、ここに一組の金属ロッド35が固定される。各金属ロッド35は、選択的に一組のスライド可能な鎖錠部材(示されず)を係合し、ポンプ10の操作中、ドア30を閉鎖位置に保持する。
【0023】
弓形の金属板バネ36はドア30の裏面に配置される。板バネ36の2つの端部37は、ドア30に固定される一組の保持要素38によって装着される。カセット12(ここに可撓性のシリコーンチューブ40が配置される)が、ポンプ10に挿入され、そしてドア30が閉まる場合、板バネ36は、垂直移動するプラテン44の上表面42に接触し、そして下向きの力を付与する。図1に示されるように、プラテン44の上表面42は、カセットハウジング12の上表面に配置された細長スロット内または開口部43内に配置される。プラテン44は、下部の湾曲した表面46を有し、可撓性のチューブ40は、従来的なロータリーポンプホイール(示されず)に配置された多数のローラーによってこの表面に押し付けられ、このチューブ40を通して液体の煽動(peristaltic)ポンピングがなされる。
【0024】
カセット12は、フロー−ストップメカニズム60を有し、これは、カセット12がその完全に係合される位置で、シリコーンチューブ40を備えるポンプ10内に配置されない場合、またはポンプのドア30が開いた場合、自動的に可撓性チューブ40をクランプして閉じる。これは、開いたまたは制御されていない液体の通過が、薬剤供給源と患者との間で得られるのを防止する。このフローストップメカニズム60はハウジング62を有する。
【0025】
(注入ポンプ電子装置)
図2を参照すると、注入ポンプ10は、組み込みアナログ/デジタル(A/D)変換器200Aを備えるコントローラー200、組み込み入力/出力(I/O)インターフェイス204Aを有する電気プログラム可能読出し専用メモリー(EPROM)204、ランダムアクセスメモリ(RAM)208、リアルタイムクロック210、およびディスプレイ16を備え、これら全てはコミュニケーションバス212によって相互に連絡される。ディスプレイ16は、バックライト220を有し、これはコントローラー200とバックライト220とを相互に連絡するライン222で発生するエネーブル信号によって選択的に活性化される。RAM208およびリアルタイムクロック210の両方は、バッテリー214に接続され、このバッテリーはシステム電源がないときのみこれらに電力(第2バッテリー282によって発生する)を供給する。これは常に動力を供給されているため、RAM208は不揮発性メモリである。
【0026】
コントローラー200(これは、80C196KBとしてIntel Corporationから市販されているような、従来的なマイクロコントローラーであり得る)は、ライン232を介して可聴アラーム発生器230を制御し、ライン234を介してLED20を制御し、そしてライン238を介してポンプモーター信号増幅器回路236を制御する。ポンプモーター信号増幅器回路236は、ロータリーポンプホイールを駆動するポンプモーター51を駆動するために接続される。正常に作動している間、コントローラー200はまた、ライン252を介して周期的信号を従来的なウオッチドッグタイマー250に送る。コントローラー200が周期的信号をウオッチドッグタイマー250(これは、コントローラー200の破損または故障を表示する)に伝達しない場合、ウオッチドッグタイマー250は、アラーム230が音を出すようにライン260を介して信号を伝達し、赤色のLEDが点灯するようにライン262を介して信号を伝達し、そしてポンプモーター51が止まるようにライン264を介して増幅器回路236に信号を伝達する。
【0027】
ポンプ10は多数のセンサを有し、これらはポンプの作動に関する様々な状態を感知する。これらのセンサは、ロータリーポンプホイールの上流地点で、可撓性チューブ40内の液圧を検出するための入力圧力センサ270、およびロータリーポンプホイールの下流地点で、可撓性チューブ40内の液圧を検出するための出力圧力センサ272を備える。この入力圧力センサ270は、入力圧力を示すアナログ信号を発生し、これはライン274を介してA/D変換器200Aに伝達される。出力圧力センサ272は出力圧力を示すアナログ信号を発生し、これはライン276を介してA/D変換器200Aに伝達される。各圧力センサ270、272は、これらに接続された可撓性チューブ40またはチュービング52、54による閉塞を検出し、ひずみゲージまたは小ばり(示されず)の形態で提供され得、可撓性チューブ40の外部およびひずみ小ばりに接続された高利得増幅器(示されず)に接触している。
【0028】
圧力センサ270、272は、電力スイッチ280に接続され、電力スイッチ280から電力を受け取り、この電力スイッチはシステム電力スイッチ284、電圧調整器286,およびシステム電力ライン287を通るバッテリー282に接続される。システム電圧スイッチ284は、システム電力スイッチ284に接続されたポンプのオン/オフスイッチ288の状態に基づいて、バッテリー282からの電力を、選択的に電圧調整器286に供給する。電力スイッチ280は、バス212を通るコントローラー200、I/Oインターフェイス204A、およびI/Oインターフェイス204Aと電力スイッチ280とを互いに連結するライン294によって制御される。
【0029】
ポンプ10は、エアーインラインセンサ300を有する。これは、センシング回路(示さず)に結合された従来の圧電性トランスミッターおよびレシーバ(示さず)の形式で提供され得、可塑性チューブ40内の有意な空気泡の存在を検出する。このエアーインラインセンサ300は、電源スイッチ302から電力を受ける。このスイッチは、システムの動線287に接続され、そしてI/Oインターフェース204aに接続される線304を介してコントローラ200により制御される。
【0030】
ポンプ10は、シャフトエンコーダーセンサ308およびホール効果センサ310を有する。これらは、システム電源ライン287に連結され、そして線314を介してコントローラ200により制御される電源スイッチ312から電力を受ける。モーター51のシャフトに配置されるシャフトエンコーダーセンサ308は、コントローラ200に2つのシグナル出力を提供する2段階運動センシングエンコーダーであり得る。モーター51の回転速度およびその回転の方向は、2つのシグナル出力間の速度および段階の関係に基づいたコントローラ200により決定される。ホール効果センサ310は、回転ポンプホイールに近接して配置され、そしてホイールの回転を検出するためのポンプホイール上の磁気コード化を検出する。カセットセンサ320(これも電源スイッチ312に接続される)は、ポンプ10に挿入されるカセットの型を検出する。
【0031】
図2を参照して、環境光センサ18は、電源スイッチ326に接続される。これは、I/Oインターフェース204Aから線328を介してコントローラ200により制御される。ドア開放センサ330、ボーラス注入要求スイッチ332、キーパッド14およびデータポート22により生成されるシグナルは、I/Oインターフェース204Aを介してコントローラ200へ伝達される。単純化の目的のため、図2に示されないが、コントローラ200、EPROM204、RAM208およびディスプレイ16はまた、システム電源ライン287に接続され、そしてそれからの電力を受け取る。
【0032】
(全体的ポンププログラム作動)
注入ポンプ10の作動は、EPROM204に保存され、そしてコントローラ200によって実行されるコンピュータープログラムにより制御される。ポンプのプログラミングは、通常、患者の医師により記載された処方に従って看護者により実行される。ある場合には、患者は、ポンプの特定のパラメーターを変えることを許される。全体的作動のフローチャートは、図3に図示される。図3を参照すれば、ポンプ10がオン/オフスイッチ288を通してオンに切り替えられる場合、工程402でポンプは初期化され、そしてポンプ作動の試験が実行される。ポンプ10は、注入の間に一時的にオフに切り替えられ得、この場合、ポンプ10は、以下に記載されるように再びオンに切り替えられる場合、注入を継続し得る。工程404で、ポンプにより注入されるべきいくらかの液体の残量、または注入のためのいくらかのさらなる残り時間が存在する場合(これはポンプが注入の間に一時的に切られる場合である)、このプログラムは、工程406へ分枝し、ここで看護者は、ディスプレイ16に表示されたメッセージを介して、以前の注入が再開されるべきであるかどうか尋ねられる。看護者の回答がイエス(キーボード14を介して)である場合、プログラムは、実行準備工程(ready−to−run step)410に分枝する。以前の注入を再開すべきでない場合、プログラムは工程412に分枝する。
【0033】
注入ポンプ10は、患者が注入パラメーター(例えば、注入される容量または注入速度)をプログラミングすることから妨げられ得るロックアウトモードを有する。例えば、ポンプ10は、看護者によってプログラムされ、特定のフロープロフィール、フロー速度、および注入される容量を有する特定の注入を与え得る。その注入をプログラミングした後、看護者は、患者が任意の注入パラメーターを変化することから防ぐロックアウトモードでポンプを設置し得る。工程412で、ポンプ10が以前にロックアウトモードに設定された場合、プログラムは、すべてのプログラミング工程を迂回して実行準備工程410に直接に分枝する。
【0034】
工程412で、ポンプがロックアウトモードでない場合、プログラムは、工程414に分枝し、ここでプログラムは、引き続く注入の間、患者がポンプをプログラムすることが可能にされるべきであるか否かを、看護者がディスプレイ16を介して入力するのを促す。ポンプがプログラム可能であるべきでない場合、プログラムは、ロックアウト系列が看護者の要求によって実行される工程416へ、分枝し、どの注入モードがロックアウトされるべきであるかを入力する。ポンプが患者によりプログラム可能である場合、プログラムは工程416を迂回する。
【0035】
注入ポンプ10は、注入のための5つのベーシックモードを有する:1)ポンプが単一速度で単一容量を送達する連続モード;2)閾値速度へ徐々に上昇し、閾値速度で一定を保ち、次いで徐々に減少する速度でポンプが液体を送達する自動傾斜(auto−ramp)モード;3)ポンプが相対的に長い時間にわたって間隔をあけた別個の液体容量(例えば、3時間ごとの液量)を送達する断続(intermittent)モード;4)ポンプが25の異なる時間それぞれの間、特有の注入速度を送達するためにプログラムされ得るカスタムモード;および5)ポンプが、患者による定期的な要求(この要求はボーラス要求キー332を介してなされる)に応答して鎮痛薬のボーラスを定期的に注入する疼痛制御鎮痛(pain−controlled analgestics)(PCA)モード。
【0036】
工程418で、ポンプ10は、看護者への注意「継続しますか?」をディスプレイ16上に示す。看護者が連続(continuous)モードにおけるポンプの使用を望む場合、看護者は、キーパッド14を介して「イエス」を回答する。そしてプログラムは、連続モードが多数の注入パラメーター(所望される注入速度、注入されるべき容量、など)を入力することにより看護者によりプログラムされる工程420に分枝する。工程418で、看護者が連続モードを用いることを望まない場合、看護者は「ノー」と回答し、そしてプログラムは、工程422に分枝する。工程422〜436は、一般に、看護者が異なる注入パラメーター(5つの可能性のある注入モードのどれが選択されるかに依存する)のために促され得ることを除いて工程418および420と同様である。
【0037】
(PCAモードプログラム)
PCAモードプログラム436の作動のフローチャートを、図7に示す。疼痛制御鎮痛(PCA)モードにおいて、看護者は、医師により提供されるような患者のアルゴリズム(以下に記載)、薬物送達の連続的な基礎速度である基礎速度、および頂部に送達され得るさらなる薬物であるボーラス量、または、さらに特定の時間間隔での基礎速度、をプログラムする。工程702において、プログラムは、患者アルゴリズムをプログラムするように看護者を促す。工程704において、プログラムは、基礎速度をプログラムするように看護者を促す。看護者は、患者に持続的に注入されるべき量を入力する。所望される速度(例えば、10mg/hr)を入力した後、次いで、看護者は、総容量を入力し、そして「用量/時間の#による制限薬」を選択する。次いで、プログラムは工程706において基礎量について看護者を促す。看護者は、所望の値を入力する。次いで、プログラムは、工程710でボーラスの最大量について看護者を促す。看護者が所望の数を入力した後、プログラムは、工程714でプログラムされた値を保存し、そして工程716で主要プログラムに戻る。
【0038】
図3に戻って参照すれば、工程420、424、428、432、または436のうちの1つの終了後、プログラムは実行準備工程410へ分枝する。実行モード460の間、ポンプ10は、工程418、422、426、430、434の1つで選択される注入モードおよび工程420、424、428、432、436の1つで入力された注入パラメーターに従って液体医薬を患者に注入する。ポンプ10は、工程462で決定されたように、ホールドキー(hold key)が押されるまで実行モード460のままである。アラーム状態の発現の際、アラームは工程464で報告される。
【0039】
工程462で、ホールドキーが押される場合、注入は、工程466で停止され、そしてポンプ10は、実行キーが工程468で押されるか、または工程470でオン/オフスイッチがオフにされるのを待つ。
【0040】
上記で記載される作動を概説して、ポンプがロックアウトモードに利用されるべき場合、看護者は、ポンプをオンに切り替え、工程420、424、428、432、436の1つで所望される注入モードをプログラムし、次いでポンプをオフに切り替える。プログラムされた注入パラメーターは、不揮発性メモリ208に維持される。次いで、看護者は、ポンプをオンに戻し、工程414で「プログラム可能?」の注意に対応して「ノー」のキーを押し、工程416でロックアウト情報を入力し、次いで再度ポンプをオフに切り替える。患者が注入を実行するためポンプをオンに実質的に切り替えた場合(カセット12が注入されるべき液体で満たされ、ポンプに挿入された後)、プログラムは、工程412から直接的に実行準備工程410(これは、患者が注入パラメーターを変えることを妨げる)に進行する。
【0041】
ロックアウトモードが利用されない場合、看護者または患者は、ポンプをオンに切り替え得、所望の注入モードをプログラムし得、次いで、「実行」キーを押して、ポンプをオフに切り替えるあらゆる工程なしに注入を開始し得る。
【0042】
(ポンプ作動システム)
注入ポンプ10の作動システム500のフローチャートは、図4に示される。作動システム500は、図3のフローチャートに示される作動およびタスクがどのように実行されるかを決定する。図4を参照して、ポンプが工程502で決定されたように実行モード460において作動されていない場合、このプログラムは、図3の工程402〜436(サブルーチンと呼ばれるものを含む)の任意のプロセス化タスクが実行され得る工程504に分枝する。上記のように、これらのタスクは、注入ポンプ10の初期プログラミングに関し、そして使用者対話型(user−interactive)である。実行されるべきこのようなタスクがそれ以上ない時(例えば、使用者がポンプのプログラミングの間に停止したかまたは、ポンプのプログラミングを完了した場合)、このプログラムは、コントローラ200が上記のように、ソフトウエアの命令を介してアイドルモードにある、工程506に分枝する。コントローラ200は、工程508で生成された中断の生成の際にアイドルモードに存在する。中断はコントローラ200により周期的に(例えば20ミリ秒ごとに)生成される。
【0043】
従って、ポンプが実行モード460にない場合、プログラムは、それが工程504で代替的に図3の工程402〜436に示される1つ以上のプロセス化タスクを実行する工程502〜508を通じて循環し、そしてバッテリーの電源を保存するため工程506でアイドリングされる。
【0044】
特定の条件下で、このポンプは、上記のスリープモード(sleep mode)で作動し得る。このポンプは、それが実行モード460(図3)にある場合、スリープモードで作動し得、そして相対的に低い注入速度閾値(例えば、5ミリリットル/時間)未満でポンピングする。
【0045】
このような低い注入速度を送達するため、モーター51は、連続的に活性化されない、しかしモーターは、代わりに、相対的に小容量(例えば、50マイクロリットル)の液体医薬を送達するために定期的に(モーター51は、駆動されなければならないか、さもなければ停止する最小速度を有する)オンに切り替えられ、次いで、オフに切り替えられる。コントローラ200がスリープモードに置かれる時は、モーター51が、オフに切り替えられる時である。プログラムされた注入速度が閾値未満である場合、モーターがオンおよびオフに切り替わる頻度は、プログラムされた注入速度により決定される。プログラムされた注入速度が閾値を超える場合、モーター51は、持続的にポンプする。
【0046】
図4を参照して、工程510で、ポンプがステルス(stealth)モード(以下に記載)でない場合、このプログラムは、注入に関する多数のプロセス化タスクが実行され得る工程512に分枝する。工程514で、ウォッチドッグタイマ250はストローブされ、そして工程516でこのプログラムは、コントローラ200がスリープモードに置かれ得るか否かを決定する。上記のように、コントローラ200は、選択された注入速度が事前決定された閾値速度未満である場合、スリープモードに置かれ得る。満たされなければならない他の条件がまた存在する。例えば、モーター51は、活性され得ず、音声のブザー(beep)(例えば、押されたキーに対応する)は活性化され得ず、時間調整された機能(例えば、時間調整されたLED照明)は活性化され得ず、バックライト220は、オンされ得ず、そしてディスプレイ16は、スクロールする文書になり得ない。これらの条件が満たされる場合、プログラムは、多数のセンサへの電源がオフに切り替えられる工程520に、およびコントローラ200がそのスリープモードに入れられる工程522に分枝する。
【0047】
コントローラ200は、それが3つの任意の事象により「覚醒する」まで、スリープモードのままである:1)ボーラス要求キー332を含む任意の押されるキー;2)ウォッチドッグタイマの時間切れ;または3)リアルタイム時計210により作製される1秒のストローブ。条件1)および2)の非存在下で、コントローラ200は、リアルタイム時計210からのストローブにより毎秒覚醒される。覚醒される際に、コントローラ200の内部時計は、工程524で開始され、そしてプログラムは、コントローラ200により生成される次回の中断を待つ工程508に分枝する。
【0048】
注入ポンプ10はまた、図3の断続注入モードに関するステルスモードを有する。このモードにおいて、ポンプ10は、比較的長い時間間隔(例えば、数分または数時間)で間隔をあけた注入を送達する。注入の間、ポンプは、コントローラ200がスリープに置かれるステルスモードに入れられる。
【0049】
図8は、注入ポンプ10のオン/オフスイッチ288(図2)がオフに切り替えられたか否かを決定するために定期的に行使されたオフ制御ルーチン530を例証する。その場合、工程532で決定されるように、このプログラムは、ポンプをオフに切り替えることを承認されるか否かを決定する工程534(実行モード460にない限り、ポンプをオフに切り替えることは承認される)に分枝する。電源をオフに切り替えることが承認される場合、このプログラムは工程536に分枝する。ポンプ10が工程536で決定されたような断続モードにない場合、電源はオフに切り替えられる。ポンプが断続モードにある場合、プログラムは工程538(作製されるべきより周期性の用量(注入)が存在するか否かを決定する)に分枝する。それ以上の用量が存在しない場合、電源はオフに切り替えられる。
【0050】
少なくとも1つのさらなる容量が存在する場合、ポンプ10は、工程540でステルスモードに入れられる。図4の工程510に戻って参照すれば、ポンプがステルスモードにある場合、プログラムは、工程550(断続モードにおける次の用量が次の30分間に予定されるか否かを決定する)に分枝する。そうでない場合、プログラムは、コントローラ200がスリープにおかれる工程520〜522に分枝する。
【0051】
次の投与が工程550で決定されるように30分以内である場合、プログラムは、工程552(次の投与までの時間、または与えられない場合は投与後の時間が数10分であるか否かを決定する)に分枝する。そうである場合、次いで、プログラムは、工程554に分枝する。ここで、ポンプ10は、使用者に対して、次の投与が数十分空いているという注意である可聴ブザーを生成する。従って、断続注入モードが用いられ、そしてポンプがステルスモードである場合、患者は、次の投与が差し迫っているということを再確認または警告する3つの可聴警告(投与30分前の第1警告、投与20分前の第2警告、および投与10分前の第3警告)を与えられる。次の投与が予定して与えられない場合、4番目の警告が投与の時点で生成され、そして10分間離れた3つのさらなる警告が投与の時間後に与えられる。
【0052】
(データ保存および記録)
プログラミングおよび作動の間、注入ポンプ10は、自動的に、全ての重要な注入データをメモリー204に記録し、後にメモリー204から読み出し得、そして種々の目的に用い得る、完全な履歴データ記録を作成する。この目的には、特定の注入療法がいかに有効的であったかを決定する補助となる臨床的目的、および規定された注入が現実に送達されることを確認するための治療目的を含む。
【0053】
メモリー204に記録された注入データは、以下の表1に記載される。データの保存を誘引する多数の事象が表1の左側カラムに列挙される。そしてそれぞれの事象の発生の際に記録される注入データが表1の右側カラムに列挙される。注入データが記録される時間(これは、リアルタイム時計210により決定される)はまた、注入データとともに保存される。
【0054】
【表1】

表1を参照して、注入ポンプ10への電源がオンに切り替えられた場合、電源オンの日時が記録される。ポンプが工程420、424、428、432、または436(図3)の1つに応じて完全にプログラムされる場合、プログラムされた注入パラメーターは、この保存の時間とともに保存される。保存された特定のパラメーターは、プログラムされた注入モードに依存する。PCA注入モードのために保存される注入パラメーターの例は、以下の表2に例証される。
【0055】
【表2】

そのポンプが工程460で動作モードに入るとき(図3)、動作モードが開始された時間、および注入がそれに従って行われるパラメータが保存される。そのポンプはまた、ホールドキーがホールドキーが押された時間に注入された全容量と伴に押された時間を保存する。そのポンプは、いかなる注入速度変化(例えば、連続速度から血管開口維持(KVO)速度へのスイッチングによって引き起こされる変化、または、断続的なモードにおいて、KVO速度からより高い注入速度まで変化させることによって引き起こされる変化)、その新たな速度、ならびにその新たな速度が開始された時間をも保存する。
【0056】
任意のアラームが生成される場合、そのアラームタイプ、そのアラームが生じる時間、およびそのアラームの時点で注入される総容量が記録される。注入が完了した場合、そのプログラムは注入が完了した時間を、注入した総容量とともに保存する。機能不全がある場合、機能不全のタイプ、その機能不全が生じた時間、およびその機能不全の時間に注入された総容量が記録される。
【0057】
その注入が再開される場合、そのポンプが注入の間にオフにされた後に再びオンにされたとき、その注入が再開された時間が、その注入のパラメータとともに保存される。ロックアウト配列のプログラミングの完了の際に、そのロックアウトのプログラミングが完了した時間を、ロックアウトされた注入モードとともに保存する。ボーラス要求の検出の際、ボーラスが要求された時間が、そのボーラスが実際に与えられたか否かの指標およびそのボーラスの量が保存される。
【0058】
(患者アルゴリズム)
特定の注入ポンプを患者に割り当てる前に、医師または介護者は、患者のPCA用量を自動的に変化させるための患者のアルゴリズムをプログラミングする。その患者のアルゴリズムは、基底用量、ボーラス用量、投与されるべき薬物の最大量についての値の範囲を規定する。その患者のアルゴリズムは、患者の苦痛レベル、副作用、および患者の機能の任意の障害に依存して、任意のPCA要素の量または持続時間を増加または減少させ得る。
【0059】
医師は、患者の状態、提供される苦痛投薬、ならびに患者の苦痛のレベル、副作用、および機能不全に基づいて提供されるべき投薬の範囲を考慮に入れる。医師は、個々の患者についての治療の経過を、患者のアルゴリズムを変化させることによって決定する。PCAについて、患者のアルゴリズムは、基底速度およびボーラス用量を制御するための多数の入力パラメータを含む。入力パラメータには、以下が含まれ得る:a)患者に直接質問することによって、または間接的に以下に議論するように首尾良いボーラス要求のパーセントを測定することによって捕捉され得る苦痛レベル;b)嘔吐および/または便秘の頻度および強度を含む副作用のレベル;c)肢の動きのような肉体的機能の回復、ならびにd)アルゴリズムが活性になる有効時間。有効時間は、そのシステムが、患者の苦痛レベル、副作用、および体の機能の回復についての関連する情報を捕捉するために適切な時間を有することを確実にするために必要とされる。
【0060】
基底速度およびボーラス用量を制御するための患者のアルゴリズムの1つの実施態様は、以下の表3および表4に示される。
【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

基底速度を増加または減少させる他の値は、特定の苦痛投薬および他の因子に依存して使用され得る。
【0063】
(苦痛レベルデータの捕捉)
表3は、首尾良いボーラス要求のパーセント、副作用、および機能の回復に関する入力を必要とする。以下に記載されるように、首尾良いボーラス要求データのパーセントは、ポンプによって、他のポンプの情報ととともに保存される。このデータは、メモリからアクセスされ得る。首尾良いボーラス要求のパーセントの情報は、苦痛レベルの間接的な測定値として使用される。最大数が既に投与された後に患者がボーラス要求を要求する場合、これは、その患者が苦痛を感じており、そしてより高い基底速度、より高いボーラス用量、またはより多数のボーラス用量、あるいはそれらの組み合わせのいずれかを必要としていることを示す。
【0064】
あるいは、苦痛レベル情報は、その患者に直接質問することによって決定され得る。例えば、患者は、特定の間隔で、またはその患者がボーラス用量を要求するときはいつでも、苦痛スケールを使用して苦痛のレベルについて質問され得る。毎時間、そのポンプは、患者が苦痛スケールを、0〜10のスケールに基づいてそのポンプに入力することを促す。ここで、10が最も高い苦痛レベルである。0〜10の苦痛スケールの代わりに、Acute Pain Management Guideline Panelによって示唆される代替の苦痛スケールが、図6に示される。その情報が、PCAモード改変ルーチンによる使用のためのポンプのメモリに保存される。付き添いの介護者はまた、一定の間隔または他の間隔で患者に苦痛レベルについて質問し得、そしてその患者のチャート(後でポンプに入力するため)に情報を入力するか、または直接そのポンプに入力し得る。
【0065】
(副作用に関するデータの捕捉)
患者の副作用についての情報は、好ましくは、一連の特定の質問に対する応答を入力するように患者を促すことによって獲得される。例えば、静脈内投薬を受けている患者については、その患者は、以下のような質問にイエスまたはノーで答えるように促され得る:
認知障害
吐き気。
【0066】
神経軸性(neuraxial)投薬について、患者は、以下のような質問にイエスまたはノーで答えることを促され得る:
運動障害(motor impairment)
めまい。
【0067】
この情報は、患者がボーラスのコードを押すたびに要求され得る。副作用データを獲得する代替の方法(例えば、イエスの応答後、患者にその副作用について0〜10のスケールに広げることを求めること)が利用され得る。そのポンプは、PCAモード改変ルーチンによる使用についての結果を保存する。
【0068】
(機能障害に関するデータの捕捉)
副作用に関するデータに関して、患者の機能障害に関するデータが、患者に一連の質問に応答するように促すことによって得ることができる。患者がボーラス用量を要求するたびに、そのポンプが、患者がイエスまたはノーの答え、および必要に応じて0〜10の評点で応答する一連の質問で応答する。質問の例には、以下が含まれる:
下肢を動かす能力
腸運動の回復。
【0069】
(PCAプログラムを自動的に改変する)
図5は、注入ポンプ10のPCAプログラミングを改変するルーチンを示す。図5を参照して、PCAプログラム化された値は、2つの方法の1つにおいて改変され得る。第1の方法において、PCAプログラム化された値は、患者によって開始された要求によって改変され、一方、ポンプは工程460で動作モードにある。動作モードにある間、ポンプコントローラ200は、その患者が、工程180においてボーラスコード15およびボーラスボタン17(ボーラス要求スイッチ332に適用される)によって要求を開始したか否かを確認するために、定期的にチェックする。その答えがノーである場合、そのポンプコントローラ200は、PCA時間が満了したか否かをチェックする。そのポンプは、PCAプログラム化された値が、定期的に(例えば、毎時間)、工程182において、改変されるべきか否かを確認するためにチェックするようにプログラム化され得る。その答えがノーの場合、そのルーチンループは、工程460に戻る。
【0070】
工程180または工程182に対する答えが、イエスの場合、そのルーチンは、PCA改変ルーチンであるブロック186に枝分かれする。この好ましいルーチンにおいて、患者は、工程188において、苦痛レベル、副作用、および機能障害について質問される。PCAプログラム化された値が変化されるべきか否かを評価するにおいて、その患者のアルゴリズムによる使用のためにデータが保存される。工程190において、そのルーチンがまた、保存された履歴的値(例えば、経時的な首尾良いボーラス要求の数)をチェックする。工程192において、そのルーチンは、患者のアルゴリズムにしたがってデータを処理し、そして工程194においてそのPCAプログラム化された値を改変し、そして動作モードに戻る。
【0071】
本発明は、ポンプが、介護者の介入なしに、患者の苦痛を軽減するために、基底速度および/またはボーラス速度を自動的に調整することを可能にする。本発明はまた、基底速度およびボーラスの量を調整して、副作用を減少させ、そして患者の機能を回復し、患者の全体的な生活の質を改善する。苦痛を感じている患者が介護者を呼ぶことは、減少し、介護者の仕事の負担を軽減する。
【0072】
本発明の改変および代替の実施態様は、上記を考慮して当業者に明らかである。この記載は、例示としてのみ解釈され、そして本発明を実施する最良の態様を当業者に教示するためのものである。構成および方法の詳細は、本発明の精神から逸脱せずに、実質的に変化し得、そして添付の特許請求の範囲内にある全ての改変の排他的な使用が保留される。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は、本発明を具体化した注入ポンプ、およびこのポンプに挿入可能なカセットの斜視図である。
【図1A】図1Aは、図1の注入ポンプと患者との接続を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示される注入ポンプの電子的構成要素および電気的構成要素のブロック図である。
【図3】図3は、図1に示される注入ポンプの全操作のフローチャートである。
【図4】図4は、図1に示される注入ポンプにより使用される操作システムのフローチャートである。
【図5】図5は、図1に示される注入ポンプのPCAプログラミングを改変するための操作のフローチャートである。
【図6】図6は、急性疼痛処理ガイドラインパネルによって提示される疼痛強度段階のサンプルを示す。
【図7】図7は、図1に示される注入ポンプのプログラムPCAモードの操作のフローチャートである。
【図8】図8は、図1に示される注入ポンプのオン−オフ制御ルーチンの操作のフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラム可能な注入ポンプから投与される患者の投薬のレベルを自動的に制御するための方法であって、以下の工程:
該注入ポンプを、患者特異的な所定の範囲の投薬のセットでプログラムする工程;
該患者の現在の投薬の評価を開始する工程;
該患者の苦痛のレベルに関する情報を得る工程;
該患者の副作用に関する情報を得る工程;
該患者の機能障害に関する情報を得る工程;
該患者の現在の投薬に関する情報を得る工程;
該患者の現在の投薬、苦痛レベル、副作用、および機能障害を、該患者特異的な所定の範囲の投薬のセットで評価する工程;ならびに
該評価に基づいて、該患者の投薬の投与を制御する工程、
を包含する、方法。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−98184(P2007−98184A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14301(P2007−14301)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【分割の表示】特願2000−598206(P2000−598206)の分割
【原出願日】平成12年2月4日(2000.2.4)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【Fターム(参考)】