抗−RhD組換えポリクローナル抗体及び製造方法
本発明は、抗−RhD組換えポリクローナル抗体組成物(抗−RhD rpAb)の製造方法に関する。該方法は、抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーを用いてトランスフェクションした細胞群を得ることを含み、ここで、該群中の各細胞は、該ライブラリーの1メンバーである核酸セグメントを含むVH及びVLから発現され得、該セグメントは、抗−RhD組換えポリクローナル抗体組成物の異なるメンバーをコードし、及び前記群中の個々の細胞のゲノム内の同一部位に位置している。該細胞は、細胞又は培養上清から得られる組換えポリクローナル抗体の発現に適する条件の下で培養される。抗−RhD rpAbをコードする該核酸セグメントは、部位特異的組込み用ベクターのライブラリーを用いたトランスフェクションにより、細胞に導入される。本発明の方法は、抗−RhD rpAbの製造に適しており、故に、血漿に由来する予防用及び治療用免疫グロブリン産物の優れた代替品を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗−RhD組換えポリクローナル抗体(抗−RhD rpAb)の産生、並びに所望のポリクローナル抗体を後で産生するためのポリクローナルワーキングセルバンクを作成するための一般的なアプローチを記載している。本発明は、抗−RhD rpAbをコードするライブラリー及び抗−RhD rpAbを産生する細胞系統にも関連する。さらに、本出願は、抗−RhD rpAbを含有する医薬用及び診断用組成物、並びに新生児溶血性疾患(HDN)の予防、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の処置、及びRhD(−)の個人へRhD(+)の血液を誤って輸血した後のRhD抗原に対する感作の予防におけるそれらの使用を記載している。
【背景技術】
【0002】
Rh式血液型抗原は、いわゆるC、c、E、e及びD抗原を含む膜貫通型赤血球蛋白質上に位置している。白人集団の約16%は遺伝的多型に起因してRhD陰性(RhD(−))である。加えて、RhDには複数の遺伝的及び血清学的変異体が存在し(カテゴリーII〜VIIに分類される)、その中で、RhDVIが最も臨床的に関連している。カテゴリーVI陽性赤血球細胞(RBC)は他のカテゴリーのRBCに比べて有するD蛋白質の各種エピトープがより少ないので、RhDVI(+)の個人は、他のRhD陽性(RhD(+))の個人に由来するRBCに対して同種抗体を形成し得る(Issitt,P.D.およびAnstee,D.J.,1998. The Rh Blood Group System,Montgomery Scientific Publications,Durham,North Carolina,pp.315−423)。{Issitt&Anstee 1998 11809/id}
【0003】
RhD陰性それ自体はいずれの病状にも関連していないが、RhD(−)の女性がRhD(+)若しくはRhDVI(+)の胎児を妊娠するか、又はRhDVI(+)の女性がRhD(+)の胎児を妊娠する場合に、重要な医学的意味を有する。通常周産期(分娩時)に胎児の赤血球が母体循環系に入ると、胎児母体RhD同種免疫が生じ、それにより、母体の抗−RhD抗体応答の誘導が惹起される。次の妊娠において、母体に由来するRhD−特異的IgG−分子は胎盤を通過して胎児の血液に入り、次いで、胎児の赤血球の溶解を仲介し、それにより、新生児溶血性疾患(HDN)を惹起する。2度目にRhD(+)の胎児を妊娠し、及び抗−D予防を用いて適切に保護されていないRhD(−)の女性の平均20%が抗−RhD抗体応答を生じることが推定されている。未処置の場合、新生児の約30%は中程度の貧血、黄疸及び肝腫を有し、並びに20%は重度の貧血及び胎児水腫を発症し、並びに重度に罹患した新生児は新生児死亡又は永続的な障害の危険性を有する。
【0004】
RhDに対するポリクローナル免疫グロブリンの調製は、妊娠しているRhD(−)及びRhDVI(+)の女性の同種免疫を防ぎ、それにより新生児溶血性疾患を予防するために世界中で使用されている。RhD(抗−D)に対するポリクローナル免疫グロブリンの調製は、現在、自然なRhD同種免疫か又はRhD陽性赤血球でのRhD陰性ボランティア男性のワクチン接種のいずれかを介して過免疫されたドナーから得た血漿をプールすることにより、得られている。HDNの予防のための抗−RhD免疫グロブリン調製物の能力は十分に確立されており、及び長年日常的に使用されてきた。結果として、この重度の疾患は希少なものとなっている。
【0005】
それにも関わらず、疾患、すなわち、妊娠しているRhD(−)及びRhDVI(+)の女性の同種免疫の根底にある原因はなお存在しており、それ故に、抗−D免疫グロブリン調製物の絶え間のない供給が必要である。
【0006】
HDNの予防に加えて、抗−D免疫グロブリンは特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の処置において有用であることも示されている(George,J.N.,2002.Blood Rev.16,37−38)。ITPは血液疾患であり、ここで、自己抗体は脾臓及び肝臓における血小板クリアランスの加速をもたらす。症状は、損傷及び出血をもたらす血小板レベルの減少である。重度の場合、脾臓が摘出される。しかし、これは重度の副作用のために乳児においては不可能であり、故に、抗−D免疫グロブリンのごとき代替的処置が必要である。さらに、RhD(−)のレシピエントにRhD(+)の血液を誤って輸血した後にRhD抗原に対する感作を予防するために抗−D免疫グロブリンが用いられる。
【0007】
既に記載したように、抗−Dを産生するための現行方法は、高力価の抗血清を産生するためにドナー集団を繰り返し免疫する必要があり、該ドナーは次第に応答しなくなる。繰り返し免疫のためのRh陽性RBCの使用が、ウイルス性疾患、例えば、B型肝炎、AIDS及び未知ウイルスのごとき他のものへの感染危険性をもたらすといった、関連する危険因子及び技術的問題もある。さらに、バッチ間差異に関する問題もある。故に、抗−RhD抗体の産生のための代替的方法が必要である。
【0008】
抗−RhDモノクローナル抗体を産生するための細胞的アプローチは、初め、過免疫血清の代替法として開発された。これらの技法は、Bリンパ芽球腫細胞系統を生じるリンパ球のエプスタイン・バーウイルス(Epstein Barr Virus)形質転換を含んだ(Crawfordら.1983.Lancet 1,386−8)。しかし、これらの細胞系統は不安定であり、及び大規模なクローニングを要する。ハイブリドーマ技法によるヒト抗体の産生は、適切なヒト骨髄腫細胞融合パートナーの欠如によっても制限された(Kozbor,D.及びRoder,J.C.,1983.Immunol.Today.4,72)。
【0009】
これらの技法の代替法として、VH及びVLのレパートリークローニング並びにファージディスプレイライブラリーの構築を含む分子的アプローチが開発された(Barbas,C.F.ら.1991.Proc Natl.Acad.Sci.USA 88,7978−7982)。ファージディスプレイ技法もRhD抗原バインダーの単離のために適用できた。RhD抗原結合特異性を有する多数のモノクローナル抗体(mAb)がこの技法により単離された(WO 97/49809及びSiegel,D.Lら.2002.Transfus.Clin.Biol.9,83−97)。
【0010】
組換え抗−RhDVImAbを用いた最近の臨床試験は、RhD(+)RBCでの大規模な攻撃の後にRhD免疫化の予防が可能であることを示した(Miescher,S.,ら.2004,Blood 103,4028−4035)。しかし、該試験は、RBCのクリアランスに関してmAbは抗−D免疫グロブリンよりも能力が低いことも示した。このクリアランス速度減少の原因は知られていない。単一の抗体は抗−D免疫グロブリン産物中に存在する多様な抗体ほど有効ではないか、又は1以上の免疫グロブリンアイソタイプ、すなわち、IgG1及びIgG3の存在はRBCクリアランスを増大すると考えられる{Siegel,Czerwinski,ら.2002 10320/id}。
【0011】
効果の問題に加えて、HDN予防に関する別の問題は、RhDVI(+)の女性がRhD(+)の胎児を妊娠する状況である。この状況では、抗−RhDVImAbは女性の同種免疫を防ぐことができないだろう。故に、RhD(−)及びRhDVI(+)の女性を共に保護するために、RhDカテゴリーVI抗原に対する抗体、及びカテゴリーVI抗原に結合しないが他の一般的なRhD抗原には結合する抗体を有する産物が必要である。
【0012】
mAbに関して考えられる別の問題は、それらが免疫原性であり得ることである。mAbはヒトであるが、初回の処置は、mAbで処置した女性からの抗体応答をもたらし得る。理論的には、これは、処置された個人の免疫系によりそれ以前に認識されなかったmAbのCDR領域が、十分大量に提供されるならば、外来のものとして認識され得るために、生じ得る。予防的処置を繰り返さない限り、かかる反応は抗−RhD mAbをもたらし得る。
【0013】
mAbに関するこれらの潜在的な問題の幾つかはモノクローナル抗体を混合することにより克服されよう。しかし、これは、不確定な数の抗体を別々に産生及び精製することを意味し、きわめて費用がかかるだろう。さらに、かかる混合物の個々のモノクローナル抗体の異なるバッチ特性は最終産物に影響し得る。
【発明の開示】
【0014】
本発明は、単一バッチとして抗−RhD組換えポリクローナル抗体(抗−RhD rpAb)を発現し得る製造細胞系統を産生するための方法を提供する。
【0015】
発明の記載
本発明は、抗−RhD組換えポリクローナル抗体(抗−RhD rpAb)の一貫した製造のための方法を提供する。本発明は、新規クラスの予防用及び治療用抗−RhD抗体産物の大規模な製造及び産生のための可能性を開くことが熟慮される。
【0016】
本発明の抗−RhD rpAbは潜在的に、モノクローナル抗−RhD抗体より優れた幾つかの利点を有する。第1に、あらゆる潜在的なRhDエピトープは1以上の抗体で覆われ、故に、抗−RhD rpAb組成物は、RhD(+)の子供を産むRhD(−)及びRhDVIの女性の両方の予防的処置において用いられ得る。故に、十分な予防的効果を得るために、異なる産生及び精製バッチに由来するmAbを混合する必要はなくなるだろう。
【0017】
さらに、高濃度の単一又は数個の分子に起因してmAbが免疫原性であることが判明する場合では、抗−RhD rpAbは優れた代替法となり得る。本発明に記載の抗−RhD rpAbは5〜56個の変異体抗体分子から構成されているので、それらの個々の濃度はより低くなり得、及び抗体の1つが免疫原性に起因して枯渇されても、RhD抗原を覆う他のものが多数存在し得、それ故に、予防はなお有効であり得る。
【0018】
本発明の抗−RhD rpAb抗体の産生は単一バッチとして単一細胞系統から行われる。抗−RhD rpAb産生のためのポリクローナル製造細胞系統の産生は、詳細な記載及び実施例にて明示されよう。
【0019】
定義
「抗生物質耐性遺伝子」は、細胞に対し抗生物質が有する阻害性又は毒性効果を克服し、抗生物質の存在下での細胞の生存及び持続的増殖を確保し得る蛋白質をコードする遺伝子である。
【0020】
用語「抗体」は、血清の1つの機能的成分を表し、多くの場合、分子の一群(抗体若しくは免疫グロブリン)又は1分子(抗体分子若しくは免疫グロブリン分子)のいずれかを言う。抗体分子は特異的抗原決定基(抗原若しくは抗原エピトープ)に結合するか又はそれと反応し得、順次、免疫作用機序の誘導に至り得る。個々の抗体分子は通常単一特異的と見なされ、及び抗体分子の組成物はモノクローナル(すなわち、同一の抗体分子から構成される)又はポリクローナル(すなわち、同一の抗原又さらには別の異なる抗原上で同一又は異なるエピトープと反応する異なる抗体分子から構成される)であってもよい。各抗体分子は、その対応する抗原に対する特異的な結合を可能とする特有の構造を有し、及び全ての自然な抗体分子は、2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖から構成される同一の全体的な基本構造を有する。抗体は集合的に免疫グロブリンとしても知られている。本明細書中用いられる抗体(単数及び複数)なる用語は、キメラ及び一本鎖抗体、並びに抗体の結合フラグメント、例えば、Fab、Fab’若しくはF(ab)2分子、Fvフラグメント若しくはscFvフラグメント又は任意の他の安定なフラグメント、並びに全長抗体分子及び多量体形態、例えば、2量体IgA分子若しくは5量体IgMを含むことも意図される。
【0021】
用語「抗−RhD抗体コーディング核酸セグメント」は、VH及びVL遺伝子エレメントの対を含む核酸セグメントを表す。該セグメントは、軽鎖及び/又は重鎖定常領域遺伝子エレメント、例えば、カッパ又はラムダ軽鎖定常領域、及び/又はアイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD及びIgEの1つから選択された1つ以上の定常領域ドメインCH1、CH2、CH3又はCH4をさらに含んでもよい。好ましいアイソタイプはIgG1及び/又はIgG3である。核酸セグメントは、VH及びVLコーディング配列の双方向性又は一方向性転写のいずれかを容易にする1つ以上のプロモーターカセットを含んでもよい。さらなる転写又は翻訳エレメント、例えば、遺伝子産物を分泌経路に誘導する機能的リーダー配列、ポリAシグナル配列、UCOE及び/又はIRESも該セグメント中に存在してもよい。
【0022】
用語「抗−RhD組換えポリクローナル抗体」又は「抗−RhD rpAb」は、組換えにより産生された多様な抗体分子の組成物を表し、ここで、個々のメンバーはRhD抗原上の少なくとも1つのエピトープに結合し得る。好ましくは、該組成物は単一の製造細胞系統から産生される。ポリクローナル抗体の多様性は可変領域(VH及びVL領域)、特に、CDR1、CDR2及びCDR3領域に位置付けられる。
【0023】
用語「偏向」は、組換えポリクローナル抗体産生中の事象を表すために用いられ、ここで、発現ライブラリー、ポリクローナル細胞系統又はポリクローナル蛋白質の組成は、無作為な遺伝子突然変異、個々の細胞間の増殖動態学における差異、異なる発現コンストラクト配列間の発現レベルにおける差異、又はDNAのクローニング効果における差異に起因して経時的に変化する。
【0024】
用語「抗−RhD rpAbの異なるメンバー」は、可変領域内に1つ以上のストレッチ(stretch)を含む組換えポリクローナル抗体組成物の個々の抗体分子を表し、該ストレッチは、ポリクローナル蛋白質の他の個々のメンバーと比較してアミノ酸配列の差異により特徴付けられる。特に、これらのストレッチはCDR1、CDR2及びCDR3領域に位置する。
【0025】
本明細書中用いられる用語「ゲノム」は、細胞内に存在する染色体の通常の相補体として文字通り解釈されるだけではなく、細胞内に導入及び維持され得る染色体外エレメントでもある。かかる染色体外エレメントは、ミニ−染色体、YAC(酵母人工染色体)、MAC(マウス人工染色体)又はHAC(ヒト人工染色体)を含むが、これらに限定されない。
【0026】
用語「頭−頭(head−to−head)プロモーター」は、プロモーターにより駆動される2つの遺伝子エレメントの転写が反対方向で生じる(双方向性転写)ように、近接して配置されているプロモーター対を言う。かかる系の構築は米国特許第5,789,208号の実施例3に詳細に記載されており、該文献は出典明示により本明細書の一部となる。2つのプロモーター間に無関係な核酸からなる詰め込み(stuffer)を有する頭−頭プロモーターも構築され得る。かかる詰め込みフラグメントは500を超えるヌクレオチドを容易に含み得る。
【0027】
「ホットスポット細胞系統」中のごとき用語「ホットスポット」は、その部位内への発現ベクターの組込みについて、目的の組込まれた核酸セグメントの高効率の転写のために選択又は生成及び特徴付けられた、細胞のゲノムの予め確立された遺伝子座を言う。
【0028】
一般的に、用語「免疫グロブリン」は、血液又は血清中に見出される抗体の混合物の総称として用いられるが、他の供給源に由来する抗体の混合物を表すために用いられてもよく、又は用語「免疫グロブリン分子」において用いられる。
【0029】
用語「内部リボソーム進入部位」又は「IRES」は、mRNA上の通常の5’キャップ−構造とは異なる構造を表す。両構造はリボソームにより認識され得、翻訳開始のためにAUGコドンについて走査を開始する。1つのプロモーター配列及び2つの開始AUGを用いることにより、第1及び第2のポリペプチド配列が単一のmRNAから翻訳され得る。故に、単一の2シストロン性mRNAからの第1及び第2のポリヌクレオチド配列の同時翻訳を可能とするために、IRES配列の下流側のポリヌクレオチド配列の翻訳を可能にするIRES配列を含むリンカー配列を介して、第1及び第2のポリヌクレオチド配列を転写的に融合できる。この場合、転写された2シストロン性RNA分子は、キャッピングされた5’末端及び2シストロン性RNA分子の内部IRES配列の両方から翻訳され、それにより、第1及び第2のポリペプチドを共に産生できる。
【0030】
本明細書中用いられる用語「ライブラリー」は、変異体核酸配列の一群を言う。例えば、抗体の可変重鎖及び/又は可変軽鎖の多様な集団をコードする核酸配列の一群を言う。変異体核酸配列のメンバーが2つの変異体遺伝子エレメント、例えば、VH及びVLから構成される場合、それは多くの場合に核酸セグメントと言われよう。変異体核酸配列/セグメントの群は、かかる核酸配列のプール形態であり得るか、又はそれは別個の核酸配列(例えば、96ウェルプレートの各ウェル中の特有の一配列)の一群であり得る。典型的に、本発明のライブラリーは少なくとも3、5、10、20、50、1000、104、105又は106の異なるメンバーを有する。「ベクターのライブラリー」では、変異体核酸配列/セグメントがベクターに挿入されている。しかし、ライブラリー及びベクターのライブラリーなる用語は同義的にも用いられ得る。
【0031】
用語「抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリー」は、抗−RhD抗体の転写のための調節エレメントを有するベクター内に挿入された変異体抗−RhD抗体コーディング核酸配列の一群を言う。該調節エレメントは、挿入された核酸セグメント内又はベクターフレームワーク内のいずれかに位置し得る。好ましくは、抗−RhD抗体発現ベクターは少なくとも1つのリコンビナーゼ認識配列、例えば、FRT部位も有し、それは2つの異なるリコンビナーゼ認識配列、例えば、FRT及びFRT’部位を有してもよい。
【0032】
用語「個々の細胞の大部分」は、80%以上、好ましくは、85%以上、より好ましくは、90%、95%又はさらには99%又はそれ以上のごとき細胞のパーセンテージを言う。
【0033】
用語「大量移入」は、あるベクター集団から別のベクター集団への目的の核酸セグメントの移入、及び目的の個々のセグメントの単離を行うことなく各核酸セグメントについて同時にそれを行うことを表すために用いる。かかるベクター集団は、例えば、目的の可変領域、プロモーター、リーダー又は増強エレメントを含むライブラリーであり得る。次いで、これらの配列は事前に単離することなく、例えば、ファージベクターから哺乳類発現ベクターへ移動され得る。特に抗体配列について、この技法は、例えば、選択ベクター(例えば、ファージディスプレイベクター)から哺乳類発現ベクターへライブラリーを移動させる間にVH及びVL多様性の間の連鎖が失われないよう保証している。かくして、VH及びVLの元々の対が保持される。
【0034】
本明細書中用いられる用語「作動可能に連結された」は、他のセグメントと機能的関係に置かれた場合に、別のセグメントに連結されているセグメントを言う。例えば、シグナル配列をコードするDNAは、それが小胞体へのポリペプチドの移入に関与するリーダーとして発現されるならば、ポリペプチドをコードするDNAに作動可能に連結されている。同様に、プロモーター又はエンハンサーは、それが該配列の転写を刺激するならば、作動可能に連結されている。
【0035】
用語「ポリクローナル抗体」は、同一又は異なる抗原上で幾つかの異なる特異的抗原決定基に結合するか又はそれと反応し得る異なる(多様な)抗体分子の組成物を表す。通常、ポリクローナル抗体の可変性は、ポリクローナル抗体のいわゆる可変領域、特に、CDR領域に位置する。ポリクローナル抗体のメンバーが抗原に結合すると言う場合、本明細書中では、1mM未満、好ましくは、100nM未満、さらにより好ましくは、10nM未満の結合定数を有する結合が意味される。
【0036】
用語「組換えポリクローナル製造細胞系統」は、目的の変異体核酸セグメントのライブラリーを用いてトランスフェクションした蛋白質発現細胞の混合物/集団を言い、ここで、組換えポリクローナル製造細胞系統を共に構成する各個々の細胞は、別個の目的の核酸セグメントの、転写活性のあるただ1つのコピーを有し、該コピーは目的の組換えポリクローナル抗体の1つのメンバーをコードするものであり、及び各コピーは各細胞のゲノムの同一の部位内に組込まれている。組換えポリクローナル製造細胞系統を構成する細胞は、例えば、抗生物質選択により、目的の別個の核酸セグメントの組込まれたコピーを保有する能力について選択される。かかる製造細胞系統を構成し得る細胞は、例えば、細菌、菌類、真核細胞、例えば、酵母、昆虫細胞又は哺乳類細胞、特に、不死化哺乳類細胞系統、例えば、CHO細胞、COS細胞、BHK細胞、骨髄腫細胞(例えば、Sp2/0細胞、NS0)、NIH3T3、YB2/0及び不死化ヒト細胞、例えば、HeLa細胞、HEK293細胞又はPER.C6であり得る。
【0037】
用語「組換え抗体」は、細胞と天然においては関連していない蛋白質のコーディング配列を含む発現ベクターを用いてトランスフェクションした細胞又は細胞系統から発現された1つの抗体分子又は幾つかの分子を表すために用いられる。抗体分子が多様であるか又は異なるならば、用語「組換えポリクローナル抗体」はポリクローナル抗体の定義に従って適用される。
【0038】
用語「リコンビナーゼ」は、2つ以上の組換え部位または組換え認識配列の間の組換えを触媒する酵素を言う。本発明において有用なリコンビナーゼは、特定のリコンビナーゼにより認識される特異的な核酸配列をもつ特異的な組換え部位において組換えを触媒する。
【0039】
用語「リコンビナーゼ認識部位」又は「組換え部位」は、部位特異的リコンビナーゼ酵素による認識及び組換えの両方のための部位として機能する核酸配列を表す。一般的に、リコンビナーゼ認識部位は、コア配列(6−8bp長)に隣接する短い逆方向反復エレメント(11−13bp長)から構成される。リコンビナーゼ認識部位は、リコンビナーゼ標的部位、組換え部位又は組込み部位とも言われ、及び例えば、FLP−部位、loxP−部位、attP/attB−部位、six−部位、gix−部位、R−部位及びRes−部位を含む。リコンビナーゼがその間の組込み、除去又は反転事象を触媒し得るリコンビナーゼ認識部位は、マッチング(matching)リコンビナーゼ認識部位と言われ、例えば、該部位は整合すると考えられる2つの野生型FRT部位であり、並びにattB部位及びattP部位はリコンビナーゼ認識部位のマッチング対を構成し、一方で、野生型のFRT部位及び突然変異体のFRT部位はリコンビナーゼ認識部位のマッチング対を必ずしも構成するとは限らない;これは突然変異に依存し得る。これらの用語は、組込み部位なる用語と同義的にも用いられ得る。
【0040】
用語「RFLP分析」は、「制限フラグメント長多型分析」、すなわち、核酸分子フラグメントの移動性のゲルパターンが制限酵素で切断された後に分析される方法を言う。
【0041】
用語「スクランブリング」は、各メンバーがVH及びVL鎖のごとき2つの異なるポリペプチド鎖から各々構成される、ポリクローナル蛋白質の2つ以上の異なるメンバーが個々の細胞から発現される状況を表す。この状況は、個々の細胞がゲノム内に1以上の遺伝子エレメント対を組込む場合に生じ得、ここで、遺伝子エレメントの各対はポリクローナル蛋白質の異なるメンバーをコードする。かかる状況では、遺伝子エレメントから発現されたポリペプチド鎖の意図せぬ組み合わせが生じ得る。「VH−VL鎖スクランブリング」は上記したスクランブリングの一例である。VH及びVLポリペプチドの意図せぬ組み合わせが細胞から生じた場合にスクランブリングが起こり、ここで、2つの異なるVH及びVLコーディング核酸セグメントは同一細胞の転写活性部位に組込まれる。スクランブルされたかかる抗体分子が元々の特異性を保持する可能性は低く、それ故に、いかなる治療効果も有さないだろう。
【0042】
用語「選択」は、細胞が特定の特性を獲得し、該特性を獲得していない細胞からの単離を可能にする方法を表すために用いられる。かかる特性は、細胞毒性物質に対する耐性又は必須栄養素、酵素又は色の生成であり得る。
【0043】
用語「選択可能なマーカー遺伝子」、「選択マーカー遺伝子」、「選択遺伝子」及び「マーカー遺伝子」は、目的の1または複数の遺伝子と合わせて細胞へ同時導入される、選択可能なマーカーをコードする遺伝子(例えば、特定の抗生物質のごときある種の細胞毒性薬に対する耐性を付与する遺伝子、成長培地から枯渇され得る必須栄養素を産生し得る遺伝子、分析可能な代謝産物を産生する酵素をコードする遺伝子、又は例えばFACSにより選別され得る着色蛋白質をコードする遺伝子)を表すために用いられる。
【0044】
本明細書中、用語「トランスフェクション」は、外来性DNAを1つの細胞内に導入するための広義語として用いられる。この用語は、外来性DNAを1つの細胞内に導入するための他の機能的に均等な方法、例えば、ドナー細胞及びアクセプター細胞の形質転換、感染、形質導入又は融合を含むことも意味される。
【0045】
本明細書中用いられる用語「ベクター」は、異なる遺伝的環境間の輸送及び/又は宿主細胞内での発現のために核酸配列を挿入できる核酸分子を言う。本明細書中、ゲノム内の所定の特異的遺伝子座において宿主細胞のゲノム内への組込みを行い得るベクターを「部位特異的組込み用ベクター」と呼ぶ。ベクターがその中に挿入された核酸配列の転写のための調節エレメントを有するならば(少なくとも1つの適切なプロモーター)、本明細書中、該ベクターを「発現ベクター」と呼ぶ。用語「アイソタイプコーディングベクター」は、抗体アイソタイプをコードする核酸配列を有するベクターを言う。本明細書中、「ファージミドベクター」及び「ファージベクター」は同義的に用いられる。用語「プラスミド」及び「ベクター」は同義的に用いられる。本発明は、同等の機能を果たすその他の形態のベクター、例えば、適切な宿主内で所望の蛋白質の産生を導き得るプラスミド、ファージミド及びウイルスゲノム又は任意の核酸分子を含むことが意図される。
【0046】
以下の記載様式「VH:LC」及び「VH:VL」は、可変重鎖配列および軽鎖又は可変軽鎖配列の特定の対を示す。VH及びVL配列のかかる特定の対は、核酸配列又はポリペプチドのいずれかであり得る。本発明において、特定のVH及びVL対はRhD抗原に対する結合特異性を付与する。
【0047】
省略形:Ab=抗体。抗−RhD rpAb=抗−RhD組換えポリクローナル抗体。CASY=セルカウンター+解析システム。ELISA=酵素結合免疫吸着検定法。FRT=Flpリコンビナーゼ標的。GFP=緑色蛍光蛋白質。HDN=新生児溶血性疾患。ITP=特発性血小板減少性紫斑病。LTR=長い末端反復。mAb=モノクローナル抗体。pMCB=ポリクローナルマスターセルバンク。PVDF=二フッ化ポリビニリデン。pWCB=ポリクローナルワーキングセルバンク。RBC=赤血球細胞。RhD=Rhesus D。RhD(−)=RhD陰性。RhD(+)=RhD陽性。RhDVI=RhDカテゴリーVI抗原。抗−D=過免疫ドナーに由来するRhDに対するポリクローナル免疫グロブリン調製物。SV40PolyA=サルウイルス40ポリAシグナル配列。UCOE=遍在性(ubiquitous)クロマチンオープニングエレメント。5’UTR=mRNAの5’非翻訳領域。
【0048】
図の説明
図1Aは、組換えポリクローナル製造細胞系統の作成及び組換えポリクローナル抗体の産生を示すフローチャートである。1)はバルクトランスフェクションストラテジーを示し;2)は半バルクトランスフェクションストラテジーを示し、及び3)は個々のトランスフェクションストラテジーを示す。A)は抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーを示し(横線)、矢じりはベクターのグループ化を示す。ストラテジー1では、ベクターはまとめてグループ化され、ストラテジー2では、それらはより小さなフラクション(半バルク)にグループ化され、一方でストラテジー3では、それらは互いに分離されている(個別)。B)はトランスフェクションを示し、ここで、チューブの数はライブラリーを構成するベクターのグループ化に依存する。C)は、宿主細胞ゲノム内に抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントを部位特異的に組み込んだ細胞の選択を示し、D)は、ポリクローナル抗−RhD抗体ライブラリーストックの作成を示し、ここで、組込まれた抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントを構成する選択された細胞はフリーザー内で貯蔵される。所望により、個々のクローンを貯蔵するか又は該クローンをプールする。E)は製造段階の開始を示し、ここで、ストックからのクローンは解凍される(より小さなフラクション又はプールのいずれかから個別に)。F)は産生段階を示し、ここで、ポリクローナル細胞系統はより大きなバイオリアクターでの播種のために増殖される(示されていないが、中間播種段階が選択される)。ストラテジー2及び3では、これは、ポリクローナル細胞クローンストックがもはや個々のクローン又は半バルクフラクションとして維持されないが、細胞群内にプールされ、組換えポリクローナル製造細胞系統(このポリクローナル製造細胞系統は凍結ストックとして貯蔵されてもよい)を形成する段階である。G)はバイオリアクター製造から得られた最終産物を示す。産生段階の後、該産物の精製及び特徴付けのためにポリクローナル蛋白質組成物を回収した。
【0049】
図1Bは、個別にトランスフェクトされた宿主細胞に由来するpWCB/pMCB及びサブ−pWCBの作成及びポリクローナル製造細胞系統の播種を示すフローチャートである。A)は、可変領域コーディング核酸セグメントから構成されるライブラリーを示し、矢じりは該ライブラリーの個々のメンバーを示す。B)はトランスフェクションを示し、ここで、ライブラリーの個々のメンバー各々を用いて宿主細胞をトランスフェクトする。トランスフェクションはライブラリーの個々のメンバーを含むだけの数の別個のチューブを必要とする。C)は、それらのゲノム内に可変領域コーディング核酸セグメントを安定な様式で組込んだ細胞の選択を示し、D)は、例えば、FACSにより分類された単一細胞のクローニング及び分析による、同様の増殖速度及び/又は生産性を有する個々の細胞系統の選択を示す。この段階はpWCB/pMCBの作成において随意であり、及び段階Eの後に行ってもよい。E)は、凍結ライブラリーストックの作成を示し、該ストックは、トランスフェクションのために用いた可変領域コーディング核酸セグメントから構成されるライブラリーの1つのメンバーを各々発現するn倍の個々の細胞系統から構成される。所望により、pWCB/pMCBの作成の前に個々のクローンを凍結ライブラリーストック内で貯蔵してもよい。F)は、個々の細胞系統の混合を示し、ここで、個々のライブラリーストックからのアンプルを解凍し、次いで、別個の細胞培養にて増殖し、次いで、各培養物に由来する所定数の細胞を単一の細胞培養物に混合する。G)は、Fの混合した細胞培養物からのアリコートを凍結し、それにより、一群のバイアルを作成することによる、pWCB/pMCBの作成を示す。H)は、pMCBに由来する単一バイアルを増殖させ、次いで、pMCBに由来するバイアル中とほぼ同数の細胞を有するアリコートとして凍結することによる、サブ−pWCBの作成を示す。I)は、pWCB又はサブ−pWCBのいずれかから開始される播種手順(示されていないが、中間播種段階)からのポリクローナル製造細胞系統の作成を示す。
【0050】
図2は、ファージディスプレイベクター:Em351,イー・コリベクターを示し、該ベクターを用いて、各々AscI/XhoI及びNheI/NotI制限部位を表示させた、適切なドナーから増幅した重鎖可変領域及び軽鎖フラグメントをベクター内に挿入することにより、抗−RhDFabファージディスプレイライブラリーを作成する。該ベクターは、以下のエレメントを含む:proAmp及びAmp=プロモーター及びアンピシリン耐性遺伝子。pUC Ori=複製起点。ヒトCH1=ヒト免疫グロブリンガンマ1重鎖ドメイン1をコードする配列。詰め込み=重鎖及び軽鎖フラグメントの挿入の間に除去される無関係な配列インサート。p tac及びp lac Z=細菌プロモーター。PelB=イー・コリの細胞膜周辺腔に対するFabの発現を標的するための、修飾された細菌PelBリーダー。Mycut=プロテアーゼ認識部位。Amberストップ=amber終止コドン。gIII=ファージM13切断遺伝子III(198塩基〜C−末端)。
【0051】
図3A−Cは、56個の選択されたRhDクローンの可変重鎖(VH)をコードする核酸配列のアライメントを示す。個々のクローン名をアライメントの右に示し、及びCDR領域の位置をアライメントの上に示す。
【0052】
図4A−Eは、56個の選択されたRhDクローンの軽鎖全体をコードする核酸配列のアライメントを示す。個々のクローン名及びカッパ又はラムダ鎖であるかの表示をアライメントの右に示し、及びCDR領域の位置をアライメントの上に示す。
【0053】
図5は、56個の選択されたRhDクローンのVHに対応するアミノ酸配列のアライメントを示す。個々のクローン名をアライメントの右に示し、及びCDR領域の位置をアライメントの上に示す。
【0054】
図6A−Bは、56個の選択されたRhDクローンのVLに対応するアミノ酸配列のアライメントを示し、ここで、(A)はカッパ鎖及び(B)はラムダ鎖に対応する。個々のクローン名をアライメントの右に示し、及びCDR領域の位置をアライメントの上に示す。
【0055】
図7は、Neo発現ベクター:哺乳類発現ベクターの略図を示し、該ベクターを用いて、宿主細胞ゲノム内への抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントの部位特異的組込みを容易にする。該ベクターは以下のエレメントを含む:pro amp及びAMP=プロモーター及びアンピシリン耐性遺伝子。pUC起点=pUC複製起点。制限酵素部位:XhoI、AscI、NheI及びNotI。P1/P2=軽鎖及びIgG重鎖各々の発現を駆動するプロモーターセット。LH=重鎖リーダー配列。VH=抗−RhD Abの可変重鎖に関するコーディング配列。ヒトIgG1定常重鎖=ヒト定常IgG1重鎖に関するコーディング配列。RBGPolyA=ウサギβ−グロビンポリAシグナル配列。BGHポリA=ウシ成長ホルモンポリAシグナル配列。LK=カッパ鎖リーダー配列。軽鎖=抗−RhD Abの軽鎖に関するコーディング配列。FRT部位=Flpリコンビナーゼ認識配列。ネオマイシン=ネオマイシン耐性遺伝子。SV40ポリA=サルウイルス40ポリAシグナル配列。
【0056】
図8は、9週間の培養後のアリコート3948及び3949に由来する抗−RhD rpAb組成物の陽イオン交換クロマトグラムを示す。下部ダイアグラムはアリコート3949に対応し、及び上部はアリコート3948に対応する。下部ダイアグラムと区別するために上部ダイアグラムのY−軸の位置をずらした。ピークA−Jは、正味電荷が異なる抗体及び電荷不均一性を示す個々の抗体を示す。
【0057】
図9は、11週間の培養後の抗−RhD rpAb産生ポリクローナル細胞系統アリコート3948+及び3949+(FCW065)に由来するRT−PCR産物についてのHinfI RFLP分析を示す、ゲル写真である。特異的クローンに割り当てられ得るバンドが特定される。
【0058】
図10は、8つの異なる抗−RhD抗体に関する、抗−RhD rpAbを発現するポリクローナル細胞培養物に由来する抗−RhD抗体軽鎖のT−RFLPパターンを示す。8つの異なる抗−RhDクローンは矢印で示されるピークに割り当てられた。
【0059】
図11は、25個の異なる抗−RhD抗体に関する、特定の時間ポイントでの、抗−RhD rpAbを発現するポリクローナル細胞培養物に由来する抗−RhD抗体重鎖可変領域のT−RFLPパターンを示す。25個の異なる抗−RhDクローンは矢印で示されるピークに割り当てられた。
【0060】
図12は、5週間培養されたポリクローナル細胞培養物に由来する8つの異なる抗−RhD重鎖コーディング配列のT−RFLPにより評価されたcDNA分布を示す。
【0061】
図13は、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて分析した、8つの異なる抗体に関する抗−RhD rpAbの相対的含有量(%)を示す。積分されたクロマトグラフィーピークを、同一の条件下で陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて個別に分析された単一抗体から得られた保持時間及びピークパターンから、個々の抗体に割り当てた。
【0062】
図14は、4週間の培養後に得られた試料に由来する25個の個々のメンバーに関する抗−RhD rpAbの陽イオン交換クロマトグラムを示す。ピークAC1〜25は、正味電荷が異なる抗体及び電荷不均一性を示す個々の抗体を示す。
【0063】
図15については、(A)は、5Lスケールでの流加培養により産生された25個の個々のメンバーに関する、抗−RhDpAbの3つのバッチ、Sym04:21、Sym04:23及びSym04:24の能力の比較を示す。RhD−陽性赤血球に対するpAbの結合はFACSにより測定され、及び平均蛍光強度(MFI)はng/ml単位でのpAb濃度の関数として示される。さらに、複合ADCC/貪食性アッセイにおいて、25個の個々のメンバーに関する抗−RhDpAbの機能活性をSym04:21及びSym04:24において測定した。(B)は、ng/ml単位でのpAb濃度の関数として、RhD−陽性及びRhD−陰性赤血球の特異的溶解のパーセンテージとしてのADCC結果を示す。(c)は、ng/ml単位でのpAb濃度の関数として、RhD−陽性及びRhD−陰性赤血球の貪食性のパーセンテージを示す。
【0064】
図16は、以下の捕獲溶出(capture elution)(A)、Sephadex G−25(B)、DEAE−Sepharose(C)及びMEP Hypercel(D)の後に収集された物質により示される25個の個々のメンバーを含む抗−RhD rpAb試料の、下流プロセッシングの間の異なる段階で採取された試料に関する、陽イオン交換クロマトグラフィー特性を示す。
【0065】
発明の詳細な記載
組換えポリクローナル蛋白質発現系
本発明は、1又は数個の細胞系統からの抗−RhD組換えポリクローナル抗体(抗−RhD rpAb)の一貫した製造のための組換えポリクローナル抗体発現系を提供する。
【0066】
本発明の製造方法の主な利点の1つは、抗−RhD rpAbを構成する全てのメンバーが1つ又は数個のバイオリアクター又はそれらの等価物内で産生され得ることである。さらに、抗−RhD rpAb組成物は、該過程中に抗−RhD rpAbを構成する個々のメンバーを分離する必要なく、単一の調製物としてリアクターから精製され得る。対照的に、精製された抗−RhDモノクローナル抗体(抗−RhD mAb)を混合することにより抗−RhD rpAb組成物を模倣したいならば(例えばWO 97/49809において提案されているような)、組成物中に含まれるべき各抗−RhD mAbをバイオリアクター内で別々に製造する必要があり、及び恐らくは該抗体も個別に精製されよう。抗−RhD組換えポリクローナルを産生するための本発明の方法と比較すると、抗−RhD mAb混合物のかかる産生は非常に費用がかかり、並びに時間及び空間を必要とする。故に、WO 97/49809に記載されている方法は必然的に、かかる混合物中に含まれ得る抗−RhD mAbの数に対して実際的な限界をもたらし得るが、本明細書中に記載した技法は、一般的に、所望するだけの個々のメンバーを伴うポリクローナル抗体を産生し得る。さらに、本発明の抗−RhD rpAbの個々のメンバーは完全に同一の条件下(同一の製造リアクター中)で産生され、故に、バッチ毎のわずかな産生差異が産物の特性を変化し得る抗−RhD mAbの混合物と比較して、均一な翻訳後修飾が確かなものとなる。
【0067】
産生期間中にポリクローナル性を特徴付ける多様性を有意に損なうことなく、抗−RhD rpAbを発現し得る組換えポリクローナル製造細胞系統を得るために、ポリクローナル製造細胞系統を構成する細胞混合物中の個々の細胞は、可能な限り均一である必要があろう。
【0068】
無作為な組込みを用いる慣用的なモノクローナル抗体発現技法は組換えポリクローナル抗体の産生のために望ましいものではなく、というのも、該過程の無作為性は、組み込まれた核酸配列の数及び位置を細胞毎に変動させるためである。故に、かかる伝統的プロトコルにより組換えポリクローナル抗体が産生されるならば、ポリクローナル蛋白質の個々のメンバーの可変的な発現速度、及び組込まれた核酸セグメントの位置効果に起因する遺伝的不安定性を伴う不均一な細胞培養物をもたらす確率が高くなり得る。これにより、ポリクローナル蛋白質を構成するメンバーの偏向発現がもたらされる確率が最も高くなり得る。
【0069】
故に、所定のゲノム部位内への抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントの導入が望ましく、これは原則として相同組換えにより成し遂げられ得る。しかし、非正統的組換え事象が優勢であるために、相同組換えは非常に効率が悪く、及び単一細胞のゲノム内への変異体抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントの幾つかのコピーの導入ももたらし得る。
【0070】
これらの問題を回避するために、本発明の発現系は個々の宿主細胞のゲノム内への部位特異的組込みを利用する。本発明の系は、抗−RhD rpAbをコードする変異体核酸セグメントを含む部位特異的組込み用の抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーを包含する。ライブラリーに由来する個々の核酸セグメントは、所定の組換え認識部位での部位特異的組込み又はリコンビナーゼ介在カセット交換法により、個々の細胞内の同一の予め確定された染色体位置に挿入され、それにより、個々の細胞が抗−RhD rpAbの異なるメンバーを発現する1つの細胞系統が生成される。以下に記載するように、複数の組込みは、組換えポリクローナル製造細胞系統を構成する細胞の幾つかで生じ得る。しかし、これは、個々の細胞の大部分が抗−RhD rpAbの単一の異なるメンバーを発現する限りは、問題を引き起こすものとは見なされない。好ましくは、これは、個々の細胞の大部分のゲノム中に単一の組込み体を確認するか、又はより多くの組込み体が存在するならばただ1つのものが転写されていることを確認することにより、成し遂げられる。
【0071】
Cre、Flp、ベータ−リコンビナーゼ、Gin、Pin、PinB、PinD、R/RS、Tn3リゾルベース、XerC/Dインテグラーゼ/リコンビナーゼ、ラムダインテグラーゼ又はファージΦC31インテグラーゼのごときリコンビナーゼが用いられ得る。染色体位置内への組込みのために適切なリコンビナーゼは、(i)前記核酸セグメントが導入される細胞自体のゲノムからの発現により、(ii)細胞内に挿入されたベクターにより作動可能にコードされることにより、(iii)第2の核酸分子からの発現により、又は(iv)蛋白質として、提供され得る。好ましい一の実施態様において、ライブラリーの個々のベクター内に含まれた抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントは、抗−RhD抗体核酸セグメントの高レベルの転写及び発現を介する遺伝子座、いわゆる「ホットスポット」内に組込まれる。
【0072】
好ましくは、用いられる宿主細胞系統は哺乳類細胞系統であり、生物薬剤学的蛋白質発現のために典型的に用いられるもの、例えば、CHO細胞、COS細胞、BHK細胞、骨髄腫細胞(例えば、Sp2/0細胞、NS0)、YB2/0、NIH3T3及び不死化ヒト細胞、例えば、HeLa細胞、HEK293細胞又はPER.C6を含む。本発明ではCHO細胞が使用された。しかし、当業者は、記載された他の哺乳類細胞でCHO細胞を容易に置換でき、又はさらには、植物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、菌類及び細菌を含む他の細胞型を利用することができよう。故に、細胞型の選択は本発明に限定されるものではない。好ましい一の実施態様において、予め特徴付けられたホットスポットを含み、抗−RhD rpAbの高発現レベルを介する哺乳類細胞系統が製造のために用いられる。さらにより好ましい一の実施態様において、哺乳類細胞系統は、予め特定されたホットスポット内に位置する単一のリコンビナーゼ認識部位を含む。
【0073】
本発明のさらなる一の実施態様において、宿主細胞内の同一の染色体組込み部位を利用する部位特異的な様式で、変異体抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントは組み込まれる。単一の特異的部位内へのかかる組込みは、そうでなければ無作為組込み又はゲノム内の複数の部位内への組込みに関して見られる位置効果を最小限にする。さらに、組込みのために単一の特異的部位を用いる場合には、VH及びVL鎖間のスクランブリングが起こりにくいようだ。
【0074】
部位特異的組込み系を含む宿主細胞系統において、トランスフェクトされた個々の宿主細胞は、抗体の可変領域において観察される差異は別として、全体的に同一の抗体を発現する。故に、かかる細胞プール内の細胞の大部分は、生産性及び遺伝的安定性に関して同様の特性を示すべきであり、それ故に、この技法は抗−RhD rpAbの制御された産生の可能性をもたらす。
【0075】
VH及びVL領域、特に、CDR領域の可変性に加えて、定常領域もアイソタイプ毎に異なっていてもよい。これは、ある特定のVH及びVL対が、様々な定常重鎖アイソタイプ、例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD及びIgEを伴って産生されてもよいことも意味する。故に、抗−RhD rpAbは、可変領域(V領域)及び定常領域内の個々の抗体分子間の配列差異により特徴付けられた抗体分子を含んでいてもよい。抗−RhD rpAb組成物は、上記した任意の重鎖アイソタイプ又はそれらの組み合わせを有する抗体から構成され得る。好ましい抗−RhD rpAb組成物は、IgG1定常領域、IgG3定常領域又はIgG1及びIgG3定常領域を含む。本発明の一の好ましい実施態様において、VH及びVL対の各々又は幾つかは、ヒトIgG1、IgG3、IgA1及び/又はIgA2定常重鎖を伴って発現される。
【0076】
抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントのライブラリーを提供するために、当該分野において知られている多数の方法が利用されてもよい。VH及びVLコーディングセグメントを含む第1のライブラリーは、コンビナトリアル技法(例えば、EP 0 368 684)又は同族の対合(cognate pairing)を維持する技法(同一の細胞に由来する可変領域コーディング配列の対、未公開特許出願DK200400782の優先権を主張するWO 05/042774において記載されている)のいずれかにより作成されてもよい。さらに、VH及びVLコーディングセグメントライブラリーは、単離されたCDR遺伝子フラグメントを適切なフレームワークに挿入するか(例えば、Soderlind,E.ら.,2000.Nat.Biotechnol.18,852−856)、又は1つ以上の抗−RhDVH及びVLコーディング配列の突然変異により作成されてもよい。この第1のライブラリーは、RhDに対して結合特異性を有する抗体又はフラグメントを産生するVH及びVLコーディング核酸セグメントについてスクリーニングされ、それにより、抗−RhDAbコーディング核酸セグメントのライブラリーを作成する。特にコンビナトリアルライブラリーでは、スクリーニングは濃縮段階、例えば、いわゆるバイオパニング段階に先行される。知られているバイオパニング技法は、ファージディスプレイ(Kang,A.S.ら.1991.Proc Natl Acad Sci USA 88,4363−4366)、リボソームディスプレイ(Schaffitzel,C.ら.1999.J.Immunol.Methods 231,119−135)、DNAディスプレイ(Cull,M.G.ら.1992.Proc Natl Acad Sci USA 89,1865−1869)、RNA−ペプチドディスプレイ(Roberts,R.W.,Szostak,J.W.,1997.Proc Natl Acad Sci USA 94,12297−12302)、コバレントディスプレイ(WO 98/37186)、細菌表面ディスプレイ(Fuchs,P.ら.1991.Biotechnology 9,1369−1372)、酵母表面ディスプレイ(Boder,E.T.,Wittrup,K.D.,1997.Nat Biotechnol 15,553−557)及び真核ウイルスディスプレイ(Grabherr,R.,Ernst,W.,2001.Comb.Chem.High Throughput.Screen.4,185−192)である。FACS及び磁気ビーズソーティングも、標識された抗原を用いる濃縮(パニング)目的のために適用可能である。一般的に、RhDバインダーのためのスクリーニングは、凝集、FACS、ELISA、FLISA及び/又はイムノドットアッセイのごとき免疫検出を用いて行われる。
【0077】
スクリーニングの後、一般的に、作成されたVH及びVLコーディング核酸セグメントのサブ−ライブラリーは、スクリーニングベクターから、所望の宿主細胞内での部位特異的組込み及び発現に適する発現ベクターに移入される必要がある。該移入の間に個々のVH:VL対をコードする配列が維持されることが重要である。これは、サブ−ライブラリーの個々のメンバーを分離しておくか、並びにVH及びVLコーディング配列を1つずつ移動させるかのいずれかにより成し遂げられ得る。或いは、サブ−ライブラリーを構成するベクターはプールされ、及びVH:VL対をコードする配列は、移入の間にVH及びVLコーディング配列を共に維持したままでセグメントとして移動される。この過程は大量移入とも言われ、及びあるベクターから別のベクターへの選択された全てのVH:VL対の容易な移入を可能とする。
【0078】
本発明のさらなる一の実施態様において、抗−RhD組換えポリクローナル抗体組成物は、RhD抗原上の少なくとも1つのエピトープ、例えば、epD1、epD2、epD3、epD4、epD5、epD6/7、epD8及び/又はepD9に対して結合を示すが、RhC、c、E、e抗原に対しては結合を示さないか又は非常に弱い結合しか示さないという共通特性に基づいて定義された個々の抗体のサブセットを含む。好ましくは、抗−RhD rpAb組成物は、epD3、epD4及びepD9に結合する少なくとも1つの抗体(RhDカテゴリーVI抗原結合抗体)、及びさらには少なくとも併せて残りのエピトープepD1、epD2、epD5、epD6/7及びepD8に結合する抗体、例えば、RhDカテゴリーII又はIII抗原に対する抗体、又はカテゴリーVII抗原に対する抗体と組み合わさったRhDカテゴリーIV若しくはV抗原結合抗体から構成される。典型的に、抗−RhD rpAb組成物は少なくとも5、10、20、50、100又は500個の別個の変異体メンバーを有する。変異体メンバーの好ましい数は、5〜100の範囲であり、さらにより好ましくは、5〜50の範囲、及び最も好ましくは、10〜25の範囲である。
【0079】
本発明のさらなる一の実施態様は、抗−RhDポリクローナル抗体コーディング核酸セグメントのライブラリーを用いてトランスフェクションされた細胞群を含む、組換えポリクローナル製造細胞系統であり、ここで、該群の各細胞はライブラリーの1メンバーを発現し得るものであり、該セグメントは、抗−RhD rpAbの異なるメンバー又はフラグメントをコードし、及び前記群の個々の細胞のゲノム内の同一部位に位置し、前記核酸セグメントは、該群の前記細胞と天然においては関連していないものである。
【0080】
さらなる一の実施態様において、抗−RhD rpAbをコードする変異体核酸セグメントは全て天然に存在する配列から由来し、例えば、コンビナトリアルVH:VL対又は同族対としてドナーから単離されたものであり、及び突然変異に誘導されるものではない。
【0081】
各細胞内のゲノムの単一の特異的部位に位置する変異体核酸を含む細胞の組成物はWO02/44361に記載されている。この文献は、所望の特性を有する分子を特定するための細胞の使用を開示しているが、産生系の提供又は抗原に対する特異的結合により特徴付けられたポリクローナル抗体の提供は扱っていない。
【0082】
宿主細胞
適切な宿主細胞は、そのゲノムの1領域中に1つ以上の適切な組換え部位、すなわち、1つ以上のリコンビナーゼ酵素により認識可能であり、故に、リコンビナーゼ認識配列とも言われる核酸配列を含む。組込み体(すなわち、組込み部位内に抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントの組込まれたコピーを有する細胞)についての選択を可能とするために、組換え部位は、組換え部位に対して3’側(下流側)に位置する第1の選択遺伝子(例えば、抗生物質耐性遺伝子)に作動可能に連結される。さらに、弱いプロモーター(例えば、切断型SV40初期プロモーター)及び転写開始コドンが、耐性マーカー−コーディング領域の不可欠な部分を構成する組換え部位に対して5’側(上流側)に位置してもよい。故に、転写開始コドンは、抗−RhD rpAbをコードする抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーを用いたトランスフェクションの前に、宿主細胞内の選択遺伝子の転写開始を先導する。好ましくは、該宿主細胞系統はただ1つの組換え部位を有し、及びそれが1以上のリコンビナーゼ認識配列を有するならば、「部位特異的組込み用ベクター」のセクションで記載したようにこれらは非相同であるはずであり、及びゲノム内への単一組込みのみが可能となる。
【0083】
上記した部位特異的組込みのための宿主細胞は、DNAをその染色体内へ組込み得るか又はミニ−染色体、YAC(酵母人工染色体)、MAC(マウス人工染色体)又はHAC(ヒト人工染色体)のごとき染色体外エレメントを保持し得る任意の細胞から生成され得る。MAC及びHACはWO 97/40183において詳述されており、該文献は出典明示により本明細書の一部となる。好ましくは、CHO細胞、COS細胞、BHK細胞、骨髄腫細胞(例えば、Sp2/0又はNS0細胞)のごとき哺乳類細胞、NIH3T3のごとき繊維芽細胞、及びHeLa細胞、HEK293細胞又はPER.C6のごとき不死化ヒト細胞が用いられる。しかし、植物細胞、昆虫細胞、酵母細胞、菌類、イー・コリなどのごとき非哺乳類真核又は原核細胞も用いられ得る。
【0084】
本発明の一の実施態様において、出発材料として用いられるべき細胞系統は、単一細胞レベルに至るまで該細胞系統のいわゆる限界希釈法を行うことによりサブ−クローニングされ、次いで、目的のベクターのライブラリーでのトランスフェクションに先立ち、各単一細胞を新規細胞集団にまで増殖させる。所望により、かかるサブ−クローニングは、適当な細胞系統を選択する過程において後に実施することも可能である。
【0085】
部位特異的組込みのための宿主細胞は、弱いプロモーター(例えば、切断型SV40初期プロモーター)、転写開始コドン、開始コドンの3’側に位置する組換え部位を含む無作為組込み用プラスミドを用いたトランスフェクションにより得られてもよい。好ましくは、該組込み用プラスミドは、第1の選択遺伝子にカップリングされたマーカー遺伝子も含む。かかる組込み用プラスミドの一例は、Invitrogen(Carlsbad,CA)からのpFRT/LacZeo2である。マーカー遺伝子は、目的の核酸配列を挿入するために用いられるゲノム位置における相対的発現強度を評価するために用いられ得る。第1の選択遺伝子及びマーカー遺伝子の共発現が生じるように、マーカー遺伝子(例えば、ベータ−ガラクトシダーゼ(LacZ)、緑色蛍光蛋白質(GFP)又は細胞表面マーカー)は遺伝子融合により第1の選択遺伝子に連結され得るか、又はIRES(内部リボソーム進入部位)により転写的に連結され得る。細胞系統から細胞系統までの相対的発現レベルの評価を可能にするマーカーと、細胞に対する生存圧力(例えば、薬物耐性又は栄養枯渇)を確立する選択遺伝子の併用は、ゲノム内に組込まれたプラスミドを維持する高産生細胞を確保するために有効な方法である。特に活発な転写を伴うスポットにて挿入された組換え配列を有する細胞は、マーカー遺伝子、例えば、GFP又はLacZの高発現に至り得る。高発現体は、蛍光活性化細胞選別(FACS)により選択され、次いで、クローニングされ得る。この時点で組込み体が単一の組込み体であるか否かも分析すべきである。これは、リアルタイムPCR及びサザンブロッティングにより実施され得る。ゲノム内の所定の位置にFRT部位を有する細胞の調製は、例えば、US5,677,177に記載されていた。
【0086】
組込み用プラスミドを用いてトランスフェクションした細胞に由来する相対的発現レベルを評価するための別の方法は、上記のように産生した細胞についてさらなる組込み−除去段階を行うことである。選択された細胞のこのプールは、組込み用プラスミドの組換え部位に対応するリコンビナーゼをコードするプラスミドと、及び第1の組込み用プラスミドに同様に対応する組換え配列が先行するコーディング領域、開始コドンなしの第2選択マーカーを含む第2のプラスミドを用いて再度トランスフェクトされる。この第2のプラスミドは、適切なプロモーターにより駆動される蛍光マーカー蛋白質(例えば、GFP(または等価の蛍光蛋白質)のためのコーディング配列も含む。リコンビナーゼは、同様の組換え配列が組込み用プラスミドにより予め挿入されている宿主細胞ゲノムへのこのプラスミドの組込みを媒介する。特に活発な転写を伴うスポットにて挿入された組換え配列を有する細胞は、蛍光蛋白質の高発現をもたらし得る。高発現体は蛍光活性化細胞選別(FACS)により選択され、次いで、クローニングされる。一貫して高い発現を伴い及び挿入されたプラスミドの1つのコピーを含むクローンが、リコンビナーゼを用いてトランスフェクションされ、及び第1の選択マーカーにより選択され、第2のプラスミド配列がリコンビナーゼにより除去された細胞を同定し、第1の選択マーカーを再度機能させる。これらの細胞は転写ホットスポットにて挿入された第1の組換え配列をなお含み、及びここで目的の遺伝子の発現のために使用され得る。
【0087】
プラスミドの単一コピーの組込みの際にマーカー遺伝子の高発現を成し遂げる細胞系統が、抗−RhD抗体発現ライブラリーでのトランスフェクションのために使用される。好ましくは、宿主細胞内の組換え部位は、遺伝子又は特に活発な発現の領域、すなわち、いわゆるホットスポットに位置する。
【0088】
部位特異的組込み用ベクター
適切なベクターは、宿主細胞の構築に用いた選択遺伝子と異なる適切な選択遺伝子に連結された適切な組換え部位を含む。哺乳類細胞発現における使用に適する選択遺伝子は、栄養的選択性を付与する遺伝子、例えば、チミジンキナーゼ遺伝子(TK)、グルタミンシンテターゼ遺伝子(GS)、トリプトファンシンターゼ遺伝子(trpB)又はヒスチジノールデヒドロゲナーゼ遺伝子(hisD)を含むが、これらに限定されない。さらに、選択マーカーは、薬物耐性を付与する代謝拮抗物質耐性遺伝子、例えば、ヒポキサンチン及びチミジン欠乏培地を用いて選択され得る及びさらにはメトトレキサートを用いて選択され得るジヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(dhfr)、ミコフェノール酸を用いて選択され得るキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(gpt)、真核細胞ではG418を用いて及び原核細胞ではネオマイシン又はカナマイシンを用いて選択され得るネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo)、ハイグロマイシンを用いて選択され得るハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(hyg、hph、hpt)遺伝子、ピューロマイシンを用いて選択され得るピューロマイシンN−アセチル−トランスフェラーゼ遺伝子(pac)、又はブラストサイジンを用いて選択され得るブラストサイジンSデアミナーゼ遺伝子(Bsd)である。最終的に、例えばフローサイトメトリーにより選別を可能とする蛋白質、例えば、緑色蛍光蛋白質(GFP)、神経成長因子受容体(NGFR)又は他の膜蛋白質又はベータ−ガラクトシダーゼ(LacZ)をコードする遺伝子が選択マーカーとして用いられ得る。
【0089】
本発明の一の態様において、選択可能な遺伝子は、プロモーターが先行せず、翻訳開始コドンを備えてもいない。プロモーター及びATGコドンは、選択された部位特異的組換え部位にて提供される。該ベクターが、宿主細胞のゲノム内の選択された組換え部位以外の位置で組込まれるならば、この第2の選択遺伝子の発現は、プロモーター及び開始コドンの欠如に起因して全く生じ得ない。組込みが宿主細胞のゲノム内の選択された組換え部位にて生じるならば、第2の選択遺伝子は発現され、及び第1の選択遺伝子の発現は欠失する。
【0090】
例えば、組込みは、サッカロマイセス・セレヴィシエ由来のFlpリコンビナーゼ又はその突然変異体と共に、ゲノム内及び部位特異的組込み用ベクター上のいわゆるFRT部位/Flpリコンビナーゼ認識配列(5’−gaagttcctattccgaagttcctattctctagaaagtataggaacttc−3’(配列番号1)又はその変異体)を用いて行ってもよい。しかし、Creリコンビナーゼのものを含む他のリコンビナーゼ系も同等に首尾よく用いられてもよく、及びバクテリオファージP1又はその変異体又は突然変異体由来のloxPのごとき様々なlox部位、例えば、lox66、lox71、lox76、lox75、lox43、lox44及びlox511が用いられてもよく(C.Gorman及びC.Bullock,Curr.Opinion in Biotechnology 2000,11:455−460)、attP部位及びattB部位間の組換えを行うファージインテグラーゼΦC31又はラムダインテグラーゼを用いてもよい(A.C.Grothら.PNAS 2000,97:5995−6000)。本発明において用いられ得るさらなるリコンビナーゼ系は、細菌プラスミドpSM19035由来のβ−リコンビナーゼ−six系(Rojo及びAlonso 1995)、バクテリオファージMu由来のGin−gix系(Crisona et al 1994)、Zygosaccharomyces Rouxii由来のR−RS系(Onouchi et al 1995)、又はres組換え部位を認識するTn3リゾルベース(Stark et al 1994)又はイー・コリ由来のXerC/D系(Blakely and Sherratt 1994)であるが、これらに限定されない。
【0091】
リコンビナーゼカセット介在交換(RMCE)とも言われる部位特異的組換え系のさらなる変形形態は、非相同組換え部位を利用する。かかる系において、特異的標的部位を作成するために、2つの非同一の組換え部位が宿主ゲノム内に導入される。標的隣接部位に対応する組換え部位は、目的の遺伝子を含むコンストラクトにも隣接する。かかる系はWO99/25854に記載されており、該文献は出典明示によりその全てが本明細書の一部となる。非相同組換え部位の使用は、染色体に由来する目的の遺伝子の除去を抑制することが示された。対応するリコンビナーゼが提供され、及び部位が互いに組み換え可能でない限り、非同一の組換え部位は上記した任意の組換え部位から構成され得る。例えば、非同一の組換え部位は、組込みのためにFlpリコンビナーゼを利用するFRT部位及び突然変異体FRT部位(Schlake及びBode 1994,Biochemistry 33,12746−12751)、Creリコンビナーゼを利用するloxP部位及び突然変異体非互換性loxP部位(Langerら 2002,Nucleic Res.30,3067−3077)又は組込みのためにFlp及びCreリコンビナーゼを利用するFRT部位及びloxP部位(Lauthら 2002,核酸Res.30,21,e115)から構成され得る。
【0092】
さらに、2つの異なるFRT部位を用いる系は、Verhoeyenら.,Hum.Gene Ther.2001 12,933−44において記載されている。このアプローチにおいて、組込み用プラスミドはレトロウイルス感染により宿主細胞に移入される。該プラスミドは、レポーター遺伝子及び第1の選択マーカー遺伝子並びに感染に必要とされるレトロウイルス性エレメントの組み合わせから構成される。レトロウイルス3’LTRは2つの異なるFRT部位を含む。プロモーター及び翻訳開始コドンが欠如した非機能的な第2の選択マーカー遺伝子は、これらの部位に対して3’側に位置する。レトロウイルス感染の過程の間、3’LTR配列は5’LTRに複写される。これは、各側の2つの異なるFRT部位による、レポーター遺伝子及び第1の選択マーカー遺伝子のフランキングをもたらす。外側FRT部位の間の配列は、強いプロモーターの制御下で抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントに対して交換可能である。抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントを含むカセットは、FRT部位の同一のセットによりフランキングされている。該反応はFlpリコンビナーゼにより触媒される。トランスフェクトされた交換プラスミドにおいて、IRESエレメント及び翻訳開始コドンは核酸セグメントのさらに下流側に位置する。組込まれたカセットの置換の後、FRT部位の外側の3’LTR配列に位置する非機能的選択マーカー遺伝子は、抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントを構成するカセットにより提供される翻訳開始コドンにより活性化される。負の選択マーカー(例えば、チミジンキナーゼ)が組込み用ベクター内に存在するならば、さらに交換状態が高められ得る。
【0093】
組込み用ベクターは標準的なトランスフェクションにより宿主細胞に移入され得る。この場合、組込み用カセットは、5’末端をFRT部位により及び3’末端を異なるFRT’部位によりフランキングされている。ATG−欠損の第2の耐性マーカー遺伝子は3’FRT’部位のさらに下流側に位置する。抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントに関する交換は、レトロウイルス系について記載されているように進行する。
【0094】
染色体への部位特異的組込み後の抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントの除去を阻害する別の系は、上記されたΦC31インテグラーゼである。この系は、特許出願WO 01/07572及びWO 02/08409において十分に記載されており、該文献は出典明示によりその全てが本明細書の一部となる。
【0095】
好ましくは、組込み用ベクターはアイソタイプコーディングベクターであり、ここで、定常領域(好ましくは、イントロンを含む)は、スクリーニングベクターに由来するVH及びVL含有セグメントの挿入前にベクターに存在する。ベクター内に存在する定常領域は、全重鎖定常領域(CH1ないしCH3又はないしCH4)であり得るか又は抗体のFc部分をコードする定常領域(CH2ないしCH3又はないしCH4)のいずれかであり得る。軽鎖カッパ又はラムダ定常領域も移入前に存在してもよい。存在する定常領域の数の選択は、もしあれば、用いるスクリーニング及び移入系に依存する。重鎖定常領域は、アイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD及びIgEから選択され得る。好ましいアイソタイプはIgG1及び/又はIgG3である。
【0096】
さらに、抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントの部位特異的組込みのためのベクターは、VH及びVL鎖各々の高レベル発現を導く適切なプロモーター又は等価な配列を含む。好ましくは、プロモーターは哺乳類起源である。VH及びVLコーディング配列は組込みのために用いられるベクター内に対として置かれ(ベクター分子あたり1対)、それにより、組込み過程を通してそれらが一緒にあることを確認する。好ましくは、プロモーターは抗−RhD抗体コーディング核酸セグメント内に位置する。双方向性発現のために、発現ベクター内では頭−頭のプロモーター配置が用いられる(図7)。一方向性発現のために、一方はVH遺伝子エレメントの前にあり及び他方はVL遺伝子エレメントの前にある2つのプロモーター、或いは重鎖及び軽鎖遺伝子エレメント間のIRES配列と組み合わせたVH又はVLの前にある1つのプロモーターを用いて発現を成し遂げ得る。
【0097】
機能的リーダー配列をコードする核酸配列は、発現ベクター内に含まれ、小胞体又は細胞小器官のごとき細胞内の特異的位置に遺伝子産物を誘導し得る。強いポリアデニル化シグナル配列は重鎖及び軽鎖コーディング配列の3’側に位置し得る。ポリアデニル化シグナルは、新生RNA転写産物の終結及びポリアデニル化を確実なものとし、及び伝達安定性に相関している。
【0098】
部位特異的組込みのための発現ベクターは、組込み部位における発現を増大するために、さらなる転写調節エレメント、例えば、エンハンサー又はUCOE(遍在性クロマチンオープニングエレメント)を有し得る。該エンハンサーは、転写に関与する細胞の蛋白質と特異的に相互作用する核酸配列である。UCOEはクロマチンを開くか又はクロマチンを開状態に維持し、作動可能に連結された遺伝子の再現可能な発現を容易にする(WO00/05393に詳述されている;該文献は出典明示によりその全てが本明細書の一部となる)。上記した調節エレメントの1つ以上が宿主細胞の染色体に組込まれる場合、それらは異種調節エレメントと呼ばれる。
【0099】
ポリクローナル蛋白質の高レベル発現のための発現系の確立
核酸配列を細胞内へ導入するための方法は当該分野において知られている。典型的に、これらの方法は、目的の配列を細胞、ゲノム又は染色体外エレメント内へ導入するためのDNAベクターの使用を含む。細胞のトランスフェクションは、リン酸カルシウム沈降、電気穿孔法、マイクロインジェクション、リポソーム融合、RBCゴースト融合、原形質融合などを含む、当業者に知られている多数の方法により達成されてもよい。
【0100】
宿主細胞系統のトランスフェクションのために、抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーが用いられ、ここで、各個々のベクターは抗−RhD rpAbの異なるメンバーをコードする核酸セグメントの1つの単一コピーを含む。抗−RhD抗体発現ベクターのこのライブラリーは集合的に抗−RhD rpAbをコードする。部位特異的組込みに適するベクターは前セクションに記載した。抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントのライブラリーを構成する個々のベクターは、単一の組成物中に一緒に混合され得るか、又は抗−RhD rpAbの個々のメンバーをコードする個々のベクターは、別個の組成物中か、又は1つの組成物中の約5〜50個の個々のライブラリーのベクターの混合物中に維持され得る。
【0101】
組換えポリクローナル製造細胞系統の作成及びかかる細胞系統に由来する組換えポリクローナル抗体の産生は、幾つかの異なるトランスフェクション及び製造ストラテジーにより獲得できる。これらのストラテジーは図1Aに示されており、及び以下により詳細に記載されている。
【0102】
組換えポリクローナル製造細胞系統を産生する1つの方法は、宿主細胞系統のトランスフェクションのために、単一の組成物中に共に混合されたベクターのライブラリーを使用することである。この方法はバルクトランスフェクション又は大量トランスフェクションと呼ばれる(該ライブラリーの個々のメンバーの全ては1つのチューブ中で宿主細胞系統内にトランスフェクトされる)。一般的に、既に記載されたベクター及び宿主細胞の設計により、確実に、適切な選択によりポリクローナル細胞系統を得ることができよう。かかる細胞系統において、個々の細胞の大部分は、抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーに由来する抗−RhD rpAbの異なるメンバーをコードする核酸セグメントの1つのコピーをゲノム内に組み込む。核酸セグメントの単一のコピーは細胞群中の各細胞のゲノムの単一の特異的部位内に組み込まれ、それにより、抗−RhD rpAbの個々のメンバーを発現する個々の細胞から構成されるポリクローナル細胞系統を産生する。好ましくは、抗−RhD rpAb製造の開始前に、ポリクローナル細胞系統の凍結ストックを生成する。
【0103】
組換えポリクローナル製造細胞系統を産生する別法は、トランスフェクション前に、抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーを約5〜50個の個々のライブラリーベクターを含むフラクションに分割することである。好ましくは、ライブラリーのフラクションは、10〜15個の個々のベクターを構成する。次いで、各組成物を宿主細胞のアリコートにトランスフェクトする。この方法は半バルクトランスフェクションと呼ばれる。トランスフェクトされたアリコート数は、ライブラリーのサイズ及び各フラクション中の個々のベクターの数に依存し得る。例えば、ライブラリーが50個の別個の変異体メンバーを構成し、それが組成物中、10個の別個の変異体メンバーを含むフラクションに分割されるならば、宿主細胞の5つのアリコートが、元々のライブラリーの別個のフラクションを構成するライブラリー組成物を用いてトランスフェクションされる必要があろう。宿主細胞のアリコートが部位特異的組込みのために選択される。好ましくは、別個のアリコートが別々に選択される。しかし、それらは選択前にプールされ得る。製造のための所望のポリクローナル細胞系統を得るために、凍結ストックを作成する前、ストックから回収された直後又は短い増殖時間の直後にアリコートが混合され得る。所望により、細胞のアリコートは産生を通じて別々に保たれ、及びポリクローナル抗体組成物は、産生前の細胞のアリコートではなくむしろ各アリコートの産物を混合することによりアセンブリされる。
【0104】
組換えポリクローナル製造細胞系統を産生する3番目の方法は、ハイスループット方法であり、ここで、宿主細胞は、抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーを構成する個々のベクターを用いて別々にトランスフェクトされる。この方法は個々のトランスフェクションと呼ばれる。好ましくは、個別にトランスフェクトされた宿主細胞は部位特異的組込みのために別々に選択される。しかし、それらはまた選択前に別々にプールされ得る。選択時に産生された個々の細胞クローンは増殖時間及び組込みパターンに関して分析されてもよく、及び好ましくは、同様の増殖速度及び単一の部位特異的組込み体を有するものが凍結ライブラリーストックを作成するために用いられる。ストックを作成する前、ストックから回収した直後又は短い増殖時間の直後に、個々の細胞クローンを混合して、所望のポリクローナル細胞系統を得ることができる。或いは、個別にトランスフェクトされた宿主細胞はさらに早期、すなわち、選択が行われる前に混合される。
【0105】
上記した製造ストラテジーにおける共通の特徴は、抗−RhD rpAbを構成する全ての個々のメンバーが、1個又は約5〜最大10個の限られた数のバイオリアクター中で産生され得ることである。唯一の差異は、組換えポリクローナル製造細胞系統を構成する細胞群を産生することを選択する段階である。
【0106】
抗−RhD rpAbの発現及び産生のために用いられる宿主細胞系統は、リコンビナーゼ酵素により認識可能な少なくとも1つの核酸配列を有する。かかる宿主細胞系統の調製は「宿主細胞」のセクションに記載した。
【0107】
好ましくは、部位特異的組込みのためのベクターは、高レベル発現を媒介する所定の遺伝子座、いわゆるホットスポット内に組み込まれる。
【0108】
発現レベルを増大させる必要があるならば、DHFR遺伝子又はグルタミンシンテターゼ(GS)遺伝子に関する選択を用いて遺伝子増幅が実施され得る。これは、かかる選択マーカーを含むベクターの使用を必要とする。
【0109】
以下の記載は、組換えポリクローナル抗体製造細胞系統の獲得方法の一例であり、ここで、鎖スクランブリングは存在するとしても最小限である。
【0110】
可変重鎖及び全カッパ軽鎖に囲まれた頭−頭構築物のごとき、反対の転写方向に配置した2つのプロモーターを有する構成的発現用の汎用プロモーターカセットを含む核酸セグメントが構築され、FRT部位及びネオマイシン耐性遺伝子及び重鎖定常領域を含む部位特異的組込み用ベクター内への全コンストラクトの移入を可能とする。誘発的発現用プロモーターカセットも用いられ得ることが熟慮される。さらに、該プロモーターは、一方向性転写のために頭ー尾(head−to−tail)で配置され得る。安定にlacZ−ゼオシン融合遺伝子を発現するCHO−Flp−In細胞(Invitrogen,Carlsbad,CA)を実験に用い、細胞に抗生物質ゼオシン耐性を付与する。細胞をゼオシン含有の適切な培養培地中に維持する。Flpリコンビナーゼを発現するプラスミド及び抗−RhD rpAbをコードする部位特異的組込み用抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリー及び異なる選択マーカー(ネオマイシン)を用いて、細胞をまとめて共トランスフェクトする。トランスフェクション後、細胞をネオマイシンの存在下で培養する。次いで、好ましくは、ネオマイシンに耐性を示す細胞を懸濁液中及び無血清条件下での増殖に付し、これは1又は2段階で、及び選択圧有り又は無しで行われ得る。或いは、細胞のトランスフェクション前に、細胞を懸濁液中の無血清条件下での増殖に付す。ポリクローナル細胞系統が適切な条件に適応する場合、スケールアップは異なる培養系、例えば、慣用的な小型培養フラスコ、Nunc多層セルファクトリー、小型高収率バイオリアクター(MiniPerm、INTEGRA−CELLine,wavebags,BelloCell)及びスピナーフラスコないし中空繊維及びバイオリアクターを用いて開始され得る。適切な産生時間及び最終のバイオリアクターサイズの選択は、所望する、バッチからの蛋白質収率及び細胞系統からの発現レベルに依存する。該時間は2〜3日から最高3ヶ月まで様々であってもよい。ELISAを用いて抗体産生について細胞を試験する。発現された抗−RhD rpAbを上清から単離する。抗−RhD rpAbを精製し、次いで、特徴付けた。精製及び特徴付け手段の例は以下に示す。
【0111】
クローン多様性/ポリクローナル性
ポリクローナル抗体の特性の1つは、それが多数の個々の抗体分子から構成されていることであり、ここで、各抗体分子はポリクローナル抗体の他の分子と相同であるが、ポリクローナル抗体の個々のメンバー間のアミノ酸配列における差異により特徴付けられた可変性も有する。通常、これらの差異は可変領域、特に、CDR領域、CDR1、CDR2及びCDR3に限定される。ポリクローナル抗体のこの可変性は、機能的レベルにおける多様性、例えば、1つ以上の標的上に位置する同一又は異なる抗原上の異なる抗原決定基に関する様々な特異性及び親和性としても説明され得る。組換えポリクローナル抗体において、該多様性は、ドナー由来の免疫グロブリン産物において観察される多様性のサブセットを構成する。かかるサブセットを慎重に選択し、次いで、所望の標的抗原、この特定事例においてはRhD抗原に結合するその能力に関して特徴付けた。
【0112】
組換えポリクローナル抗体の産生に関する1つの関心事は、クローン多様性が最終産物中で維持されているか否かということであり得る。抗−RhD rpAbを発現する細胞に由来する(RT)−PCR産物のRFLP又はシークエンスにより、クローン多様性を分析してもよい。細胞系統により産生された抗−RhD rpAbについての機能的試験(例えば、ELISA)、個々のメンバーに対する抗−イディオタイプ抗体、又はクロマトグラフィー法により、蛋白質レベルでの多様性を分析できる。
【0113】
クローン偏向性は、もしあるならば、トランスフェクションに用いた初めのライブラリーのクローン多様性を抗−RhD rpAbを発現する細胞のプール(ポリクローナル細胞系統)に見出される多様性と比較することにより、評価され得る。
【0114】
抗−RhD rpAbのクローン多様性は、ポリクローナル組成物の個々のメンバーの分布として評価され得る。この分布は、トランスフェクションの間に細胞系統内に最初に導入された異なるコーディング配列の数と比較した、最終ポリクローナル抗体組成物中の異なる個々のメンバーの総数として評価され得る。この場合、トランスフェクションにおいて最初に用いたコーディング配列の少なくとも50%が最終の抗−RhD rpAbの異なる個々のメンバーとして特定され得る場合に、十分な多様性が獲得されたと考えられる。好ましくは、トランスフェクションに用いた抗−RhD抗体コーディング配列の少なくとも75%が最終組成物中の抗体として特定され得る。さらにより好ましくは、トランスフェクションに用いた抗−RhD抗体コーディング配列の少なくとも85%〜95%、及び最も好ましくは100%が、最終組成物中の抗体として特定され得る。
【0115】
抗−RhD rpAb組成物の個々のメンバーの分布は、個々のメンバー間の相互分布に関しても評価され得る。この場合、組成物のどの単一のメンバーも最終抗−RhD rpAb組成物中の個々のメンバーの総数の75%以上を構成しないならば、十分なクローン多様性が獲得されたと考えられる。好ましくは、どの個々のメンバーも、最終ポリクローナル組成物中の個々のメンバーの総数の50%以上、さらにより好ましくは、25%、及び最も好ましくは、10%を超えない。ポリクローナル組成物中の個々のメンバーの分布に基づくクローン多様性の評価は、RFLP分析、配列分析又は蛋白質分析、例えば、ポリクローナル組成物の特徴付けに関して下記するアプローチにより行われ得る。
【0116】
クローン多様性は、a)クローニング過程の間、b)細胞増殖における差異の結果として、又はc)複数の組込み体のスクランブリングにより生じ得るクローン偏向性の結果として減少されてもよい。かかる偏向性が生じるならば、クローン多様性の喪失のこれらのソースの各々は、本明細書に記載した方法に若干の修飾を加えることにより容易に改善される。
【0117】
適切なベクター内への可変ドメインのクローニングにより導入される偏向性を制限するために、クローニング偏向性が制限されるように、1つのベクターから別のベクターへの目的遺伝子の移入が設計されてもよい。大量移入技法及び増幅に用いるイー・コリ株の慎重な選択はクローニング偏向性を軽減し得る。別の可能性は、スクリーニングベクター及び部位特異的組込み用ベクター間の、ポリクローナル抗体の個々のメンバーをコードする各ポリヌクレオチドの個々の移入を行うことである。
【0118】
長期間にわたる細胞系統内の個々の細胞の細胞増殖速度における差異が抗−RhD rpAb発現に偏向性をもたらし、細胞系統により発現された抗−RhD rpAbの幾つかのメンバーの存在を増大又は減少させることが可能である。増殖速度におけるかかる差異についての1つの理由は、初めのトランスフェクションのために用いられる開始細胞系統を構成する細胞集団が不均一であることであり得る。細胞系統内の個々の細胞は長期間にわたって示差的に増殖することが知られている。より均一な出発材料を確保するために、目的のライブラリーでのトランスフェクションの前に、単一細胞レベルまで細胞系統を限界希釈し、次いで、各単一細胞を新規細胞集団にまで増殖させることにより、細胞系統のサブ−クローニングが行われてもよい(いわゆる限界希釈による細胞のサブ−クローニング)。次いで、これらの細胞集団の1つ以上をそれらの増殖及び発現特性に基づいて出発材料として選択する。
【0119】
さらに、部位特異的組込み体を得た唯一の細胞が生存し得ることを確認するために用いられる選択圧は、ポリクローナル細胞系統内の個々の細胞の増殖速度に影響してもよい。これは、選択圧に適応するために特定の遺伝子変化を受ける細胞の嗜好性(favoring)に起因してもよい。故に、選択マーカーの選択は、増殖速度により誘導される偏向性にも影響してもよい。これが生じるならば、異なる選択マーカーが試験されるべきだ。選択が細胞に毒性のある物質に基づく場合、最適な濃度、及び選択が全産生期間にわたって必要であるか又は初めの段階のみで必要であるか否かが慎重に試験されるべきである。
【0120】
十分に定義された細胞集団を確保するためのさらなるアプローチは、トランスフェクション及び選択法の後に蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いることである。蛍光標識された抗体を用いて、IgGコンストラクトでトランスフェクションした細胞のプールに由来した高生産性細胞を濃縮することができる(Brezinskyら.J.2003.Immunol Methods 277,141−155)。この方法を用いて、同様のレベルで免疫グロブリンを発現する細胞を選別し、それにより、生産性に関して同質の細胞集団を作成できる。同様に、蛍光色素5,6−カルボキシルフルオレセインジアセタートスクシンイミジルエステル(CFSE)での標識を用いることにより、同様の増殖速度を示す細胞がFACS法により選択され得る。さらに、抗−RhD rpAbの個々のメンバーの発現レベルにおける差異は、長期間にわたって最終産物へ偏向性をもたらしてもよい。
【0121】
選択後に別々にトランスフェクトされたクローンを混合することによりポリクローナル細胞系統が産生されるならば(図1Aの第3アプローチ)、混合前の細胞培養レベルにおける個々のクローンに関して以下の選択基準が設定されてもよい:増殖速度は24〜32時間である必要があり、生産性は1細胞1日あたり1.5pgを超えるべきであり、及び培養物は細胞内染色方法により評価される同質の細胞集団を示すべきである。所望により、FACS分析に関連して集団の特定領域をゲート(gating)することにより個々のクローンを混合する前に、Brezinskyにより記載された表面染色方法を用いて、各個々のクローンに関してより同質な細胞集団を得ることができる。
【0122】
増殖速度又は生産性偏向性が存在したとしても、個々のメンバーの欠失又は過剰発現は、最終抗−RhD rpAb産物の多様性要件に応じて、必ずしも決定的でなくともよい。
【0123】
部位特異的単一組込み体を有する細胞において、該細胞は発現されるべき抗体の可変領域の配列のみが異なり得る。故に、組込み部位及び遺伝子調節エレメントにおける差異により付与される異なる細胞効果が排除され、及び組み込まれたセグメントは細胞増殖速度に対して最小効果を有する。スクランブリング及び複数の組込みのいずれもがこれらがまれな事象であるために製造細胞系統の増殖速度における問題を惹起し得ない。一般的に、無作為組込みは約10−5の効果を伴って生じ、一方で、部位特異的組込みは約10−3の効果を伴って生じる。予想外に、複数の組込みが問題を惹起するならば、上記したように該事象が再発する可能性は非常に小さいので、代替法は、抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーでのトランスフェクションを繰り返すことである。
【0124】
統計を検討すると、多数の細胞のバルクトランスフェクションは、所望でないクローン偏向性を回避する方法も構成する。このアプローチにおいて、宿主細胞系統は、抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーを用いてまとめてトランスフェクトされる。かかるライブラリーは、ライブラリーの各異なるメンバーの多数のコピーを構成する。好ましくは、これらのコピーは多数の宿主細胞内に組込まれるべきである。好ましくは、少なくとも100、1000、10000又は100000個の個々の細胞は、変異体核酸セグメントのライブラリーの異なるメンバーのコピーを用いてトランスフェクションされる。故に、別個の変異体核酸セグメントのライブラリーが、1000個の個々の細胞に各々組込まれる1000個の異なるメンバーから構成されるならば、部位特異的に組み込まれた抗−RhD抗体コーディングセグメントを含む106個のクローンがトランスフェクションから生じるだろう。この様式において、個々の細胞の倍加速度のガウス曲線は、非常にわずかな程度でのみ一般集団に影響するはずである。たとえ製造細胞の低いパーセンテージが異常な増殖及び/又は発現特性を示すとしても、これはクローン組成物定常性を維持する可能性を増大し得る。
【0125】
或いは、既に記載した半バルクトランスフェクション又は個々のトランスフェクション方法を用いてもよい。
【0126】
ポリクローナルワーキングセルバンク(pWCB)の確立
セクション「ポリクローナル蛋白質の高レベル発現のための発現系の確立」は、ポリクローナル製造細胞系統を確立する3つの代替法を記載する。該セクションは、バルク又は半バルクトランスフェクションにより得られた細胞群から構成される凍結ライブラリーストックの作成を記載し、ここで、ライブラリーストック中の各個々の細胞は、抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーに由来する個々のメンバーを発現し得る。好ましくは、細胞群は、既に記載したクローン多様性要件を満たしており、その結果、ポリクローナル製造細胞系統を確立するために解凍及び増殖される場合、本質的にライブラリーの全メンバーが凍結ライブラリーストックアンプルから発現され得る。バルクトランスフェクション及び半バルクトランスフェクションアプローチにおいて、凍結ライブラリーストックに由来する単一バイアルが解凍され及びポリクローナル製造細胞系統に増殖され得るという点で、凍結ライブラリーストックはポリクローナルワーキングセルバンク(pWCB)と見なされ得る。
【0127】
或いは、既に記載した組換えポリクローナル製造細胞系統の作成のための3番目のアプローチにおいて、凍結ライブラリーストックは、抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーの個々のメンバーを用いて個別にトランスフェクションされている別個の細胞系統から構成される。トランスフェクタントはそれらのゲノムに由来する組み込まれたベクター由来の核酸セグメントの安定な発現に関して選択される。好ましくは、核酸セグメントはトランスフェクタントのゲノム内の1つ以上の部位内に部位特異的に組み込まれ、及びさらにより好ましくは、ゲノムの単一部位内に組み込まれる。選択時に例えばクローンコロニーから得られたトランスフェクトされた細胞は、単一クローンとして単離及び維持されてもよく、又は同一の抗−RhD抗体を発現するクローンのプールを作成するためにプールされてもよい。本発明において、細胞の単一クローン及び同一の抗体を発現するクローンのプールは個々の細胞系統と呼ばれる。故に、抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーが25個の個々のメンバーを構成したならば、この3番目のアプローチにおける凍結ライブラリーストックは、抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーに由来する個々のメンバーを各々発現する25個の個々の細胞系統(細胞系統の混合物ではない)から構成されるだろう。故に、このライブラリーストックに由来する1つのバイアルは、製造に用いられるならば、モノクローナル抗−RhD抗体の産生をもたらし得る。
【0128】
本発明は抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーを例示する。しかし、凍結ライブラリーストックの作成は可変領域コーディング核酸セグメントから構成されるライブラリーから産生されるポリクローナル蛋白質の抗原特異性と無関係であり、並びに抗体VH及びVLコーディング核酸セグメント、又はT細胞受容体(TcR)α及びβ−、又はγ及びδ−コーディング核酸セグメントから構成される任意の他のライブラリーと共に用いられてもよい。可変領域コーディング核酸セグメントから構成されるライブラリーは可変領域に加えて1つ以上の定常領域もコードする。故に、抗体VH及びVLコーディング核酸セグメントから構成されるライブラリーは、Fv、scFv、Fab分子又は全長抗体分子をもたらしてもよく、及びTcR可変領域コーディングセグメントから構成されるライブラリーはTcR可変ドメインフラグメント、可溶性TcRs又は全長TcRsから構成される分子をもたらしてもよい。
【0129】
凍結ライブラリーストックが個々の細胞系統から構成される状況では、単一アンプルの内容物を解凍及び増殖することにより、ポリクローナル製造細胞系統の構築に用いられ得るpWCBを産生することが適切であり得る。かかるpWCBを産生するために用いられる個々の細胞系統は、i)単一クローン又はii)クローンのプール(選択後に得られる単一コロニーのプール)のいずれかから得られる。クローンは個別にトランスフェクションされた宿主細胞から得られ、及び可変領域コーディング核酸セグメント、例えば、抗体VH及びVLコーディングセグメント又はTcRα及びβ−、又はγ及びδ−コーディングセグメントを含むライブラリーの個々のメンバーの安定な発現に関して選択される。安定な発現に関する選択は当該分野にて知られている方法、例えば、選択マーカー遺伝子を用いて行われる。本発明の一の好ましい実施態様において、例えば、i)又はii)(上記記載を参照のこと)に由来する細胞系統を限界希釈又は単一細胞FACS分析及び選択に付すか、又は例えばClonePixFLのごときロボットを用いて高発現クローンを選択することにより、個々の細胞系統はクローニング又はサブクローニングした細胞から得られる(以下を参照のこと)。上記したように、pWCBを作成するために用いる個々の細胞系統は、個々の細胞系統の凍結ライブラリーストック中に予め貯蔵されてもよく、そこから、各個々の細胞系統の1つのアンプルがpWCBの作成前に解凍及び増殖される。好ましくは、個々の細胞系統は、pWBCの他のメンバーにより産生される抗体の特性と異なる特性、例えば、異なる抗原特異性、異なる親和性、異なる可変又はCDR領域及び/又は異なる定常領域を有する全長抗体を発現する。
【0130】
pWCBを作成するために用いられる各細胞系統は、ポリクローナル蛋白質の異なるメンバーを産生する。好ましくは、ポリクローナル蛋白質の各異なるメンバーは特定の抗原に結合する。さらには、各異なるメンバーが各宿主細胞のゲノム内の単一特異的部位から産生されることが好ましい。pWCBは各個々の細胞系統に由来する所定の数の細胞を混合することにより生成される。他の比も所望されてもよいが(以下を参照のこと)、好ましくは、細胞は等数(1:1の比)で混合される。細胞の混合物はアリコートとして凍結され、ここで、該アリコートは各バイアル中に所定の数の細胞を有する多数のバイアルに分配される。後の製造目的のためにこれらのバイアルをpWCBとして凍結及び貯蔵する。好ましくは、pWCBを構成するバイアルの数は10、25、50、75、100、200、500又は1000バイアルを超える。pWCBの個々のバイアルを異なる時間ポイントで解凍し、バッチ間で本質的に同一の組成を有するポリクローナル蛋白質を産生し得るポリクローナル製造細胞系統の異なるバッチを作成してもよい(実施例5を参照のこと)。
【0131】
本発明の代替的アプローチにおいて、ポリクローナル製造細胞系統はpWCBに由来するサブ−pWCBから増殖されてもよい。pWCBに由来する単一バイアルを解凍し、次いで、新たな一連のアリコート(サブ−pWCB)として凍結され得る細胞の総数を産生するのに十分な多世代間にわたって細胞を増殖させることにより、サブ−pWCBを生成し、ここで、各サブ−pWCBアリコート中の細胞の数はサブ−pWCBを産生するために最初に用いたpWCBバイアル中の数とほぼ同じである。このアプローチの利点は、他の組換え蛋白質産生プロトコルから知られているように、pWCBが直ちにマスターセルバンクとして役立つことである。故に、このアプローチにおいて、pWCBはポリクローナルマスターセルバンク(pMCB)と呼ばれてもよい。サブ−pWCBが消耗した場合、pWCB/pMCBのアリコートに由来する新規のサブ−pWCBを産生することが可能である。故に、このアプローチは、凍結ライブラリーストックに由来する個々の細胞系統を増殖させ及び新規pWCBを混合するために必要とされ得るものよりも有意により少ない作業しか必要としない。さらに、サブ−pWCBが消耗する事象において、バッチ間で本質的に同一の組成を有するポリクローナル蛋白質を産生し得る、ポリクローナル製造細胞系統のさらなるバッチを産生する機会は増大する。個別にトランスフェクトされた宿主細胞に由来するpWCB/pMCB及びサブ−pWCBを産生する原理を図1Bに示す。
【0132】
バルクトランスフェクション又は半バルクトランスフェクションによるpMCB又はpWCBの直接作成と比較して、個々のトランスフェクションにより得られる個々の細胞系統を混合することによるpWCB又はpMCBの産生の利点は、pWBC又はpMCBの作成前に個別にトランスフェクトされた細胞系統のさらなる分析及び選択を行うことができることである。これにより、既に記載した多様性要件を満たすより安定なポリクローナル製造細胞系統を確保してもよい。以下、pWCBはpWCB又はpMCBとして理解されるべきである。
【0133】
本発明のさらなる一の実施態様において、上記したような可変領域コーディング核酸セグメントのライブラリーの個々のメンバーの安定な発現について選択された個々の細胞系統は、pWCBの作成前にそれらの増殖速度及び/又は生産性に関してさらに特徴付けられる。好ましい一の実施態様において、同様の増殖速度又は生産性を有する細胞系統はpWCBの作成のために選択される。さらにより好ましくは、同様の生産性並びに同様の増殖速度を有する細胞系統はpWCBの作成のために選択される。好ましくは、細胞系統は、増殖速度及び/又は生産性の特徴付けの前に無血清懸濁培養に付される。或いは、トランスフェクションに用いられる親細胞はトランスフェクション前に無血清懸濁培養に付される。
【0134】
増殖速度は当該分野にて知られている方法、例えば、本発明の実施例2に記載のものにより評価され得る。哺乳類細胞系統に関する増殖速度は18〜100時間であり得、好ましくは、22〜40時間であり、及び最も好ましくは、24〜32時間であり得る。生産性は1細胞1日あたり0.5pg蛋白質(pg/(細胞*日))を超えるべきであり、好ましくは、それは1、1.5、3、5又は8pg/(細胞*日)を超えるべきである。さらに、細胞系統は、細胞内染色方法により評価される場合に、発現に関して同質の細胞集団を示すべきである。所望により、各個々の細胞系統に関してより均一な細胞集団がクローニング、例えば、以下に記載のFACS選別方法により得られ得る。
【0135】
本発明のさらなる実施態様において、個々の細胞系統は、トランスフェクション及び選択手順の後に、均一な発現レベルを伴う細胞を特定するためにFACSにより分類される。故に、FACS分析に関連して集団の特定領域をゲートすることによる、個々の高発現クローン又は高発現レベルを有する細胞のサブ−プールについての選別可能性は、本発明のさらなる一の実施態様である。FACS分析及び選択によるクローン細胞の作成は、個々の細胞系統がクローンのプールから産生される場合に特に有用である。
【0136】
蛍光標識された抗体は、所望の蛋白質、例えば、抗体又はTcRを高レベルに発現する細胞を選別するために用いられ得、それにより生産性に関して均一な細胞集団を作成する。この技法は、分泌された蛋白質がそれらを分泌する細胞表面上で検出され得、及び表面蛋白質の量が明らかに個々の細胞の発現レベルに対応するという観察に基づく。故に、高産生細胞は、標識された抗体を用いた染色、次いで、FACによる分析に基づき分類された単一細胞であり得る。該技法はBrezinskyにより記載されている(Brezinskyら.J.2003.Immunol Methods 277,141−155)。
【0137】
代替的な選別技法は、細胞から発現された蛋白質に対して特異性を有するリガンドの細胞表面へのカップリングに基づく。例えば、抗−Fc抗体又は抗−イディオタイプ抗体はビオチンを介して細胞集団を分泌する蛋白質の表面へカップリングされ得る。次いで、個々の細胞により分泌された抗体は該細胞の表面上で抗−Fc抗体により捕獲される。この後、高産生細胞は、標識された抗体を用いた染色に基づくFACSにより分類され得る。この技法はEP667896に記載されている。
【0138】
均一な高発現レベルを伴う細胞系統を得るために、高発現レベルを有する単一細胞を記載した技法の1つにより得られたFACS特性に基づいて分析する。次いで、個々の細胞クローンを増殖させ、及び上記したように増殖速度及び生産性に関して潜在的に分析する。或いは、FACS特性により特定されるような最も高い発現レベルを有する細胞のサブ−プールを選別により収集する。所望により、個々の細胞系統に由来する細胞のサブ−プールは同様に増殖速度及び生産性に関して分析され得る。
【0139】
本発明の別の一の実施態様において、ClonePixFLロボット(Genetix,UK)のごときロボットを用いて、高発現レベル及び/又は同様の増殖特性を示すクローンを選択する。これは以下のように行う:トランスフェクション及び選択後に得られたコロニーを半固形培地中で増殖させ、ここで、該培地は、コロニーの直ぐ近くで分泌された蛋白質産物を捕獲することにより高産生コロニーの検出を可能とする。各コロニーからの産生レベルは、細胞により発現された蛋白質の免疫蛍光標識、次いで、発現レベル及び増殖特性のごとき予め定めた選択基準に基づく最良のクローンのイメージソフトウェアセレクションの手段により測定される。さらに、各コロニーの大きさ(細胞増殖速度を反映する)が光検出イメージングを用いるロボットにより評価され得る。次いで、所望の産生及び/又は増殖特性を有するコロニーをロボットにより単離し、及びさらなる増殖のために96−ウェルプレートに移入する。
【0140】
好ましくは、同様の生産性を有する個々の細胞系統はpWCBの作成のために選択される。好ましい一の実施態様において、pWCBを構成する個々の細胞系統は、例えば、単一細胞選別、限界希釈又はロボットピッキングにより得られる、高発現レベルを有するか又は高発現レベルを有する細胞のプールに由来するクローン細胞から生成される。
【0141】
本発明において、トランスフェクション及び選択後に単離された細胞の単一コロニーから得られた個々の細胞系統並びに例えば単一細胞FACS選別により得られたクローンから得られた個々の細胞系統の両方がクローン細胞系統と呼ばれる。好ましい一の実施態様において、かかるクローン細胞系統はpWCBを産生するために用いられる。
【0142】
本発明のさらなる実施態様において、個々の細胞系統はpWCBの作成時に異なる比で混合される。個々の細胞系統は、個々の細胞系統及び/又は前記細胞系統により発現された個々の蛋白質メンバーの特性、例えば、特異的生産性又は結合親和性に基づいて予め定めた基準に従って混合され得る。例えば、特に重大な抗原又はエピトープに結合する特定の抗体を発現する個々の細胞系統は、pWCBの細胞系統の残りのメンバーを超過して、例えば、2倍、3倍、5倍又は10倍より多い量で供給され得る。例えば、細胞系統の1つのメンバーは、他の全てのメンバーに対して2:1の比で加えられてもよく、例えば、メンバー1は4×106細胞で、及び細胞系統の残りのメンバーの各々は2×106細胞で加えられてもよい。
【0143】
本発明の一の好ましい実施態様において、抗−RhD rpAbの産生のためのpWCBが生成される。さらにより好ましくは、RhDカテゴリーVI抗原に対する反応性を有する抗体を産生する細胞系統がpWCBに含まれる細胞の全量の少なくとも5%、8%、10%、12%、15%、20%又は25%を構成するように、かかるpWCBが生成される。
【0144】
pWCB内の個々の細胞系統のこの分化比(differentiated ratio)によるアプローチは、特に、個々の細胞系統がこれらの特性における類似性について選択されていないならば、個々の細胞系統間の増殖速度及び生産性における差異を回避するために適用されてもよい。故に、より速い増殖速度により特徴付けられるポリクローナルワーキングセルバンクの他のメンバーと比較して、個々の細胞系統の1つ以上がより遅い増殖速度、すなわち、より長い倍加時間を有するが、このより遅い増殖速度が特定の高生産性に関連していないならば、この1又は複数の特定のメンバーはその遅い増殖を補填するために増大した量でpWCBに加えられてもよい。例えば、pWCBを構成する残りの細胞系統が22〜30時間の増殖速度を有するならば、50時間の増殖速度を有する細胞系統は2:1の比で加えられてもよい。同様に、短い倍加時間を有する細胞系統の比を減じて、製造の間にこれらが優勢にならないことを保証してもよい。さらに、pWCB内の個々の細胞系統の比は、pWCBから産生されたポリクローナル製造細胞系統から生成されたポリクローナル蛋白質産物の分析の際に調整されてもよい。かかる調整は、例えば、IEX特性又は等価な特徴付け手段に基づいて行われてもよい。かかる分析が1つ以上の特定の蛋白質メンバーが残りのメンバーと比較して増大した量で産生されることを示すならば、これらの特定の蛋白質メンバーを産生する細胞系統の比が軽減された新規pWCBが生成されてもよい。及び逆に、特定のメンバーが低量で生成されるならば、このメンバーを産生する細胞系統を増大した比で有するpWCBが生成されてもよい。
【0145】
培養物上清からの抗−RhD rpAbの精製
培養物上清からの抗−RhD rpAbの単離は、蛋白質の物理化学特性における差異、例えば、分子量、正味電荷、疎水性又は特異的リガンド若しくは蛋白質に対する親和性における差異を利用する様々なクロマトグラフィー技法を用いて可能である。故に、蛋白質は、ゲル濾過クロマトグラフィーを用いる分子量に従って或いはイオン交換(陽イオン/陰イオン)クロマトグラフィー又はクロマト分画を用いる正味電荷にに従って分離されてもよい。
【0146】
イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用及びゲル濾過のごとき後続する精製段階と併せたアフィニティークロマトグラフィーは、異なる供給源、例えば、腹水、細胞培養液上清及び血清に由来するIgG(ポリクローナル及びモノクローナル)の精製のために頻繁に用いられている。抗−RhD抗体及びクロマトグラフィーマトリックスにカップリングさせた特異的リガンド間の可逆的相互作用に基づいて分離されるアフィニティー精製は簡便及び迅速な方法であり、該方法は、高選択性、通常は高い処理能力とより少容量とするための濃縮を提供する。抗−RhD抗体に結合し得るペプチド形態の特定リガンドは、EP 1 106 625に記載の方法に従ってペプチドファージディスプレイを用いて得られてもよい。2つの細菌細胞表面蛋白質である蛋白質A及び蛋白質GはFc領域に高い親和性を有し、及び固定化形態で、ポリクローナルIgG及び様々な種に由来するそのサブクラスの精製並びに免疫複合体の吸収及び精製を含む多数の日常的適用のために用いられている。
【0147】
アフィニティークロマトグラフィーの後、下流クロマトグラフィー段階、例えば、イオン交換及び/又は疎水性相互作用クロマトグラフィーを実施して、宿主細胞蛋白質、漏出した蛋白質A及びDNAを除去することができる。蛋白質Aアフィニティー及び陽イオン交換クロマトグラフィーと共に、5より大きなpH値が抗−RhD rpAbの沈殿を惹起し得ることが観察される。故に、バッファーは適切な緩衝化剤、例えば、トリス又は酢酸を用いて慎重に調節される必要がある。
【0148】
最終精製段階としてのゲル濾過を用いて、二量体及び他の凝集体のごとき汚染分子を除去し、次いで、貯蔵バッファー中に試料を加えることができる。供給源及び発現条件に応じて、必要とされる抗体純度レベルを成し遂げるためのさらなる精製段階を含む必要があってもよい。故に、治療用途のための抗体を精製するために、疎水性相互作用クロマトグラフィー又はイオン交換クロマトグラフィーが蛋白質A及びゲル濾過クロマトグラフィーと併せて頻繁に用いられる。
【0149】
抗体の他のクラスを精製するために、蛋白質A及びGがIgA及びIgMに結合しないために、代替的アフィニティークロマトグラフィー培地が使用される必要がある。免疫−アフィニティー精製(固形相にカップリングされた抗−IgA又は抗−IgMモノクローナル抗体)が用いられ得、或いはイオン交換及び疎水性相互作用を含む多段階精製ストラテジーが用いられ得る。
【0150】
抗−RhD rpAbの構造的特徴付け
ポリクローナル抗体の構造的特徴付けは、混合物の複雑性(クローン多様性、不均一性及びグリコシル化)に起因して高い分解能を必要とする。ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー又は電気泳動のごとき伝統的アプローチは、抗−RhD rpAb内の個々の抗体間を区別するのに十分な分解能を有していないかもしれない。複雑な蛋白質混合物のプロファイリングのために、2次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2D−PAGE)、次いで、質量分析(MS)又は液体クロマトグラフィー(LC)−MS(例えば、プロテオミクス)が用いられている。蛋白質の電荷及び質量に基づく分離を組み合わせる2D−PAGEは、血清試料中のポリクローナル、オリゴクローナル及びモノクローナル免疫グロブリン間の区別のために有用であることが証明された。しかし、この方法には幾つかの制限がある。クロマトグラフィー技法、特に、エレクトロスプレーイオン化MSにカップリングされたキャピラリー及びLCは、複雑なペプチド混合物の分析のためにますます適用されている。LC−MSはモノクローナル抗体の特徴付けのために用いられており、及び最近はポリクローナル抗体軽鎖のプロファイリングにも用いられている。非常に複雑な試料の分析はより高いクロマトグラフィー系の解像力を必要とし、これは2次元(又はそれ以上)での分離により達成され得る。かかるアプローチは、第一の次元ではイオン交換に基づき、及び第二の次元では所望によりMSにカップリングされた逆相クロマトグラフィー(又は疎水性相互作用)に基づく。
【0151】
抗−RhD rpAbの機能的特徴付け
抗−RhD rpAb抗体は、例えば、抗−D免疫グロブリン産物又は抗−RhD mAbを用いた比較可能性研究により機能的に特徴付けられ得る。かかる研究はインビトロ及びインビボにて実施され得る。
【0152】
抗−RhD rpAbのインビトロ機能的特徴付け方法は、例えば、貪食性アッセイ(51Crに基づく又はFACSに基づく)、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)及びロゼット形成アッセイであり得る。簡潔に記載された該アッセイを以下のように実施する:
【0153】
ADCCアッセイ(51Crに基づく):
ヒトPBMCをエフェクター細胞として用い、並びにRhD陰性及び陽性RBC(ABO式のO)を標的として用いる。初め、RBC(RhD(+)及びRhD(−))を51Cr標識し、洗浄し、次いで、様々な希釈の抗−RhD抗体(例えば、抗−RhD rpAb、抗−D又は抗−RhD mAb)を用いて感作した。エフェクター細胞(PMBC)を感作したRBCに加え(20:1の比)、次いで、インキュベーションを一晩行う。細胞をスパンカラムに付し(spun down)、次いで、ウェルの上清をLumaplate(PerkinElmer)に移す。自然放出に関する対照(51Crのみを有するRBC)及び全放出(トリトン−X−100ないし51Cr−標識RBCを加えた)に関する対照が含まれる。Lumaplateを乾燥し、次いで、Topcounter(PerkinElmer)でカウントする。
【0154】
貪食性アッセイ(51Crに基づく):
貪食性はADCCアッセイと組み合わせて測定され得る。ADCCアッセイにおいて上清を回収した後、残りの上清を除去し、次いで、低張緩衝液を加えることにより赤血球細胞を溶解する。細胞を洗浄し、次いで、上清を除去する。PBS+1%トリトン−X−100を全ウェルに加え、次いで、一定量をLumaplateに移し、乾燥し、次いで、前記のようにカウントする。
【0155】
貪食性アッセイ(FACSに基づく):
このアッセイは食細胞性細胞の粘着性に基づく。ヒト白血病性単芽球細胞系統U937がこのアッセイに用いられ得る。U937細胞は10nMのPMAを用いて分化させる。2日後に、培地の60%を除去し、次いで、PMAなしの培地と交換する。赤血球細胞(RhD(+)及びRhD(−))の細胞膜を製造元プロトコル(Sigma)に従ってPKH26(PE)で染色する。該RBCの細胞膜を様々な希釈の抗−RhD抗体で感作し、次いで、過剰な抗体を洗浄により除去する。3日目に、非付着細胞U937細胞を洗浄により除去し、次いで、感作したRBC(RhD(+)及びRhD(−))をウェルに加える。インキュベーター中でプレートを一晩インキュベーションする。貪食されなかったRBCを幾つかの段階により洗浄して除去する。低張緩衝液を加えることにより、結合したが貪食されなかったRBCを溶解し、次いで、さらに洗浄する。トリプシンとのインキュベーションによりU937細胞をウェルから剥離する。細胞をFACSにて分析する。
【0156】
ロゼット形成アッセイ
ロゼット形成アッセイは単なるFc受容体結合アッセイである。感作した赤血球細胞を上記のように調製した分化型U937細胞と共にインキュベーションする。RBC(RhD(−)及びRhD(+))を様々な希釈の抗−RhD抗体で感作し、次いで、U937細胞と混合する前に、過剰な抗体を洗浄により除去する。インキュベーションを1時間行い、次いで、非結合RBCを洗浄して除去する。表面に2つ以上のRBCが付着した細胞のパーセンテージを計数する。
【0157】
抗−RhD抗体のインビボ機能的特徴付けはMiescher(Miescher,S.,ら.2004,Blood 103,4028−4035)により記載されており、RhD(−)個人へのRhD(+)細胞の注入、次いで、抗−RhD抗体の投与を含む。ドナーのRBCクリアランス及び抗−RhD抗体感作を分析した。
【0158】
治療用組成物
本発明の一の実施態様において、活性成分として抗−RhD rpAb又は抗−RhD組換えポリクローナルFab又は別の抗−RhD組換えポリクローナルフラグメントを含有する医薬組成物が、新生児溶血性疾患の予防、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の処置、又はRhD(−)の個人にRhD(+)の血液を誤って輸血した後のRhD抗原に対する感作の予防ために意図される。
【0159】
医薬組成物はさらに医薬上許容される賦形剤を含有する。
【0160】
抗−RhD rpAb又はそのポリクローナルフラグメントは医薬上許容される希釈剤、担体又は賦形剤中の単位投与形にて投与されてもよい。慣用的な薬務を利用して、母親又は女性患者に投与するのに適する処方又は組成物を提供してもよい。好ましい一の実施態様において、投与は予防的である。任意の適切な投与経路が用いられてもよく、例えば、投与は、非経口、静脈内、動脈内、皮下、筋内、腹腔内、経鼻、エアロゾル、坐剤又は経口投与であってもよい。例えば、治療用処方は液体溶液又は懸濁液の形態であってもよく;経口投与のためには、処方は錠剤又はカプセル剤チューインガム又はパスタの形態であってもよく、及び経鼻処方のためには、散剤、点鼻薬又はエアロゾルの形態であってもよい。
【0161】
本発明の医薬組成物は、それ自体が知られている様式にて、例えば、慣用的な溶解、凍結乾燥、混合、粒状又は調合過程により処方され得る。医薬組成物は慣用的な薬務(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(20th ed.),ed.A.R.Gennaro,2000,Lippincott Williams&Wilkins,Philadelphia,PA and Encyclopedia of Pharmaceutical Technology,eds.J.Swarbrick及びJ.C.Boylan,1988−1999,Marcel Dekker,New York,NY)に従って調製されてもよい。
【0162】
好ましくは、活性成分の溶液及び懸濁液、並びに特に等張性水性溶液又は懸濁液が用いられ、例えば、活性成分単独又はマンニトールのごとき担体を共に含む凍結乾燥された組成物の場合には、かかる溶液又は懸濁液を使用前に生成することが可能である。医薬組成物は滅菌されてもよく、及び/又は賦形剤、例えば、防腐剤、安定化剤、湿潤剤及び/又は乳化剤、可溶化剤、浸透圧調節用の塩及び/又はバッファーを含んでもよく、及びそれ自体知られている様式、例えば、慣用的な溶解又は凍結乾燥過程により調製される。前記溶液又は懸濁液は、粘度増加物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルピロリドン又はゼラチンを含んでもよい。
【0163】
注入用組成物は、滅菌条件下で慣例的な様式にて調製される;同じことは、アンプル又はバイアル内への組成物の導入及び容器の密封にも当てはまる。
【0164】
経口投与用医薬組成物は、活性成分を固形担体と組み合わせ、所望により、得られた混合物を造粒し、次いで、所望又は必要とする場合には、適切な賦形剤を加えた後に混合物を錠剤、ピル又はカプセル剤に加工し、所望により、それをセラック、糖又はその両方でコーティングすることにより得ることができる。規定された量で活性成分を拡散又は放出できるようにプラスチック担体内にそれらを含ませることも可能である。
【0165】
医薬組成物は、約1%〜約95%、好ましくは、約20%〜約90%の活性成分を含有する。本発明に記載の医薬組成物は、例えば、単位投与形態、例えば、アンプル、バイアル、坐剤、錠剤、ピル又はカプセル剤の形態であってもよい。該処方は、疾患又は状態のための療法を提供するために治療的又は予防的有効量(例えば、病状を予防、排除又は軽減する量)でヒト個人に投与され得る。投与されるべき治療剤の好ましい用量は、疾患の型及び程度、特定患者の全体的な健康状態、化合物賦形剤の処方及びその投与経路のごとき変数に依存し得る。
【0166】
本発明に記載の組成物の治療用途
本発明に記載の医薬組成物は、哺乳類における疾患の処置、改善又は予防のために用いられてもよい。本医薬組成物を用いて処置又は予防され得る状態は、新生児溶血性疾患の予防、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の処置、又はRhD(−)の個人へRhD(+)の血液を誤って輸血した後のRhD抗原に対する感作の予防を含む。
【0167】
本発明の一の態様は、有効量の抗−RhD rpAb又はフラグメントが投与される、動物における疾患の処置、改善又は予防方法である。
【0168】
本発明のさらなる一の実施態様は、新生児溶血性疾患の予防又は特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の処置用の組成物を調製するための、抗−RhD組換えポリクローナル抗体又はポリクローナル抗体フラグメントの使用である。
【0169】
診断用途及び環境検出用途
本発明の別の実施態様は診断用キットに関する。本発明に記載のキットは、本発明に従って調製された抗−RhD rpAbを含み、該蛋白質は、検出可能標識で標識されていてもよく、又は非標識検出用に標識されていなくてもよい。該キットは、RhD(+)の個人又は特定のRhDカテゴリーを有する個人を特定するために用いられてもよい。後者の特定は、その特定のRhDカテゴリーのみと反応する抗−RhD rpAb組成物を得ることにより成し遂げられ得る。
【実施例】
【0170】
以下の実施例は、高産生細胞系統内での抗−RhD rpAbの発現及び産生方法について記載しており、ここで、VH及びVL含有核酸セグメント又は1若しくは複数のベクターは予め特徴付けられた染色体の「ホットスポット」部位内に部位特異的組込みにより挿入される。
【0171】
実施例において、CHO細胞を宿主細胞として利用した。その利点は、適切な成長培地の利用可能性、培養液にて効率的に高密度に増殖するそれらの能力、及び生物活性形態で抗体のごとき哺乳類蛋白質を発現するそれらの能力を含む。
【0172】
一般的に、本発明に記載のイー・コリの形質転換及び哺乳類細胞のトランスフェクションは慣用的な方法に従って実施され得る。
【0173】
以下の実施例は本発明を説明するが、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【0174】
実施例1
抗−RhD組換えポリクローナル抗体の産生
ドナー
ドナーはAalborg Sygehus Nordに登録した。全8人のRhD(−)女性をRhD(+)個人に由来するRhD(+)赤血球で免疫した。ブースト数及び免疫化のためのRhD(+)赤血球の起源に関してドナーは様々な免疫歴を有した。異なるドナーの免疫歴を表1に示す。
表1
【表1】
【0175】
最後のブーストから5〜7日後に白血球フェレーシスにより単核細胞を回収した。細胞をペレット化し、直ちに、市販のRNA調製キット(NucleoSpin RNA L,Machery−Nagel,カタログ番号 740 962.20)からの細胞溶解液に移した。細胞の溶解後、さらなる処理の前に懸濁液を凍結した。
【0176】
抗−RhD Fabディスプレイライブラリーの作製
ライブラリー作製及びパニング手段を通じて各ドナーから得た材料を別々にしておいた。細胞溶解物を解凍し、次いで、キット使用説明書(NucleoSpin RNA L)に従ってRNAを調製した。RNAの完全性をアガロースゲル電気泳動により分析し、これにより、18S/28SリボソームRNAが分解していないことを確認した。
【0177】
RNAを、製造元の使用説明書に従ってThermoScript(Invitrogen)を用いる反応において約10μgの全RNAを用いるオリゴ(dT)プライマー反応におけるcDNA合成に付した。cDNAを、以下のプライマーを用いるPCR反応における鋳型として用いた:
【0178】
VHフォワードプライマー(XhoI部位を太字で示す):
【表2】
【0179】
VHリバースプライマー(AscI部位を太字で示す):
【表3】
【0180】
Cκフォワードプライマー(NotI部位を太字で示す):
【表4】
【0181】
Vκリバースプライマー(NheI部位を太字で示す):
【表5】
【0182】
Cλフォワードプライマー(NotI部位を太字で示す):
【表6】
【0183】
Vλリバースプライマー(NheIを太字で示す):
【表7】
【0184】
個々のプライマー対を用いてPCRを行い、合計36のVH反応、6のカッパ反応及び22のラムダ反応を行った。全VH、カッパ及びラムダPCR産物を別々にプールし、次いで、NucleoSpinカラム(Machery−Nagel,カタログ番号740 590.250)を用いた精製の後、クローニング前に該産物を消化し(VH:AscI/XhoI,カッパ及びラムダ:NheI/NotI)、次いで、目的のバンドのゲル精製段階(PerfectPrep Gel Cleanup kit,Eppendorf,カタログ番号0032 007.759)を続けた。軽鎖(カッパ及びラムダを別々に)をライゲーションによりNheI/NotI処理したEm351ファージディスプレイベクター(図2)に挿入し、次いで、イー・コリ XL1 Blue(Stratagene)にて増幅した。軽鎖ライブラリーを構成するプラスミドDNAを、カルベニシリン寒天プレート上で一晩選択されたイー・コリ細胞から単離した(各ドナーについて2ライブラリー,各々カッパ及びラムダ)。このライブラリーDNAをAscI/XhoIでの消化に付し、次いで、ゲル精製した後、VHPCR産物(同じ酵素での消化に付され、及びゲル精製された)を、各ドナーに由来する2つの軽鎖ライブラリーにライゲートし、寒天プレート上でのカルベニシリン選択を用いてイー・コリ TG1細胞(Stratagene)にて増幅した。一晩増殖させた後、細菌をプレートからこすり取り、次いで、適切なライブラリー貯蔵のためのグリセロールストックを調製した。コンビナトリアル可変重鎖−軽鎖(VH:LC)ライブラリーを含むプラスミドDNA調製も行い、将来のライブラリーを確保した。これで、TG1細胞に含まれるコンビナトリアルライブラリー(各ドナーから2つ)はファージディスプレイ及びパニングのための準備が整った。コンビナトリアルライブラリー(全16)のサイズは106以上だった。
【0185】
RhD抗原結合Fabフラグメントを提示するファージの濃縮
その表面にFabを提示するファージを以下のとおり産生した:50mLの2×YT/1%のグルコース/100μg/mLのカルベニシリンに、コンビナトリアルVH:VLライブラリーを含むTG1細胞を接種し、約0.08のOD600を得た。培養物を1.5時間振盪し、次いで、ヘルパーファージを加えた(VSCM13)。該培養物を、振盪せずに37℃で1/2時間、及び振盪しながら1/2時間インキュベーションした。細菌をペレット化し(3200×g,10分間,4℃)、次いで、50mLの2×YT/100μg/mLのカルベニシリン/70μg/mLのカナマイシン中に再懸濁し、次いで、培養物を30℃で一晩振盪した。1/5容量の20%のPEG/1.5MのNaClを加え、氷上で30分間インキュベーションし、次いで、8000×g、4℃で30分間遠心分離することにより、ファージを培養物上清から沈殿させた。沈殿したファージをPBS中に再懸濁し、次いで、パニングに直接用いた。
【0186】
RhD抗原結合Fabフラグメントのためのパニングを2段階の方法で行った。108のRhD(−)赤血球細胞(RBC)をPBS中で3回洗浄し(2000×g,45秒間の遠心分離)、次いで、150μlのパニングバッファー(0.85×PBS中、2%のスキムミルク)中に再懸濁した。50μlの新たに調製したファージを(パニングバッファー中に再懸濁した)RhD(−)細胞に加え、ネガティブセレクション段階を行い、次いで、回転ローテーター上、4℃で1時間インキュベーションした。1時間インキュベーションした後、遠心分離(2000×g,45秒間)により細胞をペレット化し、次いで、ファージを含む上清を(PBSで3回洗浄した)2×107のRhD(+)RBCと共にインキュベーションした。ファージ:RhD(+)RBCミックスを回転ローテーター上、4℃で1時間インキュベーションした。1mLのパニングバッファーで5回、及びPBSで5回洗浄することにより、非結合ファージを除去した。(細胞を溶解する)200μlのH2Oを加えることにより、結合ファージ溶出した。100μlの溶出液を指数関数的に増殖するTG1細胞に加え、残りを−80℃で貯蔵した。溶出したファージを感染させたTG1細胞をCarb/glu寒天ディッシュに置き、次いで、37℃で一晩インキュベーションした。翌日、コロニーをプレートからこすり取り、次いで、2回目のパニング用のファージ調製のために、10mLの培養培地に接種した。1回目について記載したように2回目のパニングを行った。
【0187】
RhDカテゴリーVI抗原結合Fabフラグメントを提示するファージの濃縮
別の一連のパニングにおいて、選択を行い、RhDカテゴリーVI抗原に対して反応性を有するクローンを回収した。記載したようにネガティブセレクションをRhD(−)血液にて行い、及びポジティブセレクションをRhDVI陽性赤血球にて行った。他の手順は上記の通りだった。
【0188】
抗−RhD結合Fabについてのスクリーニング
各回のパニングの後、凝集アッセイにおいて赤血球細胞に対するその結合特性を分析するために、単一コロニーを採取した。すなわち、単一コロニーを2×YT/100μg/mLカルベニシリン/1%グルコースに接種し、次いで、37℃で一晩振盪した。翌日、900μl2×YT/100μg/mLカルベニシリン/0.1%グルコースを用いてDeepWellプレートを接種し、次いで、10μlを一晩培養した。そのプレートを37℃で2時間振盪し、その後、1ウェルあたり300μlの2×YT/100μg/mLカルベニシリン/0.25mMのIPTGを加えることでFab誘導を行った。そのプレートを30℃で一晩振盪した。翌日、遠心分離(3200×g,4℃,10分間)により細菌をペレット化し、次いで、100μlの0.8MのNaCl、0.2×PBS、8mMのEDTA中で再懸濁し、次いで、氷上で15分間インキュベーションし、Fabフラグメントのペリプラズム抽出(periplasmic extraction)を行った。そのプレートを−20℃とし、次いで、最終的に、懸濁液を解凍し、次いで、3200×g、4℃で10分間、遠心分離を行った。ELISAアッセイではFab含有量を分析するために、及び凝集アッセイでは個々のFabフラグメントの結合能を評価するために、ペリプラズム抽出物を用いた。
【0189】
凝集アッセイを以下の通り行った:RhD(−)及びRhD(+)RBCを1:1の比で混合し、PBS中で3回洗浄した。最後の洗浄の後、1%の細胞密度で細胞混合物をPBS中1%BSAに再懸濁し、50μlを96−プレートの各ウェルに加えた。ペリプラズム抽出物をウェルに加えた。正対照としてRhesogamma P免疫グロブリン(Aventis)を製造元の使用説明書に従って用いた。そのプレートを穏やかに振盪しながら室温で1時間インキュベーションした。細胞をPBSで3回洗浄し、その後、2次抗体を1:100希釈で加えた(ヤギ抗−ヒトFab/FITCコンジュゲート,Sigma F5512)。凝集のために、そのプレートを振盪せずに室温で1時間放置した。凝集アッセイにおけるFabフラグメント陽性を目視検査により決定し、次いで、写真撮影により記録した。Fabフラグメントの結合活性の量子化を凝集試料のFACS分析により行った。
【0190】
RhDVI+赤血球に対する反応性を有するクローンについてスクリーニングを行う場合、その他の点では上記のものと同一である方法において、かかる細胞をRhD(−)細胞と併用した。
【0191】
多様な抗−RhDFabコーディング配列の選択
全部で1700個のRhD抗原結合クローンを同定した。全ての陽性クローンをDNAシークエンスに付した。これらの56個のクローンをそれらの特有の一連の重鎖CDR配列に基づいて選択した。同じ重鎖及び異なる軽鎖を用いた複数のクローンについては、FACSアッセイにおいて最も高い結合活性を示したクローンを選択した。これにより、高いRhD抗原特異性について広範な多様性を示す、可変重鎖(VH)及び軽鎖(LC)コーディング配列の対から構成されるサブ−ライブラリーを全ての陽性クローンから選択した。
【0192】
これら56個のクローンの結合活性を凝集アッセイにおいて再度確認し、偽陽性クローンが選択されていないことを確認した。
【0193】
例えばファミリー間クロスプライミングに起因する突然変異に関して、選択されたクローンをさらに分析した。これは、かかる突然変異が、新規エピトープを生じる可能性のある発現された抗体の全体的な構造変化に至り、及びそれにより最終産物の免疫原性の増大をもたらし得るからである。ファージミドベクターから哺乳類発現ベクターへのVH:LC移入に関して以下のセクションに記載するように、かかる突然変異を有するクローンを修復した。
【0194】
VH及び軽鎖(LC)についての補正した核酸配列のアライメントを図3〜6にそれぞれ示す。VH及びVLポリペプチド鎖のさらなるアライメントを図5及び6にそれぞれ示す。ポリペプチドアライメントを行い、次いで、Chothia(Chothiaら.1992 J.Mol.Biol.227,776−798;Tomlinsonら.1995EMBO J.14,4628−4638及びWilliamsら.1996 J.Mol.Biol.,264,220−232)により定義された構造基準に従って番号付けした。図はさらに可変領域内の3つのCDR領域の位置を示す。アミノ酸配列中のCDR領域の位置を表2に要約する。ポリペプチドアライメント中のCDR3領域の番号(図5及び6)はChothiaに従っていない(図中アスタリスクで印を付けた移行部分)。アミノ酸位置に関してCDR3領域の同定を可能とするために、アスタリスクの後にも続いて番号を割り当てた。各個々のクローンについてのCDR3領域配列はこの番号に基づく図に由来し得る。
【0195】
表2
【表8】
【0196】
Fabとしてスクリーンされ、及びRhD抗原に対する結合能について選択された可変重鎖及び完全な軽鎖の対は、を同一のクローン番号により同定できる。全56個のVH:LC対のクローン番号、核酸配列番号及びアミノ酸配列番号を表3に記載する。
表3
【表9】
【表10】
【0197】
選択されたVH及び軽鎖コーディング配列の哺乳類発現ベクターへの移入
例えば、ファミリー間クロスプライミングに起因する突然変異のために、選択された多数の配列を修復する必要があった。これは、ファージディスプレイから哺乳類発現への発現系の交換に関連して行われた。この理由のために、各個々のクローンについて別々に移入を行った。
【0198】
移入及び修復を以下の通り行った:初めに、高い忠実度のポリメラーゼ、Phusion(Finnzymes)及び適切な補正用(correcting)プライマー対を用いるPCRにより、Em351ベクター中に位置するVHコーディング配列を再度増幅した。VHPCRフラグメントをAscI及びXhoIで消化し、次いで、ゲル精製に付した。Neo発現ベクター(図7)を対応する酵素で消化し、次いで、ゲル精製し、それによりリーダー配列及び重鎖定常領域の間に位置する核酸配列を除去した。補正されたVHフラグメント及びNeo発現ベクターをライゲートし、次いで、イー・コリ Top10細胞にて増幅させた。VH含有Neo発現ベクターのプラスミドDNAをカルベニシリンで一晩選択したイー・コリ細胞から単離した。
【0199】
VHコーディング配列の移入の後、高い忠実度のポリメラーゼ、Phusion(Finnzymes)及び適切な補正用プライマーセットを用いるPCRにより、対応するLC配列を再度増幅した。LCPCRフラグメントをNheI及びNotIで消化し、ゲル精製に付した。VH含有Neo発現ベクターを対応する酵素で消化し、次いで、ゲル精製し、それによりカッパリーダー配列及びBGHポリAシグナル配列の間に位置する核酸配列を除去した。補正されたLCフラグメント及びVH含有Neo発現ベクターをライゲートし、次いで、イー・コリTop10細胞にて増幅させた。グリセロールストックを各個々のクローン用に調製し、及び哺乳類細胞のトランスフェクションに適する質の高いプラスミド調製物も細菌培養物から調製した。
【0200】
各クローンについて別々に移入を行うことにより、ファージディスプレイにより最初に選択されたVH:LC対を哺乳類発現ベクター中に再生した。修復が必要でない場合は、適切な制限酵素で消化する前にPCRを行うことなく核酸セグメントを移入した。
【0201】
記載した移入により作製された哺乳類発現ベクターは、全長抗−RhD組換えポリクローナル抗体の発現に適する。この段階でベクターは分離されているが、なお、抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーと見なされる。
【0202】
哺乳類細胞系統のトランスフェクション及び選択
Flp−In CHO細胞系統(Invitrogen)を組換えポリクローナル製造細胞系統の構築のための開始細胞系統として用いた。しかし、より同質の細胞系統を得るために、親Flp−In CHO細胞系統をサブ−クローニングした。すなわち、親細胞系統を限界希釈によりサブ−クローニングし、次いで、幾つかのクローンを選択し、増殖させた。増殖挙動に基づき、1つのクローン、CHO−Flp−In(019)を産生細胞系統として選択した。
【0203】
以下の通り全56個のプラスミド調製物をCHO−Flp−In(019)細胞系統に個々にトランスフェクションした:CHO−Flp−In(019)細胞を付着細胞として10%のウシ胎児血清(FCS)含有のF12−HAMにて培養した。Fugene6(Roche)を用いて、1つのクローンを示すクローンプラスミドで2.5×106の細胞をトランスフェクションした。トランスフェクションの24時間後、細胞をトリプシン処理し、次いで、3×T175フラスコに移した。トランスフェクションの48時間後、選択圧、この場合では450μg/mlのネオマイシンを加えた。約2週間後にクローンが出現した。クローンを計数し、次いで、細胞をトリプシン処理し、以下、56個の特異的抗−Rh−D抗体の1つを発現するクローンのプールとして培養した。
【0204】
無血清懸濁培養に対する適応
個々の付着抗−Rh−D抗体CHO−Flp−In(019)細胞培養物をトリプシン処理し、遠心分離し、次いで、適切な無血清培地(Excell302,JRH Biosciences)中、8×105細胞/mlにて、別の振盪フラスコに移した。
【0205】
増殖及び細胞形態分析(cell morphology)を数週間にわたって続けた。細胞が良好かつ安定な増殖挙動を示し、及び32時間未満の倍加時間を有する場合、10×106細胞/チューブを有する各培養物の50アリコートを凍結した(56×50アリコート)。
【0206】
細胞系統の特徴付け
抗体産生及び増殖に関して全ての個々の細胞系統を特徴付けした。以下のアッセイによりこれを行った:
【0207】
産生:
経時的に、カッパ又はラムダ特異的ELISAの後、個々の培養物中の組換え抗体の産生を行った。ELISAプレートを炭酸バッファー、pH9.6中のヤギ−抗−ヒトカッパ(Caltag)又はヤギ−抗−ヒトラムダ(Caltag)抗体でコーティングした。プレートを洗浄バッファー(1×PBS及び0.05%のTween20)で6回洗浄し、次いで、洗浄バッファー及び2%ミルクで1時間ブロックした。試料をウェルに加え、次いで、プレートを1時間インキュベーションした。プレートを6回洗浄し、次いで、2次抗体(ヤギ−抗−ヒトIgG(H+L)HRPO,Caltag)を1時間にわたって加え、次いで、6回洗浄した。TMB基質を用いてELISAを展開し、次いで、H2SO4を加えることにより反応を終了させた。450nmでプレートを読み取った。
【0208】
さらに、蛍光標識した抗体を用いる細胞内FACS染色を用いて、細胞培養系における組換え抗体の産生を測定した。5×105の細胞を冷FACS PBS(2%FCS含有1×PBS)中で洗浄し、次いで、遠心分離した。細胞をCellFix(BD−Biosciences)にて20分間固定し、その後、サポニンバッファー(1×PBS及び0.2%サポニン)中で洗浄した。その懸濁液を遠心分離し、次いで、蛍光標識した抗体(ヤギF(ab’)2フラグメント,抗−ヒトIgG(H+L)−PE,Beckman Coulter)を20分間氷上で加えた。細胞をサポニンバッファー中で2回洗浄し、次いで、FACSバッファー中に再懸濁し、次いで、FACSにより分析した。細胞内染色を用いて一般的な発現レベルを測定し、及び組換え抗体の発現に関して細胞集団の均質性も測定した。
【0209】
増殖:
細胞懸濁液のアリコートを週に3回取り出し、次いで、細胞数、細胞サイズ、クランピングの程度及び死細胞のパーセンテージをCASY(登録商標)(Schaerfe System GmbHからのCell Counter+Analyzer System)分析により測定した。細胞培養物についての倍加時間をCASY(登録商標)測定に由来する細胞数により算出した。
【0210】
抗−RhD組換えポリクローナル抗体産生のための製造細胞系統の確立
別個の組換え抗−Rh−D抗体(RhD157.119D11,RhD158.119B06,RhD159.119B09,RhD161.119E09,RhD163.119A02,RhD190.119F05,RhD191.119E08,RhD192.119G06,RhD197.127A08及びRhD204.128A03)を各々発現する10個の細胞系統を選択して、組換えポリクローナル製造細胞系統を構成した。Rhd197及びRhD204はラムダクローンであったが、他の全てはカッパクローンだった。
【0211】
個々の抗−Rh抗体を発現する細胞培養物を振盪フラスコ中の無血清懸濁培養に十分に適応させた後、それらを等しい細胞数で混合し、それによりポリクローナルCHO−Flp−In(019)細胞系統を産生した。混合された細胞培養物を遠心分離し、次いで、10×106細胞/チューブのアリコートとして凍結した。
【0212】
2つのチューブ(3948FCW065及び3949FCW065)を解凍し、次いでネオマイシン含有の100mlのExCell302培地を含む1000mlの振盪フラスコ中で個々に11週間培養した。
【0213】
上清を回収し、次いで、抗−RhD rpAbの精製前に濾過した。
【0214】
クローン多様性
クローン多様性を蛋白質レベル及びmRNAレベルの両方についてアッセイした。抗体組成物を分析するために用いる上清試料を培養の9週間後に取り出し、一方で、mRNA組成物を分析するために用いる細胞試料は培養の11週間後に取り出した。
【0215】
抗体組成物:
ポリクローナルCHO−Flp−In(019)細胞系統から発現された抗−RhD rpAbはIgG1アイソタイプ抗体である。蛋白質Aが固定されたカラムを用いて抗−RhD rpAbを両アリコート(3948及び3949)から精製した。個々の抗体はpH7.4で固定化蛋白質Aと相互作用し、一方で、夾雑蛋白質をカラムから洗浄した。次いで、結合抗体を低いpH値(pH2.7)でカラムから溶離した。280nmでの吸光度測定から決定される、抗体を含むフラクションをプールし、次いで、pH5で5mMの酢酸ナトリウムに対して透析した。
【0216】
培養の9週間後にアリコート3948及び3949(FCW065)から得た抗−RhD rpAb組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて分析した。25mMの酢酸ナトリウム、150mMの塩化ナトリウム、pH5.0中の蛋白質A精製抗−RhD rpAbを、室温、60ml/時間の流速でPolyCatAカラム(4.6×100mm)にアプライした。次いで、25mMの酢酸ナトリウム中の150〜350mMの塩化ナトリウムからの直線勾配を用いて、pH5.0、60ml/時間の流速で抗体成分を溶離した。抗体成分を280nmにて分光測定的に検出した。次いで、クロマトグラム(図8)を積分し、次いで、個々のピークA−Jの面積を用いて、抗体成分を定量化した(表4)。ピークの全面積を100%に設定した。2つのアリコートからのクロマトグラムは同一のピーク分布を示し、及び各ピークにおける成分の濃度は同様であった。これらの結果から、同一の条件下で増殖した同一のポリクローナル細胞系統のアリコートは同様のクローン多様性を伴う抗−RhD rpAbを産生し得ることが結論付けられ得る。
【0217】
抗−RhD rpAbの個々のメンバーは1つ以上の特定のピークに割り当てられる(表4に概要を示す)。割り当ては各個々のクローンに由来する抗体産物について得られたクロマトグラムに基づく。RhD158.119B06から産生された抗体について個々のクロマトグラムは得られず、故に、このクローンはいずれのピークにも割り当てられない。しかし、ピークDはRhD158.119B06を構成し、該クローンは不均一性に起因して特定の他のピーク中に示され得ると考えられる。特に、クローンRhD197.127A08に由来する抗体産物は高度な不均一性を有する。クローンRhD190.119F05は15.3分に可視化されるはずだったが、それは検出できず、このクローンが組換えポリクローナル製造細胞系統から失われていることを示した。クローンRhD190.119F05の欠失は多様性の10%の減少に対応し、これは、最終抗−RhD rpAb組成物の多様性に関して許容可能と考えられる。
【0218】
表4
【表11】
【0219】
mRNA組成物:
培養11週間後のポリクローナルCHO−Flp−In(019)細胞系統内のクローン多様性をRT−PCR−RFLP分析により評価した。すなわち、200個の細胞に対応する細胞懸濁液を凍結解凍手順に付し、次いで、これらの溶解物を、One−STEP RT−PCRキット(Qiagen)及び軽鎖増幅プライマーを用いるRT−PCRの鋳型として用いた。該プライマー配列は:
フォワードプライマー 5'-CGTTCTTTTTCGCAACGGGTTTG(配列番号259)
リバースプライマー 5'-AAGACCGATGGGCCCTTGGTGGA(配列番号260)
だった。
RT−PCR産物をHinfIで消化し、次いで、アガロースゲル電気泳動により分析し、臭化エチジウム染色で制限産物を可視化した(図9)。
【0220】
RT−PCR増幅軽鎖のHinfI消化により得られた制限フラグメントの予期されるサイズを各個々のクローンについて表5に示す。特異的RhD抗体産生クローンに割り当てられ得る、ゲル上の6つの特有フラグメントサイズを太字で示す。全てではないが特有フラグメントがゲル上で同定され得、これらをイタリック体で示した。これは、これらのクローンが培養物中に示されないことを必ずしも意味していないが、該フラグメントは、識別可能なほど他のフラグメントから十分に隔たっていないか、又はそれらの濃度はより強いバンドと比べて弱いかのいずれかであってもよい。これはより短いフラグメントについてより顕著であり、というのも、それらはより少数の臭化エチジウム分子に結合するために、より見えにくいからである。
【0221】
表5
【表12】
【0222】
同一のポリクローナル細胞系統の2つのアリコート(3948及び3949)はゲル上で同様の発現パターンを示すが、バンドの強度は完全に同一ではなく、これは、同一の条件下で増殖した同一のポリクローナル細胞系統のアリコートが同様のクローン多様性を伴って抗−RhD rpAbを産生し得ることも示す。
【0223】
概要
本実験は、56個の変異体抗−RhDコーディング核酸セグメントを含む抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーの産生に成功した(表3)。
【0224】
該ライブラリーの個々のメンバーを含むプラスミドを用いて、CHO−Flp−In(019)細胞系統をトランスフェクトし、特異的抗−RhD抗体を発現し得る56個の個々の細胞系統を産生した。
【0225】
これらの細胞系統の10個を混合し、抗−RhD rpAb製造細胞系統を産生し、これは培養の9週間後にもなお初めの多様性の90%を維持していた。培養の11週間後、6つの異なるクローンに由来するmRNAは明確に同定され得、及び幾つかの他のクローンは約500bpのバンドで示されているようだ。
【0226】
ポリクローナルCHO−Flp−In(019)細胞系統の2つのアリコートがクローン多様性に関して同様の結果を示したという事実は、再現可能な結果を得ることができることを示した。
【0227】
実施例2
より大規模な産生のためのワーキングセルバンクの産生
ポリクローナル細胞系統を構成するために、27個の細胞培養物を選択した(RhD157.119D11,RhD159.119B09,RhD160.119C07,RhD161.119E09,RhD162.119G12,RhD163.119A02,RhD189.181E07,RhD191.119E08,RhD192.119G06,RhD196.126H11,RhD197.127A08,RhD199.164E03,RhD201.164H12,RhD202.158E07,RhD203.179F07,RhD207.127A11,RhD240.125A09,RhD241.119B05,RhD244.158B10,RhD245.164E06,RhD293.109A09,RhD301.160A04,RhD305.181E06,RhD306.223E11,RhD307.230E11,RhD319.187A11及びRhD324.231F07)。
【0228】
個々のクローン内の高度な多様性に加えて、クローン選択は、個々の細胞培養物の増殖及び産生特性に基づいた。
【0229】
細胞培養物レベルでの選択基準には:
I.倍加時間;24〜32時間である必要あり;
II:細胞内染色;同質の細胞集団を示す必要あり;
III:生産性;1細胞1日あたり1.5pgを超える必要あり;
が含まれた。
【0230】
27個の異なる細胞培養物を細胞数に関して等しく混合し、次いで、この混合物は抗−RhD rpAbのパイロットプラント産生のためのワーキングセルバンクを構成し得る。
【0231】
実施例3
本実施例は8つのメンバーを伴うポリクローナル細胞培養物の経時の特徴付けを示す。培養物のクローン多様性を、RFLP分析を用いて遺伝子レベルで、及び一次元クロマトグラフィー技法を用いて蛋白質レベルで評価した。
【0232】
本実施例のポリクローナル細胞系統は以下の8つのメンバーを構成した:RhD191.119E08,RhD196.126H11,RhD201.164H12,RhD203.179F07,RhD244.158B10,RhD306.223E11,RhD319.187A11及びRhD324.231F07。
【0233】
該実施例において、それらは簡単に以下RhD191,RhD201,RhD203,RhD244,RhD306,RhD319及びRhD324として記載される。
【0234】
ポリクローナル細胞培養物におけるクローン多様性を評価するためのRFLP分析
8つの異なる抗−RhD抗体を発現するポリクローナル細胞培養物における個々のクローンの分布をポリクローナル細胞系統に由来するRT−PCR産物のターミナルRFLP(T−RFLP)分析により評価した。T−RFLP法において1又は複数のフォワード及び/又はリバースプライマーは蛍光標識され、それ故に、単位複製配列から産生される制限フラグメント部分は標識を含み得る。次いで、標識されたフラグメントはキャピラリー電気泳動により分離され、次いで、蛍光により検出され得る。該分析は用いるプライマーに応じて軽鎖−及び重鎖可変領域−コーディング配列の両方において実行され得る。
【0235】
すなわち、200個の細胞に対応する細胞懸濁液をPBSで1回洗浄し、次いで、凍結解凍手順に付し、One−Step RT−PCRキット(Qiagen)及び適切なプライマーを用いるRT−PCR増幅における鋳型として用いる溶解物を作成する。
【0236】
以下の条件を用いてRT−PCRを標準的なサーマルサイクラーにて行った:
【表13】
【0237】
軽鎖の分析のために、以下のプライマーをRT−PCR増幅用に用いた。リバースプライマーは標識された6−カルボキシフルオレセイン(FAM)であり、そのプライマー配列は以下:
VLフォワードプライマー:5'-TCTCTTCCGCATCGCTGTCT
CLリバースプライマー:5'-FAM-AGGAAAGGACAGTGGGAGTGGCAC
の通りであった。
【0238】
20μlのRT−PCR産物をNEB1中、1UのNheI、1UのPstI及び1UのHinfI(全てNew England Biolabsから)で2時間消化した。
【0239】
Statens Serum Institute,Copenhagen,DKにおけるABI3700(Applied Biosystems)での蛍光キャピラリー電気泳動により、標識されたフラグメントを検出した。
【0240】
各抗−RhD抗体産生細胞クローンについて予期されるフラグメントを表6に示し、及びFAM標識されたフラグメントを太字で示す。
【0241】
表6
【表14】
【0242】
T−RFLPパターンを図10に示す。8個の抗−RhD抗体産生クローンは全て特異的ピークに割り当てられた。RT−PCRの間に鋳型/プライマーの競合がないという想定の下で、相対的ピーク面積は、ポリクローナル細胞系統中に示された各抗体軽鎖遺伝子から転写されたmRNAの相対量に対応し得る。
【0243】
同一のポリクローナル細胞系統内の重鎖可変領域の分析のために、VH−特異的プライマーを用いてRT−PCR増幅を行った。該プライマー配列は以下:
VHフォワードプライマー:5'-FAM CGTAGCTCTTTTAAGAGGTG
VHリバースプライマー:5'-HEX-ACCGATGGGCCCTTGGTGGA
の通りであった。
【0244】
20μlのRT−PCR産物をNEB2中、1UのRsaI及び1UのNdeI(全てNew England Biolabsから)で2時間消化した。
【0245】
標識されたフラグメントをABI3700での蛍光キャピラリー電気泳動により検出した。該分析はStatens Serum Institute,Copenhagen,DKにより行われた。
【0246】
予期されるT−RFLPパターンを表7に示す。ここで、FAM標識されたフラグメントを太字で示し、及びHEX(6−カルボキシ−2’,4,4’,5,7,7’−ヘキサクロロフルオレセインスクシンイミジルエステル)標識されたフラグメントを下線で示す。
【0247】
表7
【表15】
【0248】
ポリクローナル細胞系統を5週間培養し、及びT−RFLP分析のために週に1回試料を採取した。該分析は可変重鎖について行ったが、所望により軽鎖について行ってもよい。
【0249】
制限フラグメントのキャピラリー電気泳動の後、相対的ピーク面積を積分し、次いで、ポリクローナル細胞培養物のクローン多様性を評価するために用いた。経時の相対量を図12に示す。
【0250】
これらの結果に基づいて、RhD196は経時で増大するが、RhD203は減少するようだ。他のクローンの量は培養期間中極めて安定であり、及び全8個のcDNAは培養の5週間後に検出され得る。
【0251】
軽鎖及び重鎖の両方並びにmRNA及びDNAの両方についてT−RFLPを行うことにより、例えばインビトロでの細胞齢の限界における又は培養中の任意の特定の時間ポイントにおける細胞において、ポリクローナル細胞培養物内のクローン多様性の正確なフィンガープリントを得ることが可能となろう。
【0252】
故に、該技法を用いて、抗体産生の間、細胞培養物におけるクローン多様性の安定性を経時でモニターすることができる。該技法を適用して、例えば、同一のpWCBから凍結された異なるアンプルの、又は2回以上の製造ラン後に回収された細胞において、バッチ間の一貫性をモニターすることができる。
【0253】
ポリクローナル細胞培養物におけるクローン多様性を評価するための陽イオン交換クロマトグラフィー分析
上記したT−RFLP分析において用いられるような同一のポリクローナル細胞培養から産生されたポリクローナル抗体を、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて分析した。25mMの酢酸ナトリウム、150mMの塩化ナトリウム、pH5.0中の、組換えにより産生された蛋白質A精製ポリクローナル抗体を、室温、60ml/時間の流速でPolyCatAカラム(4.6×100mm)にアプライした。次いで、60ml/時間の流速で25mMの酢酸ナトリウム、pH5.0中の150〜350mM塩化ナトリウムからの直線勾配を用いて抗体成分を溶離した。抗体成分を280nmにおいて分光測定的に検出し、次いで、クロマトグラムを積分し、次いで、個々のピークの面積を用いて抗体成分を定量化した。経時の相対量を図13に示す。
【0254】
概要
RFLP分析により遺伝子レベルで得られた結果及び陽イオン交換クロマトグラフィーにより蛋白質レベルで得られた結果は類似している。図12及び13は、ポリクローナル細胞系統の個々のクローン及び細胞系統から発現されたポリクローナル抗体の個々の抗体大部分が5週間の培養の間に同一の傾向をたどることを明確に示す。故に、遺伝子及び蛋白質レベルでの分析は、遺伝子レベルでの細胞系統の、及び細胞系統から産生された組換えポリクローナル蛋白質の組成多様性を評価するための優れた等価物である。
【0255】
実施例4
本実施例は、25個のメンバーを伴うポリクローナル細胞培養物の経時の特徴付けを示す。培養物のクローン多様性は、T−RFLP分析を用いて遺伝子レベルで、及び一次元クロマトグラフィー技法を用いて蛋白質レベルで評価した。
【0256】
本実施例のポリクローナル細胞系統は、表8において同定される25個のメンバーを構成した。さらに、個々のクローンの増殖特性を表8に示す。
【0257】
表8
【表16】
a データは2つのELISA測定の平均を示す
b RhDVI反応性
c データ利用できず
【0258】
以下、一般的に、クローン名はそれらの最初の3つの数字のみを用いて同定され、例えば、RhD157.119D11はRhD157として記載される。
【0259】
5週間の培養期間にわたって25個の異なる抗−RhD抗体を発現するポリクローナル細胞培養物に由来する重鎖遺伝子の可変部分のT−RFLP分析
【0260】
本実施例において調べられるポリクローナル細胞培養物は、25個の異なる抗−RhD抗体(実施例1に記載の通り産生された)を発現する細胞培養物の混合物から構成された。ポリクローナル細胞培養物を5週間にわたって培養し、及びT−RFLP分析のために週に1回試料を採取した。
【0261】
実施例3に記載したVH−特異的プライマーを用いてRT−PCRを行い、及び制限断片化を同様に行った。
【0262】
全遺伝子型が存在するならば、25個の異なる抗−RhDコーディング配列のT−RFLPは、17個の異なるFAM標識されたフラグメントをもたらす。幾つかのフラグメントは最高3つの異なる遺伝子型を示すが、他のものは単一遺伝子型を示し得る。FAM標識されたフラグメントの予期されるサイズを、異なるFAM標識されたフラグメントの経時的な相対量と共に表9に示す。さらに、T−RFLP特性の一例を図11に示す。
【0263】
表9
【表17】
【表18】
【0264】
細胞系統を構成する25個のクローンのうち12個の個々のクローンに関する情報を獲得できる程度に制限フラグメントを分離することができた。残りのクローンについてより多くの情報を得るために、残りのフラクションを潜在的にシークエンスに付すことができる。
【0265】
25個の異なる抗−RhD抗体を発現するポリクローナル細胞培養物においてクローン多様性を評価するための陽イオン交換クロマトグラフィー分析
【0266】
上記したT−RFLP分析において用いたものと同一のポリクローナル細胞培養物から産生されたポリクローナル抗体を、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて分析した。蛋白質A精製した組換えにより産生されたポリクローナル抗体を、25mMの酢酸ナトリウム、150mMの塩化ナトリウム、pH5.0中、室温、60ml/時間の流速でPolyCatAカラム(4.6×100mm)にアプライした。次いで、25mMの酢酸ナトリウム、pH5.0中の150〜350mMの塩化ナトリウムからの直線勾配を用いて60ml/時間の流速で抗体成分を溶離した。抗体成分を280nmにおいて分光測定的に検出し、次いで、クロマトグラムを積分し、次いで、個々のピークの面積を用いて異なる抗体成分を定量化した。図14は、4週目に得られた試料から作成されたクロマトグラムを示し、該抗体は番号1〜25のピークを含む。該クロマトグラムは分析されたポリクローナル抗体中の個々の抗体の数と同じ数のピークを含むというのが真に一致した見解である。表10は、全抗体成分のパーセント単位での相対的含有量(AC1〜25)及び各抗体成分における個々の抗体の表示(ピーク)を示す。積分したクロマトグラフィーピークへの個々の抗体の割り当ては、同一の条件下で陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて分析したモノクローナル抗体から得られた保持時間及びピークパターンに基づいた。
【0267】
表10
【表19】
【表20】
【0268】
陽イオン交換クロマトグラフィーは、個々のメンバー間の正味電荷における差異に基づいてポリクローナル抗体から個々の抗体メンバーを分離し、及びさらには電荷不均一性を示す個々の抗体の形態を分離する。故に、幾つかの抗体は単一ピーク、例えば、RhD293及びRhD319を含むAC1にて示され(表10を参照のこと)、及び幾つかの個々の抗体はさらに幾つかのクロマトグラフィーピークにて示され、例えば、RhD319はAC1及び5の両方に存在する(表10を参照のこと)。
【0269】
1以上の個々の抗体を含むピークは、抗−イディオタイプペプチド、蛋白分解性ペプチドマッピング、N−末端シークエンス又は二次元クロマトグラフィーを用いる定量分析のごときさらなる蛋白質の化学的特徴付け技法に付すことができる。
【0270】
概要
本実施例は、一次転写産物及び抗体成分それぞれの分布を培養期間にわたって評価するためのT−RFLP分析及び陽イオン交換クロマトグラフィーの併用を記載している。T−RFLP分析は、ポリクローナル細胞系統において発現された25個のクローンのうち12個の個々のクローンの一意的同定を可能とし、及び本実施例では、これらの12個のクローンがT−RFLP分析を用いて4週間の培養の間に検出され得ることが記載されている。潜在的に、より多くのクローンが、1以上のクローンを示すフラグメントの配列分析により同定され得る。抗体成分の分布は陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて分析され、及び本実施例では、25個の分析した成分の分布は培養の間、相対的に安定であることが示されている。発現された抗体の固有の電荷不均一性に起因して全ての個々の抗体の一意的同定は困難であるが、本実施例では、RhD160、293及び196クローンを示す群13について得られた高いT−RFLP値に従って、RhD160抗体を示す抗体成分8が培養期間中に最も高い抗体レベルを示すことが実証された。さらに、T−RFLP及び陽イオン交換クロマトグラフィーにより一意的に同定され得るRhD207成分は、10〜11%のT−RFLPレベル、及び抗体レベルでは若干より低い5.5〜10%が得られた。概して、2つの技法は共に、mRNA及び抗体レベルでの培養中の相対的に安定な産生を示すが、2つの技法の間にある潜在的な相違も見られ、これは、抗体レベルで得られた結果と対照的に、培養5週間目において幾つかのクローンの転写が明らかに減少することにより説明され得る。故に、本実施例は、複雑なポリクローナル蛋白質の安定な産生が可能な培養期間を定めるための両技法の相補的な使用を証明する。
【0271】
実施例5
本実施例は、25個の個々のメンバーを伴う抗−RhD rpAbを含むpWCBの産生を示し、及びpWCBに由来する異なるバイアルから精製されたrpAb産物の最小のバッチ間差異を立証する。
【0272】
pWCBの産生
25個の個々のメンバーを伴う抗−RhD rpAbを含むpWCBを産生するために、25個の保存されたモノクローナル抗−RhD抗体産生細胞系統(RhD157,159,160,162,189,191,192,196,197,199,201,202,203,207,240,241,245,293,301,305,306,317,319,321,324)各々の1つのバイアルを4mMグルタミン含有ExCell302培地中で解凍し、次いで、500μg/mlのG418及び1:250希釈した抗クランピング物質を加えた同一の培地中で3週間増殖させた。次いで、各培養物からの等数の細胞(2×106)を慎重に混合し、次いで、標準的な凍結法を用いて液体窒素で凍結した(5×107細胞/バイアル)。
【0273】
バイオリアクターにおける培養
pWCBに由来するバイアルをT75フラスコ(Nunc,Roskilde,Denmark)中で解凍し、次いで、スピナーフラスコ(Techne,Cambridge,UK)で増殖させた。5Lのバイオリアクター(Applikon,Schiedam,Netherlands)に1.5L中の0.6×106細胞/mlを接種した。リアクターのラン中、毎日、濃縮フィード溶液、グルタミン及びグルコースを加えたExCell302培地を細胞に与え、最終容量は4.5Lだった。バイオリアクターのランを16〜17日後に終了した。3つのバッチをSym04:21、Sym04:23及びSym04:24と名付けた。該バッチを異なる時間ポイントで培養した。
【0274】
バッチ間差異の分析
HiTrap(登録商標)rProtein Aカラム(GE Healthcare,UK)を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより、組換えポリクローナル抗体試料を精製した。
【0275】
25mMの酢酸ナトリウム、150mMの塩化ナトリウム、pH5.0中、60ml/時間の流速(室温)で、PolyCatAカラム(4,6×100mm,PolyLC Inc.,MA,US)を利用する陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、精製した組換えポリクローナル抗体試料を分析した。次いで、25mMの酢酸ナトリウム、pH5.0中、150mM〜350又は500mMのNaClからの直線勾配を用いて60ml/時間の流速で抗体ピークを溶離した。抗体ピークを280nmにおいて分光測定的に検出した。クロマトグラムを積分し、次いで、個々のピークの面積を定量化に用いた。既に記載したように、幾つかの個々の抗体は電荷不均一性を示し、及び2つの抗体はIEXクロマトグラムにおける同一のピークに寄与してもよい。
【0276】
表11は、全抗体成分(AC)におけるパーセント単位での相対的含有量を示す。実施例4では25個のACについてのみ相対的面積を算出したが、本実施例では、相対的面積を35個のACについて算出した。この差異は、クロマトグラムにおけるピークの割り当ての差異に厳密に起因しており、特性自体における実際的な差異に起因するものではない。
【0277】
表11
【表21】
【0278】
表11は、3つのバッチに由来する回収された抗体産物の再現性が高かったことを示す。個々の抗体ピークのサイズにおける差異は大部分の抗体成分について20%以内であったが、最も小さいピークの幾つかについての差異は若干大きかった。
【0279】
実施例6
本実施例は、25個の個々のメンバー(実施例4のものと同一の組成物)を伴う抗−RhD rpAbの異なるバッチが同様の能力でRhD−陽性赤血球に結合し、及び関連するエフェクター機序に関して同等の生物学的活性:抗体−依存性細胞傷害活性(ADCC)及び貪食性を示すことを実証している。
【0280】
赤血球細胞の調製
1%のウシ血清アルブミン(BSA,Sigma−Aldrich,Germany)含有のPBS(Gibco,Invitrogen,United Kingdom)中で血液を3回洗浄することにより、Aalborg Hospital,DKの血液バンクにおいてインフォームド・コンセント後の健常ドナーから得られた全血液から赤血球細胞(RBC)を調製した。赤血球をID−Celltab(DiaMed,Switzerland)中の10%の溶液として再懸濁し、次いで、4℃で貯蔵した。
【0281】
PBMCの調製
健常ドナーに由来する軟膜含有血液をNational Hospital,Copenhagen,Denmarkの血液バンクから得、次いで、末梢血単核細胞(PBMC)をLymphoprep(Axis−Shield,Norway)にて精製した。
【0282】
能力アッセイ
能力アッセイをヨーロッパ薬局方4(セクション2.7.13方法C)から採用した。25個の個々のメンバーと抗−RhD rpAbの結合能を、PBS、1%BSA中、5×104細胞/μlでRhD−陽性赤血球を用いて測定した。抗−RhD rpAbバッチ、Sym04:21、Sym04:23及びSym04:24を個々の5Lのフェッドバッチバイオリアクターラン(fed batch bioreactor run)から得た。96ウェルプレート(Becton Dickinson Labware,NJ,USA)中、三つ組で、抗−RhD rpAbバッチの希釈(1.5倍)をPBS、1%のBSA中で行った。50μlの抗−RhD rpAb希釈を50μlの赤血球と混合し、次いで、37℃で40分間インキュベーションした。細胞をPBS、1%BSA中で2回(300×g,2分間)洗浄した。PBS、1%BSA中1:20希釈した80μlのフィコエリトリン−コンジュゲートヤギ抗−ヒトIgG(Beckman Coulter,CA,USA)を各試料に加え、次いで、4℃で30分間放置した。試料をPBS、1%BSA及びFacsFlow(Becton Dickinson,Belgium)(300×g,2分間)中で洗浄し、次いで、200μlのFACSFlow中に再懸濁した。試料をFACSCalibur(BectonDickinson,CA,USA)に付し、次いで、CellQuest Pro及びExcelを用いてデータ分析を行った。3つの個々の抗−RhD rpAbバッチはRhD−陽性赤血球と本質的に同一の結合能力を示した(図15A)。
【0283】
複合ADCC及び貪食性アッセイ
このアッセイをBerkmanら.2002.Autoimmunity35,415−419から採用した。すなわち、RhD陽性(RhD+)及びRhD陰性(RhD−)赤血球細胞(RBC)を放射性クロムで標識した。Cr51標識のために、1×108のRhD+及びRhD−RBCをそれぞれ遠心分離し(600×gで10分間)、次いで、100μlのダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)及び200μlのクロム酸ナトリウム(0.2μCi)(GE Healthcare,UK)を各チューブに加え、その後、37℃で1.5時間インキュベーションした。懸濁液を50mlのPBS中で2回洗浄し、次いで、1mlの完全DMEM(2mMのグルタミン,1%のペニシリン−ストレプトマイシン及び10%のウシ胎児血清含有)(Invitrogen,CA,US)中で再懸濁した。細胞を4×106細胞/mlに調節し、次いで、50μl/ウェルを96−ウェル細胞培養プレート(Nunc)に加えた。次いで、バッチSym04:21又はSym04:24に由来する50μlの2倍希釈の抗−RhD rpAbを対照のウェルを除く各ウェルに加えた。対照のウェルに完全DMEMを加え、次いで、自然溶解/保持又は最大溶解のいずれかのために用いた。
【0284】
PBMCを2×107細胞/mlに調節し、次いで、100μlを各ウェルに加え、次いで、37℃で一晩インキュベーションした。100μlの1%のトリトン−X−100(Merck,Germany)を最大溶解対照ウェルに加えた。プレートを遠心分離し(600×gで2分間)、次いで、50μlの上清をADCC Lumaplate(Perkin Elmer,Belgium)に移した。
【0285】
上清を移した後、細胞培養プレートを遠心分離し(300×gで2分間)、次いで、最大溶解ウェルからの50μlの上清を別のLumaplate(貪食性Lumaplate)に移した。細胞培養プレートにおいて、上清を残りのウェルから除去し、次いで、溶解バッファー(140mMのNH4Cl,17mMのトリス−HCl)を加え、次いで、5分間37℃でインキュベーションした。NH4ClはRBCを溶解するが、PBMCフラクションはそのままであり、それ故に、貪食されたRBCはインタクトのままである。RBCを溶解した後、プレートを遠心分離し(4℃,2分間,300g)、ペレットをPBS中で2回洗浄し、次いで、100μlのPBS中に再懸濁した。100μlの1%のトリトン−X−100をウェルに加え、食作用性PBMCを溶解し、次いで、50μlの溶解物を貪食性Lumaplateに移した。Lumaplateを一晩40℃で乾燥し、次いで、TopCount NXT(Packard,CT,USA)にて計数した。全データをExCellに入力し、次いで、Berkmanら.2002,Autoimmunity 35,415−419に記載されたように分析した。すなわち、以下の通り演算処理を行った:
【0286】
ADCC:免疫溶解(%)
=(平均試験放出Cr51−平均自然放出Cr51)/(標的赤血球中の全Cr51−マシンバックグラウンド)×100
貪食性:免疫貪食性(%)
=(平均試験保持Cr51−平均自然保持Cr51)/(標的赤血球中の全Cr51−マシンバックグラウンド)×100
【0287】
全データを、複合した最大プラトー値に対して正規化した。
【0288】
2つの連続したリアクターランに由来する抗−RhD rpAbの機能活性は、両インビトロアッセイにおいてほぼ同一の機能活性を示し(図15B及び15C)、バッチ間で高い一貫性を示した。
【0289】
実施例7
本実施例は、25個の個々のメンバー(実施例4と同一の組成物)を伴う抗−RhD rpAbのクローン多様性が下流プロセッシング(DSP)の間維持されていることを実証している。陽イオン交換クロマトグラフィー分析を用いて、組換えポリクローナル抗体のDSPの間のクローン多様性を評価した。
【0290】
下流プロセッシング
発展的(developmental)バイオリアクターランに由来する、25個の個々のメンバーを含む抗−RhD rpAb試料を以下のDSP段階:
1.MAbSelectカラムを用いる抗体の捕獲;
2.pH3におけるウイルス不活性化;
3.SephadexG−25カラムを用いるバッファー交換;
4.DEAE−Sepharoseカラムを用いる陰イオン交換クロマトグラフィー;
5.Planova 15Nフィルターを用いるウイルス濾過;及び
6.MEP Hypercelカラムを用いる疎水性電荷誘導クロマトグラフィー;
7.Millipore biomaxフィルターを用いる限外濾過/ダイアフィルトレーション:
を用いて精製した。
【0291】
個々のDSP段階後のクローン多様性の分析
陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、DSPの間の組換えポリクローナル抗体組成物のクローン多様性を分析した。抗−RhD rpAbのDSPの間、段階1、3、4及び6の後に試料を採取し、25mMの酢酸ナトリウム、150mMの塩化ナトリウム、pH5.0中、室温、60ml/時間の流速でPolyCatAカラム(4.6×100mm)にアプライした。次いで、25mMの酢酸ナトリウム、pH5.0中、150〜500mMの塩化ナトリウムからの直線勾配を用いて60ml/時間の流速で抗体成分を溶離した。抗体成分を280nmにおいて分光測定的に検出し、次いで、クロマトグラムを比較し(図16)、DSPの間のクローン多様性の潜在的な減少を検出した。本実施例では、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、組換えポリクローナル抗体のDSPの間にクローン多様性が本質的に変化しないことが実証された。
【図面の簡単な説明】
【0292】
【図1】組換えポリクローナル製造細胞系統の作成及び組換えポリクローナル抗体の産生を示すフローチャートである。
【図2】個別にトランスフェクトされた宿主細胞に由来するpWCB/pMCB及びサブ−pWCBの作成及びポリクローナル製造細胞系統の播種を示すフローチャートである。
【図3】ファージディスプレイベクター:Em351,イー・コリベクターを示す。
【図4】Neo発現ベクター:哺乳類発現ベクターの略図を示す。
【図5】9週間の培養後のアリコート3948及び3949に由来する抗−RhD rpAb組成物の陽イオン交換クロマトグラムを示す。
【図6】5週間培養されたポリクローナル細胞培養物に由来する8つの異なる抗−RhD重鎖コーディング配列のT−RFLPにより評価されたcDNA分布を示す。
【図7】陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて分析した、8つの異なる抗体に関する抗−RhD rpAbの相対的含有量(%)を示す。
【図8】4週間の培養後に得られた試料に由来する25個の個々のメンバーに関する抗−RhD rpAbの陽イオン交換クロマトグラムを示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗−RhD組換えポリクローナル抗体(抗−RhD rpAb)の産生、並びに所望のポリクローナル抗体を後で産生するためのポリクローナルワーキングセルバンクを作成するための一般的なアプローチを記載している。本発明は、抗−RhD rpAbをコードするライブラリー及び抗−RhD rpAbを産生する細胞系統にも関連する。さらに、本出願は、抗−RhD rpAbを含有する医薬用及び診断用組成物、並びに新生児溶血性疾患(HDN)の予防、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の処置、及びRhD(−)の個人へRhD(+)の血液を誤って輸血した後のRhD抗原に対する感作の予防におけるそれらの使用を記載している。
【背景技術】
【0002】
Rh式血液型抗原は、いわゆるC、c、E、e及びD抗原を含む膜貫通型赤血球蛋白質上に位置している。白人集団の約16%は遺伝的多型に起因してRhD陰性(RhD(−))である。加えて、RhDには複数の遺伝的及び血清学的変異体が存在し(カテゴリーII〜VIIに分類される)、その中で、RhDVIが最も臨床的に関連している。カテゴリーVI陽性赤血球細胞(RBC)は他のカテゴリーのRBCに比べて有するD蛋白質の各種エピトープがより少ないので、RhDVI(+)の個人は、他のRhD陽性(RhD(+))の個人に由来するRBCに対して同種抗体を形成し得る(Issitt,P.D.およびAnstee,D.J.,1998. The Rh Blood Group System,Montgomery Scientific Publications,Durham,North Carolina,pp.315−423)。{Issitt&Anstee 1998 11809/id}
【0003】
RhD陰性それ自体はいずれの病状にも関連していないが、RhD(−)の女性がRhD(+)若しくはRhDVI(+)の胎児を妊娠するか、又はRhDVI(+)の女性がRhD(+)の胎児を妊娠する場合に、重要な医学的意味を有する。通常周産期(分娩時)に胎児の赤血球が母体循環系に入ると、胎児母体RhD同種免疫が生じ、それにより、母体の抗−RhD抗体応答の誘導が惹起される。次の妊娠において、母体に由来するRhD−特異的IgG−分子は胎盤を通過して胎児の血液に入り、次いで、胎児の赤血球の溶解を仲介し、それにより、新生児溶血性疾患(HDN)を惹起する。2度目にRhD(+)の胎児を妊娠し、及び抗−D予防を用いて適切に保護されていないRhD(−)の女性の平均20%が抗−RhD抗体応答を生じることが推定されている。未処置の場合、新生児の約30%は中程度の貧血、黄疸及び肝腫を有し、並びに20%は重度の貧血及び胎児水腫を発症し、並びに重度に罹患した新生児は新生児死亡又は永続的な障害の危険性を有する。
【0004】
RhDに対するポリクローナル免疫グロブリンの調製は、妊娠しているRhD(−)及びRhDVI(+)の女性の同種免疫を防ぎ、それにより新生児溶血性疾患を予防するために世界中で使用されている。RhD(抗−D)に対するポリクローナル免疫グロブリンの調製は、現在、自然なRhD同種免疫か又はRhD陽性赤血球でのRhD陰性ボランティア男性のワクチン接種のいずれかを介して過免疫されたドナーから得た血漿をプールすることにより、得られている。HDNの予防のための抗−RhD免疫グロブリン調製物の能力は十分に確立されており、及び長年日常的に使用されてきた。結果として、この重度の疾患は希少なものとなっている。
【0005】
それにも関わらず、疾患、すなわち、妊娠しているRhD(−)及びRhDVI(+)の女性の同種免疫の根底にある原因はなお存在しており、それ故に、抗−D免疫グロブリン調製物の絶え間のない供給が必要である。
【0006】
HDNの予防に加えて、抗−D免疫グロブリンは特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の処置において有用であることも示されている(George,J.N.,2002.Blood Rev.16,37−38)。ITPは血液疾患であり、ここで、自己抗体は脾臓及び肝臓における血小板クリアランスの加速をもたらす。症状は、損傷及び出血をもたらす血小板レベルの減少である。重度の場合、脾臓が摘出される。しかし、これは重度の副作用のために乳児においては不可能であり、故に、抗−D免疫グロブリンのごとき代替的処置が必要である。さらに、RhD(−)のレシピエントにRhD(+)の血液を誤って輸血した後にRhD抗原に対する感作を予防するために抗−D免疫グロブリンが用いられる。
【0007】
既に記載したように、抗−Dを産生するための現行方法は、高力価の抗血清を産生するためにドナー集団を繰り返し免疫する必要があり、該ドナーは次第に応答しなくなる。繰り返し免疫のためのRh陽性RBCの使用が、ウイルス性疾患、例えば、B型肝炎、AIDS及び未知ウイルスのごとき他のものへの感染危険性をもたらすといった、関連する危険因子及び技術的問題もある。さらに、バッチ間差異に関する問題もある。故に、抗−RhD抗体の産生のための代替的方法が必要である。
【0008】
抗−RhDモノクローナル抗体を産生するための細胞的アプローチは、初め、過免疫血清の代替法として開発された。これらの技法は、Bリンパ芽球腫細胞系統を生じるリンパ球のエプスタイン・バーウイルス(Epstein Barr Virus)形質転換を含んだ(Crawfordら.1983.Lancet 1,386−8)。しかし、これらの細胞系統は不安定であり、及び大規模なクローニングを要する。ハイブリドーマ技法によるヒト抗体の産生は、適切なヒト骨髄腫細胞融合パートナーの欠如によっても制限された(Kozbor,D.及びRoder,J.C.,1983.Immunol.Today.4,72)。
【0009】
これらの技法の代替法として、VH及びVLのレパートリークローニング並びにファージディスプレイライブラリーの構築を含む分子的アプローチが開発された(Barbas,C.F.ら.1991.Proc Natl.Acad.Sci.USA 88,7978−7982)。ファージディスプレイ技法もRhD抗原バインダーの単離のために適用できた。RhD抗原結合特異性を有する多数のモノクローナル抗体(mAb)がこの技法により単離された(WO 97/49809及びSiegel,D.Lら.2002.Transfus.Clin.Biol.9,83−97)。
【0010】
組換え抗−RhDVImAbを用いた最近の臨床試験は、RhD(+)RBCでの大規模な攻撃の後にRhD免疫化の予防が可能であることを示した(Miescher,S.,ら.2004,Blood 103,4028−4035)。しかし、該試験は、RBCのクリアランスに関してmAbは抗−D免疫グロブリンよりも能力が低いことも示した。このクリアランス速度減少の原因は知られていない。単一の抗体は抗−D免疫グロブリン産物中に存在する多様な抗体ほど有効ではないか、又は1以上の免疫グロブリンアイソタイプ、すなわち、IgG1及びIgG3の存在はRBCクリアランスを増大すると考えられる{Siegel,Czerwinski,ら.2002 10320/id}。
【0011】
効果の問題に加えて、HDN予防に関する別の問題は、RhDVI(+)の女性がRhD(+)の胎児を妊娠する状況である。この状況では、抗−RhDVImAbは女性の同種免疫を防ぐことができないだろう。故に、RhD(−)及びRhDVI(+)の女性を共に保護するために、RhDカテゴリーVI抗原に対する抗体、及びカテゴリーVI抗原に結合しないが他の一般的なRhD抗原には結合する抗体を有する産物が必要である。
【0012】
mAbに関して考えられる別の問題は、それらが免疫原性であり得ることである。mAbはヒトであるが、初回の処置は、mAbで処置した女性からの抗体応答をもたらし得る。理論的には、これは、処置された個人の免疫系によりそれ以前に認識されなかったmAbのCDR領域が、十分大量に提供されるならば、外来のものとして認識され得るために、生じ得る。予防的処置を繰り返さない限り、かかる反応は抗−RhD mAbをもたらし得る。
【0013】
mAbに関するこれらの潜在的な問題の幾つかはモノクローナル抗体を混合することにより克服されよう。しかし、これは、不確定な数の抗体を別々に産生及び精製することを意味し、きわめて費用がかかるだろう。さらに、かかる混合物の個々のモノクローナル抗体の異なるバッチ特性は最終産物に影響し得る。
【発明の開示】
【0014】
本発明は、単一バッチとして抗−RhD組換えポリクローナル抗体(抗−RhD rpAb)を発現し得る製造細胞系統を産生するための方法を提供する。
【0015】
発明の記載
本発明は、抗−RhD組換えポリクローナル抗体(抗−RhD rpAb)の一貫した製造のための方法を提供する。本発明は、新規クラスの予防用及び治療用抗−RhD抗体産物の大規模な製造及び産生のための可能性を開くことが熟慮される。
【0016】
本発明の抗−RhD rpAbは潜在的に、モノクローナル抗−RhD抗体より優れた幾つかの利点を有する。第1に、あらゆる潜在的なRhDエピトープは1以上の抗体で覆われ、故に、抗−RhD rpAb組成物は、RhD(+)の子供を産むRhD(−)及びRhDVIの女性の両方の予防的処置において用いられ得る。故に、十分な予防的効果を得るために、異なる産生及び精製バッチに由来するmAbを混合する必要はなくなるだろう。
【0017】
さらに、高濃度の単一又は数個の分子に起因してmAbが免疫原性であることが判明する場合では、抗−RhD rpAbは優れた代替法となり得る。本発明に記載の抗−RhD rpAbは5〜56個の変異体抗体分子から構成されているので、それらの個々の濃度はより低くなり得、及び抗体の1つが免疫原性に起因して枯渇されても、RhD抗原を覆う他のものが多数存在し得、それ故に、予防はなお有効であり得る。
【0018】
本発明の抗−RhD rpAb抗体の産生は単一バッチとして単一細胞系統から行われる。抗−RhD rpAb産生のためのポリクローナル製造細胞系統の産生は、詳細な記載及び実施例にて明示されよう。
【0019】
定義
「抗生物質耐性遺伝子」は、細胞に対し抗生物質が有する阻害性又は毒性効果を克服し、抗生物質の存在下での細胞の生存及び持続的増殖を確保し得る蛋白質をコードする遺伝子である。
【0020】
用語「抗体」は、血清の1つの機能的成分を表し、多くの場合、分子の一群(抗体若しくは免疫グロブリン)又は1分子(抗体分子若しくは免疫グロブリン分子)のいずれかを言う。抗体分子は特異的抗原決定基(抗原若しくは抗原エピトープ)に結合するか又はそれと反応し得、順次、免疫作用機序の誘導に至り得る。個々の抗体分子は通常単一特異的と見なされ、及び抗体分子の組成物はモノクローナル(すなわち、同一の抗体分子から構成される)又はポリクローナル(すなわち、同一の抗原又さらには別の異なる抗原上で同一又は異なるエピトープと反応する異なる抗体分子から構成される)であってもよい。各抗体分子は、その対応する抗原に対する特異的な結合を可能とする特有の構造を有し、及び全ての自然な抗体分子は、2つの同一の軽鎖及び2つの同一の重鎖から構成される同一の全体的な基本構造を有する。抗体は集合的に免疫グロブリンとしても知られている。本明細書中用いられる抗体(単数及び複数)なる用語は、キメラ及び一本鎖抗体、並びに抗体の結合フラグメント、例えば、Fab、Fab’若しくはF(ab)2分子、Fvフラグメント若しくはscFvフラグメント又は任意の他の安定なフラグメント、並びに全長抗体分子及び多量体形態、例えば、2量体IgA分子若しくは5量体IgMを含むことも意図される。
【0021】
用語「抗−RhD抗体コーディング核酸セグメント」は、VH及びVL遺伝子エレメントの対を含む核酸セグメントを表す。該セグメントは、軽鎖及び/又は重鎖定常領域遺伝子エレメント、例えば、カッパ又はラムダ軽鎖定常領域、及び/又はアイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD及びIgEの1つから選択された1つ以上の定常領域ドメインCH1、CH2、CH3又はCH4をさらに含んでもよい。好ましいアイソタイプはIgG1及び/又はIgG3である。核酸セグメントは、VH及びVLコーディング配列の双方向性又は一方向性転写のいずれかを容易にする1つ以上のプロモーターカセットを含んでもよい。さらなる転写又は翻訳エレメント、例えば、遺伝子産物を分泌経路に誘導する機能的リーダー配列、ポリAシグナル配列、UCOE及び/又はIRESも該セグメント中に存在してもよい。
【0022】
用語「抗−RhD組換えポリクローナル抗体」又は「抗−RhD rpAb」は、組換えにより産生された多様な抗体分子の組成物を表し、ここで、個々のメンバーはRhD抗原上の少なくとも1つのエピトープに結合し得る。好ましくは、該組成物は単一の製造細胞系統から産生される。ポリクローナル抗体の多様性は可変領域(VH及びVL領域)、特に、CDR1、CDR2及びCDR3領域に位置付けられる。
【0023】
用語「偏向」は、組換えポリクローナル抗体産生中の事象を表すために用いられ、ここで、発現ライブラリー、ポリクローナル細胞系統又はポリクローナル蛋白質の組成は、無作為な遺伝子突然変異、個々の細胞間の増殖動態学における差異、異なる発現コンストラクト配列間の発現レベルにおける差異、又はDNAのクローニング効果における差異に起因して経時的に変化する。
【0024】
用語「抗−RhD rpAbの異なるメンバー」は、可変領域内に1つ以上のストレッチ(stretch)を含む組換えポリクローナル抗体組成物の個々の抗体分子を表し、該ストレッチは、ポリクローナル蛋白質の他の個々のメンバーと比較してアミノ酸配列の差異により特徴付けられる。特に、これらのストレッチはCDR1、CDR2及びCDR3領域に位置する。
【0025】
本明細書中用いられる用語「ゲノム」は、細胞内に存在する染色体の通常の相補体として文字通り解釈されるだけではなく、細胞内に導入及び維持され得る染色体外エレメントでもある。かかる染色体外エレメントは、ミニ−染色体、YAC(酵母人工染色体)、MAC(マウス人工染色体)又はHAC(ヒト人工染色体)を含むが、これらに限定されない。
【0026】
用語「頭−頭(head−to−head)プロモーター」は、プロモーターにより駆動される2つの遺伝子エレメントの転写が反対方向で生じる(双方向性転写)ように、近接して配置されているプロモーター対を言う。かかる系の構築は米国特許第5,789,208号の実施例3に詳細に記載されており、該文献は出典明示により本明細書の一部となる。2つのプロモーター間に無関係な核酸からなる詰め込み(stuffer)を有する頭−頭プロモーターも構築され得る。かかる詰め込みフラグメントは500を超えるヌクレオチドを容易に含み得る。
【0027】
「ホットスポット細胞系統」中のごとき用語「ホットスポット」は、その部位内への発現ベクターの組込みについて、目的の組込まれた核酸セグメントの高効率の転写のために選択又は生成及び特徴付けられた、細胞のゲノムの予め確立された遺伝子座を言う。
【0028】
一般的に、用語「免疫グロブリン」は、血液又は血清中に見出される抗体の混合物の総称として用いられるが、他の供給源に由来する抗体の混合物を表すために用いられてもよく、又は用語「免疫グロブリン分子」において用いられる。
【0029】
用語「内部リボソーム進入部位」又は「IRES」は、mRNA上の通常の5’キャップ−構造とは異なる構造を表す。両構造はリボソームにより認識され得、翻訳開始のためにAUGコドンについて走査を開始する。1つのプロモーター配列及び2つの開始AUGを用いることにより、第1及び第2のポリペプチド配列が単一のmRNAから翻訳され得る。故に、単一の2シストロン性mRNAからの第1及び第2のポリヌクレオチド配列の同時翻訳を可能とするために、IRES配列の下流側のポリヌクレオチド配列の翻訳を可能にするIRES配列を含むリンカー配列を介して、第1及び第2のポリヌクレオチド配列を転写的に融合できる。この場合、転写された2シストロン性RNA分子は、キャッピングされた5’末端及び2シストロン性RNA分子の内部IRES配列の両方から翻訳され、それにより、第1及び第2のポリペプチドを共に産生できる。
【0030】
本明細書中用いられる用語「ライブラリー」は、変異体核酸配列の一群を言う。例えば、抗体の可変重鎖及び/又は可変軽鎖の多様な集団をコードする核酸配列の一群を言う。変異体核酸配列のメンバーが2つの変異体遺伝子エレメント、例えば、VH及びVLから構成される場合、それは多くの場合に核酸セグメントと言われよう。変異体核酸配列/セグメントの群は、かかる核酸配列のプール形態であり得るか、又はそれは別個の核酸配列(例えば、96ウェルプレートの各ウェル中の特有の一配列)の一群であり得る。典型的に、本発明のライブラリーは少なくとも3、5、10、20、50、1000、104、105又は106の異なるメンバーを有する。「ベクターのライブラリー」では、変異体核酸配列/セグメントがベクターに挿入されている。しかし、ライブラリー及びベクターのライブラリーなる用語は同義的にも用いられ得る。
【0031】
用語「抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリー」は、抗−RhD抗体の転写のための調節エレメントを有するベクター内に挿入された変異体抗−RhD抗体コーディング核酸配列の一群を言う。該調節エレメントは、挿入された核酸セグメント内又はベクターフレームワーク内のいずれかに位置し得る。好ましくは、抗−RhD抗体発現ベクターは少なくとも1つのリコンビナーゼ認識配列、例えば、FRT部位も有し、それは2つの異なるリコンビナーゼ認識配列、例えば、FRT及びFRT’部位を有してもよい。
【0032】
用語「個々の細胞の大部分」は、80%以上、好ましくは、85%以上、より好ましくは、90%、95%又はさらには99%又はそれ以上のごとき細胞のパーセンテージを言う。
【0033】
用語「大量移入」は、あるベクター集団から別のベクター集団への目的の核酸セグメントの移入、及び目的の個々のセグメントの単離を行うことなく各核酸セグメントについて同時にそれを行うことを表すために用いる。かかるベクター集団は、例えば、目的の可変領域、プロモーター、リーダー又は増強エレメントを含むライブラリーであり得る。次いで、これらの配列は事前に単離することなく、例えば、ファージベクターから哺乳類発現ベクターへ移動され得る。特に抗体配列について、この技法は、例えば、選択ベクター(例えば、ファージディスプレイベクター)から哺乳類発現ベクターへライブラリーを移動させる間にVH及びVL多様性の間の連鎖が失われないよう保証している。かくして、VH及びVLの元々の対が保持される。
【0034】
本明細書中用いられる用語「作動可能に連結された」は、他のセグメントと機能的関係に置かれた場合に、別のセグメントに連結されているセグメントを言う。例えば、シグナル配列をコードするDNAは、それが小胞体へのポリペプチドの移入に関与するリーダーとして発現されるならば、ポリペプチドをコードするDNAに作動可能に連結されている。同様に、プロモーター又はエンハンサーは、それが該配列の転写を刺激するならば、作動可能に連結されている。
【0035】
用語「ポリクローナル抗体」は、同一又は異なる抗原上で幾つかの異なる特異的抗原決定基に結合するか又はそれと反応し得る異なる(多様な)抗体分子の組成物を表す。通常、ポリクローナル抗体の可変性は、ポリクローナル抗体のいわゆる可変領域、特に、CDR領域に位置する。ポリクローナル抗体のメンバーが抗原に結合すると言う場合、本明細書中では、1mM未満、好ましくは、100nM未満、さらにより好ましくは、10nM未満の結合定数を有する結合が意味される。
【0036】
用語「組換えポリクローナル製造細胞系統」は、目的の変異体核酸セグメントのライブラリーを用いてトランスフェクションした蛋白質発現細胞の混合物/集団を言い、ここで、組換えポリクローナル製造細胞系統を共に構成する各個々の細胞は、別個の目的の核酸セグメントの、転写活性のあるただ1つのコピーを有し、該コピーは目的の組換えポリクローナル抗体の1つのメンバーをコードするものであり、及び各コピーは各細胞のゲノムの同一の部位内に組込まれている。組換えポリクローナル製造細胞系統を構成する細胞は、例えば、抗生物質選択により、目的の別個の核酸セグメントの組込まれたコピーを保有する能力について選択される。かかる製造細胞系統を構成し得る細胞は、例えば、細菌、菌類、真核細胞、例えば、酵母、昆虫細胞又は哺乳類細胞、特に、不死化哺乳類細胞系統、例えば、CHO細胞、COS細胞、BHK細胞、骨髄腫細胞(例えば、Sp2/0細胞、NS0)、NIH3T3、YB2/0及び不死化ヒト細胞、例えば、HeLa細胞、HEK293細胞又はPER.C6であり得る。
【0037】
用語「組換え抗体」は、細胞と天然においては関連していない蛋白質のコーディング配列を含む発現ベクターを用いてトランスフェクションした細胞又は細胞系統から発現された1つの抗体分子又は幾つかの分子を表すために用いられる。抗体分子が多様であるか又は異なるならば、用語「組換えポリクローナル抗体」はポリクローナル抗体の定義に従って適用される。
【0038】
用語「リコンビナーゼ」は、2つ以上の組換え部位または組換え認識配列の間の組換えを触媒する酵素を言う。本発明において有用なリコンビナーゼは、特定のリコンビナーゼにより認識される特異的な核酸配列をもつ特異的な組換え部位において組換えを触媒する。
【0039】
用語「リコンビナーゼ認識部位」又は「組換え部位」は、部位特異的リコンビナーゼ酵素による認識及び組換えの両方のための部位として機能する核酸配列を表す。一般的に、リコンビナーゼ認識部位は、コア配列(6−8bp長)に隣接する短い逆方向反復エレメント(11−13bp長)から構成される。リコンビナーゼ認識部位は、リコンビナーゼ標的部位、組換え部位又は組込み部位とも言われ、及び例えば、FLP−部位、loxP−部位、attP/attB−部位、six−部位、gix−部位、R−部位及びRes−部位を含む。リコンビナーゼがその間の組込み、除去又は反転事象を触媒し得るリコンビナーゼ認識部位は、マッチング(matching)リコンビナーゼ認識部位と言われ、例えば、該部位は整合すると考えられる2つの野生型FRT部位であり、並びにattB部位及びattP部位はリコンビナーゼ認識部位のマッチング対を構成し、一方で、野生型のFRT部位及び突然変異体のFRT部位はリコンビナーゼ認識部位のマッチング対を必ずしも構成するとは限らない;これは突然変異に依存し得る。これらの用語は、組込み部位なる用語と同義的にも用いられ得る。
【0040】
用語「RFLP分析」は、「制限フラグメント長多型分析」、すなわち、核酸分子フラグメントの移動性のゲルパターンが制限酵素で切断された後に分析される方法を言う。
【0041】
用語「スクランブリング」は、各メンバーがVH及びVL鎖のごとき2つの異なるポリペプチド鎖から各々構成される、ポリクローナル蛋白質の2つ以上の異なるメンバーが個々の細胞から発現される状況を表す。この状況は、個々の細胞がゲノム内に1以上の遺伝子エレメント対を組込む場合に生じ得、ここで、遺伝子エレメントの各対はポリクローナル蛋白質の異なるメンバーをコードする。かかる状況では、遺伝子エレメントから発現されたポリペプチド鎖の意図せぬ組み合わせが生じ得る。「VH−VL鎖スクランブリング」は上記したスクランブリングの一例である。VH及びVLポリペプチドの意図せぬ組み合わせが細胞から生じた場合にスクランブリングが起こり、ここで、2つの異なるVH及びVLコーディング核酸セグメントは同一細胞の転写活性部位に組込まれる。スクランブルされたかかる抗体分子が元々の特異性を保持する可能性は低く、それ故に、いかなる治療効果も有さないだろう。
【0042】
用語「選択」は、細胞が特定の特性を獲得し、該特性を獲得していない細胞からの単離を可能にする方法を表すために用いられる。かかる特性は、細胞毒性物質に対する耐性又は必須栄養素、酵素又は色の生成であり得る。
【0043】
用語「選択可能なマーカー遺伝子」、「選択マーカー遺伝子」、「選択遺伝子」及び「マーカー遺伝子」は、目的の1または複数の遺伝子と合わせて細胞へ同時導入される、選択可能なマーカーをコードする遺伝子(例えば、特定の抗生物質のごときある種の細胞毒性薬に対する耐性を付与する遺伝子、成長培地から枯渇され得る必須栄養素を産生し得る遺伝子、分析可能な代謝産物を産生する酵素をコードする遺伝子、又は例えばFACSにより選別され得る着色蛋白質をコードする遺伝子)を表すために用いられる。
【0044】
本明細書中、用語「トランスフェクション」は、外来性DNAを1つの細胞内に導入するための広義語として用いられる。この用語は、外来性DNAを1つの細胞内に導入するための他の機能的に均等な方法、例えば、ドナー細胞及びアクセプター細胞の形質転換、感染、形質導入又は融合を含むことも意味される。
【0045】
本明細書中用いられる用語「ベクター」は、異なる遺伝的環境間の輸送及び/又は宿主細胞内での発現のために核酸配列を挿入できる核酸分子を言う。本明細書中、ゲノム内の所定の特異的遺伝子座において宿主細胞のゲノム内への組込みを行い得るベクターを「部位特異的組込み用ベクター」と呼ぶ。ベクターがその中に挿入された核酸配列の転写のための調節エレメントを有するならば(少なくとも1つの適切なプロモーター)、本明細書中、該ベクターを「発現ベクター」と呼ぶ。用語「アイソタイプコーディングベクター」は、抗体アイソタイプをコードする核酸配列を有するベクターを言う。本明細書中、「ファージミドベクター」及び「ファージベクター」は同義的に用いられる。用語「プラスミド」及び「ベクター」は同義的に用いられる。本発明は、同等の機能を果たすその他の形態のベクター、例えば、適切な宿主内で所望の蛋白質の産生を導き得るプラスミド、ファージミド及びウイルスゲノム又は任意の核酸分子を含むことが意図される。
【0046】
以下の記載様式「VH:LC」及び「VH:VL」は、可変重鎖配列および軽鎖又は可変軽鎖配列の特定の対を示す。VH及びVL配列のかかる特定の対は、核酸配列又はポリペプチドのいずれかであり得る。本発明において、特定のVH及びVL対はRhD抗原に対する結合特異性を付与する。
【0047】
省略形:Ab=抗体。抗−RhD rpAb=抗−RhD組換えポリクローナル抗体。CASY=セルカウンター+解析システム。ELISA=酵素結合免疫吸着検定法。FRT=Flpリコンビナーゼ標的。GFP=緑色蛍光蛋白質。HDN=新生児溶血性疾患。ITP=特発性血小板減少性紫斑病。LTR=長い末端反復。mAb=モノクローナル抗体。pMCB=ポリクローナルマスターセルバンク。PVDF=二フッ化ポリビニリデン。pWCB=ポリクローナルワーキングセルバンク。RBC=赤血球細胞。RhD=Rhesus D。RhD(−)=RhD陰性。RhD(+)=RhD陽性。RhDVI=RhDカテゴリーVI抗原。抗−D=過免疫ドナーに由来するRhDに対するポリクローナル免疫グロブリン調製物。SV40PolyA=サルウイルス40ポリAシグナル配列。UCOE=遍在性(ubiquitous)クロマチンオープニングエレメント。5’UTR=mRNAの5’非翻訳領域。
【0048】
図の説明
図1Aは、組換えポリクローナル製造細胞系統の作成及び組換えポリクローナル抗体の産生を示すフローチャートである。1)はバルクトランスフェクションストラテジーを示し;2)は半バルクトランスフェクションストラテジーを示し、及び3)は個々のトランスフェクションストラテジーを示す。A)は抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーを示し(横線)、矢じりはベクターのグループ化を示す。ストラテジー1では、ベクターはまとめてグループ化され、ストラテジー2では、それらはより小さなフラクション(半バルク)にグループ化され、一方でストラテジー3では、それらは互いに分離されている(個別)。B)はトランスフェクションを示し、ここで、チューブの数はライブラリーを構成するベクターのグループ化に依存する。C)は、宿主細胞ゲノム内に抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントを部位特異的に組み込んだ細胞の選択を示し、D)は、ポリクローナル抗−RhD抗体ライブラリーストックの作成を示し、ここで、組込まれた抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントを構成する選択された細胞はフリーザー内で貯蔵される。所望により、個々のクローンを貯蔵するか又は該クローンをプールする。E)は製造段階の開始を示し、ここで、ストックからのクローンは解凍される(より小さなフラクション又はプールのいずれかから個別に)。F)は産生段階を示し、ここで、ポリクローナル細胞系統はより大きなバイオリアクターでの播種のために増殖される(示されていないが、中間播種段階が選択される)。ストラテジー2及び3では、これは、ポリクローナル細胞クローンストックがもはや個々のクローン又は半バルクフラクションとして維持されないが、細胞群内にプールされ、組換えポリクローナル製造細胞系統(このポリクローナル製造細胞系統は凍結ストックとして貯蔵されてもよい)を形成する段階である。G)はバイオリアクター製造から得られた最終産物を示す。産生段階の後、該産物の精製及び特徴付けのためにポリクローナル蛋白質組成物を回収した。
【0049】
図1Bは、個別にトランスフェクトされた宿主細胞に由来するpWCB/pMCB及びサブ−pWCBの作成及びポリクローナル製造細胞系統の播種を示すフローチャートである。A)は、可変領域コーディング核酸セグメントから構成されるライブラリーを示し、矢じりは該ライブラリーの個々のメンバーを示す。B)はトランスフェクションを示し、ここで、ライブラリーの個々のメンバー各々を用いて宿主細胞をトランスフェクトする。トランスフェクションはライブラリーの個々のメンバーを含むだけの数の別個のチューブを必要とする。C)は、それらのゲノム内に可変領域コーディング核酸セグメントを安定な様式で組込んだ細胞の選択を示し、D)は、例えば、FACSにより分類された単一細胞のクローニング及び分析による、同様の増殖速度及び/又は生産性を有する個々の細胞系統の選択を示す。この段階はpWCB/pMCBの作成において随意であり、及び段階Eの後に行ってもよい。E)は、凍結ライブラリーストックの作成を示し、該ストックは、トランスフェクションのために用いた可変領域コーディング核酸セグメントから構成されるライブラリーの1つのメンバーを各々発現するn倍の個々の細胞系統から構成される。所望により、pWCB/pMCBの作成の前に個々のクローンを凍結ライブラリーストック内で貯蔵してもよい。F)は、個々の細胞系統の混合を示し、ここで、個々のライブラリーストックからのアンプルを解凍し、次いで、別個の細胞培養にて増殖し、次いで、各培養物に由来する所定数の細胞を単一の細胞培養物に混合する。G)は、Fの混合した細胞培養物からのアリコートを凍結し、それにより、一群のバイアルを作成することによる、pWCB/pMCBの作成を示す。H)は、pMCBに由来する単一バイアルを増殖させ、次いで、pMCBに由来するバイアル中とほぼ同数の細胞を有するアリコートとして凍結することによる、サブ−pWCBの作成を示す。I)は、pWCB又はサブ−pWCBのいずれかから開始される播種手順(示されていないが、中間播種段階)からのポリクローナル製造細胞系統の作成を示す。
【0050】
図2は、ファージディスプレイベクター:Em351,イー・コリベクターを示し、該ベクターを用いて、各々AscI/XhoI及びNheI/NotI制限部位を表示させた、適切なドナーから増幅した重鎖可変領域及び軽鎖フラグメントをベクター内に挿入することにより、抗−RhDFabファージディスプレイライブラリーを作成する。該ベクターは、以下のエレメントを含む:proAmp及びAmp=プロモーター及びアンピシリン耐性遺伝子。pUC Ori=複製起点。ヒトCH1=ヒト免疫グロブリンガンマ1重鎖ドメイン1をコードする配列。詰め込み=重鎖及び軽鎖フラグメントの挿入の間に除去される無関係な配列インサート。p tac及びp lac Z=細菌プロモーター。PelB=イー・コリの細胞膜周辺腔に対するFabの発現を標的するための、修飾された細菌PelBリーダー。Mycut=プロテアーゼ認識部位。Amberストップ=amber終止コドン。gIII=ファージM13切断遺伝子III(198塩基〜C−末端)。
【0051】
図3A−Cは、56個の選択されたRhDクローンの可変重鎖(VH)をコードする核酸配列のアライメントを示す。個々のクローン名をアライメントの右に示し、及びCDR領域の位置をアライメントの上に示す。
【0052】
図4A−Eは、56個の選択されたRhDクローンの軽鎖全体をコードする核酸配列のアライメントを示す。個々のクローン名及びカッパ又はラムダ鎖であるかの表示をアライメントの右に示し、及びCDR領域の位置をアライメントの上に示す。
【0053】
図5は、56個の選択されたRhDクローンのVHに対応するアミノ酸配列のアライメントを示す。個々のクローン名をアライメントの右に示し、及びCDR領域の位置をアライメントの上に示す。
【0054】
図6A−Bは、56個の選択されたRhDクローンのVLに対応するアミノ酸配列のアライメントを示し、ここで、(A)はカッパ鎖及び(B)はラムダ鎖に対応する。個々のクローン名をアライメントの右に示し、及びCDR領域の位置をアライメントの上に示す。
【0055】
図7は、Neo発現ベクター:哺乳類発現ベクターの略図を示し、該ベクターを用いて、宿主細胞ゲノム内への抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントの部位特異的組込みを容易にする。該ベクターは以下のエレメントを含む:pro amp及びAMP=プロモーター及びアンピシリン耐性遺伝子。pUC起点=pUC複製起点。制限酵素部位:XhoI、AscI、NheI及びNotI。P1/P2=軽鎖及びIgG重鎖各々の発現を駆動するプロモーターセット。LH=重鎖リーダー配列。VH=抗−RhD Abの可変重鎖に関するコーディング配列。ヒトIgG1定常重鎖=ヒト定常IgG1重鎖に関するコーディング配列。RBGPolyA=ウサギβ−グロビンポリAシグナル配列。BGHポリA=ウシ成長ホルモンポリAシグナル配列。LK=カッパ鎖リーダー配列。軽鎖=抗−RhD Abの軽鎖に関するコーディング配列。FRT部位=Flpリコンビナーゼ認識配列。ネオマイシン=ネオマイシン耐性遺伝子。SV40ポリA=サルウイルス40ポリAシグナル配列。
【0056】
図8は、9週間の培養後のアリコート3948及び3949に由来する抗−RhD rpAb組成物の陽イオン交換クロマトグラムを示す。下部ダイアグラムはアリコート3949に対応し、及び上部はアリコート3948に対応する。下部ダイアグラムと区別するために上部ダイアグラムのY−軸の位置をずらした。ピークA−Jは、正味電荷が異なる抗体及び電荷不均一性を示す個々の抗体を示す。
【0057】
図9は、11週間の培養後の抗−RhD rpAb産生ポリクローナル細胞系統アリコート3948+及び3949+(FCW065)に由来するRT−PCR産物についてのHinfI RFLP分析を示す、ゲル写真である。特異的クローンに割り当てられ得るバンドが特定される。
【0058】
図10は、8つの異なる抗−RhD抗体に関する、抗−RhD rpAbを発現するポリクローナル細胞培養物に由来する抗−RhD抗体軽鎖のT−RFLPパターンを示す。8つの異なる抗−RhDクローンは矢印で示されるピークに割り当てられた。
【0059】
図11は、25個の異なる抗−RhD抗体に関する、特定の時間ポイントでの、抗−RhD rpAbを発現するポリクローナル細胞培養物に由来する抗−RhD抗体重鎖可変領域のT−RFLPパターンを示す。25個の異なる抗−RhDクローンは矢印で示されるピークに割り当てられた。
【0060】
図12は、5週間培養されたポリクローナル細胞培養物に由来する8つの異なる抗−RhD重鎖コーディング配列のT−RFLPにより評価されたcDNA分布を示す。
【0061】
図13は、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて分析した、8つの異なる抗体に関する抗−RhD rpAbの相対的含有量(%)を示す。積分されたクロマトグラフィーピークを、同一の条件下で陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて個別に分析された単一抗体から得られた保持時間及びピークパターンから、個々の抗体に割り当てた。
【0062】
図14は、4週間の培養後に得られた試料に由来する25個の個々のメンバーに関する抗−RhD rpAbの陽イオン交換クロマトグラムを示す。ピークAC1〜25は、正味電荷が異なる抗体及び電荷不均一性を示す個々の抗体を示す。
【0063】
図15については、(A)は、5Lスケールでの流加培養により産生された25個の個々のメンバーに関する、抗−RhDpAbの3つのバッチ、Sym04:21、Sym04:23及びSym04:24の能力の比較を示す。RhD−陽性赤血球に対するpAbの結合はFACSにより測定され、及び平均蛍光強度(MFI)はng/ml単位でのpAb濃度の関数として示される。さらに、複合ADCC/貪食性アッセイにおいて、25個の個々のメンバーに関する抗−RhDpAbの機能活性をSym04:21及びSym04:24において測定した。(B)は、ng/ml単位でのpAb濃度の関数として、RhD−陽性及びRhD−陰性赤血球の特異的溶解のパーセンテージとしてのADCC結果を示す。(c)は、ng/ml単位でのpAb濃度の関数として、RhD−陽性及びRhD−陰性赤血球の貪食性のパーセンテージを示す。
【0064】
図16は、以下の捕獲溶出(capture elution)(A)、Sephadex G−25(B)、DEAE−Sepharose(C)及びMEP Hypercel(D)の後に収集された物質により示される25個の個々のメンバーを含む抗−RhD rpAb試料の、下流プロセッシングの間の異なる段階で採取された試料に関する、陽イオン交換クロマトグラフィー特性を示す。
【0065】
発明の詳細な記載
組換えポリクローナル蛋白質発現系
本発明は、1又は数個の細胞系統からの抗−RhD組換えポリクローナル抗体(抗−RhD rpAb)の一貫した製造のための組換えポリクローナル抗体発現系を提供する。
【0066】
本発明の製造方法の主な利点の1つは、抗−RhD rpAbを構成する全てのメンバーが1つ又は数個のバイオリアクター又はそれらの等価物内で産生され得ることである。さらに、抗−RhD rpAb組成物は、該過程中に抗−RhD rpAbを構成する個々のメンバーを分離する必要なく、単一の調製物としてリアクターから精製され得る。対照的に、精製された抗−RhDモノクローナル抗体(抗−RhD mAb)を混合することにより抗−RhD rpAb組成物を模倣したいならば(例えばWO 97/49809において提案されているような)、組成物中に含まれるべき各抗−RhD mAbをバイオリアクター内で別々に製造する必要があり、及び恐らくは該抗体も個別に精製されよう。抗−RhD組換えポリクローナルを産生するための本発明の方法と比較すると、抗−RhD mAb混合物のかかる産生は非常に費用がかかり、並びに時間及び空間を必要とする。故に、WO 97/49809に記載されている方法は必然的に、かかる混合物中に含まれ得る抗−RhD mAbの数に対して実際的な限界をもたらし得るが、本明細書中に記載した技法は、一般的に、所望するだけの個々のメンバーを伴うポリクローナル抗体を産生し得る。さらに、本発明の抗−RhD rpAbの個々のメンバーは完全に同一の条件下(同一の製造リアクター中)で産生され、故に、バッチ毎のわずかな産生差異が産物の特性を変化し得る抗−RhD mAbの混合物と比較して、均一な翻訳後修飾が確かなものとなる。
【0067】
産生期間中にポリクローナル性を特徴付ける多様性を有意に損なうことなく、抗−RhD rpAbを発現し得る組換えポリクローナル製造細胞系統を得るために、ポリクローナル製造細胞系統を構成する細胞混合物中の個々の細胞は、可能な限り均一である必要があろう。
【0068】
無作為な組込みを用いる慣用的なモノクローナル抗体発現技法は組換えポリクローナル抗体の産生のために望ましいものではなく、というのも、該過程の無作為性は、組み込まれた核酸配列の数及び位置を細胞毎に変動させるためである。故に、かかる伝統的プロトコルにより組換えポリクローナル抗体が産生されるならば、ポリクローナル蛋白質の個々のメンバーの可変的な発現速度、及び組込まれた核酸セグメントの位置効果に起因する遺伝的不安定性を伴う不均一な細胞培養物をもたらす確率が高くなり得る。これにより、ポリクローナル蛋白質を構成するメンバーの偏向発現がもたらされる確率が最も高くなり得る。
【0069】
故に、所定のゲノム部位内への抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントの導入が望ましく、これは原則として相同組換えにより成し遂げられ得る。しかし、非正統的組換え事象が優勢であるために、相同組換えは非常に効率が悪く、及び単一細胞のゲノム内への変異体抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントの幾つかのコピーの導入ももたらし得る。
【0070】
これらの問題を回避するために、本発明の発現系は個々の宿主細胞のゲノム内への部位特異的組込みを利用する。本発明の系は、抗−RhD rpAbをコードする変異体核酸セグメントを含む部位特異的組込み用の抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーを包含する。ライブラリーに由来する個々の核酸セグメントは、所定の組換え認識部位での部位特異的組込み又はリコンビナーゼ介在カセット交換法により、個々の細胞内の同一の予め確定された染色体位置に挿入され、それにより、個々の細胞が抗−RhD rpAbの異なるメンバーを発現する1つの細胞系統が生成される。以下に記載するように、複数の組込みは、組換えポリクローナル製造細胞系統を構成する細胞の幾つかで生じ得る。しかし、これは、個々の細胞の大部分が抗−RhD rpAbの単一の異なるメンバーを発現する限りは、問題を引き起こすものとは見なされない。好ましくは、これは、個々の細胞の大部分のゲノム中に単一の組込み体を確認するか、又はより多くの組込み体が存在するならばただ1つのものが転写されていることを確認することにより、成し遂げられる。
【0071】
Cre、Flp、ベータ−リコンビナーゼ、Gin、Pin、PinB、PinD、R/RS、Tn3リゾルベース、XerC/Dインテグラーゼ/リコンビナーゼ、ラムダインテグラーゼ又はファージΦC31インテグラーゼのごときリコンビナーゼが用いられ得る。染色体位置内への組込みのために適切なリコンビナーゼは、(i)前記核酸セグメントが導入される細胞自体のゲノムからの発現により、(ii)細胞内に挿入されたベクターにより作動可能にコードされることにより、(iii)第2の核酸分子からの発現により、又は(iv)蛋白質として、提供され得る。好ましい一の実施態様において、ライブラリーの個々のベクター内に含まれた抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントは、抗−RhD抗体核酸セグメントの高レベルの転写及び発現を介する遺伝子座、いわゆる「ホットスポット」内に組込まれる。
【0072】
好ましくは、用いられる宿主細胞系統は哺乳類細胞系統であり、生物薬剤学的蛋白質発現のために典型的に用いられるもの、例えば、CHO細胞、COS細胞、BHK細胞、骨髄腫細胞(例えば、Sp2/0細胞、NS0)、YB2/0、NIH3T3及び不死化ヒト細胞、例えば、HeLa細胞、HEK293細胞又はPER.C6を含む。本発明ではCHO細胞が使用された。しかし、当業者は、記載された他の哺乳類細胞でCHO細胞を容易に置換でき、又はさらには、植物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、菌類及び細菌を含む他の細胞型を利用することができよう。故に、細胞型の選択は本発明に限定されるものではない。好ましい一の実施態様において、予め特徴付けられたホットスポットを含み、抗−RhD rpAbの高発現レベルを介する哺乳類細胞系統が製造のために用いられる。さらにより好ましい一の実施態様において、哺乳類細胞系統は、予め特定されたホットスポット内に位置する単一のリコンビナーゼ認識部位を含む。
【0073】
本発明のさらなる一の実施態様において、宿主細胞内の同一の染色体組込み部位を利用する部位特異的な様式で、変異体抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントは組み込まれる。単一の特異的部位内へのかかる組込みは、そうでなければ無作為組込み又はゲノム内の複数の部位内への組込みに関して見られる位置効果を最小限にする。さらに、組込みのために単一の特異的部位を用いる場合には、VH及びVL鎖間のスクランブリングが起こりにくいようだ。
【0074】
部位特異的組込み系を含む宿主細胞系統において、トランスフェクトされた個々の宿主細胞は、抗体の可変領域において観察される差異は別として、全体的に同一の抗体を発現する。故に、かかる細胞プール内の細胞の大部分は、生産性及び遺伝的安定性に関して同様の特性を示すべきであり、それ故に、この技法は抗−RhD rpAbの制御された産生の可能性をもたらす。
【0075】
VH及びVL領域、特に、CDR領域の可変性に加えて、定常領域もアイソタイプ毎に異なっていてもよい。これは、ある特定のVH及びVL対が、様々な定常重鎖アイソタイプ、例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD及びIgEを伴って産生されてもよいことも意味する。故に、抗−RhD rpAbは、可変領域(V領域)及び定常領域内の個々の抗体分子間の配列差異により特徴付けられた抗体分子を含んでいてもよい。抗−RhD rpAb組成物は、上記した任意の重鎖アイソタイプ又はそれらの組み合わせを有する抗体から構成され得る。好ましい抗−RhD rpAb組成物は、IgG1定常領域、IgG3定常領域又はIgG1及びIgG3定常領域を含む。本発明の一の好ましい実施態様において、VH及びVL対の各々又は幾つかは、ヒトIgG1、IgG3、IgA1及び/又はIgA2定常重鎖を伴って発現される。
【0076】
抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントのライブラリーを提供するために、当該分野において知られている多数の方法が利用されてもよい。VH及びVLコーディングセグメントを含む第1のライブラリーは、コンビナトリアル技法(例えば、EP 0 368 684)又は同族の対合(cognate pairing)を維持する技法(同一の細胞に由来する可変領域コーディング配列の対、未公開特許出願DK200400782の優先権を主張するWO 05/042774において記載されている)のいずれかにより作成されてもよい。さらに、VH及びVLコーディングセグメントライブラリーは、単離されたCDR遺伝子フラグメントを適切なフレームワークに挿入するか(例えば、Soderlind,E.ら.,2000.Nat.Biotechnol.18,852−856)、又は1つ以上の抗−RhDVH及びVLコーディング配列の突然変異により作成されてもよい。この第1のライブラリーは、RhDに対して結合特異性を有する抗体又はフラグメントを産生するVH及びVLコーディング核酸セグメントについてスクリーニングされ、それにより、抗−RhDAbコーディング核酸セグメントのライブラリーを作成する。特にコンビナトリアルライブラリーでは、スクリーニングは濃縮段階、例えば、いわゆるバイオパニング段階に先行される。知られているバイオパニング技法は、ファージディスプレイ(Kang,A.S.ら.1991.Proc Natl Acad Sci USA 88,4363−4366)、リボソームディスプレイ(Schaffitzel,C.ら.1999.J.Immunol.Methods 231,119−135)、DNAディスプレイ(Cull,M.G.ら.1992.Proc Natl Acad Sci USA 89,1865−1869)、RNA−ペプチドディスプレイ(Roberts,R.W.,Szostak,J.W.,1997.Proc Natl Acad Sci USA 94,12297−12302)、コバレントディスプレイ(WO 98/37186)、細菌表面ディスプレイ(Fuchs,P.ら.1991.Biotechnology 9,1369−1372)、酵母表面ディスプレイ(Boder,E.T.,Wittrup,K.D.,1997.Nat Biotechnol 15,553−557)及び真核ウイルスディスプレイ(Grabherr,R.,Ernst,W.,2001.Comb.Chem.High Throughput.Screen.4,185−192)である。FACS及び磁気ビーズソーティングも、標識された抗原を用いる濃縮(パニング)目的のために適用可能である。一般的に、RhDバインダーのためのスクリーニングは、凝集、FACS、ELISA、FLISA及び/又はイムノドットアッセイのごとき免疫検出を用いて行われる。
【0077】
スクリーニングの後、一般的に、作成されたVH及びVLコーディング核酸セグメントのサブ−ライブラリーは、スクリーニングベクターから、所望の宿主細胞内での部位特異的組込み及び発現に適する発現ベクターに移入される必要がある。該移入の間に個々のVH:VL対をコードする配列が維持されることが重要である。これは、サブ−ライブラリーの個々のメンバーを分離しておくか、並びにVH及びVLコーディング配列を1つずつ移動させるかのいずれかにより成し遂げられ得る。或いは、サブ−ライブラリーを構成するベクターはプールされ、及びVH:VL対をコードする配列は、移入の間にVH及びVLコーディング配列を共に維持したままでセグメントとして移動される。この過程は大量移入とも言われ、及びあるベクターから別のベクターへの選択された全てのVH:VL対の容易な移入を可能とする。
【0078】
本発明のさらなる一の実施態様において、抗−RhD組換えポリクローナル抗体組成物は、RhD抗原上の少なくとも1つのエピトープ、例えば、epD1、epD2、epD3、epD4、epD5、epD6/7、epD8及び/又はepD9に対して結合を示すが、RhC、c、E、e抗原に対しては結合を示さないか又は非常に弱い結合しか示さないという共通特性に基づいて定義された個々の抗体のサブセットを含む。好ましくは、抗−RhD rpAb組成物は、epD3、epD4及びepD9に結合する少なくとも1つの抗体(RhDカテゴリーVI抗原結合抗体)、及びさらには少なくとも併せて残りのエピトープepD1、epD2、epD5、epD6/7及びepD8に結合する抗体、例えば、RhDカテゴリーII又はIII抗原に対する抗体、又はカテゴリーVII抗原に対する抗体と組み合わさったRhDカテゴリーIV若しくはV抗原結合抗体から構成される。典型的に、抗−RhD rpAb組成物は少なくとも5、10、20、50、100又は500個の別個の変異体メンバーを有する。変異体メンバーの好ましい数は、5〜100の範囲であり、さらにより好ましくは、5〜50の範囲、及び最も好ましくは、10〜25の範囲である。
【0079】
本発明のさらなる一の実施態様は、抗−RhDポリクローナル抗体コーディング核酸セグメントのライブラリーを用いてトランスフェクションされた細胞群を含む、組換えポリクローナル製造細胞系統であり、ここで、該群の各細胞はライブラリーの1メンバーを発現し得るものであり、該セグメントは、抗−RhD rpAbの異なるメンバー又はフラグメントをコードし、及び前記群の個々の細胞のゲノム内の同一部位に位置し、前記核酸セグメントは、該群の前記細胞と天然においては関連していないものである。
【0080】
さらなる一の実施態様において、抗−RhD rpAbをコードする変異体核酸セグメントは全て天然に存在する配列から由来し、例えば、コンビナトリアルVH:VL対又は同族対としてドナーから単離されたものであり、及び突然変異に誘導されるものではない。
【0081】
各細胞内のゲノムの単一の特異的部位に位置する変異体核酸を含む細胞の組成物はWO02/44361に記載されている。この文献は、所望の特性を有する分子を特定するための細胞の使用を開示しているが、産生系の提供又は抗原に対する特異的結合により特徴付けられたポリクローナル抗体の提供は扱っていない。
【0082】
宿主細胞
適切な宿主細胞は、そのゲノムの1領域中に1つ以上の適切な組換え部位、すなわち、1つ以上のリコンビナーゼ酵素により認識可能であり、故に、リコンビナーゼ認識配列とも言われる核酸配列を含む。組込み体(すなわち、組込み部位内に抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントの組込まれたコピーを有する細胞)についての選択を可能とするために、組換え部位は、組換え部位に対して3’側(下流側)に位置する第1の選択遺伝子(例えば、抗生物質耐性遺伝子)に作動可能に連結される。さらに、弱いプロモーター(例えば、切断型SV40初期プロモーター)及び転写開始コドンが、耐性マーカー−コーディング領域の不可欠な部分を構成する組換え部位に対して5’側(上流側)に位置してもよい。故に、転写開始コドンは、抗−RhD rpAbをコードする抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーを用いたトランスフェクションの前に、宿主細胞内の選択遺伝子の転写開始を先導する。好ましくは、該宿主細胞系統はただ1つの組換え部位を有し、及びそれが1以上のリコンビナーゼ認識配列を有するならば、「部位特異的組込み用ベクター」のセクションで記載したようにこれらは非相同であるはずであり、及びゲノム内への単一組込みのみが可能となる。
【0083】
上記した部位特異的組込みのための宿主細胞は、DNAをその染色体内へ組込み得るか又はミニ−染色体、YAC(酵母人工染色体)、MAC(マウス人工染色体)又はHAC(ヒト人工染色体)のごとき染色体外エレメントを保持し得る任意の細胞から生成され得る。MAC及びHACはWO 97/40183において詳述されており、該文献は出典明示により本明細書の一部となる。好ましくは、CHO細胞、COS細胞、BHK細胞、骨髄腫細胞(例えば、Sp2/0又はNS0細胞)のごとき哺乳類細胞、NIH3T3のごとき繊維芽細胞、及びHeLa細胞、HEK293細胞又はPER.C6のごとき不死化ヒト細胞が用いられる。しかし、植物細胞、昆虫細胞、酵母細胞、菌類、イー・コリなどのごとき非哺乳類真核又は原核細胞も用いられ得る。
【0084】
本発明の一の実施態様において、出発材料として用いられるべき細胞系統は、単一細胞レベルに至るまで該細胞系統のいわゆる限界希釈法を行うことによりサブ−クローニングされ、次いで、目的のベクターのライブラリーでのトランスフェクションに先立ち、各単一細胞を新規細胞集団にまで増殖させる。所望により、かかるサブ−クローニングは、適当な細胞系統を選択する過程において後に実施することも可能である。
【0085】
部位特異的組込みのための宿主細胞は、弱いプロモーター(例えば、切断型SV40初期プロモーター)、転写開始コドン、開始コドンの3’側に位置する組換え部位を含む無作為組込み用プラスミドを用いたトランスフェクションにより得られてもよい。好ましくは、該組込み用プラスミドは、第1の選択遺伝子にカップリングされたマーカー遺伝子も含む。かかる組込み用プラスミドの一例は、Invitrogen(Carlsbad,CA)からのpFRT/LacZeo2である。マーカー遺伝子は、目的の核酸配列を挿入するために用いられるゲノム位置における相対的発現強度を評価するために用いられ得る。第1の選択遺伝子及びマーカー遺伝子の共発現が生じるように、マーカー遺伝子(例えば、ベータ−ガラクトシダーゼ(LacZ)、緑色蛍光蛋白質(GFP)又は細胞表面マーカー)は遺伝子融合により第1の選択遺伝子に連結され得るか、又はIRES(内部リボソーム進入部位)により転写的に連結され得る。細胞系統から細胞系統までの相対的発現レベルの評価を可能にするマーカーと、細胞に対する生存圧力(例えば、薬物耐性又は栄養枯渇)を確立する選択遺伝子の併用は、ゲノム内に組込まれたプラスミドを維持する高産生細胞を確保するために有効な方法である。特に活発な転写を伴うスポットにて挿入された組換え配列を有する細胞は、マーカー遺伝子、例えば、GFP又はLacZの高発現に至り得る。高発現体は、蛍光活性化細胞選別(FACS)により選択され、次いで、クローニングされ得る。この時点で組込み体が単一の組込み体であるか否かも分析すべきである。これは、リアルタイムPCR及びサザンブロッティングにより実施され得る。ゲノム内の所定の位置にFRT部位を有する細胞の調製は、例えば、US5,677,177に記載されていた。
【0086】
組込み用プラスミドを用いてトランスフェクションした細胞に由来する相対的発現レベルを評価するための別の方法は、上記のように産生した細胞についてさらなる組込み−除去段階を行うことである。選択された細胞のこのプールは、組込み用プラスミドの組換え部位に対応するリコンビナーゼをコードするプラスミドと、及び第1の組込み用プラスミドに同様に対応する組換え配列が先行するコーディング領域、開始コドンなしの第2選択マーカーを含む第2のプラスミドを用いて再度トランスフェクトされる。この第2のプラスミドは、適切なプロモーターにより駆動される蛍光マーカー蛋白質(例えば、GFP(または等価の蛍光蛋白質)のためのコーディング配列も含む。リコンビナーゼは、同様の組換え配列が組込み用プラスミドにより予め挿入されている宿主細胞ゲノムへのこのプラスミドの組込みを媒介する。特に活発な転写を伴うスポットにて挿入された組換え配列を有する細胞は、蛍光蛋白質の高発現をもたらし得る。高発現体は蛍光活性化細胞選別(FACS)により選択され、次いで、クローニングされる。一貫して高い発現を伴い及び挿入されたプラスミドの1つのコピーを含むクローンが、リコンビナーゼを用いてトランスフェクションされ、及び第1の選択マーカーにより選択され、第2のプラスミド配列がリコンビナーゼにより除去された細胞を同定し、第1の選択マーカーを再度機能させる。これらの細胞は転写ホットスポットにて挿入された第1の組換え配列をなお含み、及びここで目的の遺伝子の発現のために使用され得る。
【0087】
プラスミドの単一コピーの組込みの際にマーカー遺伝子の高発現を成し遂げる細胞系統が、抗−RhD抗体発現ライブラリーでのトランスフェクションのために使用される。好ましくは、宿主細胞内の組換え部位は、遺伝子又は特に活発な発現の領域、すなわち、いわゆるホットスポットに位置する。
【0088】
部位特異的組込み用ベクター
適切なベクターは、宿主細胞の構築に用いた選択遺伝子と異なる適切な選択遺伝子に連結された適切な組換え部位を含む。哺乳類細胞発現における使用に適する選択遺伝子は、栄養的選択性を付与する遺伝子、例えば、チミジンキナーゼ遺伝子(TK)、グルタミンシンテターゼ遺伝子(GS)、トリプトファンシンターゼ遺伝子(trpB)又はヒスチジノールデヒドロゲナーゼ遺伝子(hisD)を含むが、これらに限定されない。さらに、選択マーカーは、薬物耐性を付与する代謝拮抗物質耐性遺伝子、例えば、ヒポキサンチン及びチミジン欠乏培地を用いて選択され得る及びさらにはメトトレキサートを用いて選択され得るジヒドロ葉酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(dhfr)、ミコフェノール酸を用いて選択され得るキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(gpt)、真核細胞ではG418を用いて及び原核細胞ではネオマイシン又はカナマイシンを用いて選択され得るネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo)、ハイグロマイシンを用いて選択され得るハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(hyg、hph、hpt)遺伝子、ピューロマイシンを用いて選択され得るピューロマイシンN−アセチル−トランスフェラーゼ遺伝子(pac)、又はブラストサイジンを用いて選択され得るブラストサイジンSデアミナーゼ遺伝子(Bsd)である。最終的に、例えばフローサイトメトリーにより選別を可能とする蛋白質、例えば、緑色蛍光蛋白質(GFP)、神経成長因子受容体(NGFR)又は他の膜蛋白質又はベータ−ガラクトシダーゼ(LacZ)をコードする遺伝子が選択マーカーとして用いられ得る。
【0089】
本発明の一の態様において、選択可能な遺伝子は、プロモーターが先行せず、翻訳開始コドンを備えてもいない。プロモーター及びATGコドンは、選択された部位特異的組換え部位にて提供される。該ベクターが、宿主細胞のゲノム内の選択された組換え部位以外の位置で組込まれるならば、この第2の選択遺伝子の発現は、プロモーター及び開始コドンの欠如に起因して全く生じ得ない。組込みが宿主細胞のゲノム内の選択された組換え部位にて生じるならば、第2の選択遺伝子は発現され、及び第1の選択遺伝子の発現は欠失する。
【0090】
例えば、組込みは、サッカロマイセス・セレヴィシエ由来のFlpリコンビナーゼ又はその突然変異体と共に、ゲノム内及び部位特異的組込み用ベクター上のいわゆるFRT部位/Flpリコンビナーゼ認識配列(5’−gaagttcctattccgaagttcctattctctagaaagtataggaacttc−3’(配列番号1)又はその変異体)を用いて行ってもよい。しかし、Creリコンビナーゼのものを含む他のリコンビナーゼ系も同等に首尾よく用いられてもよく、及びバクテリオファージP1又はその変異体又は突然変異体由来のloxPのごとき様々なlox部位、例えば、lox66、lox71、lox76、lox75、lox43、lox44及びlox511が用いられてもよく(C.Gorman及びC.Bullock,Curr.Opinion in Biotechnology 2000,11:455−460)、attP部位及びattB部位間の組換えを行うファージインテグラーゼΦC31又はラムダインテグラーゼを用いてもよい(A.C.Grothら.PNAS 2000,97:5995−6000)。本発明において用いられ得るさらなるリコンビナーゼ系は、細菌プラスミドpSM19035由来のβ−リコンビナーゼ−six系(Rojo及びAlonso 1995)、バクテリオファージMu由来のGin−gix系(Crisona et al 1994)、Zygosaccharomyces Rouxii由来のR−RS系(Onouchi et al 1995)、又はres組換え部位を認識するTn3リゾルベース(Stark et al 1994)又はイー・コリ由来のXerC/D系(Blakely and Sherratt 1994)であるが、これらに限定されない。
【0091】
リコンビナーゼカセット介在交換(RMCE)とも言われる部位特異的組換え系のさらなる変形形態は、非相同組換え部位を利用する。かかる系において、特異的標的部位を作成するために、2つの非同一の組換え部位が宿主ゲノム内に導入される。標的隣接部位に対応する組換え部位は、目的の遺伝子を含むコンストラクトにも隣接する。かかる系はWO99/25854に記載されており、該文献は出典明示によりその全てが本明細書の一部となる。非相同組換え部位の使用は、染色体に由来する目的の遺伝子の除去を抑制することが示された。対応するリコンビナーゼが提供され、及び部位が互いに組み換え可能でない限り、非同一の組換え部位は上記した任意の組換え部位から構成され得る。例えば、非同一の組換え部位は、組込みのためにFlpリコンビナーゼを利用するFRT部位及び突然変異体FRT部位(Schlake及びBode 1994,Biochemistry 33,12746−12751)、Creリコンビナーゼを利用するloxP部位及び突然変異体非互換性loxP部位(Langerら 2002,Nucleic Res.30,3067−3077)又は組込みのためにFlp及びCreリコンビナーゼを利用するFRT部位及びloxP部位(Lauthら 2002,核酸Res.30,21,e115)から構成され得る。
【0092】
さらに、2つの異なるFRT部位を用いる系は、Verhoeyenら.,Hum.Gene Ther.2001 12,933−44において記載されている。このアプローチにおいて、組込み用プラスミドはレトロウイルス感染により宿主細胞に移入される。該プラスミドは、レポーター遺伝子及び第1の選択マーカー遺伝子並びに感染に必要とされるレトロウイルス性エレメントの組み合わせから構成される。レトロウイルス3’LTRは2つの異なるFRT部位を含む。プロモーター及び翻訳開始コドンが欠如した非機能的な第2の選択マーカー遺伝子は、これらの部位に対して3’側に位置する。レトロウイルス感染の過程の間、3’LTR配列は5’LTRに複写される。これは、各側の2つの異なるFRT部位による、レポーター遺伝子及び第1の選択マーカー遺伝子のフランキングをもたらす。外側FRT部位の間の配列は、強いプロモーターの制御下で抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントに対して交換可能である。抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントを含むカセットは、FRT部位の同一のセットによりフランキングされている。該反応はFlpリコンビナーゼにより触媒される。トランスフェクトされた交換プラスミドにおいて、IRESエレメント及び翻訳開始コドンは核酸セグメントのさらに下流側に位置する。組込まれたカセットの置換の後、FRT部位の外側の3’LTR配列に位置する非機能的選択マーカー遺伝子は、抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントを構成するカセットにより提供される翻訳開始コドンにより活性化される。負の選択マーカー(例えば、チミジンキナーゼ)が組込み用ベクター内に存在するならば、さらに交換状態が高められ得る。
【0093】
組込み用ベクターは標準的なトランスフェクションにより宿主細胞に移入され得る。この場合、組込み用カセットは、5’末端をFRT部位により及び3’末端を異なるFRT’部位によりフランキングされている。ATG−欠損の第2の耐性マーカー遺伝子は3’FRT’部位のさらに下流側に位置する。抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントに関する交換は、レトロウイルス系について記載されているように進行する。
【0094】
染色体への部位特異的組込み後の抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントの除去を阻害する別の系は、上記されたΦC31インテグラーゼである。この系は、特許出願WO 01/07572及びWO 02/08409において十分に記載されており、該文献は出典明示によりその全てが本明細書の一部となる。
【0095】
好ましくは、組込み用ベクターはアイソタイプコーディングベクターであり、ここで、定常領域(好ましくは、イントロンを含む)は、スクリーニングベクターに由来するVH及びVL含有セグメントの挿入前にベクターに存在する。ベクター内に存在する定常領域は、全重鎖定常領域(CH1ないしCH3又はないしCH4)であり得るか又は抗体のFc部分をコードする定常領域(CH2ないしCH3又はないしCH4)のいずれかであり得る。軽鎖カッパ又はラムダ定常領域も移入前に存在してもよい。存在する定常領域の数の選択は、もしあれば、用いるスクリーニング及び移入系に依存する。重鎖定常領域は、アイソタイプIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、IgA2、IgM、IgD及びIgEから選択され得る。好ましいアイソタイプはIgG1及び/又はIgG3である。
【0096】
さらに、抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントの部位特異的組込みのためのベクターは、VH及びVL鎖各々の高レベル発現を導く適切なプロモーター又は等価な配列を含む。好ましくは、プロモーターは哺乳類起源である。VH及びVLコーディング配列は組込みのために用いられるベクター内に対として置かれ(ベクター分子あたり1対)、それにより、組込み過程を通してそれらが一緒にあることを確認する。好ましくは、プロモーターは抗−RhD抗体コーディング核酸セグメント内に位置する。双方向性発現のために、発現ベクター内では頭−頭のプロモーター配置が用いられる(図7)。一方向性発現のために、一方はVH遺伝子エレメントの前にあり及び他方はVL遺伝子エレメントの前にある2つのプロモーター、或いは重鎖及び軽鎖遺伝子エレメント間のIRES配列と組み合わせたVH又はVLの前にある1つのプロモーターを用いて発現を成し遂げ得る。
【0097】
機能的リーダー配列をコードする核酸配列は、発現ベクター内に含まれ、小胞体又は細胞小器官のごとき細胞内の特異的位置に遺伝子産物を誘導し得る。強いポリアデニル化シグナル配列は重鎖及び軽鎖コーディング配列の3’側に位置し得る。ポリアデニル化シグナルは、新生RNA転写産物の終結及びポリアデニル化を確実なものとし、及び伝達安定性に相関している。
【0098】
部位特異的組込みのための発現ベクターは、組込み部位における発現を増大するために、さらなる転写調節エレメント、例えば、エンハンサー又はUCOE(遍在性クロマチンオープニングエレメント)を有し得る。該エンハンサーは、転写に関与する細胞の蛋白質と特異的に相互作用する核酸配列である。UCOEはクロマチンを開くか又はクロマチンを開状態に維持し、作動可能に連結された遺伝子の再現可能な発現を容易にする(WO00/05393に詳述されている;該文献は出典明示によりその全てが本明細書の一部となる)。上記した調節エレメントの1つ以上が宿主細胞の染色体に組込まれる場合、それらは異種調節エレメントと呼ばれる。
【0099】
ポリクローナル蛋白質の高レベル発現のための発現系の確立
核酸配列を細胞内へ導入するための方法は当該分野において知られている。典型的に、これらの方法は、目的の配列を細胞、ゲノム又は染色体外エレメント内へ導入するためのDNAベクターの使用を含む。細胞のトランスフェクションは、リン酸カルシウム沈降、電気穿孔法、マイクロインジェクション、リポソーム融合、RBCゴースト融合、原形質融合などを含む、当業者に知られている多数の方法により達成されてもよい。
【0100】
宿主細胞系統のトランスフェクションのために、抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーが用いられ、ここで、各個々のベクターは抗−RhD rpAbの異なるメンバーをコードする核酸セグメントの1つの単一コピーを含む。抗−RhD抗体発現ベクターのこのライブラリーは集合的に抗−RhD rpAbをコードする。部位特異的組込みに適するベクターは前セクションに記載した。抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントのライブラリーを構成する個々のベクターは、単一の組成物中に一緒に混合され得るか、又は抗−RhD rpAbの個々のメンバーをコードする個々のベクターは、別個の組成物中か、又は1つの組成物中の約5〜50個の個々のライブラリーのベクターの混合物中に維持され得る。
【0101】
組換えポリクローナル製造細胞系統の作成及びかかる細胞系統に由来する組換えポリクローナル抗体の産生は、幾つかの異なるトランスフェクション及び製造ストラテジーにより獲得できる。これらのストラテジーは図1Aに示されており、及び以下により詳細に記載されている。
【0102】
組換えポリクローナル製造細胞系統を産生する1つの方法は、宿主細胞系統のトランスフェクションのために、単一の組成物中に共に混合されたベクターのライブラリーを使用することである。この方法はバルクトランスフェクション又は大量トランスフェクションと呼ばれる(該ライブラリーの個々のメンバーの全ては1つのチューブ中で宿主細胞系統内にトランスフェクトされる)。一般的に、既に記載されたベクター及び宿主細胞の設計により、確実に、適切な選択によりポリクローナル細胞系統を得ることができよう。かかる細胞系統において、個々の細胞の大部分は、抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーに由来する抗−RhD rpAbの異なるメンバーをコードする核酸セグメントの1つのコピーをゲノム内に組み込む。核酸セグメントの単一のコピーは細胞群中の各細胞のゲノムの単一の特異的部位内に組み込まれ、それにより、抗−RhD rpAbの個々のメンバーを発現する個々の細胞から構成されるポリクローナル細胞系統を産生する。好ましくは、抗−RhD rpAb製造の開始前に、ポリクローナル細胞系統の凍結ストックを生成する。
【0103】
組換えポリクローナル製造細胞系統を産生する別法は、トランスフェクション前に、抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーを約5〜50個の個々のライブラリーベクターを含むフラクションに分割することである。好ましくは、ライブラリーのフラクションは、10〜15個の個々のベクターを構成する。次いで、各組成物を宿主細胞のアリコートにトランスフェクトする。この方法は半バルクトランスフェクションと呼ばれる。トランスフェクトされたアリコート数は、ライブラリーのサイズ及び各フラクション中の個々のベクターの数に依存し得る。例えば、ライブラリーが50個の別個の変異体メンバーを構成し、それが組成物中、10個の別個の変異体メンバーを含むフラクションに分割されるならば、宿主細胞の5つのアリコートが、元々のライブラリーの別個のフラクションを構成するライブラリー組成物を用いてトランスフェクションされる必要があろう。宿主細胞のアリコートが部位特異的組込みのために選択される。好ましくは、別個のアリコートが別々に選択される。しかし、それらは選択前にプールされ得る。製造のための所望のポリクローナル細胞系統を得るために、凍結ストックを作成する前、ストックから回収された直後又は短い増殖時間の直後にアリコートが混合され得る。所望により、細胞のアリコートは産生を通じて別々に保たれ、及びポリクローナル抗体組成物は、産生前の細胞のアリコートではなくむしろ各アリコートの産物を混合することによりアセンブリされる。
【0104】
組換えポリクローナル製造細胞系統を産生する3番目の方法は、ハイスループット方法であり、ここで、宿主細胞は、抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーを構成する個々のベクターを用いて別々にトランスフェクトされる。この方法は個々のトランスフェクションと呼ばれる。好ましくは、個別にトランスフェクトされた宿主細胞は部位特異的組込みのために別々に選択される。しかし、それらはまた選択前に別々にプールされ得る。選択時に産生された個々の細胞クローンは増殖時間及び組込みパターンに関して分析されてもよく、及び好ましくは、同様の増殖速度及び単一の部位特異的組込み体を有するものが凍結ライブラリーストックを作成するために用いられる。ストックを作成する前、ストックから回収した直後又は短い増殖時間の直後に、個々の細胞クローンを混合して、所望のポリクローナル細胞系統を得ることができる。或いは、個別にトランスフェクトされた宿主細胞はさらに早期、すなわち、選択が行われる前に混合される。
【0105】
上記した製造ストラテジーにおける共通の特徴は、抗−RhD rpAbを構成する全ての個々のメンバーが、1個又は約5〜最大10個の限られた数のバイオリアクター中で産生され得ることである。唯一の差異は、組換えポリクローナル製造細胞系統を構成する細胞群を産生することを選択する段階である。
【0106】
抗−RhD rpAbの発現及び産生のために用いられる宿主細胞系統は、リコンビナーゼ酵素により認識可能な少なくとも1つの核酸配列を有する。かかる宿主細胞系統の調製は「宿主細胞」のセクションに記載した。
【0107】
好ましくは、部位特異的組込みのためのベクターは、高レベル発現を媒介する所定の遺伝子座、いわゆるホットスポット内に組み込まれる。
【0108】
発現レベルを増大させる必要があるならば、DHFR遺伝子又はグルタミンシンテターゼ(GS)遺伝子に関する選択を用いて遺伝子増幅が実施され得る。これは、かかる選択マーカーを含むベクターの使用を必要とする。
【0109】
以下の記載は、組換えポリクローナル抗体製造細胞系統の獲得方法の一例であり、ここで、鎖スクランブリングは存在するとしても最小限である。
【0110】
可変重鎖及び全カッパ軽鎖に囲まれた頭−頭構築物のごとき、反対の転写方向に配置した2つのプロモーターを有する構成的発現用の汎用プロモーターカセットを含む核酸セグメントが構築され、FRT部位及びネオマイシン耐性遺伝子及び重鎖定常領域を含む部位特異的組込み用ベクター内への全コンストラクトの移入を可能とする。誘発的発現用プロモーターカセットも用いられ得ることが熟慮される。さらに、該プロモーターは、一方向性転写のために頭ー尾(head−to−tail)で配置され得る。安定にlacZ−ゼオシン融合遺伝子を発現するCHO−Flp−In細胞(Invitrogen,Carlsbad,CA)を実験に用い、細胞に抗生物質ゼオシン耐性を付与する。細胞をゼオシン含有の適切な培養培地中に維持する。Flpリコンビナーゼを発現するプラスミド及び抗−RhD rpAbをコードする部位特異的組込み用抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリー及び異なる選択マーカー(ネオマイシン)を用いて、細胞をまとめて共トランスフェクトする。トランスフェクション後、細胞をネオマイシンの存在下で培養する。次いで、好ましくは、ネオマイシンに耐性を示す細胞を懸濁液中及び無血清条件下での増殖に付し、これは1又は2段階で、及び選択圧有り又は無しで行われ得る。或いは、細胞のトランスフェクション前に、細胞を懸濁液中の無血清条件下での増殖に付す。ポリクローナル細胞系統が適切な条件に適応する場合、スケールアップは異なる培養系、例えば、慣用的な小型培養フラスコ、Nunc多層セルファクトリー、小型高収率バイオリアクター(MiniPerm、INTEGRA−CELLine,wavebags,BelloCell)及びスピナーフラスコないし中空繊維及びバイオリアクターを用いて開始され得る。適切な産生時間及び最終のバイオリアクターサイズの選択は、所望する、バッチからの蛋白質収率及び細胞系統からの発現レベルに依存する。該時間は2〜3日から最高3ヶ月まで様々であってもよい。ELISAを用いて抗体産生について細胞を試験する。発現された抗−RhD rpAbを上清から単離する。抗−RhD rpAbを精製し、次いで、特徴付けた。精製及び特徴付け手段の例は以下に示す。
【0111】
クローン多様性/ポリクローナル性
ポリクローナル抗体の特性の1つは、それが多数の個々の抗体分子から構成されていることであり、ここで、各抗体分子はポリクローナル抗体の他の分子と相同であるが、ポリクローナル抗体の個々のメンバー間のアミノ酸配列における差異により特徴付けられた可変性も有する。通常、これらの差異は可変領域、特に、CDR領域、CDR1、CDR2及びCDR3に限定される。ポリクローナル抗体のこの可変性は、機能的レベルにおける多様性、例えば、1つ以上の標的上に位置する同一又は異なる抗原上の異なる抗原決定基に関する様々な特異性及び親和性としても説明され得る。組換えポリクローナル抗体において、該多様性は、ドナー由来の免疫グロブリン産物において観察される多様性のサブセットを構成する。かかるサブセットを慎重に選択し、次いで、所望の標的抗原、この特定事例においてはRhD抗原に結合するその能力に関して特徴付けた。
【0112】
組換えポリクローナル抗体の産生に関する1つの関心事は、クローン多様性が最終産物中で維持されているか否かということであり得る。抗−RhD rpAbを発現する細胞に由来する(RT)−PCR産物のRFLP又はシークエンスにより、クローン多様性を分析してもよい。細胞系統により産生された抗−RhD rpAbについての機能的試験(例えば、ELISA)、個々のメンバーに対する抗−イディオタイプ抗体、又はクロマトグラフィー法により、蛋白質レベルでの多様性を分析できる。
【0113】
クローン偏向性は、もしあるならば、トランスフェクションに用いた初めのライブラリーのクローン多様性を抗−RhD rpAbを発現する細胞のプール(ポリクローナル細胞系統)に見出される多様性と比較することにより、評価され得る。
【0114】
抗−RhD rpAbのクローン多様性は、ポリクローナル組成物の個々のメンバーの分布として評価され得る。この分布は、トランスフェクションの間に細胞系統内に最初に導入された異なるコーディング配列の数と比較した、最終ポリクローナル抗体組成物中の異なる個々のメンバーの総数として評価され得る。この場合、トランスフェクションにおいて最初に用いたコーディング配列の少なくとも50%が最終の抗−RhD rpAbの異なる個々のメンバーとして特定され得る場合に、十分な多様性が獲得されたと考えられる。好ましくは、トランスフェクションに用いた抗−RhD抗体コーディング配列の少なくとも75%が最終組成物中の抗体として特定され得る。さらにより好ましくは、トランスフェクションに用いた抗−RhD抗体コーディング配列の少なくとも85%〜95%、及び最も好ましくは100%が、最終組成物中の抗体として特定され得る。
【0115】
抗−RhD rpAb組成物の個々のメンバーの分布は、個々のメンバー間の相互分布に関しても評価され得る。この場合、組成物のどの単一のメンバーも最終抗−RhD rpAb組成物中の個々のメンバーの総数の75%以上を構成しないならば、十分なクローン多様性が獲得されたと考えられる。好ましくは、どの個々のメンバーも、最終ポリクローナル組成物中の個々のメンバーの総数の50%以上、さらにより好ましくは、25%、及び最も好ましくは、10%を超えない。ポリクローナル組成物中の個々のメンバーの分布に基づくクローン多様性の評価は、RFLP分析、配列分析又は蛋白質分析、例えば、ポリクローナル組成物の特徴付けに関して下記するアプローチにより行われ得る。
【0116】
クローン多様性は、a)クローニング過程の間、b)細胞増殖における差異の結果として、又はc)複数の組込み体のスクランブリングにより生じ得るクローン偏向性の結果として減少されてもよい。かかる偏向性が生じるならば、クローン多様性の喪失のこれらのソースの各々は、本明細書に記載した方法に若干の修飾を加えることにより容易に改善される。
【0117】
適切なベクター内への可変ドメインのクローニングにより導入される偏向性を制限するために、クローニング偏向性が制限されるように、1つのベクターから別のベクターへの目的遺伝子の移入が設計されてもよい。大量移入技法及び増幅に用いるイー・コリ株の慎重な選択はクローニング偏向性を軽減し得る。別の可能性は、スクリーニングベクター及び部位特異的組込み用ベクター間の、ポリクローナル抗体の個々のメンバーをコードする各ポリヌクレオチドの個々の移入を行うことである。
【0118】
長期間にわたる細胞系統内の個々の細胞の細胞増殖速度における差異が抗−RhD rpAb発現に偏向性をもたらし、細胞系統により発現された抗−RhD rpAbの幾つかのメンバーの存在を増大又は減少させることが可能である。増殖速度におけるかかる差異についての1つの理由は、初めのトランスフェクションのために用いられる開始細胞系統を構成する細胞集団が不均一であることであり得る。細胞系統内の個々の細胞は長期間にわたって示差的に増殖することが知られている。より均一な出発材料を確保するために、目的のライブラリーでのトランスフェクションの前に、単一細胞レベルまで細胞系統を限界希釈し、次いで、各単一細胞を新規細胞集団にまで増殖させることにより、細胞系統のサブ−クローニングが行われてもよい(いわゆる限界希釈による細胞のサブ−クローニング)。次いで、これらの細胞集団の1つ以上をそれらの増殖及び発現特性に基づいて出発材料として選択する。
【0119】
さらに、部位特異的組込み体を得た唯一の細胞が生存し得ることを確認するために用いられる選択圧は、ポリクローナル細胞系統内の個々の細胞の増殖速度に影響してもよい。これは、選択圧に適応するために特定の遺伝子変化を受ける細胞の嗜好性(favoring)に起因してもよい。故に、選択マーカーの選択は、増殖速度により誘導される偏向性にも影響してもよい。これが生じるならば、異なる選択マーカーが試験されるべきだ。選択が細胞に毒性のある物質に基づく場合、最適な濃度、及び選択が全産生期間にわたって必要であるか又は初めの段階のみで必要であるか否かが慎重に試験されるべきである。
【0120】
十分に定義された細胞集団を確保するためのさらなるアプローチは、トランスフェクション及び選択法の後に蛍光活性化細胞選別(FACS)を用いることである。蛍光標識された抗体を用いて、IgGコンストラクトでトランスフェクションした細胞のプールに由来した高生産性細胞を濃縮することができる(Brezinskyら.J.2003.Immunol Methods 277,141−155)。この方法を用いて、同様のレベルで免疫グロブリンを発現する細胞を選別し、それにより、生産性に関して同質の細胞集団を作成できる。同様に、蛍光色素5,6−カルボキシルフルオレセインジアセタートスクシンイミジルエステル(CFSE)での標識を用いることにより、同様の増殖速度を示す細胞がFACS法により選択され得る。さらに、抗−RhD rpAbの個々のメンバーの発現レベルにおける差異は、長期間にわたって最終産物へ偏向性をもたらしてもよい。
【0121】
選択後に別々にトランスフェクトされたクローンを混合することによりポリクローナル細胞系統が産生されるならば(図1Aの第3アプローチ)、混合前の細胞培養レベルにおける個々のクローンに関して以下の選択基準が設定されてもよい:増殖速度は24〜32時間である必要があり、生産性は1細胞1日あたり1.5pgを超えるべきであり、及び培養物は細胞内染色方法により評価される同質の細胞集団を示すべきである。所望により、FACS分析に関連して集団の特定領域をゲート(gating)することにより個々のクローンを混合する前に、Brezinskyにより記載された表面染色方法を用いて、各個々のクローンに関してより同質な細胞集団を得ることができる。
【0122】
増殖速度又は生産性偏向性が存在したとしても、個々のメンバーの欠失又は過剰発現は、最終抗−RhD rpAb産物の多様性要件に応じて、必ずしも決定的でなくともよい。
【0123】
部位特異的単一組込み体を有する細胞において、該細胞は発現されるべき抗体の可変領域の配列のみが異なり得る。故に、組込み部位及び遺伝子調節エレメントにおける差異により付与される異なる細胞効果が排除され、及び組み込まれたセグメントは細胞増殖速度に対して最小効果を有する。スクランブリング及び複数の組込みのいずれもがこれらがまれな事象であるために製造細胞系統の増殖速度における問題を惹起し得ない。一般的に、無作為組込みは約10−5の効果を伴って生じ、一方で、部位特異的組込みは約10−3の効果を伴って生じる。予想外に、複数の組込みが問題を惹起するならば、上記したように該事象が再発する可能性は非常に小さいので、代替法は、抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーでのトランスフェクションを繰り返すことである。
【0124】
統計を検討すると、多数の細胞のバルクトランスフェクションは、所望でないクローン偏向性を回避する方法も構成する。このアプローチにおいて、宿主細胞系統は、抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーを用いてまとめてトランスフェクトされる。かかるライブラリーは、ライブラリーの各異なるメンバーの多数のコピーを構成する。好ましくは、これらのコピーは多数の宿主細胞内に組込まれるべきである。好ましくは、少なくとも100、1000、10000又は100000個の個々の細胞は、変異体核酸セグメントのライブラリーの異なるメンバーのコピーを用いてトランスフェクションされる。故に、別個の変異体核酸セグメントのライブラリーが、1000個の個々の細胞に各々組込まれる1000個の異なるメンバーから構成されるならば、部位特異的に組み込まれた抗−RhD抗体コーディングセグメントを含む106個のクローンがトランスフェクションから生じるだろう。この様式において、個々の細胞の倍加速度のガウス曲線は、非常にわずかな程度でのみ一般集団に影響するはずである。たとえ製造細胞の低いパーセンテージが異常な増殖及び/又は発現特性を示すとしても、これはクローン組成物定常性を維持する可能性を増大し得る。
【0125】
或いは、既に記載した半バルクトランスフェクション又は個々のトランスフェクション方法を用いてもよい。
【0126】
ポリクローナルワーキングセルバンク(pWCB)の確立
セクション「ポリクローナル蛋白質の高レベル発現のための発現系の確立」は、ポリクローナル製造細胞系統を確立する3つの代替法を記載する。該セクションは、バルク又は半バルクトランスフェクションにより得られた細胞群から構成される凍結ライブラリーストックの作成を記載し、ここで、ライブラリーストック中の各個々の細胞は、抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーに由来する個々のメンバーを発現し得る。好ましくは、細胞群は、既に記載したクローン多様性要件を満たしており、その結果、ポリクローナル製造細胞系統を確立するために解凍及び増殖される場合、本質的にライブラリーの全メンバーが凍結ライブラリーストックアンプルから発現され得る。バルクトランスフェクション及び半バルクトランスフェクションアプローチにおいて、凍結ライブラリーストックに由来する単一バイアルが解凍され及びポリクローナル製造細胞系統に増殖され得るという点で、凍結ライブラリーストックはポリクローナルワーキングセルバンク(pWCB)と見なされ得る。
【0127】
或いは、既に記載した組換えポリクローナル製造細胞系統の作成のための3番目のアプローチにおいて、凍結ライブラリーストックは、抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーの個々のメンバーを用いて個別にトランスフェクションされている別個の細胞系統から構成される。トランスフェクタントはそれらのゲノムに由来する組み込まれたベクター由来の核酸セグメントの安定な発現に関して選択される。好ましくは、核酸セグメントはトランスフェクタントのゲノム内の1つ以上の部位内に部位特異的に組み込まれ、及びさらにより好ましくは、ゲノムの単一部位内に組み込まれる。選択時に例えばクローンコロニーから得られたトランスフェクトされた細胞は、単一クローンとして単離及び維持されてもよく、又は同一の抗−RhD抗体を発現するクローンのプールを作成するためにプールされてもよい。本発明において、細胞の単一クローン及び同一の抗体を発現するクローンのプールは個々の細胞系統と呼ばれる。故に、抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーが25個の個々のメンバーを構成したならば、この3番目のアプローチにおける凍結ライブラリーストックは、抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーに由来する個々のメンバーを各々発現する25個の個々の細胞系統(細胞系統の混合物ではない)から構成されるだろう。故に、このライブラリーストックに由来する1つのバイアルは、製造に用いられるならば、モノクローナル抗−RhD抗体の産生をもたらし得る。
【0128】
本発明は抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーを例示する。しかし、凍結ライブラリーストックの作成は可変領域コーディング核酸セグメントから構成されるライブラリーから産生されるポリクローナル蛋白質の抗原特異性と無関係であり、並びに抗体VH及びVLコーディング核酸セグメント、又はT細胞受容体(TcR)α及びβ−、又はγ及びδ−コーディング核酸セグメントから構成される任意の他のライブラリーと共に用いられてもよい。可変領域コーディング核酸セグメントから構成されるライブラリーは可変領域に加えて1つ以上の定常領域もコードする。故に、抗体VH及びVLコーディング核酸セグメントから構成されるライブラリーは、Fv、scFv、Fab分子又は全長抗体分子をもたらしてもよく、及びTcR可変領域コーディングセグメントから構成されるライブラリーはTcR可変ドメインフラグメント、可溶性TcRs又は全長TcRsから構成される分子をもたらしてもよい。
【0129】
凍結ライブラリーストックが個々の細胞系統から構成される状況では、単一アンプルの内容物を解凍及び増殖することにより、ポリクローナル製造細胞系統の構築に用いられ得るpWCBを産生することが適切であり得る。かかるpWCBを産生するために用いられる個々の細胞系統は、i)単一クローン又はii)クローンのプール(選択後に得られる単一コロニーのプール)のいずれかから得られる。クローンは個別にトランスフェクションされた宿主細胞から得られ、及び可変領域コーディング核酸セグメント、例えば、抗体VH及びVLコーディングセグメント又はTcRα及びβ−、又はγ及びδ−コーディングセグメントを含むライブラリーの個々のメンバーの安定な発現に関して選択される。安定な発現に関する選択は当該分野にて知られている方法、例えば、選択マーカー遺伝子を用いて行われる。本発明の一の好ましい実施態様において、例えば、i)又はii)(上記記載を参照のこと)に由来する細胞系統を限界希釈又は単一細胞FACS分析及び選択に付すか、又は例えばClonePixFLのごときロボットを用いて高発現クローンを選択することにより、個々の細胞系統はクローニング又はサブクローニングした細胞から得られる(以下を参照のこと)。上記したように、pWCBを作成するために用いる個々の細胞系統は、個々の細胞系統の凍結ライブラリーストック中に予め貯蔵されてもよく、そこから、各個々の細胞系統の1つのアンプルがpWCBの作成前に解凍及び増殖される。好ましくは、個々の細胞系統は、pWBCの他のメンバーにより産生される抗体の特性と異なる特性、例えば、異なる抗原特異性、異なる親和性、異なる可変又はCDR領域及び/又は異なる定常領域を有する全長抗体を発現する。
【0130】
pWCBを作成するために用いられる各細胞系統は、ポリクローナル蛋白質の異なるメンバーを産生する。好ましくは、ポリクローナル蛋白質の各異なるメンバーは特定の抗原に結合する。さらには、各異なるメンバーが各宿主細胞のゲノム内の単一特異的部位から産生されることが好ましい。pWCBは各個々の細胞系統に由来する所定の数の細胞を混合することにより生成される。他の比も所望されてもよいが(以下を参照のこと)、好ましくは、細胞は等数(1:1の比)で混合される。細胞の混合物はアリコートとして凍結され、ここで、該アリコートは各バイアル中に所定の数の細胞を有する多数のバイアルに分配される。後の製造目的のためにこれらのバイアルをpWCBとして凍結及び貯蔵する。好ましくは、pWCBを構成するバイアルの数は10、25、50、75、100、200、500又は1000バイアルを超える。pWCBの個々のバイアルを異なる時間ポイントで解凍し、バッチ間で本質的に同一の組成を有するポリクローナル蛋白質を産生し得るポリクローナル製造細胞系統の異なるバッチを作成してもよい(実施例5を参照のこと)。
【0131】
本発明の代替的アプローチにおいて、ポリクローナル製造細胞系統はpWCBに由来するサブ−pWCBから増殖されてもよい。pWCBに由来する単一バイアルを解凍し、次いで、新たな一連のアリコート(サブ−pWCB)として凍結され得る細胞の総数を産生するのに十分な多世代間にわたって細胞を増殖させることにより、サブ−pWCBを生成し、ここで、各サブ−pWCBアリコート中の細胞の数はサブ−pWCBを産生するために最初に用いたpWCBバイアル中の数とほぼ同じである。このアプローチの利点は、他の組換え蛋白質産生プロトコルから知られているように、pWCBが直ちにマスターセルバンクとして役立つことである。故に、このアプローチにおいて、pWCBはポリクローナルマスターセルバンク(pMCB)と呼ばれてもよい。サブ−pWCBが消耗した場合、pWCB/pMCBのアリコートに由来する新規のサブ−pWCBを産生することが可能である。故に、このアプローチは、凍結ライブラリーストックに由来する個々の細胞系統を増殖させ及び新規pWCBを混合するために必要とされ得るものよりも有意により少ない作業しか必要としない。さらに、サブ−pWCBが消耗する事象において、バッチ間で本質的に同一の組成を有するポリクローナル蛋白質を産生し得る、ポリクローナル製造細胞系統のさらなるバッチを産生する機会は増大する。個別にトランスフェクトされた宿主細胞に由来するpWCB/pMCB及びサブ−pWCBを産生する原理を図1Bに示す。
【0132】
バルクトランスフェクション又は半バルクトランスフェクションによるpMCB又はpWCBの直接作成と比較して、個々のトランスフェクションにより得られる個々の細胞系統を混合することによるpWCB又はpMCBの産生の利点は、pWBC又はpMCBの作成前に個別にトランスフェクトされた細胞系統のさらなる分析及び選択を行うことができることである。これにより、既に記載した多様性要件を満たすより安定なポリクローナル製造細胞系統を確保してもよい。以下、pWCBはpWCB又はpMCBとして理解されるべきである。
【0133】
本発明のさらなる一の実施態様において、上記したような可変領域コーディング核酸セグメントのライブラリーの個々のメンバーの安定な発現について選択された個々の細胞系統は、pWCBの作成前にそれらの増殖速度及び/又は生産性に関してさらに特徴付けられる。好ましい一の実施態様において、同様の増殖速度又は生産性を有する細胞系統はpWCBの作成のために選択される。さらにより好ましくは、同様の生産性並びに同様の増殖速度を有する細胞系統はpWCBの作成のために選択される。好ましくは、細胞系統は、増殖速度及び/又は生産性の特徴付けの前に無血清懸濁培養に付される。或いは、トランスフェクションに用いられる親細胞はトランスフェクション前に無血清懸濁培養に付される。
【0134】
増殖速度は当該分野にて知られている方法、例えば、本発明の実施例2に記載のものにより評価され得る。哺乳類細胞系統に関する増殖速度は18〜100時間であり得、好ましくは、22〜40時間であり、及び最も好ましくは、24〜32時間であり得る。生産性は1細胞1日あたり0.5pg蛋白質(pg/(細胞*日))を超えるべきであり、好ましくは、それは1、1.5、3、5又は8pg/(細胞*日)を超えるべきである。さらに、細胞系統は、細胞内染色方法により評価される場合に、発現に関して同質の細胞集団を示すべきである。所望により、各個々の細胞系統に関してより均一な細胞集団がクローニング、例えば、以下に記載のFACS選別方法により得られ得る。
【0135】
本発明のさらなる実施態様において、個々の細胞系統は、トランスフェクション及び選択手順の後に、均一な発現レベルを伴う細胞を特定するためにFACSにより分類される。故に、FACS分析に関連して集団の特定領域をゲートすることによる、個々の高発現クローン又は高発現レベルを有する細胞のサブ−プールについての選別可能性は、本発明のさらなる一の実施態様である。FACS分析及び選択によるクローン細胞の作成は、個々の細胞系統がクローンのプールから産生される場合に特に有用である。
【0136】
蛍光標識された抗体は、所望の蛋白質、例えば、抗体又はTcRを高レベルに発現する細胞を選別するために用いられ得、それにより生産性に関して均一な細胞集団を作成する。この技法は、分泌された蛋白質がそれらを分泌する細胞表面上で検出され得、及び表面蛋白質の量が明らかに個々の細胞の発現レベルに対応するという観察に基づく。故に、高産生細胞は、標識された抗体を用いた染色、次いで、FACによる分析に基づき分類された単一細胞であり得る。該技法はBrezinskyにより記載されている(Brezinskyら.J.2003.Immunol Methods 277,141−155)。
【0137】
代替的な選別技法は、細胞から発現された蛋白質に対して特異性を有するリガンドの細胞表面へのカップリングに基づく。例えば、抗−Fc抗体又は抗−イディオタイプ抗体はビオチンを介して細胞集団を分泌する蛋白質の表面へカップリングされ得る。次いで、個々の細胞により分泌された抗体は該細胞の表面上で抗−Fc抗体により捕獲される。この後、高産生細胞は、標識された抗体を用いた染色に基づくFACSにより分類され得る。この技法はEP667896に記載されている。
【0138】
均一な高発現レベルを伴う細胞系統を得るために、高発現レベルを有する単一細胞を記載した技法の1つにより得られたFACS特性に基づいて分析する。次いで、個々の細胞クローンを増殖させ、及び上記したように増殖速度及び生産性に関して潜在的に分析する。或いは、FACS特性により特定されるような最も高い発現レベルを有する細胞のサブ−プールを選別により収集する。所望により、個々の細胞系統に由来する細胞のサブ−プールは同様に増殖速度及び生産性に関して分析され得る。
【0139】
本発明の別の一の実施態様において、ClonePixFLロボット(Genetix,UK)のごときロボットを用いて、高発現レベル及び/又は同様の増殖特性を示すクローンを選択する。これは以下のように行う:トランスフェクション及び選択後に得られたコロニーを半固形培地中で増殖させ、ここで、該培地は、コロニーの直ぐ近くで分泌された蛋白質産物を捕獲することにより高産生コロニーの検出を可能とする。各コロニーからの産生レベルは、細胞により発現された蛋白質の免疫蛍光標識、次いで、発現レベル及び増殖特性のごとき予め定めた選択基準に基づく最良のクローンのイメージソフトウェアセレクションの手段により測定される。さらに、各コロニーの大きさ(細胞増殖速度を反映する)が光検出イメージングを用いるロボットにより評価され得る。次いで、所望の産生及び/又は増殖特性を有するコロニーをロボットにより単離し、及びさらなる増殖のために96−ウェルプレートに移入する。
【0140】
好ましくは、同様の生産性を有する個々の細胞系統はpWCBの作成のために選択される。好ましい一の実施態様において、pWCBを構成する個々の細胞系統は、例えば、単一細胞選別、限界希釈又はロボットピッキングにより得られる、高発現レベルを有するか又は高発現レベルを有する細胞のプールに由来するクローン細胞から生成される。
【0141】
本発明において、トランスフェクション及び選択後に単離された細胞の単一コロニーから得られた個々の細胞系統並びに例えば単一細胞FACS選別により得られたクローンから得られた個々の細胞系統の両方がクローン細胞系統と呼ばれる。好ましい一の実施態様において、かかるクローン細胞系統はpWCBを産生するために用いられる。
【0142】
本発明のさらなる実施態様において、個々の細胞系統はpWCBの作成時に異なる比で混合される。個々の細胞系統は、個々の細胞系統及び/又は前記細胞系統により発現された個々の蛋白質メンバーの特性、例えば、特異的生産性又は結合親和性に基づいて予め定めた基準に従って混合され得る。例えば、特に重大な抗原又はエピトープに結合する特定の抗体を発現する個々の細胞系統は、pWCBの細胞系統の残りのメンバーを超過して、例えば、2倍、3倍、5倍又は10倍より多い量で供給され得る。例えば、細胞系統の1つのメンバーは、他の全てのメンバーに対して2:1の比で加えられてもよく、例えば、メンバー1は4×106細胞で、及び細胞系統の残りのメンバーの各々は2×106細胞で加えられてもよい。
【0143】
本発明の一の好ましい実施態様において、抗−RhD rpAbの産生のためのpWCBが生成される。さらにより好ましくは、RhDカテゴリーVI抗原に対する反応性を有する抗体を産生する細胞系統がpWCBに含まれる細胞の全量の少なくとも5%、8%、10%、12%、15%、20%又は25%を構成するように、かかるpWCBが生成される。
【0144】
pWCB内の個々の細胞系統のこの分化比(differentiated ratio)によるアプローチは、特に、個々の細胞系統がこれらの特性における類似性について選択されていないならば、個々の細胞系統間の増殖速度及び生産性における差異を回避するために適用されてもよい。故に、より速い増殖速度により特徴付けられるポリクローナルワーキングセルバンクの他のメンバーと比較して、個々の細胞系統の1つ以上がより遅い増殖速度、すなわち、より長い倍加時間を有するが、このより遅い増殖速度が特定の高生産性に関連していないならば、この1又は複数の特定のメンバーはその遅い増殖を補填するために増大した量でpWCBに加えられてもよい。例えば、pWCBを構成する残りの細胞系統が22〜30時間の増殖速度を有するならば、50時間の増殖速度を有する細胞系統は2:1の比で加えられてもよい。同様に、短い倍加時間を有する細胞系統の比を減じて、製造の間にこれらが優勢にならないことを保証してもよい。さらに、pWCB内の個々の細胞系統の比は、pWCBから産生されたポリクローナル製造細胞系統から生成されたポリクローナル蛋白質産物の分析の際に調整されてもよい。かかる調整は、例えば、IEX特性又は等価な特徴付け手段に基づいて行われてもよい。かかる分析が1つ以上の特定の蛋白質メンバーが残りのメンバーと比較して増大した量で産生されることを示すならば、これらの特定の蛋白質メンバーを産生する細胞系統の比が軽減された新規pWCBが生成されてもよい。及び逆に、特定のメンバーが低量で生成されるならば、このメンバーを産生する細胞系統を増大した比で有するpWCBが生成されてもよい。
【0145】
培養物上清からの抗−RhD rpAbの精製
培養物上清からの抗−RhD rpAbの単離は、蛋白質の物理化学特性における差異、例えば、分子量、正味電荷、疎水性又は特異的リガンド若しくは蛋白質に対する親和性における差異を利用する様々なクロマトグラフィー技法を用いて可能である。故に、蛋白質は、ゲル濾過クロマトグラフィーを用いる分子量に従って或いはイオン交換(陽イオン/陰イオン)クロマトグラフィー又はクロマト分画を用いる正味電荷にに従って分離されてもよい。
【0146】
イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用及びゲル濾過のごとき後続する精製段階と併せたアフィニティークロマトグラフィーは、異なる供給源、例えば、腹水、細胞培養液上清及び血清に由来するIgG(ポリクローナル及びモノクローナル)の精製のために頻繁に用いられている。抗−RhD抗体及びクロマトグラフィーマトリックスにカップリングさせた特異的リガンド間の可逆的相互作用に基づいて分離されるアフィニティー精製は簡便及び迅速な方法であり、該方法は、高選択性、通常は高い処理能力とより少容量とするための濃縮を提供する。抗−RhD抗体に結合し得るペプチド形態の特定リガンドは、EP 1 106 625に記載の方法に従ってペプチドファージディスプレイを用いて得られてもよい。2つの細菌細胞表面蛋白質である蛋白質A及び蛋白質GはFc領域に高い親和性を有し、及び固定化形態で、ポリクローナルIgG及び様々な種に由来するそのサブクラスの精製並びに免疫複合体の吸収及び精製を含む多数の日常的適用のために用いられている。
【0147】
アフィニティークロマトグラフィーの後、下流クロマトグラフィー段階、例えば、イオン交換及び/又は疎水性相互作用クロマトグラフィーを実施して、宿主細胞蛋白質、漏出した蛋白質A及びDNAを除去することができる。蛋白質Aアフィニティー及び陽イオン交換クロマトグラフィーと共に、5より大きなpH値が抗−RhD rpAbの沈殿を惹起し得ることが観察される。故に、バッファーは適切な緩衝化剤、例えば、トリス又は酢酸を用いて慎重に調節される必要がある。
【0148】
最終精製段階としてのゲル濾過を用いて、二量体及び他の凝集体のごとき汚染分子を除去し、次いで、貯蔵バッファー中に試料を加えることができる。供給源及び発現条件に応じて、必要とされる抗体純度レベルを成し遂げるためのさらなる精製段階を含む必要があってもよい。故に、治療用途のための抗体を精製するために、疎水性相互作用クロマトグラフィー又はイオン交換クロマトグラフィーが蛋白質A及びゲル濾過クロマトグラフィーと併せて頻繁に用いられる。
【0149】
抗体の他のクラスを精製するために、蛋白質A及びGがIgA及びIgMに結合しないために、代替的アフィニティークロマトグラフィー培地が使用される必要がある。免疫−アフィニティー精製(固形相にカップリングされた抗−IgA又は抗−IgMモノクローナル抗体)が用いられ得、或いはイオン交換及び疎水性相互作用を含む多段階精製ストラテジーが用いられ得る。
【0150】
抗−RhD rpAbの構造的特徴付け
ポリクローナル抗体の構造的特徴付けは、混合物の複雑性(クローン多様性、不均一性及びグリコシル化)に起因して高い分解能を必要とする。ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィー又は電気泳動のごとき伝統的アプローチは、抗−RhD rpAb内の個々の抗体間を区別するのに十分な分解能を有していないかもしれない。複雑な蛋白質混合物のプロファイリングのために、2次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2D−PAGE)、次いで、質量分析(MS)又は液体クロマトグラフィー(LC)−MS(例えば、プロテオミクス)が用いられている。蛋白質の電荷及び質量に基づく分離を組み合わせる2D−PAGEは、血清試料中のポリクローナル、オリゴクローナル及びモノクローナル免疫グロブリン間の区別のために有用であることが証明された。しかし、この方法には幾つかの制限がある。クロマトグラフィー技法、特に、エレクトロスプレーイオン化MSにカップリングされたキャピラリー及びLCは、複雑なペプチド混合物の分析のためにますます適用されている。LC−MSはモノクローナル抗体の特徴付けのために用いられており、及び最近はポリクローナル抗体軽鎖のプロファイリングにも用いられている。非常に複雑な試料の分析はより高いクロマトグラフィー系の解像力を必要とし、これは2次元(又はそれ以上)での分離により達成され得る。かかるアプローチは、第一の次元ではイオン交換に基づき、及び第二の次元では所望によりMSにカップリングされた逆相クロマトグラフィー(又は疎水性相互作用)に基づく。
【0151】
抗−RhD rpAbの機能的特徴付け
抗−RhD rpAb抗体は、例えば、抗−D免疫グロブリン産物又は抗−RhD mAbを用いた比較可能性研究により機能的に特徴付けられ得る。かかる研究はインビトロ及びインビボにて実施され得る。
【0152】
抗−RhD rpAbのインビトロ機能的特徴付け方法は、例えば、貪食性アッセイ(51Crに基づく又はFACSに基づく)、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)及びロゼット形成アッセイであり得る。簡潔に記載された該アッセイを以下のように実施する:
【0153】
ADCCアッセイ(51Crに基づく):
ヒトPBMCをエフェクター細胞として用い、並びにRhD陰性及び陽性RBC(ABO式のO)を標的として用いる。初め、RBC(RhD(+)及びRhD(−))を51Cr標識し、洗浄し、次いで、様々な希釈の抗−RhD抗体(例えば、抗−RhD rpAb、抗−D又は抗−RhD mAb)を用いて感作した。エフェクター細胞(PMBC)を感作したRBCに加え(20:1の比)、次いで、インキュベーションを一晩行う。細胞をスパンカラムに付し(spun down)、次いで、ウェルの上清をLumaplate(PerkinElmer)に移す。自然放出に関する対照(51Crのみを有するRBC)及び全放出(トリトン−X−100ないし51Cr−標識RBCを加えた)に関する対照が含まれる。Lumaplateを乾燥し、次いで、Topcounter(PerkinElmer)でカウントする。
【0154】
貪食性アッセイ(51Crに基づく):
貪食性はADCCアッセイと組み合わせて測定され得る。ADCCアッセイにおいて上清を回収した後、残りの上清を除去し、次いで、低張緩衝液を加えることにより赤血球細胞を溶解する。細胞を洗浄し、次いで、上清を除去する。PBS+1%トリトン−X−100を全ウェルに加え、次いで、一定量をLumaplateに移し、乾燥し、次いで、前記のようにカウントする。
【0155】
貪食性アッセイ(FACSに基づく):
このアッセイは食細胞性細胞の粘着性に基づく。ヒト白血病性単芽球細胞系統U937がこのアッセイに用いられ得る。U937細胞は10nMのPMAを用いて分化させる。2日後に、培地の60%を除去し、次いで、PMAなしの培地と交換する。赤血球細胞(RhD(+)及びRhD(−))の細胞膜を製造元プロトコル(Sigma)に従ってPKH26(PE)で染色する。該RBCの細胞膜を様々な希釈の抗−RhD抗体で感作し、次いで、過剰な抗体を洗浄により除去する。3日目に、非付着細胞U937細胞を洗浄により除去し、次いで、感作したRBC(RhD(+)及びRhD(−))をウェルに加える。インキュベーター中でプレートを一晩インキュベーションする。貪食されなかったRBCを幾つかの段階により洗浄して除去する。低張緩衝液を加えることにより、結合したが貪食されなかったRBCを溶解し、次いで、さらに洗浄する。トリプシンとのインキュベーションによりU937細胞をウェルから剥離する。細胞をFACSにて分析する。
【0156】
ロゼット形成アッセイ
ロゼット形成アッセイは単なるFc受容体結合アッセイである。感作した赤血球細胞を上記のように調製した分化型U937細胞と共にインキュベーションする。RBC(RhD(−)及びRhD(+))を様々な希釈の抗−RhD抗体で感作し、次いで、U937細胞と混合する前に、過剰な抗体を洗浄により除去する。インキュベーションを1時間行い、次いで、非結合RBCを洗浄して除去する。表面に2つ以上のRBCが付着した細胞のパーセンテージを計数する。
【0157】
抗−RhD抗体のインビボ機能的特徴付けはMiescher(Miescher,S.,ら.2004,Blood 103,4028−4035)により記載されており、RhD(−)個人へのRhD(+)細胞の注入、次いで、抗−RhD抗体の投与を含む。ドナーのRBCクリアランス及び抗−RhD抗体感作を分析した。
【0158】
治療用組成物
本発明の一の実施態様において、活性成分として抗−RhD rpAb又は抗−RhD組換えポリクローナルFab又は別の抗−RhD組換えポリクローナルフラグメントを含有する医薬組成物が、新生児溶血性疾患の予防、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の処置、又はRhD(−)の個人にRhD(+)の血液を誤って輸血した後のRhD抗原に対する感作の予防ために意図される。
【0159】
医薬組成物はさらに医薬上許容される賦形剤を含有する。
【0160】
抗−RhD rpAb又はそのポリクローナルフラグメントは医薬上許容される希釈剤、担体又は賦形剤中の単位投与形にて投与されてもよい。慣用的な薬務を利用して、母親又は女性患者に投与するのに適する処方又は組成物を提供してもよい。好ましい一の実施態様において、投与は予防的である。任意の適切な投与経路が用いられてもよく、例えば、投与は、非経口、静脈内、動脈内、皮下、筋内、腹腔内、経鼻、エアロゾル、坐剤又は経口投与であってもよい。例えば、治療用処方は液体溶液又は懸濁液の形態であってもよく;経口投与のためには、処方は錠剤又はカプセル剤チューインガム又はパスタの形態であってもよく、及び経鼻処方のためには、散剤、点鼻薬又はエアロゾルの形態であってもよい。
【0161】
本発明の医薬組成物は、それ自体が知られている様式にて、例えば、慣用的な溶解、凍結乾燥、混合、粒状又は調合過程により処方され得る。医薬組成物は慣用的な薬務(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy(20th ed.),ed.A.R.Gennaro,2000,Lippincott Williams&Wilkins,Philadelphia,PA and Encyclopedia of Pharmaceutical Technology,eds.J.Swarbrick及びJ.C.Boylan,1988−1999,Marcel Dekker,New York,NY)に従って調製されてもよい。
【0162】
好ましくは、活性成分の溶液及び懸濁液、並びに特に等張性水性溶液又は懸濁液が用いられ、例えば、活性成分単独又はマンニトールのごとき担体を共に含む凍結乾燥された組成物の場合には、かかる溶液又は懸濁液を使用前に生成することが可能である。医薬組成物は滅菌されてもよく、及び/又は賦形剤、例えば、防腐剤、安定化剤、湿潤剤及び/又は乳化剤、可溶化剤、浸透圧調節用の塩及び/又はバッファーを含んでもよく、及びそれ自体知られている様式、例えば、慣用的な溶解又は凍結乾燥過程により調製される。前記溶液又は懸濁液は、粘度増加物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルピロリドン又はゼラチンを含んでもよい。
【0163】
注入用組成物は、滅菌条件下で慣例的な様式にて調製される;同じことは、アンプル又はバイアル内への組成物の導入及び容器の密封にも当てはまる。
【0164】
経口投与用医薬組成物は、活性成分を固形担体と組み合わせ、所望により、得られた混合物を造粒し、次いで、所望又は必要とする場合には、適切な賦形剤を加えた後に混合物を錠剤、ピル又はカプセル剤に加工し、所望により、それをセラック、糖又はその両方でコーティングすることにより得ることができる。規定された量で活性成分を拡散又は放出できるようにプラスチック担体内にそれらを含ませることも可能である。
【0165】
医薬組成物は、約1%〜約95%、好ましくは、約20%〜約90%の活性成分を含有する。本発明に記載の医薬組成物は、例えば、単位投与形態、例えば、アンプル、バイアル、坐剤、錠剤、ピル又はカプセル剤の形態であってもよい。該処方は、疾患又は状態のための療法を提供するために治療的又は予防的有効量(例えば、病状を予防、排除又は軽減する量)でヒト個人に投与され得る。投与されるべき治療剤の好ましい用量は、疾患の型及び程度、特定患者の全体的な健康状態、化合物賦形剤の処方及びその投与経路のごとき変数に依存し得る。
【0166】
本発明に記載の組成物の治療用途
本発明に記載の医薬組成物は、哺乳類における疾患の処置、改善又は予防のために用いられてもよい。本医薬組成物を用いて処置又は予防され得る状態は、新生児溶血性疾患の予防、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の処置、又はRhD(−)の個人へRhD(+)の血液を誤って輸血した後のRhD抗原に対する感作の予防を含む。
【0167】
本発明の一の態様は、有効量の抗−RhD rpAb又はフラグメントが投与される、動物における疾患の処置、改善又は予防方法である。
【0168】
本発明のさらなる一の実施態様は、新生児溶血性疾患の予防又は特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の処置用の組成物を調製するための、抗−RhD組換えポリクローナル抗体又はポリクローナル抗体フラグメントの使用である。
【0169】
診断用途及び環境検出用途
本発明の別の実施態様は診断用キットに関する。本発明に記載のキットは、本発明に従って調製された抗−RhD rpAbを含み、該蛋白質は、検出可能標識で標識されていてもよく、又は非標識検出用に標識されていなくてもよい。該キットは、RhD(+)の個人又は特定のRhDカテゴリーを有する個人を特定するために用いられてもよい。後者の特定は、その特定のRhDカテゴリーのみと反応する抗−RhD rpAb組成物を得ることにより成し遂げられ得る。
【実施例】
【0170】
以下の実施例は、高産生細胞系統内での抗−RhD rpAbの発現及び産生方法について記載しており、ここで、VH及びVL含有核酸セグメント又は1若しくは複数のベクターは予め特徴付けられた染色体の「ホットスポット」部位内に部位特異的組込みにより挿入される。
【0171】
実施例において、CHO細胞を宿主細胞として利用した。その利点は、適切な成長培地の利用可能性、培養液にて効率的に高密度に増殖するそれらの能力、及び生物活性形態で抗体のごとき哺乳類蛋白質を発現するそれらの能力を含む。
【0172】
一般的に、本発明に記載のイー・コリの形質転換及び哺乳類細胞のトランスフェクションは慣用的な方法に従って実施され得る。
【0173】
以下の実施例は本発明を説明するが、本発明の範囲を限定するものと見なされるべきではない。
【0174】
実施例1
抗−RhD組換えポリクローナル抗体の産生
ドナー
ドナーはAalborg Sygehus Nordに登録した。全8人のRhD(−)女性をRhD(+)個人に由来するRhD(+)赤血球で免疫した。ブースト数及び免疫化のためのRhD(+)赤血球の起源に関してドナーは様々な免疫歴を有した。異なるドナーの免疫歴を表1に示す。
表1
【表1】
【0175】
最後のブーストから5〜7日後に白血球フェレーシスにより単核細胞を回収した。細胞をペレット化し、直ちに、市販のRNA調製キット(NucleoSpin RNA L,Machery−Nagel,カタログ番号 740 962.20)からの細胞溶解液に移した。細胞の溶解後、さらなる処理の前に懸濁液を凍結した。
【0176】
抗−RhD Fabディスプレイライブラリーの作製
ライブラリー作製及びパニング手段を通じて各ドナーから得た材料を別々にしておいた。細胞溶解物を解凍し、次いで、キット使用説明書(NucleoSpin RNA L)に従ってRNAを調製した。RNAの完全性をアガロースゲル電気泳動により分析し、これにより、18S/28SリボソームRNAが分解していないことを確認した。
【0177】
RNAを、製造元の使用説明書に従ってThermoScript(Invitrogen)を用いる反応において約10μgの全RNAを用いるオリゴ(dT)プライマー反応におけるcDNA合成に付した。cDNAを、以下のプライマーを用いるPCR反応における鋳型として用いた:
【0178】
VHフォワードプライマー(XhoI部位を太字で示す):
【表2】
【0179】
VHリバースプライマー(AscI部位を太字で示す):
【表3】
【0180】
Cκフォワードプライマー(NotI部位を太字で示す):
【表4】
【0181】
Vκリバースプライマー(NheI部位を太字で示す):
【表5】
【0182】
Cλフォワードプライマー(NotI部位を太字で示す):
【表6】
【0183】
Vλリバースプライマー(NheIを太字で示す):
【表7】
【0184】
個々のプライマー対を用いてPCRを行い、合計36のVH反応、6のカッパ反応及び22のラムダ反応を行った。全VH、カッパ及びラムダPCR産物を別々にプールし、次いで、NucleoSpinカラム(Machery−Nagel,カタログ番号740 590.250)を用いた精製の後、クローニング前に該産物を消化し(VH:AscI/XhoI,カッパ及びラムダ:NheI/NotI)、次いで、目的のバンドのゲル精製段階(PerfectPrep Gel Cleanup kit,Eppendorf,カタログ番号0032 007.759)を続けた。軽鎖(カッパ及びラムダを別々に)をライゲーションによりNheI/NotI処理したEm351ファージディスプレイベクター(図2)に挿入し、次いで、イー・コリ XL1 Blue(Stratagene)にて増幅した。軽鎖ライブラリーを構成するプラスミドDNAを、カルベニシリン寒天プレート上で一晩選択されたイー・コリ細胞から単離した(各ドナーについて2ライブラリー,各々カッパ及びラムダ)。このライブラリーDNAをAscI/XhoIでの消化に付し、次いで、ゲル精製した後、VHPCR産物(同じ酵素での消化に付され、及びゲル精製された)を、各ドナーに由来する2つの軽鎖ライブラリーにライゲートし、寒天プレート上でのカルベニシリン選択を用いてイー・コリ TG1細胞(Stratagene)にて増幅した。一晩増殖させた後、細菌をプレートからこすり取り、次いで、適切なライブラリー貯蔵のためのグリセロールストックを調製した。コンビナトリアル可変重鎖−軽鎖(VH:LC)ライブラリーを含むプラスミドDNA調製も行い、将来のライブラリーを確保した。これで、TG1細胞に含まれるコンビナトリアルライブラリー(各ドナーから2つ)はファージディスプレイ及びパニングのための準備が整った。コンビナトリアルライブラリー(全16)のサイズは106以上だった。
【0185】
RhD抗原結合Fabフラグメントを提示するファージの濃縮
その表面にFabを提示するファージを以下のとおり産生した:50mLの2×YT/1%のグルコース/100μg/mLのカルベニシリンに、コンビナトリアルVH:VLライブラリーを含むTG1細胞を接種し、約0.08のOD600を得た。培養物を1.5時間振盪し、次いで、ヘルパーファージを加えた(VSCM13)。該培養物を、振盪せずに37℃で1/2時間、及び振盪しながら1/2時間インキュベーションした。細菌をペレット化し(3200×g,10分間,4℃)、次いで、50mLの2×YT/100μg/mLのカルベニシリン/70μg/mLのカナマイシン中に再懸濁し、次いで、培養物を30℃で一晩振盪した。1/5容量の20%のPEG/1.5MのNaClを加え、氷上で30分間インキュベーションし、次いで、8000×g、4℃で30分間遠心分離することにより、ファージを培養物上清から沈殿させた。沈殿したファージをPBS中に再懸濁し、次いで、パニングに直接用いた。
【0186】
RhD抗原結合Fabフラグメントのためのパニングを2段階の方法で行った。108のRhD(−)赤血球細胞(RBC)をPBS中で3回洗浄し(2000×g,45秒間の遠心分離)、次いで、150μlのパニングバッファー(0.85×PBS中、2%のスキムミルク)中に再懸濁した。50μlの新たに調製したファージを(パニングバッファー中に再懸濁した)RhD(−)細胞に加え、ネガティブセレクション段階を行い、次いで、回転ローテーター上、4℃で1時間インキュベーションした。1時間インキュベーションした後、遠心分離(2000×g,45秒間)により細胞をペレット化し、次いで、ファージを含む上清を(PBSで3回洗浄した)2×107のRhD(+)RBCと共にインキュベーションした。ファージ:RhD(+)RBCミックスを回転ローテーター上、4℃で1時間インキュベーションした。1mLのパニングバッファーで5回、及びPBSで5回洗浄することにより、非結合ファージを除去した。(細胞を溶解する)200μlのH2Oを加えることにより、結合ファージ溶出した。100μlの溶出液を指数関数的に増殖するTG1細胞に加え、残りを−80℃で貯蔵した。溶出したファージを感染させたTG1細胞をCarb/glu寒天ディッシュに置き、次いで、37℃で一晩インキュベーションした。翌日、コロニーをプレートからこすり取り、次いで、2回目のパニング用のファージ調製のために、10mLの培養培地に接種した。1回目について記載したように2回目のパニングを行った。
【0187】
RhDカテゴリーVI抗原結合Fabフラグメントを提示するファージの濃縮
別の一連のパニングにおいて、選択を行い、RhDカテゴリーVI抗原に対して反応性を有するクローンを回収した。記載したようにネガティブセレクションをRhD(−)血液にて行い、及びポジティブセレクションをRhDVI陽性赤血球にて行った。他の手順は上記の通りだった。
【0188】
抗−RhD結合Fabについてのスクリーニング
各回のパニングの後、凝集アッセイにおいて赤血球細胞に対するその結合特性を分析するために、単一コロニーを採取した。すなわち、単一コロニーを2×YT/100μg/mLカルベニシリン/1%グルコースに接種し、次いで、37℃で一晩振盪した。翌日、900μl2×YT/100μg/mLカルベニシリン/0.1%グルコースを用いてDeepWellプレートを接種し、次いで、10μlを一晩培養した。そのプレートを37℃で2時間振盪し、その後、1ウェルあたり300μlの2×YT/100μg/mLカルベニシリン/0.25mMのIPTGを加えることでFab誘導を行った。そのプレートを30℃で一晩振盪した。翌日、遠心分離(3200×g,4℃,10分間)により細菌をペレット化し、次いで、100μlの0.8MのNaCl、0.2×PBS、8mMのEDTA中で再懸濁し、次いで、氷上で15分間インキュベーションし、Fabフラグメントのペリプラズム抽出(periplasmic extraction)を行った。そのプレートを−20℃とし、次いで、最終的に、懸濁液を解凍し、次いで、3200×g、4℃で10分間、遠心分離を行った。ELISAアッセイではFab含有量を分析するために、及び凝集アッセイでは個々のFabフラグメントの結合能を評価するために、ペリプラズム抽出物を用いた。
【0189】
凝集アッセイを以下の通り行った:RhD(−)及びRhD(+)RBCを1:1の比で混合し、PBS中で3回洗浄した。最後の洗浄の後、1%の細胞密度で細胞混合物をPBS中1%BSAに再懸濁し、50μlを96−プレートの各ウェルに加えた。ペリプラズム抽出物をウェルに加えた。正対照としてRhesogamma P免疫グロブリン(Aventis)を製造元の使用説明書に従って用いた。そのプレートを穏やかに振盪しながら室温で1時間インキュベーションした。細胞をPBSで3回洗浄し、その後、2次抗体を1:100希釈で加えた(ヤギ抗−ヒトFab/FITCコンジュゲート,Sigma F5512)。凝集のために、そのプレートを振盪せずに室温で1時間放置した。凝集アッセイにおけるFabフラグメント陽性を目視検査により決定し、次いで、写真撮影により記録した。Fabフラグメントの結合活性の量子化を凝集試料のFACS分析により行った。
【0190】
RhDVI+赤血球に対する反応性を有するクローンについてスクリーニングを行う場合、その他の点では上記のものと同一である方法において、かかる細胞をRhD(−)細胞と併用した。
【0191】
多様な抗−RhDFabコーディング配列の選択
全部で1700個のRhD抗原結合クローンを同定した。全ての陽性クローンをDNAシークエンスに付した。これらの56個のクローンをそれらの特有の一連の重鎖CDR配列に基づいて選択した。同じ重鎖及び異なる軽鎖を用いた複数のクローンについては、FACSアッセイにおいて最も高い結合活性を示したクローンを選択した。これにより、高いRhD抗原特異性について広範な多様性を示す、可変重鎖(VH)及び軽鎖(LC)コーディング配列の対から構成されるサブ−ライブラリーを全ての陽性クローンから選択した。
【0192】
これら56個のクローンの結合活性を凝集アッセイにおいて再度確認し、偽陽性クローンが選択されていないことを確認した。
【0193】
例えばファミリー間クロスプライミングに起因する突然変異に関して、選択されたクローンをさらに分析した。これは、かかる突然変異が、新規エピトープを生じる可能性のある発現された抗体の全体的な構造変化に至り、及びそれにより最終産物の免疫原性の増大をもたらし得るからである。ファージミドベクターから哺乳類発現ベクターへのVH:LC移入に関して以下のセクションに記載するように、かかる突然変異を有するクローンを修復した。
【0194】
VH及び軽鎖(LC)についての補正した核酸配列のアライメントを図3〜6にそれぞれ示す。VH及びVLポリペプチド鎖のさらなるアライメントを図5及び6にそれぞれ示す。ポリペプチドアライメントを行い、次いで、Chothia(Chothiaら.1992 J.Mol.Biol.227,776−798;Tomlinsonら.1995EMBO J.14,4628−4638及びWilliamsら.1996 J.Mol.Biol.,264,220−232)により定義された構造基準に従って番号付けした。図はさらに可変領域内の3つのCDR領域の位置を示す。アミノ酸配列中のCDR領域の位置を表2に要約する。ポリペプチドアライメント中のCDR3領域の番号(図5及び6)はChothiaに従っていない(図中アスタリスクで印を付けた移行部分)。アミノ酸位置に関してCDR3領域の同定を可能とするために、アスタリスクの後にも続いて番号を割り当てた。各個々のクローンについてのCDR3領域配列はこの番号に基づく図に由来し得る。
【0195】
表2
【表8】
【0196】
Fabとしてスクリーンされ、及びRhD抗原に対する結合能について選択された可変重鎖及び完全な軽鎖の対は、を同一のクローン番号により同定できる。全56個のVH:LC対のクローン番号、核酸配列番号及びアミノ酸配列番号を表3に記載する。
表3
【表9】
【表10】
【0197】
選択されたVH及び軽鎖コーディング配列の哺乳類発現ベクターへの移入
例えば、ファミリー間クロスプライミングに起因する突然変異のために、選択された多数の配列を修復する必要があった。これは、ファージディスプレイから哺乳類発現への発現系の交換に関連して行われた。この理由のために、各個々のクローンについて別々に移入を行った。
【0198】
移入及び修復を以下の通り行った:初めに、高い忠実度のポリメラーゼ、Phusion(Finnzymes)及び適切な補正用(correcting)プライマー対を用いるPCRにより、Em351ベクター中に位置するVHコーディング配列を再度増幅した。VHPCRフラグメントをAscI及びXhoIで消化し、次いで、ゲル精製に付した。Neo発現ベクター(図7)を対応する酵素で消化し、次いで、ゲル精製し、それによりリーダー配列及び重鎖定常領域の間に位置する核酸配列を除去した。補正されたVHフラグメント及びNeo発現ベクターをライゲートし、次いで、イー・コリ Top10細胞にて増幅させた。VH含有Neo発現ベクターのプラスミドDNAをカルベニシリンで一晩選択したイー・コリ細胞から単離した。
【0199】
VHコーディング配列の移入の後、高い忠実度のポリメラーゼ、Phusion(Finnzymes)及び適切な補正用プライマーセットを用いるPCRにより、対応するLC配列を再度増幅した。LCPCRフラグメントをNheI及びNotIで消化し、ゲル精製に付した。VH含有Neo発現ベクターを対応する酵素で消化し、次いで、ゲル精製し、それによりカッパリーダー配列及びBGHポリAシグナル配列の間に位置する核酸配列を除去した。補正されたLCフラグメント及びVH含有Neo発現ベクターをライゲートし、次いで、イー・コリTop10細胞にて増幅させた。グリセロールストックを各個々のクローン用に調製し、及び哺乳類細胞のトランスフェクションに適する質の高いプラスミド調製物も細菌培養物から調製した。
【0200】
各クローンについて別々に移入を行うことにより、ファージディスプレイにより最初に選択されたVH:LC対を哺乳類発現ベクター中に再生した。修復が必要でない場合は、適切な制限酵素で消化する前にPCRを行うことなく核酸セグメントを移入した。
【0201】
記載した移入により作製された哺乳類発現ベクターは、全長抗−RhD組換えポリクローナル抗体の発現に適する。この段階でベクターは分離されているが、なお、抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーと見なされる。
【0202】
哺乳類細胞系統のトランスフェクション及び選択
Flp−In CHO細胞系統(Invitrogen)を組換えポリクローナル製造細胞系統の構築のための開始細胞系統として用いた。しかし、より同質の細胞系統を得るために、親Flp−In CHO細胞系統をサブ−クローニングした。すなわち、親細胞系統を限界希釈によりサブ−クローニングし、次いで、幾つかのクローンを選択し、増殖させた。増殖挙動に基づき、1つのクローン、CHO−Flp−In(019)を産生細胞系統として選択した。
【0203】
以下の通り全56個のプラスミド調製物をCHO−Flp−In(019)細胞系統に個々にトランスフェクションした:CHO−Flp−In(019)細胞を付着細胞として10%のウシ胎児血清(FCS)含有のF12−HAMにて培養した。Fugene6(Roche)を用いて、1つのクローンを示すクローンプラスミドで2.5×106の細胞をトランスフェクションした。トランスフェクションの24時間後、細胞をトリプシン処理し、次いで、3×T175フラスコに移した。トランスフェクションの48時間後、選択圧、この場合では450μg/mlのネオマイシンを加えた。約2週間後にクローンが出現した。クローンを計数し、次いで、細胞をトリプシン処理し、以下、56個の特異的抗−Rh−D抗体の1つを発現するクローンのプールとして培養した。
【0204】
無血清懸濁培養に対する適応
個々の付着抗−Rh−D抗体CHO−Flp−In(019)細胞培養物をトリプシン処理し、遠心分離し、次いで、適切な無血清培地(Excell302,JRH Biosciences)中、8×105細胞/mlにて、別の振盪フラスコに移した。
【0205】
増殖及び細胞形態分析(cell morphology)を数週間にわたって続けた。細胞が良好かつ安定な増殖挙動を示し、及び32時間未満の倍加時間を有する場合、10×106細胞/チューブを有する各培養物の50アリコートを凍結した(56×50アリコート)。
【0206】
細胞系統の特徴付け
抗体産生及び増殖に関して全ての個々の細胞系統を特徴付けした。以下のアッセイによりこれを行った:
【0207】
産生:
経時的に、カッパ又はラムダ特異的ELISAの後、個々の培養物中の組換え抗体の産生を行った。ELISAプレートを炭酸バッファー、pH9.6中のヤギ−抗−ヒトカッパ(Caltag)又はヤギ−抗−ヒトラムダ(Caltag)抗体でコーティングした。プレートを洗浄バッファー(1×PBS及び0.05%のTween20)で6回洗浄し、次いで、洗浄バッファー及び2%ミルクで1時間ブロックした。試料をウェルに加え、次いで、プレートを1時間インキュベーションした。プレートを6回洗浄し、次いで、2次抗体(ヤギ−抗−ヒトIgG(H+L)HRPO,Caltag)を1時間にわたって加え、次いで、6回洗浄した。TMB基質を用いてELISAを展開し、次いで、H2SO4を加えることにより反応を終了させた。450nmでプレートを読み取った。
【0208】
さらに、蛍光標識した抗体を用いる細胞内FACS染色を用いて、細胞培養系における組換え抗体の産生を測定した。5×105の細胞を冷FACS PBS(2%FCS含有1×PBS)中で洗浄し、次いで、遠心分離した。細胞をCellFix(BD−Biosciences)にて20分間固定し、その後、サポニンバッファー(1×PBS及び0.2%サポニン)中で洗浄した。その懸濁液を遠心分離し、次いで、蛍光標識した抗体(ヤギF(ab’)2フラグメント,抗−ヒトIgG(H+L)−PE,Beckman Coulter)を20分間氷上で加えた。細胞をサポニンバッファー中で2回洗浄し、次いで、FACSバッファー中に再懸濁し、次いで、FACSにより分析した。細胞内染色を用いて一般的な発現レベルを測定し、及び組換え抗体の発現に関して細胞集団の均質性も測定した。
【0209】
増殖:
細胞懸濁液のアリコートを週に3回取り出し、次いで、細胞数、細胞サイズ、クランピングの程度及び死細胞のパーセンテージをCASY(登録商標)(Schaerfe System GmbHからのCell Counter+Analyzer System)分析により測定した。細胞培養物についての倍加時間をCASY(登録商標)測定に由来する細胞数により算出した。
【0210】
抗−RhD組換えポリクローナル抗体産生のための製造細胞系統の確立
別個の組換え抗−Rh−D抗体(RhD157.119D11,RhD158.119B06,RhD159.119B09,RhD161.119E09,RhD163.119A02,RhD190.119F05,RhD191.119E08,RhD192.119G06,RhD197.127A08及びRhD204.128A03)を各々発現する10個の細胞系統を選択して、組換えポリクローナル製造細胞系統を構成した。Rhd197及びRhD204はラムダクローンであったが、他の全てはカッパクローンだった。
【0211】
個々の抗−Rh抗体を発現する細胞培養物を振盪フラスコ中の無血清懸濁培養に十分に適応させた後、それらを等しい細胞数で混合し、それによりポリクローナルCHO−Flp−In(019)細胞系統を産生した。混合された細胞培養物を遠心分離し、次いで、10×106細胞/チューブのアリコートとして凍結した。
【0212】
2つのチューブ(3948FCW065及び3949FCW065)を解凍し、次いでネオマイシン含有の100mlのExCell302培地を含む1000mlの振盪フラスコ中で個々に11週間培養した。
【0213】
上清を回収し、次いで、抗−RhD rpAbの精製前に濾過した。
【0214】
クローン多様性
クローン多様性を蛋白質レベル及びmRNAレベルの両方についてアッセイした。抗体組成物を分析するために用いる上清試料を培養の9週間後に取り出し、一方で、mRNA組成物を分析するために用いる細胞試料は培養の11週間後に取り出した。
【0215】
抗体組成物:
ポリクローナルCHO−Flp−In(019)細胞系統から発現された抗−RhD rpAbはIgG1アイソタイプ抗体である。蛋白質Aが固定されたカラムを用いて抗−RhD rpAbを両アリコート(3948及び3949)から精製した。個々の抗体はpH7.4で固定化蛋白質Aと相互作用し、一方で、夾雑蛋白質をカラムから洗浄した。次いで、結合抗体を低いpH値(pH2.7)でカラムから溶離した。280nmでの吸光度測定から決定される、抗体を含むフラクションをプールし、次いで、pH5で5mMの酢酸ナトリウムに対して透析した。
【0216】
培養の9週間後にアリコート3948及び3949(FCW065)から得た抗−RhD rpAb組成物を、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて分析した。25mMの酢酸ナトリウム、150mMの塩化ナトリウム、pH5.0中の蛋白質A精製抗−RhD rpAbを、室温、60ml/時間の流速でPolyCatAカラム(4.6×100mm)にアプライした。次いで、25mMの酢酸ナトリウム中の150〜350mMの塩化ナトリウムからの直線勾配を用いて、pH5.0、60ml/時間の流速で抗体成分を溶離した。抗体成分を280nmにて分光測定的に検出した。次いで、クロマトグラム(図8)を積分し、次いで、個々のピークA−Jの面積を用いて、抗体成分を定量化した(表4)。ピークの全面積を100%に設定した。2つのアリコートからのクロマトグラムは同一のピーク分布を示し、及び各ピークにおける成分の濃度は同様であった。これらの結果から、同一の条件下で増殖した同一のポリクローナル細胞系統のアリコートは同様のクローン多様性を伴う抗−RhD rpAbを産生し得ることが結論付けられ得る。
【0217】
抗−RhD rpAbの個々のメンバーは1つ以上の特定のピークに割り当てられる(表4に概要を示す)。割り当ては各個々のクローンに由来する抗体産物について得られたクロマトグラムに基づく。RhD158.119B06から産生された抗体について個々のクロマトグラムは得られず、故に、このクローンはいずれのピークにも割り当てられない。しかし、ピークDはRhD158.119B06を構成し、該クローンは不均一性に起因して特定の他のピーク中に示され得ると考えられる。特に、クローンRhD197.127A08に由来する抗体産物は高度な不均一性を有する。クローンRhD190.119F05は15.3分に可視化されるはずだったが、それは検出できず、このクローンが組換えポリクローナル製造細胞系統から失われていることを示した。クローンRhD190.119F05の欠失は多様性の10%の減少に対応し、これは、最終抗−RhD rpAb組成物の多様性に関して許容可能と考えられる。
【0218】
表4
【表11】
【0219】
mRNA組成物:
培養11週間後のポリクローナルCHO−Flp−In(019)細胞系統内のクローン多様性をRT−PCR−RFLP分析により評価した。すなわち、200個の細胞に対応する細胞懸濁液を凍結解凍手順に付し、次いで、これらの溶解物を、One−STEP RT−PCRキット(Qiagen)及び軽鎖増幅プライマーを用いるRT−PCRの鋳型として用いた。該プライマー配列は:
フォワードプライマー 5'-CGTTCTTTTTCGCAACGGGTTTG(配列番号259)
リバースプライマー 5'-AAGACCGATGGGCCCTTGGTGGA(配列番号260)
だった。
RT−PCR産物をHinfIで消化し、次いで、アガロースゲル電気泳動により分析し、臭化エチジウム染色で制限産物を可視化した(図9)。
【0220】
RT−PCR増幅軽鎖のHinfI消化により得られた制限フラグメントの予期されるサイズを各個々のクローンについて表5に示す。特異的RhD抗体産生クローンに割り当てられ得る、ゲル上の6つの特有フラグメントサイズを太字で示す。全てではないが特有フラグメントがゲル上で同定され得、これらをイタリック体で示した。これは、これらのクローンが培養物中に示されないことを必ずしも意味していないが、該フラグメントは、識別可能なほど他のフラグメントから十分に隔たっていないか、又はそれらの濃度はより強いバンドと比べて弱いかのいずれかであってもよい。これはより短いフラグメントについてより顕著であり、というのも、それらはより少数の臭化エチジウム分子に結合するために、より見えにくいからである。
【0221】
表5
【表12】
【0222】
同一のポリクローナル細胞系統の2つのアリコート(3948及び3949)はゲル上で同様の発現パターンを示すが、バンドの強度は完全に同一ではなく、これは、同一の条件下で増殖した同一のポリクローナル細胞系統のアリコートが同様のクローン多様性を伴って抗−RhD rpAbを産生し得ることも示す。
【0223】
概要
本実験は、56個の変異体抗−RhDコーディング核酸セグメントを含む抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーの産生に成功した(表3)。
【0224】
該ライブラリーの個々のメンバーを含むプラスミドを用いて、CHO−Flp−In(019)細胞系統をトランスフェクトし、特異的抗−RhD抗体を発現し得る56個の個々の細胞系統を産生した。
【0225】
これらの細胞系統の10個を混合し、抗−RhD rpAb製造細胞系統を産生し、これは培養の9週間後にもなお初めの多様性の90%を維持していた。培養の11週間後、6つの異なるクローンに由来するmRNAは明確に同定され得、及び幾つかの他のクローンは約500bpのバンドで示されているようだ。
【0226】
ポリクローナルCHO−Flp−In(019)細胞系統の2つのアリコートがクローン多様性に関して同様の結果を示したという事実は、再現可能な結果を得ることができることを示した。
【0227】
実施例2
より大規模な産生のためのワーキングセルバンクの産生
ポリクローナル細胞系統を構成するために、27個の細胞培養物を選択した(RhD157.119D11,RhD159.119B09,RhD160.119C07,RhD161.119E09,RhD162.119G12,RhD163.119A02,RhD189.181E07,RhD191.119E08,RhD192.119G06,RhD196.126H11,RhD197.127A08,RhD199.164E03,RhD201.164H12,RhD202.158E07,RhD203.179F07,RhD207.127A11,RhD240.125A09,RhD241.119B05,RhD244.158B10,RhD245.164E06,RhD293.109A09,RhD301.160A04,RhD305.181E06,RhD306.223E11,RhD307.230E11,RhD319.187A11及びRhD324.231F07)。
【0228】
個々のクローン内の高度な多様性に加えて、クローン選択は、個々の細胞培養物の増殖及び産生特性に基づいた。
【0229】
細胞培養物レベルでの選択基準には:
I.倍加時間;24〜32時間である必要あり;
II:細胞内染色;同質の細胞集団を示す必要あり;
III:生産性;1細胞1日あたり1.5pgを超える必要あり;
が含まれた。
【0230】
27個の異なる細胞培養物を細胞数に関して等しく混合し、次いで、この混合物は抗−RhD rpAbのパイロットプラント産生のためのワーキングセルバンクを構成し得る。
【0231】
実施例3
本実施例は8つのメンバーを伴うポリクローナル細胞培養物の経時の特徴付けを示す。培養物のクローン多様性を、RFLP分析を用いて遺伝子レベルで、及び一次元クロマトグラフィー技法を用いて蛋白質レベルで評価した。
【0232】
本実施例のポリクローナル細胞系統は以下の8つのメンバーを構成した:RhD191.119E08,RhD196.126H11,RhD201.164H12,RhD203.179F07,RhD244.158B10,RhD306.223E11,RhD319.187A11及びRhD324.231F07。
【0233】
該実施例において、それらは簡単に以下RhD191,RhD201,RhD203,RhD244,RhD306,RhD319及びRhD324として記載される。
【0234】
ポリクローナル細胞培養物におけるクローン多様性を評価するためのRFLP分析
8つの異なる抗−RhD抗体を発現するポリクローナル細胞培養物における個々のクローンの分布をポリクローナル細胞系統に由来するRT−PCR産物のターミナルRFLP(T−RFLP)分析により評価した。T−RFLP法において1又は複数のフォワード及び/又はリバースプライマーは蛍光標識され、それ故に、単位複製配列から産生される制限フラグメント部分は標識を含み得る。次いで、標識されたフラグメントはキャピラリー電気泳動により分離され、次いで、蛍光により検出され得る。該分析は用いるプライマーに応じて軽鎖−及び重鎖可変領域−コーディング配列の両方において実行され得る。
【0235】
すなわち、200個の細胞に対応する細胞懸濁液をPBSで1回洗浄し、次いで、凍結解凍手順に付し、One−Step RT−PCRキット(Qiagen)及び適切なプライマーを用いるRT−PCR増幅における鋳型として用いる溶解物を作成する。
【0236】
以下の条件を用いてRT−PCRを標準的なサーマルサイクラーにて行った:
【表13】
【0237】
軽鎖の分析のために、以下のプライマーをRT−PCR増幅用に用いた。リバースプライマーは標識された6−カルボキシフルオレセイン(FAM)であり、そのプライマー配列は以下:
VLフォワードプライマー:5'-TCTCTTCCGCATCGCTGTCT
CLリバースプライマー:5'-FAM-AGGAAAGGACAGTGGGAGTGGCAC
の通りであった。
【0238】
20μlのRT−PCR産物をNEB1中、1UのNheI、1UのPstI及び1UのHinfI(全てNew England Biolabsから)で2時間消化した。
【0239】
Statens Serum Institute,Copenhagen,DKにおけるABI3700(Applied Biosystems)での蛍光キャピラリー電気泳動により、標識されたフラグメントを検出した。
【0240】
各抗−RhD抗体産生細胞クローンについて予期されるフラグメントを表6に示し、及びFAM標識されたフラグメントを太字で示す。
【0241】
表6
【表14】
【0242】
T−RFLPパターンを図10に示す。8個の抗−RhD抗体産生クローンは全て特異的ピークに割り当てられた。RT−PCRの間に鋳型/プライマーの競合がないという想定の下で、相対的ピーク面積は、ポリクローナル細胞系統中に示された各抗体軽鎖遺伝子から転写されたmRNAの相対量に対応し得る。
【0243】
同一のポリクローナル細胞系統内の重鎖可変領域の分析のために、VH−特異的プライマーを用いてRT−PCR増幅を行った。該プライマー配列は以下:
VHフォワードプライマー:5'-FAM CGTAGCTCTTTTAAGAGGTG
VHリバースプライマー:5'-HEX-ACCGATGGGCCCTTGGTGGA
の通りであった。
【0244】
20μlのRT−PCR産物をNEB2中、1UのRsaI及び1UのNdeI(全てNew England Biolabsから)で2時間消化した。
【0245】
標識されたフラグメントをABI3700での蛍光キャピラリー電気泳動により検出した。該分析はStatens Serum Institute,Copenhagen,DKにより行われた。
【0246】
予期されるT−RFLPパターンを表7に示す。ここで、FAM標識されたフラグメントを太字で示し、及びHEX(6−カルボキシ−2’,4,4’,5,7,7’−ヘキサクロロフルオレセインスクシンイミジルエステル)標識されたフラグメントを下線で示す。
【0247】
表7
【表15】
【0248】
ポリクローナル細胞系統を5週間培養し、及びT−RFLP分析のために週に1回試料を採取した。該分析は可変重鎖について行ったが、所望により軽鎖について行ってもよい。
【0249】
制限フラグメントのキャピラリー電気泳動の後、相対的ピーク面積を積分し、次いで、ポリクローナル細胞培養物のクローン多様性を評価するために用いた。経時の相対量を図12に示す。
【0250】
これらの結果に基づいて、RhD196は経時で増大するが、RhD203は減少するようだ。他のクローンの量は培養期間中極めて安定であり、及び全8個のcDNAは培養の5週間後に検出され得る。
【0251】
軽鎖及び重鎖の両方並びにmRNA及びDNAの両方についてT−RFLPを行うことにより、例えばインビトロでの細胞齢の限界における又は培養中の任意の特定の時間ポイントにおける細胞において、ポリクローナル細胞培養物内のクローン多様性の正確なフィンガープリントを得ることが可能となろう。
【0252】
故に、該技法を用いて、抗体産生の間、細胞培養物におけるクローン多様性の安定性を経時でモニターすることができる。該技法を適用して、例えば、同一のpWCBから凍結された異なるアンプルの、又は2回以上の製造ラン後に回収された細胞において、バッチ間の一貫性をモニターすることができる。
【0253】
ポリクローナル細胞培養物におけるクローン多様性を評価するための陽イオン交換クロマトグラフィー分析
上記したT−RFLP分析において用いられるような同一のポリクローナル細胞培養から産生されたポリクローナル抗体を、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて分析した。25mMの酢酸ナトリウム、150mMの塩化ナトリウム、pH5.0中の、組換えにより産生された蛋白質A精製ポリクローナル抗体を、室温、60ml/時間の流速でPolyCatAカラム(4.6×100mm)にアプライした。次いで、60ml/時間の流速で25mMの酢酸ナトリウム、pH5.0中の150〜350mM塩化ナトリウムからの直線勾配を用いて抗体成分を溶離した。抗体成分を280nmにおいて分光測定的に検出し、次いで、クロマトグラムを積分し、次いで、個々のピークの面積を用いて抗体成分を定量化した。経時の相対量を図13に示す。
【0254】
概要
RFLP分析により遺伝子レベルで得られた結果及び陽イオン交換クロマトグラフィーにより蛋白質レベルで得られた結果は類似している。図12及び13は、ポリクローナル細胞系統の個々のクローン及び細胞系統から発現されたポリクローナル抗体の個々の抗体大部分が5週間の培養の間に同一の傾向をたどることを明確に示す。故に、遺伝子及び蛋白質レベルでの分析は、遺伝子レベルでの細胞系統の、及び細胞系統から産生された組換えポリクローナル蛋白質の組成多様性を評価するための優れた等価物である。
【0255】
実施例4
本実施例は、25個のメンバーを伴うポリクローナル細胞培養物の経時の特徴付けを示す。培養物のクローン多様性は、T−RFLP分析を用いて遺伝子レベルで、及び一次元クロマトグラフィー技法を用いて蛋白質レベルで評価した。
【0256】
本実施例のポリクローナル細胞系統は、表8において同定される25個のメンバーを構成した。さらに、個々のクローンの増殖特性を表8に示す。
【0257】
表8
【表16】
a データは2つのELISA測定の平均を示す
b RhDVI反応性
c データ利用できず
【0258】
以下、一般的に、クローン名はそれらの最初の3つの数字のみを用いて同定され、例えば、RhD157.119D11はRhD157として記載される。
【0259】
5週間の培養期間にわたって25個の異なる抗−RhD抗体を発現するポリクローナル細胞培養物に由来する重鎖遺伝子の可変部分のT−RFLP分析
【0260】
本実施例において調べられるポリクローナル細胞培養物は、25個の異なる抗−RhD抗体(実施例1に記載の通り産生された)を発現する細胞培養物の混合物から構成された。ポリクローナル細胞培養物を5週間にわたって培養し、及びT−RFLP分析のために週に1回試料を採取した。
【0261】
実施例3に記載したVH−特異的プライマーを用いてRT−PCRを行い、及び制限断片化を同様に行った。
【0262】
全遺伝子型が存在するならば、25個の異なる抗−RhDコーディング配列のT−RFLPは、17個の異なるFAM標識されたフラグメントをもたらす。幾つかのフラグメントは最高3つの異なる遺伝子型を示すが、他のものは単一遺伝子型を示し得る。FAM標識されたフラグメントの予期されるサイズを、異なるFAM標識されたフラグメントの経時的な相対量と共に表9に示す。さらに、T−RFLP特性の一例を図11に示す。
【0263】
表9
【表17】
【表18】
【0264】
細胞系統を構成する25個のクローンのうち12個の個々のクローンに関する情報を獲得できる程度に制限フラグメントを分離することができた。残りのクローンについてより多くの情報を得るために、残りのフラクションを潜在的にシークエンスに付すことができる。
【0265】
25個の異なる抗−RhD抗体を発現するポリクローナル細胞培養物においてクローン多様性を評価するための陽イオン交換クロマトグラフィー分析
【0266】
上記したT−RFLP分析において用いたものと同一のポリクローナル細胞培養物から産生されたポリクローナル抗体を、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて分析した。蛋白質A精製した組換えにより産生されたポリクローナル抗体を、25mMの酢酸ナトリウム、150mMの塩化ナトリウム、pH5.0中、室温、60ml/時間の流速でPolyCatAカラム(4.6×100mm)にアプライした。次いで、25mMの酢酸ナトリウム、pH5.0中の150〜350mMの塩化ナトリウムからの直線勾配を用いて60ml/時間の流速で抗体成分を溶離した。抗体成分を280nmにおいて分光測定的に検出し、次いで、クロマトグラムを積分し、次いで、個々のピークの面積を用いて異なる抗体成分を定量化した。図14は、4週目に得られた試料から作成されたクロマトグラムを示し、該抗体は番号1〜25のピークを含む。該クロマトグラムは分析されたポリクローナル抗体中の個々の抗体の数と同じ数のピークを含むというのが真に一致した見解である。表10は、全抗体成分のパーセント単位での相対的含有量(AC1〜25)及び各抗体成分における個々の抗体の表示(ピーク)を示す。積分したクロマトグラフィーピークへの個々の抗体の割り当ては、同一の条件下で陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて分析したモノクローナル抗体から得られた保持時間及びピークパターンに基づいた。
【0267】
表10
【表19】
【表20】
【0268】
陽イオン交換クロマトグラフィーは、個々のメンバー間の正味電荷における差異に基づいてポリクローナル抗体から個々の抗体メンバーを分離し、及びさらには電荷不均一性を示す個々の抗体の形態を分離する。故に、幾つかの抗体は単一ピーク、例えば、RhD293及びRhD319を含むAC1にて示され(表10を参照のこと)、及び幾つかの個々の抗体はさらに幾つかのクロマトグラフィーピークにて示され、例えば、RhD319はAC1及び5の両方に存在する(表10を参照のこと)。
【0269】
1以上の個々の抗体を含むピークは、抗−イディオタイプペプチド、蛋白分解性ペプチドマッピング、N−末端シークエンス又は二次元クロマトグラフィーを用いる定量分析のごときさらなる蛋白質の化学的特徴付け技法に付すことができる。
【0270】
概要
本実施例は、一次転写産物及び抗体成分それぞれの分布を培養期間にわたって評価するためのT−RFLP分析及び陽イオン交換クロマトグラフィーの併用を記載している。T−RFLP分析は、ポリクローナル細胞系統において発現された25個のクローンのうち12個の個々のクローンの一意的同定を可能とし、及び本実施例では、これらの12個のクローンがT−RFLP分析を用いて4週間の培養の間に検出され得ることが記載されている。潜在的に、より多くのクローンが、1以上のクローンを示すフラグメントの配列分析により同定され得る。抗体成分の分布は陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて分析され、及び本実施例では、25個の分析した成分の分布は培養の間、相対的に安定であることが示されている。発現された抗体の固有の電荷不均一性に起因して全ての個々の抗体の一意的同定は困難であるが、本実施例では、RhD160、293及び196クローンを示す群13について得られた高いT−RFLP値に従って、RhD160抗体を示す抗体成分8が培養期間中に最も高い抗体レベルを示すことが実証された。さらに、T−RFLP及び陽イオン交換クロマトグラフィーにより一意的に同定され得るRhD207成分は、10〜11%のT−RFLPレベル、及び抗体レベルでは若干より低い5.5〜10%が得られた。概して、2つの技法は共に、mRNA及び抗体レベルでの培養中の相対的に安定な産生を示すが、2つの技法の間にある潜在的な相違も見られ、これは、抗体レベルで得られた結果と対照的に、培養5週間目において幾つかのクローンの転写が明らかに減少することにより説明され得る。故に、本実施例は、複雑なポリクローナル蛋白質の安定な産生が可能な培養期間を定めるための両技法の相補的な使用を証明する。
【0271】
実施例5
本実施例は、25個の個々のメンバーを伴う抗−RhD rpAbを含むpWCBの産生を示し、及びpWCBに由来する異なるバイアルから精製されたrpAb産物の最小のバッチ間差異を立証する。
【0272】
pWCBの産生
25個の個々のメンバーを伴う抗−RhD rpAbを含むpWCBを産生するために、25個の保存されたモノクローナル抗−RhD抗体産生細胞系統(RhD157,159,160,162,189,191,192,196,197,199,201,202,203,207,240,241,245,293,301,305,306,317,319,321,324)各々の1つのバイアルを4mMグルタミン含有ExCell302培地中で解凍し、次いで、500μg/mlのG418及び1:250希釈した抗クランピング物質を加えた同一の培地中で3週間増殖させた。次いで、各培養物からの等数の細胞(2×106)を慎重に混合し、次いで、標準的な凍結法を用いて液体窒素で凍結した(5×107細胞/バイアル)。
【0273】
バイオリアクターにおける培養
pWCBに由来するバイアルをT75フラスコ(Nunc,Roskilde,Denmark)中で解凍し、次いで、スピナーフラスコ(Techne,Cambridge,UK)で増殖させた。5Lのバイオリアクター(Applikon,Schiedam,Netherlands)に1.5L中の0.6×106細胞/mlを接種した。リアクターのラン中、毎日、濃縮フィード溶液、グルタミン及びグルコースを加えたExCell302培地を細胞に与え、最終容量は4.5Lだった。バイオリアクターのランを16〜17日後に終了した。3つのバッチをSym04:21、Sym04:23及びSym04:24と名付けた。該バッチを異なる時間ポイントで培養した。
【0274】
バッチ間差異の分析
HiTrap(登録商標)rProtein Aカラム(GE Healthcare,UK)を用いるアフィニティークロマトグラフィーにより、組換えポリクローナル抗体試料を精製した。
【0275】
25mMの酢酸ナトリウム、150mMの塩化ナトリウム、pH5.0中、60ml/時間の流速(室温)で、PolyCatAカラム(4,6×100mm,PolyLC Inc.,MA,US)を利用する陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、精製した組換えポリクローナル抗体試料を分析した。次いで、25mMの酢酸ナトリウム、pH5.0中、150mM〜350又は500mMのNaClからの直線勾配を用いて60ml/時間の流速で抗体ピークを溶離した。抗体ピークを280nmにおいて分光測定的に検出した。クロマトグラムを積分し、次いで、個々のピークの面積を定量化に用いた。既に記載したように、幾つかの個々の抗体は電荷不均一性を示し、及び2つの抗体はIEXクロマトグラムにおける同一のピークに寄与してもよい。
【0276】
表11は、全抗体成分(AC)におけるパーセント単位での相対的含有量を示す。実施例4では25個のACについてのみ相対的面積を算出したが、本実施例では、相対的面積を35個のACについて算出した。この差異は、クロマトグラムにおけるピークの割り当ての差異に厳密に起因しており、特性自体における実際的な差異に起因するものではない。
【0277】
表11
【表21】
【0278】
表11は、3つのバッチに由来する回収された抗体産物の再現性が高かったことを示す。個々の抗体ピークのサイズにおける差異は大部分の抗体成分について20%以内であったが、最も小さいピークの幾つかについての差異は若干大きかった。
【0279】
実施例6
本実施例は、25個の個々のメンバー(実施例4のものと同一の組成物)を伴う抗−RhD rpAbの異なるバッチが同様の能力でRhD−陽性赤血球に結合し、及び関連するエフェクター機序に関して同等の生物学的活性:抗体−依存性細胞傷害活性(ADCC)及び貪食性を示すことを実証している。
【0280】
赤血球細胞の調製
1%のウシ血清アルブミン(BSA,Sigma−Aldrich,Germany)含有のPBS(Gibco,Invitrogen,United Kingdom)中で血液を3回洗浄することにより、Aalborg Hospital,DKの血液バンクにおいてインフォームド・コンセント後の健常ドナーから得られた全血液から赤血球細胞(RBC)を調製した。赤血球をID−Celltab(DiaMed,Switzerland)中の10%の溶液として再懸濁し、次いで、4℃で貯蔵した。
【0281】
PBMCの調製
健常ドナーに由来する軟膜含有血液をNational Hospital,Copenhagen,Denmarkの血液バンクから得、次いで、末梢血単核細胞(PBMC)をLymphoprep(Axis−Shield,Norway)にて精製した。
【0282】
能力アッセイ
能力アッセイをヨーロッパ薬局方4(セクション2.7.13方法C)から採用した。25個の個々のメンバーと抗−RhD rpAbの結合能を、PBS、1%BSA中、5×104細胞/μlでRhD−陽性赤血球を用いて測定した。抗−RhD rpAbバッチ、Sym04:21、Sym04:23及びSym04:24を個々の5Lのフェッドバッチバイオリアクターラン(fed batch bioreactor run)から得た。96ウェルプレート(Becton Dickinson Labware,NJ,USA)中、三つ組で、抗−RhD rpAbバッチの希釈(1.5倍)をPBS、1%のBSA中で行った。50μlの抗−RhD rpAb希釈を50μlの赤血球と混合し、次いで、37℃で40分間インキュベーションした。細胞をPBS、1%BSA中で2回(300×g,2分間)洗浄した。PBS、1%BSA中1:20希釈した80μlのフィコエリトリン−コンジュゲートヤギ抗−ヒトIgG(Beckman Coulter,CA,USA)を各試料に加え、次いで、4℃で30分間放置した。試料をPBS、1%BSA及びFacsFlow(Becton Dickinson,Belgium)(300×g,2分間)中で洗浄し、次いで、200μlのFACSFlow中に再懸濁した。試料をFACSCalibur(BectonDickinson,CA,USA)に付し、次いで、CellQuest Pro及びExcelを用いてデータ分析を行った。3つの個々の抗−RhD rpAbバッチはRhD−陽性赤血球と本質的に同一の結合能力を示した(図15A)。
【0283】
複合ADCC及び貪食性アッセイ
このアッセイをBerkmanら.2002.Autoimmunity35,415−419から採用した。すなわち、RhD陽性(RhD+)及びRhD陰性(RhD−)赤血球細胞(RBC)を放射性クロムで標識した。Cr51標識のために、1×108のRhD+及びRhD−RBCをそれぞれ遠心分離し(600×gで10分間)、次いで、100μlのダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)及び200μlのクロム酸ナトリウム(0.2μCi)(GE Healthcare,UK)を各チューブに加え、その後、37℃で1.5時間インキュベーションした。懸濁液を50mlのPBS中で2回洗浄し、次いで、1mlの完全DMEM(2mMのグルタミン,1%のペニシリン−ストレプトマイシン及び10%のウシ胎児血清含有)(Invitrogen,CA,US)中で再懸濁した。細胞を4×106細胞/mlに調節し、次いで、50μl/ウェルを96−ウェル細胞培養プレート(Nunc)に加えた。次いで、バッチSym04:21又はSym04:24に由来する50μlの2倍希釈の抗−RhD rpAbを対照のウェルを除く各ウェルに加えた。対照のウェルに完全DMEMを加え、次いで、自然溶解/保持又は最大溶解のいずれかのために用いた。
【0284】
PBMCを2×107細胞/mlに調節し、次いで、100μlを各ウェルに加え、次いで、37℃で一晩インキュベーションした。100μlの1%のトリトン−X−100(Merck,Germany)を最大溶解対照ウェルに加えた。プレートを遠心分離し(600×gで2分間)、次いで、50μlの上清をADCC Lumaplate(Perkin Elmer,Belgium)に移した。
【0285】
上清を移した後、細胞培養プレートを遠心分離し(300×gで2分間)、次いで、最大溶解ウェルからの50μlの上清を別のLumaplate(貪食性Lumaplate)に移した。細胞培養プレートにおいて、上清を残りのウェルから除去し、次いで、溶解バッファー(140mMのNH4Cl,17mMのトリス−HCl)を加え、次いで、5分間37℃でインキュベーションした。NH4ClはRBCを溶解するが、PBMCフラクションはそのままであり、それ故に、貪食されたRBCはインタクトのままである。RBCを溶解した後、プレートを遠心分離し(4℃,2分間,300g)、ペレットをPBS中で2回洗浄し、次いで、100μlのPBS中に再懸濁した。100μlの1%のトリトン−X−100をウェルに加え、食作用性PBMCを溶解し、次いで、50μlの溶解物を貪食性Lumaplateに移した。Lumaplateを一晩40℃で乾燥し、次いで、TopCount NXT(Packard,CT,USA)にて計数した。全データをExCellに入力し、次いで、Berkmanら.2002,Autoimmunity 35,415−419に記載されたように分析した。すなわち、以下の通り演算処理を行った:
【0286】
ADCC:免疫溶解(%)
=(平均試験放出Cr51−平均自然放出Cr51)/(標的赤血球中の全Cr51−マシンバックグラウンド)×100
貪食性:免疫貪食性(%)
=(平均試験保持Cr51−平均自然保持Cr51)/(標的赤血球中の全Cr51−マシンバックグラウンド)×100
【0287】
全データを、複合した最大プラトー値に対して正規化した。
【0288】
2つの連続したリアクターランに由来する抗−RhD rpAbの機能活性は、両インビトロアッセイにおいてほぼ同一の機能活性を示し(図15B及び15C)、バッチ間で高い一貫性を示した。
【0289】
実施例7
本実施例は、25個の個々のメンバー(実施例4と同一の組成物)を伴う抗−RhD rpAbのクローン多様性が下流プロセッシング(DSP)の間維持されていることを実証している。陽イオン交換クロマトグラフィー分析を用いて、組換えポリクローナル抗体のDSPの間のクローン多様性を評価した。
【0290】
下流プロセッシング
発展的(developmental)バイオリアクターランに由来する、25個の個々のメンバーを含む抗−RhD rpAb試料を以下のDSP段階:
1.MAbSelectカラムを用いる抗体の捕獲;
2.pH3におけるウイルス不活性化;
3.SephadexG−25カラムを用いるバッファー交換;
4.DEAE−Sepharoseカラムを用いる陰イオン交換クロマトグラフィー;
5.Planova 15Nフィルターを用いるウイルス濾過;及び
6.MEP Hypercelカラムを用いる疎水性電荷誘導クロマトグラフィー;
7.Millipore biomaxフィルターを用いる限外濾過/ダイアフィルトレーション:
を用いて精製した。
【0291】
個々のDSP段階後のクローン多様性の分析
陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、DSPの間の組換えポリクローナル抗体組成物のクローン多様性を分析した。抗−RhD rpAbのDSPの間、段階1、3、4及び6の後に試料を採取し、25mMの酢酸ナトリウム、150mMの塩化ナトリウム、pH5.0中、室温、60ml/時間の流速でPolyCatAカラム(4.6×100mm)にアプライした。次いで、25mMの酢酸ナトリウム、pH5.0中、150〜500mMの塩化ナトリウムからの直線勾配を用いて60ml/時間の流速で抗体成分を溶離した。抗体成分を280nmにおいて分光測定的に検出し、次いで、クロマトグラムを比較し(図16)、DSPの間のクローン多様性の潜在的な減少を検出した。本実施例では、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、組換えポリクローナル抗体のDSPの間にクローン多様性が本質的に変化しないことが実証された。
【図面の簡単な説明】
【0292】
【図1】組換えポリクローナル製造細胞系統の作成及び組換えポリクローナル抗体の産生を示すフローチャートである。
【図2】個別にトランスフェクトされた宿主細胞に由来するpWCB/pMCB及びサブ−pWCBの作成及びポリクローナル製造細胞系統の播種を示すフローチャートである。
【図3】ファージディスプレイベクター:Em351,イー・コリベクターを示す。
【図4】Neo発現ベクター:哺乳類発現ベクターの略図を示す。
【図5】9週間の培養後のアリコート3948及び3949に由来する抗−RhD rpAb組成物の陽イオン交換クロマトグラムを示す。
【図6】5週間培養されたポリクローナル細胞培養物に由来する8つの異なる抗−RhD重鎖コーディング配列のT−RFLPにより評価されたcDNA分布を示す。
【図7】陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて分析した、8つの異なる抗体に関する抗−RhD rpAbの相対的含有量(%)を示す。
【図8】4週間の培養後に得られた試料に由来する25個の個々のメンバーに関する抗−RhD rpAbの陽イオン交換クロマトグラムを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗−RhD組換えポリクローナル抗体の発現のための製造細胞系統として適切な細胞群を産生するための方法であって、
a)抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーを提供する段階であって、ここで、前記ライブラリーの各個々のベクターが、1)抗−RhDポリクローナル抗体の異なるメンバーをコードする核酸セグメントの1つの単一コピー、及び2)1つ以上のリコンビナーゼ認識配列を含む、段階;
b)抗−RhD抗体発現ベクターの前記ライブラリーを宿主細胞系統に導入する段階であって、ここで、前記宿主細胞系統の各個々の細胞のゲノムは、そのゲノム内で前記ベクターのものと整合するリコンビナーゼ認識配列を含む、段階;
c)段階(a)の抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントが宿主細胞系統の細胞内に部位特異的に組み込まれるように、1つ以上のリコンビナーゼの前記細胞内での存在を保証する段階であって、ここで、前記1つ以上のリコンビナーゼは、i)前記核酸セグメントが導入される前記細胞により発現されるか;ii)段階(a)のベクターにより操作可能な形でコードされるか;iii)第2のベクターからの発現を通して提供されるか;又はiv)1つの蛋白質として前記細胞に提供されるかのいずれかである、段階;及び
d)抗−RhD抗体発現ベクターの前記ライブラリーから、抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントの組込まれたコピーを含む細胞を選択する段階:
を含む、方法。
【請求項2】
抗−RhD抗体発現ベクターの前記ライブラリーが、前記ベクターライブラリーの個々のメンバーを用いて別々に前記宿主細胞をトランスフェクションすることによって前記宿主細胞系統内に導入され、及び前記細胞が、段階(d)の選択の後に、組換えポリクローナル製造細胞系統として適切な細胞群を形成するべくプールされる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
抗−RhD抗体発現ベクターの前記ライブラリーが、前記ベクターライブラリーの5〜50個の個々のベクターを含むフラクションを用いた前記宿主細胞のアリコートの半バルクトランスフェクションにより前記宿主細胞系統内に導入され、及び前記細胞が、段階(d)の選択の後に、組換えポリクローナル製造細胞系統として適切な細胞群を形成するべくプールされる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
抗−RhD抗体発現ベクターの前記ライブラリーが、前記ベクターライブラリーを用いた前記宿主細胞の一群のバルクトランスフェクションにより前記宿主細胞系統内に導入される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーが抗−RhD組換えポリクローナル抗体をコードし、ここで、個々のメンバーの少なくとも1つはepD3、epD4及びepD9(RhDカテゴリーVI抗原)に特異的に結合し、及びさらなるメンバーは単独又は組み合わせて残りのRhD抗原エピトープ、epD1、epD2、epD5、epD6/7及びepD8に結合する、前記請求項いずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
抗−RhD抗体発現ベクターの前記ライブラリーが、表3の異なるクローン名により特定できる核酸配列の対に対応するVH:LC対の1つから選択されるCDR1、CDR2及びCDR3領域を各々含む変異体核酸セグメントを内含する、前記請求項いずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
VH:LC対に由来するCDR1、CDR2及びCDR3領域がクローン名RhD157.119D11、RhD158.119B06、RhD159.119B09、RhD161.119E09、RhD163.119A02、RhD190.119F05、RhD191.119E08、RhD192.119G06、RhD197.127A08及びRhD204.128A03により同定される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
VH:LC対に由来するCDR1、CDR2及びCDR3領域が、クローン名RhD157.119D11、RhD159.119B09、RhD160.119C07、RhD162.119G12、RhD189.181E07、RhD191.119E08、RhD192.119G06、RhD196.126H11、RhD197.127A08、RhD199.164E03、RhD201.164H12、RhD202.158E07、RhD203.179F07、RhD207.127A11、RhD240.125A09、RhD241.119B05、RhD245.164E06、RhD293.109A09、RhD301.160A04、RhD305.181E06、RhD306.223E11、RhD317.144A02、RhD319.187A11、RhD321.187G08及びRhD324.231F07により同定される、請求項6記載の方法。
【請求項9】
抗−RhDポリクローナルの異なるメンバーをコードする核酸セグメントの前記単一コピーが、前記細胞群内の各個々の細胞の単一の所定の遺伝子座内に組み込まれており、前記遺伝子座が前記組換えポリクローナル抗体の各メンバーの高レベル発現を媒介し得る、前記請求項いずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞群が哺乳類細胞系統又は細胞型から誘導される、前記請求項いずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記哺乳類細胞系統が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS細胞、BHK細胞、YB2/0、NIH3T3、骨髄腫細胞、繊維芽細胞、HeLa、HEK293、PER.C6及びそれらから誘導された細胞系統からなる群より選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
ポリクローナルワーキングセルバンクを作成するための方法であって、
a)可変領域コーディング核酸セグメントから構成されるライブラリーの個々のメンバーを用いて個々にトランスフェクションした宿主細胞から得られた細胞系統の一群を提供する段階であって、ここで、トランスフェクションされた各個々の細胞系統はポリクローナル蛋白質の異なるメンバーを産生する、段階;
b)前記各細胞系統から増殖させた所定の数の細胞を混合する段階;及び
c)混合物のアリコートを凍結する段階:
を含む、方法。
【請求項13】
段階c)において得られたアリコートを解凍し、次いで、総細胞数を産生するのに十分な多世代間にわたり増殖させ、新たな一連のアリコート(サブ−pWCB)として凍結し、ここで、前記サブ−pWCBの各アリコート中の細胞数は解凍した前記アリコート中とほぼ同じである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
可変領域コーディング核酸セグメントから構成される前記ライブラリーが抗体VH及びVLコーディング核酸セグメントから構成されるライブラリーである、請求項12又は13記載の方法。
【請求項15】
抗体VH及びVLコーディング核酸セグメントから構成される前記ライブラリーが抗−RhD組換えポリクローナル抗体をコードしている、請求項14記載の方法。
【請求項16】
細胞を混合する前に、同様の増殖速度及び/又は生産性を有するように前記個々の細胞系統が選択される、請求項12〜15いずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
同様の生産性に関して前記個々の細胞系統がFACS分析により選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
同様の生産性及び/又は増殖速度に関して前記個々の細胞系統がロボットにより選択される、請求項16記載の方法。
【請求項19】
選択された前記細胞系統が22〜40時間の増殖速度及び/又は1.5pg/(細胞*日)を超える生産性を有する、請求項16〜18いずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記個々の細胞系統がクローン細胞系統である、請求項12〜19いずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
各個々の細胞系統が、ポリクローナルワーキングセルバンクの他のメンバーにより産生された抗体の特性とは異なる特性を有する全長抗体を産生する、請求項12〜20いずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記個々の細胞系統が等比で混合される、請求項12〜21いずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記個々の細胞系統が異なる比で混合される、請求項12〜21いずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
ポリクローナルワーキングセルバンクの他のメンバーと比較して、特定抗原に結合する抗体を産生する1つ以上の個々の細胞系統の比が増大している、請求項23記載の方法。
【請求項25】
より速い増殖速度により特徴付けられるポリクローナルワーキングセルバンクの他のメンバーと比較して、より遅い増殖速度を有することにより特徴付けられる1つ以上の個々の細胞系統の比が増大している、請求項23記載の方法。
【請求項26】
個々の細胞系統の一群に由来する所定の数の細胞の混合物を含むポリクローナルワーキングセルバンクであって、ここで、各個々の細胞系統は、可変領域コーディング核酸セグメントから構成されるライブラリーの個々のメンバーを用いて個々にトランスフェクションされた宿主細胞から得られ、及び各個々の細胞系統はポリクローナル蛋白質の異なるメンバーを産生し、並びに前記pWCBがアリコートとして凍結されている、ポリクローナルワーキングセルバンク。
【請求項27】
前記個々の細胞系統が同様の増殖速度及び/又は生産性を有する、請求項26記載のポリクローナルワーキングセルバンク。
【請求項28】
前記個々の細胞系統がクローン細胞である、請求項26又は27記載のポリクローナルワーキングセルバンク。
【請求項29】
前記個々の細胞系統が異なる比で混合されている、請求項26〜28いずれか1項に記載のポリクローナルワーキングセルバンク。
【請求項30】
抗−RhD組換えポリクローナル抗体の製造方法であって、
a)請求項14に従属する請求項15又は請求項16〜25記載のポリクローナルワーキングセルバンクを提供するか、又は変異体抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントのライブラリーを含む細胞群を提供する段階であって、ここで、前記群中の各個々の細胞は、前記抗−RhDポリクローナル抗体の異なるメンバーをコードする核酸セグメントの単一コピーを含み、前記コピーは、各個々の細胞のゲノムの同じ部位に組み込まれている、段階;
b)前記組換えポリクローナル抗体の発現を容易にする条件の下で、前記ポリクローナルワーキングセルバンク又は細胞群を培養する段階;及び
c)細胞培養物、細胞又は上清から前記発現された組換えポリクローナル抗体を回収する段階:
を含む、方法。
【請求項31】
回収された組換えポリクローナル抗体をさらなる精製に付す、請求項30記載の方法。
【請求項32】
請求項1〜11いずれか1項に記載の方法に従って段階(a)の細胞群が産生される、請求項30又は31記載の方法。
【請求項33】
変異体抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントの集団を含む、部位特異的組込み用の抗−RhD発現ベクターのライブラリーであって、ここで、前記ベクターの各々は、1)抗−RhDポリクローナル抗体の異なるメンバーをコードする核酸セグメントの1つのコピー、及び2)1つ以上のリコンビナーゼ認識配列を含むものである、ライブラリー。
【請求項34】
変異体抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントの前記集団の個々のメンバーの少なくとも1つが、epD3、epD4及びepD9(RhDカテゴリーVI抗原)に特異的に結合する抗−RhD抗体をコードし、並びにさらなるメンバーが単独又は組み合わせて残りのRhD抗原エピトープ、epD1、epD2、epD5、epD6/7及びepD8に結合する、請求項33記載のライブラリー。
【請求項35】
表3の異なるクローン名により特定できる核酸配列に対応するVH:LC対の1つから選択されるCDR1、CDR2及びCDR3領域を各々含む変異体核酸セグメントを内含する、請求項33又は34記載のライブラリー。
【請求項36】
VH:LC対に由来するCDR1、CDR2及びCDR3領域がクローン名RhD157.119D11、RhD158.119B06、RhD159.119B09、RhD161.119E09、RhD163.119A02、RhD190.119F05、RhD191.119E08、RhD192.119G06、RhD197.127A08及びRhD204.128A03により特定される、請求項35記載のライブラリー。
【請求項37】
VH:LC対に由来するCDR1、CDR2及びCDR3領域がクローン名RhD157.119D11、RhD159.119B09、RhD160.119C07、RhD162.119G12、RhD189.181E07、RhD191.119E08、RhD192.119G06、RhD196.126H11、RhD197.127A08、RhD199.164E03、RhD201.164H12、RhD202.158E07、RhD203.179F07、RhD207.127A11、RhD240.125A09、RhD241.119B05、RhD245.164E06、RhD293.109A09、RhD301.160A04、RhD305.181E06、RhD306.223E11、RhD317.144A02、RhD319.187A11、RhD321.187G08及びRhD324.231F07により特定される、請求項35記載のライブラリー。
【請求項38】
各セグメントが、表3の異なるクローン名により特定できる核酸配列の対に対応するVH:LC対の1つから選択されるCDR1、CDR2及びCDR3領域を含む、抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントのライブラリー。
【請求項39】
VH:LC対に由来するCDR1、CDR2及びCDR3領域がクローン名RhD157.119D11、RhD158.119B06、RhD159.119B09、RhD161.119E09、RhD163.119A02、RhD190.119F05、RhD191.119E08、RhD192.119G06、RhD197.127A08及びRhD204.128A03により特定される、請求項38記載のライブラリー。
【請求項40】
VH:LC対に由来するCDR1、CDR2及びCDR3領域がクローン名RhD157.119D11、RhD159.119B09、RhD160.119C07、RhD162.119G12、RhD189.181E07、RhD191.119E08、RhD192.119G06、RhD196.126H11、RhD197.127A08、RhD199.164E03、RhD201.164H12、RhD202.158E07、RhD203.179F07、RhD207.127A11、RhD240.125A09、RhD241.119B05、RhD245.164E06、RhD293.109A09、RhD301.160A04、RhD305.181E06、RhD306.223E11、RhD317.144A02、RhD319.187A11、RhD321.187G08及びRhD324.231F07により特定される、請求項38記載のライブラリー。
【請求項41】
抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントのライブラリーを用いてトランスフェクションした細胞群を含む組換えポリクローナル製造細胞系統であって、ここで、前記群中の各細胞は、ライブラリーの1つのメンバーを発現し得るものであり、該メンバーは、抗−RhD組換えポリクローナル抗体の異なるメンバーをコードし、及び前記群中の個々の細胞のゲノム内の同じ部位に位置しており、前記核酸セグメントは群中の前記細胞と天然においては関連していないものである、組換えポリクローナル製造細胞系統。
【請求項42】
抗−RhDポリクローナルの異なるメンバーをコードする前記核酸セグメントが、前記細胞群中の各個々の細胞の単一の所定の遺伝子座内に組み込まれ、前記遺伝子座は前記組換えポリクローナル抗体の各メンバーの高レベル発現を媒介し得るものである、請求項41記載の組換えポリクローナル製造細胞系統。
【請求項43】
前記細胞群が哺乳類細胞系統又は細胞型から誘導されている、請求項41又は42記載の組換えポリクローナル製造細胞系統。
【請求項44】
前記哺乳類細胞系統が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS細胞、BHK細胞、YB2/0、NIH3T3、骨髄腫細胞、繊維芽細胞、HeLa、HEK293、PER.C6及びそれらから誘導された細胞系統からなる群より選択される、請求項43記載の組換えポリクローナル製造細胞系統。
【請求項45】
前記ライブラリーが請求項33〜40いずれか1項に記載のライブラリーである、請求項41〜44いずれかに記載の組換えポリクローナル製造細胞系統。
【請求項46】
請求項30又は32記載の方法により得られる抗−RhD組換えポリクローナル抗体。
【請求項47】
各個々のメンバーが、表3の異なるクローン名により特定できるアミノ酸配列の対に対応するVH:LC対の1つから選択されるCDR1、CDR2及びCDR3領域を含む、抗−RhD組換えポリクローナル抗体。
【請求項48】
個々のメンバーの少なくとも1つがepD3、epD4及びepD9(RhDカテゴリーVI抗原)に特異的に結合し、及びさらなるメンバーが単独又は組み合わせて残りのRhD抗原エピトープ、epD1、epD2、epD5、epD6/7及びepD8に結合する、請求項46又は47記載の抗−RhD組換えポリクローナル抗体。
【請求項49】
VH:LC対に由来するCDR1、CDR2及びCDR3領域がクローン名RhD157.119D11、RhD158.119B06、RhD159.119B09、RhD161.119E09、RhD163.119A02、RhD190.119F05、RhD191.119E08、RhD192.119G06、RhD197.127A08及びRhD204.128A03により特定される、請求項47又は48記載の抗−RhD組換えポリクローナル抗体。
【請求項50】
VH:LC対に由来するCDR1、CDR2及びCDR3領域がクローン名RhD157.119D11、RhD159.119B09、RhD160.119C07、RhD161.119E09、RhD162.119G12、RhD163.119A02、RhD189.181E07、RhD191.119E08、RhD192.119G06、RhD196.126H11、RhD197.127A08、RhD199.164E03、RhD201.164H12、RhD202.158E07、RhD203.179F07、RhD207.127A11、RhD240.125A09、RhD241.119B05、RhD244.158B10、RhD245.164E06、RhD293.109A09、RhD301.160A04、RhD305.181E06、RhD306.223E11、RhD307.230E11、RhD319.187A11及びRhD324.231F07により特定される、請求項47又は48記載の抗−RhD組換えポリクローナル抗体フラグメント。
【請求項51】
有効量の請求項46〜50の1項に記載の抗−RhD組換えポリクローナルが投与される、動物における処置、改善又は予防方法。
【請求項52】
新生児溶血性疾患の予防、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の処置、又はRhD(−)の個人にRhD(+)の血液を誤って輸血した後のRhD抗原に対する感作の予防のための組成物を調製するための、請求項46〜50の1項に記載の抗−RhD組換えポリクローナル抗体の使用。
【請求項53】
活性成分として請求項46〜50の1項に記載の抗−RhD組換えポリクローナル抗体及び医薬上許容される賦形剤を含有する、医薬組成物。
【請求項1】
抗−RhD組換えポリクローナル抗体の発現のための製造細胞系統として適切な細胞群を産生するための方法であって、
a)抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーを提供する段階であって、ここで、前記ライブラリーの各個々のベクターが、1)抗−RhDポリクローナル抗体の異なるメンバーをコードする核酸セグメントの1つの単一コピー、及び2)1つ以上のリコンビナーゼ認識配列を含む、段階;
b)抗−RhD抗体発現ベクターの前記ライブラリーを宿主細胞系統に導入する段階であって、ここで、前記宿主細胞系統の各個々の細胞のゲノムは、そのゲノム内で前記ベクターのものと整合するリコンビナーゼ認識配列を含む、段階;
c)段階(a)の抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントが宿主細胞系統の細胞内に部位特異的に組み込まれるように、1つ以上のリコンビナーゼの前記細胞内での存在を保証する段階であって、ここで、前記1つ以上のリコンビナーゼは、i)前記核酸セグメントが導入される前記細胞により発現されるか;ii)段階(a)のベクターにより操作可能な形でコードされるか;iii)第2のベクターからの発現を通して提供されるか;又はiv)1つの蛋白質として前記細胞に提供されるかのいずれかである、段階;及び
d)抗−RhD抗体発現ベクターの前記ライブラリーから、抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントの組込まれたコピーを含む細胞を選択する段階:
を含む、方法。
【請求項2】
抗−RhD抗体発現ベクターの前記ライブラリーが、前記ベクターライブラリーの個々のメンバーを用いて別々に前記宿主細胞をトランスフェクションすることによって前記宿主細胞系統内に導入され、及び前記細胞が、段階(d)の選択の後に、組換えポリクローナル製造細胞系統として適切な細胞群を形成するべくプールされる、請求項1記載の方法。
【請求項3】
抗−RhD抗体発現ベクターの前記ライブラリーが、前記ベクターライブラリーの5〜50個の個々のベクターを含むフラクションを用いた前記宿主細胞のアリコートの半バルクトランスフェクションにより前記宿主細胞系統内に導入され、及び前記細胞が、段階(d)の選択の後に、組換えポリクローナル製造細胞系統として適切な細胞群を形成するべくプールされる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
抗−RhD抗体発現ベクターの前記ライブラリーが、前記ベクターライブラリーを用いた前記宿主細胞の一群のバルクトランスフェクションにより前記宿主細胞系統内に導入される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
抗−RhD抗体発現ベクターのライブラリーが抗−RhD組換えポリクローナル抗体をコードし、ここで、個々のメンバーの少なくとも1つはepD3、epD4及びepD9(RhDカテゴリーVI抗原)に特異的に結合し、及びさらなるメンバーは単独又は組み合わせて残りのRhD抗原エピトープ、epD1、epD2、epD5、epD6/7及びepD8に結合する、前記請求項いずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
抗−RhD抗体発現ベクターの前記ライブラリーが、表3の異なるクローン名により特定できる核酸配列の対に対応するVH:LC対の1つから選択されるCDR1、CDR2及びCDR3領域を各々含む変異体核酸セグメントを内含する、前記請求項いずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
VH:LC対に由来するCDR1、CDR2及びCDR3領域がクローン名RhD157.119D11、RhD158.119B06、RhD159.119B09、RhD161.119E09、RhD163.119A02、RhD190.119F05、RhD191.119E08、RhD192.119G06、RhD197.127A08及びRhD204.128A03により同定される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
VH:LC対に由来するCDR1、CDR2及びCDR3領域が、クローン名RhD157.119D11、RhD159.119B09、RhD160.119C07、RhD162.119G12、RhD189.181E07、RhD191.119E08、RhD192.119G06、RhD196.126H11、RhD197.127A08、RhD199.164E03、RhD201.164H12、RhD202.158E07、RhD203.179F07、RhD207.127A11、RhD240.125A09、RhD241.119B05、RhD245.164E06、RhD293.109A09、RhD301.160A04、RhD305.181E06、RhD306.223E11、RhD317.144A02、RhD319.187A11、RhD321.187G08及びRhD324.231F07により同定される、請求項6記載の方法。
【請求項9】
抗−RhDポリクローナルの異なるメンバーをコードする核酸セグメントの前記単一コピーが、前記細胞群内の各個々の細胞の単一の所定の遺伝子座内に組み込まれており、前記遺伝子座が前記組換えポリクローナル抗体の各メンバーの高レベル発現を媒介し得る、前記請求項いずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞群が哺乳類細胞系統又は細胞型から誘導される、前記請求項いずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記哺乳類細胞系統が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS細胞、BHK細胞、YB2/0、NIH3T3、骨髄腫細胞、繊維芽細胞、HeLa、HEK293、PER.C6及びそれらから誘導された細胞系統からなる群より選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
ポリクローナルワーキングセルバンクを作成するための方法であって、
a)可変領域コーディング核酸セグメントから構成されるライブラリーの個々のメンバーを用いて個々にトランスフェクションした宿主細胞から得られた細胞系統の一群を提供する段階であって、ここで、トランスフェクションされた各個々の細胞系統はポリクローナル蛋白質の異なるメンバーを産生する、段階;
b)前記各細胞系統から増殖させた所定の数の細胞を混合する段階;及び
c)混合物のアリコートを凍結する段階:
を含む、方法。
【請求項13】
段階c)において得られたアリコートを解凍し、次いで、総細胞数を産生するのに十分な多世代間にわたり増殖させ、新たな一連のアリコート(サブ−pWCB)として凍結し、ここで、前記サブ−pWCBの各アリコート中の細胞数は解凍した前記アリコート中とほぼ同じである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
可変領域コーディング核酸セグメントから構成される前記ライブラリーが抗体VH及びVLコーディング核酸セグメントから構成されるライブラリーである、請求項12又は13記載の方法。
【請求項15】
抗体VH及びVLコーディング核酸セグメントから構成される前記ライブラリーが抗−RhD組換えポリクローナル抗体をコードしている、請求項14記載の方法。
【請求項16】
細胞を混合する前に、同様の増殖速度及び/又は生産性を有するように前記個々の細胞系統が選択される、請求項12〜15いずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
同様の生産性に関して前記個々の細胞系統がFACS分析により選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
同様の生産性及び/又は増殖速度に関して前記個々の細胞系統がロボットにより選択される、請求項16記載の方法。
【請求項19】
選択された前記細胞系統が22〜40時間の増殖速度及び/又は1.5pg/(細胞*日)を超える生産性を有する、請求項16〜18いずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記個々の細胞系統がクローン細胞系統である、請求項12〜19いずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
各個々の細胞系統が、ポリクローナルワーキングセルバンクの他のメンバーにより産生された抗体の特性とは異なる特性を有する全長抗体を産生する、請求項12〜20いずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記個々の細胞系統が等比で混合される、請求項12〜21いずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記個々の細胞系統が異なる比で混合される、請求項12〜21いずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
ポリクローナルワーキングセルバンクの他のメンバーと比較して、特定抗原に結合する抗体を産生する1つ以上の個々の細胞系統の比が増大している、請求項23記載の方法。
【請求項25】
より速い増殖速度により特徴付けられるポリクローナルワーキングセルバンクの他のメンバーと比較して、より遅い増殖速度を有することにより特徴付けられる1つ以上の個々の細胞系統の比が増大している、請求項23記載の方法。
【請求項26】
個々の細胞系統の一群に由来する所定の数の細胞の混合物を含むポリクローナルワーキングセルバンクであって、ここで、各個々の細胞系統は、可変領域コーディング核酸セグメントから構成されるライブラリーの個々のメンバーを用いて個々にトランスフェクションされた宿主細胞から得られ、及び各個々の細胞系統はポリクローナル蛋白質の異なるメンバーを産生し、並びに前記pWCBがアリコートとして凍結されている、ポリクローナルワーキングセルバンク。
【請求項27】
前記個々の細胞系統が同様の増殖速度及び/又は生産性を有する、請求項26記載のポリクローナルワーキングセルバンク。
【請求項28】
前記個々の細胞系統がクローン細胞である、請求項26又は27記載のポリクローナルワーキングセルバンク。
【請求項29】
前記個々の細胞系統が異なる比で混合されている、請求項26〜28いずれか1項に記載のポリクローナルワーキングセルバンク。
【請求項30】
抗−RhD組換えポリクローナル抗体の製造方法であって、
a)請求項14に従属する請求項15又は請求項16〜25記載のポリクローナルワーキングセルバンクを提供するか、又は変異体抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントのライブラリーを含む細胞群を提供する段階であって、ここで、前記群中の各個々の細胞は、前記抗−RhDポリクローナル抗体の異なるメンバーをコードする核酸セグメントの単一コピーを含み、前記コピーは、各個々の細胞のゲノムの同じ部位に組み込まれている、段階;
b)前記組換えポリクローナル抗体の発現を容易にする条件の下で、前記ポリクローナルワーキングセルバンク又は細胞群を培養する段階;及び
c)細胞培養物、細胞又は上清から前記発現された組換えポリクローナル抗体を回収する段階:
を含む、方法。
【請求項31】
回収された組換えポリクローナル抗体をさらなる精製に付す、請求項30記載の方法。
【請求項32】
請求項1〜11いずれか1項に記載の方法に従って段階(a)の細胞群が産生される、請求項30又は31記載の方法。
【請求項33】
変異体抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントの集団を含む、部位特異的組込み用の抗−RhD発現ベクターのライブラリーであって、ここで、前記ベクターの各々は、1)抗−RhDポリクローナル抗体の異なるメンバーをコードする核酸セグメントの1つのコピー、及び2)1つ以上のリコンビナーゼ認識配列を含むものである、ライブラリー。
【請求項34】
変異体抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントの前記集団の個々のメンバーの少なくとも1つが、epD3、epD4及びepD9(RhDカテゴリーVI抗原)に特異的に結合する抗−RhD抗体をコードし、並びにさらなるメンバーが単独又は組み合わせて残りのRhD抗原エピトープ、epD1、epD2、epD5、epD6/7及びepD8に結合する、請求項33記載のライブラリー。
【請求項35】
表3の異なるクローン名により特定できる核酸配列に対応するVH:LC対の1つから選択されるCDR1、CDR2及びCDR3領域を各々含む変異体核酸セグメントを内含する、請求項33又は34記載のライブラリー。
【請求項36】
VH:LC対に由来するCDR1、CDR2及びCDR3領域がクローン名RhD157.119D11、RhD158.119B06、RhD159.119B09、RhD161.119E09、RhD163.119A02、RhD190.119F05、RhD191.119E08、RhD192.119G06、RhD197.127A08及びRhD204.128A03により特定される、請求項35記載のライブラリー。
【請求項37】
VH:LC対に由来するCDR1、CDR2及びCDR3領域がクローン名RhD157.119D11、RhD159.119B09、RhD160.119C07、RhD162.119G12、RhD189.181E07、RhD191.119E08、RhD192.119G06、RhD196.126H11、RhD197.127A08、RhD199.164E03、RhD201.164H12、RhD202.158E07、RhD203.179F07、RhD207.127A11、RhD240.125A09、RhD241.119B05、RhD245.164E06、RhD293.109A09、RhD301.160A04、RhD305.181E06、RhD306.223E11、RhD317.144A02、RhD319.187A11、RhD321.187G08及びRhD324.231F07により特定される、請求項35記載のライブラリー。
【請求項38】
各セグメントが、表3の異なるクローン名により特定できる核酸配列の対に対応するVH:LC対の1つから選択されるCDR1、CDR2及びCDR3領域を含む、抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントのライブラリー。
【請求項39】
VH:LC対に由来するCDR1、CDR2及びCDR3領域がクローン名RhD157.119D11、RhD158.119B06、RhD159.119B09、RhD161.119E09、RhD163.119A02、RhD190.119F05、RhD191.119E08、RhD192.119G06、RhD197.127A08及びRhD204.128A03により特定される、請求項38記載のライブラリー。
【請求項40】
VH:LC対に由来するCDR1、CDR2及びCDR3領域がクローン名RhD157.119D11、RhD159.119B09、RhD160.119C07、RhD162.119G12、RhD189.181E07、RhD191.119E08、RhD192.119G06、RhD196.126H11、RhD197.127A08、RhD199.164E03、RhD201.164H12、RhD202.158E07、RhD203.179F07、RhD207.127A11、RhD240.125A09、RhD241.119B05、RhD245.164E06、RhD293.109A09、RhD301.160A04、RhD305.181E06、RhD306.223E11、RhD317.144A02、RhD319.187A11、RhD321.187G08及びRhD324.231F07により特定される、請求項38記載のライブラリー。
【請求項41】
抗−RhD抗体コーディング核酸セグメントのライブラリーを用いてトランスフェクションした細胞群を含む組換えポリクローナル製造細胞系統であって、ここで、前記群中の各細胞は、ライブラリーの1つのメンバーを発現し得るものであり、該メンバーは、抗−RhD組換えポリクローナル抗体の異なるメンバーをコードし、及び前記群中の個々の細胞のゲノム内の同じ部位に位置しており、前記核酸セグメントは群中の前記細胞と天然においては関連していないものである、組換えポリクローナル製造細胞系統。
【請求項42】
抗−RhDポリクローナルの異なるメンバーをコードする前記核酸セグメントが、前記細胞群中の各個々の細胞の単一の所定の遺伝子座内に組み込まれ、前記遺伝子座は前記組換えポリクローナル抗体の各メンバーの高レベル発現を媒介し得るものである、請求項41記載の組換えポリクローナル製造細胞系統。
【請求項43】
前記細胞群が哺乳類細胞系統又は細胞型から誘導されている、請求項41又は42記載の組換えポリクローナル製造細胞系統。
【請求項44】
前記哺乳類細胞系統が、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、COS細胞、BHK細胞、YB2/0、NIH3T3、骨髄腫細胞、繊維芽細胞、HeLa、HEK293、PER.C6及びそれらから誘導された細胞系統からなる群より選択される、請求項43記載の組換えポリクローナル製造細胞系統。
【請求項45】
前記ライブラリーが請求項33〜40いずれか1項に記載のライブラリーである、請求項41〜44いずれかに記載の組換えポリクローナル製造細胞系統。
【請求項46】
請求項30又は32記載の方法により得られる抗−RhD組換えポリクローナル抗体。
【請求項47】
各個々のメンバーが、表3の異なるクローン名により特定できるアミノ酸配列の対に対応するVH:LC対の1つから選択されるCDR1、CDR2及びCDR3領域を含む、抗−RhD組換えポリクローナル抗体。
【請求項48】
個々のメンバーの少なくとも1つがepD3、epD4及びepD9(RhDカテゴリーVI抗原)に特異的に結合し、及びさらなるメンバーが単独又は組み合わせて残りのRhD抗原エピトープ、epD1、epD2、epD5、epD6/7及びepD8に結合する、請求項46又は47記載の抗−RhD組換えポリクローナル抗体。
【請求項49】
VH:LC対に由来するCDR1、CDR2及びCDR3領域がクローン名RhD157.119D11、RhD158.119B06、RhD159.119B09、RhD161.119E09、RhD163.119A02、RhD190.119F05、RhD191.119E08、RhD192.119G06、RhD197.127A08及びRhD204.128A03により特定される、請求項47又は48記載の抗−RhD組換えポリクローナル抗体。
【請求項50】
VH:LC対に由来するCDR1、CDR2及びCDR3領域がクローン名RhD157.119D11、RhD159.119B09、RhD160.119C07、RhD161.119E09、RhD162.119G12、RhD163.119A02、RhD189.181E07、RhD191.119E08、RhD192.119G06、RhD196.126H11、RhD197.127A08、RhD199.164E03、RhD201.164H12、RhD202.158E07、RhD203.179F07、RhD207.127A11、RhD240.125A09、RhD241.119B05、RhD244.158B10、RhD245.164E06、RhD293.109A09、RhD301.160A04、RhD305.181E06、RhD306.223E11、RhD307.230E11、RhD319.187A11及びRhD324.231F07により特定される、請求項47又は48記載の抗−RhD組換えポリクローナル抗体フラグメント。
【請求項51】
有効量の請求項46〜50の1項に記載の抗−RhD組換えポリクローナルが投与される、動物における処置、改善又は予防方法。
【請求項52】
新生児溶血性疾患の予防、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)の処置、又はRhD(−)の個人にRhD(+)の血液を誤って輸血した後のRhD抗原に対する感作の予防のための組成物を調製するための、請求項46〜50の1項に記載の抗−RhD組換えポリクローナル抗体の使用。
【請求項53】
活性成分として請求項46〜50の1項に記載の抗−RhD組換えポリクローナル抗体及び医薬上許容される賦形剤を含有する、医薬組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2008−509658(P2008−509658A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521793(P2007−521793)
【出願日】平成17年7月18日(2005.7.18)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000501
【国際公開番号】WO2006/007850
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(505257682)シムフォゲン・アクティーゼルスカブ (24)
【氏名又は名称原語表記】SYMPHOGEN A/S
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月18日(2005.7.18)
【国際出願番号】PCT/DK2005/000501
【国際公開番号】WO2006/007850
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(505257682)シムフォゲン・アクティーゼルスカブ (24)
【氏名又は名称原語表記】SYMPHOGEN A/S
【Fターム(参考)】
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