抗がん製剤
【課題】n−ブチリデンフタリドをがんの部位に選択的および持続的に長い期間を通じて放出する製剤の提供。
【解決手段】z−ブチリデンフタリドと乳酸・グリコール酸共重合体、キトサン、コラーゲン、ハイドロゲル、及びビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンおよびセバシン酸の混合物から調製されるポリ無水物などから選ばれる重合体を含む、腫瘍を治療するための製剤。
【解決手段】z−ブチリデンフタリドと乳酸・グリコール酸共重合体、キトサン、コラーゲン、ハイドロゲル、及びビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンおよびセバシン酸の混合物から調製されるポリ無水物などから選ばれる重合体を含む、腫瘍を治療するための製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本特許出願は、2010年1月5日出願の、米国仮特許出願61/292,311号の優先権を主張し、これらの出願の内容は参照により本明細書に引用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
n−ブチリデンフタリド(n-Butylidenephthalide)(Bdph)は、アンゼリカ・シネンシス(Angelica sinensis)から分離された化学化合物である。当該化合物は、たとえば、多形性膠芽腫(gliobastoma multiforme)および乳がん(breast cancer)のようなさまざまな腫瘍を治療するのに用いられうる。たとえば、Tsai et al., Clin. Cancer Res. 2005, 11(9):3475−3484、およびTsai, et al., J Neurochem. 2006, 99(4):1251−62を参照。しかしながら、その使用において、効果的ながん治療のためには、n−ブチリデンフタリドをがんの部位に選択的および持続的に運搬することが重要な意味を有する。このことは、血液脳関門(blood brain barrier)のために薬剤が疾患部位に到達するのが困難な脳腫瘍を治療するのに特に重要なことである。薬剤の運搬に効果的な方法を開発する必要があった。
【発明の概要】
【0003】
要約
本発明は、n−ブチリデンフタリド、特に、Z型n−ブチリデンフタリド(すなわち、(Z)−n−ブチリデンフタリド、z−ブチリデンフタリドおよびz−Bdph)が、E型n−ブチリデンフタリド(すなわち、(E)−n−ブチリデンフタリド、e−ブチリデンフタリドおよびe−Bdph)よりも、30日以上の長い期間を通じて放出され、抗腫瘍効果を有する製剤の発見に基づいている。
【0004】
本発明は、ひとつの態様において、(i)z−ブチリデンフタリドおよび(ii)重合体を含み、それらが共に混合されている製剤に関する。
【0005】
重合体としては、乳酸・グリコール酸共重合体、キトサン、コラーゲン、ハイドロゲル、または、ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン、ビス(p−カルボキシフェノキシ)ブタン、ビス(p−カルボキシフェノキシ)ペンタン、ビス(p−カルボキシフェノキシ)ヘプタン、ビス(p−カルボキシフェノキシ)ヘキサン、ビス(p−カルボキシフェノキシ)オクタン、イソフタル酸、1,4−フェニレンジプロピオン酸、ドデカンジオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、またはこれらの混合物から調製されるポリ無水物(polyanhydride)が挙げられる。
【0006】
製剤の例としては、z−ブチリデンフタリドと、ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン(CPP)およびセバシン酸(SA)から調製されるp(CPP−SA)ポリ無水物と、の混合物が挙げられる。ポリ無水物において、ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンとセバシン酸の比は、好ましくは、1:2〜1:10(たとえば、1:4)である。z−ブチリデンフタリドの重量パーセントは、製剤中、3%〜50%(たとえば、3%〜20%、10%、および15%)である。製剤は、粉体、ウエハ、シート、棒、マイクロスフィア、ナノスフィア、ペースト、または糊の形態でありうる。
【0007】
本発明は、他の態様において、腫瘍の治療のための上記製剤の使用に関する。治療される腫瘍の例としては、これに制限されないが、多形性膠芽腫(glioblastoma multiforme)、肺がん, 肝細胞がん(hepatocellular carcinoma)、結腸がん(colon cancer)、黒色腫(melanoma)、乳がん(breast cancer)、神経芽細胞腫(neuroblastoma)、奇形腫(teratoma)およびヒト白血病(human leukemia)が挙げられる。
【0008】
また、本発明の範囲には、腫瘍を治療するための薬剤を製造するときの上記製剤の使用も含まれる。
【0009】
本発明のひとつ以上の形態は、添付された図面および明細書に詳細に記載されている。本発明の他の特徴、目的および有利な点は明細書および図面、ならびに請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、p(CPP−SA)共重合体の1H NMRスペクトルである。CPPの芳香族プロトンに特徴的なシグナルが6.9〜8.2ppmに観測された。SAのメチレンプロトンに特徴的なシグナルが1.3ppmに観測された。
【図2】図2は、p(CPP−SA)共重合体のFTIRスペクトルである。CPPとSA間の無水物結合に特徴的なシグナルが1812.76cm−1に観測された。
【図3】図3は、p(CPP−SA)−2%BCNUウエハ、p(CPP−SA)−3%Bdph、およびp(CPP−SA)−10%Bdphの放出速度(Release kinetics)を示す図である。すべての製剤において、BdphまたはBCNUが放出を維持することが観測された。
【図4】図4は、p(CPP−SA)−10%Bdphに誘導されるラット悪性神経膠腫(malignant glioma)細胞の成長抑制を示す図である。(A)のラット悪性神経膠腫細胞RG2系列(line RG2)を24時間10%Bdph−ウエハで処理した。細胞生存率は、MTT分析により決定した。このデータは3回の独立した実験からの平均値と標準偏差を表す。*p<0.05。(B)ウエハ処理を行ったRG2悪性神経膠腫細胞の細胞形態。(C)24時間p(CPP−SA)−3%Bdph処理を行ったRG2悪性神経膠腫細胞の細胞形態。(D)24時間p(CPP−SA)−10%Bdph処理を行ったRG2悪性神経膠腫細胞の細胞形態。
【図5】図5は、Bdphに誘導されるNur77転写産物(transcript)を示す図である。ラットGBM細胞(RG2)を、BdphのIC50濃度で記載された時間で処理した。薬剤のインキュベート後、細胞を回収し、トータルRNA(total RNA)を分離した。GADPHを内部コントロールとして用いた。
【図6】図6は、Bdphに誘導されるNur77の核から細胞質(cytoplasm)への転移を示す図である。(a)DBTRG−05NG細胞を、24時間Bdph(100μg/mL)で処理して、その後、対応するローダミン−共役抗IgG二次抗体(Rhodamine-conjugated anti-IgG secondary antibody)により、抗Nur77抗体(anti-Nur77 antibody)で免疫染色して、Nur77タンパク質を表示した。同時に、細胞をDAPIで染色し、核を表示した。蛍光顕微鏡で蛍光像を可視化した。
【図7】図7は、RG2細胞におけるBdphに誘導されるNur77核細胞質間転移(nucleo-cytoplasmic translocation)を示す図である。RG2細胞を、10cm皿上に固定化し、90%コンフルエンス(confluence)までインキュベートした。細胞を、Bdph(100μg/mL)で、異なる期間(0、6、12、24、および48時間)で処理した。細胞を採取し、核および細胞質フラクションを分離した。Western blot分析により、Nur77の核および細胞質を観測し定量した。
【図8】図8は、Bdphに誘導される成長抑制のシグナル経路を示す図である。示されているように、RG2細胞を、0〜180分のさまざまな継続時間において、Bdph(100μg/mL)で処理した。Western blot分析を、pJNK、pPKC、pAKT、AKT、pERK、ERK、JNK、pp38およびp38抗体に対して実施した。β−アクチンを内部コントロールとして用いた。
【図9A】図9は、同種ラットGBMモデルにおけるp(CPP−SA)による腫瘍成長の抑制を示す図である。RG2細胞(5×106)をF344ラットの皮下背中に移植した。RG細胞の移植の5日後、RG2細胞のみを移植された7匹のラットをコントロール群(●)とし、他のラットは、それぞれ、ウエハ(□)、3%Bdph−ウエハ(▲)、10%Bdph−ウエハ(■)、および3%BCNU−ウエハ(×)で処理した。図9(A)は、腫瘍サイズは、平均値と標準偏差を示した。
【図9B】図9(B)体重もまた、平均値と標準偏差を示した。
【図9C】図9(C)は、GBM組織における免疫組織化学染色を分析した(RG2細胞の移植後の30日目)ものを示す。ウエハ群、3%Bdph−ウエハ群、10%Bdph−ウエハ群および3%BCNU−ウエハ群の切片(sections)の代表的な画像である。ki−67、開裂されたカスパーゼ3、およびNur77の免疫組織化学染色されたGBM腫瘍である。Ki−67−、開裂されたカスパーゼ3−、またはNur77−陽性細胞を茶色に染色した(400×)。
【図10】図10は、異種移植のヒトGBMヌードマウスモデルにおいてBdphウエハが腫瘍成長を抑制したことを示す図である(2×106)。Foxn1 nu/nuマウスに、DBTRG−05MG細胞を皮下に移植した。DBTRG−05MG細胞移植の5日後、マウスはウエハ(◆)、3%Bdph−ウエハ(■)および10%Bdphウエハ(▲)でそれぞれ処理した。(A)腫瘍サイズは、平均値と標準偏差を示した。(B)体重もまた、平均値と標準偏差を示した。(C)、(D)画像は、ヌードマウスにおいて腫瘍をウエハ、3%Bdph−ウエハまたは10%Bdph−ウエハで処理したものを示す。P<0.01。
【図11】図11は、BdphがAxlタンパク質発現を制御することを実証したWestern blot分析を示す図である。
【図12】図12は、腫瘍細胞転移および浸潤分析を評価するための12−ウエルインサートシステム(12-well insert system)を示す図である。
【図13】図13は、24ウエルインサートシステムを用いることにより、Bdphが用量依存的に腫瘍細胞転移を抑制することを示す図である。
【図14】図14は、24ウエルインサートシステムを用いることにより、Bdphが用量依存的に腫瘍細胞浸潤を抑制することを示す図である。
【図15】図15は、腫瘍細胞増殖(tumor cell proliferation)を抑制するBdphが用量依存的にDBTRG脳腫瘍細胞のAxl発現により逆転されうることを示す図である。
【図16】図16は、細胞転移および湿潤を検出するためのOrisTMシステムを示す図である。
【図17】図17は、OrisTMシステムを用いることにより、Bdphによる細胞転移の抑制が、用量依存的にDBTRG脳腫瘍細胞のAxl発現により逆転されうることを示す図である。
【図18】図18は、BPによる細胞湿潤の抑制が、DBTRG脳腫瘍細胞のAxl発現により逆転されうることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の詳細な説明
本発明のひとつの態様は、n−ブチリデンフタリド、特にそのz型、z−ブチリデンフタリド、および重合体を含む製剤に関する。該製剤は、多形性膠芽腫(glioblastoma multiforme)のような腫瘍の成長を抑制するのに用いることができる。
【0012】
本発明の実施のために用いられるz−ブチリデンフタリドは、Lancaster Synthesis Ltd.(UK)から入手できるような市販のものを用いることができる。該化合物は、アンゼリカ・シネンシスのクロロホルム抽出によっても分離することができる。Tsai et al.,Clin. Cancer Res. 2005,11(9):3475−3484を参照。購入または分離したz−ブチリデンフタリドを、フラッシュカラムクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、結晶化、またはその他の好適な方法によってさらに精製することができる。
【0013】
本発明の実施のために用いられる重合体は、市販のものまたは公知の方法で調製されたものを用いることができる。たとえば、無水酢酸中で二酸の化合物(diacid compound)を還流してポリ無水物が得られる。
【0014】
重合体は共重合体でありうる。たとえば、共重合体としては、溶融重合(melt polycondensation)を用いて、2つの相違するポリ無水物部分から調製されうる。Domb et al.,Journal of polymer science,1987,25:3373−3386を参照。
【0015】
得られた重合体を、適当な方法で精製し、NMR、MS、またはFT−IRにより確認する。
【0016】
本発明の製剤を調製するには、z−ブチリデンフタリドと、ポリ無水物などの重合体とを、 所望の比率で(たとえば、z−ブチリデンフタリド10重量部およびポリ無水物90重量部)混合する。他の例としては、ブチリデンフタリドおよびポリ無水物を溶媒中(たとえば、塩化メチレン)に溶解し、その後溶媒を除去して、乾燥パウダーを得る。
【0017】
そのようにして得られた混合物は、さらに、ウエハ(wafers)、シート(sheets)、棒(rods)、マイクロスフィア(microspheres)、ナノスフィア(nanospheres)、ペースト(paste)、または糊(glue)などのさまざまな形態に処理されうる。たとえば、鋳型(mold)を用いて、当該混合物を圧搾(compress)してウエハにすることができる。
【0018】
本明細書中、「製剤(pharmaceutical formulation)」という言葉は、(i)たとえば、投与に適するように滅菌されているなどの、人あるいは他の哺乳類または治療されうるものに投与するのに適した組成物、ならびに(ii)少なくともひとつの薬剤(すなわち、z−ブチリデンフタリド)および少なくともひとつの上述した重合体を含む組成物を意味する。前記製剤は、ピル、カプセル剤、ゲル、デポー剤(depots)、移植医療デバイス(自己拡張ステント、バルーン拡張ステント、薬剤溶出ステントおよびステントグラフトを含むステント、グラフト(大動脈グラフト)、人口心臓バルブ、髄液短絡術(cerebrospinal fluid shunts)、ペースメーカー電極、心内膜リード(endocardial leads)、生体浸食性移植(bioerodable implants)など)、および外部からのマニュピュレートデバイス(externally manipulated devices)(たとえば、カテーテルの先端を加熱することにより薬剤を放出するカテーテルを含む薬剤デバイスおよびカテーテル)などの薬剤を運搬しうるいかなるデバイスの一部またはすべてでありうる。製剤は、また、1または1以上の他の添加剤、たとえば製薬上許容しうる賦形剤、担体、浸透促進剤、安定化剤、緩衝液または投薬形態の運搬量(the deliverability of the dosage form)および/あるいは薬剤の有効性を増加させるための薬剤ならびに/もしくは重合体に関連した他の材料を含みうる。製剤は、たとえば、液体、縣濁液、固体(たとえば、錠剤、ピル、およびマイクロカプセルを含むカプセル)、乳濁液、ミセル、軟膏、ゲル、乳液、デポー(depot)(皮下に移植されたデポー(subcutaneously implanted depot))、またはステントのような移植されたデバイス上の被覆(coating)でありうる。製剤は、たとえば、パッチのように外部に適用されたり、または部分的に外部に適用され部分的に移植されたデバイスであったり、または完全に移植されたり、または皮下に注射されうる。
【0019】
「薬剤(drug)」という言葉は、人または他の哺乳類に、局所的に(locally)および/または組織的に(systemically)、生体的に活性な物質を意味する。薬剤の例としては、Merck Index,the Physicians Desk Reference、および米国特許第6,297,337号明細書 カラム11,16行〜カラム12,58行、および米国特許出願公開第2003/0224974号明細書の段落0045、本明細書中にあらゆる目的で参照によって組み込まれたすべての開示に、開示されている。薬剤は、たとえば、疾患や病気を治療(treatment)、予防(prevention)、診断(diagnosis)、治癒(cure)、または緩和(mitigation)するために用いる物質で、ビタミンおよび鉱物(mineral)栄養補助食品(supplements);哺乳類の構造または機能に影響する物質;生体的に活性または生理環境(physiological environment)に置かれた後により活性になる物質であるプロドラック;および薬剤の代謝物(metabolites of drugs)を含む。診断薬の例としては、ラジオアイソトープ(radioisotopes)を含む造影剤(imaging agents)、ヨウ素、酵素、蛍光物質などを含む対照薬(contrasting agents)などが挙げられる。
【0020】
本発明の製剤は、また、適当な添加剤を含みうる。これらの添加剤としては、製剤を調製する際のどの段階においても、製剤中に含みうる。目的とする効果を付与するための製剤中の添加剤の所望濃度は、当業者であればわかるように、公知の方法を用いて評価しうる。
【0021】
本発明の製剤は、液体(fluid)に接触すると、抗腫瘍薬であるz−ブチリデンフタリドを放出する。それゆえに、本発明はまた、製剤を必要とする患者に、その有効量を投与することによる、腫瘍を治療する方法に関する。製剤中のブチリデンフタリドは、20、30、35、40、50、60日のように、ある期間の時間を経て、ゆっくり、持続的に、隣接した組織中へ放出される。
【0022】
本明細書中、「治療する(treating)」または「治療(treatment)」という言葉は、腫瘍を有する、腫瘍の兆候、腫瘍に伴う疾患もしくは病気、または腫瘍の傾向を有する患者に対して、腫瘍、腫瘍の兆候、腫瘍に伴う疾患もしくは病気、または腫瘍の傾向を、治癒する(cure)、緩和する(alleviate)、軽減する(relieve)、治療する(remedy)、または改善する(ameliorate)目的での、製剤の有効量の投与として定義される。
【0023】
「患者(subject)」とは、人および人以外の動物を意味する。人以外の動物としては、すべての脊髄動物(vertebrates)を含み、たとえば、人以外の霊長類(特に高等霊長類)、犬、齧歯動物(rodent)(たとえば、ねずみまたはラット)、モルモット(guinea pig)、猫のような哺乳類、および鳥類、両生類、爬虫類のような非哺乳類などが挙げられる。好ましい形態としては、患者は人である。他の形態では、患者は、実験動物または疾患モデルとして適した動物である。腫瘍、がん、または他の細胞増殖性の疾患(cellular proliferative disorder)を治療される患者は、疾患のための標準的な診断技術により確認されうる。
【0024】
腫瘍は、増大(swelling)または細胞の異常増殖(an abnormal growth of cells)によって形成された病変(lesion)である。それは、良性の腫瘍または悪性の腫瘍(すなわち、がん)でありうる。がんは、細胞が制御されていない増殖(growth)、浸潤(invasion)、ときには転移(metastasis)をする郡の疾患の部類を意味する。治療されるがんの例としては、これに制限されないが、多形性膠芽腫(glioblastoma multiforme)、肺がん、肝細胞がん(hepatocellular carcinoma)、結腸がん(colon cancer)、黒色腫(melanoma)、乳がん(breast cancer)、神経芽細胞腫(neuroblastoma)、奇形腫(teratoma)、およびヒト白血病(human leukemia)が挙げられる。
【0025】
「有効量」という言葉は、治療される患者に治療効果を付与する製剤または化合物の量を意味する。治療方法は、単独または他の薬剤もしくは治療とともに、in vivoまたはex vivoで実施されうる。in vivoの場合、化合物または製剤は患者に投与される。一般的に、化合物または製剤は、製薬上許容される担体(たとえば、生理食塩水)中で調製され、経口もしくは静脈内注射により投与され、または皮下に(subcutaneously)、筋肉注射で(intramuscularly)、髄腔内に(intrathecally)、腹腔内に(intraperitoneally)、直腸内に(intrarectally)、膣内に(intravaginally)、鼻腔内に(intranasally)、胃内に(intragastrically)、気管内に(intratracheally)、肺内に(intrapulmonarily)、注入もしくは移植される。
【0026】
好ましくは、製剤は、がん患者の皮下に(subcutaneously)、筋肉注射で(intramuscularly)、静脈内に(intravenously)、間質に(interstitially)または頭蓋内に移植されうる。ひとつの形態において、製剤は、さまざまな形態であり、腫瘍組織の除去の有無にかかわらず、がんの部位またはその近傍に、移植されうる。
【0027】
必要な用量は、投与経路の選択;製剤の性質;患者の疾患の性質;患者の大きさ、重量、表面積、年齢、および性別;投与される他の薬剤;および主治医の判断に依存する。これは、栄養士(nutritionist)、食事療法士(dietician)、または治療する医者などの当業者であれば、患者の応答とともに、調整しうる。好適な用量は、0.01−100mg/kgの範囲である。必要な用量は、利用できるさまざまな化合物と、さまざまな投与経路の有効性の相違点の観点から予測されうる。
【0028】
製剤は、外科(surgery)または放射線治療(radiotherapy)とともに用いられうる。当該製剤は、また、ひとつ以上の他の化学療法剤(chemotherapeutic agents)とともに用いられうる。化学療法剤としては、たとえば、トポテカン(topotecan)のようなカンプトテシン(camptothecins)、ドキソルビシン(doxorubicin)のようなアントラサイクリン系抗生物質(anthracycline anthracycline)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)のようなアルキル化剤、またはカルムスチン(carmustin)などが挙げられる。
【0029】
本発明は、さらなる検討がなくとも、上述の記載から十分に実施されうる。そのために、以下の例示は、単なる例示であり、残りの開示にいかなることがあろうとも制限されない。本明細書中、引用されたすべての刊行物は、参照により全体に組み込まれる。
【実施例】
【0030】
実施例1:重合体の合成
SA単量体を、2回アルコールから結晶化させた。2.7gのSA単量体を60mLの無水酢酸中で、30分間135〜140℃、真空下(10−4トール(torr))で還流した。未反応の無水酢酸を除去した。SAプレポリマー(SA prepolymer)を、真空下60℃で乾燥し、その後乾燥トルエン(dry toluene)に溶解した。乾燥エチルエーテルおよび石油エーテルの1:1(v/v)混合物に、この溶液を体積比1:10で加え、一晩静置し、SAプレポリマー(10:1 v/v)を析出させた。乾燥エチルエーテルおよび石油エーテルを除去した後、SAプレポリマーを真空下で乾燥させた。
【0031】
3gのCPP単量体を50mLの無水酢酸と30分間150℃、真空下(10−4トール(torr))で還流した。冷却後、反応混合物をろ過した。ろ液から、いくぶんかの未反応の無水酢酸を除去して、濃縮し、CPPプレポリマーを0℃で結晶化した。残った未反応の無水酢酸は除去した。CPPプレポリマーをエーテルで洗浄し、真空下で乾燥した。続いて、CPPプレポリマーにDMFおよび乾燥エーテル(DMF:乾燥エーテル=1:9)を加えた。約12時間後、DMFおよびエーテルを除去し、CPPプレポリマーの結晶を真空下で、再度乾燥した。
【0032】
20:80の比のCPPプレポリマーおよびSAプレポリマーを、ガラスチューブ(2×20cm)にチャージし、オイルバス中、1分間180℃で加熱した。圧力は、10−4mmHgまで減圧された。重合の間、真空を15分ごとに解除(eliminated)した。チューブをジクロロメタンで洗浄した後、石油エーテルを加え、p(CPP−SA)共重合体を析出させ、無水エーテルで洗浄して真空下で乾燥した。
【0033】
このp(CPP−SA)共重合体を、IRおよび1H NMRで測定した。IR測定では、無水物結合の特徴的なシグナルが1812.76cm−1に観測された。1H NMR測定では、CPPの芳香族プロトンの特徴的なシグナルが、6.9−8.2ppmに観測され、メチレンのプロトンの特徴的なシグナルが1.3ppmに観測された。さらに、共重合体中のCPPおよびSAの比は、1H NMRのCPPおよびSAのピーク強度によれば、1:4〜1:5に同定された。
【0034】
p(CPP−SA)重合体を、z−Bdphを混合し、z−Bdphの重量に対して3%または10%を含む混合物を得た。97% p(CPP−SA)および3% 1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソウレア(1,3-bis(2-chloroethyl)-1-nitrosourea)(BCNU)を含む混合物を調製した。それぞれの混合物を、10%(w/v)の濃度で塩化メチレンに溶解した。溶液を真空下で72時間乾燥した。このようにして得られた乾燥粉末をステンレススティール鋳型(a stainless steel mold)を(内部径、13mm)用いて、Walter et al.,Cancer Res. 1994,54(8):2207−12;Leong et al.,J Biomed Mater Res. 1985,19(8):941−55;およびStorm et al. J Neurooncol. 2002,56(3):209−17に記載されているように、Carver Pressの200psiの軽い圧力下、圧縮(compressed)し、z−Bdph p(CPP−SA)ディスクを形成した(100mg/disc)。同サイズのBCNU p(CPP−SA)ディスクを圧縮成形(compression molding)により調製した。
【0035】
実施例2:放出速度(Release kinetics)
z−Bdph−p(CPP−SA)ディスクを、0.1mLの0.1Mリン酸−緩衝生理食塩水(pH7.4)および1.0mLのn−オクタノールの入ったシンチレーションバイアル中に置き、37℃でインキュベーションした。溶液は、さまざまな時間において、新しい緩衝液に置き換えた。310nmの波長での吸収を、Weingart et al.,Int. J. Cancer. 1995,62(5):605−9に記載のように、分光光度計を用いて測定し、緩衝液中のz−Bdphの濃度を決定した。z−Bdphの持続的な放出が確認された。
【0036】
実施例3:In Vitroでの放出制御および細胞毒性
RG2ラット多形性膠芽腫(glioblastoma multiforme)(GBM)細胞におけるp(CPP−SA)−10%z−Bdphの成長抑制効果(the growth inhibitory effects)の分析測定を行った。RG2細胞を、10%Bdph−ウエハ(wafer)で24時間処理した。細胞生存率(Cell viability)を、MTT分析により測定した。p(CPP−SA)−10%z−Bdphの成長抑制効果は、コントロールと比較すると、50%であることがわかった。さらに、GBM細胞の形態は徐々に変化し、そして処理後には培養皿の下部から細胞の分離が観測された。未処理の細胞と比較すると、分離したGBM細胞のほとんどは、p(CPP−SA)−10%z−Bdph処理後にアポトーシス(apoptotic)した。
【0037】
データは、3つの独立した実験から、平均±SDまたはSE(それぞれ、標準偏差および標準エラー(standard error))として表されている。統計的有意性は、スチューデントt−検定(Student's t-test)およびMantel−Cox検定より分析した。生存率分析(survival analysis)は、Kaplan−Meier方法を用いて行った。P値0.05以下は有意性があるとみなされる。
【0038】
実施例4:p(CPP−SA)−z−Bdphによって引き起こされるアポトーシス経路およびNurr転移(Nurr translocattion)
オリゴデオキシヌクレオチドのマクロアレイ分析(oligodeoxynucleotide-based microarray analysis)の結果を確認するために、z−Bdph処理したRG2細胞中のオーファン受容体(orphan receptors)NOR−1、Nurr1、およびNur77の発現をRT−PCRにより調べた。
【0039】
RG2細胞を、さまざまな期間(0、0.5、1、3、および6h)のz−BdphのIC50濃度でインキュベートした。インキュベート後、細胞を回収し、トータルRNA(total RNA)を分離した。GADPHの発現を、内部コントロール(internal control)として用いた。
【0040】
z−Bdph処理後、Nurr77のmRNA発現は、時間依存方式(a time-dependent manner)で、細胞内で誘導された。Nurr7 mRNA発現が、z−Bdph処理後の半時間から処理後の6時間、有意に誘導された。z−Bdph処理後に大きく誘導されたNur77は、成長抑制およびアポトーシスに関係しており、Nur77誘導(Nur77 induction)が、GBM細胞内のz−Bdphに誘導されるアポトーシス(z-Bdph -induced apoptosis)の初期段階(early event)になりうることを示している。
【0041】
z−Bdphに応答して生じるNur77の転移(translocation)について調べた。DBTRG−05NG細胞(ヒトGBM細胞)を、Bdph(100μg/mL)で24時間処理し、その後、対応するローダミン−共役抗IgG二次抗体(Rhodamine-conjugated anti-IgG secondary antibody)により、抗Nur77抗体(anti-Nur77 antibody)で免疫染色した(immunostained)。同時に、細胞をDAPIで染色し、核を表示した。蛍光顕微鏡で蛍光像を可視化した。結果は、Nur77は、細胞質ゾル内よりも核内において、より豊富であることを示した。z−Bdph処理後の24時間、Nur77は核から細胞質まで転移(translocated)した。
【0042】
さらに確認するために、細胞の細胞質ゾルおよび核フラクションを、Western blot分析により調べた。RG2細胞を、10cm皿上に固定化し、90%コンフルエンス(confluence)までインキュベートした。細胞を、Bdph(100μg/mL)で、異なる期間(0、6、12、24、および48時間)で処理した。細胞を採取し、核および細胞質フラクションを分離した。Western blot分析により、z−Bdph処理がない場合、Nur77は、核内に圧倒的に多く存在することが示された。
【0043】
最後に、z−Bdphに誘導されるNur77遺伝子発現に伴うシグナル経路を調べた。RG2細胞を、Bdph(100μg/mL)で、さまざまな期間(0、15、30、60、および180分)で処理した。Western blot分析により、JNK、AKT、ERKは、z−Bdph処理後の1時間、有意にリン酸化されたことが示された。さらに、MTT分析結果により、細胞を5−20nMのpJNK抑制剤で前処理し、z−Bdphで処理した後の細胞生存率が増加したことを示された。
【0044】
実施例5:動物実験(Animal studies)
National Laboratory Animal Center(台北、台湾)から、オスのF344ラット(230−260g)およびオスのFoxn1 nu/nuマウス(10−12週)を入手した。すべての手順を、ナショナルTau Hwaユニバーシティ(ホァーリュン(Hualien)、台湾)およびチャイナメディカルユニバーシティホスピタル(台中(Taichung)、台湾)のLaboratory Animal Centerの標準作業手順に従って行った。RG2細胞およびDBTRG−05MG細胞を動物実験に用いて、p(CPP−SA)−3%または10%z−Bdph製剤およびp(CPP−SA)−3%BCNUの抗腫瘍活性(anti-tumor activities)を測定した。
【0045】
同系のF344ラットに皮下背中にRG2細胞の移植をした。動物に、p(CPP−SA)−3%、p(CPP−SA)−10%z−Bdph製剤、p(CPP−SA)−3%BCNU、またはポリマーのみを移植した。腫瘍細胞移植後、もとの注射部位から少なくとも1.5cmを除去した。
【0046】
さらに、Foxn1 nu/nuマウスに、DBTRG−05MG細胞の皮下移植、およびp(CPP−SA)−3%、p(CPP−SA)−10%z−Bdph製剤、p(CPP−SA)−3%BCNU、またはポリマーのみの皮下移植をして、腫瘍細胞移植後、
もとの注射部位から少なくとも1.5cmを除去した。
【0047】
腫瘍サイズをキャリパー(caliper)を用いて測定し、容積は、L×H×W×0.5236として計算した。腫瘍の容積がラットは25cm3を超え、マウスは1000mm3を超えた場合、動物は処分した。ラットおよびマウスの最終生存日を日付として計算に用いた。
【0048】
実施例6:動物モデルのp(CPP−SA)−z−Bdph治療効果
F344ラットの後部脇腹領域に、RG2細胞(5×106)を皮下移植した。RG2細胞移植の5日後、ラットに、p(CPP−SA)−3%z−Bdph、p(CPP−SA)−10%z−Bdph、p(CPP−SA)のみ、またはp(CPP−SA)−3%BCNUを皮下に処理した。p(CPP−SA)−3%z−Bdph処理群、p(CPP−SA)−3%BCNU処理群、およびp(CPP−SA)処理群に比べて、p(CPP−SA)−10%z−Bdph処理群において、大きな腫瘍成長抑制が観測された(p<0.005)。
【0049】
30日の平均的な腫瘍サイズはコントロール(未処理)群が2070.79±784.90mm3、p(CPP−SA)処理群が1586.30±243.69mm3、p(CPP−SA)−3%z−Bdph処理群が346.71±521.68mm3、p(CPP−SA)−10%z−Bdph処理群が87.89±167.44mm3、p(CPP−SA)−3%BCNU処理群が357.48±27.30mm3だった。
【0050】
細胞増殖を示すki−67の免疫組織化学的染色により、p(CPP−SA)−10%z−Bdph処理群における細胞増殖の著しい減少が示された。さらに、アポトーシスを示すカスパーゼの免疫組織化学的染色により、p(CPP−SA)−10%z−Bdph処理群における細胞のアポトーシスの著しい増加が示された。
【0051】
最終的に、体重およびさまざまな器官の組織学的分析により評価されたように、p(CPP−SA)−10%z−Bdph処理群における動物には、毒性に関与する薬剤は観測されなかった。対照的に、p(CPP−SA)−3%BCNU処理群においては、著しい体重の減少が観測された。
【0052】
実施例7:異種移植された腫瘍の成長におけるp(CPP−SA)−z−Bdph処理群の治療効果
Foxnlヌードマウスに、ヒトDBTRG−05MG細胞(2×106)を接種させ、5日目にp(CPP−SA)−z−Bdph(0%、3%、10%)を移植した。3%および10%のz−Bdph−ウエハ処理群の腫瘍成長の著しい抑制が観測された。39日目の腫瘍サイズの平均値は、コントロール群 1098.46±170.11、p(CPP−SA)−3%z−Bdph処理群 605.8±98.8mm3、p(CPP−SA)−10%z−Bdph処理群 504.4±38.9mm3であった(p<0.05)。
【0053】
実施例8:z−Bdphのヒト多形膠芽細胞腫(human glioblastoma multiformis)の転移(migration)および浸潤(invasion)の抑制
DBTRG−05MG細胞の浸潤を、バイオコート腫瘍浸潤チャンバーシステム(BioCoat matrigel invasion chamber system)(BD Bioscience,Bedford,MA)を用いて測定した。BDマトリゲルマトリックス(BD matrigel Matrix)は、8μmの孔径を有するポリエチレンテレフタレート(PET)メンブレン上、ラミニン、コラーゲンIV、ニドジェン/エンタクチン(nidogen/entrctin)、およびプロテオグリカンから構成される。In Vitroの転移分析では、ファルコンカルチャーインサート(Falcon culture insert)(BD Bioscience)上の低い細孔密度(pore density)のPETトラックエッチドメンブレン(track-etched membrane)が適用された。メンブレンを、マトリゲルチャンバーまたはファルコンカルチャーインサートの上部と下部ウエルの間に置いた。まず最初に、10%ウシ胎仔血清(fetal bovine serum)を含むPRMI1640中に細胞を再懸濁し、チャンバーの上部ウエル中にシードした(1ウエルにつき細胞50,000)。24時間37℃でインキュベートした後、メンブレンを浸潤または転移した細胞を、Liu染色(Handsel Technologies,Inc.,台北、台湾)で染色し、顕微鏡下でカウントした。それぞれの実験は、3回繰り返した。
【0054】
上述の組織(system)を、DBTRG−05MG細胞(ヒトGBM)の転移および浸潤におけるz−Bdphの効果を調べるために用いた。z−Bdphが、用量依存的に、DBTRG−05MG細胞の転移および浸潤を抑制することがわかった。
【0055】
実施例9:z−BdphのAxl抑制を経由する腫瘍の転移および浸潤の抑制
悪性の脳腫瘍をz−Bdphが抑制するメカニズムを解明するため、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を用いて、GBM細胞の遺伝子発現プロファイル上のz−Bdphの効果を調べた。Axlレセプターチロシンキナーゼ(RTK)のmRNA発現が、z−Bdphの存在下で下方制御されたことがわかった。
【0056】
さらに、Axlの過剰発現(over-expression)(すなわち、GBM細胞へのpcDNA3.0−Axlプラスミドを導入することによるもの)が、Axlが媒介するGBM細胞の増殖、転移および湿潤におけるz−Bdphの抑制効果を逆転させることができる。
【0057】
Western Blot分析も実施して、z−Bdphの存在下でのGBM細胞のAxlタンパク質レベルを調べた。Axlタンパク質レベルが減少した結果となった。
【0058】
タンパク質チロシンキナーゼが細胞増殖および分化(differentiation)の制御ならびにヒト神経膠腫を含む多くの新生組織形成の発生に重要な役割を担っていることは、これまでによく知られていることである。Axlは腫瘍転移および浸潤を伴うことが報告されていた。上記結果は、z−BdphがAxlレセプターチロシンキナーゼのタンパク質発現を抑制し、それによりGBM細胞の転移および湿潤を抑制したことを示している
他の実施形態
本明細書に開示された全ての特徴は、任意の組み合わせで組み合わせられうる。本明細書に開示のそれぞれの特徴は、同一の、均等な、または類似の目的を達成する他の特徴により置換されうる。よって、特記しない限り、開示されたそれぞれの特徴は、広範な一連の均等なまたは類似の特徴の一例に過ぎない。
【0059】
当業者であれば、上述した記載から本発明の本質的な特徴を容易に認識することができ、本発明の思想および範囲から逸脱することがなく、発明に種々の変更および修飾を施し、種々の用途および条件に適合させることができる。よって、他の実施形態もまた、特許請求の範囲に包含される。
【技術分野】
【0001】
関連出願のクロスリファレンス
本特許出願は、2010年1月5日出願の、米国仮特許出願61/292,311号の優先権を主張し、これらの出願の内容は参照により本明細書に引用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
n−ブチリデンフタリド(n-Butylidenephthalide)(Bdph)は、アンゼリカ・シネンシス(Angelica sinensis)から分離された化学化合物である。当該化合物は、たとえば、多形性膠芽腫(gliobastoma multiforme)および乳がん(breast cancer)のようなさまざまな腫瘍を治療するのに用いられうる。たとえば、Tsai et al., Clin. Cancer Res. 2005, 11(9):3475−3484、およびTsai, et al., J Neurochem. 2006, 99(4):1251−62を参照。しかしながら、その使用において、効果的ながん治療のためには、n−ブチリデンフタリドをがんの部位に選択的および持続的に運搬することが重要な意味を有する。このことは、血液脳関門(blood brain barrier)のために薬剤が疾患部位に到達するのが困難な脳腫瘍を治療するのに特に重要なことである。薬剤の運搬に効果的な方法を開発する必要があった。
【発明の概要】
【0003】
要約
本発明は、n−ブチリデンフタリド、特に、Z型n−ブチリデンフタリド(すなわち、(Z)−n−ブチリデンフタリド、z−ブチリデンフタリドおよびz−Bdph)が、E型n−ブチリデンフタリド(すなわち、(E)−n−ブチリデンフタリド、e−ブチリデンフタリドおよびe−Bdph)よりも、30日以上の長い期間を通じて放出され、抗腫瘍効果を有する製剤の発見に基づいている。
【0004】
本発明は、ひとつの態様において、(i)z−ブチリデンフタリドおよび(ii)重合体を含み、それらが共に混合されている製剤に関する。
【0005】
重合体としては、乳酸・グリコール酸共重合体、キトサン、コラーゲン、ハイドロゲル、または、ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン、ビス(p−カルボキシフェノキシ)ブタン、ビス(p−カルボキシフェノキシ)ペンタン、ビス(p−カルボキシフェノキシ)ヘプタン、ビス(p−カルボキシフェノキシ)ヘキサン、ビス(p−カルボキシフェノキシ)オクタン、イソフタル酸、1,4−フェニレンジプロピオン酸、ドデカンジオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、またはこれらの混合物から調製されるポリ無水物(polyanhydride)が挙げられる。
【0006】
製剤の例としては、z−ブチリデンフタリドと、ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン(CPP)およびセバシン酸(SA)から調製されるp(CPP−SA)ポリ無水物と、の混合物が挙げられる。ポリ無水物において、ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンとセバシン酸の比は、好ましくは、1:2〜1:10(たとえば、1:4)である。z−ブチリデンフタリドの重量パーセントは、製剤中、3%〜50%(たとえば、3%〜20%、10%、および15%)である。製剤は、粉体、ウエハ、シート、棒、マイクロスフィア、ナノスフィア、ペースト、または糊の形態でありうる。
【0007】
本発明は、他の態様において、腫瘍の治療のための上記製剤の使用に関する。治療される腫瘍の例としては、これに制限されないが、多形性膠芽腫(glioblastoma multiforme)、肺がん, 肝細胞がん(hepatocellular carcinoma)、結腸がん(colon cancer)、黒色腫(melanoma)、乳がん(breast cancer)、神経芽細胞腫(neuroblastoma)、奇形腫(teratoma)およびヒト白血病(human leukemia)が挙げられる。
【0008】
また、本発明の範囲には、腫瘍を治療するための薬剤を製造するときの上記製剤の使用も含まれる。
【0009】
本発明のひとつ以上の形態は、添付された図面および明細書に詳細に記載されている。本発明の他の特徴、目的および有利な点は明細書および図面、ならびに請求の範囲から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、p(CPP−SA)共重合体の1H NMRスペクトルである。CPPの芳香族プロトンに特徴的なシグナルが6.9〜8.2ppmに観測された。SAのメチレンプロトンに特徴的なシグナルが1.3ppmに観測された。
【図2】図2は、p(CPP−SA)共重合体のFTIRスペクトルである。CPPとSA間の無水物結合に特徴的なシグナルが1812.76cm−1に観測された。
【図3】図3は、p(CPP−SA)−2%BCNUウエハ、p(CPP−SA)−3%Bdph、およびp(CPP−SA)−10%Bdphの放出速度(Release kinetics)を示す図である。すべての製剤において、BdphまたはBCNUが放出を維持することが観測された。
【図4】図4は、p(CPP−SA)−10%Bdphに誘導されるラット悪性神経膠腫(malignant glioma)細胞の成長抑制を示す図である。(A)のラット悪性神経膠腫細胞RG2系列(line RG2)を24時間10%Bdph−ウエハで処理した。細胞生存率は、MTT分析により決定した。このデータは3回の独立した実験からの平均値と標準偏差を表す。*p<0.05。(B)ウエハ処理を行ったRG2悪性神経膠腫細胞の細胞形態。(C)24時間p(CPP−SA)−3%Bdph処理を行ったRG2悪性神経膠腫細胞の細胞形態。(D)24時間p(CPP−SA)−10%Bdph処理を行ったRG2悪性神経膠腫細胞の細胞形態。
【図5】図5は、Bdphに誘導されるNur77転写産物(transcript)を示す図である。ラットGBM細胞(RG2)を、BdphのIC50濃度で記載された時間で処理した。薬剤のインキュベート後、細胞を回収し、トータルRNA(total RNA)を分離した。GADPHを内部コントロールとして用いた。
【図6】図6は、Bdphに誘導されるNur77の核から細胞質(cytoplasm)への転移を示す図である。(a)DBTRG−05NG細胞を、24時間Bdph(100μg/mL)で処理して、その後、対応するローダミン−共役抗IgG二次抗体(Rhodamine-conjugated anti-IgG secondary antibody)により、抗Nur77抗体(anti-Nur77 antibody)で免疫染色して、Nur77タンパク質を表示した。同時に、細胞をDAPIで染色し、核を表示した。蛍光顕微鏡で蛍光像を可視化した。
【図7】図7は、RG2細胞におけるBdphに誘導されるNur77核細胞質間転移(nucleo-cytoplasmic translocation)を示す図である。RG2細胞を、10cm皿上に固定化し、90%コンフルエンス(confluence)までインキュベートした。細胞を、Bdph(100μg/mL)で、異なる期間(0、6、12、24、および48時間)で処理した。細胞を採取し、核および細胞質フラクションを分離した。Western blot分析により、Nur77の核および細胞質を観測し定量した。
【図8】図8は、Bdphに誘導される成長抑制のシグナル経路を示す図である。示されているように、RG2細胞を、0〜180分のさまざまな継続時間において、Bdph(100μg/mL)で処理した。Western blot分析を、pJNK、pPKC、pAKT、AKT、pERK、ERK、JNK、pp38およびp38抗体に対して実施した。β−アクチンを内部コントロールとして用いた。
【図9A】図9は、同種ラットGBMモデルにおけるp(CPP−SA)による腫瘍成長の抑制を示す図である。RG2細胞(5×106)をF344ラットの皮下背中に移植した。RG細胞の移植の5日後、RG2細胞のみを移植された7匹のラットをコントロール群(●)とし、他のラットは、それぞれ、ウエハ(□)、3%Bdph−ウエハ(▲)、10%Bdph−ウエハ(■)、および3%BCNU−ウエハ(×)で処理した。図9(A)は、腫瘍サイズは、平均値と標準偏差を示した。
【図9B】図9(B)体重もまた、平均値と標準偏差を示した。
【図9C】図9(C)は、GBM組織における免疫組織化学染色を分析した(RG2細胞の移植後の30日目)ものを示す。ウエハ群、3%Bdph−ウエハ群、10%Bdph−ウエハ群および3%BCNU−ウエハ群の切片(sections)の代表的な画像である。ki−67、開裂されたカスパーゼ3、およびNur77の免疫組織化学染色されたGBM腫瘍である。Ki−67−、開裂されたカスパーゼ3−、またはNur77−陽性細胞を茶色に染色した(400×)。
【図10】図10は、異種移植のヒトGBMヌードマウスモデルにおいてBdphウエハが腫瘍成長を抑制したことを示す図である(2×106)。Foxn1 nu/nuマウスに、DBTRG−05MG細胞を皮下に移植した。DBTRG−05MG細胞移植の5日後、マウスはウエハ(◆)、3%Bdph−ウエハ(■)および10%Bdphウエハ(▲)でそれぞれ処理した。(A)腫瘍サイズは、平均値と標準偏差を示した。(B)体重もまた、平均値と標準偏差を示した。(C)、(D)画像は、ヌードマウスにおいて腫瘍をウエハ、3%Bdph−ウエハまたは10%Bdph−ウエハで処理したものを示す。P<0.01。
【図11】図11は、BdphがAxlタンパク質発現を制御することを実証したWestern blot分析を示す図である。
【図12】図12は、腫瘍細胞転移および浸潤分析を評価するための12−ウエルインサートシステム(12-well insert system)を示す図である。
【図13】図13は、24ウエルインサートシステムを用いることにより、Bdphが用量依存的に腫瘍細胞転移を抑制することを示す図である。
【図14】図14は、24ウエルインサートシステムを用いることにより、Bdphが用量依存的に腫瘍細胞浸潤を抑制することを示す図である。
【図15】図15は、腫瘍細胞増殖(tumor cell proliferation)を抑制するBdphが用量依存的にDBTRG脳腫瘍細胞のAxl発現により逆転されうることを示す図である。
【図16】図16は、細胞転移および湿潤を検出するためのOrisTMシステムを示す図である。
【図17】図17は、OrisTMシステムを用いることにより、Bdphによる細胞転移の抑制が、用量依存的にDBTRG脳腫瘍細胞のAxl発現により逆転されうることを示す図である。
【図18】図18は、BPによる細胞湿潤の抑制が、DBTRG脳腫瘍細胞のAxl発現により逆転されうることを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の詳細な説明
本発明のひとつの態様は、n−ブチリデンフタリド、特にそのz型、z−ブチリデンフタリド、および重合体を含む製剤に関する。該製剤は、多形性膠芽腫(glioblastoma multiforme)のような腫瘍の成長を抑制するのに用いることができる。
【0012】
本発明の実施のために用いられるz−ブチリデンフタリドは、Lancaster Synthesis Ltd.(UK)から入手できるような市販のものを用いることができる。該化合物は、アンゼリカ・シネンシスのクロロホルム抽出によっても分離することができる。Tsai et al.,Clin. Cancer Res. 2005,11(9):3475−3484を参照。購入または分離したz−ブチリデンフタリドを、フラッシュカラムクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、結晶化、またはその他の好適な方法によってさらに精製することができる。
【0013】
本発明の実施のために用いられる重合体は、市販のものまたは公知の方法で調製されたものを用いることができる。たとえば、無水酢酸中で二酸の化合物(diacid compound)を還流してポリ無水物が得られる。
【0014】
重合体は共重合体でありうる。たとえば、共重合体としては、溶融重合(melt polycondensation)を用いて、2つの相違するポリ無水物部分から調製されうる。Domb et al.,Journal of polymer science,1987,25:3373−3386を参照。
【0015】
得られた重合体を、適当な方法で精製し、NMR、MS、またはFT−IRにより確認する。
【0016】
本発明の製剤を調製するには、z−ブチリデンフタリドと、ポリ無水物などの重合体とを、 所望の比率で(たとえば、z−ブチリデンフタリド10重量部およびポリ無水物90重量部)混合する。他の例としては、ブチリデンフタリドおよびポリ無水物を溶媒中(たとえば、塩化メチレン)に溶解し、その後溶媒を除去して、乾燥パウダーを得る。
【0017】
そのようにして得られた混合物は、さらに、ウエハ(wafers)、シート(sheets)、棒(rods)、マイクロスフィア(microspheres)、ナノスフィア(nanospheres)、ペースト(paste)、または糊(glue)などのさまざまな形態に処理されうる。たとえば、鋳型(mold)を用いて、当該混合物を圧搾(compress)してウエハにすることができる。
【0018】
本明細書中、「製剤(pharmaceutical formulation)」という言葉は、(i)たとえば、投与に適するように滅菌されているなどの、人あるいは他の哺乳類または治療されうるものに投与するのに適した組成物、ならびに(ii)少なくともひとつの薬剤(すなわち、z−ブチリデンフタリド)および少なくともひとつの上述した重合体を含む組成物を意味する。前記製剤は、ピル、カプセル剤、ゲル、デポー剤(depots)、移植医療デバイス(自己拡張ステント、バルーン拡張ステント、薬剤溶出ステントおよびステントグラフトを含むステント、グラフト(大動脈グラフト)、人口心臓バルブ、髄液短絡術(cerebrospinal fluid shunts)、ペースメーカー電極、心内膜リード(endocardial leads)、生体浸食性移植(bioerodable implants)など)、および外部からのマニュピュレートデバイス(externally manipulated devices)(たとえば、カテーテルの先端を加熱することにより薬剤を放出するカテーテルを含む薬剤デバイスおよびカテーテル)などの薬剤を運搬しうるいかなるデバイスの一部またはすべてでありうる。製剤は、また、1または1以上の他の添加剤、たとえば製薬上許容しうる賦形剤、担体、浸透促進剤、安定化剤、緩衝液または投薬形態の運搬量(the deliverability of the dosage form)および/あるいは薬剤の有効性を増加させるための薬剤ならびに/もしくは重合体に関連した他の材料を含みうる。製剤は、たとえば、液体、縣濁液、固体(たとえば、錠剤、ピル、およびマイクロカプセルを含むカプセル)、乳濁液、ミセル、軟膏、ゲル、乳液、デポー(depot)(皮下に移植されたデポー(subcutaneously implanted depot))、またはステントのような移植されたデバイス上の被覆(coating)でありうる。製剤は、たとえば、パッチのように外部に適用されたり、または部分的に外部に適用され部分的に移植されたデバイスであったり、または完全に移植されたり、または皮下に注射されうる。
【0019】
「薬剤(drug)」という言葉は、人または他の哺乳類に、局所的に(locally)および/または組織的に(systemically)、生体的に活性な物質を意味する。薬剤の例としては、Merck Index,the Physicians Desk Reference、および米国特許第6,297,337号明細書 カラム11,16行〜カラム12,58行、および米国特許出願公開第2003/0224974号明細書の段落0045、本明細書中にあらゆる目的で参照によって組み込まれたすべての開示に、開示されている。薬剤は、たとえば、疾患や病気を治療(treatment)、予防(prevention)、診断(diagnosis)、治癒(cure)、または緩和(mitigation)するために用いる物質で、ビタミンおよび鉱物(mineral)栄養補助食品(supplements);哺乳類の構造または機能に影響する物質;生体的に活性または生理環境(physiological environment)に置かれた後により活性になる物質であるプロドラック;および薬剤の代謝物(metabolites of drugs)を含む。診断薬の例としては、ラジオアイソトープ(radioisotopes)を含む造影剤(imaging agents)、ヨウ素、酵素、蛍光物質などを含む対照薬(contrasting agents)などが挙げられる。
【0020】
本発明の製剤は、また、適当な添加剤を含みうる。これらの添加剤としては、製剤を調製する際のどの段階においても、製剤中に含みうる。目的とする効果を付与するための製剤中の添加剤の所望濃度は、当業者であればわかるように、公知の方法を用いて評価しうる。
【0021】
本発明の製剤は、液体(fluid)に接触すると、抗腫瘍薬であるz−ブチリデンフタリドを放出する。それゆえに、本発明はまた、製剤を必要とする患者に、その有効量を投与することによる、腫瘍を治療する方法に関する。製剤中のブチリデンフタリドは、20、30、35、40、50、60日のように、ある期間の時間を経て、ゆっくり、持続的に、隣接した組織中へ放出される。
【0022】
本明細書中、「治療する(treating)」または「治療(treatment)」という言葉は、腫瘍を有する、腫瘍の兆候、腫瘍に伴う疾患もしくは病気、または腫瘍の傾向を有する患者に対して、腫瘍、腫瘍の兆候、腫瘍に伴う疾患もしくは病気、または腫瘍の傾向を、治癒する(cure)、緩和する(alleviate)、軽減する(relieve)、治療する(remedy)、または改善する(ameliorate)目的での、製剤の有効量の投与として定義される。
【0023】
「患者(subject)」とは、人および人以外の動物を意味する。人以外の動物としては、すべての脊髄動物(vertebrates)を含み、たとえば、人以外の霊長類(特に高等霊長類)、犬、齧歯動物(rodent)(たとえば、ねずみまたはラット)、モルモット(guinea pig)、猫のような哺乳類、および鳥類、両生類、爬虫類のような非哺乳類などが挙げられる。好ましい形態としては、患者は人である。他の形態では、患者は、実験動物または疾患モデルとして適した動物である。腫瘍、がん、または他の細胞増殖性の疾患(cellular proliferative disorder)を治療される患者は、疾患のための標準的な診断技術により確認されうる。
【0024】
腫瘍は、増大(swelling)または細胞の異常増殖(an abnormal growth of cells)によって形成された病変(lesion)である。それは、良性の腫瘍または悪性の腫瘍(すなわち、がん)でありうる。がんは、細胞が制御されていない増殖(growth)、浸潤(invasion)、ときには転移(metastasis)をする郡の疾患の部類を意味する。治療されるがんの例としては、これに制限されないが、多形性膠芽腫(glioblastoma multiforme)、肺がん、肝細胞がん(hepatocellular carcinoma)、結腸がん(colon cancer)、黒色腫(melanoma)、乳がん(breast cancer)、神経芽細胞腫(neuroblastoma)、奇形腫(teratoma)、およびヒト白血病(human leukemia)が挙げられる。
【0025】
「有効量」という言葉は、治療される患者に治療効果を付与する製剤または化合物の量を意味する。治療方法は、単独または他の薬剤もしくは治療とともに、in vivoまたはex vivoで実施されうる。in vivoの場合、化合物または製剤は患者に投与される。一般的に、化合物または製剤は、製薬上許容される担体(たとえば、生理食塩水)中で調製され、経口もしくは静脈内注射により投与され、または皮下に(subcutaneously)、筋肉注射で(intramuscularly)、髄腔内に(intrathecally)、腹腔内に(intraperitoneally)、直腸内に(intrarectally)、膣内に(intravaginally)、鼻腔内に(intranasally)、胃内に(intragastrically)、気管内に(intratracheally)、肺内に(intrapulmonarily)、注入もしくは移植される。
【0026】
好ましくは、製剤は、がん患者の皮下に(subcutaneously)、筋肉注射で(intramuscularly)、静脈内に(intravenously)、間質に(interstitially)または頭蓋内に移植されうる。ひとつの形態において、製剤は、さまざまな形態であり、腫瘍組織の除去の有無にかかわらず、がんの部位またはその近傍に、移植されうる。
【0027】
必要な用量は、投与経路の選択;製剤の性質;患者の疾患の性質;患者の大きさ、重量、表面積、年齢、および性別;投与される他の薬剤;および主治医の判断に依存する。これは、栄養士(nutritionist)、食事療法士(dietician)、または治療する医者などの当業者であれば、患者の応答とともに、調整しうる。好適な用量は、0.01−100mg/kgの範囲である。必要な用量は、利用できるさまざまな化合物と、さまざまな投与経路の有効性の相違点の観点から予測されうる。
【0028】
製剤は、外科(surgery)または放射線治療(radiotherapy)とともに用いられうる。当該製剤は、また、ひとつ以上の他の化学療法剤(chemotherapeutic agents)とともに用いられうる。化学療法剤としては、たとえば、トポテカン(topotecan)のようなカンプトテシン(camptothecins)、ドキソルビシン(doxorubicin)のようなアントラサイクリン系抗生物質(anthracycline anthracycline)、シクロホスファミド(cyclophosphamide)のようなアルキル化剤、またはカルムスチン(carmustin)などが挙げられる。
【0029】
本発明は、さらなる検討がなくとも、上述の記載から十分に実施されうる。そのために、以下の例示は、単なる例示であり、残りの開示にいかなることがあろうとも制限されない。本明細書中、引用されたすべての刊行物は、参照により全体に組み込まれる。
【実施例】
【0030】
実施例1:重合体の合成
SA単量体を、2回アルコールから結晶化させた。2.7gのSA単量体を60mLの無水酢酸中で、30分間135〜140℃、真空下(10−4トール(torr))で還流した。未反応の無水酢酸を除去した。SAプレポリマー(SA prepolymer)を、真空下60℃で乾燥し、その後乾燥トルエン(dry toluene)に溶解した。乾燥エチルエーテルおよび石油エーテルの1:1(v/v)混合物に、この溶液を体積比1:10で加え、一晩静置し、SAプレポリマー(10:1 v/v)を析出させた。乾燥エチルエーテルおよび石油エーテルを除去した後、SAプレポリマーを真空下で乾燥させた。
【0031】
3gのCPP単量体を50mLの無水酢酸と30分間150℃、真空下(10−4トール(torr))で還流した。冷却後、反応混合物をろ過した。ろ液から、いくぶんかの未反応の無水酢酸を除去して、濃縮し、CPPプレポリマーを0℃で結晶化した。残った未反応の無水酢酸は除去した。CPPプレポリマーをエーテルで洗浄し、真空下で乾燥した。続いて、CPPプレポリマーにDMFおよび乾燥エーテル(DMF:乾燥エーテル=1:9)を加えた。約12時間後、DMFおよびエーテルを除去し、CPPプレポリマーの結晶を真空下で、再度乾燥した。
【0032】
20:80の比のCPPプレポリマーおよびSAプレポリマーを、ガラスチューブ(2×20cm)にチャージし、オイルバス中、1分間180℃で加熱した。圧力は、10−4mmHgまで減圧された。重合の間、真空を15分ごとに解除(eliminated)した。チューブをジクロロメタンで洗浄した後、石油エーテルを加え、p(CPP−SA)共重合体を析出させ、無水エーテルで洗浄して真空下で乾燥した。
【0033】
このp(CPP−SA)共重合体を、IRおよび1H NMRで測定した。IR測定では、無水物結合の特徴的なシグナルが1812.76cm−1に観測された。1H NMR測定では、CPPの芳香族プロトンの特徴的なシグナルが、6.9−8.2ppmに観測され、メチレンのプロトンの特徴的なシグナルが1.3ppmに観測された。さらに、共重合体中のCPPおよびSAの比は、1H NMRのCPPおよびSAのピーク強度によれば、1:4〜1:5に同定された。
【0034】
p(CPP−SA)重合体を、z−Bdphを混合し、z−Bdphの重量に対して3%または10%を含む混合物を得た。97% p(CPP−SA)および3% 1,3−ビス(2−クロロエチル)−1−ニトロソウレア(1,3-bis(2-chloroethyl)-1-nitrosourea)(BCNU)を含む混合物を調製した。それぞれの混合物を、10%(w/v)の濃度で塩化メチレンに溶解した。溶液を真空下で72時間乾燥した。このようにして得られた乾燥粉末をステンレススティール鋳型(a stainless steel mold)を(内部径、13mm)用いて、Walter et al.,Cancer Res. 1994,54(8):2207−12;Leong et al.,J Biomed Mater Res. 1985,19(8):941−55;およびStorm et al. J Neurooncol. 2002,56(3):209−17に記載されているように、Carver Pressの200psiの軽い圧力下、圧縮(compressed)し、z−Bdph p(CPP−SA)ディスクを形成した(100mg/disc)。同サイズのBCNU p(CPP−SA)ディスクを圧縮成形(compression molding)により調製した。
【0035】
実施例2:放出速度(Release kinetics)
z−Bdph−p(CPP−SA)ディスクを、0.1mLの0.1Mリン酸−緩衝生理食塩水(pH7.4)および1.0mLのn−オクタノールの入ったシンチレーションバイアル中に置き、37℃でインキュベーションした。溶液は、さまざまな時間において、新しい緩衝液に置き換えた。310nmの波長での吸収を、Weingart et al.,Int. J. Cancer. 1995,62(5):605−9に記載のように、分光光度計を用いて測定し、緩衝液中のz−Bdphの濃度を決定した。z−Bdphの持続的な放出が確認された。
【0036】
実施例3:In Vitroでの放出制御および細胞毒性
RG2ラット多形性膠芽腫(glioblastoma multiforme)(GBM)細胞におけるp(CPP−SA)−10%z−Bdphの成長抑制効果(the growth inhibitory effects)の分析測定を行った。RG2細胞を、10%Bdph−ウエハ(wafer)で24時間処理した。細胞生存率(Cell viability)を、MTT分析により測定した。p(CPP−SA)−10%z−Bdphの成長抑制効果は、コントロールと比較すると、50%であることがわかった。さらに、GBM細胞の形態は徐々に変化し、そして処理後には培養皿の下部から細胞の分離が観測された。未処理の細胞と比較すると、分離したGBM細胞のほとんどは、p(CPP−SA)−10%z−Bdph処理後にアポトーシス(apoptotic)した。
【0037】
データは、3つの独立した実験から、平均±SDまたはSE(それぞれ、標準偏差および標準エラー(standard error))として表されている。統計的有意性は、スチューデントt−検定(Student's t-test)およびMantel−Cox検定より分析した。生存率分析(survival analysis)は、Kaplan−Meier方法を用いて行った。P値0.05以下は有意性があるとみなされる。
【0038】
実施例4:p(CPP−SA)−z−Bdphによって引き起こされるアポトーシス経路およびNurr転移(Nurr translocattion)
オリゴデオキシヌクレオチドのマクロアレイ分析(oligodeoxynucleotide-based microarray analysis)の結果を確認するために、z−Bdph処理したRG2細胞中のオーファン受容体(orphan receptors)NOR−1、Nurr1、およびNur77の発現をRT−PCRにより調べた。
【0039】
RG2細胞を、さまざまな期間(0、0.5、1、3、および6h)のz−BdphのIC50濃度でインキュベートした。インキュベート後、細胞を回収し、トータルRNA(total RNA)を分離した。GADPHの発現を、内部コントロール(internal control)として用いた。
【0040】
z−Bdph処理後、Nurr77のmRNA発現は、時間依存方式(a time-dependent manner)で、細胞内で誘導された。Nurr7 mRNA発現が、z−Bdph処理後の半時間から処理後の6時間、有意に誘導された。z−Bdph処理後に大きく誘導されたNur77は、成長抑制およびアポトーシスに関係しており、Nur77誘導(Nur77 induction)が、GBM細胞内のz−Bdphに誘導されるアポトーシス(z-Bdph -induced apoptosis)の初期段階(early event)になりうることを示している。
【0041】
z−Bdphに応答して生じるNur77の転移(translocation)について調べた。DBTRG−05NG細胞(ヒトGBM細胞)を、Bdph(100μg/mL)で24時間処理し、その後、対応するローダミン−共役抗IgG二次抗体(Rhodamine-conjugated anti-IgG secondary antibody)により、抗Nur77抗体(anti-Nur77 antibody)で免疫染色した(immunostained)。同時に、細胞をDAPIで染色し、核を表示した。蛍光顕微鏡で蛍光像を可視化した。結果は、Nur77は、細胞質ゾル内よりも核内において、より豊富であることを示した。z−Bdph処理後の24時間、Nur77は核から細胞質まで転移(translocated)した。
【0042】
さらに確認するために、細胞の細胞質ゾルおよび核フラクションを、Western blot分析により調べた。RG2細胞を、10cm皿上に固定化し、90%コンフルエンス(confluence)までインキュベートした。細胞を、Bdph(100μg/mL)で、異なる期間(0、6、12、24、および48時間)で処理した。細胞を採取し、核および細胞質フラクションを分離した。Western blot分析により、z−Bdph処理がない場合、Nur77は、核内に圧倒的に多く存在することが示された。
【0043】
最後に、z−Bdphに誘導されるNur77遺伝子発現に伴うシグナル経路を調べた。RG2細胞を、Bdph(100μg/mL)で、さまざまな期間(0、15、30、60、および180分)で処理した。Western blot分析により、JNK、AKT、ERKは、z−Bdph処理後の1時間、有意にリン酸化されたことが示された。さらに、MTT分析結果により、細胞を5−20nMのpJNK抑制剤で前処理し、z−Bdphで処理した後の細胞生存率が増加したことを示された。
【0044】
実施例5:動物実験(Animal studies)
National Laboratory Animal Center(台北、台湾)から、オスのF344ラット(230−260g)およびオスのFoxn1 nu/nuマウス(10−12週)を入手した。すべての手順を、ナショナルTau Hwaユニバーシティ(ホァーリュン(Hualien)、台湾)およびチャイナメディカルユニバーシティホスピタル(台中(Taichung)、台湾)のLaboratory Animal Centerの標準作業手順に従って行った。RG2細胞およびDBTRG−05MG細胞を動物実験に用いて、p(CPP−SA)−3%または10%z−Bdph製剤およびp(CPP−SA)−3%BCNUの抗腫瘍活性(anti-tumor activities)を測定した。
【0045】
同系のF344ラットに皮下背中にRG2細胞の移植をした。動物に、p(CPP−SA)−3%、p(CPP−SA)−10%z−Bdph製剤、p(CPP−SA)−3%BCNU、またはポリマーのみを移植した。腫瘍細胞移植後、もとの注射部位から少なくとも1.5cmを除去した。
【0046】
さらに、Foxn1 nu/nuマウスに、DBTRG−05MG細胞の皮下移植、およびp(CPP−SA)−3%、p(CPP−SA)−10%z−Bdph製剤、p(CPP−SA)−3%BCNU、またはポリマーのみの皮下移植をして、腫瘍細胞移植後、
もとの注射部位から少なくとも1.5cmを除去した。
【0047】
腫瘍サイズをキャリパー(caliper)を用いて測定し、容積は、L×H×W×0.5236として計算した。腫瘍の容積がラットは25cm3を超え、マウスは1000mm3を超えた場合、動物は処分した。ラットおよびマウスの最終生存日を日付として計算に用いた。
【0048】
実施例6:動物モデルのp(CPP−SA)−z−Bdph治療効果
F344ラットの後部脇腹領域に、RG2細胞(5×106)を皮下移植した。RG2細胞移植の5日後、ラットに、p(CPP−SA)−3%z−Bdph、p(CPP−SA)−10%z−Bdph、p(CPP−SA)のみ、またはp(CPP−SA)−3%BCNUを皮下に処理した。p(CPP−SA)−3%z−Bdph処理群、p(CPP−SA)−3%BCNU処理群、およびp(CPP−SA)処理群に比べて、p(CPP−SA)−10%z−Bdph処理群において、大きな腫瘍成長抑制が観測された(p<0.005)。
【0049】
30日の平均的な腫瘍サイズはコントロール(未処理)群が2070.79±784.90mm3、p(CPP−SA)処理群が1586.30±243.69mm3、p(CPP−SA)−3%z−Bdph処理群が346.71±521.68mm3、p(CPP−SA)−10%z−Bdph処理群が87.89±167.44mm3、p(CPP−SA)−3%BCNU処理群が357.48±27.30mm3だった。
【0050】
細胞増殖を示すki−67の免疫組織化学的染色により、p(CPP−SA)−10%z−Bdph処理群における細胞増殖の著しい減少が示された。さらに、アポトーシスを示すカスパーゼの免疫組織化学的染色により、p(CPP−SA)−10%z−Bdph処理群における細胞のアポトーシスの著しい増加が示された。
【0051】
最終的に、体重およびさまざまな器官の組織学的分析により評価されたように、p(CPP−SA)−10%z−Bdph処理群における動物には、毒性に関与する薬剤は観測されなかった。対照的に、p(CPP−SA)−3%BCNU処理群においては、著しい体重の減少が観測された。
【0052】
実施例7:異種移植された腫瘍の成長におけるp(CPP−SA)−z−Bdph処理群の治療効果
Foxnlヌードマウスに、ヒトDBTRG−05MG細胞(2×106)を接種させ、5日目にp(CPP−SA)−z−Bdph(0%、3%、10%)を移植した。3%および10%のz−Bdph−ウエハ処理群の腫瘍成長の著しい抑制が観測された。39日目の腫瘍サイズの平均値は、コントロール群 1098.46±170.11、p(CPP−SA)−3%z−Bdph処理群 605.8±98.8mm3、p(CPP−SA)−10%z−Bdph処理群 504.4±38.9mm3であった(p<0.05)。
【0053】
実施例8:z−Bdphのヒト多形膠芽細胞腫(human glioblastoma multiformis)の転移(migration)および浸潤(invasion)の抑制
DBTRG−05MG細胞の浸潤を、バイオコート腫瘍浸潤チャンバーシステム(BioCoat matrigel invasion chamber system)(BD Bioscience,Bedford,MA)を用いて測定した。BDマトリゲルマトリックス(BD matrigel Matrix)は、8μmの孔径を有するポリエチレンテレフタレート(PET)メンブレン上、ラミニン、コラーゲンIV、ニドジェン/エンタクチン(nidogen/entrctin)、およびプロテオグリカンから構成される。In Vitroの転移分析では、ファルコンカルチャーインサート(Falcon culture insert)(BD Bioscience)上の低い細孔密度(pore density)のPETトラックエッチドメンブレン(track-etched membrane)が適用された。メンブレンを、マトリゲルチャンバーまたはファルコンカルチャーインサートの上部と下部ウエルの間に置いた。まず最初に、10%ウシ胎仔血清(fetal bovine serum)を含むPRMI1640中に細胞を再懸濁し、チャンバーの上部ウエル中にシードした(1ウエルにつき細胞50,000)。24時間37℃でインキュベートした後、メンブレンを浸潤または転移した細胞を、Liu染色(Handsel Technologies,Inc.,台北、台湾)で染色し、顕微鏡下でカウントした。それぞれの実験は、3回繰り返した。
【0054】
上述の組織(system)を、DBTRG−05MG細胞(ヒトGBM)の転移および浸潤におけるz−Bdphの効果を調べるために用いた。z−Bdphが、用量依存的に、DBTRG−05MG細胞の転移および浸潤を抑制することがわかった。
【0055】
実施例9:z−BdphのAxl抑制を経由する腫瘍の転移および浸潤の抑制
悪性の脳腫瘍をz−Bdphが抑制するメカニズムを解明するため、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を用いて、GBM細胞の遺伝子発現プロファイル上のz−Bdphの効果を調べた。Axlレセプターチロシンキナーゼ(RTK)のmRNA発現が、z−Bdphの存在下で下方制御されたことがわかった。
【0056】
さらに、Axlの過剰発現(over-expression)(すなわち、GBM細胞へのpcDNA3.0−Axlプラスミドを導入することによるもの)が、Axlが媒介するGBM細胞の増殖、転移および湿潤におけるz−Bdphの抑制効果を逆転させることができる。
【0057】
Western Blot分析も実施して、z−Bdphの存在下でのGBM細胞のAxlタンパク質レベルを調べた。Axlタンパク質レベルが減少した結果となった。
【0058】
タンパク質チロシンキナーゼが細胞増殖および分化(differentiation)の制御ならびにヒト神経膠腫を含む多くの新生組織形成の発生に重要な役割を担っていることは、これまでによく知られていることである。Axlは腫瘍転移および浸潤を伴うことが報告されていた。上記結果は、z−BdphがAxlレセプターチロシンキナーゼのタンパク質発現を抑制し、それによりGBM細胞の転移および湿潤を抑制したことを示している
他の実施形態
本明細書に開示された全ての特徴は、任意の組み合わせで組み合わせられうる。本明細書に開示のそれぞれの特徴は、同一の、均等な、または類似の目的を達成する他の特徴により置換されうる。よって、特記しない限り、開示されたそれぞれの特徴は、広範な一連の均等なまたは類似の特徴の一例に過ぎない。
【0059】
当業者であれば、上述した記載から本発明の本質的な特徴を容易に認識することができ、本発明の思想および範囲から逸脱することがなく、発明に種々の変更および修飾を施し、種々の用途および条件に適合させることができる。よって、他の実施形態もまた、特許請求の範囲に包含される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
z−ブチリデンフタリド、およびz−ブチリデンフタリドと混合された重合体を含む製剤。
【請求項2】
前記重合体が、乳酸・グリコール酸共重合体、キトサン、コラーゲン、ハイドロゲル、ポリ無水物、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記ポリ無水物が、ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン、ビス(p−カルボキシフェノキシ)ブタン、ビス(p−カルボキシフェノキシ)ペンタン、ビス(p−カルボキシフェノキシ)ヘプタン、ビス(p−カルボキシフェノキシ)ヘキサン、ビス(p−カルボキシフェノキシ)オクタン、イソフタル酸、1,4−フェニレンジプロピオン酸、ドデカンジオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、またはこれらの混合物から調製される、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
前記ポリ無水物が、ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン、ビス(p−カルボキシフェノキシ)ヘキサン、イソフタル酸、1,4−フェニレンジプロピオン酸、ドデカンジオン酸、セバシン酸、またはこれらの混合物から調製される、請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
前記ポリ無水物が、ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンおよびセバシン酸の混合物から調製される、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンおよびセバシン酸の比が、1:2〜1:10である、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンおよびセバシン酸の比が、1:4〜1:5である、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
製剤中のz−ブチリデンフタリドの重量パーセントが3%〜20%である、請求項7に記載の製剤。
【請求項9】
製剤中のz−ブチリデンフタリドの重量パーセントが約10%である、請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
粉体、ウエハ、シート、棒、マイクロスフィア、ナノスフィア、ペースト、または糊の形態である、請求項1に記載の製剤。
【請求項11】
製剤中のz−ブチリデンフタリドの重量パーセントが3%〜20%である、請求項1に記載の製剤。
【請求項12】
z−ブチリデンフタリド、およびz−ブチリデンフタリドと混合された重合体を含む製剤の有効量を、必要とする患者に投与することを含む腫瘍の治療方法。
【請求項13】
前記重合体が、乳酸・グリコール酸共重合体、キトサン、コラーゲン、ハイドロゲル、ポリ無水物、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記腫瘍が、多形性膠芽腫、肺がん、肝細胞がん、結腸がん、黒色腫、乳がん、神経芽細胞腫、奇形腫またはヒト白血病である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリ無水物が、ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン、ビス(p−カルボキシフェノキシ)ヘキサン、イソフタル酸、1,4−フェニレンジプロピオン酸、ドデカンジオン酸、セバシン酸、またはこれらの混合物から調製される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリ無水物が、ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンおよびセバシン酸の混合物から調製される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンおよびセバシン酸の比が、1:2〜1:10である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンおよびセバシン酸の比が、約1:4〜1:5である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
製剤中のz−ブチリデンフタリドの重量パーセントが3%〜20%である、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
製剤中のz−ブチリデンフタリドの重量パーセントが約10%である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記製剤が、患者の皮下に移植され、間質に移植され、または頭蓋内に移植される、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記がんが、多形性膠芽腫である、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
z−ブチリデンフタリドが、Axlが媒介する腫瘍細胞の増殖、転移または浸潤を抑制する、請求項22に記載の方法。
【請求項1】
z−ブチリデンフタリド、およびz−ブチリデンフタリドと混合された重合体を含む製剤。
【請求項2】
前記重合体が、乳酸・グリコール酸共重合体、キトサン、コラーゲン、ハイドロゲル、ポリ無水物、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記ポリ無水物が、ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン、ビス(p−カルボキシフェノキシ)ブタン、ビス(p−カルボキシフェノキシ)ペンタン、ビス(p−カルボキシフェノキシ)ヘプタン、ビス(p−カルボキシフェノキシ)ヘキサン、ビス(p−カルボキシフェノキシ)オクタン、イソフタル酸、1,4−フェニレンジプロピオン酸、ドデカンジオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、またはこれらの混合物から調製される、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
前記ポリ無水物が、ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン、ビス(p−カルボキシフェノキシ)ヘキサン、イソフタル酸、1,4−フェニレンジプロピオン酸、ドデカンジオン酸、セバシン酸、またはこれらの混合物から調製される、請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
前記ポリ無水物が、ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンおよびセバシン酸の混合物から調製される、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンおよびセバシン酸の比が、1:2〜1:10である、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンおよびセバシン酸の比が、1:4〜1:5である、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
製剤中のz−ブチリデンフタリドの重量パーセントが3%〜20%である、請求項7に記載の製剤。
【請求項9】
製剤中のz−ブチリデンフタリドの重量パーセントが約10%である、請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
粉体、ウエハ、シート、棒、マイクロスフィア、ナノスフィア、ペースト、または糊の形態である、請求項1に記載の製剤。
【請求項11】
製剤中のz−ブチリデンフタリドの重量パーセントが3%〜20%である、請求項1に記載の製剤。
【請求項12】
z−ブチリデンフタリド、およびz−ブチリデンフタリドと混合された重合体を含む製剤の有効量を、必要とする患者に投与することを含む腫瘍の治療方法。
【請求項13】
前記重合体が、乳酸・グリコール酸共重合体、キトサン、コラーゲン、ハイドロゲル、ポリ無水物、およびこれらの混合物からなる群より選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記腫瘍が、多形性膠芽腫、肺がん、肝細胞がん、結腸がん、黒色腫、乳がん、神経芽細胞腫、奇形腫またはヒト白血病である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記ポリ無水物が、ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパン、ビス(p−カルボキシフェノキシ)ヘキサン、イソフタル酸、1,4−フェニレンジプロピオン酸、ドデカンジオン酸、セバシン酸、またはこれらの混合物から調製される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリ無水物が、ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンおよびセバシン酸の混合物から調製される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンおよびセバシン酸の比が、1:2〜1:10である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ビス(p−カルボキシフェノキシ)プロパンおよびセバシン酸の比が、約1:4〜1:5である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
製剤中のz−ブチリデンフタリドの重量パーセントが3%〜20%である、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
製剤中のz−ブチリデンフタリドの重量パーセントが約10%である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記製剤が、患者の皮下に移植され、間質に移植され、または頭蓋内に移植される、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記がんが、多形性膠芽腫である、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
z−ブチリデンフタリドが、Axlが媒介する腫瘍細胞の増殖、転移または浸潤を抑制する、請求項22に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−173866(P2011−173866A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−720(P2011−720)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(511005550)ナショナル ドン ファ ユニバーシティ (1)
【氏名又は名称原語表記】National Dong Hwa University
【住所又は居所原語表記】No. 1, Sec. 2, Da−Hsueh Road, Shoufeng, Hualien, Taiwan
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−720(P2011−720)
【出願日】平成23年1月5日(2011.1.5)
【出願人】(511005550)ナショナル ドン ファ ユニバーシティ (1)
【氏名又は名称原語表記】National Dong Hwa University
【住所又は居所原語表記】No. 1, Sec. 2, Da−Hsueh Road, Shoufeng, Hualien, Taiwan
【Fターム(参考)】
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